(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1および第2の増幅反応の結果を定量化することが、前記第1および第2の増幅反応の一方または両方のシグネチャープロファイルを作製することを含む、請求項2に記載の方法。
前記シグネチャープロファイルが、融解温度曲線シグネチャープロファイルおよび蛍光シグネチャープロファイルからなる群から選択される、請求項3に記載のシグネチャープロファイル。
a.前記ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内の前記ドナーDNAポリヌクレオチドを含むトランスジェニック事象を選択することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記蛍光色素が、HEX蛍光色素、FAM蛍光色素、JOE蛍光色素、TET蛍光色素、Cy3蛍光色素、Cy3.5蛍光色素、Cy5蛍光色素、Cy5.5蛍光色素、Cy7蛍光色素およびROX蛍光色素からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
前記蛍光色素が、HEX蛍光色素、FAM蛍光色素、JOE蛍光色素、TET蛍光色素、Cy3蛍光色素、Cy3.5蛍光色素、Cy5蛍光色素、Cy5.5蛍光色素、Cy7蛍光色素およびROX蛍光色素からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
部位特異的ヌクレアーゼによってターゲッティングされた植物事象の迅速なスクリーニング、同定および特性決定のための新規方法をここで考案した。本方法を使用し、ゲノム標的遺伝子座が破壊されているかどうかを調べるための第1の増幅反応によって、ゲノム標的遺伝子座が損なわれていないことを分析することができる。破壊されたゲノム遺伝子座を含有すると同定される事象を、続いて、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内の外因性ドナーDNAポリヌクレオチドの存在を確認する第2の増幅反応によってスクリーニングすることができる。そのようなものとして、多数の植物事象を分析およびスクリーニングして、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内に挿入されたドナーDNAポリヌクレオチドを有する特定の事象を同定および選択することができる。現在開示される主題は、新規スクリーニング方法を利用して選択された、ヌクレアーゼによってターゲッティングされた植物事象を含む植物および植物細胞をさらに含む。
【0024】
部位特異的ヌクレアーゼによるゲノムDNA切断の結果であるゲノム遺伝子座の破壊について、植物事象をスクリーニングするための新規方法が、本明細書において実証される。破壊されたゲノム遺伝子座は、ドナーDNAポリヌクレオチドの存在を含み得るか、または破壊されたゲノム遺伝子座は、挿入および/または欠失(InDelとしても記載される)を含み得る。方法は、スクリーニングアッセイとして、2種の初期増幅反応を利用する。第1の増幅反応は、破壊アッセイであり、これでは、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内に挿入されたドナーDNAポリヌクレオチドの存在が、アンプリコンの不在が、ドナーDNAポリヌクレオチドがターゲッティングされたゲノム遺伝子座内に存在することを示す増幅反応によって同定される。第2の増幅反応は、ドナーDNAポリヌクレオチドによってターゲッティングされたゲノム遺伝子座の3’および/または5’接合部配列をスクリーニングするための「イン−アウト」PCR増幅反応である。3’および/または5’接合部配列を含有する増幅産物の存在が、ドナーDNAポリヌクレオチドが、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内に存在することを示す。
【0025】
2種の別個の増幅反応スクリーニングアッセイ、破壊増幅反応およびイン−アウト増幅反応を配置することによって、多数のターゲッティングされていない事象から、陽性の標的事象を同定する可能性が大きく高まる。破壊増幅反応は、ハイスループット方法での多数のサンプルの迅速分析を可能にするよう設計した。さらに、このアッセイは、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内のドナーDNAポリヌクレオチド挿入またはZFN切断の両方について事象を同定および特性決定できる。イン−アウト増幅反応は、代替分析アプローチを提供する。このアッセイは、3’および5’接合部の存在を同定して、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内に挿入されたドナーDNAポリヌクレオチドの存在を確認するために使用される。イン−アウト増幅反応は、破壊アッセイにおいて同定されたターゲッティングされた事象が、ゲノム遺伝子座内に、完全な、全長のターゲッティングされた挿入部分を実際に含有することを確認するために使用され得る。破壊増幅反応が、イン−アウト増幅反応とともに行われる場合には、まとめられたデータを分析して、ゲノム遺伝子座内のドナーDNAポリヌクレオチドのターゲッティングの制限因子(例えば、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内にドナーDNAポリヌクレオチドを含有する事象をもたらすための制限因子としての、ZFN切断またはドナー挿入)を調べることができる。様々な方法論を有する2種の異なるスクリーニングアッセイを利用することで、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内にドナーDNAポリヌクレオチドを含有する、ターゲッティングされた事象を見出す見込みが増大する。さらに、開示される方法は、次いで、その他の分子確認法によってさらに分析され得るサンプルのサブセットの、迅速かつ効率的な同定を可能にするハイスループットアッセイとして配置され得る。開示されるスクリーニングアッセイは、ターゲッティングされた導入遺伝子挿入事象を同定および獲得するための、高品質の、ハイスループットプロセスを記載する。さらに、方法論は、任意の植物種の分析に容易に適用可能である。
【0026】
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む本願が支配する。文脈によって別に必要とされない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許およびその他の参考文献は、特許または特許公報の特定の節のみが、参照により組み込まれると示されない限り、個々の刊行物または特許出願が各々、具体的に、個別に、参照により組み込まれるよう示されるように、すべての目的のために参照によりその全文が組み込まれる。
【0027】
この開示をさらに明らかにするために、以下の用語、略語および定義を提供する。
【0028】
本明細書において使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「含有する(contains)」または「含有している(containing)」またはその任意のその他の変形は、非排他的である、または制約がないものとする。例えば、要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明確に列挙されていないか、またはこのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品または装置に特有ではないその他の要素を含み得る。さらに、逆の意味が明確に記載されない限り、「または」とは、包含的またはを指し、排他的またはを指さない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれによっても満たされる:Aが真であり(または存在し)、Bは偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)、Bは真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方とも真である(または存在する)。
【0029】
また、本開示の実施形態の要素または成分に先行する不定冠詞「a(1つの)」および「an(1つの)」は、要素または成分の例の数、すなわち、出現の数に関して非制限的であるものとする。したがって、「a(1つの)」および「an(1つの)」は、1つまたは少なくとも1つのを含むと読み取られなくてはならず、要素または成分の単数形の語形はまた、数が単数形であると明白に意図されない限り複数形を含む。
【0030】
用語「発明」または「本発明」は、本明細書において、非制限的用語であり、特定の発明のいずれか単一の実施形態を指すものではなく、本願において開示されるようなすべての可能性ある実施形態を包含する。
【0031】
本明細書において使用される場合、用語「植物」は、限定するものではないが、全植物体および植物の任意の子孫、細胞、組織または一部を含む。
【0032】
ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内に挿入されたドナーDNAポリヌクレオチドの存在を同定する方法が、本明細書に記載される。挿入部分のDNAポリヌクレオチドはまた、「外因性」ポリヌクレオチド、「ドナー」ポリヌクレオチドまたは「分子」または「導入遺伝子」と呼ばれることもあり、それを含むよう意図される。
【0033】
特定の実施形態では、ドナーDNAポリヌクレオチドは、1kbを超える長さ、例えば、2から200kbの間、2から10kbの間(またはその間の任意の値)の配列(例えば、導入遺伝子とも呼ばれるコード配列)を含む。ドナーDNAポリヌクレオチドはまた、少なくとも1つの部位特異的ヌクレアーゼ標的部位を含み得る、例えば、少なくとも1つのZFN、メガヌクレアーゼ、CRISPRまたはTALEN標的部位が、ドナーDNAポリヌクレオチド中に含まれ得る。ドナーDNAポリヌクレオチドは、例えば、1対のZFN、CRISPRまたはTALENの、認識および結合および切断するための、少なくとも1つの標的部位を含み得る。通常、ヌクレアーゼ標的部位は、必要な場合には、介在する導入遺伝子の切断および除去のために、導入遺伝子配列の外側、例えば、導入遺伝子配列の5’または3’である。ヌクレアーゼ切断部位(複数可)は、任意のヌクレアーゼ(複数可)のためのものであり得る。特定の実施形態では、二本鎖ドナーDNAポリヌクレオチド中に含有されるヌクレアーゼ標的部位(複数可)は、ドナーDNAポリヌクレオチドが挿入される内因性ゲノム標的を切断するために使用される同一ヌクレアーゼ(複数可)のためのものである。
【0034】
本明細書において記載されるドナーDNAポリヌクレオチド配列内に含まれる導入遺伝子は、PCRなどの当技術分野で公知の標準技術を使用して、プラスミド、細胞またはその他の供給源から単離され得る。使用するためのドナーDNAポリヌクレオチド配列は、環状スーパーコイルの、環状のほどけた、線形などを含めた様々な種類の形態を含み得る。あるいは、それらは、標準オリゴヌクレオチド合成技術を使用して化学的に合成され得る。さらに、ドナーDNAポリヌクレオチド配列はメチル化されている場合も、メチル化を欠く場合もある。ドナーDNAポリヌクレオチド配列は、細菌もしくは酵母人工染色体(BACまたはYAC)の形態、またはプラスミドベクターとしての形態であり得る。ドナーDNAポリヌクレオチド配列は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)によって植物細胞中に導入されるT鎖由来であり得る。
【0035】
本明細書において記載される二本鎖ドナーDNAポリヌクレオチドは、1つまたは複数の非天然塩基および/または骨格を含み得る。特に、対象の領域における転写静止状態の状態を達成するために、ドナーDNAメチル化シトシンを有するポリヌクレオチド配列の挿入が、本明細書において記載される方法を使用して実施され得る。
【0036】
ドナーDNAポリヌクレオチドは、対象の任意の外因性配列を含み得る。例示的ドナーDNAポリヌクレオチド配列として、それだけには限らないが、任意のポリペプチドコード配列(例えば、cDNA)、プロモーター配列、エンハンサー配列、エピトープタグ、マーカー遺伝子、切断酵素認識部位および種々の種類の発現構築物が挙げられる。マーカー遺伝子として、それだけには限らないが、除草剤耐性(例えば、HPPD耐性、2,4−D耐性、グルホシネート耐性またはグルホサート耐性、加えて、その他の既知除草剤耐性タンパク質)を媒介するタンパク質をコードする配列、着色または蛍光または発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、高感度緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)ならびに増強された細胞増殖および/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロホレートレダクターゼ)をコードする配列が挙げられる。エピトープタグとして、例えば、FLAG、HIS、MYC、TAP、HAまたは任意の検出可能なアミノ酸配列の1つまたは複数のコピーが挙げられる。
【0037】
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」は、単数形の核酸ならびに複数形の核酸、核酸断片、その変異体または誘導体、または構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)およびプラスミドDNA(pDNA)を包含するものとする。ポリヌクレオチドまたは核酸は、非翻訳5’および3’配列およびコード配列を含む全長cDNA配列またはその断片のヌクレオチド配列を含有し得る。ポリヌクレオチドまたは核酸は、非修飾RNAもしくはDNAまたは修飾RNAもしくはDNAであり得る、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドからなり得る。別に指定されない限り、ポリヌクレオチドまたは核酸は、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖、もしくはより典型的には二本鎖、または一本鎖および二本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子からなり得る。これらの用語はまた、ポリヌクレオチドまたは核酸の、化学的に、酵素によって、または代謝によって修飾された形態も包含する。
【0038】
その生来の環境から取り出されているポリヌクレオチドまたは核酸配列は、「単離された」と呼ばれ得る。例えば、異種ポリヌクレオチドまたはベクター中に含有されるグリホサート耐性活性を有するポリペプチドもしくはポリペプチド断片をコードする核酸は、本開示の目的上、単離されていると考えられる。単離ポリヌクレオチドまたは核酸のさらなる例として、異種宿主細胞中に維持される組換えポリヌクレオチドまたは溶液中の精製された(部分的に、または実質的に)ポリヌクレオチドまたは核酸が挙げられる。本開示の実施形態の単離ポリヌクレオチドまたは核酸は、合成によって製造されるこのような分子をさらに含む。DNAのポリマーの形態の単離ポリヌクレオチドまたは核酸は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1つまたは複数のセグメントからなり得る。
【0039】
用語「遺伝子」とは、任意選択で、コード配列に先行する(5’非コード配列)およびそれに続く(3’非コード配列)調節配列を含む、機能的生成物分子、RNAまたはタンパク質のいずれかをコードする核酸配列を指す。
【0040】
本明細書において使用される場合、用語「コード領域」とは、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「適した調節配列」とは、関連するコード配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性または翻訳に影響を及ぼす、コード配列の上流に(5’非コード配列)、その中に、または下流に(3’非コード配列)位置するヌクレオチド配列を指す。調節配列として、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステム−ループ構造が挙げられ得る。
【0041】
本明細書において使用される場合、用語「ポリペプチド」は、単数形の「ポリペプチド」ならびに複数形の「ポリペプチド」およびその断片を包含するものとし、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線的に連結しているモノマー(アミノ酸)からなる分子を指す。用語「ポリペプチド」とは、2個以上のアミノ酸の任意の鎖(単数または複数)を指すものであって、特定の長さまたは大きさの生成物を指すものではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」または2個以上のアミノ酸の鎖(単数または複数)を指すために使用される任意のその他の用語は、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、用語「ポリペプチド」は、任意のこれらの用語の代わりに、または同義的に使用され得る。ポリペプチドは、天然の生物学的供給源から導かれ得るか、組み換え技術によって製造され得るが、必ずしも設計された核酸配列から翻訳されるわけではない。化学合成を含めた任意の方法で作製され得る。
【0042】
「単離された」ポリペプチドまたは断片、その変異体または誘導体は、その天然環境中にはない意図されたポリペプチドである。特定のレベルの精製は必要ではない。したがって、「単離された」への言及は、本明細書に記載されるような「人の手」の関与を表す。例えば、単離されたポリペプチドは、生来のまたは天然の環境から取り出され得る。宿主細胞において発現される組換えポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適した技術によって、分離、分画または部分的もしくは実質的に精製されている生来のまたは組換えポリペプチドがそうであるように、本開示の目的上単離されたと考えられる。
【0043】
本明細書において使用される場合、用語「天然」とは、存在する場合には、その自身の調節配列とともに天然に見られるポリヌクレオチド、遺伝子またはポリペプチドの形態を指す。
【0044】
本明細書において使用される場合、用語「内因性」とは、生物においてその天然の位置に、または生物のゲノム中にあるポリヌクレオチド、遺伝子またはポリペプチドの天然形態を指す。「内因性ポリヌクレオチド」は、生物のゲノム中でその天然の位置にある生来のポリヌクレオチドを含む。「内因性遺伝子」は、生物のゲノム中でその天然の位置にある生来の遺伝子を含む。「内因性ポリペプチド」は、生物中でその天然の位置にある生来のポリペプチドを含む。
【0045】
本明細書において使用される場合、「異種」とは、宿主生物中に普通には見られないが、宿主生物中に導入されているポリヌクレオチド、遺伝子またはポリペプチドを指す。「異種ポリヌクレオチド」は、対応する生来のポリヌクレオチドとは異なる形態で供給源生物中に再導入されている天然コーディング領域またはその一部を含む。「異種遺伝子」は、対応する天然遺伝子とは異なる形態で供給源生物中に再導入される天然コード領域またはその一部を含む。例えば、異種遺伝子は、天然宿主中に再導入される非天然調節領域を含むキメラ遺伝子の一部である天然コード領域を含み得る。「異種ポリペプチド」は、対応する天然ポリペプチドとは異なる形態で供給源生物中に再導入される天然ポリペプチドを含む。キメラまたは融合タンパク質を製造するために、対象遺伝子およびタンパク質は、その他の遺伝子およびタンパク質と融合され得る。本開示の実施形態と一致する有用な遺伝子およびタンパク質は、具体的に例示される全長配列だけではなく、これらの配列の部分、セグメントおよび/または断片(連続断片ならびに全長分子と比較して内部および/または末端欠失を含む)、その変異体、突然変異体、キメラおよび融合物も含む。
【0046】
一実施形態では、ドナーDNAポリヌクレオチドは、それだけには限らないが、プロモーター、3’UTR、除草剤耐性形質、昆虫耐性形質、改変されたオイル形質、農学的形質および上記のいずれかの機能的断片を含む遺伝子発現カセットを含めた細胞におけるその発現が望まれる任意のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。コード配列は、例えば、cDNAであり得る。
【0047】
用語「プロモーター」とは、コード配列または機能的RNAの発現を制御できるDNA配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列の3’に位置する。プロモーターは、全体として、天然遺伝子に由来し得るか、または天然に見られる異なるプロモーターに由来する異なる要素からなり得るか、または合成DNAセグメントをさらに含み得る。異なるプロモーターは、異なる組織または細胞種における、または異なる発達段階での、または異なる環境条件もしくは生理学的条件に応じた遺伝子の発現に向けることができるということは当業者によって理解される。ほとんどの時点でのほとんどの細胞種において遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に「構成的プロモーター」と呼ばれる。ほとんどの場合において、調節配列の正確な境界は、完全に定義されておらず、種々の長さのDNA断片が、同一のプロモーター活性を有し得るということはさらに認識される。
【0048】
用語「作動可能に連結された」とは、一方の機能が他方によって影響を受けるような、単一の核酸断片での核酸配列の結合を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列の発現を達成できる(例えば、コード配列が、プロモーターの転写制御下にある)場合に、コード配列と作動可能に連結される。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向で調節配列と作動可能に連結され得る。
【0049】
用語「発現」とは、本明細書において使用される場合、本開示の実施形態の核酸断片に由来するセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳も指し得る。
【0050】
本明細書において使用される場合、用語「過剰発現」とは、同一遺伝子または関連遺伝子の内因性発現よりも高い発現を指す。異種遺伝子は、その発現が、匹敵する内因性遺伝子のものよりも高い場合に過剰発現される。
【0051】
本明細書において使用される場合、用語「形質転換」とは、遺伝的に安定な継承をもたらす、宿主生物への核酸または断片の転移および組込みを指す。形質転換核酸断片を含有する宿主生物は、「トランスジェニック」、「組換え」または「形質転換された」生物と呼ばれる。形質転換の既知方法として、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)媒介性形質転換、リン酸カルシウム形質転換、ポリブレン形質転換、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、超音波法(例えば、ソノポレーション)、リポソーム形質転換、マイクロインジェクション、裸のDNA、プラスミドベクター、ウイルスベクター、微粒子銃(微粒子銃)、シリコンカーバイドWHISKERS(商標)媒介性形質転換、エアゾールビーミングまたはPEG媒介性形質転換ならびに他の可能な方法が挙げられる。
【0052】
用語「プラスミド」および「ベクター」とは、本明細書において使用される場合、細胞の中央代謝の一部ではない遺伝子を保持することが多く、通常、環状二本鎖DNA分子の形態の染色体外要素を指す。このような要素は、任意の供給源に由来する、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの、直鎖または環状の、自立複製配列、ゲノム組込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列であり得、これでは、いくつかのヌクレオチド配列が、適当な3’非翻訳配列とともに、選択された遺伝子産物のプロモーター断片およびDNA配列を細胞に導入できる独特の構造に結合または組み換えられている。
【0053】
本明細書において使用される場合、用語「コドン縮重」は、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列に影響を及ぼさずにヌクレオチド配列の変動を可能にする遺伝暗号における性質を指す。当業者は、所与のアミノ酸を指定するためのヌクレオチドコドンの使用において特定の宿主細胞によって示される「コドン−バイアス」を十分に承知している。したがって、宿主細胞における改善された発現のための遺伝子を合成する場合には、コドン使用のその頻度が、宿主細胞の好ましいコドン使用の頻度に匹敵するよう遺伝子を設計することが望ましい。
【0054】
用語「コドン最適化された」とは、種々の宿主の形質転換のための遺伝子または核酸分子のコーディング領域を指す時には、DNAによってコードされるポリペプチドを変更することなく、宿主生物の通常のコドン使用を反映するための遺伝子または核酸分子のコーディング領域中のコドンの変更を指す。このような最適化は、少なくとも1つの、または2以上の、または相当な数のコドンの、その生物の遺伝子においてより頻繁に使用される1つまたは複数のコドンとの置換を含む。
【0055】
当技術分野において公知の用語「同一性パーセント」(または「同一性%」)とは、配列を比較することによって決定されるような、2種以上のポリペプチド配列または2種以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当技術分野において、「同一性」はまた、場合によっては、一続きのこのような配列間のマッチによって決定されるような、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度を意味する。「同一性」および「類似性」は、それだけには限らないが、以下に開示されるものを含めた公知の方法によって容易に算出され得る。1)Computational Molecular Biology (Lesk、A. M., Ed.) Oxford University: NY (1988);2)Biocomputing: Informatics and Genome Projects (Smith、D. W., Ed.) Academic, NY (1993);3)Computer Analysis of Sequence Data, Part I (Griffin, A. M., and Griffin, H. G., Eds.) Humania: NJ (1994);4)Sequence Analysis in Molecular Biology (von Heinje, G., Ed.) Academic (1987);および5)Sequence Analysis Primer (Gribskov, M. and Devereux, J., Eds.) Stockton, NY (1991)。
【0056】
核酸およびアミノ酸配列同一性を決定するための技術は、当技術分野で公知である。通常、このような技術は、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定することおよび/またはそれによってコードされるアミノ酸配列を決定することおよびこれらの配列を第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較することを含む。ゲノム配列はまた、この様式で決定および比較され得る。一般に、同一性とは、それぞれ、2種のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の正確なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸対応を指す。2種以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、その同一性パーセントを決定することによって比較され得る。2種の配列の同一性パーセントは、核酸であるか、アミノ酸配列であるかにかかわらず、2種のアラインされた配列間の正確なマッチの数を短い方の配列の長さで除し、100を乗じたものである。参照によりその全文が本明細書に組み込まれるRussell, R., and Barton, G.,「Structural Features can be Unconserved in Proteins with Similar Folds」, J. Mol. Biol. 244, 332-350 (1994), at p. 337を参照のこと。
【0057】
さらに、同一性および類似性を決定する方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムにおいて体系化されている。配列アラインメントおよび同一性パーセント算出は、例えば、VECTOR NTI(登録商標)一式のAlignXプログラム(Invitrogen、Carlsbad、CA)またはLASERGENE(商標)バイオインフォマティクスコンピューティング一式のMEGALIGN(商標)プログラム(DNASTAR Inc.、Madison、WI)を使用して実施され得る。配列の複数のアラインメントが、Clustal Vと標識されたアラインメント法(Higgins and Sharp, CABIOS. 5:151-153 (1989); Higgins, D.G. et al., Comput. Appl. Biosci., 8:189-191 (1992)によって開示される)に対応し、LASERGENE(商標)バイオインフォマティクスコンピューティング一式のMEGALIGN(商標)プログラム(DNASTAR Inc.)に見出される「アラインメントのClustal V法」を含めた、アルゴリズムのいくつかの変法を包含する「アラインメントのClustal法」を使用して実施される。マルチプルアラインメントのために、デフォルト値は、GAP PENALTY=10およびGAP LENGTH PENALTY=10に相当する。Clustal法を使用するタンパク質配列のペアワイズアラインメントおよび同一性パーセントの算出のデフォルトパラメータは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5である。核酸については、これらのパラメータは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4およびDIAGONALS SAVED=4であり得る。Clustal Vプログラムを使用する配列のアラインメント後、同一プログラム中の「配列距離」表を見ることによって、「同一性パーセント」を得ることが可能である。さらに、「アラインメントのClustal W法」が入手可能であり、Clustal Wと標識されたアラインメント法(Higgins and Sharp, CABIOS. 5:151-153 (1989); Higgins, D.G. et al., Comput. Appl. Biosci. 8:189-191(1992)によって記載される)に対応し、LASERGENE(商標)バイオインフォマティクスコンピューティング一式のMEGALIGN(商標)v6.1プログラム(DNASTAR Inc.)に見出される。マルチプルアラインメントのデフォルトパラメータ(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=0.2、Delay Divergen Seqs(%)=30、DNA Transition Weight=0.5、Protein Weight Matrix=Gonnet Series、DNA Weight Matrix=IUB)。Clustal Wプログラムを使用する配列のアラインメント後、同一プログラム中の「配列距離」表を見ることによって、「同一性パーセント」を得ることが可能である。
【0058】
本開示の実施形態の核酸プローブおよびプライマーは、ハイブリダイゼーション条件下で増幅反応内の標的DNA配列とハイブリダイズすることができる。ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内に挿入されたドナーDNAポリヌクレオチドの存在を同定するために、任意の従来の核酸ハイブリダイゼーションまたは増幅法が使用され得る。核酸分子、オリゴヌクレオチドまたはその断片は、特定の条件下で他の核酸分子と「特異的にハイブリダイズ」できる。本明細書において使用される場合、2種の核酸分子は、2種の分子が、逆平行の、二本鎖核酸構造を形成できる場合に、互いに特異的にハイブリダイズすると言われる。核酸分子は、2種の核酸分子が、完全な相補性を示す場合に、別の核酸分子の「相補体」であるといわれる。本明細書において使用される場合、分子は、分子の一方のどのヌクレオチドも、もう一方のヌクレオチドと相補的である場合に「完全な相補性」を示すといわれる。完全な相補性を示す分子は、一般に、従来の「高ストリンジェンシー」条件下で、十分な安定性をもって互いにハイブリダイズし、互いにアニーリングされたままであることを可能にする。
【0059】
2種の分子は、少なくとも従来の「低ストリンジェンシー」条件下で、十分な安定性をもって互いにハイブリダイズでき、互いにアニーリングされたままであることを可能にする場合に「最少の相補性」を示すといわれる。従来の低ストリンジェンシー条件は、Sambrook et al. (1989)によって記載されている。核酸分子について、プライマーまたはプローブとして働くためには、使用される特定の溶媒および塩濃度下で、安定な二本鎖構造を形成できるよう配列の最少の相補性示すことのみが必要である。
【0060】
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を及ぼす因子は、当業者に周知であり、これとして、限定するものではないが、温度、pH、イオン強度、ならびに、例えばホルムアミドおよびジメチルスルホキシドなどの有機溶媒の濃度が挙げられる。当業者には公知であるように、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、高温、低イオン強度および低溶媒濃度によって増大される。
【0061】
用語「ストリンジェントな条件」または「ストリンジェンシー条件」は、Sambrook et al. (1989)で論じられた特定のハイブリダイゼーション手順による、核酸プローブの、標的核酸との(すなわち、対象とする特定の核酸配列を含む核酸分子との)ハイブリダイゼーションに関して機能的に定義される。
【0062】
通常、ストリンジェント条件とは、塩濃度が、pH7.0〜8.3および短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)については、少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば、50を超えるヌクレオチド)については、少なくとも約60℃である温度で、約1.5M Na
+イオン未満、通常、約0.01〜1.0M Na
+イオン濃度(またはその他の塩)であるものとなる。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加でも達成され得る。例示的な低ストリンジェンシー条件として、37℃の、30〜35%ホルムアミド、1.0M NaCl、0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)のバッファー溶液を用いるハイブリダイゼーションおよび50〜55℃の、1X〜2X SSC(20X SSC=3.0M NaCl/0.3M クエン酸三ナトリウム)での洗浄が挙げられる。例示的な中程度のストリンジェンシー条件として、37℃の、40〜45%ホルムアミド、1.0M NaCl、0.1% SDSでのハイブリダイゼーションおよび55℃〜60℃の0.5X〜1X SSCでの洗浄が挙げられる。例示的な高ストリンジェンシー条件として、約37℃の、約50%ホルムアミド、1.0M NaCl、0.1% SDSでのハイブリダイゼーションおよび60〜65℃の0.1X SSCでの洗浄が挙げられる。
【0063】
特異性は通常、ハイブリダイゼーション後洗浄の関数であり、重要な因子は、最終洗浄溶液のイオン強度および温度である。DNA−DNAハイブリッドについて、T
mは、方程式T
m=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)−0.61(%form.)−500/L(式中、Mは、一価カチオンのモル濃度であり、%GCは、DNA中のグアノシンおよびシトシンヌクレオチドのパーセンテージであり、%form.は、ハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドのパーセンテージであり、Lは、塩基対でのハイブリッドの長さである)から概算され得る(Meinkoth and Wahl, 1984)。T
mは、相補的標的配列の50%が、完全にマッチしたプローブとハイブリダイズする温度である(特定のイオン強度およびpH下で)。T
mは、ミスマッチの各1%について約1℃低下する;したがって、T
m、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件は、ハイブリダイズする所望の同一性の配列のために調整され得る。例えば、90%の同一性を有する配列が求められる場合には、T
mは、10℃低下され得る。一般に、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度およびpHでの特定の配列およびその相補体の融解点(T
m)よりも約5℃低いものであるよう選択される。しかし、激しくストリンジェントな条件は、融解点(T
m)より1、2、3または4℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用でき;中程度にストリンジェントな条件は、融解点(T
m)よりも6、7、8、9または10低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用でき;低ストリンジェンシー条件は、融解点(T
m)よりも11〜20℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用できる。方程式、ハイブリダイゼーションおよび洗浄組成物および所望のTmを使用することで、当業者ならば、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄溶液のストリンジェンシーの変動は、本質的に記載されているということは理解される。所望の程度のミスマッチが、45℃(水溶液)または32℃(ホルムアミド溶液)未満のT
mをもたらす場合には、より高い温度が使用され得るようSSC濃度を高めることが好ましい。核酸のハイブリダイゼーションの詳細な指針は、(1997) Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology, pages 2-40, 3
rd Ed. (1997) and Sambrook et al. (1989)に見出される。
【0064】
一実施形態では、本開示は、ターゲッティングされるゲノム遺伝子座内に挿入されるドナーDNAポリヌクレオチドの導入に関する。実施形態として、ここで使用されるような遺伝子発現カセットを含むドナーDNAポリヌクレオチドの構築のための標準組換えDNAおよび分子クローニング技術は、当技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1989)によって;またSilhavy et al., Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1984)によって;またAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, published by Greene Publishing Assoc. and Wiley-Interscience (1987)によって記載されている。
【0065】
本明細書において開示される方法では、植物において遺伝子の発現を指示するいくつかのプロモーターが使用され得る。このようなプロモーターは、構成的、化学調節性、誘導性、組織特異的および種子優先プロモーターから選択され得る。核酸の発現を指示するために使用されるプロモーターは、個々の適用に応じて変わる。例えば、宿主細胞に適している強力な構成的プロモーターが、発現したタンパク質の発現および精製のために通常使用される。
【0066】
好ましい植物プロモーターの限定されない例として、シロイヌナズナ(A.thaliana)ユビキチン−10(ubi-10)(Callis, et al., 1990, J. Biol. Chem., 265:12486-12493);A.ツメファシエンス(A.tumefaciens)マンノピンシンターゼ(Δmas)(Petolino et al.、米国特許第6,730,824号);および/またはキャッサバ葉脈モザイクウイルス(CsVMV)(Verdaguer et al., 1996, Plant Molecular Biology 31:1129-1139)に由来するプロモーター配列が挙げられる。別の構成的プロモーターとして、例えば、コアカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(Odell et al. (1985) Nature 313:810-812);イネアクチンプロモーター(McElroy et al. (1990) Plant Cell 2:163-171);トウモロコシユビキチンプロモーター(米国特許第5,510,474号;Christensen et al. (1989) Plant Mol. Biol. 12:619-632およびChristensen et al. (1992) Plant Mol. Biol. 18:675-689);pEMUプロモーター(Last et al. (1991) Theor. Appl. Genet. 81:581-588);ALSプロモーター(米国特許第5,659,026号);トウモロコシヒストンプロモーター(Chaboute et al. Plant Molecular Biology, 8:179-191 (1987))などが挙げられる。
【0067】
適用可能な別の植物プロモーターは、組織特異的および誘導性プロモーターを含む。誘導性プロモーターは、誘導物質に応じて1種または複数のDNA配列または遺伝子の転写を直接的または間接的に活性化できるものである。誘導物質の不在下で、DNA配列または遺伝子は転写されない。通常、誘導性調節エレメントと特異的に結合して転写を活性化するタンパク質因子は、不活性形態で存在し、これは、次いで、誘導物質によって、直接的または間接的に活性形態に変換される。誘導物質は、熱、冷温、塩または毒性要素によって直接的に、またはウイルスなどの病原体もしくは病因物質の作用によって間接的に課せられる、タンパク質、代謝生成物、成長調節物質、除草剤またはフェノール系化合物などの化学物質または生理学的ストレスであり得る。通常、誘導性調節エレメントと特異的に結合して、転写を活性化するタンパク質因子は、不活性形態で存在し、これは、次いで、誘導物質によって、直接的または間接的に活性形態に変換される。誘導性調節エレメントを含有する植物細胞は、噴霧、灌水、加熱または同様の方法によってなど、細胞または植物に誘導物質を外的に適用することによって誘導物質に曝露され得る。
【0068】
本開示の実施形態では、任意の誘導プロモーターが使用され得る。Ward et al., Plant Mol. Biol. 22: 361-366 (1993)を参照のこと。例示的な誘導プロモーターとして、エクジソン受容体プロモーター(米国特許第6,504,082号);銅に反応するACE1系に由来するプロモーター(Mett et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 90: 4567-4571 (1993));ベンゼンスルホンアミド除草剤解毒剤に反応するトウモロコシ由来のIn2−1およびIn2−2遺伝子(米国特許第5,364,780号;Hershey et al., Mol. Gen. Genetics 227: 229-237 (1991)およびGatz et al., Mol. Gen. Genetics 243: 32-38 (1994));Tn10由来のTetレプレッサー(Gatz et al., Mol. Gen. Genet. 227: 229-237 (1991);転写活性が糖質コルチコステロイドホルモンによって誘導される、ステロイドホルモン遺伝子に由来するプロモーター、Schena et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88: 10421 (1991)およびMcNellis et al., (1998) Plant J. 14(2):247-257;発芽前除草剤として使用される疎水性求電子性化合物によって活性化されるトウモロコシGSTプロモーター(米国特許第5,965,387号および国際特許出願公開番号WO93/001294);およびサリチル酸によって活性化されるタバコPR−1aプロモーター(Ono S, Kusama M, Ogura R, Hiratsuka K., "Evaluation of the Use of the Tobacco PR-1a Promoter to Monitor Defense Gene Expression by the Luciferase Bioluminescence Reporter System", Biosci Biotechnol Biochem. 2011 Sep 23;75(9):1796-800)が挙げられる。その他の化学物質によって調節される対象とするプロモーターとして、テトラサイクリン誘導性およびテトラサイクリン抑制性プロモーター(例えば、Gatz et al., (1991) Mol. Gen. Genet. 227:229-237および米国特許第5,814,618号および同5,789,156号を参照のこと)が挙げられる。
【0069】
対象とするその他の調節可能なプロモーターとして、転写が、それぞれ、冷温または熱に対する曝露に応じて達成され得る、冷温反応性調節エレメントまたは熱ショック調節エレメント(Takahashi et al., Plant Physiol. 99:383-390, 1992);嫌気性条件によって誘導可能な、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター(Gerlach et al., PNAS USA 79:2981-2985 (1982);Walker et al., PNAS 84(19):6624-6628 (1987));エンドウマメrbcS遺伝子またはエンドウマメpsaDb遺伝子に由来する光誘導性プロモーター(Yamamoto et al., (1997) Plant J. 12(2):255-265);光誘導性調節エレメント(Feinbaum et al., Mol. Gen. Genet. 226:449, 1991;Lam and Chua, Science 248:471, 1990;Matsuoka et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(20):9586-9590;Orozco et al. (1993) Plant Mol. Bio. 23(6):1129-1138);植物ホルモン誘導性調節エレメント(Yamaguchi-Shinozaki et al., Plant Mol. Biol. 15:905, 1990; Kares et al., Plant Mol. Biol. 15:225, 1990)などが挙げられる。誘導性調節エレメントはまた、ベンゼンスルホンアミド除草剤解毒剤に応答するトウモロコシIn2−1またはIn2−2遺伝子のプロモーター(Hershey et al., Mol. Gen. Gene. 227:229-237, 1991; Gatz et al., Mol. Gen. Genet. 243:32-38, 1994)およびトランスポゾンTn10のTetレプレッサー(Gatz et al., Mol. Gen. Genet. 227:229-237, 1991)であり得る。ストレス誘導性プロモーターとして、P5CSなどの塩/水ストレス誘導性プロモーター(Zang et al., (1997) Plant Sciences 129:81-89);cor15aなどの冷温誘導性プロモーター(Hajela et al., (1990) Plant Physiol. 93:1246-1252)、cor15b(Wilhelm et al., (1993) Plant Mol Biol 23:1073-1077)、wsc1(Ouellet et al., (1998) FEBS Lett. 423-324-328)、ci7(Kirch et al., (1997) Plant Mol Biol. 33:897-909)およびci21A(Schneider et al., (1997) Plant Physiol. 113:335-45);Trg−31(Chaudhary et al., (1996) Plant Mol. Biol. 30:1247-57)およびrd29(Kasuga et al., (1999) Nature Biotechnology 18:287-291)などの乾燥誘導性プロモーター;Rab17などの浸透圧誘導性プロモーター(Vilardell et al., (1991) Plant Mol. Biol. 17:985-93)およびオスモチン(Raghothama et al., (1993) Plant Mol Biol 23:1117-28);熱ショックタンパク質などの熱誘導性プロモーター(Barros et al., (1992) Plant Mol. 19:665-75;Marrs et al., (1993) Dev. Genet. 14:27-41)、smHSP(Waters et al., (1996) J. Experimental Botany 47:325-338);およびパセリユビキチンプロモーターに由来する熱ショック誘導性エレメント(WO03/102198)が挙げられる。その他のストレス誘導性プロモーターとして、rip2(米国特許第5,332,808号および米国特許公開第2003/0217393号)およびrd29a(Yamaguchi-Shinozaki et al., (1993) Mol. Gen. Genetics 236:331-340)が挙げられる。アグロバクテリウムpMASプロモーター(Guevara-Garcia et al., (1993) Plant J. 4(3):495-505)およびアグロバクテリウムORF13プロモーター(Hansen et al., (1997) Mol. Gen. Genet. 254(3):337-343)を含めた特定のプロモーターは、創傷によって誘導可能である。
【0070】
組織優先プロモーターは、特定の植物組織内での増強された転写および/または発現を標的とするために利用され得る。優先発現を指す場合には、意味されることは、特定の植物組織における、その他の植物組織においてよりも高レベルでの発現である。これらの種のプロモーターの例として、ファゼオリンプロモーターによって提供されるものなどの種子優先発現(Bustos et al., (1989) The Plant Cell Vol. 1, 839-853)およびトウモロコシグロブリン−1遺伝子、(Belanger, et al. (1991) Genetics 129:863-972)が挙げられる。双子葉植物について、種子優先プロモーターとして、それだけには限らないが、マメβ−ファゼオリン、ナピン(napin)、β−コングリシニン、ダイズレクチン、クルシフェリンなどが挙げられる。単子葉植物について、種子優先プロモーターとして、それだけには限らないが、トウモロコシ15kDaゼイン、22kDゼイン、27kDaゼイン、γ−ゼイン、ワキシー(waxy)、シュランケン(shrunken)1、シュランケン(shrunken)2、グロブリン1などが挙げられる。種子優先プロモーターとしてまた、例えば、γ−ゼインの胚乳優先プロモーターなどの種子内の特定の組織に遺伝子発現を主に向けるプロモーター、タバコ由来の隠れた(cryptic)プロモーター(Fobert et al., (1994) T-DNA tagging of a seed coat-specific cryptic promoter in tobacco. Plant J. 4: 567-577)、トウモロコシ由来のP遺伝子プロモーター(Chopra et al., (1996) Alleles of the maize P gene with distinct tissue specificities encode Myb-homologous proteinss with C-terminal replacements.Plant Cell 7:1149-1158, Erratum in Plant Cell.1997, 1:109)、トウモロコシ由来のグロブリン−1プロモーター(Belenger and Kriz (1991) Molecular basis for Allelic Polymorphism of the maize Globulin-1 gene. Genetics 129: 863-972)および種子皮またはトウモロコシ穀粒の殻に発現を向けるプロモーター、例えば、果皮特異的グルタミンシンセターゼプロモーター(Muhitch et al., (2002) Isolation of a Promoter Sequence From the Glutamine Synthetase
1-2 Gene Capable of Conferring Tissue-Specific Gene Expression in Transgenic Maize. Plant Science 163:865-872)が挙げられる。
【0071】
プロモーターに加えて、発現ベクターは、通常、原核生物または真核生物いずれかの宿主細胞における核酸の発現に必要なさらなる要素のすべてを含有する転写単位または発現カセットを含有する。したがって、通常の発現カセットは、例えば、タンパク質をコードする核酸配列と作動可能に連結されたプロモーターおよび例えば、転写物の効率的なポリアデニル化、転写終結、リボソーム結合部位または翻訳終結に必要なシグナルを含有する。カセットのさらなる要素は、例えば、エンハンサーおよび異種スプライシングシグナルを含み得る。
【0072】
ベクターのその他の成分はまた、遺伝子の意図される用途に応じて含まれ得る。例として、選択マーカー、ターゲッティングまたは調節配列、最適化された輸送ペプチド配列などの輸送ペプチド配列(米国特許第5,510,471号を参照のこと)RB7 MARなどの安定化配列(Thompson and Myatt, (1997) Plant Mol. Biol., 34: 687-692および国際特許公開番号WO9727207を参照のこと)またはリーダー配列、イントロンなどが挙げられる。植物発現ベクターおよびリポーター遺伝子の一般的な説明および例は、Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick et al eds; CRC Press pp. 89-119 (1993)中のGruber, et al., "Vectors for Plant Transformation"に見出すことができる。適当な発現ベクターの選択は、宿主および発現ベクターを宿主に導入する方法に応じて変わる。発現カセットはまた、対象とする異種ヌクレオチド配列の3’末端に、植物において機能的である転写および翻訳終結領域を含むこととなる。終結領域は、本開示の実施形態のプロモーターヌクレオチド配列に関して生来的である場合も、対象とするDNA配列に関して生来的である場合も、または別の供給源に由来する場合もある。オクトピンシンターゼおよびノパリンシンターゼ(nos)終結領域などの好都合な終結領域は、A.ツメファシエンス(tumefaciens)のTiプラスミドから入手可能である(Depicker et al., Mol. and Appl. Genet. 1:561-573 (1982)およびShaw et al. (1984) Nucleic Acids Research vol. 12, No. 20 pp7831-7846(nos));Guerineau et al. Mol. Gen. Genet. 262:141-144 (1991);Proudfoot, Cell 64:671-674 (1991);Sanfacon et al. Genes Dev. 5:141-149 (1991);Mogen et al.Plant Cell 2:1261-1272 (1990);Munroe et al. Gene 91:151-158 (1990);Ballas et al., Nucleic Acids Res. 17:7891-7903 (1989); Joshi et al. Nucleic Acid Res. 15:9627-9639 (1987)も参照のこと。
【0073】
発現カセットは、5’リーダー配列をさらに含有し得る。このようなリーダー配列は、翻訳を増強するよう作用し得る。翻訳リーダーは、当技術分野で公知であり、例として、ピコルナウイルスリーダー、EMCVリーダー(脳心筋炎5’非コーディング領域)、Elroy-Stein et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86:6126-6130 (1989);ポティウイルスリーダー、例えば、TEVリーダー(タバコエッチウイルス)Carrington and Freed Journal of Virology, 64:1590-1597 (1990)、MDMVリーダー(トウモロコシ萎縮モザイクウイルス)、Allison et al., Virology 154:9-20 (1986);ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)、Macejak et al., Nature 353:90-94 (1991);アルファルファモザイクウイルスのコートタンパク質mRNA由来の非翻訳リーダー(AMV RNA 4)、Jobling et al., Nature 325:622-625 (1987);タバコモザイクウイルスリーダー(TMV)、Gallie et al., (1989) Molecular Biology of RNA、237-256頁;およびトウモロコシ退緑斑紋ウイルスリーダー(Maize chlorotic mottle virus leader)(MCMV)Lommel et al., Virology 81:382-385 (1991)が挙げられる。Della-Cioppa et al., Plant Physiology 84:965-968 (1987)も参照のこと。
【0074】
構築物はまた、イントロンなどの翻訳および/またはmRNA安定性を増強する配列を含有し得る。1種のこのようなイントロンの例として、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のヒストンH3.III変異体の遺伝子IIの第1のイントロンがある。Chaubet et al., Journal of Molecular Biology, 225:569-574 (1992)。
【0075】
特定のオルガネラ、特に、プラスチド、アミロプラストに、または小胞体に向けられるか、または細胞の表面もしくは細胞外に分泌される異種核酸配列の発現生成物を有することが望ましい場合には、発現カセットは、輸送ペプチドのコード配列をさらに含み得る。このような輸送ペプチドは、当技術分野で周知であり、それだけには限らないが、アシル担体タンパク質の輸送ペプチド、RUBISCO、植物EPSPシンターゼおよびヒマワリ(Helianthus annuus)の小サブユニット(米国特許第5,510,417号)、トウモロコシBrittle−1葉緑体輸送ペプチド(Nelson et al., Plant Physiol 117(4):1235-1252 (1998); Sullivan et al., Plant Cell 3(12):1337-48; Sullivan et al., Planta (1995) 196(3):477-84; Sullivan et al., J. Biol. Chem. (1992) 267(26):18999-9004)などが挙げられる。さらに、最適化された輸送ペプチドなどのキメラ葉緑体輸送ペプチドは、当技術分野で公知である(米国特許第5,510,471号)。さらなる葉緑体輸送ペプチドが、米国特許第5,717,084号、および米国特許第5,728,925号において、これまでに記載されている。当業者ならば、特定のオルガネラへ産物を発現させることにおいて利用可能な多数の選択肢を容易に理解する。例えば、オオムギアルファアミラーゼ配列は、発現を小胞体に向けるために使用されることが多い(Rogers, J. Biol. Chem. 260:3731-3738 (1985))。
【0076】
当業者には、組換えDNA技術は、例えば、宿主細胞内の核酸分子のコピー数、核酸分子が転写される効率、得られた転写物が翻訳される効率および翻訳後修飾の効率を操作することによって、トランスフェクトされた核酸分子の発現の制御を改善し得るということは理解される。さらに、プロモーター配列は、天然プロモーターと比較して、発現のレベルを改善するよう遺伝子操作され得る。核酸分子の発現の制御に有用な組換え技術として、それだけには限らないが、1種または複数の宿主細胞染色体中への核酸分子の安定な組込み、プラスミドへのベクター安定性配列の付加、転写制御シグナル(例えば、プロモーター、オペレーター、エンハンサー)の置換または修飾、翻訳制御シグナル(例えば、リボソーム結合部位、シャイン・ダルガーノ配列またはコザック配列)の置換または修飾、宿主細胞のコドン使用に対応するための核酸分子の修飾および転写物を不安定化する配列の欠失が挙げられる。
【0077】
形質転換された細胞または組織または植物部分または植物の選択のためのリポーターまたはマーカー遺伝子が、形質転換ベクター中に含まれ得る。選択マーカーの例として、除草剤または抗生物質などの代謝拮抗剤に対する抵抗性を付与するもの、例えば、メトトレキサートに対する抵抗性を付与するジヒドロ葉酸レダクターゼ(Reiss, Plant Physiol. (Life Sci. Adv.) 13:143-149, 1994;Herrera Estrella et al., Nature 303:209-213, (1983);Meijer et al., Plant Mol. Biol. 16:807-820, (1991));アミノグリコシドネオマイシン、カナマイシンおよびパロマイシン(paromycin)に対する抵抗性を付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(Herrera-Estrella, EMBO J. 2:987-995, 1983およびFraley et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 80:4803 (1983))およびハイグロマイシンに対する抵抗性を付与するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(Marsh, Gene 32:481-485, (1984);Waldron et al., Plant Mol. Biol. 5:103-108, (1985);Zhijian et al., Plant Science 108:219-227, (1995)も参照のこと);細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にするtrpB;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを可能にするhisD(Hartman, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 85:8047, (1988));細胞がマンノースを利用することを可能にするマンノース−6−ホスフェートイソメラーゼ(国際特許出願番号WO94/20627);オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチンに対する抵抗性を付与するオルニチンデカルボキシラーゼ(DFMO; McConlogue, 1987, In: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory ed.);およびブラストサイジンSに対する抵抗性を付与する、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)由来のデアミナーゼ(Tamura, Biosci. Biotechnol. Biochem. 59:2336-2338, (1995))が挙げられる。
【0078】
さらなる選択マーカーとして、例えば、イミダゾリノンまたはスルホニル尿素抵抗性を付与する突然変異体アセト乳酸シンターゼ(Lee et al., EMBO J. 7:1241-1248, (1988))、アトラジンに対する抵抗性を付与する突然変異体psbA(Smeda et al., Plant Physiol. 103:911-917, (1993))または突然変異体プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(米国特許第5,767,373号を参照のこと)またはグルホシネートなどの除草剤に対する抵抗性を付与するその他のマーカーが挙げられる。適した選択マーカー遺伝子の例として、それだけには限らないが、クロラムフェニコール(Herrera Estrella et al., EMBO J. 2:987-992, (1983));ストレプトマイシン(Jones et al., Mol. Gen. Genet. 210:86-91, (1987));スペクチノマイシン(Bretagne-Sagnard et al., Transgenic Res. 5:131-137, (1996));ブレオマイシン(Hille et al., Plant Mol. Biol. 7:171-176, (1990));スルホンアミド(Guerineau et al., Plant Mol. Biol. 15:127-136, (1990));ブロモキシニル(Stalker et al., Science 242:419-423, (1988));グリホサート(Shaw et al., Science 233:478-481, (1986));ホスフィノトリシン(DeBlock et al., EMBO J. 6:2513-2518, (1987))に対する抵抗性をコードする遺伝子などが挙げられる。
【0079】
選択遺伝子の使用のための1つの選択肢は、グルホシネート抵抗性をコードするDNAであり、一実施形態では、キャッサバ葉脈モザイクウイルスプロモーターの制御下の、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(pat)、トウモロコシ最適化pat遺伝子またはbar遺伝子である。これらの遺伝子は、ビアラホスに対する抵抗性を付与する(Wohlleben et al., (1988) Gene 70: 25-37);Gordon-Kamm et al., Plant Cell 2:603; 1990; Uchimiya et al., Biotechnology 11:835, 1993;White et al., Nucl. Acids Res. 18:1062、1990; Spencer et al., Theor. Appl. Genet. 79:625-631, 1990;およびAnzai et al., Mol. Gen. Gen. 219:492、1989を参照のこと)を参照。pat遺伝子の1つのバージョンとして、トウモロコシ最適化pat遺伝子があり、米国特許第6,096,947号に記載されている。
【0080】
さらに、ポリヌクレオチドをコードするマーカーを含有する植物細胞の同定を容易にするマーカーが使用され得る。配列の存在が、測定可能な産物をもたらし、植物細胞の破壊を伴わずに産物をもたらし得る場合には、スコア化可能なまたはスクリーニング可能なマーカーは有用である。例として、種々の発色基質が公知である酵素をコードするβ−グルクロニダーゼまたはuidA遺伝子(GUS)(例えば、米国特許第5,268,463号および同5,599,670号);クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(Jefferson et al. The EMBO Journal vol. 6 No. 13 pp. 3901-3907);およびアルカリホスファターゼが挙げられる。好ましい実施形態では、使用されるマーカーは、ベータ−カロテンまたはプロビタミンA(Ye et al., Science 287:303-305-(2000))である。この遺伝子は、イネの栄養を増強するために使用されてきたが、この例では、代わりに、スクリーニング可能なマーカーとしてとして使用され、対象とする遺伝子と連結している遺伝子の存在は、提供される金色によって検出される。遺伝子が、植物へのその栄養的な貢献のために使用される状況とは異なり、マーキング目的には、少量のタンパク質で十分である。その他のスクリーニング可能なマーカーとして、例えば、中でも、植物組織におけるアントシアニン色素(赤色)の製造を調節する生成物をコードする、R−遺伝子座遺伝子(Dellaporta et al., in Chromosome Structure and Function, Kluwer Academic Publishers, Appels and Gustafson eds., pp. 263-282 (1988));トウモロコシC1遺伝子(Kao et al., Plant Cell (1996) 8: 1171-1179;Scheffler et al., Mol. Gen. Genet. (1994) 242:40-48)およびトウモロコシC2(Wienand et al., Mol. Gen. Genet. (1986) 203:202-207)などのフラボノイド色素の生合成を制御する遺伝子;B遺伝子(Chandler et al., Plant Cell(1989) 1:1175-1183)、p1遺伝子(Grotewold et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA (1991) 88:4587-4591;Grotewold et al., Cell (1994) 76:543-553;Sidorenko et al., Plant Mol. Biol. (1999)39:11-19);bronze遺伝子座遺伝子(Ralston et al., Genetics (1988) 119:185-197;Nash et al., Plant Cell (1990) 2(11): 1039-1049)を含めた、全般的に、アントシアニン/フラボノイド遺伝子が挙げられる(Taylor and Briggs, The Plant Cell (1990)2:115-127での考察を参照のこと)。
【0081】
適したマーカーのさらなる例として、シアン蛍光タンパク質(CYP)遺伝子(Bolte et al., (2004) J. Cell Science 117: 943-54およびKato et al., (2002) Plant Physiol 129: 913-42)、黄色蛍光タンパク質遺伝子(Evrogen製のPHIYFP(商標);Bolte et al., (2004) J. Cell Science 117: 943-54を参照のこと);ルシフェラーゼをコードし、例えば、X線フィルム、シンチレーション計数、蛍光分光光度測定、微光ビデオカメラ、光子計数カメラまたはマルチウェルルミノメトリーを使用してその存在が検出され得る、lux遺伝子(Teeri et al. (1989) EMBO J. 8:343);緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子(Sheen et al., Plant J. (1995) 8(5):777-84);およびマーカー遺伝子で形質転換された植物細胞が、赤色であり、したがって、視覚的に選択可能である、DsRed2(Dietrich et al., (2002) Biotechnologys 2(2):286-293)が挙げられる。さらなる例として、種々の発色基質(例えば、PADAC、発色性セファロスポリン)が公知である酵素をコードするβ−ラクタマーゼ遺伝子(Sutcliffe, Proc. Nat'l. Acad. Sci. U.S.A. (1978) 75:3737);発色性カテコールを変換できるカテコールジオキシゲナーゼをコードするxylE遺伝子(Zukowsky et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. U.S.A. (1983) 80:1101);α−アミラーゼ遺伝子(Ikuta et al., Biotech. (1990) 8:241)およびチロシンをDOPAおよびドーパキノンに酸化でき、順に、これが縮合して、容易に検出可能な化合物メラニンを形成する酵素をコードするチロシナーゼ遺伝子(Katz et al., J. Gen. Microbiol. (1983) 129:2703)が挙げられる。明確に、多数のこのようなマーカーが利用可能であり、当業者に公知である。
【0082】
特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、任意選択で、対象とする別のヌクレオチド配列と組み合わされ得る。用語「対象とするヌクレオチド配列」とは、所望のポリペプチドまたはタンパク質をコードする、転写されたRNA分子およびDNA分子であり得る核酸分子(ポリヌクレオチドとも呼ばれ得る)を指し、必ずしもポリペプチドまたはタンパク質をコードしない、全遺伝子を構成しない核酸分子(例えば、プロモーター)も指し得る。例えば、特定の実施形態では、核酸分子は、グリホサートもしくは別の除草剤に対するさらなる抵抗性もしくは耐性、および/または選定された昆虫または疾患に対する抵抗性および/もしくは栄養強化および/もしくは改善された農学的特徴、および/またはタンパク質もしくは食餌、食物、工業的用途、医薬的用途もしくはその他の用途において有用なその他の生成物を提供する別のものと組み合わされ、または「積み重ねられ」得る。植物ゲノム内の対象とする2種以上の核酸配列の「スタッキング」は、例えば、2以上の事象、対象とする配列を含有する構築物を用いる植物の形質転換、トランスジェニック植物トランスジェニック植物の再形質転換または相同組換えを介した標的組込みによる新規形質の付加を使用する従来の植物育種によって達成され得る。
【0083】
対象とするこのようなヌクレオチド配列として、それだけには限らないが、以下に提供される実施例が挙げられる。
【0084】
1.有害生物または疾患に対して抵抗性を付与する遺伝子またはコード配列(例えば、iRNA)
(A)植物疾患抵抗性遺伝子。植物防御は、植物中の疾患抵抗性遺伝子(R)の生成物と、病原体中の対応する病原性(Avr)遺伝子の生成物間の特定の相互作用によって活性化されることが多い。ある植物の種類が、クローニングされた抵抗性遺伝子を用いて形質転換され、特定の病原体株に対して抵抗性である植物に操作できる。このような遺伝子の例として、クラドスポリウム・フルブム(Cladosporium fulvu)に対する抵抗性のための、トマトCf−9遺伝子(Jones et al., 1994 Science 266:789)、トマト斑葉細菌病に対する抵抗性のためのプロテインキナーゼをコードする、トマトPto遺伝子(Martin et al., 1993 Science 262:1432)およびシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)に対する抵抗性のための、アラビドプシス属(Arabidopsis)RSSP2遺伝子(Mindrinos et al., 1994 Cell 78:1089)が挙げられる。
【0085】
(B)Bt δ−エンドトキシン遺伝子のヌクレオチド配列などの、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)タンパク質、その誘導体またはそれをモデルにした合成ポリペプチド(Geiser et al., 1986 Gene 48:109)および栄養型殺虫性(VIP)遺伝子(例えば、Estruch et al., (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 93:5389-94を参照のこと)。さらに、δ−エンドトキシン遺伝子をコードするDNA分子は、American Type Culture collection (Rockville、Md.)からATCC受託番号40098、67136、31995および31998の下で購入できる。
【0086】
(C)いくつかのクンシラン(Clivia miniata)マンノース結合レクチン遺伝子のヌクレオチド配列などの、レクチン(Van Damme et al., 1994 Plant Molec. Biol. 24:825)。
【0087】
(D)昆虫有害生物に対する殺うじ剤として有用であるアビジンおよびアビジン相同体などの、ビタミン結合タンパク質。米国特許第5,659,026号を参照のこと。
【0088】
(E)酵素阻害剤、例えば、プロテアーゼ阻害剤またはアミラーゼ阻害剤。
このような遺伝子の例として、イネシステインプロテイナーゼ阻害剤(Abe et al., 1987 J. Biol. Chem. 262:16793)、タバコプロテイナーゼ阻害剤I(Huub et al., 1993 Plant Molec. Biol. 21:985)およびα−アミラーゼ阻害剤(Sumitani et al., 1993 Biosci. Biotech. Biochem. 57:1243)が挙げられる。
【0089】
(F)昆虫特異的ホルモンまたはフェロモン、例えば、エクジステロイドおよび幼若ホルモンその変異体、それをベースとしたミメティックまたはそのアンタゴニストもしくはアゴニスト、例えば、クローニングされた幼若ホルモンエステラーゼのバキュロウイルス発現、幼若ホルモンの不活化(Hammock et al., 1990 Nature 344:458)。
【0090】
(G)発現すると、影響を受ける有害生物の生理学を撹乱する、昆虫特異的ペプチドまたはニューロペプチド(J. Biol. Chem. 269:9)。このような遺伝子の例として、昆虫利尿ホルモン受容体(Regan, 1994)、ディプロプテラ・プンクタータ(Diploptera punctata)において同定されたアロスタチン(allostatin)(Pratt,1989)および昆虫特異的、麻痺性神経毒(米国特許第5,266,361号)が挙げられる。
【0091】
(H)蛇、スズメバチなどによって天然に産生される昆虫特異的毒液、例えば、サソリ昆虫毒ペプチド(Pang, (1992) Gene 116:165)。
【0092】
(I)モノテルペン、セスキテルペン、ステロイド、ヒドロキサム酸、フェニルプロパノイド誘導体または殺虫活性を有する別の非タンパク質分子の高度集積に関与している酵素
【0093】
(J)生物学的に活性な分子の翻訳後修飾を含めた、修飾に関与している酵素、例えば、天然または合成にかかわらず、解糖酵素、タンパク質分解酵素、脂肪分解酵素、ヌクレアーゼ、シクラーゼ、トランスアミナーゼおよびエステラーゼ、ヒドロラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、ホスホリラーゼ、ポリメラーゼ、エラスターゼ、キチナーゼおよびグルカナーゼ。このような遺伝子の例として、callas遺伝子(PCT公開出願WO93/02197)、キチナーゼをコードする配列(例えば、ATCCから受託番号3999637および67152の下で入手できる)、タバコ鉤虫キチナーゼ(Kramer et al., (1993) Insect Molec. Biol. 23:691)およびパセリubi4−2ポリユビキチン遺伝子(Kawalleck et al., (1993) Plant Molec. Biol. 21:673)が挙げられる。
【0094】
(K)シグナル変換をシミュレートする分子。このような分子の例として、リョクトウカルモジュリンcDNAクローンのヌクレオチド配列(Botella et al., (1994) Plant Molec. Biol. 24:757)およびトウモロコシカルモジュリンcDNAクローンのヌクレオチド配列(Griess et al., (1994) Plant Physiol. 104:1467)が挙げられる。
【0095】
(L)疎水性モーメントペプチド。米国特許第5,659,026号および同5,607,914号を参照のこと;後者は、疾患抵抗性を付与する合成抗菌ペプチドを教示している。
【0096】
(M)膜透過酵素、チャネル形成剤またはチャネル遮断剤、例えば、トランスジェニックタバコ植物をシュードモナス・ソラナセアラム(Pseudomonas solanacearum)に対して抵抗性にする、セクロピン−ベータ溶菌性ペプチド類似体(Jaynes et al., (1993) Plant Sci. 89:43)。
【0097】
(N)ウイルス侵襲性タンパク質またはそれに由来する複合毒素。例えば、形質転換植物細胞におけるウイルスコートタンパク質の蓄積は、ウイルス感染および/またはコートタンパク質遺伝子が由来するウイルスによって、ならびに関連ウイルスによって達成される疾患発生に対する抵抗性を与える。アルファルファモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、タバコ条斑ウイルス、ジャガイモウイルスX、ジャガイモウイルスY、タバコエッチウイルス、タバコ茎えそウイルスおよびタバコモザイクウイルスに対して、コートタンパク質媒介性抵抗性が形質転換植物に付与されている。例えば、Beachy et al., (1990) Ann. Rev. Phytopathol. 28:451を参照のこと。
【0098】
(O)昆虫特異的抗体またはそれに由来する免疫毒素。したがって、昆虫腸において重大な代謝機能にターゲッティングされる抗体は、影響を受ける酵素を不活化し、昆虫を死滅させる。例えば、Taylor et al., (1994) Abstract #497、Seventh Intl. Symposium on Molecular Plant-Microbe Interactionsは、一本鎖抗体断片の製造によるトランスジェニックタバコにおける酵素性不活性化を示す。
【0099】
(P)ウイルス特異的抗体。例えば、組換え抗体遺伝子を発現するトランスジェニック植物は、ウイルス攻撃から保護されるということを示すTavladoraki et al., (1993) Nature 266:469を参照のこと。
【0100】
(Q)病原体または寄生生物によって天然に生成される発達遅延性タンパク質。したがって、真菌エンドα−1,4−Dポリガラクツロナーゼは、植物細胞壁ホモ−α−1,4−D−ガラクツロナーゼを可溶化することによって、真菌コロニー形成および植物栄養放出を促進する(Lamb et al., (1992) Biotechnology 10:1436)。マメエンドポリガラクツロナーゼ阻害性タンパク質をコードする遺伝子のクローニングおよび特性決定が、(Toubart et al., (1992) Plant J. 2:367)に記載されている。
【0101】
(R)植物によって天然に生成される発達遅延性タンパク質、例えば、真菌疾患に対する増大した抵抗性を提供するオオムギリボソーム不活化遺伝子(Longemann et al., (1992). Biotechnology 10:3305)。
【0102】
(S)RNA分子をコードするDNAポリヌクレオチドが、標的遺伝子の発現を阻害するために使用される、RNA干渉。一例では、RNA分子は、部分的または完全に二本鎖であり、サイレンシング反応を引き起こし、dsRNAの低分子干渉RNAへの切断をもたらし、次いで、これが、相同mRNAを破壊するターゲッティング複合体中に組み込まれる。例えば、Fire et al.、米国特許第6,506,559号;Graham et al.、米国特許第6,573,099号を参照のこと。
【0103】
2.除草剤に対する抵抗性を付与する遺伝子
(A)成長点または分裂組織を阻害する除草剤、例えば、イミダザリノン(imidazalinone)、スルホンアニリドまたはスルホニル尿素除草剤に対する抵抗性または耐性をコードする遺伝子。このカテゴリー中の例示的遺伝子は、突然変異体ALS酵素をコードし(Lee et al., (1988) EMBOJ. 7:1241)、これは、AHAS酵素としても知られている(Miki et al., (1990) Theor. Appl. Genet. 80:449)。
【0104】
(B)突然変異体EPSPシンターゼおよびaroA遺伝子によって、またはGAT(グリホサートアセチルトランスフェラーゼ)もしくはGOX(グリホサートオキシダーゼ)などの遺伝子およびグルホシネート(patおよびbar遺伝子;DSM−2)などのその他のホスホノ化合物ならびにアリールオキシフェノキシプロピオン酸およびシクロヘキサンジオン(ACCアーゼ阻害剤をコードする遺伝子)による代謝不活性化によって与えられる、グリホサートに対する抵抗性または耐性をコードする1種または複数のさらなる遺伝子。例えば、グリホサート抵抗性を付与できるEPSPの形態のヌクレオチド配列を開示する米国特許第4,940,835号を参照のこと。突然変異体aroA遺伝子をコードするDNA分子は、ATCC受託番号39256の下で得ることができ、突然変異体遺伝子のヌクレオチド配列は、米国特許第4,769,061号に開示されている。欧州特許出願番号0333033および米国特許第4,975,374号には、L−ホスフィノトリシンなどの除草剤に対する抵抗性を付与するグルタミンシンセターゼ遺伝子のヌクレオチド配列が開示されている。ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は、欧州特許出願番号0242246に提供されている。De Greef et al., (1989) Biotechnology 7:61には、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ活性のためにキメラbar遺伝子コーディングを発現するトランスジェニック植物の製造が記載されている。アリールオキシフェノキシプロピオン酸およびセトキシジムおよびハロキシフォップなどのシクロヘキサンジオンに対する抵抗性を付与する遺伝子の例示的なものとして、Marshall et al., (1992) Theor. Appl. Genet. 83:435に記載される、Accl−S1、Accl−S2およびAccl−S3遺伝子がある。
【0105】
(C)光合成を阻害する除草剤、例えば、トリアジンに対する抵抗性または耐性をコードする遺伝子(psbAおよびgs+遺伝子)およびベンゾニトリル(ニトリラーゼ遺伝子)。Przibilla et al., (1991) Plant Cell 3:169には、クラミドモナス(Chlamydomonas)を形質転換するための突然変異体psbA遺伝子をコードするプラスミドの使用が記載されている。ニトリラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は、米国特許第4,810,648号に開示されており、これらの遺伝子を含有するDNA分子は、ATCC受託番号53435、67441および67442の下で入手可能である。グルタチオンS−トランスフェラーゼのDNAコーディングのクローニングおよび発現は、Hayes et al., (1992) Biochem. J. 285:173に記載されている。
【0106】
(D)ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)、パラ−ヒドロキシフェニルピルビン酸(HPP)がホモゲンチジン酸に形質転換される反応を触媒する酵素と結合する除草剤に対する抵抗性または耐性をコードする遺伝子。これは、イソキサゾール(欧州特許第418175号、欧州特許第470856号、欧州特許第487352号、欧州特許第527036号、欧州特許第560482号、欧州特許第682659号、米国特許第5,424,276号)、特に、トウモロコシの選択的除草剤であるイソキサフルトール、ジケトニトリル(欧州特許第496630号、および欧州特許第496631号)、特に、2−シアノ−3−シクロプロピル−1−(2−SO2CH3−4−CF3フェニル)プロパン−1,3−ジオンおよび2−シアノ−3−シクロプロピル−1−(2−SO2CH3−4−2,3Cl2フェニル)プロパン−1,3−ジオン、トリケトン(欧州特許第625505号、欧州特許第625508号、米国特許第5,506,195号)、特に、スルコトリオンおよびピラゾリネートなどの除草剤を含む。例えば、米国特許第6,268,549号および同6,245,968号および米国特許出願公開第20030066102号に記載される遺伝子を含めた、植物において過剰量のHPPDを生成する遺伝子は、このような除草剤に対する耐性または抵抗性を提供し得る。
【0107】
(E)遺伝子。フェノキシオーキシン除草剤、例えば、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)に対する抵抗性または耐性をコードし、アリールオキシフェノキシプロピオネート(AOPP)除草剤に対する抵抗性または耐性も付与する遺伝子。このような遺伝子の例として、米国特許第7,838,733号に記載される、α−ケトグルタレート依存性ジオキシゲナーゼ酵素(aad−1)遺伝子が挙げられる。
【0108】
(F)2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)などのフェノキシオーキシン除草剤に対する抵抗性または耐性をコードし、フルロキシピルまたはトリクロピルなどのピリジルオキシオーキシン除草剤に対する抵抗性または耐性も付与し得る遺伝子。このような遺伝子の例として、WO2007/053482 A2に記載されるα−ケトグルタレート依存性ジオキシゲナーゼ酵素遺伝子(aad−12)が挙げられる。
【0109】
(G)ジカンバに対する抵抗性または耐性をコードする遺伝子(例えば、米国特許公開第20030135879号を参照のこと)。
【0110】
(H)プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(PPO)を阻害する除草剤に対する抵抗性または耐性を提供する遺伝子(米国特許第5,767,373号を参照のこと)。
【0111】
(I)光化学系II反応中心(PS II)のコアタンパク質と結合する、トリアジン除草剤(アトラジンなど)および尿素誘導体(ジウロンなど)除草剤に対する抵抗性または耐性を提供する遺伝子(Brussian et al., (1989) EMBO J. 1989, 8(4): 1237-1245を参照のこと。
【0112】
3.価値が付加された形質を付与するか、またはそれに貢献する遺伝子
(A)植物のステアリン酸含量を増大させるために、例えば、アンチセンス遺伝子またはステアロイル−ACP不飽和化酵素を用いて、トウモロコシまたはアブラナ属(Brassica)を形質転換することによって修飾された脂肪酸代謝(Knultzon et al., (1992) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 89:2624。
【0113】
(B)減少したフィチン酸含量
(1)クロコウジカビ(Aspergillus niger)フィターゼ遺伝子などのフィターゼをコードする遺伝子の導入(Van Hartingsveldt et al., (1993) Gene 127:87)は、フィチン酸の分解を増強し、より多くの遊離リン酸を形質転換植物に付加する。
(2)フィチン酸含量を低下させる遺伝子は、導入され得る。トウモロコシでは、これは、例えば、クローニングすることおよび次いで、低レベルのフィチン酸を特徴とするトウモロコシ突然変異体と関連している単一の対立遺伝子と関連しているDNAを再導入することによって達成され得る(Raboy et al., (1990) Maydica 35:383)。
【0114】
(C)例えば、植物を、デンプンの分岐パターンを変更する酵素の遺伝子コーディングを用いて形質転換することによって達成される修飾された炭水化物組成物。このような酵素の例として、ストレプトコッカス・ミューカス(Streptococcus mucus)フルクトース転移酵素遺伝子(Shiroza et al., (1988) J. Bacteriol. 170:810)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)レバンスクラーゼ遺伝子(Steinmetz et al., (1985) Mol. Gen. Genel. 200:220)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)α−アミラーゼ(Pen et al., (1992) Biotechnology 10:292)、トマトインベルターゼ遺伝子(Elliot et al., (1993)、オオムギアミラーゼ遺伝子(Sogaard et al., (1993) J. Biol. Chem. 268:22480)およびトウモロコシ胚乳デンプン分岐酵素II(Fisher et al., (1993) Plant Physiol. 102:10450)が挙げられる。
【0115】
ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内に挿入されたドナーDNAポリヌクレオチドの存在を同定する方法が、本明細書において記載される。さらなる実施形態として、非修飾内因性植物ゲノム遺伝子座、これまでにターゲッティングされた植物ゲノム遺伝子座またはこれまでに挿入された外因性DNAを切断するために部位特異的ヌクレアーゼが使用され得る。内因性ゲノム遺伝子座のターゲッティングは、本開示の一実施形態である。
【0116】
実施形態では、本明細書において記載される方法および組成物は、遺伝子操作された(天然に存在しない)メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼとしても記載される)を含む部位特異的ヌクレアーゼを使用する。I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIなどのホーミングエンドヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼの認識配列は、公知である。米国特許第5,420,032号;同6,833,252号;Belfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379-30 3388;Dujon et al. (1989) Gene 82:115-118;Perler et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 11127;Jasin (1996) Trends Genet. 12:224-228;Gimble et al. (1996) J. Mol. Biol. 263:163-180;Argast et al. (1998) J. Mol. Biol. 280:345-353およびNew England Biolabsカタログも参照のこと。さらに、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然標的部位と結合するよう遺伝子操作され得る。例えば、Chevalier et al. (2002) Molec. Cell 10:895-905;Epinat et al. (2003) Nucleic Acids Res. 5 31:2952-2962;Ashworth et al. (2006) Nature 441:656-659;Paques et al. (2007) Current Gene Therapy 7:49-66;米国特許公開第20070117128号を参照のこと。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合性ドメインは、全体として(すなわち、ヌクレアーゼが同族切断ドメインを含むような)ヌクレアーゼとの関連で変更され得るか、または異種切断ドメインと融合され得る。
【0117】
その他の実施形態では、本明細書において記載される方法および組成物において使用される1種または複数のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、天然に存在する、または遺伝子操作された(天然に存在しない)TALエフェクターDNA結合ドメインを含む。例えば、本明細書においてその全文が参照により組み込まれる米国特許公開第20110301073号を参照のこと。ザントモナス(Xanthomonas)属の植物病原菌は、重要な作物において多数の疾患を引き起こすことが知られている。ザントモナス(Xanthomonas)属の病原性は、かなり異なるエフェクタータンパク質を植物細胞中に注入する保存されたIII型分泌(T3S)システムに応じて変わる。これらの中でも、注入されるタンパク質は、植物転写アクチベーターを模倣し、植物トランスクリプトームを操作する転写アクチベーター様(TALEN)エフェクターである(Kay et al (2007) Science 318:648-651を参照のこと)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含有する。最も十分に特性決定されたTAL−エフェクターの1種として、ザントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestgris)病原型ベシカトリア(Vesicatoria)由来のAvrBs3がある(Bonas et al (1989) Mol Gen Genet 218: 127-136およびWO2010079430を参照のこと)。TAL−エフェクターは、各リピートがおよそ34個のアミノ酸を含有するタンデムリピートの集中ドメインを含有し、これが、これらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要である。さらに、それらは、核局在性配列および酸性転写活性化ドメインを含有する(概説については、Schornack S、et al (2006) J Plant Physiol 163(3): 256-272を参照のこと)。さらに、植物病原菌青枯病菌(Ralstonia solanacearum)では、青枯病菌(R.solanacearum)次亜種株GMI1000において、および次亜種4株RS1000において、ザントモナス属(Xanthomonas)のAvrBs3ファミリーと相同である、brg11およびhpx17と表される2種の遺伝子が見出されている(Heuer et al (2007) Appl and Enviro Micro 73(13): 4379-4384を参照のこと)。これらの遺伝子は、ヌクレオチド配列では互いに98.9%同一であるが、hpx17のリピートドメイン中の1,575bpの欠失によって異なる。しかし、両遺伝子産物は、ザントモナス属(Xanthomonas)のAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性を有する。例えば、その全文が参照により組み込まれる、米国特許公開第20110301073号を参照のこと。
【0118】
これらのTALエフェクターの特異性は、タンデムリピート中に見られる配列に応じて変わる。反復される配列は、およそ102bpを含み、リピートは、通常、互いに91〜100%相同である(Bonas et al、同書)。リピートの多型性は、普通、12および13位に局在し、12および13位の超可変二残基の同一性と、TAL−エフェクターの標的配列中の連続ヌクレオチドの同一性の間の1対1の対応であると思われる(Moscou and Bogdanove, (2009) Science 326:1501およびBoch et al (2009) Science 326:1509-1512を参照のこと)。実験的に、これらのTAL−エフェクターのDNA認識の天然のコードは、12および13位のHD配列が、シトシン(C)との結合につながり、NGがTと、NIがA、C、GまたはTと結合し、NNが、AまたはGと結合し、INGがTと結合するように決定された。これらのDNA結合リピートは、リピートの新規組合せおよび数を有するタンパク質にアセンブルされ、植物細胞において、新規配列と相互作用し、非内因性リポーター遺伝子の発現を活性化できる人工転写因子が作製された(Boch et al、同書)。遺伝子操作されたTALタンパク質は、FokI切断ハーフドメインと連結され、酵母リポーターアッセイ(プラスミドベースの標的)において活性を示すTALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)が得られた。
【0119】
CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文反復配列(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic repeats)/Cas(CRISPR関連)ヌクレアーゼ系は、ゲノムエンジニアリングに使用され得る細菌系をベースとする最近遺伝子操作されたヌクレアーゼ系である。それは多数の細菌および古細菌の適応免疫応答の部分をベースとする。ウイルスまたはプラスミドが細菌に侵入する場合に、「免疫」応答によって侵入者のDNAのセグメントが、CRISPR RNA(crRNA)に変換される。このcrRNAは、次いで、部分相補性の領域によって、tracrRNAと呼ばれる別の種類のRNAと会合し、Cas9ヌクレアーゼを、「プロトスペーサー」と呼ばれる標的DNA中のcrRNAと相同な領域に案内する。Cas9は、DNAを切断して、crRNA転写物内に含有される20ヌクレオチドのガイド配列によって特定される部位のDSBで平滑末端を作製する。Cas9は、部位特異的DNA認識および切断のためにcrRNAおよびtracrRNAの両方を必要とする。この系は、ここで、crRNAおよびtracrRNAが1分子(「単一ガイドRNA」)に組み合わされ得るよう遺伝子操作され、単一ガイドRNAのcrRNA相当部分は、Cas9ヌクレアーゼを標的の任意の望ましい配列に案内するよう遺伝子操作され得る(Jinek et al (2012) Science 337, p. 816-821, Jinek et al, (2013), eLife 2:e00471およびDavid Segal, (2013) eLife 2:e00563を参照のこと)。したがって、CRISPR/Cas系は、ゲノム中の所望の標的で二本鎖切断(DSB)を生成するよう遺伝子操作され得、DSBの修復は、エラープローン修復の増大を引き起こす修復阻害剤の使用によって影響を受け得る。
【0120】
特定の実施形態では、Casタンパク質は、天然に存在するCasタンパク質の「機能的誘導体」であり得る。天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列ポリペプチドと共通する質的生物学的特性を有する化合物である。「機能的誘導体」として、それだけには限らないが、対応する天然配列ポリペプチドと共通する生物活性を有するという条件で、天然配列の断片および天然配列ポリペプチドの誘導体およびその断片を含む。本明細書において考慮される生物活性は、機能的誘導体の、DNA基質とハイブリダイズして断片になる能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列変異体、共有結合修飾およびその融合物の両方を包含する。Casポリペプチドまたはその断片の適した誘導体として、それだけには限らないが、Casタンパク質またはその断片の突然変異体、融合物、共有結合修飾が挙げられる。Casタンパク質またはその断片を含むCasタンパク質およびCasタンパク質またはその断片の誘導体は、細胞から得ることができる、または化学的に、もしくはこれら2種の手順の組合せによって合成され得る。細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞またはCasタンパク質を天然に産生するか、もしくは内因性Casタンパク質を高発現レベルで産生するよう、もしくは外因的に導入された、内因性Casと同一であるかもしくは異なっているCasをコードする核酸からCasタンパク質を産生するよう遺伝子的に操作される細胞であり得る。いくつかの場合には、細胞は、Casタンパク質を天然に産生せず、Casタンパク質を産生するよう遺伝子的に操作される。Casタンパク質は、CasヌクレアーゼをガイドRNAと同時発現することによって哺乳類細胞中に(推定的に、植物細胞内に)配置される。Le Cong, F., et al., (2013) Science 339(6121):819-823に開示されるように、Cas媒介性ゲノム切断を促進するために、2種の形態のガイドRNAが使用され得る。
【0121】
特定の実施形態では、細胞のゲノムのin vivo切断および/またはターゲッティングされた切断のために使用される1種または複数のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質を含む。いくつかの実施形態では、ジンクフィンガータンパク質は、選択の標的部位と結合するよう遺伝子操作されるものには天然に存在しない。例えば、参照によりその全文が、すべて本明細書に組み込まれる、Beerli et al. (2002) Nature Biotechnol. 20:135-141;Pabo et al. (2001) Ann. Rev. Biochem. 70:313-340;Isalan et al. (2001) Nature Biotechnol. 19:656-660;Segal et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12:632-637;Choo et al. (2000) Curr. Opin. Struct. Biol. 10:411-416;米国特許第6,453,242号;同6,534,261号;同6,599,692号;同6,503,717号;同6689,558号;同7,030,215号;同6,794,136号;同7,067,317号;同7,262,054号;同7,070,934号;同7,361,635号;同7,253,273号;および米国特許公開第2005/0064474号;同2007/0218528号;同2005/0267061号を参照のこと。
【0122】
遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して、新規結合特異性を有し得る。操作する方法は、それだけには限らないが、合理的設計および種々の種類の選択を含む。合理的設計は、例えば、トリプレット(またはクアドルプレット)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することを含み、これでは、各トリプレットまたはクアドルプレットヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクアドルプレット配列と結合するジンクフィンガーの1つまたは複数のアミノ酸配列と会合される。例えば、その全文が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,453,242号および同6,534,261号を参照のこと。
【0123】
標的部位;ZFPの選択および融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のための方法は、当業者には公知であり、米国特許第6,140,0815号;同789,538号;同6,453,242号;同6,534,261号;同5,925,523号;同6,007,988号;同6,013,453号;同6,200,759号;WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970 WO01/88197;WO02/099084;WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496に詳細に記載されている。
【0124】
さらに、これらおよびその他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガー型ジンクフィンガータンパク質は、例えば、5個以上のアミノ酸の長さのリンカーを含めた任意の適したリンカー配列を使用して一緒に連結され得る。6個以上のアミノ酸の長さの例示的リンカー配列については、米国特許第6,479,626号;同6,903,185号;および同7,153,949号も参照のこと。本明細書において記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間の適したリンカーの任意の組合せを含み得る。
【0125】
したがって、部位特異的ヌクレアーゼは、ドナーDNAポリヌクレオチド(すなわち、少なくとも1種の導入遺伝子を含む)を挿入することが望まれる、任意の遺伝子中の標的部位と特異的に結合するDNA結合ドメインを含む。
【0126】
任意の適した切断ドメインは、DNA結合ドメインと作動可能に連結され、ヌクレアーゼ融合タンパク質を形成し得る。例えば、ZFP DNA結合ドメインが、ZFN、つまり、その遺伝子操作された(ZFP)DNA結合ドメインによって、その意図される核酸標的を認識でき、DNAを、ヌクレアーゼ活性によってZFP結合部位の近くで切断されるようにする機能的実体を作製するために、ヌクレアーゼドメインと融合されている。例えば、Kim et al. (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93(3):1156-1160を参照のこと。より最近は、ZFNは、種々の生物におけるゲノム修飾のために使用された。例えば、米国特許公開第20030232410号;同20050208489号;同20050026157号;同20050064474号;同20060188987号;同20060063231号;および国際公開公報WO07/014275を参照のこと。同様に、TALEN DNA結合ドメインが、TALENを作製するためにヌクレアーゼドメインと融合された。例えば、米国特許公開第20110301073号を参照のこと。
【0127】
上記のように、切断ドメインは、DNA結合ドメインにとって異種であり得る、例えば、ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼに由来する切断ドメインまたはTALEN DNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼに由来する切断ドメインまたはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼに由来する切断ドメイン。異種切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得られ得る。切断ドメインが由来し得る例示的エンドヌクレアーゼとして、それだけには限らないが、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられる。例えば、2002−2003カタログ、New England Biolabs、Beverly、MA;およびBelfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379-3388を参照のこと。DNAを切断するさらなる酵素は、公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;マングビーンヌクレアーゼ;膵臓DNアーゼI;小球菌ヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linn et al. (eds.) Nuclease, Cold Spring Harbor Laboratory Press,1993も参照のこと)。これらの酵素(またはその機能的断片)のうち1種または複数が、切断ドメインおよび切断ハーフドメインの供給源として使用され得る。
【0128】
同様に、切断ハーフドメインは、切断活性のために二量化を必要とする、上記で示されるような、任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来し得る。一般に、融合タンパク質が、切断ハーフドメインを含む場合には、その切断のために2種の融合タンパク質が必要である。あるいは、2種の切断ハーフドメインを含む単一のタンパク質が使用され得る。2種の切断ハーフドメインは、同一エンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得るか、または各切断ハーフドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得る。さらに、2種の融合タンパク質の標的部位は、好ましくは、2種の融合タンパク質の、そのそれぞれの標的部位との結合が、切断ハーフドメインが、例えば、二量化によって機能的切断ドメインを形成するのを可能にする、互いに対する空間的方向に切断ハーフドメインを置くよう、互いに関して配置される。したがって、特定の実施形態では、標的部位の近位端部が、5〜8ヌクレオチドによって、または15〜18ヌクレオチド離れている。しかし、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2種の標的部位の間に介在し得る(例えば、2〜50ヌクレオチド対またはそれ以上)。一般に、切断部位は、標的部位の間にある。
【0129】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多数の種に存在し、DNAと配列特異的に(認識部位で)結合でき、結合の部位で、または結合の付近でDNAを切断できる。特定の制限酵素(例えば、Type IIS)は、DNAを、認識部位から除かれた部位で切断し、分離可能な結合および切断ドメインを有する。例えば、Type IIS酵素Fok Iは、一方の鎖の認識部位から9ヌクレオチドで、またもう一方の鎖の認識部位から13ヌクレオチドでDNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;同5,436,150号および同5,487,994号;ならびにLi et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4275-4279;Li et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2764-2768;Kim et al. (1994a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:883-887;Kim et al. (1994b) J. Biol. Chem. 269:31,978-31,982を参照のこと。したがって、一実施形態では、融合タンパク質は、遺伝子操作されている場合も、遺伝子操作されていない場合もある、少なくとも1種のType IIS制限酵素由来の切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)および1種または複数のジンクフィンガー結合ドメインを含む。
【0130】
切断ドメインが結合ドメインから分離可能である例示的Type IIS制限酵素として、Fok Iがある。この特定の酵素は、二量体として活性である。Bitinaite et al.,(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 10,570-10,575。したがって、本開示の目的上、開示される融合タンパク質において使用されるFok I酵素の一部は、切断ハーフドメインと考えられる。したがって、ジンクフィンガー−Fok I融合物を使用する細胞配列のターゲッティングされる二本鎖切断および/またはターゲッティングされる置換について、触媒的に活性な切断ドメインを再構築するために、各々、FokI切断ハーフドメインを含む2種の融合タンパク質が使用され得る。あるいは、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2種のFok I切断ハーフドメインを含有する単一のポリペプチド分子も使用され得る。ジンクフィンガー−Fok I融合物を使用するターゲッティングされる切断およびターゲッティングされる配列変更のパラメータは、本開示中の別の場所に提供されている。
【0131】
切断ドメインまたは切断ハーフドメインは、切断活性を保持するか、または多量化(例えば、二量化)して、機能的切断ドメインを形成する能力を保持するタンパク質の任意の一部であり得る。
【0132】
例示的IIS型制限酵素は、その全文が本明細書に組み込まれる国際特許出願公開WO07/014275に記載されている。さらなる制限酵素も、分離可能な結合および切断ドメインを含有し、これらは、本開示によって考慮される。例えば、Roberts et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:418-420を参照のこと。
【0133】
特定の実施形態では、切断ドメインは、例えば、そのすべての開示内容が参照によりその全文で本明細書に組み込まれる、米国特許公開第20050064474号;同20060188987号;同20070305346号および同20080131962号に記載されるように、ホモ二量体化を最小化または防ぐ、1種または複数の遺伝子操作された切断ハーフドメイン(二量体化ドメイン突然変異体とも呼ばれる)を含む。Fok Iの446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537および538位のアミノ酸残基は、すべてFok I切断ハーフドメインの二量体化に影響を及ぼすための標的である。
【0134】
偏性ヘテロ二量体を形成するFok Iの例示的な遺伝子操作された切断ハーフドメインは、第1の切断ハーフドメインが、Fok Iの490および538位にアミノ酸残基の突然変異を含み、第2の切断ハーフドメインがアミノ酸残基486および499に突然変異を含む対を含む。
【0135】
したがって、一実施形態では、490での突然変異は、Glu(E)をLys(K)で置換し;538での突然変異は、Iso(I)をLys(K)で置換し;486での突然変異は、Gln(Q)をGlu(E)で置換し;499位での突然変異は、Iso(I)をLys(K)で置換する。具体的には、本明細書に記載された遺伝子操作された切断ハーフドメインは、一方の切断ハーフドメイン中で490位(E→K)および538位(I→K)を突然変異させて、「E490K:I538K」と表される遺伝子操作された切断ハーフドメインを製造することによって、および別の切断ハーフドメイン中で486位(Q→E)および499位(I→L)を突然変異させて、「Q486E:I499L」と表される遺伝子操作された切断ハーフドメインを製造することによって調製された。本明細書において記載された遺伝子操作された切断ハーフドメインは、異常な切断が最小化または消滅される偏性ヘテロ二量体突然変異体である。例えば、その開示内容が、すべての目的のために全文で組み込まれる米国特許公開第2008/0131962号を参照のこと。特定の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、486、499および496位(野生型FokIに対して番号付けされた)に突然変異を、例えば、486位の野生型Gln(Q)残基をGlu(E)残基で、499位の野生型Iso(I)残基をLeu(L)残基で、および496位の野生型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基で(それぞれ、「ELD」および「ELE」ドメインとも呼ばれる)置換する突然変異を含む。その他の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、490、538および537位(野生型FokIに対して番号付けされた)に突然変異を、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で、538位の野生型Iso(I)残基をLys(K)残基で、537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で(それぞれ、「KKK」および「KKR」ドメインとも呼ばれる)置換する突然変異を含む。その他の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、490および537位(野生型FokIに対して番号付けされた)に突然変異を、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で、537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で(それぞれ、「KIK」および「KIR」ドメインとも呼ばれる)置換する突然変異を含む(米国特許公開第20110201055号を参照のこと)。その他の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、「Sharkey」および/または「Sharkey」突然変異を含む(Guo et al, (2010) J. Mol. Biol. 400(1):96-107を参照のこと)。
【0136】
本明細書において記載された遺伝子操作された切断ハーフドメインは、任意の適した方法を使用して、例えば、米国特許公開第20050064474号;同20080131962号;および同20110201055号に記載されるような、野生型切断ハーフドメイン(Fok I)の部位特異的突然変異誘発によって調製され得る。
【0137】
あるいは、ヌクレアーゼは、いわゆる「スプリット酵素」技術(例えば、米国特許公開第20090068164号を参照のこと)を使用して、核酸標的部位でin vivoでアセンブルされ得る。このようなスプリット酵素の構成成分は、別個の発現構築物で発現され得るか、または例えば、個々の構成成分が、自己切断性2AペプチドまたはIRES配列によって分かれている1つのオープンリーディングフレームに連結され得る。構成成分は、個々のジンクフィンガー結合ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであり得る。
【0138】
ヌクレアーゼは、例えば、WO2009/042163および20090068164に記載されるような酵母ベースの染色体系において、使用に先立って活性についてスクリーニングされ得る。ヌクレアーゼ発現構築物は、当技術分野で公知の方法を使用して容易に設計され得る。例えば、米国特許公開第20030232410号;同20050208489号;同20050026157号;同20050064474号;同20060188987号;同20060063231号;および国際公開WO07/014275を参照のこと。ヌクレアーゼの発現は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターの制御下であり得る。
【0139】
「標的」または「標的部位」または「ターゲッティングされるゲノム遺伝子座」は、結合存在のための十分な条件のときに、結合分子(例えば、部位特異的ヌクレアーゼ)が結合する核酸の一部を規定する核酸配列である。
【0140】
一実施形態では、ゲノム遺伝子座配列は、染色体、エピソーム、オルガネラゲノム(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)、人工染色体ならびに例えば、増幅された配列、二重微小染色体および内因性または感染性細菌およびウイルスのゲノムなどの細胞中に存在する任意のその他の種類の核酸中に存在するものを含む。ゲノム遺伝子座配列は、正常(すなわち、野生型)または突然変異体であり得;突然変異体配列は、例えば、挿入(例えば、これまでに挿入された外因性ポリヌクレオチド)、欠失、転位置、再編成および/または点突然変異を含み得る。ゲノム遺伝子座配列はまた、いくつかの異なる対立遺伝子のうち1種も含み得る。
【0141】
また、ドナーDNAポリヌクレオチド配列をゲノム遺伝子座内に挿入する方法も本発明の実施形態として本明細書において記載される。ターゲッティングされたゲノム修飾の報告された、観察された頻度は、植物内のゲノム遺伝子座をターゲッティングすることは、相対的に効率が悪いことを示す。このような方法の成功率は、幾分かは、相同組換えの不十分な効率および高頻度の、ドナーDNAの、標的部位以外のゲノムの領域への非特異的挿入のために低い。本開示は、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内のドナーDNAポリヌクレオチドを同定する方法を提供する。
【0142】
本開示の方法は、部位特異的ヌクレアーゼ(例えば、切断ドメインと融合された遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメイン)を作製し、使用して、細胞DNAにおいて1つまたは複数のターゲッティングされた二本鎖切断を行うことを含む。細胞DNA中の二本鎖切断は、細胞修復機序を切断部位の近くで数千倍に刺激するので、このようなターゲッティングされた切断によって、ゲノム中の実質的に任意の部位で配列の変更または置換(相同性によって指示される修復によって)が可能となる。
【0143】
本明細書に記載される融合分子に加えて、選択されたゲノム配列のターゲッティングされた置換はまた、置換またはドナーDNAポリヌクレオチド配列の導入を必要とする。ドナーDNAポリヌクレオチド配列は、融合タンパク質(複数可)の発現に先立って、それと同時に、それに続いて細胞中に導入され得る。ドナーDNAポリヌクレオチドは、ゲノム配列に対して、それと、相同性を有するゲノム配列間での相同組換え(または相同性によって指示される修復)を支持するのに十分な相同性を含有する。ドナーDNAポリヌクレオチドおよびゲノム遺伝子座間のおよそ25、50 100、200、500、750、1,000、1,500、2,000ヌクレオチドまたはそれ以上の配列相同性(または10から2,000ヌクレオチドの間またはそれ以上の任意の整数値)が、それらの間の相同組換えを支持する。ドナーDNAポリヌクレオチド配列は、10から5,000ヌクレオチド(または任意の整数値のそれらの間のヌクレオチド)またはそれ以上の長さの範囲であり得る。ドナーDNAポリヌクレオチド配列は、通常、置き換わるゲノム配列と同一ではないことは、容易に明らかとなろう。例えば、ドナーDNAポリヌクレオチドの配列は、染色体配列との十分な相同性が存在する限り、ゲノム配列に関して、1つまたは複数の単一塩基変更、挿入、欠失、逆位または再編成を含有し得る。あるいは、ドナーDNAポリヌクレオチド配列は、2つの相同性の領域が両側に位置する非相同配列を含有し得る。さらに、ドナーDNAポリヌクレオチド配列は、細胞クロマチン中の対象の領域と相同ではない配列を含有するベクター分子を含み得る。全般的に、ドナーDNAポリヌクレオチド配列の相同領域(複数可)は、組換えが望まれるゲノム遺伝子座に対して少なくとも50%の配列同一性を有する。特定の実施形態では、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%または99.9%の配列同一性が存在する。ドナーDNAポリヌクレオチドの長さに応じて、1%から100%の間の配列同一性の任意の値が存在する。
【0144】
ドナーDNAポリヌクレオチド分子は、細胞クロマチンに対して相同性のいくつかの非連続領域を含有し得る。例えば、対象の領域中に普通は存在しない配列のターゲッティングされた挿入のために、前記配列は、ドナーDNポリ核酸分子中に存在し、対象の領域中の配列に対して相同性の領域が両側に位置し得る。
【0145】
ドナーポリヌクレオチドは、DNAまたはRNA、一本鎖または二本鎖であり得、線形または環状形態で細胞中に導入され得る。線形形態で導入される場合には、ドナー配列の末端は、当業者に公知の方法によって保護され得る(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)。例えば、1種または複数のジデオキシヌクレオチド残基が、線形分子の3’末端に付加される、および/または自己相補性オリゴヌクレオチドが、末端の一方もしくは両方にライゲーションされる。例えば、Chang et al., (1987) Proc. Natl Acad. Sd. USA 84:4959-4963;Nehls et al., (1996) Science 272:886-889を参照のこと。外因性ポリヌクレオチドを分解から保護するためのさらなる方法として、それだけには限らないが、末端アミノ基(複数可)の付加および例えば、ホスホロチオエート、ホスホロアミド酸およびO−メチルリボースまたはデオキシリボース残基などの修飾ヌクレオチド間連結の使用が挙げられる。
【0146】
ドナーDNAポリヌクレオチドは、例えば、複製起点、プロモーターおよび抗生物質耐性をコードする遺伝子などのさらなる配列を有するベクター分子の一部として細胞中に導入され得る。さらに、ドナーDNAポリヌクレオチドは、裸の核酸として、リポソームもしくはポロクサマーなどの薬剤と複合体を形成した核酸として導入され得るか、または細菌もしくはウイルスによって送達され得る(例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)種、リゾビウム(Rhizobium)種NGR234、シノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizoboium meliloti)、メゾリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)、タバコモザイクウイルス、ジャガイモウイルスX、カリフラワーモザイクウイルスおよびキャッサバ葉脈モザイクウイルス。例えば、Chung et al. (2006) Trends Plant Sd. 11(1): 1-4を参照のこと)。
【0147】
1つの理論に拘束されようとは思わないが、細胞配列中の二本鎖切断の存在は、切断に隣接するか、または切断の周囲の領域に対して相同性を有する外因性DNA分子の存在と相まって、ドナー分子から細胞性(例えば、ゲノムまたは染色体)配列への配列情報の移動によって;すなわち、「遺伝子変換」としても知られる、相同性によって指示される修復のプロセスによって切断を修復する細胞機序を活性化すると思われる。本出願人の方法は、遺伝子操作されたZFPの強力なターゲッティング能力を、切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)と組み合わせて、二本鎖切断を、外因性配列の挿入が望まれるゲノムの領域に特異的にターゲッティングすることが有利である。
【0148】
染色体配列の変更のために、所望の配列変更を達成するためにドナー配列の十分な部分がコピーされる限り、ドナーの全配列が、染色体中にコピーされる必要はない。
【0149】
相同組換えによるドナー配列の挿入の効率は、二本鎖切断と、組換えが望まれる部位の間の細胞DNA中の距離と逆相関している。言い換えれば、二本鎖切断が、組換えが望まれる部位に近い場合に、より高い相同組換え効率が観察される。組換えの正確な部位が予め決定されない(例えば、所望の組換え事象が、ゲノム配列の一定区間中で起こり得る)場合には、ドナー核酸の長さおよび配列は、切断部位(複数可)と一緒に、所望の組換え事象を得るよう選択される。所望の事象が、ゲノム配列中の単一ヌクレオチド対の配列を変更するよう設計される場合には、細胞クロマチンは、そのヌクレオチド対のいずれかの側の10,000ヌクレオチド内で切断される。特定の実施形態では、切断は、配列が変更されるべきヌクレオチド対のいずれかの側の、1,000、500、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5または2ヌクレオチド、または2から1,000ヌクレオチド間の任意の整数値内で生じる。
【0150】
上記で詳述されるように、各々、ジンクフィンガー結合ドメインおよび切断ハーフドメインを含む2種の融合タンパク質の結合部位は、その他の結合部位に最も近い各結合部位の端から測定されるように5〜8または15〜18ヌクレオチド離れて局在し得、切断は結合部位の間で起こる。切断が、結合部位間の単一部位または複数の部位で起こるかどうかは、切断されたゲノム配列がドナー配列によって置換されるので重要ではない。したがって、ターゲッティングされた組換えによる、単一ヌクレオチド対の配列の効率的な変更のためには、結合部位間の領域の中間点は、そのヌクレオチド対の10,000ヌクレオチド内、好ましくは、1,000ヌクレオチドまたは500ヌクレオチドまたは200ヌクレオチドまたは100ヌクレオチドまたは50ヌクレオチドまたは20ヌクレオチドまたは10ヌクレオチドまたは5ヌクレオチドまたは2ヌクレオチド内、または1ヌクレオチドであるか、または対象のヌクレオチド対である。
【0151】
特定の実施形態では、相同染色体は、ドナーDNAポリヌクレオチドとして働き得る。したがって、例えば、ヘテロ接合体中の突然変異の訂正は、一方の染色体上の突然変異体配列と結合し、切断するが、相同染色体上の野生型配列は切断しない融合タンパク質を遺伝子操作することによって達成され得る。突然変異を保有する染色体上の二本鎖切断は、相同染色体に由来する野生型配列が、切断された染色体中にコピーされ、したがって、野生型配列の2つのコピーが回復される相同性をベースとする「遺伝子変換」プロセスを刺激する。
【0152】
例えば、それだけには限らないが、RAD52エピスタシス群のメンバー(例えば、Rad50、Rad51、Rad51B、RadSIC、RadSID、Rad52、Rad54、Rad54B、Mrell、XRCC2、XRCC3)などの相同組換えに関与する遺伝子、産物が前記遺伝子産物(例えば、BRCAl、BRCA2)と相互作用する遺伝子および/またはNBSl複合体中の遺伝子の発現を活性化するさらなるZFP機能性ドメイン融合物の使用を含めた、ターゲッティングされる組換えのレベルを増強し得る方法および組成物も提供される。例えば、Boyko et al. (2006) Plant Physiology 141 :488-497およびLaFarge et al. (2003) Nucleic Acids Res 31(4): 1148-1155を参照のこと。同様に、非相同性末端結合に関与する遺伝子(例えば、Ku70/80、XRCC4、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ、DNAリガーゼ4)の発現を抑制するために、ZFP機能性ドメイン融合物が、本明細書において開示される方法および組成物と組み合わせて使用され得る。例えば、Riha et al. (2002) EMBO 21 :2819-2826;Freisner et al. (2003) Plant J. 34:427-440;Chen et al. (1994) European Journal of Biochemistry 224:135-142を参照のこと。ジンクフィンガー結合ドメインおよび機能性ドメインの間の融合物を使用して、遺伝子発現を活性化および抑制するための方法は、例えば、同一所有者の米国特許第6,534,261号;同6,824,978号および同6,933,113号に開示されている。さらなる抑制方法として、抑制されるべき遺伝子の配列にターゲッティングされる、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび/または低分子干渉RNA(siRNAまたはRNAi)の使用が挙げられる。
【0153】
本明細書において開示される組換え宿主の遺伝子操作は、標準遺伝子技術を使用して、遺伝子操作に適している任意の宿主細胞において行われ得る。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される組換え宿主細胞は、遺伝子修飾および組換え遺伝子発現に有用な、任意の生物または微生物宿主であり得る。いくつかの実施形態では、組換え宿主は、それだけには限らないが、双子葉および単子葉植物両方を含めた任意の高等植物ならびに作物およびそのオイルのために使用される植物を含めた消費可能な植物であり得る。したがって、任意の植物種または植物細胞は、以下にさらに記載されるように選択され得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内に本開示に従って挿入されたドナーDNAポリヌクレオチドを含む植物(例えば、植物宿主細胞)として、それだけには限らないが、双子葉および単子葉植物の両方、特に、作物を含めた消費可能な植物を含めた任意の高等植物が挙げられる。このような植物として、それだけには限らないが、例えば、アルファルファ、ダイズ、ワタ、ナタネ(セイヨウアブラナとも呼ばれる)、亜麻仁、トウモロコシ、イネ、ビロードキビ、コムギ、ベニバナ、ソルガム、サトウダイコン、ヒマワリ、タバコおよび芝草を挙げることができる。したがって、任意の植物種または植物細胞が選択され得る。実施形態では、本明細書において使用される植物細胞およびそれから成長したか、またはそれに由来する植物として、それだけには限らないが、ナタネ(セイヨウアブラナ(Brassica napus))、カラシナ(ブラシカ・ジュンセア(Brassica juncea));エチオピアンマスタード(ブラシカ・カリナタ(Brassica carinata));カブ(ブラシカ・ラパ(Brassica rapa));キャベツ(ブラシカ・オレラセア(Brassica oleracea));ダイズ(グリシン・マックス(Glycine max));アマ(リナム・ウシタティシマム(Linum usitatissimum));トウモロコシ(maize)(トウモロコシ(corn)とも呼ばれる)(ゼア・メイズ(Zea mays));ベニバナ(カルサムス・チンクトリウス(Carthamus tinctorius));ヒマワリ(ヘリアンサス・アナス(Helianthus annuus));タバコ(ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum));シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ブラジルナッツ(バーソレチア・エクセルサ(Betholettia excelsa);トウゴマ(リシナス・コミュニス(Riccinus communis));ココナッツ(ココス・ヌシフェラ(Cocus nucifera));コリアンダー(コリアンドラム・サティバム(Coriandrum sativum));ワタ(ゴシピウム属種(Gossypium spp.));ラッカセイ(アラキス・ヒポゲア(Arachis Hypogaea));ホホバ(シモンドシダ・キネンシス(Simmondsia chinensis));アブラヤシ(エライズ・グイネーイス(Elaeis guineeis));オリーブ(オレア・ユーパエア(Olea eurpaea));イネ(オリザ・サティバ(Oryza sativa));カボチャ(ククルビタ・マキシマ(Cucurbita maxima));オオムギ(ホルデウム・ウルガレ(Hordeum vulgare));サトウキビ(サッカルム・オフィシナルム(Saccharum officinarum));イネ(オリザ・サティバ(Oryza sativa));コムギ(トリチカム・デュラム(Triticum durum)およびトリチカム・アスティバム(Triticum aestivum)を含むコムギ属種(Triticum spp.))およびダックウィード(レムナセアエ属種(Lemnaceae sp.))から得られる細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、植物種内の遺伝的背景は、変わり得る。
【0155】
本明細書において使用される場合、用語「植物の部分」は、限定するものではないが、種子(成熟種子および未熟種子を含む)、植物を切り取ったもの、植物細胞、植物細胞培養物、植物器官、花粉、胚、花、果実、シュート、葉、根、茎、外植片などを含めた植物の任意の部分を含む。植物細胞は、植物の構造的および生理学的単位であり、プロトプラストおよび細胞壁を含む。植物細胞は、単離された単細胞または細胞の凝集体、例えば、もろいカルスもしくは培養細胞の形態であり得、または、高度に組織化された単位、例えば、植物組織、植物器官もしくは植物体の一部であり得る。したがって、植物細胞は、全植物体に再生できるプロトプラスト、生殖体生成細胞、または細胞もしくは細胞の集合であり得る。そのようなものとして、複数の植物細胞を含み、全植物体に再生できる種子が、本開示の目的で植物細胞と考えられる。植物組織または植物器官は、種子、プロトプラスト、カルスまたは構造的もしくは機能的単位に組織されている植物細胞の任意のその他の群であり得る。植物の特に有用な部分は、後代植物の増殖に有用な収穫可能な部分(単数または複数)を含む。植物の収穫可能な部分は、植物の任意の有用な部分、例えば、花、花粉、実生、塊茎、葉、茎、果実、種子、根などであり得る。増殖のために有用な植物の一部として、例えば、種子、果実、切り取ったもの、実生、塊茎、台木などが挙げられる。組織培養物は好ましくは、前記の近交系植物の生理学的および形態学的特徴を有する植物を再生できるもの、また前記の近交系植物と実質的に同一の遺伝子型を有する植物を再生できるものとなる。一実施形態では、このような組織培養物中の再生可能な細胞は、胚、プロトプラスト、成長点細胞、カルス、花粉、葉、葯、根、根端、トウモロコシの毛、花、穀粒、穂、トウモロコシの穂軸、外皮または柄となる。さらに、本開示の実施形態は、本開示の実施形態の組織培養物から再生された植物を提供する。
【0156】
ゲノム遺伝子座内に挿入されたドナーDNAポリヌクレオチドを含む植物の製造に関して、植物を形質転換する方法は、当技術分野で周知である。例えば、双子葉植物および単子葉植物のための植物形質転換のために、生物学的および物理的形質転換プロトコールを含めた多数の方法が開発されている(例えば、Goto-Fumiyuki et al., Nature Biotech 17:282-286 (1999);Miki et al., Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick, B. R. and Thompson、J. E.、Eds., CRC Press, Inc., Boca Raton, pp. 67-88 (1993))。さらに、遺伝子発現カセットを含むベクターおよびin vitro培養法は、例えば、Gruber et al., Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick, B. R. and Thompson, J. E. Eds., CRC Press, Inc., Boca Raton, pp. 89-119 (1993)において入手可能である。
【0157】
遺伝子発現カセットを含むDNAを植物宿主細胞中に挿入するために多数の技術が利用可能である。それらの技術は、形質転換剤としてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を使用する武装解除したT−DNAを用いる形質転換、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン形質転換、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、超音波法(例えば、ソノポレーション)、リポソーム形質転換、マイクロインジェクション、裸のDNA、プラスミドベクター、ウイルスベクター、微粒子銃(biolistic)(微粒子銃(microparticle bombardment))、シリコンカーバイドWHISKERS(商標)媒介性形質転換、エアゾールビーミングまたはポリエチレングリコール媒介性形質転換およびその他の可能性ある方法を含む。
【0158】
例えば、遺伝子発現カセットを含むDNA構築物は、植物細胞プロトプラストのエレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションなどの技術を使用して、植物細胞のゲノムDNA中に直接的に導入され得るか、またはDNA構築物は、DNA微粒子銃(particle bombardment)などの微粒子銃(biolistic)法を使用して植物組織に直接的に導入され得る(例えば、Klein et al. (1987) Nature 327:70-73を参照のこと)。植物細胞形質転換のためのさらなる方法として、シリコンカーバイドWHISKERS(商標)媒介性DNA取り込みによるマイクロインジェクション(Kaeppler et al. (1990) Plant Cell Reporter 9:415-418)が挙げられる。あるいは、DNA構築物は、ナノ粒子形質転換によって植物細胞中に導入され得る(例えば、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる米国特許出願番号第12/245,685号を参照のこと)。
【0159】
植物形質転換の別の公知の方法として、DNAが微粒子(microprojectile)の表面に保持される微粒子(microprojectile)媒介性形質転換がある。この方法では、発現ベクターは、微粒子(microprojectiles)を、植物細胞壁および細胞膜を透過するのに十分な速度に加速させる微粒子銃(biolistic)装置を用いて、植物組織中に導入される。Sanford et al., Part. Sci. Technol. 5:27 (1987), Sanford, J. C., Trends Biotech. 6:299 (1988), Sanford, J. C., Physiol. Plant 79:206 (1990), Klein et al., Biotechnology 10:268 (1992)。
【0160】
あるいは、遺伝子導入および形質転換法として、それだけには限らないが、塩化カルシウム沈殿によるプロトプラスト形質転換、DNAのポリエチレングリコール(PEG)またはエレクトロポレーション媒介性取り込み(Paszkowski et al. (1984) EMBO J 3:2717-2722, Potrykus et al. (1985) Molec. Gen. Genet. 199:169-177; Fromm et al. (1985) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 82:5824-5828;およびShimamoto (1989) Nature 338:274-276を参照のこと)および植物組織のエレクトロポレーション(D’Halluin et al. (1992) Plant Cell 4:1495-1505)が挙げられる。
【0161】
遺伝子発現カセットを含むベクターを植物中に導入するために利用されている方法は、アグロバクテリウムの天然形質転換システムに基づいている。Horsch et al. Science 227:1229 (1985)。A.ツメファシエンス(A. tumefaciens)およびA.リゾゲネス(A. rhizogenes)は、植物細胞を遺伝的に形質転換するのに有用であることが知られている植物病原性土壌細菌である。A.ツメファシエンス(A. tumefaciens)およびA.リゾゲネス(A. rhizogenes)のTiおよびRiプラスミドは、それぞれ、植物の遺伝子形質転換に関与する遺伝子を保持する。Kado, C. I., Crit. Rev. Plant. Sci. 10:1 (1991)。アグロバクテリウムベクター系およびアグロバクテリウム媒介性遺伝子導入のための方法の記載はまた、例えば、Gruber et al., 前掲、Miki et al., 前掲、Moloney et al., Plant Cell Reports 8:238 (1989)および米国特許第4,940,838号および同5,464,763号において入手可能である。
【0162】
形質転換にアグロバクテリウムが使用される場合には、挿入されるべきDNAは、特定のプラスミドに、すなわち、中間体ベクターまたはバイナリーベクターのいずれかにクローニングされるべきである。中間体ベクターは、アグロバクテリウム中では自身で複製できない。中間体ベクターは、ヘルパープラスミド(コンジュゲーション)によってアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)中に転移され得る。日本たばこスーパーバイナリー系は、このような系の一例である(Komari et al., (2006) In: Methods in Molecular Biology (K. Wang、ed.) No. 343: Agrobacterium Protocols (2nd Edition, Vol. 1) HUMANA PRESS Inc., Totowa, NJ, pp.15-41;およびKomori et al. (2007) Plant Physiol. 145:1155-60に総説されている)。バイナリーベクターは、大腸菌(e. coli)およびアグロバクテリウムの両方において複製できる。バイナリーベクターは、右および左のT−DNA境界領域によって囲まれている、選択マーカー遺伝子およびリンカーまたはポリリンカーを含む。それらは、アグロバクテリウム中に直接、形質転換され得る(Holsters、1978)。宿主として使用されるアグロバクテリウムは、vir領域を保持するプラスミドを含むこととなる。TiまたはRiプラスミドはまた、T−DNAの転移に必要なvir領域を含む。vir領域は、T−DNAの、植物細胞への転移にとって必要である。さらなるT−DNAが含有される場合もある。
【0163】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)宿主の病原性機能は、細胞が、バイナリーT DNAベクター(Bevan (1984) Nuc. Acid Res. 12:8711-8721)または同時培養手順(Horsch et al. (1985) Science 227:1229-1231)を使用して細菌に感染すると、構築物および隣接するマーカーを含有するT−鎖の、植物細胞DNAへの挿入を指示する。一般に、アグロバクテリウム形質転換系は、双子葉植物を操作するために使用される(Bevan et al. (1982) Ann. Rev. Genet 16:357-384;Rogers et al. (1986) Methods Enzymol. 118:627-641)。アグロバクテリウム形質転換系はまた、単子葉植物および植物細胞を形質転換するため、ならびに単子葉植物および植物細胞にDNAを転移するために使用され得る。米国特許第5,591,616号;Hernalsteen et al. (1984) EMBO J 3:3039-3041;Hooykass-Van Slogteren et al. (1984) Nature 311:763-764; Grimsley et al. (1987) Nature 325:1677-179;Boulton et al. (1989) Plant Mol. Biol. 12:31-40;およびGould et al. (1991) Plant Physiol. 95:426-434を参照のこと。
【0164】
遺伝子発現カセットを含む遺伝構築物の植物細胞への導入後に、植物細胞を成長させてもよく、シュートおよび根などの組織の分化が出現すると、成熟した植物が生成され得る。いくつかの実施形態では、複数の植物が生成され得る。植物を再生するための方法論は、当業者に公知であり、例えば、Plant Cell and Tissue Culture, 1994, Vasil and Thorpe Eds. Kluwer Academic Publishersにおいて、およびPlant Cell Culture Protocols (Methods in Molecular Biology 111, 1999 Hall Eds Humana Press)において見出すことができる。一般に、本明細書において記載される修飾された植物は、発酵培地において培養し、土壌などの適した培地において成長させてもよい。いくつかの実施形態では、高等植物の適した成長培地は、それだけには限らないが、土壌、砂、根成長または水耕培養を支持する任意のその他の粒状培地(例えば、バーミキュライト、パーライトなど)ならびに高等植物の成長を最適化する適した光、水および栄養補助物質を含めた、植物のための任意の成長培地を含み得る。
【0165】
上記の形質転換技術のいずれかによって製造される形質転換された植物細胞を、培養して、形質転換された遺伝子型、ひいては、所望の表現型を有する全植物体を再生できる。このような再生技術は、組織培養成長培地中の特定の植物ホルモンの操作に頼るものであり、通常、所望のヌクレオチド配列と一緒に導入されている殺生物剤および/または除草剤マーカーに頼る。培養されたプロトプラストからの植物再生は、Evans, et al., "Protoplast Isolation and Culture" in Handbook of Plant Cell Culture, pp. 124-176, Macmillian Publishing Company, New York, 1983;およびBinding, Regeneration of Plants, Plant Protoplasts, pp. 21-73, CRC Press, Boca Raton, 1985に記載されている。再生はまた、植物カルス、外植片、器官、花粉、胚またはその一部からも得られ得る。このような再生技術は、Klee et al. (1987) Ann. Rev. of Plant Phys. 38:467-486に全般的に記載されている。
【0166】
植物細胞中に導入された核酸を使用して、所望の形質を本質的に任意の植物に付与できる。様々な植物および植物細胞系が、本開示の核酸構築物および上記の種々の形質転換法を使用して、本明細書において記載される所望の生理学的および農学的特徴のために操作され得る。好ましい実施形態では、操作のための植物および植物細胞として、それだけには限らないが、穀類作物(例えば、コムギ、トウモロコシ、イネ、アワ、オオムギ)、果実作物(例えば、トマト、リンゴ、セイヨウナシ、イチゴ、オレンジ)、飼料作物(例えば、アルファルファ)、根菜作物(例えば、ニンジン、ジャガイモ、サトウダイコン、ヤムイモ)、葉菜作物(例えば、レタス、ホウレンソウ)、開花植物(例えば、ペチュニア、バラ、キク)、針葉樹およびマツ(例えば、マツ、モミ、トウヒ);ファイトレメディエーションにおいて使用される植物(例えば、重金属蓄積植物);油料作物(例えば、ヒマワリ、ナタネ)および実験目的のために使用される植物(例えば、アラビドプシス属(Arabidopsis))を含めた作物などの単子葉および双子葉植物のものが挙げられる。したがって、開示された方法および組成物は、それだけには限らないが、アスパラガス属(Asparagus)、カラスムギ属(Avena)、アブラナ属(Brassica)、シトラス属(Citrus)、スイカ属(Citrullus)、トウガラシ属(Capsicum)、カボチャ属(Cucurbita)、ニンジン属(Daucus)、ムカシヨモギ属(Erigeron)、ダイズ属(Glycine)、ワタ属(Gossypium)、オオムギ属(Hordeum)、アキノノゲシ属(Lactuca)、ドクムギ属(Lolium)、トマト属(Lycopersicon)、リンゴ属(Malus)、キャッサバ属(Manihot)、タバコ属(Nicotiana)、オオアラセイトウ属(Orychophragmus)、イネ属(Oryza)、ワニナシ属(Persea)、インゲンマメ属(Phaseolus)、エンドウ属(Pisum)、ナシ属(Pyrus)、サクラ属(Prunus)、ダイコン属(Raphanus)、ライムギ属(Secale)、ナス属(Solanum)、ソルガム属(Sorghum)、コムギ属(Triticum)、ブドウ属(Vitis)、ササゲ属(Vigna)およびトウモロコシ属(Zea)に由来する種を含めた広範囲の植物に対して用途がある。
【0167】
形質転換された植物細胞、カルス、組織または植物は、操作された植物材料を、形質転換DNA上に存在するマーカー遺伝子によってコードされる形質について選択またはスクリーニングすることによって同定および単離され得る。例えば、選択は、形質転換遺伝子構築物がそれに対する抵抗性を付与する抗生物質または除草剤の阻害量を含有する培地で、操作された植物材料を成長させることによって実施され得る。さらに、形質転換された植物および植物細胞はまた、組換え核酸構築物上に存在し得る、任意の目に見えるマーカー遺伝子(例えば、ベータ−グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼまたはgfp遺伝子)の活性についてスクリーニングすることによって同定され得る。このような選択およびスクリーニング方法論は、当業者には周知である。
【0168】
核酸を細胞中に挿入することに関連して、用語、「導入された」とは、細胞への形質転換および従来の植物育種技術におけるような、配列を有する植物を別の植物と掛け合わせ、その結果、第2の植物が異種配列を含有することを含む。このような育種技術は、当業者に周知である。植物育種技術の考察については、Poehlman (1995) Breeding Field Crops. AVI Publication Co., Westport Conn, 4
th Editを参照のこと。戻し交配法を使用して、植物に遺伝子を導入してもよい。この技術は、植物に形質を導入するために数十年使用されてきた。周知であるこのおよびその他の植物育種技術の説明の一例は、Poehlman, 前掲およびPlant Breeding Methodology, edit. Neal Jensen, John Wiley & Sons, Inc. (1988)などの参考文献に見出すことができる。通常の戻し交雑プロトコールでは、対象とする元の変種(反復親)を、導入されるべき対象とする単一遺伝子を保持する第2の変種(「非反復親」)と交配する。この交配種から得られた後代を、次いで、反復親と再度交配し、非反復親に由来する単一の転移された遺伝子に加えて、反復親の所望の形態的および生理学的特徴の本質的にすべてが、変換された植物において回収される植物が得られるまでこのプロセスを反復する。
【0169】
用語トランスジェニック「事象」とは、形質転換および異種DNA、例えば、対象の遺伝子を含む発現カセットを有する単一植物細胞の再生によって生成した組換え植物を指す。用語「事象」とは、異種DNAを含む、元の形質転換体および/または形質転換体の後代を指す。用語「事象」はまた、形質転換体と別の植物間の有性交雑によって生成した後代を指す。反復親への反復戻し交雑後でさえ、形質転換された親に由来する、挿入されたDNAおよびそれぞれの両端に位置するDNAは、同一染色体位置に交雑の後代中に存在する。普通、植物組織の形質転換は、各々が植物細胞のゲノム中の異なる位置へのDNA構築物の挿入を表す、複数の事象をもたらす。導入遺伝子の発現またはその他の望ましい特徴に基づいて、特定の事象が選択される。本開示の実施形態では、特定の事象は、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内に挿入されたドナーDNAポリヌクレオチドを含む。
【0170】
「導入遺伝子」とは、その遺伝子型を変更する遺伝子操作によって生物のゲノム中に導入された遺伝子を指す。
【0171】
「トランスジェニック植物」は、遺伝子発現カセットを含む発現ベクターを含有する1種または複数の植物細胞を有する植物である。用語「メッセンジャーRNA(mRNA)」とは、イントロンを含まない、細胞によってタンパク質に翻訳され得るRNAを指す。
【0172】
本明細書において、「挿入DNA」とは、植物材料を形質転換するために使用された遺伝子発現カセットを含むドナーDNAポリヌクレオチド内の異種DNAを指し、一方、「それぞれの両端に位置するDNA」または「接合部DNA」は、植物などの生物中に天然に存在するゲノムDNAまたは元の挿入DNA分子に対して外来性である、形質転換プロセスによって導入された外来(異種)DNA、例えば、形質転換事象と関連している断片のいずれかを含み得る。「接合部」または「それぞれの両端に位置する領域」または「それぞれの両端に位置する配列」とは、本明細書において、元の外来挿入DNA分子のすぐ上流に、およびそれと連続して、またはそのすぐ下流のいずれかに局在している少なくとも20、50、100、200、300、400、1000、1500、2000、2500または5000塩基対またはそれ以上の配列を指す。
【0173】
一実施形態では、本開示は、アンプリコンが作製される増幅反応によって、ターゲッティングされたゲノム内のドナーDNAポリヌクレオチドの存在を同定する方法に関する。アンプリコンの不在の検出は、ゲノム遺伝子座が破壊されているかどうかを示す。さらなる実施形態では、アンプリコンの存在が、ドナーDNAポリヌクレオチドが、ゲノム遺伝子座内に挿入されたことを示す。
【0174】
種々のアッセイが、本開示の特定の実施形態の増幅反応に関して使用され得る。以下の技術は、様々な状況において有用であり、一実施形態では、植物細胞においてコードされる核酸分子および/またはポリペプチドの存在を検出することにおいて有用である。例えば、分子の存在は、配列のプライマーまたはプローブを使用することを含め、様々な方法で決定され得る。導入遺伝子は、植物のいくつかの組織において、またはいくつかの発達段階で選択的に発現されることもあり、または導入遺伝子は、実質的にすべての植物組織において、実質的にその全生活環に沿って発現されることもある。しかし、任意のコンビナトリアル発現様式も適用可能である。
【0175】
選択された、または標的核酸配列の増幅は、任意の適した手段によって実施され得る。全般的に、Kwoh et al., Am. Biotechnol. Lab. 8、14-25 (1990)を参照のこと。適した増幅技術の例として、それだけには限らないが、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、鎖置換増幅(全般的に、G. Walker et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 392-396 (1992);G. Walker et al., Nucleic Acids Res. 20, 1691-1696 (1992)を参照のこと)、転写ベースの増幅(D. Kwoh et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 86, 1173-1177 (1989))、自家持続配列複製法(または「3SR」)(J. Guatelli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 1874-1878 (1990))、Qβレプリカーゼ系(P. Lizardi et al., BioTechnology 6, 1197-1202(1988))、核酸配列ベースの増幅(または「NASBA」)(R. Lewis, Genetic Engineering News 12 (9), 1 (1992)参照のこと)、修復連鎖反応(または「RCR」)(R. Lewis、前掲を参照のこと)およびブーメランDNA増幅(または「BDA」)(R. Lewis、前掲を参照のこと)が挙げられる。ポリメラーゼ連鎖反応が、一般に好ましい。
【0176】
「増幅」は、鋳型特異性を含む核酸複製の特別な場合である。非特異的鋳型複製と対比される(すなわち、鋳型依存性であるが、特定の鋳型には依存しない複製)。鋳型特異性は、本明細書では、複製の忠実性(すなわち、適切なポリヌクレオチド配列の合成)およびヌクレオチド(リボ−またはデオキシリボ−)特異性から区別される。鋳型特異性は、「標的」特異性の用語で記載されることが多い。標的配列は、その他の核酸から分けられると考えられるという意味で「標的」である。増幅技術は、この選別のために主に設計された。
【0177】
本明細書において、用語「ポリメラーゼ連鎖反応」および「PCR」は、一般に、クローニングまたは精製することなく、ゲノムDNAの混合物中の標的配列のセグメントの濃度を増大する方法を指す(米国特許第4,683,195号;同4,683,202号;および同4,965,188号;参照により本明細書に組み込まれる)。標的配列を増幅するためのこのプロセスは、過剰の2種のオリゴヌクレオチドプライマーを、所望の標的配列を含有するDNA混合物中に入れること、続いて、DNAポリメラーゼの存在下での正確な順序の温度サイクリングを含む。2種のプライマーは、二本鎖標的配列のそれぞれの鎖と相補的である。増幅を達成するには、混合物が変性され、次いで、プライマーが、標的分子内のその相補的配列とアニーリングされる。アニーリング後に、プライマーをポリメラーゼを用いて伸長して、相補鎖の新規対を形成する。変性、プライマーアニーリングおよびポリメラーゼ伸長のステップは、所望の標的配列の高濃度の増幅されたセグメントを得るために、多数回反復され得る(すなわち、変性、アニーリングおよび伸長は、1「サイクル」を構成し;多数の「サイクル」があり得る)。所望の標的配列の増幅されたセグメントの長さは、プライマーの互いに関する相対位置によって決定され、したがって、この長さは制御可能なパラメータである。プロセスの反復態様によって、方法は、「ポリメラーゼ連鎖反応」(本明細書において以下、「PCR」)と呼ばれる。標的配列の所望の増幅されたセグメントは、混合物中で優性の(濃度の点で)配列になるので、それらは、「PCR増幅された」といわれる。
【0178】
用語「多数」は、本明細書において、2種それ以上、例えば、3、4、5種以上、例えば、10、20、50種以上のポリヌクレオチド、核酸プローブなどを意味するために使用される。
【0179】
用語「逆転写酵素」または「RT−PCR」とは、出発材料がmRNAであるPCRの種類を指す。出発mRNAは、逆転写酵素を使用して相補的DNAまたは「cDNA」に酵素的に変換される。次いで、cDNAは、「PCR」反応の「鋳型」として使用される。
【0180】
一実施形態では、増幅反応は、定量される。その他の実施形態では、増幅反応は、シグネチャープロファイルを使用して定量化され、これでは、シグネチャープロファイルは、融解温度または蛍光シグネチャープロファイルからなる群から選択される。
【0181】
本開示の実施形態の核酸分子またはそのセグメントは、PCR増幅のためのプライマーとして使用され得る。PCR増幅の実施では、プライマーおよび鋳型間で特定のミスマッチ度が許容され得る。したがって、例示されたプライマーの突然変異、欠失および挿入(特に、5’または3’末端へのヌクレオチドの付加)は、本開示の範囲内に入る。当技術分野に公知の方法によって、所与のプライマー中に突然変異誘発、挿入および欠失が生じ得る。
【0182】
分子ビーコン(Molecular Beacons)は、配列検出における使用のために記載されている。手短には、それぞれの両端に位置するゲノムおよび挿入部分DNA接合部分と重なるFRETオリゴヌクレオチドプローブが、設計される。FRETプローブの独特の構造が、蛍光および消光部分を極近接して維持する二次構造を含有するものをもたらす。FRETプローブおよびPCRプライマー(挿入部分DNA配列中の1種のプライマーおよびそれぞれの両端に位置するゲノム配列中の1種)が、熱安定性ポリメラーゼおよびdNTPの存在下で循環される。成功したPCR増幅後、FRETプローブ(複数可)の標的配列とのハイブリダイゼーションは、プローブ二次構造の除去および蛍光および消光部分の空間的分離をもたらす。蛍光シグナルは、成功した増幅およびハイブリダイゼーションによって、それぞれの両端に位置するゲノム/導入遺伝子挿入部分配列の存在を示す。増幅反応の検出のためのこのような分子ビーコンアッセイは、本開示の実施形態である。
【0183】
加水分解プローブアッセイは、別に、TAQMAN(登録商標)(Life Technologies、Foster City、Calif.)としても知られる、DNA配列の存在を検出および定量化する方法である。手短には、事象特異的検出のために導入遺伝子内に1つのオリゴおよびそれぞれの両端に位置するゲノム配列中に1つを有するFRETオリゴヌクレオチドプローブが設計される。FRETプローブおよびPCRプライマー(挿入部分DNA配列中の1種のプライマーおよびそれぞれの両端に位置するゲノム配列中の1種)が、熱安定性ポリメラーゼおよびdNTPの存在下で循環される。FRETプローブのハイブリダイゼーションが、FRETプローブ上の消光部分から蛍光部分の切断および放出をもたらす。蛍光シグナルは、成功した増幅およびハイブリダイゼーションによって、それぞれの両端に位置する/導入遺伝子挿入部分配列の存在を示す。増幅反応の検出のためのこのような加水分解プローブアッセイは、本開示の実施形態である。
【0184】
KASParアッセイは、DNA配列の存在を検出および定量化する方法である。手短には、ターゲッティングされるゲノム遺伝子座を含むゲノムDNAサンプルは、KASPar(登録商標)アッセイ系として知られるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースのアッセイを使用してスクリーニングされる。本開示の実施において使用されるKASPar(登録商標)アッセイは、複数のプライマーを含有するKASPar(登録商標)PCRアッセイ混合物を使用し得る。PCRアッセイ混合物中で使用されるプライマーは、少なくとも1種のフォワードプライマーおよび少なくとも1種のリバースプライマーを含み得る。フォワードプライマーは、ドナーDNAポリヌクレオチドの特定の領域に対応する配列を含有し、リバースプライマーは、ゲノム配列の特定の領域に対応する配列を含有する。さらに、PCRアッセイ混合物中で使用されるプライマーは、少なくとも1種のフォワードプライマーおよび少なくとも1種のリバースプライマーを含み得る。例えば、KASPar(登録商標)PCRアッセイ混合物は、2種の異なる対立遺伝子に対応する2種のフォワードプライマーおよび1種のリバースプライマーを使用し得る。フォワードプライマーのうち1種は、内因性ゲノム配列の特定の領域に対応する配列を含有する。第2のフォワードプライマーは、ドナーDNAポリヌクレオチドの特定の領域に対応する配列を含有する。リバースプライマーは、ゲノム配列の特定の領域に対応する配列を含有する。増幅反応の検出のためのこのようなKASPar(登録商標)アッセイは、本開示の実施形態である。
【0185】
いくつかの実施形態では、蛍光シグナルまたは蛍光色素は、HEX蛍光色素、FAM蛍光色素、JOE蛍光色素、TET蛍光色素、Cy3蛍光色素、Cy3.5蛍光色素、Cy5蛍光色素、Cy5.5蛍光色素、Cy7蛍光色素およびROX蛍光色素からなる群から選択される。
【0186】
その他の実施形態では、増幅反応は、フローサイトメトリーによって検出可能な濃度範囲で細胞DNAを染色でき、リアルタイムサーモサイクラーによって検出可能である蛍光発光スペクトルを有する適した第2の蛍光DNA色素を使用して実施される。その他の核酸色素は公知であり、継続的に同定されていることは、当業者によって理解されるべきである。YO−PRO−1(登録商標)、SYTOX緑色(登録商標)、SYBR緑色I(登録商標)、SYTO11(登録商標)、SYTO12(登録商標)、SYTO13(登録商標)、BOBO(登録商標)、YOYO(登録商標)およびTOTO(登録商標)などの適当な励起および発光スペクトルを有する任意の適した核酸色素が使用され得る。一実施形態では、第2の蛍光DNA色素は、10μM未満、4μM未満または2.7μM未満で使用されるSYTO13(登録商標)である。
【0187】
本発明の実施形態は、以下の実施例においてさらに定義される。これらの実施例は、単に例示目的で与えられるということは理解されなくてはならない。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者ならば、本発明の本質的な特徴を確認でき、その趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の使用および条件に適応させるために本発明の実施形態の種々の変法および修飾を行うことができる。したがって、本明細書において示され、記載されるものに加えて、本発明の実施形態の種々の修飾は、以下の記載から当業者に明らかとなる。このような修飾はまた、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。以下は、例示として提供され、本発明の範囲を制限するものではない。
[実施例]
【実施例1】
【0188】
トウモロコシカルス中のターゲッティングされた遺伝子座の分析
ゲノム遺伝子座ターゲッティング:これまでに、その全文が本明細書に組み込まれる、WO2009100188 METHODS FOR DETECTION OF CORN EVENT DAS−59132に開示されたトウモロコシ事象DAS−59132のゲノム遺伝子座を、この事象を構成するゲノムDNAと特異的に結合し、切断するよう設計されたジンクフィンガーヌクレアーゼを使用してターゲッティングした。得られた形質転換体を、増幅反応によって、特定の事象内のゲノム遺伝子座の破壊を同定し、特性決定する分析が完了するまで維持した。
【0189】
DAS−59132のゲノム遺伝子座を含むDNA配列に対して向けられるジンクフィンガータンパク質を、これまでに記載されたように設計した。例えば、Urnov et al. (2005) Nature 435:646-651を参照のこと。DAS−59132ジンクフィンガー設計を、CCHC構造を有する少なくとも1種のフィンガーを有するタンパク質をコードするベクター中に組み込んだ。米国特許出願公開第2008/0182332号を参照のこと。特に、各タンパク質中の最後のフィンガーは、認識ヘリックスのCCHC骨格を有していた。非標準ジンクフィンガーをコードする配列を、4アミノ酸リンカーおよびトウモロコシ(Zea mays)由来のopaque−2核局在性シグナルを介してIIS型制限酵素、FokIのヌクレアーゼドメイン(Wah et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:10564-10569の配列のアミノ酸384〜579)と融合して、DAS−59132ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を形成した。Shukla et al. (2009) Nature 459:437-441に記載されるような2Aリボソームスタッタリング(stuttering)シグナルを利用するバイシストロニック発現構築物中の融合タンパク質の発現は、CsVMVプロモーターなどの相対的に強力な、構成的および異所性プロモーターによって駆動された。
【0190】
最適ZFNを、活性ヌクレアーゼを同定するためにこれまでに示された出芽酵母ベースの系を使用して、切断活性について検証した。例えば、米国特許出願公開第20090111119号;Doyon et al. (2008) Nat Biotechnol. 26:702-708;Geurts et al. (2009) Science 325:433を参照のこと。推定DAS−59132ゲノムポリヌクレオチド標的部位と結合するよう設計され、製造され、試験された多数のZFNのうち、好ましいZFNを、高レベルでin vivo活性を有すると同定し、さらなる実験のために選択した。これらのZFNを、植物体中のDAS−59132ゲノムポリヌクレオチド標的部位と効率的に結合することができ、切断すると特性決定した。
【0191】
酵母アッセイを使用して同定された例示的ジンクフィンガーヌクレアーゼのZFN発現構築物を含有するプラスミドベクターを、当技術分野でよく知られている技能および技術を使用して設計し、完成した。次いで、opaque−2核局在性シグナル::ジンクフィンガーヌクレアーゼ融合配列を、相補的opaque−2核局在性シグナル::ジンクフィンガーヌクレアーゼ融合配列と対を形成させた。そのようにして、各構築物は、ゾセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス(Mattion et al. (1996) J. Virol. 70:8124-8127)由来の2A配列によって分かれている2種のopaque−2核局在性シグナル::ジンクフィンガーヌクレアーゼ融合配列から構成される単一オープンリーディングフレームからなっていた。ZFNコード配列の発現は、構成的トウモロコシ(Zea mays)ユビキチン1プロモーターを高度に発現させることによって駆動され(Christensen et al. (1992) Plant Mol. Biol. 18(4):675-89)、トウモロコシ(Zea mays)Per 5 3’ポリA非翻訳領域が両側に位置していた(米国特許第6,699,984号)。
【0192】
ドナー構築物を、DAS−59132ゲノム遺伝子座のZFN切断されたゲノムDNA中に組み込むよう設計した。この単一遺伝子発現カセットは、イネアクチン1プロモーター(Os Act1プロモーター)::ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼコード配列(PAT;米国特許第7,838,733号)::によって駆動され、トウモロコシ(Zea mays)リパーゼ3’非翻訳領域(ZmLip 3’UTR)によって終結される。さらに、DAS−59132ゲノム遺伝子座中のZFN切断部位のいずれかの末端の配列に対して相同である標的PAT遺伝子のいずれかの末端に1kBの配列(相同性アーム)を有するドナープラスミドを設計した。相同性アームは、相同組換え機序が導入遺伝子をゲノムZFN切断部位に挿入するために使用される基質として働いた。種々の遺伝子要素が、高コピー数のpUCベースのプラスミドにアセンブルされた。
【0193】
ターゲッティングされた組込み:トランスジェニック事象を、DAS−59132の内因性ゲノム遺伝子座にターゲッティングした。これまでに記載された構築物は、ドナー配列(pDAB107855)およびDAS−59132 ZFN 6(pDAB105906)を含む。これら2種のプラスミドの同時形質転換の結果、854種のトランスジェニックPAT事象が得られ、これを、本開示のターゲッティングされたゲノム遺伝子座内のドナーDNAポリヌクレオチドの存在を同定するための方法を用いてスクリーニングした。
【0194】
これまで凍結保存された細胞株から得られた12mLの充填細胞容量(PCV)および28mLの条件培地からなるトウモロコシカルス細胞を、500mLのエルレンマイヤーフラスコ中の80mLのGN6液体培地に継代培養し、28℃で125rpmのシェーカー上に置いた。このステップを同一細胞株を使用して2回反復し、その結果、合計36mLのPCVが3つのフラスコ中に分配された。24時間後、GN6液体培地を除去し、72mLのGN6 S/M浸透圧培地で置換した。フラスコを、中程度に撹拌しながら(125rpm)、28℃、暗所で30〜35分間インキュベートした。インキュベーション期間の間に、8.1mLのGN6 S/M液体培地を405mgの滅菌、炭化ケイ素WHISKERS(商標)に添加することによって、炭化ケイ素WHISKERS(商標)(Advanced Composite Materials、LLC、Greer、SC)の50mg/mLの懸濁液を調製した。
【0195】
GN6 S/M浸透圧培地中でインキュベートした後、各フラスコの内容物を、250mLの遠心瓶中にプールした。フラスコ中のすべての細胞が底に沈殿した後、およそ14mLのGN6 S/M液体を超える内容容量を出し、将来の使用のために滅菌1Lフラスコ中に集めた。WHISKERS(商標)の予め湿潤させた懸濁液を、ボルテックスで最大速度で60秒間混合し、次いで、遠心瓶に添加した。
【0196】
この実施例では、pDAB107855(ドナー配列)およびpDAB105906(ZFN)プラスミドDNAを、各瓶に添加した。プラスミドDNAを添加すると、瓶を直ちに、改変されたRED DEVIL 5400(商標)市販の塗料ミキサー(Red Devil Equipment Co.、Plymouth、MN)に入れ、10秒間撹拌した。撹拌後、細胞、培地、WHISKERS(商標)およびプラスミドDNAのカクテルを、1Lのフラスコの内容物に、125mLの新鮮GN6液体培地とともに添加し、浸透圧溶質を減少させた。細胞を、125rpmに設定したシェーカーで2時間回復させた。6mLの分散した懸濁液を、家庭用真空ラインに接続したガラス細胞回収機ユニットを使用してWhatman4番フィルター紙(5.5cm)上で濾過し、その結果、瓶あたり60枚のフィルターが得られた。フィルターを、GN6固体培地の60×20mmプレート上に置き、暗条件下28℃で1週間培養した。
【0197】
DNA送達の1週間後、選択剤を含有するGN6(1H)選択培地の60×20mmプレートにフィルター紙を移した。これらの選択プレートを28℃で1週間暗所でインキュベートした。1週間、暗所で選択した後、各プレートから細胞の1/2を、37〜38℃に保持した3.0mLのGN6アガロース培地を含有するチューブ中にかきとって入れることによって、組織を新鮮培地に包埋した。
【0198】
アガロース/組織混合物をスパチュラで破壊し、続いて、3mLのアガロース/組織混合物を、GN6(1H)培地を含有する100×25mmのペトリディッシュの表面に均一に注いだ。このプロセスを各プレートの半分ずつの両方について反復した。すべての組織を包埋すると、プレートを暗所条件下28℃で最大で10週間インキュベートした。これらの選択条件下で増殖した推定上形質転換された単離物を、包埋されたプレートから取り出し、60×20mmプレート中の新鮮選択培地に移した。およそ2週間後に持続した増殖が明らかであった場合には、事象は、適用された除草剤(選択剤)に対して耐性であると見なされ、続いて、遺伝子型分析のために細胞のアリコートを回収した。この実施例では、処理された瓶から多数の事象が回収された。これらの事象は、トウモロコシ事象DAS−59132のゲノム遺伝子座内での導入遺伝子の組込みを確認するための分子解析のための進歩であった。
【0199】
DNA抽出:カルス組織サンプルを、96ウェル収集プレート(Qiagen、Valencia、CA)中に収集し、次いで、48時間凍結乾燥した。組織破壊を、1つのステンレス鋼ビーズを有するBIOSPRINT96 AP1(商標)溶解バッファー(Qiagen)中で、KLECKO(商標)組織粉砕機(Garcia Manufacturing、Visalia、CA)を用いて実施した。組織解離後、ゲノムDNAを、BIOSPRINT96(商標)抽出ロボット(Qiagen)を使用するBIOSPRINT96(商標)植物キット(Qiagen)を使用するハイスループット形式で単離した。次いで、ゲノムDNAのサンプルを、2ng/μlに希釈し、その後、qPCR反応を設定して、適当なCp(定量化サイクル)スコアを達成し、これが、シグネチャープロファイルの作製をもたらした。
【0200】
DAS−59132遺伝子座破壊アッセイ:Hi−IIカルス細胞の、DAS−59132−ZFNおよびドナープラスミドを用いるWHISKERS(商標)媒介性形質転換は、ターゲッティングされた、およびランダムな導入遺伝子挿入をもたらした。ランダム挿入事象を、ターゲッティングされた事象集団と区別するために、生じた全854種の事象を、遺伝子座破壊アッセイを使用して最初にスクリーニングした。このアッセイによって、遺伝子座内のZFN結合部位が無傷のままであるか、またはZFN切断もしくはドナー挿入によって破壊されているかが決定された。ゲノム遺伝子座内の破壊のしるしは、ZFNが内因性DAS−59132標的遺伝子座を切断したことの最初の証拠であり、ドナーDNA分子のターゲッティングされた挿入を示す。ZFN認識部位を含有する内因性標的領域を増幅するためにプライマーを設計し、サンプルをqPCRによって分析されるよう設定した。ターゲッティングされない事象を示す無傷の領域の増幅の結果、検出可能なqPCRシグナルとして測定される140塩基対のアンプリコンが得られた。ドナー分子のターゲッティングされた組込みの成功は、検出可能なqPCRシグナルの破壊をもたらし、対照と比較して、より低い全体的なシグナルとして示される。
【0201】
DAS−59132遺伝子座破壊アッセイを、LIGHTCYCLER(登録商標)480系(Roche Applied Science、Indianapolis、IN)を使用するリアルタイムPCRによって実施した。アッセイは、LIGHTCYCLER(登録商標)Probe Designソフトウェア2.0を使用して、DAS−59132遺伝子座(および内部参照遺伝子IVF(Genbank受託番号:U16123.1|ZMU16123)でのDAS−59132 ZFN(25716/25717)結合配列をモニタリングするために設計した。増幅のために、LIGHTCYCLER(登録商標)480 Probes Master ミックス(Roche Applied Science、Indianapolis、IN)を、10μLの容量の、0.4μMの各プライマーおよび0.2μMの各プローブ(表1)を含有するマルチプレックス反応物中、1×最終濃度で調製した。55℃で30秒間の伸長を用い、蛍光獲得を伴う2段階増幅反応を実施した。破壊アッセイの分析は、標的対参照比を使用して実施した。
【0202】
【表1】
【0203】
高精度形質転換から生じた854種の事象を、破壊アッセイを用いてスクリーニングし、標的対参照シグナルの大幅な低下をベースとして、破壊されたとスコア化した。結果は、アッセイした854種の事象のうち63種が、DAS−59132遺伝子座で破壊されたシグナルを有していたと示し、ターゲッティングされた遺伝子挿入を示した(
図2)。破壊アッセイが提供する破壊された遺伝子座の定量的測定にもかかわらず、このアッセイは、ターゲッティングされた挿入を、エラープローン切断修復に起因する切断部位での突然変異から解決できない。すべての事象の堅固かつ正確な評価を確実にするために、並行して、事象をスクリーニングするための第2のイン−アウトPCRアッセイの開発を進展させた。
【0204】
DAS−59132遺伝子座イン−アウトPCRアッセイ:破壊アッセイによってスクリーニングされた事象をまた、DAS−59132遺伝子座で遺伝子座特異的エンドポイントPCRアッセイによってスクリーニングした。1種のオリゴヌクレオチドプライマーを、ZFN切断部位の外側の標的ゲノムDNAの領域とアニーリングするよう設計し、第2のオリゴヌクレオチドプライマーを、ドナーDNAの導入遺伝子領域のみとアニーリングするよう設計する。プライマーを、DAS−59132遺伝子座の標的部位の5’および3’挿入DNA接合部領域を分析するよう設計する。形質転換から生じた事象の多くは、ランダム挿入であり、そしてドナー配列が、標的配列と近接していないので、イン−アウトPCRの際は増幅されない(
図3A)。プライマーを、ドナーDNAおよびターゲッティングされた領域中に挿入されたゲノムDNAの領域のみを増幅するよう設計するので、増幅は、ターゲッティングされた導入遺伝子事象の結果である(
図3B)。プライマーを標的配列および挿入されたドナー配列の両方をターゲッティングするよう設計し、5’および3’接合部の両方が分析されるので、「イン−アウト」PCRと呼ばれるこのPCR分析によって、ターゲッティングされた遺伝子挿入の全体像が得られることが確実となる。PCR後、増幅されたサンプルを電気泳動によって分析すると、DAS−59132遺伝子座中の標的部位に導入遺伝子組込みを有するサンプルは、2kbおよび1.5kbの2種のバンドの増幅をもたらす。これは、導入遺伝子の5’および3’接合部での組み込まれた標的配列を示す。
【0205】
イン−アウトPCR増幅反応を、Takara Ex Taq HSキット(商標)(Clontech Laboratories、Inc.、Mountain View、CA)を使用して実施した。各PCR反応は、1×Ex Taqバッファー、200nMのフォワードおよびリバースプライマー、10〜20ngのゲノムDNA鋳型および0.05ユニット/μLの最終濃度のEx Taq HSポリメラーゼを含有する、15または20μLの最終容量で実施した。リアルタイムイン−アウトPCRのために、Invitrogen(Grand Island、NY)製のSYTO13(登録商標)色素を、4μMまたは2.67μMの最終濃度でPCR反応混合物中に含めた。最初に、SYTO13(登録商標)緑色蛍光色素を、これまでに、全体的なアッセイ感度を増大し、ポリメラーゼ活性の低い阻害を示すと示されているので、製造業者によって推奨される濃度によって使用した。この色素は、より強力なシグナルおよびより一貫した結果をもたらしたが、ハイスループット系には、依然として制限があった。プライマー二量体形成または非特異的プライマーアニーリング(不純プライマーから)が偽陽性シグナルを生成していたので、バックグラウンド蛍光は、問題のあるものであり続けた。そのようなものとして、アッセイにおいて使用される濃度は、10μMから4μMまたは2.67μMへとより低下させた。色素の濃度の低下は、信頼できる検出およびPCRアッセイの定量化を提供するシグネチャープロファイルをもたらした。
【0206】
リアルタイムイン−アウトPCRを、ABI VIIA7 PCR SYSTEM(商標)(Life Technologies Corporation、Carlsbad、CA)で実施した。最初の変性後、増幅プログラムは、98℃で10秒間、66℃で30秒間および68℃で2分間の40サイクルを含有し、融解温度分析プログラムの前に蛍光獲得を伴っていた。増幅ステップの後、反応を、65℃で30秒間および72℃で10分間維持し、最後に、4℃で保持した。直接蛍光シグナルおよび融解温度プロファイルの両方を、サンプル分析のために使用した。リアルタイム系で同定された陽性サンプルを、標準ゲルシフトアッセイを使用してさらに確認した。
【0207】
【表2】
【0208】
ターゲッティングされた挿入PCRアンプリコンを偽陽性と区別しようとして、プロトコールを、生成したあらゆるPCR産物にシグネチャープロファイルを割り当てるよう設計した。PCRアンプリコンの融解温度プロファイルを、陽性対照と比較し、曲線をマッチングすることによって陽性イン−アウトPCR産物を同定した(
図4Aおよび4B)。3’および5’末端の両方の融解温度プロファイルを含むシグネチャープロファイルを使用してイン−アウトPCR分析を相互に関連付けることは、ゲノム遺伝子座内のターゲッティングされたドナーDNAポリヌクレオチド挿入事象の同定に大きな信頼を生じさせる新規分析方法論である。
【0209】
破壊アッセイおよびDAS−59132遺伝子座イン−アウトPCRアッセイの結果を、サザンブロッティングおよびシークエンシング(次世代シークエンシングの標準)によってさらに確認した。
【0210】
新規アッセイは、トウモロコシにおけるZFN切断部位のターゲッティングされたドナーDNAポリヌクレオチド挿入事象を同定するための堅固な分析プロセスをもたらした。内因性ゲノム遺伝子座は、成功裏にターゲッティングされ、ターゲッティングされた事象は、新規アッセイを使用して効率的に同定された。合計854種のサンプルを、開示されたアッセイを使用する分析に付した。推定事象のすべてで破壊アッセイを実施し、事象のうち63が破壊を示した。イン−アウトPCRをすべての事象で実施し、8の陽性事象を同定した。結果として、ターゲッティングされた挿入であると確認された合計8の事象があった(
図5)。
【実施例2】
【0211】
トウモロコシ植物におけるターゲッティングされた遺伝子座の分析
トウモロコシトランスジェニックB104胚を作製し、これでは、DAS−59132遺伝子座が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ構築物、pDAB105906およびドナー構築物、pDAB104179によってターゲッティングされた。これらの構築物は、その全文が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0191899号の実施例7に記載されるような、微粒子銃形質転換法を使用して植物組織中に形質転換された。推定上形質転換された胚を、除草剤ホスフィノトリシンの選択によって同定した。
【0212】
推定上同定されたトランスジェニック胚を、破壊アッセイを使用して分析し、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内に挿入されたドナーDNAポリヌクレオチドの存在を含有する事象を同定した。ZFN破壊アッセイを、上記のプロトコールおよび試薬を使用して完了した。ターゲッティングまたは破壊されなかった事象では、0.4〜0.6の範囲の標的対参照比が観察され、破壊またはターゲッティングされたサンプルについては、0.2〜0.35の範囲(プレート間変動)が報告された(
図6)。アンプリコンを生成しなかったターゲッティングされた事象は、グラフに表わされるように、より少ない量の増幅産物をもたらした。
【0213】
次に、遺伝子座特異的イン−アウトPCRを、上記のプロトコールおよび試薬を使用して完了した。イン−アウトPCRの結果は、DAS−59132遺伝子座内の導入遺伝子挿入を含有していた特定の事象を同定した。
【0214】
合計1,223のサンプル事象を、分析に付した。あらゆる事象で破壊アッセイを完了し、事象のうち、破壊を示す85を同定した。イン−アウトPCRを、全1,223のサンプルの事象で完了し、陽性である11の事象および2の部分陽性事象を同定した。サザンブロッティングおよびシークエンシングを完了して、同定された事象が、DAS−59132ゲノム遺伝子座内に全導入遺伝子挿入部分を含むことを確認した。
【実施例3】
【0215】
トウモロコシ植物中のターゲッティングされる遺伝子座の分析
トウモロコシトランスジェニックB104胚を作製し、これでは、遺伝子操作されたランディングパッド遺伝子座(その全文が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0191899号)は、ジンクフィンガーヌクレアーゼによってターゲッティングされ、ドナー構築物は、微粒子銃を使用して植物組織に形質転換された。遺伝子操作されたランディングパッド遺伝子座内にドナー構築物をターゲッティングするために、複数の形質転換を完了した。形質転換の第1のシリーズを、pDAB109714ドナー構築物およびpDAB105941ジンクフィンガーヌクレアーゼ構築物を使用して完了した。形質転換の第2のシリーズを、pDAB109715ドナー構築物およびpDAB105943ジンクフィンガーヌクレアーゼ構築物を使用して完了した。形質転換の第3のシリーズを、pDAB109716ドナー構築物およびpDAB105942ジンクフィンガーヌクレアーゼ構築物を使用して完了した。最終シリーズの形質転換を、pDAB109717ドナー構築物およびpDAB105945ジンクフィンガーヌクレアーゼ構築物を使用して完了した。推定上形質転換された胚を、除草剤ホスフィノトリシンの選択によって同定した。
【0216】
ELP遺伝子座破壊アッセイ:プライマーを、ZFN認識部位を含有する内因性標的領域を増幅するよう設計し、サンプルを、qPCRによって分析されるよう設定した。ターゲッティングされない事象を示す無傷の領域の増幅は、検出可能なqPCRシグナルとして測定される193塩基対アンプリコンをもたらした。それぞれのELP事象内のドナー分子のターゲッティングされた組込みの成功は、検出可能なqPCRシグナルの破壊をもたらし、対照と比較して、より低い全体的なシグナルとして示される。
【0217】
ELP遺伝子座破壊アッセイを、LIGHTCYCLER(登録商標)480系(Roche Applied Science、Indianapolis、IN)を使用するリアルタイムPCRによって実施した。アッセイは、LIGHTCYCLER(登録商標)Probe Designソフトウェア2.0を使用して、ELP遺伝子座および内部参照遺伝子IVFでのELP ZFN結合配列をモニタリングするために設計した。増幅のために、LIGHTCYCLER(登録商標)480 Probes Masterミックス(Roche Applied Science、Indianapolis、IN)を、10μLの容量の、0.4μMの各プライマーおよび0.2μMの各プローブ(表3)を含有するマルチプレックス反応物中、1×最終濃度で調製した。55℃で30秒間の伸長を用い、蛍光獲得を伴う2段階増幅反応を実施した。破壊アッセイの分析は、標的対参照比を使用して実施した。
【0218】
【表3】
【0219】
高精度の形質転換から生じた1738の事象を、破壊アッセイを用いてスクリーニングし、標的対参照シグナルの大幅な低下をベースとして破壊されたとスコア化した。結果は、アッセイされた1738の事象のうち158が、ELP遺伝子座で破壊されたシグナルを有しており、ターゲッティングされた遺伝子挿入を示すことを示した。(
図7)。破壊アッセイが提供する破壊された遺伝子座の定量的測定にもかかわらず、このアッセイは、ターゲッティングされる挿入を、エラープローン切断修復に起因する切断部位での突然変異から解決しない。したがって、すべての事象の堅固かつ正確な評価を確実にするために、並行して、事象をスクリーニングする第2のイン−アウトPCRアッセイの開発を進展させた。
【0220】
ELP遺伝子座イン−アウトPCRアッセイ:破壊アッセイによってスクリーニングされた事象をまた、ELP遺伝子座での新規に開発した遺伝子座特異的エンドポイントPCRアッセイによってスクリーニングした。1種のプライマーを、ZFN切断部位の外側の標的ゲノムDNAの領域とアニーリングするよう設計し、第2のプライマーを、ドナーDNAの導入遺伝子領域とのみアニーリングするよう設計した。プライマーを、ELP遺伝子座での標的部位の5’および3’領域を分析するよう設計した。プライマーを、ドナーDNAの領域およびターゲッティングされた領域中に挿入されたゲノムDNAのみを増幅するよう設計したので、増幅は、ターゲッティングされた導入遺伝子事象の結果であり、5’および3’接合部の両方を分析した。
【0221】
イン−アウトPCR増幅反応を、TAKARA EX TAQ HS KIT(商標)(Clontech Laboratories、Inc.、Mountain View、CA)を使用して実施した。各PCR反応を、1×Ex Taqバッファー、200 nMのフォワードおよびリバースプライマー、10〜20ngのゲノムDNA鋳型および0.05ユニット/μLの最終濃度のEx Taq HSポリメラーゼを含有する、15または20μLの最終容量で実施した。リアルタイムイン−アウトPCRのために、SYTO13(登録商標)色素(Invitrogen、Carlsbad、CA)を、4μMまたは2.67μMの最終濃度でPCR反応混合物中に含めた。
【0222】
リアルタイムイン−アウトPCRを、ABI VIIA7 PCR SYSTEM(商標)(Life Technologies Corporation、Carlsbad、CA)で実施した。最初の変性後、増幅プログラムは、98℃で10秒間、66℃で30秒間および68℃で2分間の40サイクルを含有し、融解温度分析プログラムの前に蛍光獲得を伴っていた。その後、反応を、65℃で30秒間および72℃で10分間維持し、最後に、4℃で保持した。直接蛍光シグナルおよび融解温度プロファイルの両方を、サンプル分析のために使用した。リアルタイム系で同定された陽性サンプルを、標準ゲルシフトアッセイを使用してさらに確認した。
【0223】
【表4】
【0224】
PCRアンプリコンを偽陽性から同定しようとして、プロトコールを、生成したあらゆるPCR産物にシグネチャープロファイルを割り当てるよう設計した。PCRアンプリコンの融解温度プロファイルを、陽性対照と比較し、曲線をマッチングすることによって陽性イン−アウトPCR産物を同定した。3’および5’末端の両方の融解温度プロファイルを含むシグネチャープロファイルを使用してイン−アウトPCR分析を相互に関連付けることは、ターゲッティングされた導入遺伝子挿入事象の同定に大きな信頼を生じさせる分析方法論である。
【0225】
合計1738種のPAT陽性サンプルを、このプロジェクトに付した。破壊アッセイおよびイン−アウトPCRを、すべての事象で実施した。結果は、158/1738の事象が、破壊について陽性であり、これらの事象のうち46/1738が、3’および5’両方のイン−アウトPCR増幅反応について陽性であると示した。
【実施例4】
【0226】
トウモロコシ植物におけるターゲッティングされる遺伝子座の分析
トウモロコシ(Zea mays)栽培品種B104植物を、米国特許出願公開第2011/0191899号にこれまでに記載されるような遺伝子操作されたランディングパッド遺伝子構築物(pDAB105817またはpDAB105818)を用いて形質転換した。形質転換されたトウモロコシ植物が得られ、ELPを含有すると確認された。4種のELPトウモロコシ株;105817[1]−015.Sx001.Sx011、105818[1]−269.Sx001.Sx008、105818[1]−271.Sx001.Sx005および105818[2]−388.Sx001.Sx008を、トウモロコシ(Zea mays)栽培種B104と交雑して、ヘミ接合体として製造した。得られた後代植物を、eZFN1をコードするeZFNプラスミドpDAB105941および対応するドナープラスミドpDAB104182またはeZFN8をコードするeZFN pDAB105948およびドナーpDAB104183を用いて同時形質転換した。形質転換を、製造業者の仕様書によってPDS−1000(Bio−Rad)を使用して1回撃たれた、単離された胚の衝撃によって完了した。合計20,896個の胚(各標的株につき約5000個の胚)が衝撃を受け、ビアラホス耐性について選択された。12,404個が、pDAB105941およびその対応するドナーで同時衝撃を受け、8,492個の胚が、pDAB105948およびその対応するドナーで同時衝撃を受けた。
【0227】
衝撃後、胚を培地中で培養し、植物体に成長させた。トランスジェニック事象を、pat導入遺伝子の存在をスクリーニングし、検出するために開発されたqPCRによって同定した。既知コピー数標準の標的/参照値(1コピー:ヘミ、2コピー:ホモ)に対する、未知サンプルの標的/参照(インベルターゼ)値(LightCycler 480(商標)によるアウトプット)の比較によってコピー数を決定した。合計614の再生した植物が生き残り、354(または58%)の植物を、pat遺伝子の存在について陽性と同定し、さらなる分析のために保持した。
【0228】
ELP遺伝子座破壊アッセイ:ZFN破壊アッセイを、組み込まれたELP中の変化をモニタリングするよう設計した。ターゲッティングされないELPでは、PCRプライマーMAS621およびMAS622(表5)は、eZFN結合部位を包含する214bpの産物を増幅した。ELP遺伝子座でのeZFN結合部位への組込み(またはその修飾)は、低伸長時間を用いるqPCRを使用する増幅を破壊し、qPCR反応において生成される、シグナルなしまたは大幅に低いシグナルのいずれかをもたらした。インベルターゼ遺伝子の増幅のための対照qPCR反応もまた、内部対照参照として含められた。
【0229】
増幅のために、LightCycler(登録商標)480 Probes Master mix (Roche Applied Science、Indianapolis、IN)を、10μLの容量の、0.4μMの各プライマーおよび0.2μMの各プローブを含有するマルチプレックス反応物中、1×最終濃度で調製した。3段階増幅反応を、変性のための95℃で10秒、アニーリングのための60℃で35秒および蛍光獲得を伴う72℃で1秒を用いて実施した。FAM蛍光部分を、465/510nmの光学濃度で励起し、HEXを533/580nmで励起した。コピー数を、既知単一コピーヘミ接合体の標的/参照値に対する、未知サンプルの標的/参照(インベルターゼ)値(LightCycler 480(商標)によるアウトプット)の比較によって決定した。
【0230】
ランダム挿入事象を、ELPによってターゲッティングされた事象から区別するために、pat qPCRスクリーニングによって同定された354サンプルを、破壊アッセイを使用してさらに分析した。ELP破壊アッセイを、eZFN切断部位中の大きな挿入/欠失をモニタリングするよう設計した。ターゲッティングされないELPでは、eZFN結合部位を包含する214bpのPCR産物を増幅し、強力な蛍光シグナルを生成した。eZFN結合部位への組込み(またはその修飾)は、増幅を破壊し、PCR反応によって生成される、シグナルなしまたは大幅に低いレベルの蛍光シグナルをもたらした。354のpat陽性事象のうち、約8%(28事象)が破壊されると思われ(
図8b)、ターゲッティングの可能性を示した。
【0231】
【表5】
【0232】
イン−アウトPCR:破壊アッセイは、ELPのeZFN結合領域中の変化を同定した。プライマー結合部位中の任意の変動または遺伝子座中のランダム挿入は、ZFN切断によって引き起こされる遺伝子座の破壊の有望なしるしである。次いで、イン−アウトPCRを使用して、ELP遺伝子座内のドナー挿入の存在を確認した。標的遺伝子座およびドナーを含む接合部配列の両末端。1種のプライマーを、標的ライン中に存在する予め組み込まれたELP領域とのみアニーリングするよう設計し、第2のプライマーを、ドナー構築物内に存在するドナーDNA配列とのみアニーリングするよう設計した。PCRによる増幅は、ELPゲノム遺伝子座内のドナーのターゲッティングの結果を示した。ランダム挿入から生じた任意の事象は、PCR増幅をもたらさない。
【0233】
ドナー/ELP5’接合部イン−アウトPCRのために、フォワードプライマーを、ドナー挿入部分のOsAct1領域(5OsF3、配列番号23ATTTCACTTTGGGCCACCTT)と結合するよう設計し、リバースプライマー(5R3、配列番号24AGGCTCCGTTTAAACTTGCTG)を、ELP左アーム中の標的ラインに独特な193bpの配列と結合するよう設計した。3’ドナー/ELP遺伝子座接合部イン−アウトPCRのために、フォワードプライマー(3PAF1、配列番号25ATGGTGGATGGCATGATGTT)を、ドナー挿入部分のPATv6領域と結合するよう設計し、リバースプライマー(3R1、配列番号26TGGAGGTTGACCATGCTAGG)を、ELP右アーム中の標的ラインに独特な192bp配列と結合するよう設計した。増幅は、フォワードおよびリバースプライマーが、互いに近接した配列と結合した場合にのみ、結果として生じた。ドナー配列のランダム組込みは、上記のPCRプライマーを使用して検出可能ではなかった。イン−アウトPCR検出のスループットを増大するために、融解曲線分析を、緑色蛍光核酸株、SYTO13(登録商標)を用いて完了した。PCR増幅を、0.75ユニットのTaKaRa Ex Taq(商標)DNAポリメラーゼ(Takara Bio Inc.、Shiga、Japan)、200nMのdNTP、各200nMのフォワードおよびリバースプライマー、2.67μMのSYTO13(登録商標)および10ngのゲノムDNAを含有する15μlの反応物中で、LightCycler 480(商標)リアルタイムPCR系で実施した。95℃で2分の変性サイクル、次いで、98℃で20秒、60℃で30秒および68℃で90秒の30サイクルを用いて増幅を開始し、それに、97℃で、0.11℃/sの勾配速度を用いる融解曲線分析を続けた。
【0234】
PCR反応の結果は、5’および3’のそれぞれの両端に位置する末端両方の分析をもたらした。ドナーによってターゲッティングされるELP遺伝子座事象は、5’イン−アウトPCR反応のための1.1kbの断片および3’イン−アウトPCR反応のための1.4kbの断片をもたらす。PCR反応の結果を、アンプリコンの長さおよび組成に応じて種々のグラフ結果を生じる融解曲線分析によって決定した(
図9)。短いPCRアンプリコンは、普通、グラフによって示されると、平らなラインとして現れ、低レベルの蛍光シグナルを生じる単一ピーク融解温度(Tm)曲線を示す。しかし、長いアンプリコン(すなわち、1〜2kbの断片)については、Tmプロファイルは、より複雑であるようであり、複数のピークをもたらし(アンプリコンの局所部分配列に応じて)、高レベルの蛍光シグナルを生成する。5つの事象を、5’および3’PCR反応の両方について陽性であると同定した。4つの標的株の各々は、ELPゲノム遺伝子座内に挿入されたドナーを含む事象を生成した。イン−アウトPCR陽性のすべてをゲルに流し、これでは、それらは、予想されるように、PCRアンプリコンの1つのバンドのみを示した。
【0235】
分子的確認:さらなる分子検出法を完了して、破壊アッセイおよびイン−アウトPCR反応の結果が偽陽性ではなかったことを確認した。5’および3’ドナー挿入部分/ELPゲノム遺伝子座接合部のサザンブロット分析およびシークエンシングを完了した。結果から、破壊アッセイおよびイン−アウトPCR分析によって同定された事象は、ELPゲノム遺伝子座内にドナー挿入部分を含有していることが確認された。
【実施例5】
【0236】
トウモロコシ植物中の破壊された遺伝子座の分析
標的株植物のゲノム遺伝子座へのZFNの送達を、米国特許出願公開第20110191877号に先に開示されるような植物交雑戦略によって導入した。トウモロコシ(Zea mays)栽培種B104において、別個の標的および切り取り植物事象を作製した。標的植物の5種の株を、構築物pDAB105816、pDAB105817、pDAB105818、pDAB105820およびpDAB105821を用いる形質転換から製造した。これらの構築物は、大量の導入遺伝子、aad−1選択マーカー遺伝子ならびにeZF1およびeZF8結合部位を含有するELPを含有していた。次いで、切り取り植物の2種の株を、構築物pDAB105828およびpDAB105825を用いる形質転換から製造した。pDAB105828構築物は、トウモロコシ(Zea mays)ユビキチン1プロモーターによって駆動され、トウモロコシ(Zea mays)Per5 3’UTRによって終結されるZFN8を含有していた。pDAB105825構築物は、トウモロコシ(Zea mays)ユビキチン1プロモーターによって駆動され、トウモロコシ(Zea mays)Per5 3’UTRによって終結されるZFN1を含有していた。両切り取り構築物はまた、pat選択マーカーも含有していた。トランスジェニック植物を製造し、分子的確認アッセイによって確認した。植物を自家受粉させて、ホモ接合性後代を製造した。得られたホモ接合性標的および切り取り事象を交雑し、後代を製造した。後代をアッセイして、親の切り取り事象によって提供されるZFN導入遺伝子が、もう一方の親の標的事象によって提供されるELP標的遺伝子座を切断したかどうかを調べた。すべての交雑の大部分は、雌として標的株を用い、雄として切り取り株を用いて行った。1種の対照交雑のみは、雌として切り取り株を用い、雄として標的株を用いて行った。標的および切り取り植物を交雑して、後代を製造し、それらを、発達のV3段階で、Assure II(商標)(quizalofop)(184gae/ha+1%COC)およびIgnite(商標)280SL(グルホシネート)(480gae/ha)を適用することによってスクリーニングした。生存後代はどれも、qPCR法によるaad−1導入遺伝子の存在についてのスクリーニングを伴うさらなる分子的分析のために選択した。参照遺伝子としてインベルターゼを利用するqPCRアッセイを使用して、aad−1遺伝子座の存在について合計1902のサンプルの遺伝子型を同定した。aad−1標的対参照比を算出し、既知標準に対して正規化し、これでは、2、1または0の比が、それぞれ、ホモ接合性、ヘミ接合性またはヌル状態を示した。1822の植物を、aad−1ヘミ接合と確認した。
【0237】
ZFN破壊アッセイ:PCRベースの破壊アッセイを、ELP標的ゲノム遺伝子座のZFN切断活性の間接測定のために設計した。アッセイを、蛍光標識したプローブが、ZFN機能の完全性に必要なスペーサーの頂部にあるように設計した(
図10)。eZFN1破壊アッセイは、全eZFN1結合部位配列に広がる69bpの断片の検出をもたらした。eZFN8破壊アッセイは、ZFN8結合部位配列のそれぞれの両端に位置する109bpの断片の検出をもたらした。両アッセイは、Life Technologies(Grand Island、NY)によって合成されたMGBプローブを利用する。ZFNが、ELPゲノム遺伝子座を切断した場合には、切断は、NHEJによって修復され、これは、ゲノム配列内へのInDelの組込みをもたらし、それによって、PCRプライマーの設計に使用したゲノム配列を修飾した。結果として、ELPゲノム遺伝子座内のZFN結合配列にわたってアンプリコンを増幅し、検出するよう設計された任意のPCR増幅反応は、蛍光シグナルを製造しない(ゲノム配列が欠失または再編成されず、プライマーがこれらのゲノム配列と結合できないので)。
【0238】
LightCycler(登録商標)480系(Roche Applied Science、Indianapolis、IN)を使用するリアルタイムまたはqPCRを用いて、Bi−plexアッセイを実施した。対照反応を、内因性参照遺伝子として使用されるインベルターゼを用いて完了した。増幅のために、LightCycler(登録商標)480 Probes Masterミックス(Roche Applied Science、Indianapolis、IN)を、10μLの容量の、0.4μMの各プライマーおよび0.2μMの各プローブ(表6)を含有するマルチプレックス反応物中、1×最終濃度で調製した。3段階増幅反応を、変性のための95℃で10秒、アニーリングのための60℃で35秒および蛍光獲得のための72℃で1秒を用いて実施した。破壊アッセイの分析は、標的対参照比を使用して実施し、既知ホモ接合体に対して正規化した。PCRアッセイの結果が
図11として提供されている。
【0239】
【表6】
【0240】
ELPゲノム遺伝子座のeZFN切断率を調べるために、植物交雑から得たF1葉サンプルを、まず、接合性について分析し、次いで、無傷のeZFN結合部位を検出するqPCRアッセイを使用してELP破壊について試験した。ELPゲノム遺伝子座が、eZF結合部位でのDSB修復の際にInDelsを受けた場合には、qPCRアッセイにおいて、検出可能なシグナルの喪失または減少があった。正規化したELP比を、その姉妹株と比較した。比が0〜0.05の間であった場合には、それらを、ZFNで切断されている(不完全修復を有する)と考え、比が0.05〜0.4の間であった場合には、それらを、ELPのすべてではないコピーが、ZFNで切断されたことを示すキメラと名付け、比が0.4を超える場合には、それらは、ZFNで切断されていないと同定した(切断されたが、完全修復された場合もある)。切断およびキメラスコアリングの両方を一緒にすると、破壊アッセイを用いて検出されたeZFN1活性は、46.6%(1125の植物事象のうち524)であり、eZFN8の活性は、70.2%(697の植物事象のうち489)であった(表7)。チューキー・クレーマー(Tukey Kramer)検定は、切断頻度について交雑の間で有意差を示した。L2BGおよび切り取り株の組合せは、切断の成功に不可欠であるとわかった(p<0.0001)。
【0241】
【表7】
【0242】
ZFN切断の配列分析:qPCRベースのELP破壊データを確認するために、後代交雑から得た代表的なサンプルおよび親の標的株によって表される2種の陰性対照を、NGSアンプリコンディープシークエンシングのために選択した。高品質読み取りを、ELP構築物から得た参照配列に対してアラインし、挿入および/または欠失(InDel)を同定した。予測されるように、2種の親株は、参照配列と比較した場合に、ZFN切断部位に極めて少ないパーセンテージ(<0.1%)のindelを有しているが、PCR増幅および/またはシークエンシングエラーによる可能性が最も高い(
図12)。qPCRおよびシークエンシングデータ間に相関があった。qPCRデータをベースとして100%の切断効率を示す4種の交雑は、シークエンシングを用いると91%以上修飾されたELPを有していた。要約すると、NGSディープアンプリコンシークエンシングデータは、qPCRデータと一致し、破壊アッセイ法が高度に高感度であるとわかった。さらに、ELP破壊アッセイは、植物体においてZFN(または任意のその他の部位特異的ヌクレアーゼ)切断活性を推定するための有効なアッセイであると実証された。
【0243】
本発明の態様は、特定の実施形態において説明されてきたが、それらは、本開示の精神および範囲内でさらに変更されてもよい。したがって、本出願は、その一般原理を用いた本発明の実施形態の任意のバリエーション、用途、または適応をカバーすることを意図している。さらに、本出願は、これらの実施形態が関与し、添付の特許請求の範囲の限定に含まれる当該技術分野における公知または慣行に含まれるように本開示からのこのような逸脱をカバーすることを意図している。