(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記岩石サンプルの外面には、前記岩石サンプルを水密状態にするためのゴムカバーが設けられ、前記岩石サンプルの上端と下端とは硬質シリコンで密封されていることを特徴とする請求項1に記載の高圧条件下の岩石熱物性測定システム。
前記ステップ5は、
前記円
柱状の岩石サンプルの中心を原点とし、前記円
柱状の岩石サンプルの径方向と軸方向で形成されたカラム座標係において、熱伝導性微分方程式に基づいて、有限元数値モデルを確立するステップ51と、
前記岩石サンプルの熱伝導率をλ、体積熱容量を(ρc)とし、地殻によくある岩石の熱伝導率の範囲は0.5〜6.0W・m
−1・K
−1、体積熱容量の範囲は0.5×10
6〜5.0×10
6J・m
−3・K
−1であり、計算領域である
【数1】
における二つのパラメータλと(ρc)をm等分し、初期の(m+1)×(m+1)個のグリッドノード(λ
i、(ρc)
j)を獲得する(ただし、i、j=1、2、3、・・・、m)ステップ52と、
全てのグリッドノード(λ
i、(ρc)
j)を確立した有限元数値モデルに入力し、瞬時に与圧する過程においてリアルタイムで観測した岩石サンプル表面の温度変化T02(t)と伝圧媒質の温度変化T03(t)を境界条件として、(λ、(ρc))=(λ
i、(ρc)
j)をアナログ計算するときに、前記岩石サンプルの中心の温度変化をT
i、jmоdと示すステップ53と、
最小二乗法を利用し、前記有限元数値モデルを計算することにより得たT
i、jmоdとリアルタイムで観測した前記岩石サンプルの中心の温度変化T01(t)を線形フィッティングし、即ち、
【数2】
当該フィッティング直線傾斜K
i、jと相関係数R
i、jを計算し、ただし、相関係数の計算式は、
【数3】
であり、ただし、nはサンプリング合計回数であり、t
kは第k回のサンプリングの時刻であり、T01(t
k)は瞬時に与圧した後t
k時刻で第1温度センサーが獲得した温度変化であり、1≦k≦nとするステップ54と、
目標関数は
【数4】
と定義され、各グリッドポイントの目標関数値F(λ
i、(ρc)
j)を計算するステップ55と、
目標関数値が最小のグリッドポイントを探し出し、即ち、F(λ
i0、(ρc)
j0)=min{F(λ
i、(ρc)
j)}であり、F(λ
i0、(ρc)
j0)≦ε、ここでεは計算請求に満足するかどうかを判定するために設定された閾値であるのであれば、(λ
i0、(ρc)
j0)は計算する必要がある岩石サンプルの熱伝導率と体積熱容量(λ、(ρc))であり、そうではないと、F(λ
i0、(ρc)
j0)≦εを満足するまで、(λ
i0、(ρc)
j0)を中心とする領域を計算領域とし、グリッドの密度を増加し、ステップ53に戻すことにより計算して、岩石サンプルの熱伝導率と体積熱容量(λ、(ρc))=(λ
i0、(ρc)
j0)を得るステップ56と、
最後に、熱伝導率λ、体積熱容量(ρc)及び熱拡散率κの関係式κ=λ/(ρc)=λ
i0/(ρc)
j0から計算して、岩石サンプルの熱拡散率を得るステップ57と、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の高圧条件下の岩石熱物性測定方法。
第1温度センサー、第2温度センサーと第3温度センサーが観測した温度はいずれも安定したときに、岩石熱物性測定システム全体の温度バランスを取ることを特徴とする請求項5に記載の高圧条件下の岩石熱物性測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、実験の結果から見ると、地殻によくある岩石の応力−温度応答係数(ΔT/Δσ)は小さくて(2〜6mK/MPa)である。一方、伝圧媒質(例えばシリコンオイル)の応力−温度応答係数は地殻によくある岩石の応力−温度応答係数の200倍以上であり、138.74 mK/Mpaに達する。従って、封圧は瞬時に上昇した後、岩石サンプルと伝圧媒質との間に、温度の差が生じる。本発明は、耐圧タンク内に作用する封圧が瞬時に上昇する過程における岩石サンプルの表面温度及び中心温度と伝圧媒質の温度変化とをリアルタイムで観測する。そして、有限元数値反転方法を利用することにより、高圧条件下の岩石サンプルの熱物性パラメータ(熱伝導率:thermal conductivity、熱拡散率:thermal diffusivitiy、及び体積熱容量:volumetric heat capacity)を得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の目的は、岩石サンプルの中心及び表面と、伝圧媒質が充填されたキャビティ内には温度センサーが取り付けられ、急速に排出弁を開くことにより、岩石サンプルに対し瞬時に与圧し、そして、封圧が瞬時に上昇する過程における岩石サンプルの中心及び表面と及び伝圧媒質が充填されたキャビティ内の温度変化を観測し、確立した有限元数値モデルを利用し、最適化の方法を採用することにより、高圧条件下の岩石サンプルの熱物性パラメータを得て、「熱源」を必要としない高圧条件下の岩石熱物性測定システムを提供することである。それによって、「熱源」を必要としないサージ熱物性測定を実現し、岩石熱物性測定システム及び操作手順を大幅に簡略化する。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明が採用する技術手段は以下である。
【0009】
高圧条件下の岩石熱物性測定システムは、伝圧媒質が充填された第1キャビティが形成された第1耐圧タンクと、伝圧媒質が充填された第2キャビティが形成された第2耐圧タンクと、前記第1耐圧タンクに前記伝圧媒質を供給し、第1排出弁と第1圧力センサーが取り付けられた第1連通ダクトにより前記第1キャビティに接続された高圧ポンプと、その入力端に第1温度センサー、第2温度センサー、及び第3温度センサーの出力端が接続された温度観測モジュールと、その入力端に、前記第1圧力センサーと前記第2圧力センサーの出力端が接続された封圧観測モジュールと、を含み、前記第2キャビティ内に岩石サンプルが取り付けられ、前記岩石サンプルの中心に前記第1温度センサーが取り付けられ、前記岩石サンプルの外面に前記第2温度センサーが取り付けられ、前記伝圧媒質が充填された前記第2キャビティ内に前記第3温度センサーが取り付けられ、前記第1キャビティと前記第2キャビティとは第2排出弁と第2圧力センサーとが取り付けられた第2連通ダクトにより連通され、前記第2キャビティには第3排出弁が接続されている。
【0010】
前記岩石サンプルの外面には、前記岩石サンプルを水密状態にするためのゴムカバーが設けられ、前記岩石サンプルの上端と下端とは硬質シリコンで密封されている。
【0011】
前記岩石サンプルは円
柱状である。
【0012】
前記伝圧媒質はシリコンオイルであり、もちろん、植物油や脱イオン水であってもよい。
【0013】
本発明の他の目的は、岩石サンプルの中心及び表面と伝圧媒質が充填された第2耐圧タンクとにはそれぞれ一つの温度センサーが取り付けられ、急速に排出弁を開くことにより、岩石サンプルに対し瞬時に与圧し、そして、封圧が瞬時に上昇する過程における岩石サンプルの中心及び表面と伝圧媒質の温度変化を観測し、確立した有限元数値モデルを利用し、最適化の方法を採用することにより、高圧条件下の岩石サンプルの熱物性パラメータを得て、「熱源」を必要としない高圧条件下の岩石熱物性測定方法を提供することである。よって、「熱源」を必要としないサージ熱物性測定を実現し、岩石熱物性測定システム及び操作手順を大幅に簡略化する。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明が採用する技術手段は以下である。
【0015】
高圧条件下の岩石熱物性測定方法は、
第1温度センサーを作製された円
柱状の岩石サンプルの中心に取り付け、第2温度センサーを作製された円
柱状の前記岩石サンプルの外面に取り付け、ゴムカバーにより前記岩石サンプルを水密状態にすると共に、硬質シリコンにより前記岩石サンプルの上端と下端を密封することにより、岩石サンプルモジュールを形成するステップ1と、
前記岩石サンプルモジュールと第3温度センサーを第2耐圧タンクに入れ、伝圧媒質が前記第2耐圧タンクに充填した後前記第2耐圧タンクを密封する同時に、第1排出弁と第1圧力センサーとが取り付けられた第1連通ダクトで高圧ポンプと第1耐圧タンクとを接続し、第2排出弁と第2圧力センサーが取り付けられた第2連通ダクトで前記第1耐圧タンクと前記第2耐圧タンクとを接続し、第3排出弁を前記第2耐圧タンクに取り付け、そして、前記第1温度センサー、前記第2温度センサー、及び前記第3温度センサーを温度観測モジュールに接続し、前記第1圧力センサーと前記第2圧力センサーとを封圧観測モジュールに接続することにより、岩石熱物性測定システムを形成し、前記温度観測モジュールと前記封圧観測モジュールとを作動させて、温度と封圧に対する観測を開始するステップ2と、
前記第1排出弁のみを開いて、前記第2排出弁と前記第3排出弁とを閉じ、前記高圧ポンプを作動させることにより、前記第1耐圧タンクの封圧を予定の圧力まで上昇させるステップ3と、
前記岩石熱物性測定システム全体のバランスを取ったときに、前記第1排出弁を閉じて、前記第3排出弁を閉じたまま、前記第2排出弁を開くことにより、前記第2耐圧タンクに瞬時に与圧するステップ4と、
前記温度観測モジュールによってリアルタイムで観測した前記第1温度センサー、前記第2温度センサー、及び前記第3温度センサーの温度変化と、前記封圧観測モジュールによってリアルタイムで観測した前記第2圧力センサーの封圧変化とに基づいて、有限元数値モデルを使って反転することにより、封圧状態における前記岩石サンプルの熱物性パラメータを得るステップ5と、
を含む。
【0016】
前記ステップ5は、
前記円
柱状の岩石サンプルの中心を原点とし、前記円
柱状の岩石サンプルの径方向と軸方向で形成されたカラム座標係において、熱伝導性微分方程式に基づいて有限元数値モデルを確立するステップ51と、
前記岩石サンプルの熱伝導率をλ、体積熱容量を(ρc)とし、地殻によくある岩石の熱伝導率の範囲は0.5〜6.0W・m
−1・K
−1、体積熱容量の範囲は0.5×10
6〜5.0×10
6J・m
−3・K
−1であり、計算領域である
【数1】
における二つのパラメータλと(ρc)をm等分し、初期の(m+1)×(m+1)個のグリッドノード(λ
i、(ρc)
j)を獲得する(ただし、i、j=1、2、3、・・・、m)ステップ52と、
全てのグリッドノード(λ
i、(ρc)
j)を確立した有限元数値モデルに入力し、瞬時に与圧する過程においてリアルタイムで観測した岩石サンプル表面の温度変化T02(t)と伝圧媒質の温度変化T03(t)を境界条件として(λ、(ρc))=(λ
i、(ρc)
j)をアナログ計算するときに、前記岩石サンプルの中心の温度変化をT
i、jmоdと示すステップ53と、
最小二乗法を利用し、前記有限元数値モデルを計算することにより得たT
i、jmоdとリアルタイムで観測した前記岩石サンプルの中心の温度変化T01(t)を線形フィッティングし、即ち、
【数2】
当該フィッティング直線傾斜K
i、jと相関係数R
i、jを計算し、ただし、相関係数の計算式は、
【数3】
である(ただし、nはサンプリング合計回数であり、t
kは第k回のサンプリングの時刻であり、T01(t
k)は瞬時に与圧した後t
k時刻で第1温度センサーが獲得した温度変化であり、1≦k≦n)ステップ54と、
目標関数は
【数4】
と定義され、各グリッドポイントの目標関数値F(λ
i、(ρc)
j)を計算するステップ55と、
目標関数値が最小のグリッドポイントを探し出し、即ち、F(λ
i0、(ρc)
j0)=min{F(λ
i、(ρc)
j)}であり、F(λ
i0、(ρc)
j0)≦ε(εは計算請求に満足するかどうかを判定するために設定された閾値である)であれば、(λ
i0、(ρc)
j0)は計算する必要がある岩石サンプルの熱伝導率と体積熱容量(λ、(ρc))であり、そうではないと、F(λ
i0、(ρc)
j0)≦εを満足するまで、(λ
i0、(ρc)
j0)を中心とする領域を計算領域とし、グリッドの密度を増加し、ステップ53に戻すことにより、計算して、岩石サンプルの熱伝導率と体積熱容量(λ、(ρc))=(λ
i0、(ρc)
j0)を得るステップ56と、
最後に、熱伝導率λ、体積熱容量(ρc)及び熱拡散率κの関係式κ=λ/(ρc)=λ
i0/(ρc)
j0から、計算して、岩石サンプルの熱拡散率を得るステップ57と、
を含む。
【0017】
前記ステップ51において、カラム座標係における熱伝導性微分方程式は
【数5】
【数6】
と示され、
その初期条件は
【数7】
であり、境界条件は岩石熱物性測定システムが観測した岩石サンプル表面の温度変化T02(t)と伝圧媒質の温度変化T03(t)により制約され、即ち、
【数8】
であり、
ただし、γは各媒質の断熱応力変化の温度応答係数であり、Aは封圧変化による温度変化∂p/∂tに対応する熱源であり、r
0は岩石サンプルの半径であり、z
01は円
柱状の岩石サンプルの頂面又は底面から岩石サンプルの中心円
柱面までの垂直距離であり、z
02は密封後の円
柱状の岩石サンプルモジュールの頂面又は底面から岩石サンプルの中心円
柱面までの垂直距離である。
【0018】
リアルタイムで観測した前記岩石サンプルの中心の温度変化T01(t)、岩石サンプル表面の温度変化T02(t)と伝圧媒質の温度変化T03(t)は、各時刻におけるリアルタイムで観測した温度と瞬時に与圧したときの温度との差であり、即ち、
【数9】
【数10】
【数11】
であり、
ただし、T
1(t)T、T
2(t)T、T
3(t)Tはそれぞれに瞬時に与圧した後時刻tにおける第1温度センサー、第2温度センサーと第3温度センサーがリアルタイムで観測した温度であり、且つステップ5により得られ、T
1(0)、T
2(0)、T
3(0)はそれぞれに瞬時に与圧した第1温度センサー、第2温度センサーと第3温度センサーがリアルタイムで観測した温度であり、且つステップ2により得られる。
【0019】
第1温度センサー、第2温度センサーと第3温度センサーが観測した温度はいずれも安定したときに、岩石熱物性測定システム全体の温度バランスが取れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明において、二つの耐圧タンク(内部の封圧は異なって、岩石サンプルを封圧が低い第2耐圧タンクに配置する)の間に位置するバルブを開くことにより、封圧が低い第2耐圧タンクの封圧を瞬時に上昇させる。実験の結果から見ると、地殻によくある岩石の応力−温度応答係数(ΔT/Δσ)は小さくて(2〜6mK/MPa)、伝圧媒質(例えばシリコンオイル、植物油や脱イオン水などの伝圧媒質)の応力−温度応答係数は地殻によくある岩石の応力−温度応答係数の200倍以上である(例えばシリコンオイルの応力−温度応答係数は138.74 mK/Mpaに達する)。従って、封圧が瞬時に上昇した後、岩石サンプルと伝圧媒質との間に、温度の差が生じる。耐圧タンク内の封圧(Confining pressure)、岩石サンプルの中心、表面と第2耐圧タンクの伝圧媒質の温度変化をリアルタイムで観測し、有限元数値反転方法を利用することにより、高圧条件下の岩石サンプルの熱物性パラメータ(熱伝導率:thermal conductivity、熱拡散率:thermal diffusivitiy、及び体積熱容量:volumetric heat capacity)を得た。本発明は、「熱源」を必要としなくて、岩石サンプルの中心、表面及び第2耐圧タンクの伝圧媒質にはそれぞれに一つの温度センサーが取り付けられ、封圧が瞬時に上昇する過程における岩石サンプルの中心、表面及び第2耐圧タンクの伝圧媒質の温度変化を観測し、確立した有限元数値モデルを利用し、最適化の方法を採用することにより、高圧条件下の岩石サンプルの熱物性パラメータを得るというメリットがある。高圧条件下の岩石熱物性測定システムを提供することである。それによって、「熱源」を必要としないサージ熱物性測定を実現し、高圧条件下の岩石熱物性測定システム及び操作手順を大幅に簡略化する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面及び実施例を参照して、本発明の内容をさらに詳しく説明する。
【0023】
(実施例)
図1に示すように、本発明にかかる高圧条件下の岩石熱物性測定システムは、伝圧媒質(例えばシリコンオイル、植物油や脱イオン水など)が充填された第1キャビティ11が形成された第1耐圧タンク1と、伝圧媒質が充填された第2キャビティ21が形成された第2耐圧タンク2と、第1耐圧タンク1に伝圧媒質を供給し、第1排出弁51と第1圧力センサー52が取り付けられた第1連通ダクト5により第1キャビティ1に接続された高圧ポンプ3と、温度観測モジュール8と、封圧観測モジュール9と、を含む。前記第2キャビティ21内には、円
柱状の岩石サンプルモジュールが取り付けられている。円
柱状の岩石サンプルモジュールは、円
柱状の岩石サンプル4を含み、その中心には第1温度センサー61が取り付けられ、その表面には第2温度センサー62が取り付けられている。そして、円
柱状の上硬質シリコン41と下硬質シリコン42とをそれぞれ円
柱状の岩石サンプル4の上側と下側とに押し付ける。、上硬質シリコン41、円
柱状の岩石サンプル4、及び下硬質シリコン42は、ゴムカバー43により覆われ、水密状態にされた後、第2耐圧タンク2の第2キャビティ21内に配置される。第2キャビティ内には第3温度センサー63が取り付けられている。また、前記第1キャビティ11と第2キャビティ21とは、第2排出弁71と第2圧力センサー72とが取り付けられた第2連通ダクト7により連通されている。前記第2キャビティ21には、第3排出弁22が接続されている。第1温度センサー61、第2温度センサー62、及び第3温度センサー63の出力端は、温度観測モジュール8の入力端に接続されており、温度観測モジュール8により三つの温度センサーの温度変化をリアルタイムで観測することができる。また、第1圧力センサー52の出力端と第2圧力センサー72の出力端とは、封圧観測モジュール9の入力端に接続されている。これにより、封圧観測モジュール9により、第2耐圧タンク2内の封圧変化をリアルタイムで観測することができる。温度観測モジュール8の出力端と封圧観測モジュール9の出力端とは、処理モジュール10に接続されている。よって、処理モジュール10により岩石サンプルの断熱応力変化の温度応答係数を計算することができる。なお、処理モジュール10は高圧ポンプ3の動作を制御できる。これにより封圧観測モジュール9が第1圧力センサー52により第1耐圧タンク1の封圧が予定の圧力に達したことを検測したときに、処理モジュール10は高圧ポンプ3の動作を停止する。
【0024】
本発明にかかる高圧条件下の岩石熱物性測定システム及び方法において、まず、高圧ポンプ3を使って第1耐圧タンク1内の封圧を予定の圧力(例えば130MPa)に上昇させ、システム全体の温度を平衡にした後、手動で急速に第1耐圧タンク1と第2耐圧タンク2との間に配置された第2排出弁71を開く。これにより、第2耐圧タンク2の封圧は1〜2s以内で瞬時に上昇する。伝圧媒質(例えばシリコンオイル)の応力−温度応答係数は岩石サンプルの応力−温度応答係数の200倍以上であるので、岩石サンプルと伝圧媒質との間に、温度差が生じる。封圧が瞬時に上昇した過程において、岩石サンプルの中心及び表面と、第2耐圧タンクの伝圧媒質との温度変化をリアルタイムで観測する。そして、確立した有限元数値反転モデルを利用し、最適化の方法を採用することにより、高圧条件下の岩石サンプルの熱物性パラメータを得た。これにより、「熱源」を必要としないサージ熱物性測定を実現し、高圧条件下の岩石熱物性測定システム及び方法を大幅に簡略化することができる。
【0025】
有限元数値モデルと方法は以下のように示される。
【0026】
(1.熱伝導性微分方程式)
当該測定システムの岩石サンプルを円
柱状とし、簡単に計算するために、ここでは、第1温度センサー61を岩石サンプルの中心に配置し、且つ岩石サンプルにおいて第2温度センサー62と第1温度センサー61は径方向に同一の円にある。従って、対応するカラム座標係(2drz)における熱伝導性微分方程式は、
【数12】
【数13】
と示される。
その初期条件は、
【数14】
である。
境界条件は岩石熱物性測定システムが観測した岩石サンプル表面の温度変化T02(t)と伝圧媒質の温度変化T03(t)により制約される。即ち、
【数15】
ただし、λと、ρcはそれぞれ各媒質の熱伝導率(thermal conductivity)と体積熱容量(volumetric heat capacity)であり、γは各媒質の断熱応力変化の温度応答係数(adiabatic pressure derivative of temperature)である。また、Aは封圧変化による温度変化に対応する「熱源」(heat source term driven by change rate of confining pressure ∂p/∂t)である。
【0027】
図2に示されるように、熱伝導性微分方程式に基づいて、カラム座標係(2drz)において有限元数値モデルを確立する。
【0028】
ステップ2において、前記岩石サンプルの熱伝導率をλ、体積熱容量を(ρc)とし、地殻によくある岩石の熱伝導率の範囲は0.5〜6.0W・m
−1・K
−1、体積熱容量の範囲は0.5×10
6〜5.0×10
6J・m
−3・K
−1である。反転の方法の適応性を広げるために、再び岩石の熱物性パラメータの計算領域である、
【数16】
を適当に増大できる。
ただし、二つのパラメータλと(ρc)をm等分し、初期の(m+1)×(m+1)個のグリッドノード(λ
i、(ρc)
j)を獲得する(ただし、i、j=1、2、3、・・・、m)。
【0029】
ステップ3において、全てのグリッドノード(λ
i、(ρc)
j)を確立したPT−FE有限元数値モデルに入力し、瞬時に与圧する過程においてリアルタイムで観測した岩石サンプル表面の温度変化T02(t)と伝圧媒質(例えばシリコンオイル)の温度変化T03(t)を境界条件として(
図2参照)、(λ、(ρc))=(λ
i、(ρc)
j)をアナログ計算するときに、岩石サンプルの中心の温度変化をT
i、jmоdと示す。
【0030】
ステップ4において、最小二乗法を利用し、前記有限元数値モデルを計算することにより得たT
i、jmоdとリアルタイムで観測した岩石サンプルの中心の温度変化T01(t)とを線形フィッティングする。即ち、
【数17】
当該フィッティング直線傾斜K
i、jと相関係数R
i、jとを計算する。ただし、相関係数の計算式は、
【数18】
である。
【0031】
ステップ5において、目標関数は、
【数19】
と定義され、各グリッドポイントの目標関数値F(λ
i、(ρc)
j)(ただし、i、j=1、2、3、・・・、m)を計算する。
【0032】
ステップ6において、目標関数値が最小のグリッドポイントを探し出し、即ち、F(λ
i0、(ρc)
j0)=min{F(λ
i、(ρc)
j)}を探し出す。F(λ
i0、(ρc)
j0)≦ε(εは計算請求に満たすかどうかを判定するために設定された閾値である)であれば、(λ
i0、(ρc)
j0)は計算する必要がある岩石サンプルの熱伝導率と体積熱容量(λ、(ρc))であり、そうではないと、F(λ
i0、(ρc)
j0)≦εを満足するまで、(λ
i0、(ρc)
j0)を中心とする領域を計算領域とし、グリッドの密度を増加し、ステップ3に戻すことにより、計算して、岩石サンプルの熱伝導率と体積熱容量(λ、(ρc))=(λ
i0、(ρc)
j0)を得る。
【0033】
ステップ7において、最後に、熱伝導率、体積熱容量及び熱拡散率の関係式κ=λ/(ρc)から、計算して、岩石サンプルの熱拡散率を得る。これにより、ある封圧状態における岩石の熱物性パラメータに対する計算を完成する。
【0034】
本発明にかかる高圧条件下の岩石熱物性測定方法のステップは以下のように示される。
【0035】
ステップ1:第1温度センサー61を作製された円
柱状の岩石サンプル4の中心に取り付け、第2温度センサー62を岩石サンプル4の外面に取り付ける。そして、ゴムカバーにより岩石サンプル4を水密状態とすることにより、岩石サンプルモジュールを形成する。
【0036】
ステップ2:岩石サンプルモジュールと第3温度センサー63とを第2耐圧タンク2に入れ、密封する。同時に、第1排出弁51と第1圧力センサー52とが取り付けられた第1連通ダクト5で、高圧ポンプ3と第1耐圧タンク1とを接続する。また、第2排出弁71と第2圧力センサー72とが取り付けられた第2連通ダクト7で第1耐圧タンク1と第2耐圧タンク2とを接続する。また、第3排出弁22を第2耐圧タンク2に取り付け、そして、第1温度センサー61、第2温度センサー62、及び第3温度センサー63を温度観測モジュール8に接続する。また、第1圧力センサー52と第2圧力センサー72とを封圧観測モジュール9に接続することにより、岩石熱物性測定システムを形成する。そして、温度観測モジュール8と封圧観測モジュール9とを作動させて、温度と封圧に対する観測を開始する。
【0037】
ステップ3:第1排出弁51のみを開いて、第2排出弁71と第3排出弁22とを閉じ、高圧ポンプ3を作動させることにより、第1耐圧タンク1の封圧を予定の圧力まで上昇させる。
【0038】
ステップ4:3〜6時間を経てシステム全体のバランスを取ったときに、第1排出弁51を閉じて、第3排出弁22を閉じたまま、第2排出弁71を素早く開くことにより、第2耐圧タンク2に瞬時に与圧する。
【0039】
上記の操作により、岩石サンプルに対して瞬時に与圧することができ、且つ、この過程において温度の変化と封圧の変化とをリアルタイムで検出し記録することができる。そして、確立した有限元数値モデルと方法を使って反転することにより、封圧状態における岩石サンプルの熱物性パラメータを得ることができる。
【0040】
本発明において、岩石サンプルに対して瞬時に与圧することができることにより、熱物性測定を行うが、ステップ4以降で、第1排出弁51と第2排出弁71とを閉じた後で、第3排出弁22を開くことにより、第2耐圧タンク2の圧力を瞬時に下げるようにしてもよい。これにより、圧力を瞬時に下げることができる。このように、圧力を瞬時に下げる前後における温度の変化と封圧の変化とから、封圧状態における岩石サンプルの熱物性パラメータを得ることもできる。
【0041】
図3と
図4は、龍門山断層帯の砂岩L28とインドRajasthan砂岩RJSを瞬時に与圧する過程における温度応答曲線である。テーブル1は、15.31MPa、13.61Mpaの封圧状態において砂岩L28と砂岩RJSの熱物性パラメータに対する測定結果である。
【0042】
表1は、龍門山断層帯の砂岩(L28)とインドRajasthan砂岩(RJS)の熱物性パラメータを示している。
【表1】
【0043】
図5、
図6に示すように、岩石サンプルL28とRJSの中心温度の測定結果と有限元数値のシミュレーション結果を比べると、本発明にかかる方法とシステムは高圧条件下の岩石熱物性パラメータ測定に適用可能であり、岩石熱物性測定システム及び操作手順を大幅に簡略化することができる。
【0044】
具体的な実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱しない限り、本発明に対して様々な変更及び等効な置換がなされ得ることは、当業者には容易に理解できるであろう。また、所定な場合または用途では、本発明の範囲から逸脱しない限り、本発明に対して様々な修正を行うことができる。よって、本発明は、記載された具体的な実施例に限定されず、本発明の特許請求の範囲に入る全ての実施形態を含むものとする。
【0045】
(付記)
(付記1)
伝圧媒質が充填された第1キャビティが形成された第1耐圧タンクと、
伝圧媒質が充填された第2キャビティが形成された第2耐圧タンクと、
前記第1耐圧タンクに前記伝圧媒質を供給し、第1排出弁と第1圧力センサーが取り付けられた第1連通ダクトにより前記第1キャビティに接続された高圧ポンプと、
その入力端に、第1温度センサー、第2温度センサー、及び第3温度センサーの出力端が接続された温度観測モジュールと、
その入力端に、前記第1圧力センサー及び前記第2圧力センサーの出力端が接続された封圧観測モジュールと、
を含み、
前記第2キャビティ内に岩石サンプルが取り付けられ、前記岩石サンプルの中心に前記第1温度センサーが取り付けられ、前記岩石サンプルの外面に前記第2温度センサーが取り付けられ、前記伝圧媒質が充填された前記第2キャビティ内に前記第3温度センサーが取り付けられ、前記第1キャビティと前記第2キャビティとは第2排出弁と第2圧力センサーとが取り付けられた第2連通ダクトにより連通され、前記第2キャビティには第3排出弁が接続されていることを特徴とする高圧条件下の岩石熱物性測定システム。
【0046】
(付記2)
前記岩石サンプルの外面には、前記岩石サンプルを水密状態にするためのゴムカバーが設けられ、前記岩石サンプルの上端と下端とは硬質シリコンで密封されていることを特徴とする付記1に記載の高圧条件下の岩石熱物性測定システム。
【0047】
(付記3)
前記岩石サンプルは円
柱状であることを特徴とする付記1に記載の高圧条件下の岩石熱物性測定システム。
【0048】
(付記4)
前記伝圧媒質はシリコンオイルであることを特徴とする付記1に記載の高圧条件下の岩石熱物性測定システム。
【0049】
(付記5)
第1温度センサーを作製された円
柱状の岩石サンプルの中心に取り付け、第2温度センサーを作製された円
柱状の前記岩石サンプルの外面に取り付け、ゴムカバーにより前記岩石サンプルを水密状態にすると共に、硬質シリコンにより前記岩石サンプルの上端と下端を密封することにより、岩石サンプルモジュールを形成するステップ1と、
前記岩石サンプルモジュールと第3温度センサーを第2耐圧タンクに入れ、伝圧媒質が前記第2耐圧タンクに充填した後前記第2耐圧タンクを密封する同時に、第1排出弁と第1圧力センサーとが取り付けられた第1連通ダクトで高圧ポンプと第1耐圧タンクとを接続し、第2排出弁と第2圧力センサーが取り付けられた第2連通ダクトで前記第1耐圧タンクと前記第2耐圧タンクとを接続し、第3排出弁を前記第2耐圧タンクに取り付け、そして、前記第1温度センサー、前記第2温度センサー、及び前記第3温度センサーを温度観測モジュールに接続し、前記第1圧力センサーと前記第2圧力センサーとを封圧観測モジュールに接続することにより、岩石熱物性測定システムを形成し、前記温度観測モジュールと前記封圧観測モジュールとを作動させて、温度と封圧に対する観測を開始するステップ2と、
前記第1排出弁のみを開いて、前記第2排出弁と前記第3排出弁とを閉じ、前記高圧ポンプを作動させることにより、前記第1耐圧タンクの封圧を予定の圧力まで上昇させるステップ3と、
前記岩石熱物性測定システム全体のバランスを取ったときに、前記第1排出弁を閉じて、前記第3排出弁を閉じたまま、前記第2排出弁を開くことにより、前記第2耐圧タンクに瞬時に与圧するステップ4と、
前記温度観測モジュールによってリアルタイムで観測した前記第1温度センサー、前記第2温度センサー、及び前記第3温度センサーの温度変化と、前記封圧観測モジュールによってリアルタイムで観測した前記第2圧力センサーの封圧変化とに基づいて、有限元数値モデルを使って反転することにより、封圧状態における前記岩石サンプルの熱物性パラメータを得るステップ5と、
を含むことを特徴とする高圧条件下の岩石熱物性測定方法。
【0050】
(付記6)
前記ステップ5は、
前記円
柱状の岩石サンプルの中心を原点とし、前記円
柱状の岩石サンプルの径方向と軸方向で形成されたカラム座標係において、熱伝導性微分方程式に基づいて、有限元数値モデルを確立するステップ51と、
前記岩石サンプルの熱伝導率をλ、体積熱容量を(ρc)とし、地殻によくある岩石の熱伝導率の範囲は0.5〜6.0W・m
−1・K
−1、体積熱容量の範囲は0.5×10
6〜5.0×10
6J・m
−3・K
−1であり、計算領域である
【数20】
における二つのパラメータλと(ρc)をm等分し、初期の(m+1)×(m+1)個のグリッドノード(λ
i、(ρc)
j)を獲得する(ただし、i、j=1、2、3、・・・、m)ステップ52と、
全てのグリッドノード(λ
i、(ρc)
j)を確立した有限元数値モデルに入力し、瞬時に与圧する過程においてリアルタイムで観測した岩石サンプル表面の温度変化T02(t)と伝圧媒質の温度変化T03(t)を境界条件として、(λ、(ρc))=(λ
i、(ρc)
j)をアナログ計算するときに、前記岩石サンプルの中心の温度変化をT
i、jmоdと示すステップ53と、
最小二乗法を利用し、前記有限元数値モデルを計算することにより得たT
i、jmоdとリアルタイムで観測した前記岩石サンプルの中心の温度変化T01(t)を線形フィッティングし、即ち、
【数21】
当該フィッティング直線傾斜K
i、jと相関係数R
i、jを計算し、ただし、相関係数の計算式は、
【数22】
であり、ただし、nはサンプリング合計回数であり、t
kは第k回のサンプリングの時刻であり、T01(t
k)は瞬時に与圧した後t
k時刻で第1温度センサーが獲得した温度変化であり、1≦k≦nとするステップ54と、
目標関数は
【数23】
と定義され、各グリッドポイントの目標関数値F(λ
i、(ρc)
j)を計算するステップ55と、
目標関数値が最小のグリッドポイントを探し出し、即ち、F(λ
i0、(ρc)
j0)=min{F(λ
i、(ρc)
j)}であり、F(λ
i0、(ρc)
j0)≦ε、ここでεは計算請求に満足するかどうかを判定するために設定された閾値であるのであれば、(λ
i0、(ρc)
j0)は計算する必要がある岩石サンプルの熱伝導率と体積熱容量(λ、(ρc))であり、そうではないと、F(λ
i0、(ρc)
j0)≦εを満足するまで、(λ
i0、(ρc)
j0)を中心とする領域を計算領域とし、グリッドの密度を増加し、ステップ53に戻すことにより計算して、岩石サンプルの熱伝導率と体積熱容量(λ、(ρc))=(λ
i0、(ρc)
j0)を得るステップ56と、
最後に、熱伝導率λ、体積熱容量(ρc)及び熱拡散率κの関係式κ=λ/(ρc)=λ
i0/(ρc)
j0から計算して、岩石サンプルの熱拡散率を得るステップ57と、
を含むことを特徴とする付記5に記載の高圧条件下の岩石熱物性測定方法。
【0051】
(付記7)
前記ステップ51において、カラム座標係における熱伝導性微分方程式は
【数24】
【数25】
と示され、
その初期条件は
【数26】
であり、
境界条件は岩石熱物性測定システムが観測した岩石サンプル表面の温度変化T02(t)と伝圧媒質の温度変化T03(t)により制約され、即ち、
【数27】
であり、
ただし、γは各媒質の断熱応力変化の温度応答係数であり、Aは封圧変化∂p/∂tによる温度変化に対応する熱源であり、r
0は岩石サンプルの半径であり、z
01は円
柱状の岩石サンプルの頂面又は底面から岩石サンプルの中心円
柱面までの垂直距離であり、z
02は密封後の円
柱状の岩石サンプルモジュールの頂面又は底面から岩石サンプルの中心円
柱面までの垂直距離であることを特徴とする付記6に記載の高圧条件下の岩石熱物性測定方法。
【0052】
(付記8)
リアルタイムで観測した前記岩石サンプルの中心の温度変化T01(t)、岩石サンプル表面の温度変化T02(t)と伝圧媒質の温度変化T03(t)は、各時刻におけるリアルタイムで観測した温度と瞬時に与圧したときの温度との差であり、即ち、
【数28】
【数29】
【数30】
であり、
ただし、T
1(t)T、T
2(t)T、T
3(t)Tはそれぞれに瞬時に与圧した後時刻tにおける第1温度センサー、第2温度センサーと第3温度センサーがリアルタイムで観測した温度であり、且つステップ5により得られ、T
1(0)、T
2(0)、T
3(0)はそれぞれに瞬時に与圧した第1温度センサー、第2温度センサーと第3温度センサーがリアルタイムで観測した温度であり、且つステップ2により得られることを特徴とする付記7に記載の高圧条件下の岩石熱物性測定方法。
【0053】
(付記9)
第1温度センサー、第2温度センサーと第3温度センサーが観測した温度はいずれも安定したときに、岩石熱物性測定システム全体の温度バランスを取ることを特徴とする付記5に記載の高圧条件下の岩石熱物性測定方法。