【実施例】
【0070】
実施例1
減少ゲノム大腸菌宿主における不溶性CRM197の細胞質発現
CRM197は、現在、βファージの多重溶原菌、またはシュードモナスフルオレッセンスの組換えプラスミド系から発現される、コリネバクテリウムジフテリアC7の発酵によって製造される。C.ジフテリアにおけるCRM197の収量は低く(最大で約200mg/L)、バイオセーフティーレベル2(BSL2)の施設を必要とする。P.フルオレッセンスにおける産生は、高収量(約2g/L)をもたらすが、両宿主は、多くの可動性要素、潜在性(cyrptic)プロファージ、及び病原性機能を有する遺伝子残余を保持する。細菌発酵において、挿入配列(IS)要素の可動性は、関心の遺伝子を不活性化する挿入をもたらす場合がある。最終結果は、発酵不良または望ましくない切断産物の発現である場合があり、その両方が経済的に問題であり、潜在的に危険である。加えて、CRM197のその毒性親への復帰突然変異は、最悪の結果をもたらす可能性がある。CRM197の復帰突然変異は、組織培養細胞において検出された毒性活性に起因した可能性がある(Qiaoら、2008)。よって、減少した突然変異速度を有する発現系は、復帰突然変異の最低レベルのリスクと合わせた最も高い信頼性及び生産性をもたらし得る。
【0071】
CRM197の高値及び供給不足に起因する唯一の最大要因は、産生に主要な大腸菌において多量のCRM197を生成する能力が歴史的にないことである。CRM197は、細菌の細胞質において発現されるとき不溶性であり、標準的な商業的大腸菌株において作製されたとき、使用前に再度折り畳むことを必要とする。比較的低量のCRM197が従来の株において産生されるため、減少ゲノム大腸菌株のMDS42が、振盪フラスコ培養において、不溶性CRM197の産生宿主として試験された。
【0072】
減少ゲノムMDS42株は、国際特許公開第WO2003/070880号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法により産生された。簡潔に述べると、一連の減少ゲノム株(MDS01−MDS39)は、親株の大腸菌MG1655からの核酸配列の一連の39の累積欠失(およそ14.1%のゲノム)を作製することにより産生された。K−12配列及びISデータベースの全ての配列を含有するゲノムスキャンチップ(NimbleGen Systems,Madison,WI)へのハイブリダイゼーションは、全てのIS要素を欠くように設計された第1の株であるMDS39が、予想外に、その産生中に新しい位置に転座したIS要素のさらなるコピーを含有したことを明らかにした。これらのIS要素は、MDS40を産生するために欠失された。fhuACDB(tonA遺伝子座)は、MDS41を産生するためにMDS40から欠失された。MDS01−MDS41を産生するために作製された各累積欠失の位置及び機能は、米国特許第8,178,339号(その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)の表2に見ることができる。次いで、endA遺伝子は、MDS42を産生するためにMDS41から欠失された。MDS69を作製するために、27のさらなる核酸欠失がMDS42において作製された。MDS42及びMDS42(MDS43、MDS44、MDS69など)に基づく全ての株は、挿入配列を含まない。
【0073】
不溶性CRM197を産生するために、CRM197配列においてヘアピン構造の解放をもたらすDNA配列変化を含む、修飾したCRM197配列を採用した。最適化したCRM197配列は、翻訳開始を阻害し、開始部位(ATG)及びリボソーム結合部位(RBS)の両方の認識を強化する二次構造を除去する。
図1を参照されたい。
【0074】
天然のCRM197シグナル配列は除去され、最適化したCRM197配列(cyto−CRM197、配列番号3)は、PCRにより増幅され、カナマイシン抵抗性カセットを含有し、クローン化した配列の発現を駆動するためにラクトース誘導性プロモーターを使用する発現ベクターpSX2内にサブクローン化された。CRM197(その天然のシグナル配列を欠く)を含有するプラスミドpSX2は、減少ゲノム大腸菌MDS42株内に形質転換され、振盪フラスコ培養において検査された。簡潔に述べると、3mlの培養物を、0.2%グルコース及び50μg/mlのカナマイシンを補充し、20mlの培養物を初期OD
600=0.075に播種するために使用された、Korz最小培地(Korz DJ et al.,J.Biotechnol.,39(1):59−65(1995))中で飽和に成長させた。次に、振盪フラスコを用いて、最適レベルの不溶性細胞質CRM197を産生した成長温度及び誘導剤(IPTG)濃度を(プラスミド選択性抗生物質カナマイシンを補充した最小培地中で)決定した。最適なIPTG濃度は、250μMであると決定された。
図2は、IPTGの添加前に0.5(後期誘導)のOD
600に成長させた3つの別個の培養物からの全細胞タンパク質の高速遠心分離後の、全細胞タンパク質(T)ならびに可溶性画分(S)及び不溶性画分(I)を分析するタンパク質ゲルの例である。意外にも、多量のcyto−CRM197が不溶性画分に存在した(
図2を参照、矢印)。タンパク質標準に対して定量したとき、振盪フラスコの結果は、OD
600が200の適度の発酵において、10〜12g/Lのcyto−CRM197を予測する。減少ゲノム大腸菌宿主細胞における不溶性CRM197の産生は、従来の大腸菌株よりも10倍高かった。
【0075】
実施例2
減少ゲノム大腸菌宿主における可溶性CRM197の周辺質発現
次に、減少ゲノム大腸菌株における可溶性CRM197の産生が、周辺質空間へのCRM197の発現を指向することにより試験された。CRM197は、大腸菌において可溶性形態で産生することが大層難しいと証明されている。高度に発現されたタンパク質の周辺質空間への搬出は、正しいタンパク質折り畳み及びジスルフィド架橋の形成に最適な非減少環境を提供することにより安定性を補助する。この目的のため、最高レベルのCRM197の周辺質送達を生じたシグナル配列及びシャペロンタンパク質を特定するために、いくつかの同時発現されたシャペロンタンパク質と組み合わせて、6つのシグナル配列が検証された。
図3は、検証されたシグナル配列及び同時発現されたシャペロンタンパク質を図示する。検証されたシグナル配列は、3つの大腸菌分泌経路の各々からの代表的なシグナル配列を含んだ。
【0076】
大腸菌をコドン最適化したCRM197オープンリーディングフレーム(ORF)(配列番号1)を、DNA2.0(Menlo Park,CA)から注文した。CRM197 ORFは、PelBシグナル配列をコードする配列が先行した。pelB及びCRM197 ORFは、pSX2発現ベクター内にクローン化するのを容易にするように設計された配列に隣接した。5’隣接配列−PelBシグナル配列−CRM197 ORF(終止コドンを含む)−3’隣接配列のヌクレオチド配列を下の表1に提供し、隣接配列は下線付きで表示され、、PelBシグナル配列をコードするヌクレオチド配列は太字、CRM197 ORFは標準文字である。
【0077】
表1:pelB(太字)−CRM197ヌクレオチド配列(標準文字)+隣接配列(下線付き):
【0078】
【表2-1】
【表2-2】
【0079】
PelB−CRM197 ORFをコードするヌクレオチド配列は、pSX2ベクターへのクローン化に必要な隣接領域を生成するために、センスプライマー(GGAGATATACATATGAAATACTTGCTGCCAACC)及びアンチセンスプライマー(CTTTGTTAGCAGCCGATTAGCTTTTGATCTCAAAGAACA)を用いてDNA2.0クローンからPCR増幅された。
【0080】
代替えのシグナル配列は、2または3工程PCRプロセスを使用して、CRM197 ORFに融合された。第1の工程では、シグナル配列のC末端コード領域及びCRM197のN末端コード領域の両方を網羅するセンスプライマーは、CRM197のC末端コード領域を網羅するアンチセンスプライマーと一緒に使用された。第2の工程では、シグナル配列のORFを完了するプライマーは、CRM197のC末端コード領域を網羅する同じプライマーと共に使用された。シグナル配列のN末端領域を網羅する短いプライマー及びCRM197のC末端コード領域を網羅する同じプライマーを含んだOmpA−CRM197構築物の場合では、第3の工程が使用された。大腸菌ompA及びOmpFシグナル配列をCRM197 ORFに融合するために使用されたプライマーは、以下に記載される。
【0081】
大腸菌ompAコードされたシグナル配列をCRM197 ORFに融合するために以下のプライマーが使用された。工程1に関して、センスプライマー=5’−GCTACCGTAGCGCAGGCCGGTGCGGATGATGTTGTGGA−3’であり、アンチセンスプライマー=5’−CTTTGTTAGCAGCCGATTAGCTTTTGATCTCAAAGAACA−3’であった。工程2に関して、センスプライマー=5’−GGAGATATACATATGAAAAAGACAGCTATCGCGATTGCAGTGGCACTGGCTGGTTTCGCTACCGTAGCGCAGGCC−3’であり、アンチセンスプライマー=5’−CTTTGTTAGCAGCCGATTAGCTTTTGATCTCAAAGAACA−3’であった。工程3に関して、センスプライマー=5’−GGAGATATACATATGAAAAAGACAGCTATCG−3’であり、アンチセンスプライマー=5’−CTTTGTTAGCAGCCGATTAGCTTTTGATCTCAAAGAACA−3’であった。
【0082】
ompFコードされたシグナル配列をCRM197 ORFに融合するために、以下のプライマーが使用された。工程1に関して、センスプライマー=5’−GTTAGTAGCAGGTACTGCAAACGCTGGTGCGGATGATGTTGTGGA−3’であり、アンチセンスプライマー=5’−CTTTGTTAGCAGCCGATTAGCTTTTGATCTCAAAGAACA−3’であった。工程2に関して、センスプライマー=5’−GGAGATATACATATGATGAAGCGCAATATTCTGGCAGTGATCGTCCCTGCTCTGTTAGTAGCAGGTACTGCAAACGCT−3’であり、アンチセンスプライマー=5’−CTTTGTTAGCAGCCGATTAGCTTTTGATCTCAAAGAACA−3’であった。
【0083】
完了したシグナル配列−CRM197 PCR産物をpSX2発現ベクター内にクローン化した。シグナル配列−CRM197 PCR産物の末端は、pSX2ベクターの配列と重複する15bpの配列を保有した。pSX2ベクターは、クローン化反応を容易にするために、制限酵素Kpn I及びSac Iで直線化された。クローン化反応は、組換えpSX2発現ベクターを生成するためにIS609のさらなる欠失を有する、MDS42、MDS42recA、またはMDS42recA内に形質転換された。シグナル配列−CRM197領域及び隣接ベクター配列は、配列分析により検証された。
【0084】
図3(B)に図示されるシグナル配列とCRM197配列(その天然のシグナル配列を欠く)との組み合わせを含有するプラスミドpSX2は、減少ゲノム大腸菌MDS42株またはMDS42recA株(recA遺伝子の欠失を有するMDS42株(recA1819対立遺伝子))内に形質転換され、振盪フラスコ培養において検査された。シグナル配列及びシャペロンタンパク質に加えて、検査された培養評価項目は、温度、誘導剤(IPTG)濃度、及び誘導剤が添加された時間点(初期[0.01のOD
600nm]または後期[約0.4のOD
600nm])を含んだ。以下の条件は、CRM197の周辺質分泌に最適であると決定され、これらの条件は、後続の実験:(i)37℃で短時間のインキュベーションが先行する(例えば、2時間)、約25℃の温度での成長、(ii)後期誘導(約0.4のOD
600でIPTGを添加)、及び(iii)15〜35μM(cyto−CRM197の最適な発現に必要とされる約1/10)の誘導剤(IPTG)濃度において使用された。
【0085】
簡潔に述べると、3mlの培養物を、0.2%グルコース及び50μg/mlのカナマイシンを補充し、20mlの培養物を初期OD
600=0.075に播種するために使用された、Korz最小培地中で飽和に成長させた。20mlの培養物(125mlのバッフル付きErlenmeyerフラスコにおいて)を、37℃の振盪インキュベータ(250rpm)内に2時間設置した。次に、培養物を25℃の振盪インキュベータに移動し、OD
600が0.3〜0.4になるまで監視した。その時点で、IPTGを示される濃度で添加した。誘導された培養物を一晩、25Cの振盪インキュベータ内でインキュベートした。誘導合計時間は18〜22時間であった。誘導後、培養物のOD
600が決定された。2OD単位を表す培養物のアリコートを、周辺質試料を作製するためにプロセスした。周辺質試料は、周辺質化緩衝液(Periplasting Buffer)(Epicentre,Madison,WI)の補助により調製された。1.5mlのエッペンドルフチューブ中で10分間、7500×gで遠心分離することにより、2OD試料を採取した。上清を取り除き、細胞ペレットを50μlの周辺質化緩衝液(200mMのトリス−HCl[pH7.5]、20%スクロース、1mMのEDTA、及び30U/μlのReady−Lyseリゾチーム)中に穏やかに再懸濁した。室温で5分後、50μlの氷冷水を迅速に再懸濁ペレットに添加した。混合物を、15分間4000×gで遠心分離することによりスフェロプラストから周辺質画分を分取する前に、氷上で5分間インキュベートした。周辺質画分を代表する上清をSDS−PAGE分析用に調製した。1レーンにつき、0.12OD単位と等しい量を充填した。
【0086】
CRM197の周辺質内への最大分泌をもたらす最も良好なシグナル配列及び誘導特徴を
図4に示す。周辺質シグナルOmpA及びOmpFは、周辺質へのCRM197の最大移送を容易にすることが分かった。3つの同時発現されたシャペロンタンパク質のいずれも周辺質送達に異なって影響を与えなかった(例示的な発現が
図4のYccAと、及びそれなしで比較されたとき)。OmpA及びOmpFはほぼ類似する量の周辺質CRM197をもたらすように思われたため、OmpA−CRM197は、後続の実験に使用された。
【0087】
ompA及びompFを含むsec−依存性経路の成分の発現は、カタボライト抑制を受ける可能性があるため、ompA−CRM197の産生に対する炭素源としてのグリセロールの影響は、上述の条件下で、振盪フラスコ培養において、減少ゲノム大腸菌MDS42株のグルコースと比較された。
図5に図示されるように、グリセロールを補充した最小培地は、グルコースと比較して、劇的に低いレベルのCRM197発現をもたらした。したがって、グルコースは、全ての後続の実験において炭素源として使用された。
【0088】
次に、いくつかの異なる減少ゲノム大腸菌宿主細胞における周辺質CRM197の産生が比較された。よって、MDS42株またはMDS69株のいずれかの背景内の一連の欠失は、(i)細胞代謝を最適化した欠失、または(ii)CRM197発現に悪影響を及ぼす可能性があるプロテアーゼ(例えば、Blon)を除去またはそのレベルを減少させる欠失のいずれかを含有するMDS42に関して上述される最適な条件に基づき、振盪フラスコ培養において、周辺質(可溶性)CRM197の産生に対するそれらの作用について検査された。MDS42に基づく次の減少ゲノム大腸菌株が試験された:MDS42recA、MDS42metab、及びMDS42Blon/metab。MDS42metabは、(i)iclR(b番号b4018、NCBI Entrez GeneID番号948524で記載される)及びarpA遺伝子(b番号b4017、NCBI Entrez GeneID番号944933で記載される)を欠失させる、(ii)rph遺伝子(b3643)を欠失させる(それにより、下流pyrE遺伝子の転写レベルを増加させる)、ならびに(iii)982位でのATジヌクレオチドの挿入によって(活性アセトヒドロキシ酸シンターゼIIの発現をもたらす)ilvGフレームシフト突然変異を補正することにより作製された。MDS42Blon/metabは、MDS42metabに関して記載される修飾、ならびにIS挿入が祖先大腸菌lonプロモーターの−35領域を−10領域から分離する、B株大腸菌のlonプロモーター領域の配列を摸倣するために、lonプロテアーゼ(b0439)プロモーター領域の修飾を含有する。MDS69に基づく次の減少ゲノム大腸菌株が試験された:MDS69metab(MDS42metabに関して上述されるように修飾されたMDS69株)、MDS69Blon/metab(Blonプロテアーゼ修飾を含むようにさらに変更されたMDS69metab、MDS69lpp/metab(リポタンパク質lppを欠失するようにさらに修飾されたMDS69metab(b1677)、及びMDS69Blon/lpp/metab(Blonプロテアーゼ修飾及びリポタンパク質lpp遺伝子欠失の両方を含むようにさらに修飾されたMDS69metab)。
【0089】
図6は、これらの株におけるOmpA−CRM197発現を比較する。検査した8つの株のうち、最高レベルのCRM197発現は、代謝活性(代謝株)の強化を目的とした欠失を含有したこれらの株(MDS42またはMDS69背景のいずれかの上で)において明らかであった。しかしながら、意外にも、試験した全ての株が全細胞タンパク質調製物(
図6のパネルA及びC)におけるタンパク質ゲルでも明らかであった大量の周辺質CRM197(
図6のパネルB及びD)を含有した。重要なことに、これらの結果は、プロテアーゼ欠失Blonが代謝株においてCRM197レベルに影響を与えなかったことを示す。加えて、その不在によりsec−依存性周辺質輸送系を「解放する」と考えられた非常に多数のリポタンパク質タンパク質Lppの除去は、周辺質CRM197レベルに影響を与えないことも分かった。これらの実験からの培地は、誘導後に単離され、CRM197放出に関して検査された。CRM197は、検査したどの株の培地においても特定されなかった。表2は、最高周辺質CRM197発現レベルを生成したMDS株の収量結果の要約である。これらの結果は、同じゲル上で実行されたタンパク質標準と共に示される4つの株からのCRM197の染色強度を比較することによって得られた。振盪フラスコ値は、100または200OD
600のいずれかに達する発酵におけるCRM197の量を予測するために外挿された。表2に示される4つの株は、典型的には、流加発酵において300のODに達し、これらの株が従来の株において現在可能であるよりもはるかに多くのCRM197を生成する能力を有することを示唆する。
【表3】
【0090】
CRM197は、高品質のCRM197産生の誘発を提供したタンパク質分解切断に高度に感受性である(Bishai et al.,J.Bacteriol.,169:5140−51(1987);Recombinant Production of Carrier Proteins,GEN News,Dec.1,2012)。別個の実験一式では、周辺質CRM197の産生は、減少ゲノム大腸菌株からのプロテアーゼ遺伝子の標的除去が周辺質におけるCRM197の増加をもたらすかを決定するために、一連のプロテアーゼ欠失株において検査された。よって、次のプロテアーゼコード遺伝子が組み合わせで別個に欠失された:degP(b0161)、prc(b1830)、htpX(b1829)、ならびにlonプロモーター領域の一部分。個々に、または組み合わせのいずれかでのプロテアーゼ遺伝子の欠失は、CRM197の発現レベルに影響を与えなかった。プロテアーゼ遺伝子の特定の組み合わせを欠失するように修飾された減少ゲノム大腸菌MDS42株がCRM197の周辺質発現に対して作用がなかったことを図示する
図7を参照されたい。このデータは、MDS42またはMDS69に基づく減少ゲノム大腸菌株において産生されたとき、おそらくこれらの株における低レベルのプロテアーゼ活性により、CRM197のタンパク質分解切断が生じないことを示す。
【0091】
実施例3
流加発酵におけるCRM197産生
次に、減少ゲノム大腸菌株におけるCRM197株の商業規模の拡大が検査された。よって、MDS42代謝株におけるOmpA−CRM197は、10リットル規模の既定最小培地中で流加発酵に供された。発酵条件は、0.18ODに播種された37℃でのバッチ相を含み、バッチ培地中の1%グルコースが消費されるまで(約7.5時間)成長させた。流加相は、バッチ培地がグルコースを枯渇したときに生じるDOスパイクにより誘引された。供給は、重量測定法で制御された0.3Mu(1/時間)の成長速度をもたらすように指数関数的供給速度で開始された(約12.5時間)。誘導点は、利用可能なリン酸塩がほぼ枯渇した時点であるように決定された。誘導点約2時間前の時点で、温度を25℃に変更し、供給速度を、0.2Mu(1/時間)の成長速度をもたらす速度に下げた。誘導剤(100uM)が添加されたら、約7時間の間、1時間当り80gのグルコースが添加されるように、供給を一定速度に変更した。発酵OD
600は300に近づき、
図8に図示されるように、非常に高レベルの周辺質標的CRM197を生成した。最適な条件での第2の発酵は、試験発酵において高レベルの一貫性を示す約2g/Lの周辺質CRM197レベルをもたらした。
【0092】
上述の結果は、振盪フラスコ及び10Lの流加発酵の両方において、MDS42及びMDS69などの減少ゲノム大腸菌産生宿主において得られた可溶性CRM197の驚くべき収量を示す。
【0093】
予備発酵分析中に観察された問題の1つは、全細胞タンパク質単離におけるCRM197の可溶性形態の減少であった。周辺質単離方法は、大規模には適用できないため、可溶性CRM197単離の一般方法が開発された。初期実験は、不溶性であった従来の全細胞タンパク質(TCP)単離後に観察されたCRM197が可溶性形態で単離することができるかを判断するために行われた。よって、MDS42recA株におけるOmpA−CRM197は、上述の10リットル規模の既定最小培地中で流加発酵に供された(37℃でのインキュベーション、続いて誘導剤の添加前の25℃での短期間のインキュベーションを含む)。多量の周辺質CRM197を含有する細胞は、全細胞タンパク質(TCP)を単離するために、市販の非イオン性洗剤系緩衝液での標準的な洗剤消化に供された。全細胞タンパク質の試料を高速(21kg)で10分間遠心分離し、可溶性画分を単離した。TCPの試料及び可溶性画分を分析した。
図9のパネルAに図示されるように、CRM197の可溶性周辺質形態は、洗剤の均質化により完全に不溶性となった。逆に、周辺質調製物(上述のように)は、高速遠心分離に供されたとき、周辺質CRM197は、予想通り、可溶性形態を維持した。
図9のパネルBを参照されたい。
【0094】
不溶性のCRM197の画分を回収する試みにおいて、洗剤系の細菌細胞溶解は、洗剤溶解と比較してCRM197を生成するための産生レベルのプラットホームのより助けとなり、商業的規模拡大プロセスにおいて周辺質を単離する必要性を排除するであろう細胞溶解の機械的方法と比較された。加えて、溶解は、下の表3に記載されるタンパク質の溶解を強化することが知られる化学剤の存在下で行われた。
【0095】
表3:溶解方法及び溶解剤のリスト
【表4】
【0096】
超音波処理及び微細流動化は50mMのトリスHCl緩衝液(pH8)中で行われ、全ての溶解方法はリゾチームとベンゾナーゼとの商業混合物であるLysonase(商標)(Novagen,Darmstadt,Germany)の存在下で実行された。次に、表3に列記される薬剤の各々は、別個の調製物において試験された。
図10は、洗剤または機械的溶解により行われた一連の単離の例である。可溶性CRM197は、洗剤溶解を用いて得ることができず、溶解剤を含んだ洗剤溶解を用いた、可溶性CRM197のわずかな増加のみが明らかであった。グリセロール及びスクロースは、洗剤単独と比較したとき、可溶性画分に見られた可溶性CRM197の量を多少高めた(
図10のパネルA)。しかしながら、機械的溶解は、可溶性画分において、CRM197のレベルを劇的に増加させた。実際、CRM197レベルの劇的な増加は、超音波処理(
図10のパネルB)または微細流動化が使用されたか否かに関わらず、機械的溶解に供された全試料からの可溶性画分において明らかであった。さらに、機械的溶解後に得られた可溶性CRM197の量は、溶解剤によって著しく異ならなかった(表3の他の全ての薬剤と「薬剤なし」を比較)。機械的溶解方法から生成された結果の取りまとめは、MDS42におけるCRM197(短い37℃でのインキュベーション、続いて25℃での成長、及び25〜35μMのIPTGでの後期段階誘導を含む培養条件を使用)が7.2〜8.3%の全細胞タンパク質及び6.3〜7.7%の可溶性タンパク質を含むことを示唆する。これらの結果は、機械的溶解が大規模な商業的発酵に使用される細胞破砕の標準的な方法であり、多量の可溶性CRM197を生成する能力を暗示するため、興味深い。
【0097】
前述のデータに基づき、可溶性CRM197を生成するための好適な商業的プロトコルは、細胞が低速遠心分離によって回収され、好適な緩衝液(例えば、50mMのトリス−HCl緩衝液、pH約8)中で、機械的手段により(例えば、超音波処理または微細流動化)溶解される、周辺質シグナル配列(例えば、ompAまたはompFによりコードされる)に融合されたCRM197コード配列をコードする発現ベクターを保有する減少ゲノム大腸菌宿主の25℃での発酵を含む。残渣を除去するために遠心分離した後、可溶性CRM197は、次に、上清から単離される。振盪フラスコ中で、培養物を25℃及び25〜35mMのIPTGでインキュベートし、95〜100%のCRM197を可溶性形態で単離した。
【0098】
ompA−CRM197融合を含有する発現ベクターを保有する減少ゲノム大腸菌MDS69 metab株を用いた(上述のように)発酵の結果の要約は、下の表4に示される。これらの発酵は、既定最小培地及び対数成長後期での誘導剤IPTGの添加を用いた流加条件下で生じた。発酵規模は10リットルであった。誘導剤の濃度を変更することにより、周辺質CRM197の量は0.5から約2g/Lに増加した。
【表5】
【0099】
図11は、100μMの誘導剤濃度を採用する発酵の詳細を図示する。全細胞タンパク質(TCP)単離物を可溶性(Sol)及び不溶性(Insol)画分と比較するこの発酵からのゲルは、発酵中、可溶性CRM197の強固な発現を明らかに示した(
図12を参照)。
【0100】
減少ゲノム大腸菌宿主株の流加発酵における可溶性CRM197の産生に最適な条件は以下の通りであった。温度に関して、37℃でインキュベーションすることにより、バッチ相において成長を開始させ、続いて誘導剤(この場合、IPTG)の添加前に20〜25℃に温度を変更することが最適であった。最適なpH範囲は6.5〜7.5(例えば、6.5、7.0、または7.5)である。最適な誘導剤濃度は100〜250μMのIPTGである(成長の後期対数期中に添加された)。培地条件に関して、最小培地条件は適切であると判断され、費用削減の利点及び動物由来の産物を含まない既定条件を有する。重要なことには、従来の大腸菌株は、最小培地中で盛んに成長しない。これらの最適な条件を採用することにより、少なくとも4g/Lの可溶性CRM197の標的収量が減少ゲノム大腸菌宿主株(例えば、MDS42またはMDS69)を用いた10L規模の発酵において確実に産生され得ると推定される。
【0101】
実施例4
CRM197の下流プロセシング
減少ゲノム大腸菌におけるCRM197の産生及び機械的溶解後、CRM197は精製され得る。CRM197が発酵条件下でMDS69 metabから産生されたかを判断するために、疎水性相互作用クロマトグラフィー(フェニルセファロース)と陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE−セルロース)との組み合わせを使用して、小規模の精製が行われた。
図11に示される50OD単位の28時間発酵試料は、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)の溶液中で、微細流動化装置(MF)を用いて均質化に供された。得られた均質物を、10分間21,000gで遠心分離し、可溶性及び不溶性(IS)画分を単離した。ウエスタンブロット及びジフテリア毒素(DPX)に対してポリクローナル抗体を用いて、CRM197が可溶性画分において非常に豊富であることが分かった(
図13のパネルAは、3つの濃度(0.1、0.07、及び0.04OD)での、微細流動化装置(MF)及び再懸濁不溶性(IS)画分を、プレカラム可溶性画分と比較する)。可溶性画分(25OD等価)を濾過し(0.45μm)、13%(wt/vol)硫酸アンモニウムとし、10mMの塩化ナトリウム、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)で予め平衡化されたフェニルセファロースカラム(フェニルセファロースHP HiTrap,General Electric)上に充填した。0.6Mの硫酸アンモニウム、6mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を用いてカラムを洗浄し、CRM197を低塩条件(10mMの塩化ナトリウム、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.5)下で溶出した。次に、5つの2.5mLの溶出した画分を抗DPXウエスタンブロット及びタンパク質染色により分析した(
図13のパネルA、10mM NaClと表示されたレーン)。小量の未プロセスCRM197(
図13のパネルA、矢印)は、主の溶出した試料から離れて精製され、蒸留水で最終洗浄された。次に、
図13のパネルAにおいて丸が付けられた画分をプールし、蒸留水で1:2に希釈し、10mMの塩化ナトリウム、10mMのリン酸ナトリウム(pH7.5)で平衡化されている、1mlのDEAE sepharose fast flow(Pharmacia)を含有するカラム上に充填した。試料を充填し、通過液を回収した後、カラムを3容量の50mMの塩化ナトリウム、0.5mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)で洗浄した。増加塩化ナトリウム濃度:100mMのNaCl(2回、3ml)、1MのNaCl(3ml)、及び1.5MのNaCl(3ml)を用いてCRM197を溶出した。SDS−PAGE分析は、最も高純度の可溶性CRM197が1MのNaClを用いて溶出されたことを明らかにしたが、かなりの量が尚もカラムに結合されたままであった。
【0102】
これらの結果は、減少ゲノム大腸菌宿主株において産生されたCRM197が非常に可溶性であり、既存の精製方法を用いて高純度に単離され得ることを示す。
【0103】
実施例5
野生型株と比較した減少ゲノム大腸菌宿主におけるCRM197産生
減少ゲノム大腸菌株におけるCRM197の周辺質産生が類似する条件下で野生型大腸菌株におけるCRM197の産生と比較された。よって、CRM197大腸菌BLR(DE3)がOmpA−CRM197融合を保有するpSX2ベクターで形質転換され、周辺質産生が評価され、減少ゲノム大腸菌MDS42recA株におけるCRM197の周辺質産生と比較された。発酵条件は上述の通りであった。37℃での短い成長開始相の後、0.2%グルコース(及びBLR(DE3に関しては31μg/mlのイソロイシン)培養物)を補充したKorz培地中で、細胞を25℃で19時間成長させた。CRM197の発現は、15または25mM IPTGを用いて、OD=0.3で誘導された。
【0104】
図14に図示されるように、周辺質CRM197の産生において少なくとも約5倍の増加が野生型B株と比較して減少ゲノム大腸菌宿主において観察された。
【0105】
さらなる実験は、OmpF−CRM197融合が、OmpA−CRM197融合と比較して、減少ゲノム大腸菌宿主において多量の可溶性周辺質CRM197を実際にもたらしたことを明らかにした。減少ゲノム大腸菌宿主MDS69 metab株及びMDS69 lowmut株(polB(b0060)、dinB(b0231)、及びumuDC(b1183−b1184)の欠失をさらに含むMDS69株)は、OmpF−CRM197融合をコードする発現ベクターで形質転換され、CRM197の周辺質発現は、同じ条件下で、OmpA−CRM197融合をコードする発現ベクターを保有するMDS69 lowmut宿主における発現と比較された。37℃での短い成長開始相の後、0.2%グルコースを補充したKorz培地中で、細胞を25℃で23時間成長させた。CRM197の発現は、25または35mMのIPTGを用いて、OD=0.3〜0.34で誘導された。周辺質タンパク質を単離し、各株における可溶性CRM197の発現を分析した。
図15に図示されるように、OmpA−CRM197構築物と比較して、高収量のCRM197がOmpF−CRM197構築物で得られた。
【0106】
実施例6
減少ゲノム大腸菌株における様々なシグナル配列を用いたCRM197産生試験
シグナル配列は、周辺質画分の2Dゲル分析によって決定されるように、大腸菌B株及びK株の周辺質におけるそれらの存在量に基づき選択された(Han,Mee−Jung et al.,Journal of Bioscience and Bioengineering,117(4):437−442(2014))。表5は、選択されたシグナル配列及びB株及びK株の周辺質におけるそれらの相対的存在量を列挙する。
【表6】
【0107】
表5及び
図17に図示されるシグナル配列及びCRM197配列(その天然のシグナル配列を欠く)の組み合わせを含有するプラスミドpSX2(MglB、MalE、OppA、RbsB、Agp、FkpA、YtfQ、HdeA、HdeBまたはGlnH;OmpF及びOmpCも試験された)は、減少ゲノム大腸菌MDS69 metab株(
図18〜21においてT69 Meta)内に形質転換され、振盪フラスコ培養において検査された。上述のように、MDS69 metabは、MDS69背景上に次の修飾:(i)iclR(b番号b4018、NCBI Entrez GeneID番号948524で記載)及びarpA遺伝子(b番号b4017、NCBI Entrez GeneID番号944933で記載)の欠失、(ii)rph遺伝子(b3643)の欠失、ならびに(iii)982位でのATジヌクレオチドの挿入によるilvGフレームシフト突然変異の補正を含む。簡潔に述べると、スターター培養物を生成するために、MOPS最小培地−カナマイシン(MMM/Kan)−グルコース条痕板からの形質転換した細菌のコロニー形成単位を、0.2%グルコース及び50μg/mlのカナマイシンを補充した3mlのKorz最小培地中に再懸濁し、37℃で一晩インキュベートした。スターター培養物は、125mlのErlenmeyerフラスコに20mlのKorz/0.2%グルコース/KanをOD600=0.05となるように播種し、37℃で1.5時間成長させ、次いで25℃に変更し、OD
600が約0.3になるまで成長させるために使用された。その時点で、誘導剤(IPTG)を25μM、35μM、または50μMの濃度で添加した(後期誘導)。次に、後期誘導を25℃で20時間成長させ、2ODの培養物を採取した。BugBuster+Lysonaseを用いて全細胞タンパク質を調製し、震央周辺質化方法(Epicentre Periplasting Method)を用いて周辺質及びスフェロプラスト画分を調製した。
【0108】
図_18〜20は、それぞれ、示されるシグナル配列(誘導A−OmpF、MalE、HdeA、OppA、HdeB、GlnH;誘導B−OmpF、MglB、Agp、OmpC、RbsB、FkpA、YtfQ)を用いた、25μM、35μM、または50μMの誘導剤濃度での(可溶性)CRM197の周辺質収量を示す。25μMの誘導剤濃度での全てのシグナル配列で、良好な収量が得られた(
図18)。興味深いことに、35μMの誘導剤濃度で、YtfQシグナル配列を用いたCRM197の収量は、他の試験したシグナル配列を用いた、この誘導剤濃度で得られたCRM197の収量に対して大幅に増加した(
図19)。この作用は、50μMの誘導剤濃度でさらにより顕著になり、CRM197の収量は高いままであり、一方他の試験したシグナル配列を用いたCRM197の収量は、この誘導剤濃度で大幅に減少した(
図20)。よって、CRM197とYtfQシグナル配列との組み合わせは、試験した他のシグナル配列とのCRM197の組み合わせよりも大幅に広い誘導範囲を有すると判断された。
【0109】
YtfQシグナル配列を用いたCRM197の誘導範囲をさらに評価するために、上述の方法に従い、各々8つのIPTG(誘導剤)レベルの2つの培養物を、MDS69 metab(0、25、35、50、75、100、150、及び250μM)において試験した。対照として、CRM197及びOmpFシグナル配列を用いたMDS69 metabに関して、各々4つのIPTGレベルの2つの培養物も試験した(0、25、35、50μM)。全細胞タンパク質(TCP)及びキャリパーの周辺質分析用の2OD試料を回収した。
【0110】
各誘導剤レベルに関して試験した2つの培養物の平均結果を
図21に図示する。YtfQシグナル配列(YtfQ−CRM197)との組み合わせでのCRM197の収量は、最大100μMの全誘導剤レベルにわたって高いままであった。しかしながら、OmpFとの組み合わせでのCRM197の収量は、25及び35μMの誘導剤濃度でのみ高かった。
図22は、50μMのIPTG(OmpF)ならびに50、75、100、150、及び250μMのIPTG(YtfQ)での、周辺質(P)及び培地(M)におけるCRM197収量に対するOmpF及びYtfQシグナル配列の作用を比較するタンパク質ゲルである。意外にも、YtfQシグナル配列に関して、大量の周辺質CRM197が50、75、及び100μMの誘導剤濃度で明らかであったが、OmpF配列に関して、非常に少量の周辺質CRM197が50μMの誘導剤濃度で存在した。
【0111】
簡潔に述べると、スターター培養物を生成するために、MOPS最小培地−カナマイシン(MMM/Kan)−グルコース条痕板からの形質転換した細菌のコロニー形成単位を、0.2%グルコース及び50μg/mlのカナマイシンを補充した3mlのKorz最小培地中に再懸濁し、37℃で一晩インキュベートした。スターター培養物は、125mlのErlenmeyerフラスコに20mlのKorz/0.2%グルコース/KanをOD
600=0.05となるように播種し、37℃で1.5時間成長させ、次いで25℃に変更し、OD
600が約0.3になるまで成長させるために使用された。その時点で、誘導剤(IPTG)を25μM、35μM、または50μMの濃度で添加した(後期誘導)。次に、後期誘導を25℃で20時間成長させ、2ODの培養物を採取した。BugBuster+Lysonaseを用いて全細胞タンパク質を調製し、震央周辺質化方法を用いて周辺質及びスフェロプラスト画分を調製した。
【0112】
次に、MDS69 metabにおけるOmpFまたはYtfQのいずれかのシグナル配列との組み合わせ、及び大腸菌B株(BL21DE3)におけるOmpFとの組み合わせのCRM197収量に対する、非常に後期誘導(OD
600約2)の作用を評価した。簡潔に述べると、25℃のスターター培養物を生成するために、0.2%グルコース及び50μg/mlのカナマイシニン(Kanamycinin)を補充した3mlのKorz最小培地を、形質転換したMDS69 metabまたはBL21DE3のコロニー形成単位を播種し、37℃で一晩インキュベートし、0.2%グルコース及び50μg/mlのカナマイシニン(Kanamycinin)を補充した15mlのKorz最小培地を125mlのErlenmeyerフラスコに播種し、これを25℃で一晩成長させるために使用した。スターター培養物を使用して、90mlのKorz/0.2%グルコース/カナマイシンを500mlのErlenmeyerフラスコにOD
600=0.1となるように播種し、続いてOD
600>2となるまで25℃で成長させ(飽和またはほぼ飽和)、次に、様々なIPTG濃度で誘導するために(非常に後期誘導)、125mlのErlenmeyerフラスコの4×20のアリコートに分けた。誘導物を25℃で20時間成長させ、2ODの培養物を分析用に採取した。BugBuster+Lysonaseを用いて全細胞タンパク質(TCP)を調製した。震央周辺質化方法を用いて周辺質及びスフェロプラスト画分を調製した。
図23に示されるように、最大100μMのIPTGまでの良好な周辺質発現は、MDS69 metabにおけるCRM197とOmpFシグナル配列との組み合わせに関して観察され、これは、200mMの誘導剤濃度で減少し、おそらく不溶性に起因する。良好な周辺質発現は、最大400μMのIPTG(試験された最高濃度)までのMDS69 metabにおけるCRM197とYtfQシグナル配列との組み合わせに関して観察され、不溶性CRM197は観察されなかった。弱い発現は、試験された全誘導剤濃度(25〜200μM)で、BL21(DE3)株におけるCRM197とOmpFの組み合わせに関して観察された。CRM197はスフェロプラストにおいて観察されなかった。
【0113】
要約−示されるデータは、減少ゲノム大腸菌宿主における可溶性CRM197の産生が従来の方法によって得られる収量の10倍である収量を送達したことを示す。減少ゲノム大腸菌宿主における産生は、効率を増大し、製造費用を削減することが予想される。さらに、減少ゲノム大腸菌宿主における産生は、非減少ゲノムを用いた従来の細菌において産生されたものよりも清浄で安全でもある。これらの改善は、薬学的タンパク質製品の産生に広く影響し、最終的には、それらを必要するリスクがある集団のワクチンへのアクセスを広げるだろう。さらに、CRM197の高収量は、幅広い範囲のシグナル配列との組み合わせで観察された。CRM197との組み合わせでYtfQシグナル配列において観察された幅広い誘導範囲は、YtfQがK株大腸菌と比較したB株大腸菌において非常に多い量で見出され、例示的な減少ゲノム株がK株に基づくため、意外であった。減少ゲノム大腸菌におけるYtfQとの組み合わせでのCRM197の幅広い誘導範囲は、誘導剤の濃度がタンパク質の産生中に変えることができ、したがって、これらの宿主におけるCRM197との組み合わせでのYtfQシグナル配列の使用がCRM197の収量のさらなる増加をもたらすため、大きな利点である。