(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機粒状物質が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、石膏、カオリン、ボールクレー、メタカオリンまたは十分に焼成されたカオリンの一種以上から選択される、請求項1に記載の顔料組成物。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の上記様々な局面に関連する多数の利点がある。幾つかの態様において、本発明による塗工用組成物は、比較的高い固形分含有率にて、高速抄紙機上で、支持体(例えば、紙)に適用することができる。例えば、該塗工用組成物は、高い固形分含有率(例えば、>60質量%)にて、1,000m/分にて、高速ブレードコータを用いて、最低限度のまたは全く作業性の問題なしに、(例えば、スクラッチング、スプラッシュ等)を利用して適用し得る。該組成物は、着色インクジェットインクを用いた際に良好なインクジェット印刷性能を持つ、シングルコートされたおよび特に有利にはダブルコートされた紙を製造するのに使用でき、該着色インクジェットインクは、少量の裏移りを伴って迅速に乾燥することができ、結果として高い色密度および良好なライン性能(低い吸上作用およびブリーディング)をもたらす。例えば、本発明による上記組成物の諸態様は、約0.6またはそれ未満の裏移り密度を与える可能性がある。これらの組成物は、新たに印刷された表面が擦られた際に、該インクが未-印刷領域に転写(スミア(smearing))されないように、該インクを捕獲し、かつ効果的に固定化する。該組成物は、優れた色密度に寄与する該塗膜の表面近傍の該インクジェットインクを捕獲する上で効果的である。また、粘度の調節により、本発明による上記組成物の幾つかの態様は、最新式の高速塗工機上で上記塗工用組成物(または顔料塗工液)を適用するのに特に適している。幾つかの態様は、またかなりの量のグリセロールを含むインクに関して特に有用である。高グリセロール-含有インクは、特に、その緩慢な乾燥傾向およびスミア傾向のために、これを用いた作業に対して問題となる。
【0007】
本発明による塗工用組成物の使用は、コントラストパラメータ、線幅パラメータ、性能パラメータ、色の彩度、まだらコントラスト(mottle contrast)および印刷濃度の1種またはそれ以上を含む、良好な印刷性能特性をもたらす。例えば、該コントラストパラメータは、約170を超え、あるいは約190を超え、または約210を超えることができる。例えば、該線幅パラメータは、約0.935を超え、あるいは約0.940を超え、あるいは約0.945を超えることができる。例えば、該性能パラメータは、約160を超え、あるいは約180を超え、あるいは約200を超えることができる。上記印刷濃度(ブラック(black))は、約0.90を超え、例えば約0.95を超え、例えば約1.00を超え、例えば約1.6を超えることができる。「イエロー(yellow)」値は、約0.80を超え、例えば約0.85を超え、例えば約0.90を超えることができる。「シアン(cyan)」値は、約1.00を超え、例えば約1.05を超え、例えば約1.10を超えることができる。「マゼンタ(magenta)」値は、約0.85を超え、例えば約0.90を超え、例えば約0.95を超えることができる。
【0008】
幾つかの態様において、本発明による組成物は、場合によっては、固定剤として存在し得る、カチオン性ポリマーまたはカチオン性染料の存在を必要としない。これは、幾つかの理由から有利である。例えば、カチオン性ポリマー型固定剤の存在は、ペーパーミルの再循環系に戻された場合、特にこれがアニオン性顔料塗工液またはスラリーと接触した場合に、様々な問題を引起す恐れがある。典型的に、インクジェット印刷との関連で使用するための既知の塗工用組成物は、印刷された紙の表面近傍に該インクを保持するために、カチオン性の固定剤を含む。しかし、本発明者等は、本発明の幾つかの態様に関連する有益な結果を実現するためには、該顔料組成物または該塗工用組成物中に、カチオン性ポリマーを存在させる必要がないことを見出した。
本発明の一局面における任意の特徴は、本発明の任意の他の1またはそれ以上の局面に対して、任意の適当な組合せで適用し得る。特に、生成物、組成物または物品の局面は、方法的局面に対して適用することができ、また逆も同様である。
【0009】
(発明の詳細な説明)
無機粒状物質
上記無機粒状物質は、アルカリ土類金属炭酸塩または硫酸塩、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、石膏、含水カンダイト粘土、例えばカオリンまたはボールクレー、無水(焼成)カンダイト粘土、例えばメタカオリンまたは十分に焼成されたカオリン、タルクまたはマイカであり得る。該無機粒状物質は、上に列挙された無機粒状物質のブレンドを含むことができ、あるいは該無機粒状物質は、唯1種の上に列挙した無機粒状物質からなり、あるいはこれから本質的になるものであり得る。例えば、該無機粒状物質は、100質量%の粉砕炭酸カルシウム(GCC)または100質量%の沈降炭酸カルシウム(PCC)であり得、あるいはGCCまたはPCCから本質的になるものであってもよい。あるいはまた、該無機粒状物質は、100質量%のカオリンであり得、あるいは本質的にカオリンからなっていてもよい。あるいはまた、該無機粒状物質は、100質量%のタルクであり得、あるいは本質的にタルクからなっていてもよい。該無機粒状物質は、その全乾燥質量を基準として、少なくとも約90質量%のカオリンまたは少なくとも約90質量%のタルクを含むことができる。該無機粒状物質のブレンドは、GCCおよびPCCのブレンドからなり、あるいはこれから本質的になり、あるいはこれを含むことができる。その他の適当なブレンドは、カオリンとブレンドされたGCCおよび/またはPCCである。該カオリンの量は、該無機粒状物質の全乾燥質量を基準として、約40質量%までであり得る。適当なブレンドの一例は、GCC対カオリンの、質量基準で約70:30なる比のブレンドを含む。該無機粒状物質の量は、上記塗工用組成物内に、該乾燥無機粒状物質を基準として、約1質量%〜約99質量%、または約20質量%〜約95質量%、あるいは約45質量%〜約95質量%なる量で存在し得る。
【0010】
本発明の幾つかの態様において使用するための上記無機粒状物質は、炭酸カルシウムからなり、あるいはこれを含むことができる。以下において、本発明は、傾向として、炭酸カルシウムによって、また該炭酸カルシウムが加工されおよび/または処理される局面に関連して論じられるかもしれない。本発明は、このような態様に限定されるものと解釈すべきではない。
本発明の幾つかの態様において使用される上記粒状炭酸カルシウムは、粉砕により天然資源から得ることができ、あるいは沈降により合成的に調製(PCC)でき、あるいはこれら二種の組合せ、即ち該天然由来の粉砕材料と該合成沈降材料との混合物であり得る。該PCCも粉砕することができる。
粉砕炭酸カルシウム(GCC)は、典型的にチョーク、大理石または石灰石等の鉱物源を粉砕することにより得られ、これは引続き所定の粉末度を持つ製品を得るべく、粒度分級段階に付すことができる。この粒状固体物質は、自己的に、即ち該固体材料自体の粒子間の磨砕によって、あるいはまた粉砕すべき該炭酸カルシウムとは異なる材料の粒子を含む、粒状粉砕媒体の存在下で、自己粉砕され得る。
炭酸カルシウムの湿式粉砕は、該炭酸カルシウムの水性懸濁液の作製を含み、次いで該水性懸濁液は、場合により適当な分散助剤、例えばポリアクリル酸ナトリウムの存在下で粉砕することができる。この炭酸カルシウムの湿式粉砕に係る更なる情報については、例えばEP-A-614948(この文献の内容全体を、参考としてここに組入れる)を参照することができる。該炭酸カルシウムの粉砕に使用される分散剤は、ノニオン性分散剤を含み、これから本質的になり、あるいはこれからなるものであり得る。
【0011】
上記粉砕を実施した後、上記懸濁液を、高固形分の懸濁液にまで脱水し、またあらゆる粉砕媒体を除去することができる。該脱水処理により形成される高固形分の懸濁液は、適切には少なくとも約10質量%(例えば、少なくとも約50質量)〜約80質量%、例えば約78質量%までの固形分レベルを持つことができる。該高固形分の懸濁液は、ノニオン性分散剤等の分散助剤を使用して製造することができる。使用される該分散助剤は、場合により上記粉砕工程において使用されるものと同一であっても、同一でなくてもよい。しかし、上記後粉砕段階において使用される該分散助剤は、該高固形分の懸濁液における該粒状無機物質の凝集を制限するために添加することができ、また典型的には分散剤-有効量、典型的には該乾燥無機粒状物質の少なくとも約0.1質量%、または少なくとも約5質量%なる量で存在し得る。存在し得る該分散助剤の量は、該乾燥無機粒状物質の少なくとも約0.3%〜約1.5質量%であり得る。該指定された分散助剤の量は、GCCおよびPCCとの関連で使用するのに特に適している。
上記無機粒状物質が天然産の源から得られる場合、該物質は、幾分かの無機不純物が、該粉砕材料を汚染しているものであり得る。例えば、天然産の炭酸カルシウムは、他の鉱物と共に存在する。同様に、幾つかの状況においては、少量の他の無機物の添加材料を含むことができ、例えば1種またはそれ以上のカオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、ボーキサイト、タルクまたはマイカ等も存在し得る。しかし、一般的には、本発明の幾つかの態様において使用される該無機粒状物質は、5質量%未満、好ましくは1質量%未満の他の無機不純物を含んでいてもよい。
【0012】
PCCを本発明における粒状炭酸カルシウムの源として使用することができ、また当分野において利用し得る任意の公知の方法により製造することができる。タッピモノグラフシリーズ(TAPPI Monograph Series) No.30,「紙塗工用顔料(Paper Coating Pigments)」, pp.34-35は、製紙工業で使用する製品の製造において使用するのに適しており、しかも本発明の幾つかの態様を実施する際にも使用することのできる、沈降炭酸カルシウムを製造するための3種の主な工業的方法を記載している。これら3つの方法全てにおいては、先ず石灰石を焼成して生石灰を製造し、この生石灰を次に水で消和し、水酸化カルシウムまたは石灰乳を生成する。該第一の方法において、石灰乳は、二酸化炭素ガスで直接炭酸塩化される。この方法は、副生物を全く生成しないという利点を持ち、また該炭酸カルシウム生成物の諸特性および純度を調節することが比較的容易である。上記第二の方法においては、該石灰乳をソーダ灰と接触させて、複分解により、炭酸カルシウムの沈殿と水酸化ナトリウム溶液とを生成する。この方法が工業的に魅力あるものである場合には、該水酸化ナトリウムは、該炭酸カルシウムから実質的に完全に分離される。該第三の主な工業的方法では、該石灰乳を、先ず塩化アンモニウムと接触させて、塩化カルシウム溶液とアンモニアガスとを得ている。次に、該塩化カルシウム溶液をソーダ灰と接触させて、複分解により、沈降炭酸カルシウムと塩化ナトリウム溶液とを生成している。
上記PCCは、ケーキ(例えば、フィルタケーキ)として生成することができ、これは少なくとも約70質量%の固形分含有率を含み、その残部は水である。分散剤(例えば、ノニオン性分散剤またはアニオン性分散剤)は、直接該ケーキと併合することができ、また場合によっては、水を該ケーキに添加した後、該分散剤を添加することも可能である。
【0013】
PCCを作製する方法は、極めて純粋な炭酸カルシウム結晶と水とを与える。該結晶は、使用する特定の反応工程に応じて、広範囲に及ぶ異なる形状およびサイズで製造することができる。PCC結晶の3つの主な形状は、アラゴナイト、菱面体および偏三角面体であり、これら全ては、これらの混合物を含めて、本発明の幾つかの態様において使用するのに適している。
上記無機粒状物質はカオリンを含み、これからなり、あるいは本質的にこれからなるものであり得る。該カオリンは、板状カオリンまたは超板状(hyper-platy)カオリンであり得る。存在する該板状または超板状カオリンの量は、乾燥状態にある該無機粒状物質の全質量を基準として約30質量%までであり得る。「板状(platy)」カオリンなる用語は、高い形状係数を持つカオリンを意味する。板状カオリンは、約20から約60未満までの形状係数を持つ。超板状カオリンは、約60〜100、または100を超える形状係数を持つ。ここで使用する「形状係数(shape factor)」とは、米国特許第5,576,617号において記載されている電導度法、装置、および方程式を用いて測定された如き、一群の様々なサイズおよび形状の粒子に関する粒子径対粒子厚みの比に係る一尺度である。該米国特許の内容全体を参考としてここに組入れる。該特許’617号に記載されているように、テスト用の、配向された粒子の水性懸濁液からなる組成物の電導度は、該組成物が容器を通して流通する際に測定される。該電導度の測定は、該容器の一方向に沿って、および該第一の方向に対して直交する該容器のもう一つの方向に沿って行われる。これら2つの電導度測定値間の差を用いて、該テスト用の粒状物質の形状係数を決定する。
【0014】
本発明の幾つかの態様において使用するカオリンクレーは、天然源、即ち原料天然カオリンクレー鉱物由来の加工された材料であり得る。該加工カオリンクレーは、典型的に少なくとも約50質量%のカオリナイトを含むことができる。例えば、殆どの工業的に加工されたカオリンクレーは、約75質量%を超えるカオリナイトを含み、また約90質量%を超える、また幾つかの場合には約95質量%を超えるカオリナイトを含むことができる。
本発明の幾つかの態様において使用されるカオリンクレーは、原料天然カオリンクレー鉱物から、当業者には周知の1またはそれ以上の他の方法により、例えば公知の精錬または選鉱段階によって調製することができる。例えば、該クレー鉱物は、還元性漂白剤、例えばヒドロ亜硫酸ナトリウムで漂白することができる。ヒドロ亜硫酸ナトリウムを使用する場合、該漂白されたクレー鉱物は、該ヒドロ亜硫酸ナトリウムによる漂白段階に先立って、場合により脱水し、また場合により洗浄し、また再度場合により脱水することができる。該クレー鉱物は、例えば当分野において周知の凝集、浮選、または磁気分離技術によって、不純物を除去すべく処理することができる。
【0015】
本発明の幾つかの態様において使用するための上記粒状カオリンクレーを製造する方法も、1またはそれ以上の細分段階、例えば粉砕または磨砕を含むことができる。粗製カオリンの軽度の細分は、該カオリンの適当な離層をもたらすために利用される。この細分は、プラスチック(例えば、ナイロン)のビーズまたは顆粒、砂またはセラミック製の粉砕または磨砕助剤を使用して行うことができる。周知の手順を利用して、不純物を除去し、また物理的諸特性を改善するために、該粗製カオリンを精錬することができる。該カオリンクレーを、公知の粒度分級手順、例えばスクリーニングおよび遠心処理(またはこれら両者)によって処理して、所定のd
50値または粒度分布を持つ粒子を得ることができる。本発明の態様において使用するのに適したカオリンの一例は、板状(platey)カオリン(イマリスミネラルズUKリミテッド(Imerys Minerals UK Limited)から市販品として入手できる)であり、ここで2μmよりも微細な部分の割合は、セディグラフ(Sedigraph)で測定して88〜93質量%でありまたその白色度は、87.5〜89である。該カオリンは、例えば1種またはそれ以上のGCCと共にブレンドを形成するために使用することができる。
上記粉砕工程後に、上記無機粒状物質は、約0.1μm〜約2μmなる範囲、例えば約0.3μm〜約1.5μmなる範囲、例えば約0.3μm〜約0.7μmなる範囲のd
50値を持つことができる。好ましくは、該無機粒状物質は、該粉砕処理後に、約0.6μmに等しいか、あるいはそれ未満のd
50値を持つ。
【0016】
特に述べない限り、上記無機粒状物質についてここで言及する、メディアン粒度(d
50値)およびその他の粒度特性は、水性媒体中に完全に分散された状態における該粒状物質の沈降による周知の方法で、ここにおいて「マイクロメリティックスセディグラフ5100(Micromeritics Sedigraph 5100)装置」と呼ぶ、マイクロメリティックスインスツルメンツ社(Micromeritics Instruments Corporation (Tel: +1 770 662 3620; ウエブサイト(web-site): www.micromeritics.com))米国ジョージア州、ノルクロス(Norcross, Georgia, USA)によって供給されているような、セディグラフ5100(Sedigraph 5100)装置を使用して測定されたものである。このような装置は、当分野において「球相当粒子径」(esd)と呼ばれている、所定のesd値未満のサイズを持つ粒子の累積質量%での、測定値およびプロットを与える。該メディアン粒度d
50とは、このようにして決定された粒子のesd値であり、ここにおいては該d
50値に満たない球相当粒子径を持つ粒子が、50質量%存在する。
【0017】
上記無機粒状物質は、約25に等しいかまたはこれを超える、例えば約40に等しいかまたはこれを超える、例えば約45に等しいかまたはこれを超える、または約50に等しいかまたはこれを超える粒度分布勾配係数(steepness factor)を持つことができる。該粒状無機物質は、約25〜約70、例えば約45〜約50または約50〜約70の粒度分布勾配係数を持つことができる。該勾配係数は、100を乗じたd
30(セディグラフ)球相当粒子径(ここにおいては、該粒子の30質量%が、より微細な粒子である)対d
70(セディグラフ)球相当粒子径(ここにおいては、該粒子の70質量%が、より微細な粒子である)の比(d
30/d
70×100)として定義される。例えば、該材料が炭酸カルシウムである場合、該勾配係数は、約25〜約70、例えば約25〜約35、または約40を超え、例えば約45〜約50または約50〜約70であり得る。GCCは、約45〜約50なる勾配係数を持つことができる。PCCは、約50〜約70なる勾配係数を持つことができる。ここに記載する該勾配係数の値は、プレコート組成物および/またはトップコート組成物との関連で使用することができる。
【0018】
多価金属塩
上記多価金属塩は二価の金属塩であり得る。該多価または二価金属塩は、水溶性であり得る。該二価金属塩は、アルカリ土類金属塩であり得る。例えば、該アルカリ土類金属塩は、カルシウムまたはマグネシウムまたはバリウム塩であり得る。適当なアニオンは、クロライドまたは以下に列挙するものの任意の一つを含む:硫酸、硝酸および水酸化物アニオン。該多価金属塩は、列挙された多価塩の混合物を含むことができ、あるいは該多価金属塩は、列挙された多価金属塩の唯一つからなり、あるいは本質的にこれからなっていてもよい。特に、該多価金属塩は、塩化カルシウム(CaCl
2)であり得る(例えば、本質的にこれからなり、またはこれからなる)。その他の適当な例は、塩化マグネシウムまたは水酸化カルシウムである。これらの金属塩は、水和状態で与えることができる。例えば、該金属塩は、MX
2.2H
20なる形状、例えばCaCl
2.2H
20であり得、ここでXはアニオンである。これらの金属塩は、また無水物として与えることもできる。他の特に適切な多価金属塩は、硫酸カルシウム、例えば石膏(硫酸カルシウム2水和物)または硫酸カルシウム半水和物、または硫酸カルシウム無水物、例えば無水硫酸カルシウムのリン酸誘導体であり得る(例えば、本質的にこれからなり、またはこれからなる)。
【0019】
上記塗工用組成物における多価金属塩の量は、約0.01質量%に等しいかまたはこれを超えあるいは約0.05質量%に等しいかまたはこれを超えあるいは約0.1質量%に等しいかまたはこれを超えることができる。該塗工用組成物における多価金属塩の量は、約25質量%まで(または25質量%未満)または約15質量%までまたは約12.5質量%まで、または約5質量%までまたは約3質量%までの量で存在し得る。例えば、該塗工用組成物における多価金属塩の量は、約0.01質量%〜約3質量%、例えば約0.05質量%〜約3質量%、例えば約0.1質量%〜約1.0質量%なる範囲の量で存在し得る。該多価塩の量は、該塗工用組成物の全乾燥質量を基準とするものである。
上記乾燥された支持体または乾燥された紙における上記乾燥された多価金属塩の量は、最終的な乾燥された支持体または乾燥された紙の全質量を基準として、約0.01質量%〜約0.4質量%、例えば約0.02質量%〜約0.3質量%、例えば約0.05質量%〜約0.2質量%であり得る。該乾燥された支持体または乾燥された紙における該乾燥された多価金属塩の量は、該最終的な乾燥された支持体または乾燥された紙の全質量を基準として、約8質量%までであり得る。
【0020】
上記乾燥された支持体または乾燥された紙における該乾燥された多価金属塩の濃度は、約0.01gsm〜約1gsmまたは約0.02gsm〜約0.3gsm、例えば約0.03gsm〜約0.2gsmであり得る。該乾燥された支持体または乾燥された紙における該乾燥された多価金属塩の濃度は、約2.5gsmまでであり得る。
使用すべき上記多価金属塩(例えば、CaCl
2または硫酸カルシウム)の量は、約0.1gsmという全含浸量が与えられるようなものであり得る。該多価金属塩の量は、上記処方における全部数および全サイズ剤含浸量に応じて調節することができる。該処方における部数は、以下の値に等しい:
(0.1/gsmでの全含浸量)×(顔料部数+デンプン部数+OBAの部数)
ここで、OBAは蛍光増白剤である。該全含浸量は、サイズプレスまたはコーティングステーションにおける、単位面積当たりの質量で表した含浸量である。該処方における「部」は、上記塗工用処方物中の指定された成分の部を表す。
【0021】
ノニオン性分散剤
上記顔料組成物は、ノニオン性分散剤(またはノニオン性界面活性剤)を含むことができる。1種または1種を超えるノニオン性分散剤が存在していてもよい。該ノニオン性分散剤は、該顔料組成物中に存在する唯一の分散剤であり得、または少なくとも1種の他のイオン性分散剤が該顔料組成物中に存在していてもよい。該ノニオン性分散剤は、1または複数のアンカー基およびテール基を含むことができる。該ノニオン性分散剤は、非静電的安定化分散剤であり得る。該ノニオン性分散剤は、ノニオン性ポリマーまたはノニオン性オリゴマーおよび場合により1または複数の帯電または非帯電アンカー基を含むことができる。該ノニオン性分散剤は、ノニオン性ポリマーまたはノニオン性オリゴマーおよび場合により1または複数の帯電または非帯電アンカー基を含む、非静電的安定化分散剤であり得る。該アンカー基(1または複数)は、該ノニオン性分散剤を上記無機粒状物質に固定している。該ポリマーまたはオリゴマーは、テール基と呼ぶことができる。
【0022】
特定の理論に拘泥するつもりはないが、上記ノニオン性分散剤は、上記塗工用組成物の粘度を調節するために使用される。該ノニオン性分散剤は、該顔料組成物および塗工用組成物の効果的な安定化を実現するように、上記多価塩に対して耐性である。有利には、該ノニオン性分散剤の性能は維持され、あるいは高いイオン強度によって大きく変更されることはない。例えば、該ノニオン性分散剤の性能は維持され、あるいは>10mM/dm
3および500mM/dm
3までのイオン強度によって大幅に変えられることはない。該分散剤の性能は、該塗工用組成物の粘度測定、例えば25℃におけるブルックフィールド粘度の測定を行うことにより評価することができる。該イオン強度は25℃において測定される。該ノニオン性分散剤はポリマー状または非ポリマー状であり得る。適当な非ポリマー型のノニオン性分散剤はアルカリエトキシレートを含む。該ノニオン性分散剤はホモポリマーまたはコポリマーであり得る。該ポリマーは架橋ポリマーであり得る。該ノニオン性分散剤はアルキレンオキサイドモノマー、例えばエチレンオキサイドモノマーを含むことができる。該ノニオン性分散剤は、非帯電の疎水性鎖および少なくとも一つのアンカー基または末端基、例えばアミン基またはリン酸基を含むことができる。該ノニオン性分散剤は、少なくとも一つのリン酸基、例えば1またはそれ以上のリン酸アンカー基または末端基を含むことができる。例えば、該ノニオン性分散剤は、-OP(O)(OH)-P(O)(OH)
2または-OP(O)(OH)
2によって終端していてもよい。該ノニオン性分散剤は、(HO)
2(O)P-O-[-CH
2CH
2O-]
m-[-CH
2CH(CH
3)O-]
n-P(O)(OH)
2を含むことができ、ここでmは約45〜約55なる範囲から選択することができ、例えば約53であり、またnは約25〜約35なる範囲から選択することができ、例えば約33であり、該分散剤の分子量は、典型的に約4,500または約4,500未満であり得る。該ノニオン性分散剤は(HO)
2(O)P-O-P(O)(OH)O-[-C(CH
3)CH
2O-]
n-[-CH
2CH
2O-]
m-を含むことができ、ここでmは約25〜約35なる範囲から選択され、またnは約5〜約10なる範囲から選択され、例えば約8であり、該分散剤の分子量は約1,000または約1,100未満であり得る。
【0023】
上記ノニオン性分散剤は少なくとも1種のアミン基、例えば1またはそれ以上のアミンアンカー基または末端基を含むことができる。ノニオン性分散剤の適当な例は、スルホネート基および/または硫酸基を含有するポリマーを含む。他の適当なノニオン性分散剤は、連鎖末端にリン酸基を含むコポリマー、例えばブロックコポリマー、例えばPEO/PPO(ポリ(エチレンオキサイド)-ポリ(プロピレンオキサイド))ブロックコポリマーを含み、ここでその分子量は約1,000である。
更に、また特定の理論に拘泥するつもりはないが、本発明の幾つかの態様に従うノニオン性分散剤の上記使用は、上記多価塩の存在下において如何なる有意の程度にも圧潰または破壊することのない、上記無機粒状物質(または顔料)の周りの保護コロイド層を意味することができ、またそのレオロジーは悪影響を受けない。本発明の幾つかの態様に従えば、該無機粒状物質が帯電することおよび結果としてカチオン形状で存在することは、要件の一つとはならない。本発明の幾つかの態様に関連して記載される組成物は、インクの凝集を引起し、また上記支持体表面上の被覆構造物内の極深くまで進入する恐れはない。この型の分散剤は、高速塗工用途に関して有利である。既知塗工用組成物は、高速ペーパーコーティング工程における応用を困難にする傾向を示す。
【0024】
上記顔料組成物および塗工用組成物におけるノニオン性分散剤の存在に加えて、場合によってはノニオン性分散剤以外の分散剤が存在していてもよい。例えば、1種または1種を超えるイオン性分散剤が存在していてもよい。かかる分散剤の適当な一例は、ポリアクリル酸ナトリウムである。有利には、GCCとPCCとの50:50ブレンド(乾燥重量基準)を調製することができ、ここで該GCCはポリアクリル酸ナトリウムにより分散され、また該PCCはノニオン性分散剤、例えばリン酸またはアミンを含むノニオン性分散剤により分散されている。リン酸を含有する該ノニオン性分散剤は、1または複数のリン酸基を含むことができる。該1または複数のリン酸基は、アンカー基または末端基であり得る。例えば、該ノニオン性分散剤は、-OP(O)(OH)-P(O)(OH)
2または-OP(O)(OH)
2によって終端していてもよい。該ノニオン性分散剤は、(HO)
2(O)P-O-[-CH
2CH
2O-]
m-[-CH
2CH(CH
3)O-]
n-P(O)(OH)
2を含むことができ、ここでmは約45〜約55なる範囲から選択することができ、例えば約53であり、またnは約25〜約35なる範囲から選択することができ、例えば約33であり、該分散剤の分子量は、典型的に約4,500または約4,500未満であり得る。該ノニオン性分散剤は(HO)
2(O)P-O-P(O)(OH)O-[-C(CH
3)CH
2O-]
n-[-CH
2CH
2O-]
m-を含むことができ、ここでmは約25〜約35なる範囲から選択され、またnは約5〜約10なる範囲から選択され、例えば約8であり、該分散剤の分子量は約1,000または約1,100未満であり得る。該ノニオン性分散剤は、1または複数のアミン基を含むことができる。この1または複数のアミン基は末端基であり得る。該ノニオン性分散剤は、1またはそれ以上のアミン基を持つエトキシル化ポリマーであり得る。本発明者等は、このノニオン性分散剤の使用が、特に良好なレオロジー性と良好な印刷物品位との組合せをもたらすことを見出した。彼らは、また分散剤(ノニオン性およびイオン性)の組合せが、更に該印刷物品位を改善し得ることをも見出した。
【0025】
存在する上記ノニオン性分散剤の量は、上記無機粒状物質の乾燥質量を基準として、少なくとも0.3質量%〜約1.5質量%、例えば約1.25質量%であり得る。該ノニオン性分散剤は、該無機粒状物質の粉砕において使用したものと同一の分散剤であり得る。
上記イオン性分散剤の量は、これが存在する場合には、上記無機粒状物質の乾燥質量を基準として、約0.3質量%〜約2質量%であり得る。該分散剤の量は、該分散剤の活性成分含有率(active content)の質量%として表されている。該1または複数のノニオン性分散剤が、上記顔料組成物および/または塗工用組成物中に存在する唯一の型の分散剤であり得る。
【0026】
顔料組成物
上記顔料組成物は、無機粒状物質、多価塩および場合によりノニオン性分散剤を含むことができる。
上記顔料組成物は、上記無機粒状物質、ノニオン性分散剤(存在する場合には)および多価金属塩をブレンドし、または混ぜ合せることにより調製することができる。
上記顔料組成物を形成する場合、上記無機粒状物質は適当なイオン性分散剤、例えばポリアクリル酸ナトリウム、または適当なノニオン性分散剤、例えば1またはそれ以上のリン酸末端基またはアミン基を持つ分散剤を使用して、分散させることができる。該無機粒状物質が粉砕された無機粒状物質、例えばGCCからなり、本質的にこれからなり、あるいはこれを含む場合、該分散剤は、少なくとも部分的に、該無機粒状物質の粉砕中に配合することができる。該無機粒状物質がPCCからなり、本質的にこれからなり、あるいはこれを含む場合、またPCCケーキが使用される場合、該分散剤は、該プレスケーキをより小さくするために使用することができる。該無機粒状物質がカオリンからなり、本質的にこれからなり、あるいはこれを含む場合には、該分散剤は、乾燥状態または本質的に乾燥された状態にあるカオリンと組合せることができ、あるいは水性スラリーとして存在し得る。従って、該分散剤は、該縮小および/または分散工程において使用することができる。該顔料組成物のpHは調節することができる。例えば、水酸化ナトリウムをスラリーまたは分散物、例えばカオリンスラリーまたは分散物に添加して、そのpHを少なくとも約7に調節することができる。
【0027】
1種またはそれ以上のバインダを、高速ミキサを用いて、上記無機粒状物質または顔料組成物に添加し、次いで多価、例えば二価の塩を添加することができる。該多価または二価の塩は、少なくとも1種のバインダを添加する前に、該無機粒状物質に添加することができる。無機粒状物質を含むブレンドの製造において、該無機粒状物質は、高入力(high work input)ミキサを用いてブレンドすることができる。無機物質の適当なブレンドは、PCCとGCCとの50:50ブレンドまたはPCCおよび/またはGCC+カオリン(これは含水または焼成カオリンであり得る)のブレンドである。
特に有用な態様は、顔料組成物(および塗工用組成物)を与え、ここで上記無機粒状物質は(i) 炭酸カルシウムまたは(ii) 炭酸カルシウムとタルクから本質的になり、またはこれからなり、その各々は、硫酸カルシウム(例えば、硫酸カルシウム2水和物または硫酸カルシウム半水和物または無水硫酸カルシウムまたはそのリン酸誘導体)または塩化カルシウムから本質的になり、またはこれからなる、多価金属塩との組合せであり得る。
【0028】
塗工用組成物
上記塗工用組成物は、上記顔料組成物に加えて水およびバインダを含むことができる。場合により、少量の、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤が存在し得る。
上記塗工用組成物は、本発明の幾つかの態様に従う上記顔料組成物と該塗工用組成物の他の成分とを混ぜ合せることによって製造することができる。あるいはまた、該塗工用組成物は、上記無機粒状物質およびノニオン性分散剤からなる水性組成物と、バインダおよび多価塩とを混ぜ合せることにより製造し得る。該バインダおよび多価塩は、任意の順序で、該無機粒状物質および分散剤と混ぜ合せることができる。例えば、該多価金属塩は、無機粒状物質およびノニオン性分散剤および少なくとも1種のバインダからなる水性組成物に添加することができる。
紙塗工用組成物におけるバインダおよび/または補助結合剤として使用するための適当な材料は、当分野において一般に公知である。バインダとして用いるのに適した材料は、ラテックスおよびデンプンまたはデンプン誘導体、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、タンパク質である。本発明者等は、バインダのブレンドが、本発明の幾つかの態様において使用するのに特に有利であることを見出した。例えば、ブレンドは、PVOHおよびラテックス;またはデンプンおよびラテックスからなり、これらから本質的になり、またはこれらを含む。該ブレンドは、例えば約0.6またはそれ未満の低い裏移り密度を与えるのに、特に有用である。該バインダはブレンドでなくてもよく、またPVOHまたはラテックスから本質的になり、あるいはこれからなるものであり得る。例えば、該バインダは、少なくとも99質量%のラテックスまたは少なくとも99質量%のPVOHを含むことができ、あるいは該バインダは100質量%のラテックスまたは100質量%のPVOHであり得る。
【0029】
上記ラテックスバインダは、例えば1種またはそれ以上の以下に列挙するものを含むことができる:スチレン-ブタジエンゴムラテックス、アクリルポリマーラテックス、ポリ酢酸ビニルラテックスまたはスチレン-アクリル酸コポリマーラテックス。該ラテックスは、場合によりカルボキシル化されていてもよい。市場で入手し得るラテックス製品は、典型的に50質量%のラテックスを含む水性エマルションとして市販されている。これらの製品は本発明において使用するのに適している。
上記バインダは、上記塗工用組成物の乾燥無機粒状物質100部当たり約1部から、例えば約3部からまたは約5部から約200部までを構成し得る。該バインダは、該塗工用組成物の乾燥無機粒状物質100部当たり約3部から約5部までを構成し得る。例えば、該塗工用組成物は、乾燥無機粒状物質100部当たり約3部のラテックスを、また乾燥無機粒状物質100部当たり約3部のPVOHを含むことができる。
本発明による上記塗工用組成物は、所望により1種またはそれ以上の追加の成分を含むことができる。このような追加の成分は、該成分が存在する場合には、紙塗工用組成物用の公知の添加剤から適切に選択される。これら随意添加剤の幾つかは、該塗工用組成物において2以上の機能を与えることができる。随意添加剤の公知の群の例は、以下の通りである:
【0030】
(a) 1種またはそれ以上の追加の顔料:本発明の幾つかの態様において使用するための上記無機粒状物質は、該紙塗工用組成物における唯一の顔料として使用でき、あるいは一種の他のまたはその他の公知の顔料、例えば硫酸カルシウム、サテンホワイトおよび所謂「プラスチック顔料」との組合せで使用することができる。顔料混合物を使用する場合、全顔料の固形分含有率は、該塗工用組成物の全質量の、少なくとも約80質量%なる量で該組成物中に存在することが好ましい;
(b) 1種またはそれ以上の架橋剤:例えば、約5質量%までのレベルの、例えばグリオキサール、メラミンホルムアルデヒド樹脂、炭酸アンモニウムジルコニウム;1種またはそれ以上の乾燥または湿潤ピック改善添加剤:例えば、約2質量%までのレベルの、例えばメラミン樹脂、ポリエチレンエマルション、ウレアホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ポリアミド、ステアリン酸カルシウム、スチレンマレイン酸無水物およびその他;1種またはそれ以上の乾燥または湿潤摩擦改善および/または磨耗抵抗添加剤:例えば、約2質量%までのレベルの、例えばグリオキサールを主成分とする樹脂、酸化ポリエチレン、メラミン樹脂、ウレアホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ポリエチレンワックス、ステアリン酸カルシウムおよびその他;1種またはそれ以上の耐水性添加剤:例えば、約2質量%までのレベルの、例えば酸化ポリエチレン、ケトン樹脂、アニオン性ラテックス、ポリウレタン、SMA、グリオキサール、メラミン樹脂、ウレアホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ポリアミド、グリオキサール、ステアレートおよびこの機能に関連して市販品として入手可能なその他の材料;
【0031】
(c) 1種またはそれ以上の保水性助剤:例えば、約2質量%までのレベルの、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、PVOH(ポリビニルアルコール)、デンプン、タンパク質、ポリアクリレート、ガム、アルギネート、ポリアクリルアミドベントナイトおよびこのような用途のために販売されている、他の市販品として入手可能な製品;
(d) 1種またはそれ以上の粘度調整剤および/または増粘剤:例えば、約2質量%までのレベルの、例えばアクリル酸系会合性増粘剤、ポリアクリレート、エマルションコポリマー(emulsion copolymers)、ジシアンアミド、トリオール、ポリオキシエチレンエーテル、ウレア、硫酸化ヒマシ油、ポリビニルピロリドン、CMC(カルボキシメチルセルロース、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース)、アルギン酸ナトリウム、ザンタンガム、ケイ酸ナトリウム、アクリル酸コポリマー、HMC(ヒドロキシメチルセルロース)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)およびその他;
(e) 1種またはそれ以上の潤滑性/カレンダリング助剤:例えば、約2質量%までのレベルの、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アンモニウム、ステアリン酸亜鉛、ワックスエマルション、ワックス、アルキルケテンダイマー、グリコール;1種またはそれ以上のグロスインクホールドアウト添加剤:例えば、約2質量%までのレベルの、例えば酸化ポリエチレン、ポリエチレンエマルション、ワックス、カゼイン、グアーガム、CMC、HMC、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウムおよびその他;
【0032】
(f) 1種またはそれ以上の分散剤:分散剤は、十分な量で存在した場合、通常の加工要件に従って、上記粒状無機物質の粒子に作用して、該粒子のフロキュレーションまたはアグロメレーションを、所定の程度まで阻害または効果的に制限することのできる化学的な添加剤である。本発明の幾つかの態様に従う塗工用組成物は、1種または1種を超えるノニオン性分散剤を含むことができる。ノニオン性分散剤の適当な例は、1またはそれ以上のリン酸基または1またはそれ以上のアミン基を含むものである。該分散剤は、約2質量%までのレベルで存在し得る。場合により存在させ得る分散剤の適切な例は、高分子電解質、例えばポリアクリレートおよびポリアクリレート種、特にポリアクリレート塩(例えば、ナトリウムおよびアルミニウム塩、場合により第II属金属の塩)を含むコポリマー、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ノニオン性ポリオール、ポリリン酸、縮合リン酸ナトリウム、ノニオン性界面活性剤、アルカノールアミンおよびこの機能のために一般的に使用されている他の試薬等から選択される。該分散剤は、例えば無機粒状物質の加工および粉砕において通常使用されている従来の分散剤物質から選択し得る。これらは、一般的にアニオン性の種を供給することのできる水溶性の塩であり、該アニオン性の種は、その有効量において、該無機粒子の表面上に吸着される能力があり、またそれにより該粒子の凝集を阻害することができる。これらの溶媒和されていない塩は、適切にはナトリウム等のアルカリ金属カチオンを含む。溶媒和は、幾つかの場合において、この水性懸濁液を僅かにアルカリ性とすることによって促進される。適切な分散剤の例は、以下に列挙するものを含む:水溶性の縮合リン酸塩、例えばポリメタリン酸塩[そのナトリウム塩の一般的な形状:(NaPO
3)
x]、例えばメタリン酸4ナトリウムまたは所謂「ヘキサメタリン酸ナトリウム」(グラハム塩);ポリケイ酸の水溶性塩;高分子電解質;適切には約20,000未満の重量平均分子量を持つ、アクリル酸またはメタクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーの塩、またはアクリル酸の他の誘導体のポリマーの塩。ヘキサメタリン酸ナトリウムおよびポリアクリル酸ナトリウムが特に好ましく、ここで後者は、約1,500〜約10,000なる範囲の重量平均分子量を持つ;
【0033】
(g) 1種またはそれ以上の消泡/脱泡剤:例えば、約1質量%までのレベルの、例えば界面活性剤、トリブチルリン酸、脂肪ポリオキシエチレンエステルのブレンド+脂肪アルコール、脂肪酸石鹸、シリコーンエマルションおよび他のシリコーン含有組成物、鉱油中のワックスおよび無機粒状物、乳化された炭化水素のブレンドおよびこの機能を果たさせるために市場で販売されている他の化合物;
(h) 1種またはそれ以上の蛍光増白剤(OBA)および/または蛍光増白剤(FWA):例えば、約1質量%までのレベルの、例えばスチルベン誘導体。適当なOBAの一例は、チノパール(Tinopal) ABP-Aである;
(i) 1種またはそれ以上の染料:例えば、約0.5質量%までのレベル;
(j) 1種またはそれ以上の殺生物剤/腐敗抑制剤:例えば、約1質量%までのレベルの、例えばメタホウ酸塩、ドデシルベネン(dodecylbenene)スルホン酸ナトリウム、チオシアン酸塩、有機硫黄、安息香酸ナトリウムおよびこの機能のために市場で販売されている他の化合物、例えばナルコ(Nalco)社により販売されている一群の殺生物性ポリマー;
(k) 1種またはそれ以上の均展および平坦化助剤:例えば、約2質量%までのレベルの、例えばノニオン性ポリオール、ポリエチレンエマルション、脂肪酸、エステルおよびアルコール誘導体、アルコール/エチレンオキサイド、ステアリン酸カルシウムおよびこの機能のために販売されている他の化合物;
(l) 1種またはそれ以上のグリースおよびオイル抵抗性添加剤:例えば、約2質量%までのレベルの、例えば酸化ポリエチレン、ラテックス、SMA(スチレンマレイン酸無水物)、ポリアミド、ワックス、アルギン酸塩、タンパク質、CMC、HMC。
【0034】
上記添加剤および添加剤型の全ては、所望ならば、単独でまたは相互のおよび/または他の添加剤との混合物として使用することができる。
上記添加剤の全てに関連して、また特に述べない限り、示された質量%の値は、上記塗工用組成物中に存在する固体の乾燥質量を基準(100%)とするものである。該添加剤が最低量にて存在する場合、その最低量は、該固体の乾燥質量を基準として約0.01質量%であり得る。
本発明者等は、PVOHおよびラテックスを含むまたはこれからなるブレンドが、諸特性の良好な釣合をもたらす上で特に有利であることを見出した。例えば、該PVOHは、該塗工用組成物の粘度低下を促進し、また該ラテックスは、印刷されたインクの裏移り傾向の低減を助ける。
【0035】
紙塗工用組成物、または懸濁液(通常顔料塗工液と呼ばれる)は、典型的に高固形分の分散系である。紙に適用した場合に、該顔料塗工液の固形分含有率および粘度は、有意なものとなり得る。例えば、該顔料塗工液の固形分含有率が極めて高い場合、その粘度は高すぎて容易に計量できず、また作業性に係る諸問題点がもたらされる恐れがあり、結果として所謂引掻および飛沫斑形成を引起す。しかしながら、該固形分含有率が低過ぎると、該塗膜はあまりに容易に原紙の孔内に流入し、また低い被覆面積をもたらすであろう。更に、熱的に除去すべき水が多量に存在し、また該原紙の繊維は膨潤し、その上その品位を更に低下する可能性がある。所定レベルの固形分および粘度において、該塗膜は該孔内に侵入することはなく、従って該紙の表面上に維持され、また平滑な表面を与えることができる。該顔料塗工液中の固形分含有率は、典型的に約10質量%〜約80質量%である。
【0036】
塗布方法
本発明の幾つかの態様に従う上記塗工用組成物は、支持体、特に紙製品を被覆するために使用することができる。本発明の幾つかの態様との関連で使用される用語「紙製品」とは、板紙、カード、パネル板紙等を包含するあらゆる形状の紙を意味するものと理解すべきである。しかし、本発明の幾つかの態様に従う該組成物は、インクジェット印刷において使用される紙を被覆するために特に適している。該支持体は任意の坪量を持つものであり得る。例えば、該支持体の坪量は、約20g/m
2〜約500g/m
2であり得る。該坪量は約20g/m
2〜約300g/m
2、例えば50g/m
2〜約200g/m
2であり得、あるいは該坪量は約60g/m
2〜約120g/m
2であり得る。該支持体は、プラスチック紙あるいはプラスチック支持体であり得る。
上記塗工工程は、当業者には周知の技術を用いて実施することができる。該塗工工程は、また該塗工紙をカレンダリングまたはスーパーカレンダリング処理することをも含むことができる。
【0037】
紙および他のシート材料を塗工する方法並びに該方法を実施するための装置は、広く公開されており、また周知である。好都合にも、このような公知の方法並びに装置は、塗工紙を製造するために使用することができる。例えば、Pulp and Paper International, 1994(5月), p.18およびそれ以後において、公開されたこのような方法の論評がある。シートは、シート形成装置上で、即ち「オン-マシーン」、またはコータまたは塗工装置上での「オフ-マシーン」により被覆し得る。高固形分組成物の使用は、該塗工法において望ましく、その理由はより少ない量の、その後に蒸発すべき水を残すからである。しかし、その固形分レベルは、高粘度および平坦化の問題が持込まれる程に高くすべきではない。該塗工方法は、(i) 被覆すべき材料に該塗工用組成物を適用するためのアプリケーション;および(ii) 正確なレベルの塗工用組成物が適用されることを保証するための計量デバイスを含む装置を用いて実施することができる。過剰量の塗工用組成物を該アプリケータに適用した場合には、該計量デバイスはその下流側にある。あるいはまた、該正確な量の塗工用組成物は、例えばフィルムプレス等の該計量デバイスによって、該アプリケータに適用することができる。該塗膜の適用および計量の時点において、紙ウェブ支持体は、例えば1個または2個以上のアプリケータを介してバッキングロールから、皆無(即ち、張力のみ)にまで及んでいる。該過剰量の組成物が最終的に除去される前に、該紙と該被膜とが接している時間は、滞留時間であり、またこれは短くても、長くてもあるいは変動するものであってもよい。
【0038】
上記塗膜は、通常コーティングステーションにおけるコータヘッドによって付加される。所望の性能に従って、紙の等級は非塗工、シングルコート、ダブルコートおよび更にはトリプルコートである。2以上の塗膜を与える場合、その最初の塗膜 (プレコート)は、より安価な処方および場合により該塗工用組成物中により粗い顔料を含むことができる。該紙の各面に塗膜を適用するコータは、典型的に各面に適用される塗膜層の数に依存して、2または4個のコータヘッドを持つであろう。殆どのコータヘッドは、一度に一方の面のみを塗工するが、幾つかのロールコータ(例えば、フィルムプレス、ゲートロール、サイズプレス)は、ワンパスで両面を被覆する。
使用可能な既知コータの例は、限定することなしに、エアーナイフコータ、ブレードコータ、ロッドコータ、バーコータ、マルチヘッドコータ、ロールコータ、ロール/ブレードコータ、キャストコータ、実験室用コータ、グラビアコータ、キスコータ、液体適用システム、リバースロールコータ、カーテンコータ、計量サイズプレスコータ、スプレーコータおよび押出コータを包含する。
【0039】
有利には、本発明の幾つかの態様に従う塗工用組成物は、高い固形分含有率にて(例えば、>60質量%)、1,000m/分にて、最小のまたは全く作業性に係る問題を伴うことなしに、高速ブレードコータを用いて適用することができる。
上記塗工用組成物を含む固形分に水を添加して、好ましくは、該組成物が所定の目標とする塗工量までシート上に塗工された場合に、該組成物が、これを約0.1MPa〜約0.15MPa(約1〜約1.5 bar)なる範囲の圧力(例えば、ブレード圧)による塗工を可能とするのに適したレオロジーを持つような固形分濃度を与えることができる。
カレンダリングは、周知の工程であり、該工程において紙の平滑度および光沢が改善され、また嵩は塗工紙シートをカレンダーニップまたはローラー間に、1回またはそれ以上の回数に渡り通すことにより減じられる。通常、エラストマー被覆ロールは、高固形分組成物をプレス加工するために利用される。高温度を適用することができる。該ニップを介する1回またはそれ以上の回数(例えば、約12回まで、あるいはしばしばそれ以上)に渡り通過させることが可能である。本発明の幾つかの態様に従う該塗工紙は、カレンダリングまたはスーパーカレンダリング処理に掛けることができる。
【0040】
上記塗工用組成物は、非塗工紙、例えば上質または機械的繊維含有原紙、またはプレコートが施されている原紙の何れかに適用することができる。該プレコートは、「開放」状態となるように設計され、また該原紙への水の流入を容易にすることができる。このプレコートは、低減されたレベルのバインダを含むことができ、また狭い粒度分布を持つ炭酸カルシウムを含むことができ、このことは、該塗工層における大きな孔径および孔容積を可能とする。標準的な粒度分布を持つ無機粒状物質を、該プレコートにおいて使用することができる。例えば、炭酸カルシウムに関連して当分野において公知の粒度分布を、該プレコートにおいて使用することができる。しかしながら、このことが真である場合、より高い吸水性(例えば、コッブの値)を持つ原紙が必要とされる可能性がある。場合によっては、少量の、高い表面積を持つ追加の無機物を、該プレコートを介する流体の流動を容易にするために、該塗工用組成物中に存在させることが可能である。該塗工用組成物におけるプレコートの存在は、大幅に高められた光沢を持つ塗膜を与え、またより高い印刷物の光沢を得ることを可能とする。しかしながら、有利には、本発明の幾つかの態様に従う上記顔料組成物および塗工用組成物は、依然として特別に設計されたプレコートがない場合においてさえ、インクジェットプレスにおける紙媒体の性能を高めている。
【0041】
上記原紙は、高いコッブ値を持つことができる。例えば、該原紙のコッブ値は、約40gsmを超え、あるいは約60gsmを超えることができる。本発明の態様において、該原紙のコッブ値は、約20gsmを超えることができる。このコッブ値はタッピテスト法T441(Tappi Test Method T441)に従って測定される。該原紙が高いコッブ値、例えば約40gsmを超える、または約60gsmを超えるコッブ値を持つ場合、該原紙は、急勾配な(steep)無機粒状物質を持つプレコートで塗工することができる。該原紙は、これにプレコートが施されまたはこれが施されていない場合に、高いコッブ値、例えば約40gsmを超える、または約60gsmを超えるコッブ値を持つことができる。該プレコートにおいて使用するための該粒状無機物質(例えば、炭酸カルシウム)は、約25を超える、例えば約40を超えるまたは約45を超える、あるいは約50を超える粒度分布勾配係数を持つことができる。該プレコートにおいて使用するための該粒状無機物質は、約25〜約60なる粒度分布勾配係数を持つことができる。
単なる例示であり、かつ限定的することなしに、以下に与えられる図面および実施例を参照しつつ、本発明を以下に説明する。ここで、添付図は、以下の通りである。
【実施例】
【0042】
テスト法
ブルックフィールド粘度(低剪断)
ブルックフィールド粘度の値は、100rpmなるスピンドル速度にて動作するように設定されたブルックフィールド粘度計(Brookfield Viscometer)を用いて、周囲温度(22°C)にて測定した。上記塗工用組成物を、ハイドルフ(Heidolph) ST-1実験室用攪拌機を用いて十分に混合した。混合直後に、該組成物を該粘度計に移した。該粘度計のスピンドルを該組成物に浸漬させた。該粘度計のスピンドルを、均質化の終了後30秒間作動させ、また該組成物の粘度を更に15秒後に記録した。
高剪断粘度
この高剪断粘度は、13000s
-1にて0.5°の円錐を用いて、ボーリンCSR(Bohlin CSR)レオメータで測定した。
印刷物品質
この印刷物品質を、黄色および黒色領域間のコントラストおよび黄色背景を介する暗色帯の一様性を比較することにより評価した。画像解析は、インクジェットサンプルを印刷することにより行った。
【0043】
各インクジェット印刷されたサンプルは、600dpiおよび24-ビットなるカラーおよびコントラストの設定において、エプソンV500フォト(Epson V500 Photo)スキャナを用いて走査された。全ての自動補正は停止され、また同一のヒストグラム設定(0、1.0、255:0、255)を、該サンプル全てに対して使用した。500×300画素からなる画像を、黄色背景を横切って走行している暗色帯のある領域において集めた。次に、この有色の画像を、この分析において使用するための256個のグレースケール画像に変換させた。一つのラインプロファイルを該暗色帯から取出した。許容されるあるいは良好な品質を持つ印刷物に対して、該プロファイルは、急峻な側面および平坦な底部を持つと共に、比較的平滑で(まだらの程度が低い)、かつ角張っていた。より貧弱な品質の印刷物については、該ラインプロファイルおよび該暗色帯において、より多くの差異、変化がみられた。
上記黒色および黄色強度間の差は、プリントコントラストの一尺度であり、ここで該黒色強度は、上記グレースケール画像から採取されたプロファイル由来の全ての最小黒色点の平均であり、また該黄色強度は、上記RGBカラー画像から採取されたプロファイル由来の該黄色背景の平均である。
【0044】
上記黄色平均強度と上記黒色最小強度との間の差は、上記コントラストパラメータ(より高い値がより良好である)の一尺度である。
線幅パラメータは、上記黄色強度と上記黒色強度との間の75%における幅で割った、該黄色強度と該黒色強度との間の25%における幅に等しい。類似する幅の値が、より良好である。この計測は、印刷された黒色バーに関連して発生する、インクの広がり量およびまだらまたはムラの程度に係る一指標を与える。
全体的な品質(インクジェット)パラメータは、上記コントラストパラメータで割った上記線幅パラメータである。より大きな値が、より良好な品質の印刷物であることを示す。
上記(反射)印刷濃度は、グレタッグスペクトロアイデンシトメータ(Gretag SpectroEye Densitometer)を用いて測定される。この印刷濃度の値は、該印刷物の色濃度に係る完全な見積り値を得るのを助ける。
【0045】
スミアインデックス(Smearing Index)
このスミアインデックスを決定するために、市販品として入手し得る顔料を主成分とするインクジェットインクで満たしたデスクトップ型プリンタを用いて、テストプリントを作製する。このテストは、約1cm
2のブロックとして印刷された、100%黒色インクの領域を含む。この印刷を行った15秒後に、ゴム手袋で覆われた熟練操作者の指を、該黒色に印刷されたマス目と接触させ、次いで下方に引いて、一定の安定した圧力を印加する。任意の未乾燥の、固定化されていないインクが、該紙の印刷されていない部分に引き摺られ、移動されるであろう。該紙へのインク転写の程度は、肉眼的に評価され、10の内でランク付けされ、ここで10は、インクの転写が全くなく、即ち該印刷物が乾燥されていることを示す。約5または6なるスコアは、かなりのインク転写があることを示す。このテストは、同一のプリンタおよび同一のインクを用いて印刷した場合に、異なる紙間の妥当な比較をもたらす。
【0046】
サンプル
炭酸カルシウムAは、イマリスミネラルズUK社(Imerys Minerals UK Ltd)から市販品として入手し得るPCCであり、これはd
50=0.4μmを持つ。
炭酸カルシウムBは、イマリスミネラルズUK社(Imerys Minerals UK Ltd)から市販品として入手し得る微粉砕炭酸カルシウム(GCC)である。このサンプルの粒度分布は、その乾燥材量の78質量%が、<1μmなるesdおよびd
50=0.5〜0.55μmを持つような分布である。
タルクAは、イマリスミネラルズ社(Imerys Minerals Ltd)から市販品として入手し得る粗製フィラータルクであり、ここでその13質量%が<2μmを持ち、またその表面積は3.1m
2/gである。
ソルプラス(Solplus) D570は、ラブリゾール(Lubrizol)社から市販品として入手できる、ノニオン性分散剤である。
分散剤Aは、ナトリウム塩として完全に中和されている、低分子量ポリアクリル酸分散剤である。
バインダAは、市販品として入手でき、約50%の固形分および約20℃なるガラス転移点を持つ、カルボキシル化スチレンブタジエンラテックスバインダである。
バインダBは、市販品として入手できる、部分的に加水分解されたポリビニルアルコールである。
バインダCは、市販品として入手できる、約50質量%の固形分を含む、ポリ酢酸ビニルエマルションバインダである。
バインダDは、市販品として入手できる、部分的に加水分解されたポリビニルアルコール(酢酸エテニルエステルポリマーとエタノールから)。
【0047】
実施例1
約74質量%の固形分を含む、炭酸カルシウムAのプレスケーキを、分散剤の不在下で製造した。
該分散剤の量は、上記分散剤ソルプラスD570を使用して測定した。少量ずつの該分散剤を、上記PCCプレスケーキに添加し、初めは手で攪拌し、次いで実験室用の攪拌機を用いて攪拌した。添加した該分散剤の量は、累積量を得るために監視した。該スラリーが、その粘度を測定するのに十分に流動性となった際に、ブルックフィールド粘度計を用いて、31s
-1なる剪断速度を与える100rpmなる速度にてその粘度を測定した。該分散剤は、該スラリー粘度の最小値に達するまで添加した。
上記分散剤は、3pphのPVOH(バインダB)および3pphのラテックス(バインダA)を用いて、幾つかの塗工用組成物を作り上げる、上記PCCケーキを分散させる目的で使用された。存在する無機粒状物質の全量は、乾燥質量基準で100部であった。これらバインダおよび任意の他の添加剤は、該無機粒状物質の全量に対するものとして表されている(例えば、3pphラテックスとは、全無機粒状物質100部当たり、ラテックス3部である)。塩化カルシウム(CaCl
2)の必要量が、該塗工用組成物に添加され、また該塗工用組成物の粘度が、低剪断および高剪断条件下で測定された。実施例1に従って作製されたこれら水性塗工用組成物は、塗工用組成物A〜Dと呼ばれ、またその処方に関する更なる詳細は、以下において述べられる。以下の処方において、存在する分散剤の量は、該無機粒状物質(この場合においては、炭酸カルシウム)の乾燥質量を基準として表されている。
【0048】
塗工用組成物A
塗工用組成物Aは、市販品として入手できる、炭酸カルシウムAおよび炭酸カルシウムBの50質量%:50質量%配合物からなる水性スラリーであり、これは約0.85質量%のポリアクリル酸ナトリウムを用いて分散されている。3.16pphの塩化カルシウムが、該市販品として入手できるスラリーに添加された。
塗工用組成物B
塗工用組成物Bは、炭酸カルシウムAおよび炭酸カルシウムBの50質量%:50質量%ブレンドを含む。炭酸カルシウムAは、1.25質量%のソルプラスD570により分散された。炭酸カルシウムBは、0.85質量%のポリアクリル酸ナトリウムを用いて分散された。3.16pphの塩化カルシウムが、該組成物に添加された。
塗工用組成物C
塗工用組成物Cは、1.25質量%のソルプラスD570により分散された、炭酸カルシウムBを含む。3.16pphの塩化カルシウムが、該組成物に添加された。
塗工用組成物D
塗工用組成物Dは、0.43質量%の分散剤Aを用いて分散された炭酸カルシウムBを含む。そのレオロジー特性を測定するためには、該組成物は、あまりに粘稠で、CaCl
2の存在下では測定不可能であり、従って該レオロジー測定は、塩化カルシウムの存在しない塗工用組成物Dについて行われた。
図1および2における塗工用組成物Dに関するデータは、CaCl
2が全く存在しない状況に関連するものである。
図3〜6については、3.16pphのCaCl
2が、塗工用組成物D中に存在する。
これらレオロジーの結果は、
図1および2に提示されている。
【0049】
上記水性塗工用組成物A〜Dを、ハンマーミルペーパー(Hammermill Paper)(これはインターナショナルペーパー(International Paper)社から市販品として入手できるインクジェット用紙である)のサンプルを被覆するのに使用した。この塗膜は、巻線バーを用いたハンドドローダウン(HDD: hand draw down)技術を用いて適用した。該塗工用組成物の固形分含有率を、該塗膜が該紙面上で、約5〜約7gm
-2(乾燥重量)なる塗工量を達成するまで調節した。同様に、比較の目的で、インクジェット印刷用のHPプレミアム紙(艶消しシリカ塗工紙)および標準的なコピー用紙を評価した。印刷物品質に関する結果は、
図3〜6に提示されている。
実施例1における結果は、多価塩を含有する本発明による塗工用組成物の粘度を、如何なる塩をも含まないPCC塗工用組成物の粘度レベルまで下げることが可能であることを示している。上記塗工および印刷実験は、本発明に従う塗工用組成物が、多価塩を含まない標準的な分散剤(ポリアクリレート)と比較した場合に、類似する印刷性能をもたらすことを示した。
【0050】
実施例2
塗工用組成物E
この塗工用組成物Eは、炭酸カルシウムBとタルクAとの75質量%:25質量%ブレンドを含む。この組成物に15質量%の硫酸カルシウムを添加した。該顔料ブレンドを分散させるために用いた分散剤は、該炭酸カルシウム、タルクおよび硫酸カルシウムの乾燥質量を基準として、1pphなる量で与えられた、リン酸末端基持つ、非静電的に安定なノニオン性EO/PO(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド)ブロックコポリマー分散剤(1,000なる凡その分子量)であった。該炭酸カルシウム、タルクおよび硫酸カルシウムは、高速ミキサ内で該分散剤を用いて分散され、また次に上記バインダが添加され、結果として顔料塗工液が形成された。該顔料塗工液を使用に先立って150μmなるメッシュを介して篩別した。バインダC:バインダDの比は、8pph:2pphであった。これらのバインダおよび任意の他の添加剤は、無機粒状物質の全量に対して表されている(例えば、3pphのラテックスとは、該無機粒状物質全体100部につき、ラテックス3部である)。
塗工用組成物F
この塗工用組成物Fは、炭酸カルシウムBとタルクAとの75質量%:25質量%ブレンドを含む。この組成物に2質量%の塩化カルシウムを添加した。バインダC:バインダDの比は、8pph:2pphであった。これらのバインダおよびあらゆる他の添加剤は、上記無機粒状物質の全量に対して表されている(例えば、3pphのラテックスとは、該無機粒状物質全体100部につき、ラテックス3部である)。
【0051】
上記水性塗工用組成物EおよびFを、上質原紙(コッブ22)のサンプルを塗工するのに使用した。この塗膜は、巻線バーを用いたハンドドローダウン技術を用いて適用した。該塗工用組成物の固形分含有率を、該塗膜が該紙面上で、約5〜約10gm
-2(乾燥重量)なる塗工量を達成するまで調節した。同様に、比較の目的で、該塗工用組成物EおよびFを、以下に列挙する多数の異なる塗工紙と比較した:オフセットグロス(坪量150gsm)、オフセットシルク(150gsm)、オフセットマット(150gsm)、インクジェットopt(即ち、インクジェットプリンタに対して最適化されたもの)、未塗工紙(80gsmの上質紙)、シリカ塗工紙1、シリカ塗工紙2。これらの印刷濃度に関する結果は、
図7に示されており、またこれらのスミアインデックスおよびラインクラリティインデックス(line clarity index)に関する結果は、
図8および9に示されている。
【0052】
本発明による、硫酸カルシウムおよび塩化カルシウムを含有する上記組成物に関する上記印刷濃度は、市場で入手できるオフセット用紙および上記シリカ塗工紙に匹敵するものであり、かつ未塗工のインクジェット用紙よりも高い。
上記市販のオフセット用紙の高い色密度にも拘らず、本発明の組成物と比較した場合、そのインク乾燥性およびインクスミア性(ink smearing)が、が悪化することを理解することができる。本発明に従う硫酸カルシウムを含有する組成物の使用を含む上記紙は、該シリカ塗工紙および該未塗工紙と十分に比肩し、また上記塩化カルシウム含有組成物の使用と比較した場合には、これらの特性は改善されている。
図8において、10なるスミア指数は、スミアが全くないことを示している。上記ライン性能インデックスの結果は、インクが過度に広がらないことを示している。