(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アクチュエータプレートのうち、隣り合う前記ダミーチャネル間に位置する部分には、前記アクチュエータプレートにおける第1方向の一端側に向けて開放されるとともに、前記一端面に対して第1方向の他端側に窪む接続溝が形成され、
前記接続溝の内面のうち、第1方向の一端側に向く面が前記接続面を構成していることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
前記共通側外部配線には、前記凹部内に収容されるとともに、前記凹部内で前記共通パッドに接続されるバンプが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の液体噴射ヘッド。
前記電極形成工程の前段に、前記アクチュエータプレートの前記表面上において、隣り合う前記ダミーチャネル間に位置する部分に、第1方向の一端側に向けて開放された前記凹部を形成する凹部形成工程を有していることを特徴とする請求項5記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
前記電極形成工程の前段に、前記アクチュエータプレートが第1方向で連なるウエハの表面のうち前記アクチュエータプレート間に位置する部分に、第2方向に沿って延びるとともに前記ダミーチャネルと交差する横断溝を形成する横断溝形成工程を有し、
前記電極形成工程の後段に、前記ウエハのうち、前記横断溝間に位置する部分を切断して前記アクチュエータプレート毎に個片化する個片化工程を有していることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
前記電極形成工程の前段に、前記アクチュエータプレートが第1方向で連なるウエハの表面のうち前記アクチュエータプレート間に位置する部分に、第2方向に沿って延びるとともに前記ダミーチャネルと交差する横断溝を第1方向に間隔をあけて2本形成する横断溝形成工程を有し、
前記電極形成工程の後段に、前記ウエハのうち、前記2本の横断溝間に位置する隔壁を除去するように前記ウエハを切断して前記アクチュエータプレート毎に個片化する個片化工程を有していることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
前記電極形成工程では、前記アクチュエータプレートを厚さ方向から見た平面視において、第1方向及び第2方向それぞれに交差する方向から前記アクチュエータプレートの前記表面に対して斜め蒸着を行うことを特徴とする請求項7又は請求項8記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
前記チャネル形成工程及び前記横断溝形成工程では、前記電極形成工程において前記ダミーチャネルの底面に前記電極材料が堆積しないように前記ダミーチャネル及び前記横断溝の溝幅及び溝深さを設定することを特徴とする請求項9記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、個別配線及び共通配線が、アクチュエータプレートにおけるチャネル延在方向の両端面を通して裏面上の各パッドまで引き回されているため、配線パターンが複雑になるという課題があった。
【0007】
また、近時では、被記録媒体に記録される文字や画像の高密度記録化等の多ノズル化を図る構成として、アクチュエータプレートの厚さ方向に沿ってヘッドチップを複数積層する構成が知られている。しかしながら、上述した特許文献1の構成は、アクチュエータプレートの裏面上で外部配線に接続される関係で、小型化を図った上で、多ノズル化を図ることが難しかった。
【0008】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、配線パターンの簡素化を図るとともに、小型化を図った上で多ノズル化を実現できる液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドの製造方法及び液体噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る液体噴射ヘッドは、アクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートの表面上に、第1方向に沿って延設されるとともに、第1方向に交差する第2方向に間隔をあけて並設され、第1方向の一端部が前記アクチュエータプレート内で終端する噴射チャネルと、前記アクチュエータプレートの前記表面上に、第1方向に沿って延設されるとともに、第2方向で前記噴射チャネルと交互に並設され、前記アクチュエータプレートにおける第1方向の一端面で開口するダミーチャネルと、前記ダミーチャネルの内側面に形成された個別電極と、前記噴射チャネルの内側面に形成された共通電極と、前記アクチュエータプレートのうち、隣り合う前記ダミーチャネル間に位置する部分において第1方向の一端側を向く接続面に形成され、前記噴射チャネルを挟んで第2方向で対向する前記個別電極同士を各別に接続するとともに、個別側外部配線が接続される個別パッドと、前記アクチュエータプレートの前記表面上において、隣り合う前記ダミーチャネル間に位置する部分に形成され、第1方向の一端側に向けて開放された凹部と、前記凹部の内面に形成され、前記凹部内を通して前記共通電極及び共通側外部配線間を接続する共通パッドと、前記アクチュエータプレートのうち、前記表面と前記一端面とのなす角部に形成され、前記共通パッドと前記個別パッドとを分断する分断部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、凹部内に形成された共通パッド及び接続面に形成された個別パッドに共通側外部配線及び個別側外部配線をそれぞれ接続することで、アクチュエータプレートにおいて、第1方向の一端側からアクチュエータプレート(共通パッド及び個別パッド)と個別側外部配線及び共通側外部配線との接続ができる。これにより、従来のようにアクチュエータプレートの裏面上に形成された個別パッドや共通パッドまで個別電極や共通電極を引き回す構成に比べて配線パターンの簡素化を図ることができる。
また、共通パッドを凹部内に形成することで、例えばアクチュエータプレートの表面に形成された共通パッドに対して第1方向の一端側から共通側外部配線に接続する場合に比べ、共通側外部配線と共通パッドとの接触面積を確保できる。これにより、電気的信頼性を確保できる。
そして、共通パッド及び個別パッドと個別側外部配線及び共通側外部配線との接続を、アクチュエータプレートに対して第1方向の一端側から行うことで、アクチュエータプレートを厚さ方向で簡単に積層することができる。この場合、インクジェットヘッド自体を複数用いて多ノズル化を図る場合に比べて小型化を図った上で、多ノズル化を図ることができる。
【0011】
本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記アクチュエータプレートのうち、隣り合う前記ダミーチャネル間に位置する部分には、前記アクチュエータプレートにおける第1方向の一端側に向けて開放されるとともに、前記一端面に対して第1方向の他端側に窪む接続溝が形成され、前記接続溝の内面のうち、第1方向の一端側に向く面が前記接続面を構成していてもよい。
この構成によれば、接続溝の内面のうち、第1方向の一端側に向く面が接続面を構成しているので、個別パッドがアクチュエータプレートの一端面に対して一段窪んだ位置に配置される。これにより、個別パッドと周辺部材との干渉を抑制し、個別パッドを保護できる。
【0012】
本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記ダミーチャネルの溝深さが前記接続溝の溝深さよりも深くなっていてもよい。
この構成によれば、ダミーチャネルの溝深さが接続溝の溝深さよりも深くなっているので、例えば接続面に対して斜め蒸着により個別パッドを形成する場合に、ダミーチャネルの底面に電極材料が付着し難くなる。その結果、電極形成工程の後、例えばダミーチャネルの底面に付着した電極材料を除去する除去工程を行う必要がないので、製造効率の向上を図ることができる。
【0013】
本発明に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記共通側外部配線には、前記凹部内に収容されるとともに、前記凹部内で前記共通パッドに接続されるバンプが形成されていてもよい。
この構成によれば、共通側外部配線と共通パッドとの電気的信頼性が確保し易くなる。
【0014】
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法において、前記電極形成工程の前段に、前記アクチュエータプレートの前記表面上において、隣り合う前記ダミーチャネル間に位置する部分に、第1方向の一端側に向けて開放された前記凹部を形成する凹部形成工程を有していてもよい。
この構成によれば、電極形成工程の前段に凹部を形成することで、電極形成工程において各チャネルの内側面と同時に凹部の内面に共通パッドとなる電極材料を成膜できる。そして、共通パッドを凹部内に形成することができるので、例えばアクチュエータプレートの表面に形成された共通パッドを第1方向の一端側から共通側外部配線に接続する場合に比べ、共通側外部配線と共通パッドとの接触面積を確保できる。これにより、電気的信頼性を確保できる。
【0015】
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法において、前記電極形成工程の前段に、前記アクチュエータプレートが第1方向で連なるウエハの表面のうち前記アクチュエータプレート間に位置する部分に、第2方向に沿って延びるとともに前記ダミーチャネルと交差する横断溝を形成する横断溝形成工程を有し、前記電極形成工程の後段に、前記ウエハのうち、前記横断溝間に位置する部分を切断して前記アクチュエータプレート毎に個片化する個片化工程を有していてもよい。
この構成によれば、ウエハレベルでの作業を行うことができるので、製造効率の向上を図ることができる。また、電極形成工程の前段に横断溝を形成しておくことで、電極形成工程において各チャネルの内側面と同時に横断溝の内面にも電極材料を成膜できる。そして、横断溝を境にウエハを個片化することで、第1方向の一端側を向く接続面(接続溝)に個別パッドが形成されたアクチュエータプレートを取り出すことができる。この場合、個片化後に個別パッドを別で形成する場合に比べて更なる製造効率の向上を図ることができる。
【0016】
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法において、前記電極形成工程の前段に、前記アクチュエータプレートが第1方向で連なるウエハの表面のうち前記アクチュエータプレート間に位置する部分に、第2方向に沿って延びるとともに前記ダミーチャネルと交差する横断溝を第1方向に間隔をあけて2本形成する横断溝形成工程を有し、前記電極形成工程の後段に、前記ウエハのうち、前記2本の横断溝間に位置する隔壁を除去するように前記ウエハを切断して前記アクチュエータプレート毎に個片化する個片化工程を有していてもよい。
この構成によれば、ウエハレベルでの作業を行うことができるので、製造効率の向上を図ることができる。また、電極形成工程の前段に横断溝を形成しておくことで、電極形成工程において各チャネルの内側面と同時に横断溝の内面にも電極材料を成膜できる。そして、横断溝を境にウエハを切断することで、第1方向の一端側を向く接続面(接続溝)に個別パッドが形成されたアクチュエータプレートを取り出すことができる。この場合、個片化後に個別パッドを別で形成する場合に比べて更なる製造効率の向上を図ることができる。
しかも、1本の横断溝間でウエハを分離する構成に比べて、各横断溝の溝幅を狭くすることができる。そのため、電極形成工程において、斜め蒸着により横断溝内に電極材料を成膜する場合に、横断溝の溝幅や溝深さによる蒸着深さのばらつきを抑制できる。
【0017】
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法において、前記電極形成工程では、前記アクチュエータプレートを厚さ方向から見た平面視において、第1方向及び第2方向それぞれに交差する方向から前記アクチュエータプレートの前記表面に対して斜め蒸着を行ってもよい。
この構成によれば、ウエハの表面に対して第1方向及び第2方向それぞれに対して交差する方向から斜め蒸着を行うことで、第1方向又は第2方向に沿って斜め蒸着を行う場合に比べて、ダミーチャネルと横断溝とのなす角部に電極材料が堆積し易くなる。そのため、個別電極及び個別パッド間の電気的信頼性を確保できる。
【0018】
本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法において、前記チャネル形成工程及び前記横断溝形成工程では、前記電極形成工程において前記ダミーチャネルの底面に前記電極材料が堆積しないように前記ダミーチャネル及び前記横断溝の溝幅及び溝深さを設定してもよい。
この構成によれば、電極形成工程の後、例えばダミーチャネルの底面に付着した電極材料を除去する除去工程を行う必要がないので、製造効率の向上を図ることができる。
【0019】
本発明に係る液体噴射装置は、上記本発明に係る液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明に係る液体噴射ヘッドを備えているため、簡素化を図るとともに、小型化を図った上で多ノズル化を実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、配線パターンの簡素化を図るとともに、小型化を図った上で多ノズル化を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、本発明の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置の一例として、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0023】
[プリンタ]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、プリンタ1は、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送機構2,3と、被記録媒体Sにインク滴を噴射するインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)4と、インクジェットヘッド4にインクを供給するインク供給手段5と、被記録媒体Sの搬送方向(主走査方向)と直交する方向(副走査方向)にインクジェットヘッド4を走査させる走査手段6と、を備えている。なお、以下の説明においては、上述した主走査方向をX方向、副走査方向をY方向、そしてX方向、及びY方向に直交する方向をZ方向として説明する。
【0024】
一対の搬送機構2,3は、それぞれY方向に延びるグリッドローラ2a,3aと、グリッドローラ2a,3aとそれぞれに平行に延びるピンチローラ2b,3bと、グリッドローラ2a,3aをその軸回りに回転動作させるモータ等の図示しない駆動機構と、を備えている。
【0025】
インク供給手段5は、インクが収容されたインクタンク10と、インクタンク10とインクジェットヘッド4とを接続するインク配管11と、を備えている。インクタンク10は、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクが収容されたインクタンク10Y,10M,10C,10Bを有している。インク配管11は、例えば可撓性を有するフレキシブルホースであり、インクジェットヘッド4を支持するキャリッジ16の動作(移動)に追従可能とされている。なお、インクタンク10は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクが収容されたインクタンク10Y,10M,10C,10Bに限られるものではなく、さらに多色のインクを収容したインクタンクを備えていてもよく、単数であってもよい。
【0026】
走査手段6は、Y方向に延び、かつX方向に間隔をあけて互いに平行に配置された一対のガイドレール14,15と、一対のガイドレール14,15に沿って移動可能に配置されたキャリッジ16と、キャリッジ16をY方向に移動させる駆動機構17と、を備えている。
駆動機構17は、一対のガイドレール14,15の間に配置され、Y方向に間隔をあけて配置された一対のプーリ18と、一対のプーリ18間に巻回されてY方向に走行する無端ベルト19と、一方のプーリ18を回転駆動させる駆動モータ20と、を備えている。
【0027】
キャリッジ16は、無端ベルト19に連結されており、一方のプーリ18の回転駆動による無端ベルト19の移動に伴ってY方向に移動可能とされている。また、キャリッジ16には、複数のインクジェットヘッド4がY方向に並んだ状態で搭載されている。図示の例では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各インクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド4(すなわち、インクジェットヘッド4Y,4M,4C,4B)がキャリッジ16に搭載されている。なお、上述した搬送機構2,3及び走査手段6により、インクジェットヘッド4と被記録媒体Sとを相対的に移動させる移動機構を構成している。
【0028】
(インクジェットヘッド)
次に、上述したインクジェットヘッド4について詳述する。
図2は、インクジェットヘッド4の斜視図である。なお、上述した各インクジェットヘッド4は、供給されるインクの色以外は何れも同一の構成からなるため、以下の説明では、一のインクジェットヘッド4について説明する。
図2に示すように、インクジェットヘッド4は、キャリッジ16に固定される固定プレート21と、この固定プレート21上に固定された吐出部22と、インク供給手段5から供給されるインクを、吐出部22の後述する共通インク室71にさらに供給するインク供給部23と、吐出部22に駆動電圧を印加するヘッド駆動部24と、を備えている。
【0029】
インクジェットヘッド4は、駆動電圧が印加されることで、各色のインクを所定の吐出量で吐出する。このとき、インクジェットヘッド4が走査手段6によりY方向に移動することで、被記録媒体Sにおける所定範囲に記録を行うことができる。また、上述した走査を搬送機構2,3により被記録媒体SをX方向に搬送しながら繰り返し行うことで、被記録媒体Sの全体に記録を行うことが可能となる。
【0030】
固定プレート21には、アルミ等の金属製の支持プレート25がZ方向に沿って起立した状態で固定されているとともに、吐出部22にインクを供給する流路部材26が固定されている。支持プレート25には、インクを貯留する貯留室を内部に有する圧力緩衝器27が支持されている。圧力緩衝器27は、上述したインク配管11を通してインクタンク10に接続される一方、インク連結管28を通して流路部材26に接続されている。この場合、圧力緩衝器27は、インク配管11を通してインクが供給されると、インクを内部の貯留室内に一旦貯留した後、所定量のインクをインク連結管28及び流路部材26を通して吐出部22に供給する。なお、これら流路部材26、圧力緩衝器27及びインク連結管28により、上述したインク供給部23を構成している。
【0031】
また、支持プレート25には、吐出部22を駆動するための集積回路等の制御回路31が搭載されたIC基板32が取り付けられている。このIC基板32は、フレキシブルプリント基板33(以下、FPC33という)を介して、吐出部22に電気的に接続されている。そして、これら制御回路31が搭載されたIC基板32、及びFPC33により、上述したヘッド駆動部24を構成している。
【0032】
(吐出部)
続いて、吐出部22について詳細に説明する。
図3は吐出部22をZ方向の一端側から見た斜視図であり、
図4は吐出部22をZ方向の他端側から見た分解斜視図である。
図5は
図3のV−V線に沿う断面図であり、
図6は
図3のVI−VI線に沿う断面図である。
図3〜
図6に示すように、本実施形態の吐出部22は、複数のノズル孔(第1ノズル孔41a及び第2ノズル孔41b)からなるノズル列42a,42bが二列に亘って形成された二列タイプの吐出部22である。具体的に、吐出部22は、Y方向に複数段積層された第1ヘッドチップ40A及び第2ヘッドチップ40Bと、第1ヘッドチップ40A及び第2ヘッドチップ40Bにまとめて固定されたノズルプレート44と、を備えている。なお、各ヘッドチップ40A,40Bは、後述する吐出チャネル51からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプとされている。また、以下の説明では、主に第1ヘッドチップ40Aについて説明し、第2ヘッドチップ40Bにおける第1ヘッドチップ40Aと対応する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。なお、以下の説明では、Y方向のうち一端側(第1ヘッドチップ40A側)を表側、他端側(第2ヘッドチップ40B側)を裏側とし、Z方向のうち一端側(ノズルプレート44と反対側)を後側、他端側(ノズルプレート44側)を前側として説明する。
【0033】
第1ヘッドチップ40Aは、Y方向に積層されたアクチュエータプレート45及びカバープレート46を主に備えている。
アクチュエータプレート45は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料で形成され、その分極方向が厚さ方向(Y方向)に沿って一方向に設定されている。このアクチュエータプレート45における表面45a上には、表面45aで開口する複数のチャネル51,52が形成されている。
【0034】
各チャネル51,52は、Z方向(第1方向)に直線状、かつX方向(第2方向)に等間隔に形成されるとともに、圧電体(アクチュエータプレート45)からなる駆動壁53によってそれぞれ画成されている。具体的に、複数のチャネル51,52は、インクが充填される吐出チャネル(噴射チャネル)51と、インクが充填されないダミーチャネル52と、を有している。そして、これら吐出チャネル51及びダミーチャネル52は、X方向で交互に並んで配列されている。
【0035】
図4、
図5に示すように、吐出チャネル51は、後側端部がアクチュエータプレート45内で終端し、前側端部がアクチュエータプレート45における前側端面で開口している。具体的に、吐出チャネル51は、前側端部に位置し、溝深さが一様とされた延在部51aと、延在部51aにおける後側端部に連設され、後側に向かうに従い溝深さが浅くなる切り上がり部51bと、を有している。
ダミーチャネル52は、アクチュエータプレート45をZ方向に貫通し、Z方向の両端部がアクチュエータプレート45におけるZ方向の両端面でそれぞれ開口している。なお、図示の例において、ダミーチャネル52はZ方向の全体に亘って溝深さが一様になっている。
【0036】
アクチュエータプレート45のうち、吐出チャネル51よりも後方に位置する部分(以下、尾部という)は、後側に向かうに従い裏側に向けて段々と下がる階段状とされている。具体的に、アクチュエータプレート45には、表面45aに対して裏側に一段窪む分断溝(分断部)54と、分断溝54の後側端縁に連なるとともに、分断溝54からさらに裏側に窪む接続溝(接続面)55と、が配設されている。
【0037】
分断溝54は、X方向から見た側面視でL字状を呈し、アクチュエータプレート45のうち、表面45a及び後側端面(一端面)がなす角部を切除するように形成されている。分断溝54は、その表側端縁がアクチュエータプレート45の表面45aに後側から連なっている。また、分断溝54における底面の後側端縁は、接続溝55の表側端縁に前側から連なっている。
接続溝55は、X方向から見た側面視でL字状を呈し、アクチュエータプレート45の表面45a及び後側端面に向けて開放されている。接続溝55の溝深さ(アクチュエータプレート45の表面45aから接続溝55の底面までのY方向における長さ)は、ダミーチャネル52の溝深さよりも浅くなっている。したがって、接続溝55の底面は、ダミーチャネル52の底面よりも表側に位置している。
【0038】
アクチュエータプレート45における各尾部の表面45aには、浅溝部(凹部)61が各別に形成されている。各浅溝部61は、前側端部がアクチュエータプレート45内における吐出チャネル51よりも後方で終端し、後側端部が分断溝54内に開口している。浅溝部61は、Y方向から見た平面視において、溝幅が各吐出チャネル51と同等とされるとともに、対応する吐出チャネル51とX方向で同等の位置に配設されている。また、浅溝部61の前側端部は、X方向から見た側面視で円弧状を呈し、後側に向かうに従い漸次溝深さが深くなっている。図示の例において、浅溝部61は、その最大溝深さが吐出チャネル51の延在部51aや分断溝54の溝深さよりも浅くなっている。なお、浅溝部61は、FPC33の後述するバンプ85が収容可能な大きさであれば、溝深さや溝幅等は適宜設計変更が可能である。
【0039】
アクチュエータプレート45の駆動壁53のうち、各吐出チャネル51を画成する面(吐出チャネル51の内面)には、共通電極62が形成されている。共通電極62は、Y方向における幅が吐出チャネル51の半分程度とされ、各吐出チャネル51の内面のうち、X方向で対向する内側面、及び切り上がり部51bの底面上において、表側端縁から中間部分に至る範囲に形成されている。
アクチュエータプレート45における尾部の表面45a上には、共通電極62に接続される共通配線63が形成されている。共通配線63は、Z方向に沿って延びる帯状とされ、その前側端部が吐出チャネル51の切り上がり部51bを取り囲み、吐出チャネル51内の共通電極62に接続されている。共通配線63の後側端部は、浅溝部61の前側端部を取り囲んでいる。
【0040】
浅溝部61の内面には、共通パッド64が形成されている。共通パッド64は、上述した共通配線63及びFPC33間を接続するものであって、浅溝部61の内面全体に形成されている。共通パッド64は、その前側端部がアクチュエータプレート45の表面45aと浅溝部61の表側端縁との間で共通配線63に接続されている。一方、共通パッド64の後側端縁は、浅溝部61の後側端縁に一致している。
【0041】
図4、
図6に示すように、アクチュエータプレート45の駆動壁53のうち、各ダミーチャネル52を画成する面(ダミーチャネル52の内面)には、個別電極66が各別に形成されている。これら個別電極66は、Y方向における幅がダミーチャネル52の半分程度とされ、各ダミーチャネル52の内面のうち、X方向で対向する内側面において、表側端縁から中間部分に至る範囲に形成されている。この場合、各個別電極66のうち、同一のダミーチャネル52内で対向する個別電極66同士は互いに電気的に分離されている。なお、図示の例において、個別電極66は、ダミーチャネル52の後側端部において、内側面におけるY方向の中間部分よりも底面側に位置する部分まで形成されている。
【0042】
図3、
図5に示すように、アクチュエータプレート45の上述した接続溝55内には、吐出チャネル51を挟んでX方向で対向する個別電極66同士を接続するとともに、上述したFPC33が接続される個別パッド67が形成されている。個別パッド67は、接続溝55の内面全体に形成されている。個別パッド67のうちX方向の一端部(
図3における右側)は、吐出チャネル51に対してX方向の右側に位置するダミーチャネル52内において、X方向の他端側(
図3における左側)に形成された個別電極66に接続されている。一方、個別パッド67の左側端部は、吐出チャネル51に対して左側に位置するダミーチャネル52内において、右側に形成された個別電極66に接続されている。
【0043】
ここで、上述した分断溝54の内面には、電極材料は形成されておらず、共通パッド64と、個別電極66及び個別パッド67と、の間を分断している。分断溝54の寸法(溝深さやZ方向の幅等)は、共通パッド64と個別電極66及び個別パッド67との間を分断し、かつ個別電極66と個別パッド67との間を分断しない大きさであれば適宜設計変更が可能である。図示の例において、分断溝54の溝深さ(アクチュエータプレート45の表面45aから分断溝54の底面までのY方向における長さ)は、接続溝55の溝深さよりも浅く、ダミーチャネル52の溝深さの半分程度とされている。
【0044】
図3〜
図6に示すように、カバープレート46は、Y方向から見た平面視外形がアクチュエータプレート45と同等の外形を有する板状とされ、その裏面46aがアクチュエータプレート45の表面45a上に接着されて各チャネル51,52を閉塞している。
【0045】
カバープレート46は、表面46b側に形成された共通インク室71と、裏面46a側に形成されて共通インク室71及び各吐出チャネル51間を各別に連通させる複数のスリット72と、を有している。
共通インク室71は、カバープレート46における後側端部に位置して裏側に向けて窪む溝であり、X方向に延設されている。共通インク室71は、上述した流路部材26内に連通し、流路部材26内のインクが流通するよう構成されている。
【0046】
スリット72は、共通インク室71内において、吐出チャネル51の切り上がり部51bとY方向で重なる位置に形成され、カバープレート46をY方向に貫通している。すなわち、上述した共通インク室71は、スリット72を通して各吐出チャネル51内にまとめて連通する一方、ダミーチャネル52には連通していない。なお、スリット72は、X方向における幅が吐出チャネル51と同等に形成されている。
【0047】
第2ヘッドチップ40Bは、上述した第1ヘッドチップ40Aと同様にアクチュエータプレート45及びカバープレート46がY方向に積層されて構成されている。この場合、第2ヘッドチップ40Bは、カバープレート46の表面46bを第1ヘッドチップ40Aにおけるアクチュエータプレート45の裏面45bに向けた状態で第1ヘッドチップ40Aに接合されている。すなわち、本実施形態の吐出部22は、アクチュエータプレート45及びカバープレート46が交互に複数枚積層された構成とされている。
【0048】
第2ヘッドチップ40Bの吐出チャネル51及びダミーチャネル52は、第1ヘッドチップ40Aの吐出チャネル51及びダミーチャネル52の配列ピッチに対して半ピッチずれて配列され、各ヘッドチップ40A,40Bの吐出チャネル51同士、及びダミーチャネル52同士が千鳥状に配列されている。すなわち、第1ヘッドチップ40Aの吐出チャネル51、及び第2ヘッドチップ40Bのダミーチャネル52同士がY方向で対向し、第1ヘッドチップ40Aのダミーチャネル52、及び第2ヘッドチップ40Bの吐出チャネル51同士がY方向で対向している。
【0049】
なお、各ヘッドチップ40A,40Bのうち、X方向の最外に位置するチャネル(ダミーチャネル52)よりも外側に位置する部分(非吐出領域)には、各ヘッドチップ40A,40Bの共通インク室71間を接続する図示しない連通孔が形成されている。連通孔は、各アクチュエータプレート45のうち、カバープレート46間に位置するアクチュエータプレート45(第1ヘッドチップ40A側のアクチュエータプレート45)をY方向に貫通するとともに、両端部が各カバープレート46において共通インク室71で各別に開口している。したがって、流路部材26を通して第1ヘッドチップ40A(共通インク室71)内に流入したインクが、連通孔を通して第2ヘッドチップ40B(共通インク室71)内に流入するようになっている。
【0050】
図5、
図6に示すように、FPC33は、いわゆるバンプFPCであって、その延在方向の一端部が吐出部22における後側端面を覆うように吐出部22に接続されている。具体的に、FPC33は、個別パッド67に各別に接続される複数の個別電極用配線(個別側外部配線)81と、共通パッド64に接続される共通電極用配線(共通側外部配線)82と、を有している。
【0051】
各個別電極用配線81は、個別パッド67に接続される個別用ランド部83と、個別用ランド部83から引き出された図示しない引出部と、を有している。各個別用ランド部83は、接続溝55内において各ヘッドチップ40A,40Bの対応する個別パッド67に図示しない異方性導電膜(ACF)を介して圧着されている。引出部は、その一端部が個別用ランド部83に接続され、他端部がIC基板32に接続されている。
【0052】
共通電極用配線82は、各共通パッド64に接続されるバンプ85と、バンプ85から各別に引き出された図示しない引出部と、を有している。
バンプ85は、FPC33のうち、各浅溝部61とZ方向で対向する部分に形成され、前側に向けて突出している。バンプ85は、上述した分断溝54を通して浅溝部61内に各別に収容され、浅溝部61内において共通パッド64に電気的に接続されている。引出部は、その一端部がバンプ85に接続され、他端部が図示しない集合部にまとめて接続されている。共通電極用配線82は、集合部を介してIC基板32に接続されている。
【0053】
図4〜
図6に示すように、ノズルプレート44は、厚さが例えば数十μm程度とされたフィルム材であって、各ヘッドチップ40A,40Bに前側端面全体を覆うように接着されている。ノズルプレート44には、X方向に間隔をあけて並設された複数のノズル孔(第1ノズル孔41a及び第2ノズル孔41b)からなるノズル列(第1ノズル列42a及び第2ノズル列42b)が2列配設されている。
【0054】
第1ノズル列42aは、ノズルプレート44をZ方向に貫通する複数の第1ノズル孔41aを有し、これら第1ノズル孔41aがX方向に間隔をあけて一直線上に並んで構成されている。これら第1ノズル孔41aは、上述した第1ヘッドチップ40Aの吐出チャネル51内に連通している。具体的に、第1ノズル孔41aは、ノズルプレート44のうち、第1ヘッドチップ40Aにおける吐出チャネル51のY方向の中央部に位置する部分に形成され、吐出チャネル51と同ピッチで形成されている。
【0055】
第2ノズル列42bは、ノズルプレート44をZ方向に貫通する複数の第2ノズル孔41bを有し、上述した第1ノズル列42aと平行に配設されている。各第2ノズル孔41bは、上述した第2ヘッドチップ40Bの吐出チャネル51内に連通している。具体的に、第2ノズル孔41bは、ノズルプレート44のうち、第2ヘッドチップ40Bにおける吐出チャネル51のY方向の中央部に位置する部分に形成され、吐出チャネル51と同ピッチで形成されている。したがって、各ダミーチャネル52は、ノズル孔41a,41bには連通しておらず、ノズルプレート44により前側から覆われている。
【0056】
[プリンタの動作方法]
次に、上述したように構成されたプリンタ1を利用して、被記録媒体Sに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
なお、初期状態として、
図1に示す4つのインクタンク10にはそれぞれ異なる色のインクが十分に封入されているものとする。
このような初期状態のもと、プリンタ1を作動させると、搬送機構2,3のグリッドローラ2a,3aが回転することで、これらグリッドローラ2a,3a及びピンチローラ2b,3b間に被記録媒体SをX方向に向けて搬送する。また、これと同時に駆動モータ20がプーリ18を回転させて無端ベルト19を走行させる。これにより、キャリッジ16がガイドレール14,15にガイドされながらY方向に往復移動する。
そしてこの間に、各インクジェットヘッド4より4色のインクを被記録媒体Sに適宜吐出させることで、文字や画像等の記録を行うことができる。
【0057】
ここで、各インクジェットヘッド4の動きについて、以下に詳細に説明する。
インクジェットヘッド4では、共通電極62が基準電位GND、個別電極66が駆動電位VddとなるようにFPC33を介して各電極62,66間に電圧を印加する。すると、吐出チャネル51を画成する2つ駆動壁53に厚み滑り変形が生じ、これら2つの駆動壁53が吐出チャネル51にダミーチャネル52側へ突出するように変形する。すなわち、本実施形態のアクチュエータプレート45は分極方向が一方向であり、電極62,66が駆動壁53のY方向における中間部分までしか形成されていない。そのため、各電極62,66間に電圧を印加することで、駆動壁53におけるY方向の中間部分を中心にしてV字状に屈曲変形する。これにより、吐出チャネル51があたかも膨らむように変形する。
【0058】
このように、2つの駆動壁53の圧電厚み滑り効果による変形によって、吐出チャネル51の容積が増大する。そして、吐出チャネル51の容積が増大したことにより、共通インク室71内に貯留されたインクが吐出チャネル51内に誘導される。そして、吐出チャネル51の内部に誘導されたインクは、圧力波となって吐出チャネル51の内部に伝播し、この圧力波がノズル孔41a,41bに到達したタイミングで、電極62,66間に印加した電圧をゼロにする。これにより、駆動壁53が復元し、一旦増大した吐出チャネル51の容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出チャネル51の内部の圧力が増加し、インクが加圧される。その結果、液滴状のインクがノズル孔41a,41bを通って外部に吐出されることで、上述したように被記録媒体Sに文字や画像等を記録することができる。
【0059】
[吐出部の製造方法]
次に、上述した吐出部22の製造方法について説明する。以下の説明では、複数のアクチュエータプレート45がZ方向で連なるアクチュエータウエハ101と、複数のカバープレート46がZ方向で連なるカバーウエハ102と、を接合してウエハ接合体103を形成し、このウエハ接合体103を切断することにより複数の吐出部22を一括して製造する方法について説明する。
本実施形態の吐出部22の製造方法は、主にアクチュエータウエハ作製工程と、カバーウエハ作製工程と、組立工程と、を有している。そのうち、アクチュエータウエハ作製工程及びカバーウエハ作製工程は、並行して実施することが可能である。
【0060】
<アクチュエータウエハ作製工程>
図7は、アクチュエータウエハ作製工程(マスク形成工程)を説明するための工程図であって、アクチュエータウエハ101の平面図である。また、
図8は
図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
図7、
図8に示すように、アクチュエータウエハ作製工程では、まずアクチュエータウエハ101の表面101aに後の電極形成工程で用いるマスク105を形成する(マスク形成工程)。具体的には、まず例えば感光性ドライフィルム等のマスク材料をアクチュエータウエハ101の表面101aに貼り付ける。その後、フォトリソグラフィ技術を用いてマスク材料をパターニングすることで、マスク材料のうち上述した共通配線63の形成領域に位置する部分のマスク材料を除去する。これにより、共通配線63の形成領域に位置する部分に開口部105aを有するマスク105が形成される。
【0061】
図9は、ダイシングライン形成工程を説明するための工程図であって、アクチュエータウエハ101の平面図である。また、
図10は
図9のX−X線に沿う断面図である。なお、
図9以降では、上述したマスク105(開口部105a)を鎖線で示している。
続いて、
図9、
図10に示すように、ダイサー(不図示)を用いた切削加工等により、後に吐出チャネル51となる第1ダイシングライン110を形成する(第1ダイシングライン形成工程(チャネル形成工程))。具体的には、アクチュエータウエハ101に対して表面101a側からダイサーを進入させるとともに、ダイサーをZ方向に走行させる。これにより、アクチュエータウエハ101がマスク105とともに切削される。その後、ダイサーを所定量走行させた後、アクチュエータウエハ101からダイサーを退避させる。これにより、第1ダイシングライン110が形成される。
【0062】
このとき、X方向から見た側面視において、第1ダイシングライン110のZ方向における両端部は、上述した切り上がり部51bに相当する部分であって、ダイサーの曲率半径に倣った円弧状とされる。なお、第1ダイシングライン110のZ方向における長さ(ダイサーの走行量)は、吐出チャネル51(延在部51a)の2つ分以上の長さに設定されている。そして、第1ダイシングライン形成工程では、上述した動作を、アクチュエータウエハ101に対してZ方向及びX方向に間隔をあけて繰り返し行い、複数の第1ダイシングライン110を形成する。すなわち、アクチュエータウエハ101は、アクチュエータプレート45における後側端部同士及び前側端部同士が向かい合った状態でそれぞれ連なっている。
【0063】
次に、後にダミーチャネル52となる第2ダイシングライン111を形成する(第2ダイシングライン形成工程(チャネル形成工程))。具体的には、アクチュエータウエハ101における第1ダイシングライン110に対してX方向の両側に位置する部分にダイサーを進入させ、アクチュエータウエハ101におけるZ方向の全体に亘ってダイサーを走行させる。これにより、アクチュエータウエハ101がマスク105とともに切削される。本実施形態において、ダイサーによる加工深さはZ方向の全体に亘って一様とされている。
【0064】
次に、後に浅溝部61となる第3ダイシングライン112を形成する(第3ダイシングライン形成工程(凹部形成工程))。具体的には、アクチュエータウエハ101のうち、Z方向で隣り合う第1ダイシングライン110間に位置する部分にダイサーを進入させ、ダイサーをZ方向に所定量走行させる。これにより、アクチュエータウエハ101がマスク105とともに切削される。このとき、X方向から見た側面視において、第3ダイシングライン112のZ方向における両端部はダイサーの曲率半径に倣った円弧状とされる。なお、第3ダイシングライン112のZ方向における長さは、浅溝部61の2倍よりも長くなっている。また、各ダイシングライン110〜112を形成する順番は、適宜変更が可能である。例えば第1ダイシングライン110と第3ダイシングライン112とを同じダイサーを用いて同一工程で形成しても構わない。
【0065】
図11は、横断溝形成工程を説明するための工程図であって、アクチュエータウエハ101の平面図である。
図12は
図11のXII−XII線に沿う断面図である。
続いて、
図11、
図12に示すように、アクチュエータウエハ101をX方向に横断する横断溝115を形成する(横断溝形成工程)。具体的には、アクチュエータウエハ101のうち、Z方向における第3ダイシングライン112の中間部分に対応する位置に表面101aからダイサーを進入させ、アクチュエータウエハ101におけるX方向の全体に亘ってダイサーを走行させる。これにより、第2ダイシングライン111及び第3ダイシングライン112に直交し、かつ第3ダイシングライン112をZ方向で半分に分割する横断溝115が形成される。
【0066】
なお、上述したチャネル形成工程及び横断溝形成工程では、後述する電極形成工程において、第1,2ダイシングライン110,111の底面に電極材料120が堆積しないように第1,2ダイシングライン110,111及び横断溝115の溝幅や溝深さ等の寸法を設定している。図示の例において、横断溝115は、Z方向の溝幅が各ダイシングライン110〜112のX方向の溝幅よりも広く、Y方向の溝深さが第1,2ダイシングライン110,111よりも浅く、第3ダイシングライン112よりも深くなっている。
【0067】
図13は電極形成工程を説明するための工程図であって、アクチュエータウエハの平面図である。
図14は
図13のXIV−XIV線に沿う断面図である。
続いて、
図13、
図14に示すように、後に共通電極62、共通配線63及び共通パッド64、並びに個別電極66及び個別パッド67となる電極材料120をアクチュエータウエハ101に成膜する(電極形成工程)。電極形成工程では、アクチュエータウエハ101における表面101aの法線方向(Y方向)と、蒸着源から放出される電極材料120の蒸着方向(電極材料が堆積する方向)と、を傾けて蒸着を行う、いわゆる斜め蒸着により電極材料120を成膜する。本実施形態では、Y方向から見た平面視において、アクチュエータウエハ101のうち各角部に対応する位置からそれぞれ蒸着工程を行う。すなわち、本実施形態では、各蒸着工程間においてアクチュエータウエハ101と蒸着源とを相対的に90°ずつ回転させ、少なくとも4回の蒸着工程を行う。
【0068】
蒸着工程において、アクチュエータウエハ101の一の角部に対応する位置から斜め蒸着を行うと、各ダイシングライン110〜112及び横断溝115の延在方向(X方向及びZ方向)に対して45°で交差する方向に向けて蒸着源から電極材料120が放出される。蒸着源から放出される電極材料120は、マスク105の開口部105aを通してアクチュエータウエハ101の表面101a上に堆積する。さらに、電極材料120は、各ダイシングライン110〜112及び横断溝115を通して各ダイシングライン110〜112及び横断溝115の内面にも堆積する。
【0069】
蒸着工程では、各ダイシングライン110〜112及び横断溝115の内面のうち、蒸着方向の奥側に位置する部分(蒸着方向と対向する部分)に電極材料120が堆積し、蒸着方向の手前側に位置する部分(蒸着方向と同一方向を向く部分)には電極材料120が堆積されない。そして、上述の蒸着工程を、アクチュエータウエハ101の各角部に対応する位置から行うことで、アクチュエータウエハ101の表面101a上及び各ダイシングライン110〜112及び横断溝115の内面における所望の領域に電極材料120が成膜される。これにより、
図15、
図16に示すように、第1ダイシングライン110及び第2ダイシングライン111の表側端縁から中間部分に至る部分に、共通電極62及び個別電極66となる電極材料120が成膜される。第3ダイシングライン112の内面全体には、共通パッド64となる電極材料120が成膜される。また、横断溝115の内面全体には、個別パッド67となる電極材料120が成膜される。そして、全蒸着工程の終了後、アクチュエータウエハ101上のマスク105を除去する。なお、電極形成工程では、上述した蒸着の他、めっき等の種々の成膜方法を用い、パターニング等によって電極材料120の形成領域に対して選択的に電極材料120を成膜しても構わない。
【0070】
図17は電極分離工程を説明するための工程図であって、アクチュエータウエハの平面図である。
図18は
図17のXVIII−XVIII線に沿う断面図である。
次に、
図17、
図18に示すように、電極材料120のうち、第3ダイシングライン112内に位置する部分と、第2ダイシングライン111内及び横断溝115内に位置する部分と、を分離する電極分離工程(分断工程)を行う。具体的には、アクチュエータウエハ101の表面101aと横断溝115の内面とのなす角部に対してX方向にダイサーを走行させ、後に分断溝54となる分断ダイシングライン121を形成する。このとき、ダイサーの加工深さは、横断溝115内面に形成された電極材料120のうち、底面に位置する部分と、第2ダイシングライン111内に位置する部分と、が分断されないような深さに設定する。これにより、電極材料120のうち、第2ダイシングライン111内に位置する部分と、横断溝115内に位置する部分と、を接続した状態で、横断溝115内の表側に位置する部分が除去される。なお、電極分離工程では、横断溝115よりも幅の狭いダイサーを用い、アクチュエータウエハ101の表面101aと横断溝115の内面とのなす角部を一つずつ除去する。但し、横断溝115よりも幅の広いダイサーを用いてZ方向で対向する両角部をまとめて除去してもよい。
以上により、アクチュエータウエハ作製工程が終了する。
【0071】
<カバーウエハ作製工程>
図19は、カバーウエハ作製工程を説明するための工程図であって、カバーウエハ102の平面図である。
図20は
図19のXX−XX線に相当する断面図である。
図19、
図20に示すように、カバーウエハ作製工程では、まずカバーウエハ102に対して表面102a側から図示しないマスクを通してサンドブラスト等を行い、共通インク室71となる溝部114を形成する(共通インク室形成工程)。このとき、溝部114は、カバーウエハ102において、上述した第1ダイシングライン110のZ方向の両端部に対応する部分に、X方向に沿って形成する。
【0072】
続いて、カバーウエハ102に対して裏面102b側から図示しないマスクを通してサンドブラスト等を行い、共通インク室71内に各別に連通するスリット72を形成する(スリット形成工程)。このとき、スリット72は、カバーウエハ102において、各第1ダイシングライン110のZ方向の両端部に対応する部分に、各別に形成する。なお、カバーウエハ形成工程の各工程は、サンドブラストに限らず、ダイシング等により行っても構わない。
【0073】
<組立工程>
図21は、貼り合わせ工程の工程図であって、ウエハ接合体103の平面図である。
図22は
図21のXXII−XXII線に沿う断面図である。
図21、
図22に示すように、組立工程では、まずアクチュエータウエハ101及びカバーウエハ102を交互に複数枚積層し、ウエハ接合体103とする(貼り合わせ工程)。具体的には、各ヘッドチップ40A,40Bとなるカバーウエハ102及びアクチュエータウエハ101を貼り合わせ、その後第1ヘッドチップ40Aとなるアクチュエータウエハ101に対して第2ヘッドチップ40Bとなるカバーウエハ102を貼り合わせる。
【0074】
図23は個片化工程の工程図であって、ウエハ接合体103の平面図である。
図24は
図23のXXIV−XXIV線に沿う断面図である。
続いて、
図23、
図24に示すように、ウエハ接合体103を各吐出部22ごとに切断する(個片化工程)。具体的には、ウエハ接合体103のうち、Z方向における各第1ダイシングライン110の中間位置、及び各横断溝115の中間位置に対して、ダイサーをX方向に走行させ、ウエハ接合体103を切断する。このとき、第1ダイシングライン110がZ方向の中間位置で分割されるとともに、横断溝115がZ方向の中間位置で分割される。これにより、第1ヘッドチップ40A及び第2ヘッドチップ40Bが積層されてなる吐出部22が一枚のウエハ接合体103から複数切り出される。このとき、吐出部22のうち、上述した横断溝115に対応する部分が、接続溝55を構成する。
【0075】
このように、本実施形態では、浅溝部61内に形成された共通パッド64及び接続溝55に形成された個別パッド67にFPC33を接続することで、アクチュエータプレート45の後側からアクチュエータプレート45とFPC33との接続ができる。これにより、従来のようにアクチュエータプレートの裏面上に形成された個別パッドや共通パッドまで個別電極や共通電極を引き回す構成に比べて配線パターンの簡素化を図ることができる。
また、共通パッド64を浅溝部61内に形成することで、例えばアクチュエータプレートの表面に形成された共通パッドに対して後側からFPCに接続する場合に比べ、FPC33と共通パッド64との接触面積を確保できる。これにより、電気的信頼性を確保できる。
そして、アクチュエータプレート45とFPC33との接続を、アクチュエータプレート45に対して後側から行うことで、ヘッドチップ40A,40BをY方向で簡単に積層することができる。この場合、インクジェットヘッド4自体を複数用いて多ノズル化を図る場合に比べて小型化を図った上で、多ノズル化を図ることができる。
【0076】
特に、本実施形態では、共通電極62及び個別電極66とFPC33との間を接続する各種配線が全てアクチュエータプレート45に形成されている。そのため、例えば両プレート45,46に亘って各種配線を形成する場合と異なり、両プレート45,46の貼り合わせ後に電極材料を成膜する必要がなく、製造効率や歩留まりの向上を図ることができる。
【0077】
また、個別パッド67がアクチュエータプレート45の後側端面に対して一段窪んだ接続溝55の内面に形成されているので、個別パッド67と周辺部材との干渉を抑制し、個別パッド67を保護できる。
【0078】
また、ダミーチャネル52の溝深さが接続溝55の溝深さよりも深くなっているので、例えば斜め蒸着により個別パッド67を形成する場合に、ダミーチャネル52の底面に電極材料120が付着し難くなる。その結果、電極形成工程の後、例えば第2ダイシングライン111(ダミーチャネル52)の底面に付着した電極材料を除去する除去工程を行う必要がないので、製造効率の向上を図ることができる。
【0079】
さらに、FCP33の共通電極用配線82に、アクチュエータプレート45の浅溝部61内に収容されるバンプ85が形成されているため、FPC33と共通パッド64との電気的信頼性が確保し易くなる。このとき、電極形成工程の前段に浅溝部61となる第3ダイシングライン112を形成することで、電極形成工程において第1,2ダイシングライン110,111の内側面と同時に第3ダイシングライン112の内面に共通パッド64となる電極材料120を成膜できる。なお、共通パッド64となる電極材料120は、上述した蒸着の他、めっき等の種々の成膜方法を用い、パターニング等によって共通パッド64の形成領域に対して選択的に電極材料120を成膜しても構わない。
【0080】
また、本実施形態では、ウエハ接合体103から複数の吐出部22を一括して製造することで、ウエハレベルでの作業を行うことができ、製造効率の向上を図ることができる。
このとき、電極形成工程の前段に横断溝115を形成しておくことで、電極形成工程において各ダイシングライン110〜112の内側面と同時に横断溝115の内面にも電極材料120を成膜できる。そして、横断溝115を境にアクチュエータウエハ101を個片化することで、接続溝55に個別パッド67が形成されたアクチュエータプレート45を取り出すことができる。この場合、例えば個片化後に個別パッド67を形成する場合に比べて更なる製造効率の向上を図ることができる。
【0081】
また、電極形成工程において、アクチュエータウエハ101の表面101aに対してX方向及びZ方向それぞれに対して交差する方向から斜め蒸着を行うことで、X方向又はZ方向に沿って斜め蒸着を行う場合に比べて、第2ダイシングライン111と横断溝115とのなす角部に電極材料が堆積し易くなる。そのため、個別電極66及び個別パッド67間の電気的信頼性を確保できる。
【0082】
そして、本実施形態のプリンタ1では、上述したインクジェットヘッド4を備えているため、配線パターンの簡素化を図り、信頼性の高いプリンタ1を提供できる。
【0083】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0084】
例えば、上述した実施形態では、液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であっても構わない。
【0085】
上述した実施形態では、ノズル列42a,42bがそれぞれX方向に沿って直線状に延在している場合について説明したが、これに限らず、例えばノズル列42a,42bが斜めに延在していてもよい。
ノズル孔41a,41bの形状に関しても、円形に限定されるものではない。例えば、三角等の多角形状や、楕円形状や星型形状でも構わない。
上述した実施形態では、各ヘッドチップ40A,40B間において、吐出チャネル51同士及びダミーチャネル52同士が半ピッチずれた千鳥状に配列された構成について説明したが、これに限られない。
【0086】
上述した実施形態では、2つのヘッドチップ40A,40Bが積層された積層タイプの吐出部22について説明したが、これに限らず、
図25に示すようにヘッドチップ40Aが単層の吐出部22としてもよく、また3段以上の積層タイプとしてもよい。なお、ノズル列の列数は、ヘッドチップの積層数に応じて変更される。
【0087】
上述した実施形態では、エッジシュートタイプのインクジェットヘッドを例に挙げて説明したが、この場合に限定されず、吐出チャネル51の長手方向中央に臨むノズル孔からインクを吐出する、いわゆるサイドシュートタイプとしても構わない。
【0088】
上述した実施形態では、X方向及びY方向に交差する方向から斜め蒸着を行う構成について説明したが、これに限らず、X方向又はY方向に沿う方向から斜め蒸着を行っても構わない。
また、
図26に示すように、カバープレート46の後側端部において、X方向でアクチュエータプレート45の浅溝部61と対応する位置に、裏側及び後側に向けて開放され、浅溝部61内に連通するザグリ部150を形成しても構わない。この場合には、共通パッド64とバンプ85との接続作業時において、浅溝部61及びザグリ部150で画成された開口部を通して浅溝部61内にバンプ85を挿入できる。これにより、接続作業の効率化を図ることができる。なお、ザグリ部150は、アクチュエータプレート45におけるX方向の全体に亘って形成されていても構わない。
上述した実施形態では、共通パッド64が形成される凹部として、Z方向に延びる浅溝部61を例にして説明したが、これに限られない。凹部は、少なくともアクチュエータプレート45の後側に向けて開放され、FPC33のバンプ85が収容可能であれば構わない。
上述した実施形態では、バンプ85を介してFPC33と共通パッド64との間を接続する構成について説明したが、これに限られない。
【0089】
上述した実施形態において、各ダイシングライン110〜112よりも幅広の横断溝115を1本形成し、この横断溝115の中間部分でウエハ接合体103を切断する構成について説明したが、これに限られない。例えば
図27、
図28に示すように、アクチュエータウエハ101のうち、Z方向における第3ダイシングライン112の中間部分に、2本の横断溝115を形成しても構わない。そして、個片化工程において、各横断溝115間を仕切る隔壁151よりも幅広のダイサーを用い、隔壁151が除去されるようにダイサーを走行させる。これにより、アクチュエータウエハ101の後側に向けて開放された接続溝55を形成できる。
この構成によれば、1本の横断溝115間でアクチュエータウエハ101を分離する構成に比べて、各横断溝115の溝幅を狭くすることができる。そのため、電極形成工程において、横断溝115の溝幅や溝深さによる蒸着深さのばらつきを抑制できる。
【0090】
上述した実施形態では、ウエハ接合体103から複数の吐出部22を一括で製造する方法について説明したが、これに限らず、吐出部22を一つずつ製造しても構わない。この場合、例えば
図29に示すように、上述した接続溝55を形成せずに、アクチュエータプレート45の後側端面(接続面)上に個別パッド67を直接形成しても構わない。
上述した実施形態では、本発明の分断部として分断溝54を例にして説明したが、これに限らず、アクチュエータプレート45のうち後側を向く面において、共通パッド64と個別電極66及び個別パッド67との間が分断されていれば構わない。
【0091】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。