特許第6473410号(P6473410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6473410-漏液検知線 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473410
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】漏液検知線
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/16 20060101AFI20190207BHJP
【FI】
   G01M3/16 E
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-242157(P2015-242157)
(22)【出願日】2015年12月11日
(65)【公開番号】特開2016-126006(P2016-126006A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年9月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-264465(P2014-264465)
(32)【優先日】2014年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】山村 広太
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 聖司
(72)【発明者】
【氏名】勝矢 利明
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−071741(JP,U)
【文献】 実開平05−038547(JP,U)
【文献】 実開平01−089351(JP,U)
【文献】 実開平05−062838(JP,U)
【文献】 実開平05−071743(JP,U)
【文献】 特開平06−201507(JP,A)
【文献】 特開2004−239619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00 − 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂絶縁層(1b)を導体(1a)に押出被覆した電極線(1)の1対を、吸液層(4)で被覆してなる酸の漏液検知線(P)であって、前記樹脂絶縁層(1b)が、結晶性樹脂と非晶性樹脂のブロック共重合体からなり、前記結晶性樹脂と非晶性樹脂の配合割合を、後者の非晶性樹脂が41wt%以上としたことを特徴とする漏液検知線。
【請求項2】
記電極線(1)の外周にも吸液層(2)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の漏液検知線。
【請求項3】
上記吸液層に酸の漏液の位置検知層(3)を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の漏液検知線。
【請求項4】
上記樹脂絶縁層(1b)が熱可塑性ポリエステルエラストマーであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の漏液検知線。
【請求項5】
上記樹脂絶縁層(1b)がポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエーテル樹脂とからなることを特徴とする請求項4記載の漏液検知線。
【請求項6】
上記酸を塩酸とし、温度:0℃以上、25℃以下において使用することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の漏液検知
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、硫酸、硝酸、塩酸等の酸の漏液を検知する漏液検知線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の酸性液の輸送パイプや貯蔵タンク等に破損が生じてそれらの液の漏洩が生じると、他の設備を腐食したり、人が接触して損傷したりする。このため、その漏洩を知る必要がある。
その漏洩を検知する漏液検知線として、樹脂絶縁層を導体に被覆した電極線の1対を、吸液層で被覆してなる漏液検知線がある(特許文献1、実用新案登録請求の範囲、第1図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−57546号公報
【特許文献2】特公平7−70254号公報
【特許文献3】特開2003−114161号公報
【特許文献4】特開2014−173913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の漏液検知線の電極線は、上記樹脂絶縁層がエステル結合を有する高分子材料から成る(特許文献1の実用新案登録請求の範囲(1)第1行等参照)。
このため、酸の漏液検知は、その漏液が絶縁層を溶かし、対の電極線の間の絶縁厚を低下させるとともに両電極線の間に漏液が亘り(絶縁層に漏液が浸入して)、両電極線の間の電気抵抗が低くなることによって行っている。
このとき、その酸による絶縁層の溶解度合いは、その絶縁層をなす樹脂の組成に影響される。その樹脂の組成割合による溶解度合い等の調整は非常に困難であるため、樹脂の組成割合によって、種々の環境下において、対の電極線の間の絶縁厚を調整するとともに両電極線の間に漏液が亘る度合いを調整するのは困難である。このため、従来では、例えば、温度変化の大きな箇所での漏液検知において、特に、低温において、適切な漏液検知が行えない場合がある。
【0005】
この発明は、この様な実情の下、種々の環境下において、酸の漏液を確実に検知し得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、この発明は、上記対の電極線を被覆する樹脂絶縁層を、結晶性樹脂と非晶性樹脂のブロック共重合体からなるものとしたのである。
通常、結晶性樹脂は流動性がなく、非晶性樹脂は流動性があるため、このブロック共重合体は、非晶性樹脂の配合割合(比率)が増せば、結晶化度が減少して流動性が増してガラス転移温度が低下し、分子の集まりの疎の部分が増えることで、水分等の低分子が吸着し易くなる。
このため、その結晶性樹脂と非晶性樹脂の配合割合によって、その両者のブロック共重合体のガラス転移温度を所要の値とすることができ、この漏液検知線の使用箇所の温度変化の幅に応じて前記配合割合を調整すれば、使用箇所に応じた漏液検知精度の高い漏液検知線を得ることができる。このとき、その漏液が酸であれば、その漏液が樹脂絶縁層に入り込んで溶解して絶縁性をさらに低下させて対の電極線を短絡させる。また、下記試験から、塩酸の検知であれば、使用個所の温度:0℃以上、25℃以下においてその漏液を検知することが好ましい。
なお、非晶性樹脂の配合割合が増せば、樹脂絶縁層が柔らかくなって機械的強度が低下するため、通常における絶縁層の絶縁厚が低下して誤動作する場合が生じる。このため、前記配合割合は、その誤動作も考慮して適宜に設定する。
【0007】
この発明の構成としては、樹脂絶縁層を導体に押出被覆した電極線の1対を、吸液層で被覆してなる酸の漏液検知線において、前記樹脂絶縁層が、結晶性樹脂と非晶性樹脂のブロック共重合体からなる構成を採用することができる。
このとき、上記電極線の外周にも吸液層を設けて吸液性を向上させることができる。また、吸液層に酸の漏液の位置検知層を設ければ、漏液位置を確認できる。その位置検知層は、必ずしも層を成さなくても、例えば、編組であれば、その編組を成す一部の繊維(糸)が位置検知用機能を発揮する場合も含み、位置検知作用のみを発揮するものとしたり、位置検知作用及び吸液作用をも発揮するものとしたりすることができえる。
上記樹脂絶縁層は熱可塑性ポリエステルエラストマーを採用でき、より具体的には、結晶性樹脂であるポリブチレンテレフタレート樹脂と非晶性樹脂であるポリエーテル樹脂とからなるものとし得る。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、以上のように、電極線を被覆する樹脂絶縁層を、結晶性樹脂と非晶性樹脂のブロック共重合体からなるものとしたので、使用箇所に応じた漏液検知精度の高い漏液検知線を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明に係る漏液検知線の一実施形態の断面図
図2】同実施形態の各試験例の検知時間と試験温度との関係図
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明に係る漏液検知線の一実施形態を図1に示し、この実施形態の漏液検知線Pは、樹脂絶縁体(層)1bを導体1aに押出成形被覆し、その外周を絶縁上編組2で被覆して電極線1とし、その電極線1の対を撚り合わせ、その撚り線の外周に内外の編組3、4を設けたものである。
【0011】
導体1bは、銅線等の金属線や炭素繊維束等の種々の導電性物を採用できるが、この実施形態においては、φ0.65mmの銅線を使用した。
絶縁体1bは、結晶性樹脂と非晶性樹脂のブロック共重合体からなるものであれば何れでも良いが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂とポリエーテル樹脂とからなる熱可塑性ポリエステルエラストマーを採用でき、この実施形態においては、東レ・デュポン株式会社:商品名:ハイトレルを使用し、層厚:70μmとした。
【0012】
絶縁上編組2、内部編組3及び外部編組4には、吸液し得る材料からなる編組であれば、何れでも良いが、この実施形態においては、絶縁上編組2:84デシテックスのポリエステル糸を1本持、16打、ピッチ11mmで編組加工したもの、内部編組3:84デシテックスのポリエステル糸を2本持、16打、ピッチ14mmで編組加工したもの、外部編組4:110デシテックスのポリエステル糸を4本持、24打、ピッチ11mmで編組加工したものを採用した。
【0013】
この実施形態の漏液検知線Pにおいて、絶縁体1bとして、下記表1のハイトレルのグレード2751、同5557の2種類のものを試作した。そのグレード2751のハイトレル(実施品1)は、ガラス転移温度:38℃、表面硬さ:75(デュロメーターDスケール)であり、同5557のハイトレル(実施品2)は、同−20℃、同55である。
【0014】
【表1】
【0015】
その実施品1、2の各漏液検知線Pに付、所要温度(試験温度)の恒温室において、所要濃度の硫酸、硝酸及び塩酸を、各漏液検知線Pの鉛直上方から、0.02ml/秒で滴下した時の滴下液の検知時間を表2〜4に示す。その検知時間は、対の電極線1、1の導体1a、1a間に10Vの電圧を印加し、最初の滴下から両導体1a、1a間の絶縁抵抗が2.5kΩ以下に低下するまでの時間とした。また、各試験数は3本とし、検知時間、滴下量及び滴下数はその3本の平均値を示す。
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
【表4】
【0019】
以上の結果を折れ線グラフにしたものを図2に示し、この図2及び表2〜4から、実施品1、2の何れの漏液検知線Pも試験温度が低下するにつれて検知時間が長くなっており、結晶性樹脂(PBT樹脂)と非晶性樹脂(ポリエーテル樹脂)の配合割合において、硫酸98%の試験から、後者が多い場合(実施品2)が、低温度において、酸における検知精度が高いことが理解できる。例えば、実施品2のように、非晶性樹脂を41wt%以上とする。
また、硫酸は、濃度が低い方が検知時間が短くなっており、これに対し、硝酸は、濃度が高い方が検知時間が短くなっている。
さらに、塩酸は、実施品1の漏液検知線Pの場合、25℃を超えると検知が不能になる可能性が高く、また、実施品2の漏液検知線Pの場合であっても、0℃以下の場所においては検知が不能になる可能性が高い。このため、塩酸にあっては、0℃以上、25℃以下で検知するのが好ましいことが分かる。
これらから、被検知酸、その濃度及び使用温度に応じて結晶性樹脂と非晶性樹脂の配合割合を適宜に選定すれば良いことが理解できる。
【0020】
上記実施形態において、内部編組3をポリエステル糸(例えば、白色)等の酸溶解性樹脂とポリエチレン糸(例えば、赤色)等の酸非溶解性樹脂を編み込んだ構造とし、外部編組4はポリエステル糸(例えば、黒色)等の酸溶解性樹脂を編み込んだ構造として各糸が色の異なるものとすれば、この漏液検知線P上に酸が漏洩したとき、ポリエステル(白色および黒色)は酸に溶けるが、ポリエチレン(赤色)は溶けないため、内部編組3の一部(ポリエステル糸)及び外部編組4が溶けてポリエチレン糸が露出して漏洩箇所が赤色になり、視覚的に検知位置を確認することが出来る。この場合、内部編組3は吸液および漏洩箇所の確認の両作用を行うこととなる。
このように、内部編組3の一部を酸非溶解性の糸(繊維)で構成すれば、吸液作用の大きな低下を招くことなく、漏液位置の検知をすることができる。
しかし、吸液作用が担保できる限りにおいて、絶縁上編組2、内部編組3及び外部編組4の一部又は全部を選択的に酸溶解性樹脂(糸)又は酸非溶解性樹脂(糸)としてそれらの色を異ならせることによって位置検知が可能となる。
【0021】
なお、上記実施形態の実施品1、2に限らず、上記樹脂絶縁層が、結晶性樹脂と非晶性樹脂のブロック共重合体からなる漏液検知線であれば、この発明の作用効果を発揮し得ることは勿論である。
また、上記対の電極線1、1に加えて、漏液位置電極線を設けた3心の漏液検知線とすれば、特許文献2〜4等に示される周知の検知手段によってその漏液位置を検出することができる。
さらに、以上の説明は酸の漏液検知に関するものであるが、この発明は、漏洩検知線Pをなす絶縁層等を溶解する苛性ソーダ等のアルカリ液の漏液検知にも採用することも考えられる。
したがって、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0022】
P 漏液検知線
1 電極線
1a 電極線の導体
1b 電極線の樹脂被覆絶縁体
2 電極線の外周編組
3 対の電極線の外周内部編組
4 同外部編組
図1
図2