(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473472
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】ホログラフィック補正を用いたホログラフィック画像投影
(51)【国際特許分類】
G03H 1/16 20060101AFI20190207BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
G03H1/16
G02B27/01
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-54367(P2017-54367)
(22)【出願日】2017年3月21日
(62)【分割の表示】特願2015-548773(P2015-548773)の分割
【原出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2017-151444(P2017-151444A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年4月5日
(31)【優先権主張番号】1223416.7
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514073868
【氏名又は名称】トゥー ツリーズ フォトニクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(72)【発明者】
【氏名】クリスマス、ジェイミーソン
(72)【発明者】
【氏名】マシヤノ、ダックソン
【審査官】
井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−233875(JP,A)
【文献】
特開平07−104646(JP,A)
【文献】
特開平05−278498(JP,A)
【文献】
特開2005−070255(JP,A)
【文献】
特開2009−246505(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0157667(US,A1)
【文献】
特開平08−095481(JP,A)
【文献】
米国特許第04275454(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/00−5/00
G02B 5/32
G02B 27/01
G02F 1/13
B60K 35/00−37/06
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間的に変化する光学パワーを有する光学素子を用いて投影する方法であって、
二次元画像を表すフーリエ領域データを第1のレンズ効果を有するフーリエ領域データと合成して第1のホログラフィックデータを生成することと、
前記第1のホログラフィックデータで光を空間的に変調して第1の空間的に変調された光ビームを形成することと、
前記光学素子の第1の領域を前記第1の空間的に変調されたビームで照明することにより前記光学素子を用いて前記第1の空間的に変調された光ビームの方向を変更することと、
を含み、
前記第1のレンズ効果は前記第1の領域における前記光学素子の前記光学パワーを補償し、
前記第1の領域として異なる領域が用いられる場合、前記第1のレンズ効果と異なるレンズ効果を有するフーリエ領域データをリアルタイムに選択することにより、前記異なる領域における前記光学素子の光学パワーを補償する、方法。
【請求項2】
前記二次元画像を表す前記フーリエ領域データを第2のレンズ効果を有するフーリエ領域データと合成して第2のホログラフィックデータを生成することと、
前記第2のホログラフィックデータで光を空間的に変調して第2の空間的に変調された光ビームを形成することと、
前記光学素子の第2の領域を前記第2の空間的に変調されたビームで照明することと、
をさらに含み、
前記第2のレンズ効果は前記第2の領域における前記光学素子の前記光学パワーを補償し、
前記第2の領域として異なる領域が用いられる場合、前記第2のレンズ効果と異なるレンズ効果を有するフーリエ領域データをリアルタイムに選択することにより、前記異なる領域における前記光学素子の光学パワーを補償する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2のレンズ効果は、それぞれ前記第1および第2の領域における前記光学素子の前記光学パワーを実質的に打ち消す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光学素子は前記第1および第2の空間的に変調された光ビームを視認面へと方向転換するように構成されている、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1および第2の空間的に変調された光ビームは、前記視認面において実質的に隣接している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1および第2の空間的に変調された光ビームは、前記視認面において重なり合わない、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
方向転換された前記第1の空間的に変調された光ビームの収束性または発散性は、方向転換された前記第2の空間的に変調された光ビームの収束性または発散性と実質的に等しい、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項2から7のいずれか一項に記載の方法であって、
前記第1のホログラフィックデータで光を空間的に変調して第1の空間的に変調された光ビームを形成し、前記第2のホログラフィックデータで光を空間的に変調して第2の空間的に変調された光ビームを形成することは、
少なくとも1つの空間光変調器上に前記第1および第2のホログラフィックデータを表示することと、
前記少なくとも1つの空間光変調器を平面波で照明して前記第1および第2のホログラフィックデータにそれぞれ対応する前記第1および第2の空間的に変調された光ビームを形成することと、を含む方法。
【請求項9】
前記光学素子が車両のフロントガラスである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
二次元画像を表すフーリエ領域データを第1のレンズ効果を有するフーリエ領域データと合成して第1のホログラフィックデータを生成するように構成された処理手段と、
前記第1のホログラフィックデータを表示するように配置されたピクセルのアレイを備える少なくとも1つの空間光変調器と、
空間的に変化する光学パワーを有する光学素子であって、第1の光学パワーを有する第1の領域を備える前記光学素子と、
を備え、
前記第1のレンズ効果は前記第1の光学パワーを補償し、
前記処理手段は、前記第1の領域として異なる領域が用いられる場合、前記第1のレンズ効果と異なるレンズ効果を有するフーリエ領域データをリアルタイムに選択することにより、前記異なる領域における前記光学素子の光学パワーを補償するように構成される、プロジェクタ。
【請求項11】
前記処理手段は、さらに、前記二次元画像を表す前記フーリエ領域データを第2のレンズ効果を有するフーリエ領域データと合成して第2のホログラフィックデータを生成するように構成され、
前記少なくとも1つの空間光変調器は、前記第2のホログラフィックデータを表示するように配置されたピクセルのアレイをさらに備え、
前記光学素子は、第2の光学パワーを有する第2の領域をさらに備え、
前記第2のレンズ効果は前記第2の光学パワーを補償し、
前記処理手段は、前記第2の領域として異なる領域が用いられる場合、前記第2のレンズ効果と異なるレンズ効果を有するフーリエ領域データをリアルタイムに選択することにより、前記異なる領域における前記光学素子の光学パワーを補償するように構成される、請求項10に記載のプロジェクタ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの空間光変調器が、前記第1のホログラフィックデータを表示するように配置されたピクセルのアレイを備える第1の空間光変調器と、前記第2のホログラフィックデータを表示するように配置されたピクセルのアレイを備える第2の空間光変調器とを備える、請求項11に記載のプロジェクタ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの空間光変調器を平面波で照明するように構成された光源をさらに備える、請求項10から12のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項14】
複数の二次元画像を表すフーリエ領域データのリポジトリをさらに備える、請求項10から13のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項15】
前記光学素子が車両のフロントガラスである、請求項10から14のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は画像投影の分野に関する。本明細書に開示される実施形態は、概してホログラフィ画像投影およびホログラフィ画像投影の方法に関する。より詳細には、本明細書に開示される実施形態は、概してヘッドアップディスプレイおよびフロントガラスを利用してホログラフィック画像を投影する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体から散乱した光は、振幅および位相両方の情報を含んでいる。この振幅および位相情報は、例えば、干渉縞を有するホログラフィック記録、すなわち「ホログラム」を形成する周知の干渉技術によって感光板上にとらえることができる。「ホログラム」は、元の物体を表すホログラフィック再構成、すなわち再生画像を形成するのに適した光で照明されることで再構成されてもよい。
【0003】
許容品質のホログラフィック再構成は、元の物体に関する位相情報のみを含む「ホログラム」から形成可能であることが見いだされている。このようなホログラフィック記録は、位相限定ホログラムと称されてもよい。計算機ホログラフィでは、例えばフーリエ技術を用いて干渉プロセスを数値的にシミュレートして、計算機位相限定ホログラムを生成してもよい。計算機位相限定ホログラムを用いて、物体を表すホログラフィック再構成を生成してもよい。
【0004】
従って、「ホログラム」という用語は、物体の情報を含み、物体を表す再構成を形成するために用いることができる記録に関する。ホログラムは、周波数領域、すなわちフーリエ領域における物体の情報を含んでもよい。
【0005】
ホログラフィック技術を二次元画像投影システムに用いることが提案されている。位相限定ホログラムを用いて画像を投影する利点は、計算方法によって、例えば投影画像のアスペクト比、解像度、コントラストおよびダイナミックレンジなどの多くの画像の属性を制御できることにある。位相限定ホログラムのさらなる利点は、振幅変調によって失われる光エネルギーがないことである。
【0006】
計算機位相限定ホログラムは、「ピクセル化」されてもよい。すなわち、位相限定ホログラムは個別の位相素子のアレイ上に表示されてもよい。それぞれの個別素子は「ピクセル」と称されてもよい。各ピクセルは位相変調素子などの光変調素子として機能してもよい。従って、計算機位相限定ホログラムは、液晶空間光変調器(SLM)などの位相変調素子のアレイ上に表示されてもよい。SLMは反射型でもよく、つまり変調された光がSLMから反射して出射されてもよい。
【0007】
各位相変調素子、すなわちピクセルは、状態が変化することで、位相変調素子に入射する光に制御可能な位相遅延を与えてもよい。従って、Liquid Crystal On Silicon(LCOS) SLMなどの位相変調素子のアレイは、計算的に決定された位相遅延分布を表してもよい(すなわち「表示」してもよい)。位相変調素子のアレイに入射する光がコヒーレントである場合、この光は、ホログラフィック情報、すなわちホログラムで変調される。ホログラフィック情報は、周波数領域、すなわちフーリエ領域の情報でもよい。
【0008】
あるいは、位相遅延分布はキノフォームに記録されてもよい。「キノフォーム」という用語は、概して位相限定ホログラフィック記録、すなわちホログラムに言及するために使用されてよい。
【0009】
位相遅延は量子化されてもよい。すなわち、各ピクセルは離散的な数の位相レベルの1つに設定されてもよい。
【0010】
位相遅延分布は、(例えばLCOS SLMを照明することにより)入射光波に適用され、再構成されてもよい。空間での再構成の位置は、光学フーリエ変換レンズを用いて制御され、空間領域にホログラフィック再構成、すなわち「画像」が形成されてもよい。あるいは、再構成がファーフィールドで行われる場合には、フーリエ変換レンズは必要ではない場合もある。
【0011】
計算機ホログラムは、Gerchberg−Saxtonなどのアルゴリズムを用いるなど、様々な方法で計算可能である。Gerchberg−Saxtonアルゴリズムは、空間領域での振幅情報(例えば二次元画像)からフーリエ領域での位相情報を導出するために用いられてもよい。すなわち、物体に関する位相情報は、空間領域での強度すなわち振幅限定情報から「取り出され」てもよい。それにより、フーリエ領域における物体の位相限定ホログラフィック表示が計算されてもよい。
【0012】
ホログラフィック再構成は、フーリエ領域ホログラムを照明し、例えばフーリエ変換レンズを用いて光学フーリエ変換を行うことにより形成されてもよく、それにより、スクリーンなどの再生フィールドに画像(ホログラフィック再構成)が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図1は、本開示に係る、LCOS−SLMなどの反射型SLMを用いて、再生フィールド位置にホログラフィック再構成を生成する一例を示す。
【0014】
例えばレーザやレーザダイオードなどの光源(110)は、コリメートレンズ(111)を介してSLM(140)を照明するように配置される。コリメートレンズは、光を概ね平面の波面でSLMに入射させる。波面の方向は、わずかに法線から外れている(例えば、透明層の面に対して真に直交する方向から2°または3°離れている)。この配置により、光源からの光はSLM裏面のミラー面で反射し、位相変調層と相互作用して、出射波面(112)を形成する。出射波面(112)は、フーリエ変換レンズ(120)などの、スクリーン(125)にその焦点を有する光学系に照射される。
【0015】
フーリエ変換レンズ(120)は、SLMから出射する位相変調された光のビームを受け、周波数−空間変換を行うことで、空間領域でスクリーン(125)にホログラフィック再構成を生成する。
【0016】
このプロセスにおいて、光源からの光(画像投影システムの場合には可視光)は、SLM(140)および位相変調層(すなわち位相変調素子のアレイ)全域に分散される。位相変調層から出射した光は、再生フィールド全域に分散されてもよい。ホログラムのそれぞれのピクセルは、再生画像全体に寄与する。すなわち、再生画像上の特定の点と特定の位相変調素子との間に1対1の相関関係はない。
【0017】
Gerchberg−Saxtonアルゴリズムは、平面A、Bそれぞれにおける光ビームの断面強度I
A(x,y)、I
B(x,y)が既知であり、かつI
A(x,y)、I
B(x,y)が1つのフーリエ変換により関係づけられるときの位相回復問題を検討する。所与の断面強度により、平面A、Bそれぞれにおける位相分布Φ
A(x,y)、Φ
B(x,y)に対する近似が求められる。Gerchberg−Saxtonアルゴリズムは、反復プロセスに従ってこの問題に対する解を求める。
【0018】
Gerchberg−Saxtonアルゴリズムは、空間領域とフーリエ(スペクトル)領域との間でI
A(x,y)、I
B(x,y)を表すデータセット(振幅および位相)を繰り返し転送しながら、空間およびスペクトル制限を繰り返し適用する。空間およびスペクトル制限は、それぞれI
A(x,y)、I
B(x,y)である。空間またはスペクトル領域における制限は、データセットの振幅に課される。対応する位相情報は、一連の反復を通じて回復される。
【0019】
このような技術を利用してホログラフィックプロジェクタが提供されてもよい。このようなプロジェクタは車両用ヘッドアップディスプレイに応用されている。
【0020】
自動車におけるヘッドアップディスプレイの使用は、ますます一般的になっている。ヘッドアップディスプレイは、大きく2つのカテゴリーに分類される。すなわち、コンバイナ(運転手の視線上に仮想画像を反射させるための独立型ガラススクリーン)を用いるものと、車両のフロントガラスを利用して同様の目的を達成するものとに分類される。
【0021】
図2はヘッドアップディスプレイの一例を示し、ヘッドアップディスプレイは、光源206と、投影用画像を表すホログラフィックデータで光源からの光を空間的に変調するように構成された空間光変調器204と、フーリエ変換光学系205と、拡散体203と、フリーフォームミラー201と、フロントガラス202と、視認位置207とを備える。
図2は、ホログラフィック再構成の実像が拡散体203上の再生フィールドに形成される、いわゆる「非直視型」システムを示す。従って、ホログラフィック再構成は拡散体203上に投影され、拡散体203に焦点を合わせることで視認位置207から視認され得る。投影画像は、フリーフォームミラー201からの第1の反射およびフロントガラス202からの第2の反射により視認される。拡散体は、例えば、ホログラフィックシステムの開口数を増加させる機能を果たし、フリーフォームミラーを十分に照明することにより、仮想画像を運転手が視認できるようになる。
【0022】
しかし、いわゆる「コンバイナ」としてフロントガラス202を用いることによる問題は、フロントガラスの曲率により、表示されている仮想画像にレンズパワーが加わることである。この問題は、左から右へおよび上から下へと存在する異なるフロントガラスの曲率202によってさらに複雑になる。通常、この合成レンズ機能は入念に設計されたフリーフォームミラー201を用いることで補正される。しかし、これらのミラーは、最小の収差で設計するには極めて複雑であり、要求される精度で製造するには多大なコストがかかる。
【0023】
本開示は、これらの問題に対処し、改良されたプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
発明の態様は、添付の独立請求項に規定される。
【0025】
対象画像を投影する改良された方法を提供する。特に、車両のフロントガラスのような、空間的に変化する光学パワーを有する光学素子を用いて投影する方法を提供する。光学素子の光学パワーは、画像−コンテントデータをレンズ効果を有するデータと合成することにより補償される。利点としては、不定の光学要素を調整的に補償できるシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
添付の図面に基づいて、以下、実施形態を説明する。
【
図1】再生フィールド位置にホログラフィック再構成を生成するように構成されたLCOSなどの反射型SLMを示す概略図である。
【
図2】車両のヘッドアップディスプレイ用のいわゆる「非直視型」ホログラフィックプロジェクタを示す。
【
図3】位相限定ホログラムを計算機生成するためのアルゴリズムの一例を示す。
【
図4】
図3に示すアルゴリズムの一例のためのランダム位相シードの一例を示す。
【
図5】車両用「直視型」ヘッドアップディスプレイのチャンネルの1つを示す。
【
図6】実施形態に係る、車両のヘッドアップディスプレイ用「直視型」を示す。
【
図7】実施形態に係る、フレネルホログラムを計算するためのアルゴリズムを示す。
【
図8】LCOS SLMの概略図である。 図面において、類似の参照符号は類似の部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ホログラフィックに生成された二次元画像は、特に解像度および効率性において、従来の方法で投影された二次元画像よりも大きな利点を有することが知られている。
【0028】
Gerchberg−Saxtonに基づく修正アルゴリズムが開発されている。例えば、同時係属の国際公開第2007/131650号を参照されたい。これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
図3は、既知の振幅情報T[x,y]362を生じさせるデータセットのフーリエ変換の位相情報Ψ[u,v]を回復する修正アルゴリズムを示す。振幅情報T[x,y]362は、対象画像(例えば写真)を表す。位相情報Ψ[u,v]は、像平面において対象画像を表すホログラフィックを生成するために用いられる。
【0030】
マグニチュードと位相とは本来フーリエ変換において合成されるので、変換されたマグニチュード(および位相)は、計算されたデータセットの精度に関する有用な情報を含む。そのため、上述のアルゴリズムは、振幅情報および位相情報両方のフィードバックを提供してもよい。
【0031】
図3に示すアルゴリズムは、(振幅情報301および位相情報303を有する)複合波入力と、(同様に振幅情報311および位相情報313を有する)複合波出力とを有するとみなすことができる。振幅情報と位相情報とは本来組み合わされてデータセットを形成するが、便宜上それらを個別に考察する。なお、振幅情報および位相情報は共に、それら自身ファーフィールド画像用の空間座標(x,y)およびホログラム用の空間座標(u,v)の関数であり、ともに振幅分布および位相分布とみなすことができる。
【0032】
図3を参照に、処理ブロック350は、マグニチュード情報301および位相情報303を有する第1のデータセットからフーリエ変換を行う。その結果、マグニチュード情報および位相情報Ψ
n[u,v]305を有する第2のデータセットが生じる。処理ブロック350からの振幅情報は光源を表す分布に設定されるが、位相情報Ψ
n[u,v]305は保持される。位相情報305は、処理ブロック354により量子化され、位相情報Ψ[u,v]309として出力される。位相情報309は、処理ブロック356に送られ、処理ブロック352により新たなマグニチュードと組み合わされる。第3のデータセット307,309は、逆フーリエ変換を行う処理ブロック356に与えられる。これにより、振幅情報311および位相情報313を有する空間領域の第4のデータセットR
n[x,y]が生成される。
【0033】
第4のデータセットをはじめとして、その位相情報313は、第5のデータセットの位相情報を形成し、次の反復303’における第1のデータセットとして適用される。振幅情報R
n[x,y]311は、対象画像からの振幅情報T[x,y]362から減算されることにより修正され、振幅情報315のセットが生成される。スケーリングされた振幅情報315(αによりスケーリング)は、対象振幅情報T[x,y]362から減算され、次の反復において第1のデータセットとして適用される第5のデータセットの入力振幅情報η[x,y]301が生成される。これは、以下の式で数学的に表される。
【0035】
ここで、
F’は逆フーリエ変換であり、
Fは順フーリエ変換であり、
Rは再生フィールドであり、
Tは対象画像であり、
∠は角度情報であり、
Ψは角度情報の量子化バージョンであり、
εは新たな目標マグニチュードであり、ε≧0、
αは利得要素〜1である。
【0036】
利得要素αは、入力対象画像データのサイズおよび速度に基づいて予め定められてもよい。
【0037】
前回の反復からの位相情報がない場合、アルゴリズムの初回の反復では、ランダム位相生成器を用いて、出発点としてのランダムな位相情報が供給される。
図4は、ランダム位相シードの一例を示す。
【0038】
変形例では、処理ブロック350から結果として得られる振幅情報は廃棄されない。対象振幅情報362が振幅情報から減算されて、新たな振幅情報が生成される。複数の振幅情報が振幅情報362から減算されて、処理ブロック356への入力振幅情報が生成される。さらなる代替では、位相は完全にフィードバックされず、最後の2回の反復における変化に比例した部分のみがフィードバックされる。
【0039】
その結果、関心画像を表すフーリエ領域データが形成され得る。実施形態は一例としてのみの位相ホログラムに関し、本開示が振幅ホログラムにも同様に適用可能であると理解されてもよい。
【0040】
要約すると、発明者らは、車両のフロントガラスなどの空間的に変化する光学パワーを有するコンバイナを用いることに起因する問題には、「非直視型」システムの代わりにいわゆる「直視型」システムを用い、かつ画像を表すフーリエ領域データをコンバイナによって加わる光学パワーを補償するレンズ効果を有するフーリエ領域データと合成することにより対処してもよいことを認識した。データは単純可算により合成されてもよい。この点に関して、ホログラムは、投影用の実像を表す第1のデータとレンズ機能を有する第2のデータとを備える。特に、このアプローチにより、例えば投影システムが使用中に再度アライメントされ、コンバイナの異なる領域が用いられる場合、補償をリアルタイムで調整することができる。このような再アライメントは、例えば視認者が移動した場合に必要となり得る。
【0041】
図5は、ヘッドアップディスプレイ用のいわゆる「直視型」システムを示し、このシステムは、光源501と、SLM504と、フリーフォームミラー503と、フロントガラス502と、視認位置505とを備える。とりわけ、視認者の目のレンズが必要なフーリエ変換を行う。従って、直視型システムは、フーリエレンズを備えていない。SLMからの光線がコリメートされている場合、目は、網膜に鮮明な画像が形成されるように無限遠に焦点を合わせる必要がある。しかし、レンズ効果を有するフーリエ領域データが画像を表すフーリエ領域データに加算される場合、光線はコリメートされなくなり、目は、網膜に鮮明な再生フィールドが形成されるように、レンズ効果によって規定される焦点距離に焦点を合わせる必要がある。
【0042】
一実施形態では、レンズ効果を有するフーリエ領域データは、投影用の画像を表すフーリエ領域データと合成、例えば可算され、それにより、フロントガラスの光学パワーの影響が補償される、すなわち打ち消される。当業者であれば、必要とされるレンズ効果を有するフーリエ領域データの計算方法およびそのようなデータを他のフーリエ領域データに加算する方法は既知である。
【0043】
従って、空間的に変化する光学パワーを有する光学素子を用いて投影する方法が提供される。その方法は、二次元画像を表すフーリエ領域データを第1のレンズ効果を有するフーリエ領域データと合成して第1のホログラフィックデータを生成することと、第1のホログラフィックデータで光を空間的に変調して第1の空間的に変調された光ビームを形成することと、光学素子の第1の領域を第1の空間的に変調されたビームで照明することにより光学素子を用いて第1の空間的に変調された光ビームの方向を変更することとを含み、第1のレンズ効果は第1の領域における光学素子の光学パワーを補償する。
【0044】
SLMの開口数が小さい場合もあるとして、ホログラフィック再構成は1つの目にのみ視認される。従って、さらに有利な実施形態では、2つのSLMが用いられて2つのホログラフィック投影が提供される。
図6を参照に、目609がそれぞれ異なる投影を視認することにより、それぞれの投影はフロントガラス606、607の異なるエリア、すなわち領域で反射される。それぞれのエリアは光学パワーが異なる場合が多いが、この違いは個別に補正、すなわち補償され得る。とりわけ、発明者らは、本開示によれば、それぞれの投影がフロントガラスによって別々に影響され、それぞれの投影が個別に補正され得ることを認識した。
【0045】
より詳細には、
図6は、空間的に変調されたピクセル603aの第1のアレイを照明する第1の光源601aを示す。第1のホログラムはピクセル603a上に表示される。第1のホログラムは、画像データと第1のレンズデータ604aとを備える。画像データは、投影用の二次元画像を表すデータである。第1のレンズデータ604aは、第1のレンズ効果を与えるデータである。空間的に変調された光は、フロントガラス602の第1の領域607に入射する。光はフロントガラス602によって視認面609の第1の領域609aへと方向転換される。対応する光路が、第2のホログラムに与えられる。第2の光源601bは、空間的に変調されたピクセル603bの第2のアレイを照明する。第2のホログラムはピクセル603b上に表示される。第2のホログラムは、画像データと第2のレンズデータ604bとを備える。画像データは、投影用の二次元画像を表すデータである。第2のレンズデータ604bは、第2のレンズ効果を与えるデータである。一実施形態では、第1のレンズデータ604aは、第2のレンズデータ604bとは異なる。空間的に変調された光は、フロントガラス602の第2の領域608に入射する。光はフロントガラス602によって視認面609の第2の領域609bへと方向転換される。一実施形態では、視認面の第1の領域609aと第2の領域609bとは実質的に隣接していて、かつ/あるいは重なり合わない。
【0046】
従って、空間的に変化する光学パワーを有する光学素子を用いて投影する方法が提供される。その方法は、二次元画像を表すフーリエ領域データを第1のレンズ効果を有するフーリエ領域データと合成して第1のホログラフィックデータを生成することと、二次元画像を表すフーリエ領域データを第2のレンズ効果を有するフーリエ領域データと合成して第2のホログラフィックデータを生成することと、第1のホログラフィックデータで光を空間的に変調して第1の空間的に変調された光ビームを形成し、第2のホログラフィックデータで光を空間的に変調して第2の空間的に変調された光ビームを形成することと、光学素子の第1の領域を第1の空間的に変調されたビームで照明し、光学素子の第2の領域を第2の空間的に変調されたビームで照明することにより、光学素子を用いて第1および第2の空間的に変調された光ビームの方向を変更することと、を含み、第1および第2のレンズ効果は、それぞれ第1および第2の領域において光学素子の光学パワーを補償する。
【0047】
一実施形態では、第1のレンズ効果は第2のレンズ効果とは異なり、かつ/あるいは第1および第2のレンズ効果は個別に選択または計算される。この点に関して、光学素子の第1および第2の領域の異なる光学パワーが個別に補償されてもよいことが理解できる。第1および第2のホログラムは光学素子の空間的に変化する複合的な光学パワーを補償するようにそれぞれ構成されているとみなしてもよい。
【0048】
とりわけ、このアプローチにより、個別に補償されたホログラムを用いてフロントガラスの複合的な光学パワーを補償することで、高価なフリーフォームミラーが不要になる。さらなる利点としては、システムが、例えば、異なる視野角または異なるフロントガラス形状を補償するように容易に調整され得ることが理解できる。さらに、フロントガラスの曲率がプロファイルされている場合、システムは、異なるレンズデータを選択することで動的に変化に応答し得ることが理解できる。従って、実施形態では、物理的変更なしにいかなる車両にも使用可能なヘッドアップディスプレイが提供される。
【0049】
一実施形態では、第1および第2のレンズ効果は、それぞれ第1および第2の領域における光学素子の光学パワーを実質的に打ち消すことが理解できる。
【0050】
実施形態では、ホログラムは位相限定ホログラムであり、レンズ効果は位相限定レンズにより与えられる。位相限定ホログラムは、リアルタイムに計算されてもよいし、データベースなどのレポジトリから取得されてもよい。ホログラムは、Gerchberg−Saxton型アルゴリズムまたはフーリエ領域ホログラムを生成するための他のいかなるアルゴリズムを用いて計算されてもよい。当業者であれば、ホログラムは同様に振幅ホログラムでも、振幅・位相ホログラムでもよいことを理解するであろうし、従って、レンズ効果は、振幅ホログラムまたは振幅・位相ホログラムによって与えられてもよい。
【0051】
任意には、SLMによっては開口数が小さいものもあるため、実施形態は、運転手が(いわゆるアイボックスエリアで)常にホログラムを見ることができるようにするための視標追跡機構を含む。これらの実施形態では、視標追跡システムと接続された可動ミラーまたは他の光ステアリング機構が用いられる。一実施形態では、光学素子は第1および第2の空間的に変調された光ビームを視認面へと方向転換するように配置されている。
【0052】
好ましいシステムでは、それぞれの目が1つの空間的に変調されたビームのみを受ける。視認面でのビームの好ましい分離は、目の分離に依存する。一実施形態では、第1および第2の空間的に変調された光ビームは、視認面において実質的に隣接している。ビームが視認面において重なり合う場合、光学干渉が生じ得る。従って、一実施形態では、第1および第2の空間的に変調された光ビームは、視認面において重なり合わない。
【0053】
2つのホログラフィック再構成は、それぞれの目が実質的に同じ画像を見るようにそれぞれ補償される。2つの画像が異なる場合、混乱が生じ得る。一実施形態では、方向転換された第1の空間的に変調された光ビームの収束性または発散性は、方向転換された第2の空間的に変調された光ビームの収束性または発散性と実質的に等しい。
【0054】
光は、liquid crystal on silicon SLMなどの空間光変調器を用いて空間的に変調されてもよい。ホログラフィックデータは、光の入射平面波がホログラフィックデータで空間的に変調されるようにSLMに合わせて書かれていることが理解できる。この点に関して、SLMのピクセルがホログラフィックデータを「表示」または「表す」とみなしてもよい。
【0055】
一実施形態では、空間的変調は、少なくとも1つの空間光変調器上に第1および第2のホログラフィックデータを表示し、その少なくとも1つの空間光変調器を平面波で照明して第1および第2のホログラフィックデータにそれぞれ対応する第1および第2の空間的に変調された光ビームを形成することにより与えられる。
【0056】
有利な実施形態は、車両のフロントガラスを光学素子として利用して光の方向を視認者へと向ける車両用ヘッドアップディスプレイに関する。この点に関して、フロントガラスは、光学コンバイナとみなしてもよい。すなわち、実施形態では、光学素子は車両のフロントガラスである。しかし、当業者であれば、本開示がいかなる光学要素によって与えられる不要な光学パワーを補償するのにも適していることが理解できる。
【0057】
対応するプロジェクタが提供され、そのプロジェクタは、二次元画像を表すフーリエ領域データを第1のレンズ効果を有するフーリエ領域データと合成して第1のホログラフィックデータを生成するように構成された処理手段と、第1のホログラフィックデータを表すように配置されたピクセルのアレイを備える少なくとも1つの空間光変調器と、空間的に変化する光学パワーを有する光学素子であって、第1の光学パワーを有する第1の領域を備える光学素子とを備え、第1のレンズ効果が第1の光学パワーを補償する。
【0058】
さらに有利な実施形態では、処理手段は、さらに、二次元画像を表すフーリエ領域データを第2のレンズ効果を有するフーリエ領域データと合成して第2のホログラフィックデータを生成するように構成されており、少なくとも1つの空間光変調器は、第2のホログラフィックデータを表すように配置されたピクセルのアレイをさらに備え、光学素子は、第2の光学パワーを有する第2の領域をさらに備え、第2のレンズ効果が第2の光学パワーを補償する。
【0059】
実施形態は、2つのSLMを用いて2つのホログラフィック再構成を提供する。しかし、十分に大きいSLMが存在する場合、個別のホログラムが運転手に視認されるエリアのみに対して書かれた1つの装置を用いて同様の効果が得られるであろう。すなわち、他の実施形態では、同一のSLMの異なるエリアを用いて2つのホログラフィック再構成を形成する。すなわち、一実施形態では、少なくとも1つの空間光変調器が、第1のホログラフィックデータを表示するように配置されたピクセルのアレイを備える第1の空間光変調器と、第2のホログラフィックデータを表示するように配置されたピクセルのアレイを備える第2の空間光変調器とを備える。
【0060】
当業者であれば、光源はプロジェクタの一部であっても、プロジェクタと協働するように構成された外部要素でもよいことがわかる。すなわち、一実施形態では、プロジェクタは、少なくとも1つの空間光変調器を平面波で照明するように構成された光源をさらに備える。
【0061】
別の実施形態では、1つの光源がビームスプリッタまたは他の光学スプリッタによって分岐され、それを用いて両方の空間光変調器を照明する。
【0062】
ヘッドアップディスプレイは、技術分野で知られる種々の情報を表示してもよいことが理解できる。従って、全ての可能な表示に対応するホログラムは、事前に計算されレポジトリに保存されるか、リアルタイムで計算されてもよい。一実施形態では、プロジェクタは、複数の二次元画像を表すフーリエ領域データのリポジトリをさらに備える。同様に、実施形態では、異なるレンズ効果を有するフーリエ領域データのリポジトリが提供される。さらなる実施形態では、位置(例えば、XおよびY座標)の関数としての光学素子の光学パワーのルックアップテーブルが提供され、それにより、適切なレンズデータが適用され、光学素子が補償される。
【0063】
本明細書に記載される実施形態は、一例としてのみのフーリエホログラフィに関する。本開示は、ホログラムの算出時にフレネルレンズ関数が適用されるフレネルホログラフィにも同様に適用可能である。
図7は、投影用の対象画像を表すフーリエ領域データを計算するためのフレネルホログラフィックアルゴリズムの一例を示す。
【0064】
位相回復アルゴリズムの開始条件701は、それぞれのピクセルが単一性振幅ではあるが、ランダム位相シード関数により与えられるランダム位相を有することである。フレネル位相関数703が位相データに加算される。結果として得られる振幅および位相関数がフーリエ変換される705。対象画像(振幅のみ)709が振幅成分から減算され、制御可能利得711が適用される。対象画像709は、振幅成分に加算され、逆フーリエ変換715が行われる。フレネルレンズ関数717が減算され、位相が量子化される719。結果として得られる位相情報がホログラム723を形成する。「容認できる」品質のホログラムが得られるまで、フレネルレンズ関数721を再度加算し、フーリエ変換715およびそれに続くステップを繰り返すことにより、ループがさらに反復されてもよい。
【0065】
再構成されたホログラムの品質は、再構成の回折性の結果であるいわゆる0次問題によって影響される可能性がある。このような0次光は「ノイズ」と見なすことができ、例えば鏡面反射光およびその他のSLMからの不要な光を含む。
【0066】
この「ノイズ」は、通常フーリエレンズの焦点に集光され、再構成されたホログラムの中心に輝点をもたらす。従来、0次光は単に遮断されていたが、これは明らかに輝点を灰色点で置き換えることを意味する。
【0067】
しかし、ホログラムは三次元情報を含むため、再構成を空間の異なる面に移動させることができる。例えば国際公開第2007/131649号を参照されたい。これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
あるいは、角度選択フィルタを用いて、0次の平行光線のみを取り除くことも可能である。0次光を制御する他の方法を用いてもよい。
【0069】
本明細書に記載される実施形態は、1つのフレーム当たり1つのホログラムを表示することに関するが、本開示は決してこの点に限定されず、1つ以上のホログラムを同時にSLM上に表示してよい。
【0070】
例えば、実施形態は、「タイリング」の技術を実施し、この技術では、SLMの表面積が多数のタイルに細分され、それぞれのタイルが元のタイルの位相分布と類似または同一の位相分布に設定される。従って、各タイルの表面積は、SLMの割当てられた全面積が1つの大きな位相パターンとして用いられた場合よりも小さい。タイルにおける周波数成分の数が少なくなるほど、画像が生成された時再構成されるピクセルはより離間している。画像は0次回折次数内で生成され、1次およびそれ以降の次数は画像と重なり合わないように十分遠くに位置し、空間フィルタによって遮断されることが好ましい。
【0071】
上述したように、本方法により生成される画像は、(タイリング有無にかかわらず)、画像ピクセルを形成するスポットを含む。用いられるタイルの数が多くなればなるほど、これらのスポットは小さくなる。無限正弦波のフーリエ変換の例を挙げると、単一の周波数が生成される。これは最適な出力である。実際には、1つのタイルのみが用いられる場合、これは正弦波の1つの周期の入力に対応し、ゼロ値が正弦波の端点から無限まで正負方向に延在する。フーリエ変換から1つの周波数を生成する代わりに、主周波数成分をその両側の一連の隣接する周波数成分とともに生成する。タイリングの使用により、これらの隣接する周波数成分の大きさが低減され、その直接的な結果として、隣接する画像ピクセル間で発生する(建設的または破壊的な)干渉が少なくなり、それにより画像品質が向上する。
【0072】
断片的なタイルを使用することも可能ではあるが、好ましくは、各タイルが完全なタイルである。
【0073】
実施形態はGerchberg−Saxtonアルゴリズムの変形に関するが、当業者であれば、他の位相回復アルゴリズムでも本明細書に開示された改良された方法を実施できることがわかる。
【0074】
当業者であれば、本明細書に開示された改良された方法は、物体の三次元再構成を形成するために用いられるホログラムの計算にも同様に適用可能であることがわかる。
【0075】
同様に、本開示は、単色画像の投影に限定されない。
【0076】
カラーの二次元ホログラフィック再構成を生成することが可能であり、主に2つの方法で達成できる。1つの方法は、「面順次カラー」(FSC)として知られている。FSCシステムでは、3つのレーザ(赤、緑、青)が用いられ、それらのレーザが順次SLMに照射されて、ビデオのそれぞれのフレームが生成される。カラーは、人間の視認者が3つのレーザの組み合わせから多色画像を視認するのに十分速い速度で循環する(赤、緑、青、赤、緑、青など)。従って、それぞれのホログラムは特定のカラーである。例えば、1秒当たり25フレームのビデオでは、最初のフレームは、赤レーザを1秒の1/75の間照射し、次に緑レーザを1秒の1/75の間照射し、最後に青レーザを1秒の1/75の間照射することで生成される。その後、次のフレームが赤レーザから生成される、といった具合である。
【0077】
「空間分離カラー」(SSC)と呼ばれる別の方法では、3つのレーザ全てが同時に照射されるが、例えばそれぞれが異なるSLMを用いたり、1つのSLMの異なるエリアを用いたりするなど、異なる光路を取り、その後合成されてカラー画像が形成される。
【0078】
面順次カラー(FSC)方式の利点は、SLM全体が各カラーのために用いられることである。これは、SLMの全てのピクセルが各カラー画像に用いられるため、生成される3つのカラー画像の品質が損なわれないことを意味する。しかし、FSC方式の欠点は、それぞれのレーザが3分の1の時間しか用いられないため、生成される全体的な画像がSSC方式により生成される対応する画像と比べて3分の1程度の明るさしかないことである。この欠点は、レーザを過度に動作させること、またはより高出力なレーザを用いることにより対処可能かもしれないが、これでは、より多くの電力が必要とされ、コスト高となり、システムがコンパクトではなくなる。
【0079】
SSC(空間分離カラー)方式の利点は、3つの全てのレーザが同時に照射されるため、画像がより明るいことである。しかし、空間の制約上1つのSLMしか用いることできない場合、SLMの表面積を三等分し、実質的に3つの別々のSLMとして動作させる。この欠点は、それぞれの単色画像に利用可能なSLM表面積が減少することにより、それぞれの単色画像の品質が低下することである。これに伴い、多色画像の品質も低下する。利用可能なSLM表面積が減少することは、SLMの使用可能なピクセルが少なくなることを意味し、そのため、画像の品質が低下する。画像の解像度が減少するため、画像の品質が低下する。
【0080】
実施形態では、SLMは、Liquid Crystal on silicon(LCOS)装置である。LCOS SLMは、信号ライン、ゲートラインおよびトランジスタがミラー面の下方にあるという利点を有し、これにより、高いフィルファクター(典型的には90%を超える)および高解像度がもたらされる。
【0081】
現存のLCOS装置は、4.5μmから12μmのピクセルを有する。
【0083】
LCOS装置は、単結晶シリコン基板(802)を用いて形成される。LCOS装置は、基板の上面に、間隙(801a)によって離間されて配置された正方形の平面アルミニウム電極(801)の二次元アレイを有する。それぞれの電極(801)は、基板(802)に埋設された回路(802a)を介してアドレス指定可能である。それぞれの電極は、対応する平面ミラーを形成する。電極アレイ上には配向層(803)が配置されており、配向層(803)上には液晶層(804)が配置されている。液晶層(804)上には第2の配向層(805)が配置されており、第2の配向層(805)上には例えばガラスの平面透明層(806)が配置されている。透明層(806)と第2の配向層(805)との間には例えばITOの単一の透明電極(807)が配置されている。
【0084】
各正方形電極(801)は、透明電極(807)の上を覆っている領域および介在する液晶材料とともに、制御可能な位相変調素子(808)を画定し、これは通常ピクセルと称される。有効ピクセル領域、すなわちフィルファクターは、光学的に活性なピクセル全体の、ピクセル間のスペース(801a)を考慮した割合である。透明電極(807)に対してそれぞれの電極(801)に印加される電圧を制御することにより、それぞれの位相変調素子の液晶材料の特性を変化させて、それにより入射光に可変の遅延を与えてもよい。この効果として、波面に位相限定変調を与え、すなわち振幅の影響は起こらない。
【0085】
反射型LCOS空間光変調器を用いることの主な利点は、液晶層の厚さを、透過型装置が用いられた場合に必要な厚さの半分にできることである。これにより、液晶のスイッチング速度(動画像の投影のキーポイント)が大幅に改善する。また、LCOS装置は、他に類を見ないほど、小さな開口で位相限定素子の大きなアレイを表示することが可能である。小さな素子(典型的にはおよそ10ミクロン以下)により実用的な回折角(数度)が得られるので、光学システムはさほど長い光路を必要としない。
【0086】
LCOS SLMの小さな開口(数平方センチメートル)を適切に照明するのは、大きな液晶装置の開口を照明するのよりも容易である。また、LCOS SLMは、大きな開口率を有し、ピクセル間にデッドスペースがほとんど存在しない(ピクセルを駆動する回路がミラーの下に埋設されているため)。これは、再生フィールドにおける光学ノイズを削減するにあたって重要な課題である。
【0087】
上述の装置は、通常10℃から約50℃の温度範囲内で動作し、最適な装置動作温度は約40℃から50℃であるが、これは使用されるLC組成に依存する。
【0088】
シリコンバックプレーンを用いることは、ピクセルが光学的にフラットであるという利点を有し、これは、位相変調装置にとって重要である。
【0089】
実施形態は反射型LCOS SLMに関するが、当業者であれば、透過型SLMを含む、任意のSLMが使用可能であることが理解できる。
【0090】
本発明は、記載された実施形態に限定されず、添付の請求項の全範囲に及ぶ。