(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリスチレン系樹脂発泡層の両面側に帯電防止層を有する押出積層発泡シートからなり、押出積層発泡シートの全体厚みが0.1mm以上0.5mm未満、総坪量が10g/m2以上60g/m2以下、全体の平均気泡膜厚みが3μm以上15μm以下、押出積層発泡シートの片面の表面膜厚みの平均値である最表面の平均表面膜厚みが各面それぞれ10μm以下であり、全体の平均気泡膜厚みに対する最表面の平均表面膜厚みの比が各面それぞれ0.3以上1未満であることを特徴とする間紙。
押出積層発泡シートの押出方向の気泡変形率(押出方向の平均気泡径/厚み方向の平均気泡径)及び幅方向の気泡変形率(幅方向の平均気泡径/厚み方向の平均気泡径)が共に3〜7であることを特徴とする請求項1又は2に記載の間紙。
ポリスチレン系樹脂発泡層がスチレン系熱可塑性エラストマーを含み、スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量が、発泡層を形成しているポリスチレン系樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーとの合計100質量%に対して10〜50質量%であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の間紙。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<押出積層発泡シートからなる間紙1>
以下、図面に基づき、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る間紙を構成する代表的な押出積層発泡シート1(以下、単に積層発泡シートともいう)の厚み方向の模式断面図であり、ポリスチレン系樹脂発泡層2(以下、単に発泡層ともいう)の両面に、帯電防止剤を含有する帯電防止層3、3’(以下、単に帯電防止層ともいう)が共押出により積層されている。
また、
図2は、
図1の一部拡大図面である。
図2に示されるように、該積層発泡シート1の最表面には、厚みの極めて薄い表面膜t、t‘が形成されている。
【0016】
(積層発泡シート1の全体厚み)
本発明の積層発泡シート1の全体厚みは0.1mm以上0.5mm未満である。積層発泡シート1の全体厚みが0.1mm未満の場合には、剛性の低いものとなり、ガラス基板用間紙等に使用できないおそれがある。一方、積層発泡シート1の全体厚みが0.5mmを超えると、軽量性、緩衝性及び輸送効率が損なわれるおそれがある。
上記観点から、本発明の積層発泡シート1の全体厚さの下限は、0.2mmが好ましく、上限は、0.4mmが好ましく、0.3mm未満がさらに好ましい。
積層発泡シート1の全体厚みは、積層発泡シート1を幅方向に沿って、一方の端部から他方の端部に至るまで等間隔に複数箇所(10箇所以上)の地点について測定される厚み(mm)の算術平均値として求めることができる。
【0017】
(積層発泡シート1の総坪量)
本発明の積層発泡シート1の総坪量は10g/m
2以上60g/m
2以下である。上記範囲内であれば、加工に適する剛性を有し、かつ軽量性にも優れる積層発泡シート1となる。該総坪量は、12〜30g/m
2がより好ましい。
積層発泡シート1の総坪量は、積層発泡シート全幅に亘って一定の長さ(例えば、100mm)の矩形状の試験片を切り出し、該試験片の重量(g)を該試験片の面積(この場合、積層発泡シートの幅(mm)×100mm)で割り算し、1m
2当たりの積層発泡板の重量(g)に換算することにより求めることができる。
【0018】
(積層発泡シート1の全体の平均気泡膜厚み)
本発明の積層発泡シート1の全体の平均気泡膜厚みは、間紙としての剛性を満足するという観点から、3μm以上15μm以下である。好ましくは3〜10μm、さらに好ましくは3〜7μmである。
【0019】
(積層発泡シート1の最表面の平均表面膜厚み)
本発明の積層発泡シート1の最表面には、前記したように厚みの極めて薄い表面膜t、t‘が形成されているが、この最表面の平均表面膜厚みは、緩衝性や、被包装物との密着性の観点から、10μm以下であり、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることが更に好ましい。一方、最表面の平均表面膜の厚みの下限は、概ね0.5μm程度である。なお、積層発泡シート1の最表面の表面膜厚みは、帯電防止層の厚みを含む厚みである。
【0020】
上記積層発泡シート1の全体の平均気泡膜厚み(μm)及び積層発泡シート1の最表面の平均表面膜厚みは、次のようにして測定される値である。
まず、積層発泡シート1を幅方向に沿って垂直に切断し、切断面(幅方向垂直断面)の拡大写真を撮影する。そして、垂直断面に、積層発泡シートの一方の表面から他方の表面まで厚み方向に沿って間隔を隔て5本の直線を引き、これらの直線と交差する部分の気泡膜の厚みを計測する。このとき、積層発泡シートの最表面側に位置する気泡については表面膜の厚みも測定する。この測定を積層発泡シートの無作為に選択した5箇所以上に対して実施し、各気泡の気泡膜の厚み(表面膜の厚みも含む)の算術平均値を積層発泡シート1の全体の平均気泡膜厚み(μm)とする。
また、計測された表面膜の厚みの算術平均値を積層発泡シート1の最表面の平均表面膜厚み(μm)とする。
【0021】
(積層発泡シート1の全体の平均気泡膜厚みに対する最表面の平均表面膜厚みの比)
また、本発明の積層発泡シート1の全体の平均気泡膜厚みに対する最表面の平均表面膜厚みの比は、緩衝性、密着性等の観点から、0.3以上1.0未満であり、好ましくは0.3〜0.8であり、より好ましくは0.3〜0.7であり、さらに好ましくは0.3〜0.6である。
【0022】
(積層発泡シート1の押出方向の気泡変形率(押出方向の平均気泡径/厚み方向の平均気泡径)および幅方向の気泡変形率(幅方向の平均気泡径/厚み方向の平均気泡径))
本発明の積層発泡シート1の気泡変形率に特に制限はないが、コシ強度の向上および緩衝性の向上の観点から、積層発泡シートの押出方向の気泡変形率(押出方向の平均気泡径/厚み方向の平均気泡径)および幅方向の気泡変形率(幅方向の平均気泡径/厚み方向の平均気泡径)が3〜7の範囲であることが好ましい。
【0023】
本発明において、上記気泡変形率は下記によりそれぞれ測定される。
[押出方向の気泡変形率(押出方向の平均気泡径/厚み方向の平均気泡径)]
押出方向の気泡変形率は、厚み方向の平均気泡径Vに対する押出方向の平均気泡径Mの比(M/V)により算出される値である。なお、厚み方向の平均気泡径Vと押出方向の平均気泡径Mは次のようにして求められる。まず、積層発泡シートを押出方向に沿って垂直に切断し、その押出方向垂直断面の拡大写真を撮影する。断面写真において、無作為に10個以上の気泡を選択し、各気泡に対して、押出方向及び幅方向に平行な四辺を有し、かつ気泡に外接する矩形の押出方向の辺の長さ及び厚み方向の辺の長さを計測して、それらを各気泡の押出方向の気泡径及び厚み方向の気泡径とする。この測定を積層発泡シートの無作為に選択した5箇所以上に対して実施し、計測値の算術平均値を積層発泡シートの押出方向の平均気泡径M及び厚み方向の平均気泡径Vとして採用する。
【0024】
[幅方向の気泡変形率(幅方向の平均気泡径/厚み方向の平均気泡径)]
幅方向垂直断面おける気泡変形率は、厚み方向の平均気泡径Vに対する幅方向の平均気泡径Tの比(T/V)により算出される値である。なお、幅方向の平均気泡径Tは次のようにして求められる。まず、積層発泡シートを幅方向に沿って垂直に切断し、その幅方向垂直断面の拡大写真を撮影する。断面写真において、無作為に10個以上の気泡を選択し、各気泡に対して、幅方向及び厚み方向に平行な四辺を有し、かつ気泡に外接する矩形の幅方向の辺の長さ計測して、それを各気泡の幅方向の気泡径とする。この測定を積層発泡シートの無作為に選択した5箇所以上に対して実施し、計測値の算術平均値を積層発泡シートの幅方向の平均気泡径Tとして採用する。
【0025】
(積層発泡シート1の厚み方向の気泡数の平均値)
本発明の積層発泡シート1の厚み方向の気泡数の平均値は、特に制限はないが、十分な緩衝性を得るためには2個以上が好ましく、さらに3個以上が好ましい。その上限は概ね5個程度である。
厚み方向の気泡数の平均値は次のようにして求める。上記平均気泡膜厚みを求める際に、各垂直断面において、積層発泡シートの厚み方向に沿って引かれた直線と交差する気泡の数を計測し、それらの算術平均値を厚み方向の気泡数の平均値とする。
【0026】
本発明の積層発泡シート1の上記平均気泡径は、例えば、ダイの圧力を上げることによって平均気泡径を小さくする方法や気泡調整剤の量を調整することによって調整することができる。
また、気泡変形率の調整方法としては、例えば以下の方法などにより調整される。
押出方向に気泡を扁平状になるように調整したい場合には、吐出量を減少させる、引き取り速度を上げる等の方法で調整できる。また、幅方向に気泡を扁平状になるように調整したい場合には、積層発泡シートが幅方向に広がるように押出を行なう方法で調整でき、環状ダイを用いる場合は、環状ダイの吐出口径と筒状の冷却装置であるマンドレル(冷却管)の直径との比であるブローアップ比(筒状の冷却装置であるマンドレルの直径/環状ダイの吐出口径)を大きくする方法で調整できる。
【0027】
(積層発泡シート1の見かけ密度)
本発明の積層発泡シート1の全体の見かけ密度は250kg/m
3以下であることが好ましい。該見かけ密度が上記範囲内であると、軽量性と緩衝性とのバランスに優れた間紙となる。上記観点から、該見かけ密度の上限は、より好ましくは150kg/m
3、さらに好ましくは120kg/m
3である。なお、積層発泡シート1の全体の見かけ密度の下限は、剛性の観点から概ね30kg/m
3程度であることが好ましく、より好ましくは50kg/m
3である。
なお、積層発泡シート1の見かけ密度は、積層発泡シート1の総坪量(g/m
2)を積層発泡シートの厚み(mm)で割算した値をkg/m
3に単位換算することより求めることができる。
【0028】
(積層発泡シート1の独立気泡率)
本発明の積層発泡シート1の独立気泡率は特に制限はないが、剛性をより高く持たせる場合には、独立気泡率は70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上である。
独立気泡率は以下の方法により測定することができる。
独立気泡率:S(%)は、積層発泡シートを用いてASTMD2856−70に記載されている手順Cに準拠して求められる積層発泡シートの実容積(独立気泡の容積と樹脂部分の容積との和):Vx(L)から、下記(3)式により算出される値である。測定装置としては、東芝ベックマン株式会社製の空気比較式比重計930型などを使用することができる。
[数1]
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ)・・・・(3)
但し、上記(1)式中の、Va、W、ρは以下の通りである。
Va:積層発泡シートの見かけ容積(L)
W:積層発泡シートの重量(g)
ρ:積層発泡シートを形成する樹脂組成物の密度(g/L)
尚、積層発泡シートを形成する樹脂組成物の密度ρ(g/L)は、積層発泡シートを加熱プレスにより脱泡させて冷却して得られたサンプルから求めることができる。また、積層発泡シートの見かけ容積Va(L)は、外寸法から計算される値を採用する。
尚、試験片は、空気比較式比重計に付属のサンプルカップに非圧縮状態で収納するために、縦と横がそれぞれ25mmで、試験片の見掛け体積が15〜16cm
3でなければならないが、上記範囲内となるように最小限の枚数を重ね他試験片を用いるものとする。
【0029】
(発泡層2の構成成分)
発泡層2は、ポリスチレン系樹脂、発泡剤、必要に応じて気泡調整剤及びその他の添加剤を加熱、混練した発泡層形成用溶融物を押出して発泡させることにより形成されている。以下に、発泡層2を成形するために用いる材料の各成分について詳述する。
【0030】
(ポリスチレン系樹脂)
ポリスチレン系樹脂としては、通常、ポリスチレン系樹脂発泡体に用いられるポリスチレン系樹脂であれば特に制限なく用いることができ、例えば、ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体等が例示される。また、発泡板の耐熱性を高める場合には、ポリスチレン系樹脂としてポリフェニレンエーテル樹脂を含むものを使用することができ、その割合は、ポリスチレン系樹脂中に10〜50質量%とすることが好ましい。
また、本発明では、所期の目的を阻害しない範囲において、上記ポリスチレン系樹脂に対し、所望の目的に応じて、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、スチレン−共役ジエンブロック共重合体やその水添物などのスチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴムなどのゴム等の重合体を配合することができる。
【0031】
特に、本発明においては、積層発泡シート1の柔軟性、緩衝性更には靱性を向上させるために、スチレン系熱可塑性エラストマーをポリスチレン系樹脂に配合することが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、それらの部分水添物または完全水添物等が包含される。
これらの中でも、スチレン成分が30〜60質量%であるものが発泡を阻害せず適度な柔軟性を与える分散が得られるため好ましく用いられる。このような観点からスチレン系エラストマーのスチレン成分は、35〜55質量%であることが更に好ましく、40〜55質量%であることが特に好ましい。
上記スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量は、発泡層を形成しているポリスチレン系樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーとの合計100質量%に対して10〜50質量%であることが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマー成分が10質量%以上であると緩衝性が増すほか、積層発泡シートの靭性が高まり使用時の破損が起こり難い。このような観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー成分としては、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上である。また、特に独立気泡率の高い積層発泡シートを得るという観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー成分としては、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である。
【0032】
(発泡剤)
発泡剤としては物理発泡剤を用いることができる。物理発泡剤としては、例えば、エタン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの炭素数2以上7以下の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタンなどの炭素数1以上4以下のハロゲン化脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール、又はジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなどの炭素数2以上8以下の脂肪族エーテル等の有機物理発泡剤、窒素、二酸化炭素、水等の無機物理発泡剤が挙げられる。
【0033】
これらの物理発泡剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、ポリスチレン系樹脂との相溶性、発泡効率の観点からノルマルブタン、イソブタン又はこれらの混合物を主成分とするものを好適に用いることができる。
【0034】
物理発泡剤の添加量は、発泡体の見かけ密度などに応じて適宜調整することができるが、通常、発泡層2を形成するための発泡性樹脂溶融物1kgに対して0.1〜1.8molとすることが好ましく、0.2〜1.5molとすることがより好ましく、0.3〜1.2molとすることがさらに好ましい。
なお、発泡剤として、物理発泡剤以外に化学発泡剤を併用して用いることもできる。
【0035】
(気泡調整剤)
気泡調整剤としては、有機系又は無機系のいずれのものを用いることができる。無機系の気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0036】
また、有機系の気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等を挙げることができる。また、クエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせた重曹−クエン酸系化学発泡剤等も用いることができる。これらの気泡調整剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
気泡調整剤の添加量は、発泡層の所望の気泡径に応じて適宜調整することができるが、気泡調整剤として重曹−クエン酸系化学発泡剤を用い、気泡径を調整して発泡シート全体の平均気泡膜厚みを上記のように調整するためには、通常、発泡層の基材樹脂100質量部あたり、0.01質量部以上2質量部以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.05質量部以上1質量部以下の範囲である。
【0038】
(その他の添加剤)
発泡層2を成形するための材料成分としては、上記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機充填剤、抗菌剤、着色剤等が挙げられる。
【0039】
<帯電防止層3,3‘>
帯電防止剤を含有する帯電防止層3、3’は発泡層2の両面側に積層されている。
【0040】
(帯電防止層3,3‘の坪量)
帯電防止層の片面当たりの坪量は、帯電防止剤の効果の発現性からみて、0.1g/m
2以上であることが好ましく、より好ましくは0.5g/m
2である。一方、片面当たりの坪量が大きすぎると、積層発泡シートの最表面の平均気泡膜厚みが厚くなりすぎるおそれがあることから、帯電防止層の片面当たりの坪量の上限値は好ましくは5g/m
2であり、さらに3g/m
2であることがより好ましい。
帯電防止層の片面当たりの坪量は、積層発泡シート製造時の帯電防止層の片面当たりの押出機吐出量をもとに下記(4)式により求めることができる。
帯電防止層の坪量(g/m
2)=(L×10
3)/(M×N×60)・・・(4)
【0041】
(帯電防止層3,3‘の構成成分)
帯電防止層は、熱可塑性樹脂、帯電防止剤、その他の添加剤を配合し帯電防止層形成用樹脂溶融物を共押出ダイ内で、前記発泡層形成用樹脂溶融物に合流積層させ、該積層物を共押出させることにより形成することができる。以下に、帯電防止層を成形するために用いる材料の各成分について詳述する。
【0042】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂などを使用することができる。前記ポリスチレン系樹脂としては、前記発泡層2で用いたと同様なポリスチレン系樹脂が使用できる。
前記ポリオレフィン系樹脂の中では、表面硬度が低く被包装体の表面保護に優れる等の柔軟性の観点からポリエチレン系樹脂が好ましく用いられる。このようなポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、さらにそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0043】
(帯電防止剤)
帯電防止剤としては、従来公知の界面活性剤型帯電防止剤や高分子型帯電防止剤などが用いられる。
界面活性剤型帯電防止剤としては、例えば,ヒドロキシアルキルアミン,ヒドロキシアルキルモノエーテルアミン,グリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン系界面活性剤;アルキルスルホン酸塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルホスフェート等のアニオン系界面活性剤;テトラアルキルアンモニウム塩,トリアルキルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤等が挙げられる。
高分子型帯電防止剤としては、表面抵抗率が1×10
12Ω未満を示す樹脂が挙げられ、具体的には、金属イオンとしてカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれたアルカリ金属を含むアイオノマー樹脂、あるいはポリエーテルエステルアミドやポリエーテル等の親水性樹脂を主成分とするものが挙げられる。なお、汚染防止性や帯電防止効果の持続性等の観点から、帯電防止剤としては高分子型帯電防止剤を用いることが好ましい。
前記親水性樹脂としては、体積抵抗率が1×10
5〜1×10
11Ω・cmの親水性ポリマー(以下、単に親水性ポリマーともいう。)や、親水性ポリマーブロックと疎水性ポリマーブロックとのブロックポリマーなどが例示できる。なお、これらの中でも、親水性ポリマーとしてポリエーテルブロックを有し、疎水性ポリマーブロックとしてポリオレフィンブロックを有するブロック共重合体が好ましい。具体的には、三洋化成工業(株)製「ポリエーテル−ポリプロピレンオレフィンブロック共重合体:ペレクトロンHS(融点134℃、表面抵抗率2.0×10
6Ω)、三洋化成工業(株)製「ポリエーテル−ポリプロピレンオレフィンブロック共重合体:商品名:ぺレスタットVL300」(融点133℃、表面抵抗率1.2×10
8Ω)等の市販品が挙げられる。
前記アイオノマー樹脂としては、具体的には、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の一部または全部をアルカリ金属で中和することで得られる、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーなどが挙げられる。
前記帯電防止剤の配合量は、帯電防止層を構成する熱可塑性樹脂と帯電防止剤との合計100質量%中に3〜25質量%とすることが好ましい。上記範囲内であれば、積層発泡シートに帯電防止性能を発現させることが可能となる。
【0044】
本発明の積層発泡シートは帯電防止性能を有する。具体的には、積層発泡シートの表面抵抗率は1×10
14Ω未満であることが好ましく、1×10
8〜1×10
13Ωであることがより好ましい。積層発泡シートの表面抵抗率は、JIS K6271(2001年)に準拠して測定される値である。
【0045】
(相溶化剤)
なお、ポリスチレン系樹脂にアイオノマー樹脂を添加する際には、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体や、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体などのスチレン系エラストマーを相溶化剤として配合することが好ましい。
【0046】
帯電防止層の最表面部の表面膜
t,t’の厚み及び該厚みの全体の平均気泡膜厚みに対する比は、発泡層への気泡調整剤の添加量を調整すると共に、帯電防止層の積層量(坪量)を調整することにより調整することができる。
通常、発泡層のみからなるポリスチレン系樹脂発泡シートは、製造時、ダイから押出された直後から、その表面側から冷却されるため、表面膜の厚みは、全体の平均気泡膜厚みよりも厚くなる。さらに、この発泡シートの表面に帯電防止フィルムを熱ラミネートなどにより積層すると、フィルムの厚みの分だけ表面膜の厚みはさらに厚くなる。
それに対して、積層発泡シートを製造する際に、帯電防止層と発泡層とを共押出して発泡層に帯電防止層を積層すると、共押出時に帯電防止層と発泡層との界面付近において気泡が発生し成長する。そのため、共押出により帯電防止層をその積層量(坪量)が極めて小さくなるように発泡層に積層すると、発泡層の帯電防止層との界面付近の気泡膜厚みが極めて薄くなると共に、その極薄の気泡膜と薄膜の帯電防止層とにより積層発泡シートの表面膜が形成されることから、表面膜の厚みを全体の平均気泡膜厚みよりも薄くすることができるものと推察される。
【0047】
(本発明の押出積層発泡シートからなる間紙1の利点)
本発明の押出積層発泡シートからなる間紙1は、剛性の強いポリスチレン系樹脂を基材樹脂としているにも関わらず、優れた表面柔軟性による緩衝性を有するので、ガラス板等との密着性に優れ、その表面を傷付けることなく表面保護性にも優れたものである。
また、厚みが薄いにも拘わらず、剛性に優れコシも強いので、ガラス基板等の間に簡単に介装でき、また介装した後も、吸引等によりガラス基板等から容易に排除できるので、施行しやくその取り扱い作業性にも優れたものである。
さらに、本発明の押出積層発泡シートからなる間紙は、帯電防止性に優れており、ガラス基板等への塵や埃の付着を抑制きるうえ、厚みが極めて薄く軽量であることから、ガラス板等の保護性及び輸送効率に優れたものである。
したがって、帯電防止機能が強く要求される間紙の分野、殊に液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の画像表示機器用の薄型ガラス板や、それらの画像表示機器、さらにはシリコンウエハーなどの板状物の搬送や梱包時の損傷を防止するための間紙として広くその需要が見込まれる。
【0048】
<本発明の積層発泡シート1の製造方法>
次に、本発明の積層発泡シート1を環状ダイを用いて製造する製造方法の一実施形態を
図3に示す。
本発明の積層発泡シート1の製造方法は、
図3に示すように、まず、先に説明した発泡層2を成形するための材料である、ポリスチレン系樹脂4、必要に応じてスチレン系熱可塑性エラストマー5、気泡調整剤6、その他添加剤等を第1押出機7に供給して加熱混練し、発泡剤8を圧入して更に混練し、発泡適正温度に調整し、発泡層形成用樹脂溶融物9とする。
【0049】
また同時に、先に説明した帯電防止層3、3‘を形成するための材料である、熱可塑性樹脂(ポリスチレン系樹脂)10、帯電防止剤11、その他必要に応じて添加剤等を第2押出機13に供給して加熱混練し、好ましくは揮発性可塑剤14を圧入して更に混練し、適正温度に調整し、帯電防止層形成用樹脂溶融物15とする。
【0050】
次に、それぞれ適正温度に調整された上記発泡層形成用樹脂溶融物9と帯電防止層形成用樹脂溶融物15とを、共押出用環状ダイ16に導入し、帯電防止層形成用樹脂溶融物15を発泡層形成用樹脂溶融物9の内周面及び外周面上に合流積層させ、該積層体を共押出して、発泡層形成用樹脂溶融物9を発泡させることにより、発泡層2の内周面側と外周面側のそれぞれに帯電防止層3、3‘が形成された筒状積層発泡体17を製造する。ついで、この筒状積層発泡体17を円柱状冷却装置(マンドレル)に沿わせて、拡張(ブローアップ)しつつ引取りながら押出方向に沿って切り開くことにより積層発泡シート1を得ることができる。
【0051】
ここで、発泡層形成用樹脂溶融物の適正温度とは、発泡層形成用樹脂溶融物が発泡層を形成するのに最適な粘弾性を示す温度のことである。また帯電防止層形成用樹脂溶融物の適正温度とは、帯電防止層形成用樹脂溶融物が帯電防止層を形成するのに良好な伸長性を示し且つ発泡層の形成を阻害しない温度のことである。
これらの点を考慮して、具体的には、発泡層形成用樹脂溶融物の適性温度を満たす温度は、主原料の溶融粘度と発泡剤の注入量によって適正範囲が厳密には異なるが、、概ね130℃以上170℃以下の範囲にあり、更に140℃以上160℃以下の範囲であることが好ましい。
一方、帯電防止層形成用樹脂溶融物の適正温度を満たす温度は、概ね、発泡層形成用樹脂溶融物の[押出温度+20℃]以下であり、[押出温度+10℃]以下であることが好ましい。なお、帯電防止層形成用樹脂溶融物の適正温度の下限は、発泡層形成用樹脂溶融物の[押出温度−10℃]程度である。
【0052】
なお、積層発泡シート1の製造にあたって用いられる環状ダイ、押出機、円柱状冷却装置、筒状積層発泡体を切り開く装置等の各種装置や部品類等は、従来押出発泡の分野で用いられてきた公知のものを適宜用いることができる。
また、帯電防止層形成用樹脂溶融物と発泡層形成用樹脂溶融物とを共押出して帯電防止層と発泡層とを積層してなる積層発泡シートを得る方法では、ダイ内でのせん断による発熱が大きくなると、帯電防止層を構成する帯電防止層形成用樹脂溶融物の温度が過度に上昇し、押出発泡時に発泡層における気泡が破泡し易くなる。この点、帯電防止層形成用樹脂溶融物の樹脂温度を下げるために、流動性が高い熱可塑性樹脂を採用すると、発泡層の気泡構造を破壊せずに積層発泡シート1を得ることができる。
【0053】
(揮発性可塑剤)
上記したように帯電防止層形成樹脂溶融物15には、揮発性可塑剤14が添加されることが好ましい。揮発性可塑剤14は、帯電防止層形成用樹脂溶融物15中に存在している状態で、溶融粘度を低下させる機能を有すると共に、帯電防止層形成後に、帯電防止層より揮発してその帯電防止層から除去されることの可能なものが用いられる。揮発性可塑剤を帯電防止層形成用樹脂溶融物中に添加することにより、積層発泡シート1を共押出しにより製造する際に、帯電防止層の溶融伸びを著しく向上させることができ、帯電防止層の伸びを発泡層の伸びに対応させて、帯電防止層の伸び不足による亀裂発生を防止できる。
帯電防止層中の揮発性可塑剤は、帯電防止層を構成する熱可塑性樹脂や揮発性可塑剤の種類により、押出された時点で押出し時の熱によりほぼ帯電防止層から揮散している場合と帯電防止層中に残存している場合とがある。なお帯電防止層中に残存した揮発性可塑剤は、押出し後の経時により帯電防止層中から揮散するため、該帯電防止層中の揮発性可塑剤残存量は経時により減少する。
揮発性可塑剤は、沸点が120℃以下であることが、帯電防止層から揮発し易い点から好ましく、より好ましくは沸点が80℃以下である。揮発性可塑剤が上記沸点を有するものであれば、共押出しを実施した後、その共押出した積層発泡シートを放置しておくことで、共押出しの直後の熱やその後の揮発性可塑剤のガス透過により、揮発性可塑剤が積層発泡シートの帯電防止層から自然に揮散して、その帯電防止層から揮発性可塑剤を除去することが出来る。なお、上記沸点の下限値については、概ね−50℃である。
揮発性可塑剤としては、炭素数2以上7以下の脂肪族炭化水素、炭素数1以上3以下のハロゲン化脂肪族炭化水素、炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール、又は炭素数2以上8以下の脂肪族エーテル等から選択される1種、または2種以上で構成されるものが好ましく用いられる。
【0054】
(揮発性可塑剤の添加量)
揮発性可塑剤の添加量については、上記観点から、帯電防止層形成用樹脂溶融物を形成する熱可塑性樹脂と帯電防止剤との合計100質量部に対して0.1質量部〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜12質量部であり、さらに好ましくは2〜8質量部である。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の押出積層発泡シートからなる間紙について、実施例により具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0056】
製造装置として、発泡層形成用押出機(第1押出機)として、バレル内径90mmの押出機と、該押出機に接続されたバレル内径120mmの押出機とからなるタンデム型の押出機を用い、該押出機の出口に共押出用環状ダイ(リップ径94mm)を取付け、さらに該共押出用環状ダイに、バレル内径50mmの帯電防止層形成用押出機(第2押出機)を連結させた共押出装置を用いた。
【0057】
なお、表1において、各記号は以下のものを意味する。
PS:ポリスチレン(GPPS)、PSジャパン株式会社製「スタイロン680」、MFR:7g/10分(200℃、荷重5kg)
TPS:スチレン・ブタジエン熱可塑性エラストマー(SBS)、JSR株式会社製「TR2250」、スチレン/ブタジエン重量比:52/48、MFR:4.0g/10分(200℃、荷重5kg)
ASP:高分子型帯電防止剤(ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体)、三洋化成工業株式会社製「ペレクトロンHS」、
【0058】
(実施例1)
表1記載の割合で配合したポリスチレン系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、及び気泡調整剤として重曹−クエン酸系マスターバッチ(ベースレジン:ポリスチレン、有効成分濃度20質量%)を押出機に供給して加熱、混練し、この溶融混練物100質量部に対し発泡剤としてイソブタンを3.3質量部(0.57mol/kg)注入し、第1押出機中で樹脂温度を158℃に調整して、発泡層形成用樹脂溶融物とし、吐出量60kg/hrで共押出用環状ダイ中に導入した。
同時に、表1に記載の割合で配合したポリスチレン系樹脂と高分子型帯電防止剤とを第2押出機に供給して、加熱、混練した後、この溶融混練物100質量部に対し揮発性可塑剤としてノルマルブタン70質量%とイソブタン30質量%との混合ブタンを3.3質量部(0.57mol/kg)注入し、165℃に調整後、帯電防止層形成用樹脂溶融物として吐出量6kg/hrで共押出用環状ダイに導入した。
共押出用環状ダイ中で、発泡層形成用樹脂溶融物の外周面側と内周面側との両面側に帯電防止層形成用樹脂溶融物を合流させて、発泡層形成用樹脂溶融物に帯電防止層形成用樹脂溶融物を積層させた後、環状ダイから共押出して筒状の積層発泡体を得て、この筒状積層発泡体を直径366mmの冷却管に沿わせて引き取り速度65m/分で引き取りながら、冷却後押出方向に沿って切り開き、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得た。得られた積層発泡シートの各種物性・特性等を表2及び表3に示す。
実施例1の積層発泡シートは最表面部の表面膜が全体の平均気泡膜の厚みより薄く、表面緩衝性に優れたものであり、しかも垂れがなくコシの強いものであった。
【0059】
(実施例2)
発泡剤として注入するイソブタンを2.7質量部(0.47mol/kg)に変更し、表2に示したような坪量になるよう引取速度を変更した以外は実施例1と同様にして積層発泡シートを得た。
得られた積層発泡シートの各種物性・特性等を表2及び表3に示す。実施例2の積層発泡シートは最表面部の表面膜が全体の平均気泡膜の厚みより薄く、表面緩衝性に優れたものであり、しかも垂れがなくコシの強いものであった。
【0060】
(実施例3)
発泡剤として注入するイソブタンを3.0質量部(0.52mol/kg)に変更し、表2に示したような坪量になるよう引取速度を変更した以外は実施例1と同様にして積層発泡シートを得た。
得られた積層発泡シートの各種物性・特性等を表2及び表3に示す。実施例3の積層発泡シートは最表面部の表面膜が全体の平均気泡膜の厚みより薄く、表面緩衝性に優れたものであり、しかも垂れがなくコシの強いものであった。
【0061】
(実施例4)
発泡剤として注入するイソブタンを2.7質量部(0.47mol/kg)に変更し、表2に示したような坪量になるよう引取速度を変更した以外は実施例1と同様にして積層発泡シートを得た。
得られた積層発泡シートの各種物性・特性等を表2及び表3に示す。実施例4で得られた積層発泡シートは最表面部の表面膜が全体の平均気泡膜の厚みより薄く、表面緩衝性に優れたものであり、しかも垂れがなくコシの強いものであった。
【0062】
(実施例5)
第1押出機に供給する気泡調整剤マスターバッチの量を1.5質量部、第1押出機に注入する発泡剤としてのイソブタンの量を1.4質量部(0.24mol/kg)に変更すると共に、第2押出機に注入する揮発性可塑剤としての混合ブタンの量を1.4質量部(0.24mol/kg)に変更し、表2に示したような坪量になるよう引取速度を変更した以外は実施例1と同様にして積層発泡シートを得た。
得られた積層発泡シートの各種物性・特性等を表2及び表3に示す。実施例5で得られた積層発泡シートは最表面部の表面膜が全体の平均気泡膜の厚みより薄く、表面緩衝性に優れたものであり、しかも垂れがなくコシの強いものであった。
【0063】
(比較例1)
低密度ポリエチレンを基材樹脂とする発泡層の両表面に共押出により積層された低密度ポリエチレンと高分子型帯電防止剤とからなる帯電防止層を有するポリエチレン系樹脂積層発泡シート(株式会社JSP製、製品名「ミラマットエース」、厚み0.4mm、坪量22g/m
2)について、実施例と同様に、そのコシ強度及び表面緩衝性を評価した。このポリエチレン系樹脂発泡シートは、表面緩衝性に優れるもの、垂れ下がり量が大きいものであった。
【0064】
(比較例2)
ポリスチレンを基材樹脂とする単層のポリスチレン系樹脂発泡シート(株式会社JSP製、厚さ1.65mm、坪量160g/m
2)について、実施例と同様に、そのコシ強度及び表面緩衝性を評価した。
このポリスチレン系樹脂発泡シートは、垂れ下がりが小さく、コシ強度が強いものであったが、発泡シートの全体の平均気泡膜厚みに対する平均表面膜厚みの比が大きいため、表面緩衝性に劣るものであった。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
表2及び表3において、各物性・特性は以下のようにして測定評価した。なお、特に断りがない限り、得られた積層発泡シートを23℃、相対湿度50%の雰囲気下に48時間載置して状態調節を行った後に、23℃、相対湿度50%の雰囲気下において、各物性・特性の測定及び評価を実施した。
【0069】
(平均厚み)
得られた積層発泡シートの幅方向に沿って一方の端部から他方の端部に至るまで等間隔に10箇所の地点について厚み(mm)を測定し、それらの算術平均値を積層発泡シートの平均厚み(mm)とした。
【0070】
(総坪量)
得られた積層発泡シート全幅に亘って、積層発泡シートの幅(mm)×100mmの矩形状の試験片を切り出し、該試験片の重量(g)を該試験片の面積で割り算し、1m
2当たりの積層発泡板の重量(g)に換算することにより、積層発泡シートの坪量(g/m
3)を求めた。
【0071】
(帯電防止層の片面あたりの坪量)
積層発泡シート製造時の帯電防止層の片面当たりの押出機吐出量(この場合、第2押出機の吐出量の1/2)をもとに、前記(4)式から帯電防止層の片面あたりの坪量(g/m
2)を求めた。
【0072】
(独立気泡率)
積層発泡シートの独立気泡率は次のようにして測定された値である。まず、得られた積層発泡シートの無作為に選択した3箇所から試験片を切り出した。次に、測定装置として東芝ベックマン株式会社製の空気比較式比重計930型を用いて、各々の試験片について前述したASTMD2856−70に記載されている手順Cに準拠する方法により、各試験片の実容積Vxを測定し、前記(3)式により各試験片の独立気泡率を求め、それらの算術平均値を積層発泡シートの独立気泡率(%)とした。
【0073】
(平均気泡径、気泡変形率)
得られた積層発泡シートの幅方向中央部および両端部付近並びにそれらの中間部の計5箇所の押出方向垂直断面、幅方向垂直断面において、前述した方法に従って、各方向(厚み方向、押出方向、幅方向)の平均気泡径(μm)、気泡変形率及び厚み方向の気泡数を求めた。また、3方向の平均気泡径の幾何平均値を積層発泡シートの平均気泡径D(μm)とした。
【0074】
(全体の平均気泡膜厚み、平均表面膜厚み、厚み方向の気泡数)
得られた積層発泡シートの幅方向中央部および両端部付近並びにそれらの中間部の計5箇所の幅方向垂直断面において、前述した方法に従って、積層発泡シートの全体の平均気泡膜厚み(μm)、平均表面膜厚み(μm)及び厚み方向の気泡数を求めた。なお、積層発泡シートの平均表面膜厚みは、積層発泡シートの各面ごとに求め、表2中、積層発泡シートを製造する際の冷却管当接面をM面と表記し、その反対面をS面と表記した。
【0075】
(垂下量)
実施例及び比較例にて得られた発泡シートから、幅100mm、長さ100mmの試験片を、発泡シートの押出方向と試験片の長さ方向が一致するようにして5片切り出した。該試験片を水平な支持台上に、長さ100mmの内50mmの部分が支持台端部からはみ出すようにして支持した。それぞれの試験片のはみ出し部先端の垂れ下がり量(mm)を測定し、測定値の算術平均値を押出方向垂れ下がり量(mm)とした。同様に、実施例及び比較例にて得られた発泡シートから、幅100mm、長さ100mmの試験片を、発泡シートの幅方向と試験片の長さ方向が一致するようにして5片切り出した。該試験片を水平な支持台上に、長さ100mmの内50mmの部分が支持台端部からはみ出すようにして支持した。それぞれの試験片はみ出し部先端の垂れ下がり量(mm)を測定し、測定値の算術平均値を幅方向の垂れ下がり量(mm)とした。これらの垂下量が小さいほどコシが強いことを示す。
【0076】
(表面緩衝性)
実施例及び比較例にて得られた発泡シートから100mm×100mmの試験片を切り出した。
水平な撓みの無い平滑な鉄板上に幅26mm、長さ76mm、厚み1mmのプレクリンスライドガラス(松浪硝子工業株式会社製S7213)を置き、プレクリンガラスの上に切り出した試験片を乗せ、更にその上にプレクリンガラスを、試験片の下に置いたガラスと同位置になるよう載置し、その上から130g/cm
2の圧力にて試験片と密着するように均等に荷重をかけ、60℃の雰囲気下にて24時間静置した。
その後、荷重を除去し、上側のガラスを静かに持ち上げ、試験片とガラスが剥離するまでの時間を計測し、その時間により表面緩衝性を評価した。
○:5秒以上剥離せず
×:直後に剥離した
【0077】
(表面抵抗率)
積層発泡シートから無作為に3片の試験片(縦100mm×横100mm)を切り出した。測定装置としてタケダ理研工業株式会社製「TR8601」を用い、印加電圧500Vの条件にて試験片に電圧を印加し、印加を開始して1分経過後の表面抵抗率を測定した。なお、測定は試験片の両面に対して行ない(計6回)、得られた測定値の平均値から表面抵抗率を求めた。