特許第6473530号(P6473530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6473530
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】靴下
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/00 20060101AFI20190207BHJP
【FI】
   A41B11/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-32433(P2018-32433)
(22)【出願日】2018年2月26日
【審査請求日】2018年8月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005854
【氏名又は名称】丸紅株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】398014528
【氏名又は名称】助野株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】太田 紀雄
(72)【発明者】
【氏名】助野 真彦
【審査官】 木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−058111(JP,A)
【文献】 特開2010−242262(JP,A)
【文献】 特開2011−256506(JP,A)
【文献】 特開2005−307370(JP,A)
【文献】 特開平10−131002(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/004966(WO,A1)
【文献】 実開昭52−069334(JP,U)
【文献】 特開2015−030958(JP,A)
【文献】 特開平11−001849(JP,A)
【文献】 特開2001−164405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00 − 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
編成軸線に沿いつつ丸編み又は横編みによって編成される靴下であって、
筒状のレッグ部と、筒状のソール部と、これらレッグ部とソール部との間のヒール部と、を備え、
前記ヒール部が、
前記編成軸線に沿って配置された複数の目数変化領域と、
すべての前記目数変化領域同士の間に配置された複数の筒状領域と、
を備え、
前記目数変化領域が、
前記レッグ部の下縁に連結された上方目数変化領域と、
前記ソール部の上縁に連結された下方目数変化領域と、
前記上方目数変化領域と前記下方目数変化領域との間の複数の中間目数変化領域と、
を含んでおり、
前記上方目数変化領域のコース数が前記下方目数変化領域のコース数及び前記中間目数変化領域のコース数よりも少な
前記目数変化領域が前記編成軸線に沿って交互に配置された目数増加領域及び目数減少領域から構成され、
前記複数の筒状領域のコース数が前記目数変化領域のコース数よりも少ない、
靴下。
【請求項2】
前記上方目数変化領域が目数増加領域から構成され、前記下方目数変化領域が目数減少領域から構成される、請求項に記載の靴下。
【請求項3】
前記目数変化領域の数が6つで前記筒状領域の数が5つであるか又は前記目数変化領域の数が8つで前記筒状領域の数が7つである、請求項1又は2に記載の靴下。
【請求項4】
編成軸線に沿いつつ丸編み又は横編みによって編成される靴下であって、
筒状のレッグ部と、筒状のソール部と、これらレッグ部とソール部との間のヒール部と、を備え、
前記ヒール部が、
前記編成軸線に沿って配置された複数の目数変化領域と、
すべての前記目数変化領域同士の間に配置された複数の筒状領域と、
を備え、
前記目数変化領域が、
前記レッグ部の下縁に連結された上方目数変化領域と、
前記ソール部の上縁に連結された下方目数変化領域と、
前記上方目数変化領域と前記下方目数変化領域との間の複数の中間目数変化領域と、
を含んでおり、
前記目数変化領域が前記編成軸線に沿って交互に配置された目数増加領域及び目数減少領域から構成され、
前記複数の筒状領域のコース数が前記目数変化領域のコース数よりも少ない、
靴下。
【請求項5】
前記上方目数変化領域が目数増加領域から構成され、前記下方目数変化領域が目数減少領域から構成される、請求項に記載の靴下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
筒状の脚部と、筒状の足部と、これら脚部と足部との間の踵部と、を備え、踵部が、脚部から順次続けて形成された、目数減少領域、踵上部筒編み領域、目数増減領域、踵中央筒編み領域、目数増減領域、踵下部筒編み領域、及び、目数増加領域からなる、靴下が公知である(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によれば、このようにすると、足の踵部分の形状に近い形状の踵部分を備えた靴下を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−242262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、年齢、性別、人種等によって、着用者の足長ないしサイズにはバラツキがある。したがって、複数の着用者に適した靴下を提供するには、複数種類の靴下を製造する必要がある。しかしながら、このようなことは現実的でない。すなわち、着用者の足長のバラツキに対応可能な、いわゆるサイズフリーの靴下が必要とされている。しかしながら、上述の特許文献1には、このような課題が何ら開示されておらず、当然、その解決手段も開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、編成軸線に沿いつつ丸編み又は横編みによって編成される靴下であって、筒状のレッグ部と、筒状のソール部と、これらレッグ部とソール部との間のヒール部と、を備え、前記ヒール部が、前記編成軸線に沿って配置された複数の目数変化領域と、これら目数変化領域同士の間に配置された複数の筒状領域と、を備え、前記目数変化領域が、前記レッグ部の下縁に連結された上方目数変化領域と、前記ソール部の上縁に連結された下方目数変化領域と、前記上方目数変化領域と前記下方目数変化領域との間の複数の中間目数変化領域と、を含んでおり、前記上方目数変化領域のコース数が前記下方目数変化領域のコース数及び前記中間目数変化領域のコース数よりも少ない、靴下が提供される。
【0006】
本発明の別の観点によれば、編成軸線に沿いつつ丸編み又は横編みによって編成される靴下であって、筒状のレッグ部と、筒状のソール部と、これらレッグ部とソール部との間のヒール部と、を備え、前記ヒール部が、前記編成軸線に沿って配置された複数の目数変化領域と、これら目数変化領域同士の間に配置された複数の筒状領域と、を備え、前記目数変化領域が、前記レッグ部の下縁に連結された上方目数変化領域と、前記ソール部の上縁に連結された下方目数変化領域と、前記上方目数変化領域と前記下方目数変化領域との間の複数の中間目数変化領域と、を含んでおり、前記目数変化領域が前記編成軸線に沿って交互に配置された目数増加領域及び目数減少領域から構成される、靴下が提供される。
【0007】
本発明の更に別の観点によれば、編成軸線に沿いつつ丸編み又は横編みによって編成される靴下であって、筒状のレッグ部と、筒状のソール部と、これらレッグ部とソール部との間のヒール部と、を備え、前記ヒール部が、前記編成軸線に沿って配置された複数の目数変化領域と、これら目数変化領域同士の間に配置された複数の筒状領域と、を備え、前記目数変化領域が、前記レッグ部の下縁に連結された上方目数変化領域と、前記ソール部の上縁に連結された下方目数変化領域と、前記上方目数変化領域と前記下方目数変化領域との間の複数の中間目数変化領域と、を含んでおり、着用者の足長のバラツキに対応するために、前記目数変化領域の数が6つで前記筒状領域の数が5つであるか又は前記目数変化領域の数が8つで前記筒状領域の数が7つである、靴下が提供される。
【発明の効果】
【0008】
着用者の足長のバラツキに対応可能な、いわゆるサイズフリーの靴下を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】靴下の平面図である。
図2】靴下の部分展開図である。
図3】靴下の部分拡大展開図である。
図4】編機のシリンダの模式図である。
図5】着用時における靴下の部分概略側面図である。
図6】着用者の足長が種々の場合の、着用時における靴下の概略側面図である。
図7】着用時における靴下の部分概略側面図である。
図8】目数変化領域の別の実施例を示す、ヒール部の部分展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照すると、本発明による実施例の靴下1は、口ゴム部R、レッグ部又は脚部L、ヒール部又は踵部H、ソール部又は足部S、及びトウ部又は爪先部Tを備える。
【0011】
この靴下1は丸編機又は横編機によって編成される。ここで、ヒール部Hからレッグ部Lに向かう方向を上方、ヒール部Hからソール部Sに向かう方向を下方と称すると、本発明による実施例では、靴下1は編成軸線に沿いつつ上方から下方に向けて、口ゴム部R、レッグ部L、ヒール部H、ソール部H、トウ部Tの順に、形成される。別の実施例(図示しない)では、靴下1は編成軸線に沿いつつ下方から上方に向けて編成される。
【0012】
図2は、本発明による実施例の靴下1のヒール部H周りの展開図を、図3はその部分拡大図を、それぞれ示している。図2及び図3を参照すると、本発明による実施例のヒール部Hは、編成軸線Kに沿って配置された複数の目数変化領域V1,V2,V3,V4,V5,V6と、目数変化領域V1,V2,V3,V4,V5,V6同士の間に配置された複数の筒状領域C1,C2,C3,C4,C5と、を備える。この点、複数の目数変化領域V1,V2,V3,V4,V5,V6と複数の筒状領域C1,C2,C3,C4,C5とが交互に配置される、と考えることもできる。あるいは、複数の目数変化領域V1,V2,V3,V4,V5,V6がそれぞれ対応する筒状領域C1,C2,C3,C4,C5によって互いに離間される、と考えることもできる。
【0013】
詳しく説明すると、本発明による実施例では、特に図3に示されるように、レッグ部Lの下縁LLに目数変化領域V1の上縁V1Uが連結される。第1の目数変化領域V1の下縁V1Lに第1の筒状領域C1の上縁C1Uが連結される。第1の筒状領域C1の下縁C1Lに第2の目数変化領域V2の上縁V2Uが連結される。第2の目数変化領域V2の下縁V2Lに第2の筒状領域Cの上縁C2Uが連結される。第2の筒状領域C2の下縁C2Lに第3の目数変化領域V3の上縁V3Uが連結される。第3の目数変化領域V3の下縁V3Lに第3の筒状領域C3の上縁C3Uが連結される。第3の筒状領域C3の下縁C3Lに第4の目数変化領域V4の上縁V4Uが連結される。第4の目数変化領域V4の下縁V4Lに第4の筒状領域C4の上縁C4Uが連結される。第4の筒状領域C4の下縁C4Lに第5の目数変化領域V5の上縁V5Uが連結される。第5の目数変化領域V5の下縁V5Lに第5の筒状領域C5の上縁C5Uが連結される。第5の筒状領域C5の下縁C5Lに第6の目数変化領域V6の上縁V6Uが連結される。第6の目数変化領域V6の下縁V6Lにソール部Sの上縁SUが連結される。
【0014】
目数変化領域V1,V2,V3,V4,V5,V6は、上方から下方に向かうにつれて目数ないし幅が変化する領域である。本発明による実施例では、第1、第3、及び第5の目数変化領域V1,V3,V5は、上方から下方に向かうにつれて目数が単調増加する目数増加領域から構成される。一方、第2、第4、第6の目数変化領域V2,V4,V6は、上方から下方に向かうにつれて目数が単調減少する目数減少領域から構成される。言い換えると、本発明による実施例では、目数変化領域V1,V2,V3,V4,V5,V6は、編成軸線Kに沿って交互に配置された目数増加領域及び目数減少領域から構成され、レッグ部Lに連結された第1の目数変化領域V1は目数増加領域から構成され、ソール部Sに連結された第6の目数変化領域V6は目数減少領域から構成される。
【0015】
図2及び図3において、A,B,C,Dは、例えば図4に示されるような編機のシリンダの周方向位置を表している。本発明による実施例では、図4に破線で示されるように、シリンダがその周長の一部、例えば概ね半周にわたり正逆往復回転しながら編成することにより、目数変化領域V1,V2,V3,V4,V5,V6が形成される。この場合、目数増加領域を形成すべきときには、編成が上方から下方に進むにつれてシリンダの回転角度範囲が大きくされる。一方、目数減少領域を形成すべきときには、編成が上方から下方に進むにつれてシリンダの回転角度範囲が小さくされる。なお、本発明による実施例では、靴下1ないし目数変化領域は左右対称に形成される。
【0016】
一方、筒状領域C1,C2,C3,C4,C5は、上方から下方に向かうにつれて目数が変化することなく、筒状をなしている。筒状領域C1,C2,C3,C4,C5は、図4に実線で示されるように、シリンダが全周にわたり正回転することにより、形成される。なお、口ゴム部R、レッグ部L、及びソール部Sも、筒状領域C1,C2,C3,C4,C5と同様に、筒状に形成される。
【0017】
本発明による実施例では、第1の目数変化領域V1が編成されるときに、第1の目数変化領域V1の側縁V1Sがレッグ部Lの下縁LLに編み付けられる。その結果、図5に示されるように第1のゴアラインG1が形成される。また、第2の筒状領域C2が編成されるときに、第2の目数変化領域V2の側縁V2Sが第2の筒状領域C2の上縁C2Uに編み付けられ、第2のゴアラインG2が形成される。第3の目数変化領域V3が編成されるときに、第3の目数変化領域V3の側縁V3Sが第2の筒状領域C2の下縁C2Lに編み付けられ、第3のゴアラインG3が形成される。第4の筒状領域C4が編成されるときに、第4の目数変化領域V4の側縁V4Sが第4の筒状領域C4の上縁C4Uに編み付けられ、第4のゴアラインG4が形成される。第5の目数変化領域V5が編成されるときに、第5の目数変化領域V5の側縁V5Sが第4の筒状領域C4の下縁C4Lに編み付けられ、第5のゴアラインG5が形成される。ソール部Sが編成されるときに、第6の目数変化領域V6の側縁V6Sがソール部Sの上縁SUに編み付けられ、第6のゴアラインG6が形成される。
【0018】
本発明による実施例では、第1の目数変化領域V1のコース数ないし高さCV1は、他の目数変化領域、すなわち第2から第6の目数変化領域V2,V3,V4,V5,V6のコース数CV2,CV3,CV4,CV5,CV6よりも少ない。また、本発明による実施例では、第6の目数変化領域V6のコース数CV6は、第2から第5の目数変化領域V2,V3,V4,V5のコース数CV2,CV3,CV4,CV5よりも少ない。更に、本発明による実施例では、第2から第5の目数変化領域V2,V3,V4,V5のコース数CV2,CV3,CV4,CV5は、互いにほぼ等しい。
【0019】
したがって、レッグ部Lに連結された第1の目数変化領域V1を上方目数変化領域と称し、ソール部Sに連結された第6の目数変化領域V6を下方目数変化領域と称し、上方目数変化領域と下方目数変化領域との間の目数変化領域V2,V3,V4,V5を中間目数変化領域と称すると、本発明による実施例では、上方目数変化領域のコース数は下方目数変化領域のコース数及び中間目数変化領域のコース数よりも少ない、ということになる。また、本発明による実施例では、上方目数変化領域及び下方目数変化領域のコース数はそれぞれ、中間目数変化領域のコース数よりも少ない。更に、本発明による実施例では、中間目数変化領域のコース数は互いにほぼ等しい。
【0020】
一方、本発明による実施例では、第1から第5の筒状領域C1,C2,C3,C4,C5のコース数CC1,CC2,CC3,CC4,CC5は、第1から第6の目数変化領域V1,V2,V3,V4,V5,V6のコース数CV1,CV2,CV3,CV4,CV5,CV6よりも少ない。また、第1から第5の筒状領域C1,C2,C3,C4,C5のコース数CC1,CC2,CC3,CC4,CC5は互いにほぼ等しい。
【0021】
一例では、上方目数変化領域のコース数CV1は10であり、下方目数変化領域のコース数CV6は14であり、中間目数変化領域のコース数CV2,CV3,CV4,CV5はそれぞれ24であり、筒状領域のコース数CC1,CC2,CC3,CC4,CC5はそれぞれ6である。
【0022】
このように、本発明による実施例では、ヒール部Hに、複数の目数変化領域V1,V2,V3,V4,V5,V6が編成軸線Kに沿いつつ並べて配置される。ここで、一般に、目数変化領域は、ヒール部Hを外向きに突出させて(立体化)、着用者の踵を少なくとも部分的に包み込む機能を有する。その結果、着用者の足長が小さいときに大きいときにも、ヒール部Hのいずれかの部分が、着用者の踵を確実に包み込むことが可能となる。
【0023】
すなわち、着用者の足長が比較的小さいときには、図6(A)に示されるように、主として、靴下1のヒール部Hのうちソール部Sに近い部分が着用者の踵WHを包み込む。着用者の足長が比較的大きいときには、図6(B)に示されるように、主として、靴下1のヒール部Hのうちレッグ部Lに近い部分が着用者の踵WHを包み込む。着用者の足長が中程度のときには、図6(C)に示されるように、主として、靴下1のヒール部Hのうち編成軸線K方向の中央部分が着用者の踵WHを包み込む。このようにして、着用者の足長の大小にかかわらず、靴下1が着用者の足にフィットすることが可能となる。すなわち、着用者の足長のバラツキに対応可能な、いわゆるサイズフリーの靴下1が提供される。
【0024】
しかも、本発明による実施例では、複数の目数変化領域V1,V2,V3,V4,V5,V6が複数の筒状領域C1,C2,C3,C4,C5を介して、配置される。言い換えると、互いに隣接する2つの目数変化領域(例えば、第1の目数変化領域V1と第2の目数変化領域V2)がその間の筒状領域(例えば、第1の筒状領域C1)によって互いに連結される。その結果、互いに隣接する2つの目数変化領域が互いに他に対して、相対移動しやすくなる。このことは、ヒール部Hないし目数変化領域が着用者の踵の形状に追従しやすいことを意味している。したがって、着用者の足長の大小に関わらず、靴下1が着用者の踵に、確実にフィットし続けることができる。また、筒状領域C1,C2,C3,C4,C5が介在することで、ヒール部Hが大きくなり、したがってより幅広い足長バラツキに対応することが可能となる。
【0025】
いわゆるサイズフリーの靴下1が提供される限り、目数変化領域の数及び筒状領域の数はどのように設定してもよい。例えば、目数変化領域の数及び筒状領域の数を多くすればするほど、幅広い足長範囲に対応できると考えられる。しかしながら、目数変化領域の数及び筒状領域の数が多すぎると、ヒール部Hが過度に大きくなるか、又は、目数変化領域及び筒状領域の大きさが過度に小さくなるおそれがある。本発明による実施例では、目数変化領域の数が6つで筒状領域の数が5つである。別の実施例(図示しない)では、目数変化領域の数が8つで筒状領域の数が7つである。
【0026】
なお、既存の靴下には、例えば「25−27cm」の範囲で、着用者の足長のバラツキに対応しようとするものが知られている。しかしながら、この既存の靴下は、素材の伸縮によって、一定範囲の足長に対応するにすぎない。本発明による実施例のように、靴下の構造ないし編成によって着用者の足長のバラツキに対処するという技術的思想は、これまで存在していない。
【0027】
ところが、着用者の足長が比較的小さいときには図6(A)に示されるように、ヒール部Hのうちレッグ部Lに近い部分が着用者のアキレス腱WAT周りに到る場合がある。この場合、ヒール部Hが着用者のアキレス腱WAT周りにたるみが生じるのは、着用感や見た目の観点から、好ましくない。
【0028】
そこで、本発明による実施例では上述したように、レッグ部Lに連結された上方目数変化領域V1のコース数CV1が、下方目数変化領域V6のコース数CV6及び中間目数変化領域V2,V3,V4,V5のコース数CV2,CV3,CV4,CV5よりも少なくされる。その結果、着用者のアキレス腱WAT周りにたるみが生じにくくなり、着用者の足長の大小に関わらず、ヒール部Hが着用者の足にフィットし続けることができる。
【0029】
更に、本発明による実施例では上述したように、目数変化領域V1,V3,V5が目数増加領域から構成され、目数変化領域V2,V4,V6が目数減少領域から構成される。言い換えると、編成軸線Kに沿って上方から下方に見ると、目数変化領域の目数が増加と減少との間で交互に繰り返され、目数の増加に始まり目数の減少に終わる。その結果、図5に示されるように、第1のゴアラインG1と第2のゴアラインG2とは互いに離れて位置し、第2のゴアラインG2と第3のゴアラインG3とは互いに近くに位置し、第3のゴアラインG3と第4のゴアラインG4とは互いに離れて位置し、第4のゴアラインG4と第5のゴアラインG5とは互いに近くに位置し、第5のゴアラインG5と第6のゴアラインG6とは互いに離れて位置する。
【0030】
一般に、ゴアラインは、その長さ方向の伸縮性が低いことが知られている。このため、図7に示されるように、ヒール部Hのうち、編成軸線K方向に見て、第1のゴアラインG1と第2のゴアラインG2とにより挟まれた部分、第3のゴアラインG3と第4のゴアラインG4とにより挟まれた部分、及び、第5のゴアラインG5と第6のゴアラインG6とにより挟まれた部分には、ゴアラインが形成されていないので、周方向の伸縮性が比較的高い高周方向伸縮性部分EHが形成される。また、ヒール部Hのうち、編成軸線K方向に見て、第2のゴアラインG2と第3のゴアラインG3とにより挟まれた部分、及び、第4のゴアラインG4と第5のゴアラインG5とにより挟まれた部分には、2つのゴアラインが互いに近接しているので、周方向の伸縮性が比較的低い低周方向伸縮性部分ELが形成される。この場合、高周方向伸縮性部分EHの面積ないしコース数は、低周方向伸縮性部分ELの面積ないしコース数よりも大きい。
【0031】
その結果、高周方向伸縮性部分EHにおいて、着用者の踵を確実に包み込むことができ、同時に、低周方向伸縮性部分ELによって、着用者の踵が編成軸線K方向に靴下1に対し相対移動するのを確実に抑制することができる。言い換えると、着用者の足長の大小に関わらず、靴下1が着用者の踵に、更に確実にフィットし続ける。
【0032】
なお、本発明による実施例では、ヒール部Hに隣接するソール部Sの部分の伸縮性が、ソール部Sの他の部分、レッグ部L、ヒール部H、トウ部Tの伸縮性よりも高められている。これによって、靴下1が着用者の足によりフィットし続けることができる。伸縮性の調節は、例えば、編み方や素材を調節することにより行うことができる。
【0033】
これまで述べてきた本発明による実施例では、目数変化領域は目数増加領域及び目数減少領域から構成される。しかしながら、参考例では、目数変化領域を目数増減領域から構成することもできる。目数増減領域は、上方から下方に向かうにつれて目数が増加する少なくとも1つの部分と、上方から下方に向かうにつれて目数が減少する少なくとも1つの部分とを含む。目数増減領域の種々の例が図8(A)及び図8(B)に示される。図8(A)に示される例では、目数変化領域Vの目数は、上方から下方に向かうにつれてまず増加し次いで減少する。図8(B)に示される例では、目数変化領域Vの目数は、上方から下方に向かうにつれてまず減少し次いで増加する。なお、図8(A)及び図8(B)において、Xはレッグ部L又は筒状領域を示しており、Yは筒状領域又はソール部Sを示している。
【0034】
また、これまで述べてきた本発明による実施例では、目数変化領域は目数増加領域及び目数減少領域の組み合わせから構成される。しかしながら、参考例では、目数変化領域を、目数増加領域、目数減少領域、及び、目数増減領域を適宜組み合わせて構成することもできる。一例では、すべての目数変化領域が目数増加領域から構成される。
【0035】
更に、これまで述べてきた本発明による実施例では、目数変化領域は、交互に配置された目数増加領域及び目数減少領域から構成され、上方目数変化領域が目数増加領域から構成され、下方目数変化領域が目数減少領域から構成される。この場合、ヒール部Hには図7に示されるように、3つの高周方向伸縮性部分EHと2つの低周方向伸縮性部分ELとが形成される。別の実施例(図示しない)では、目数変化領域は、交互に配置された目数増加領域及び目数減少領域から構成され、上方目数変化領域が目数減少領域から構成され、下方目数変化領域が目数増加領域から構成される。この場合、ヒール部Hには、2つの高周方向伸縮性部分EHと3つの低周方向伸縮性部分ELとが形成される。
本開示は以下を含む。
[構成1]
編成軸線に沿いつつ丸編み又は横編みによって編成される靴下であって、
筒状のレッグ部と、筒状のソール部と、これらレッグ部とソール部との間のヒール部と、を備え、
前記ヒール部が、
前記編成軸線に沿って配置された複数の目数変化領域と、
これら目数変化領域同士の間に配置された複数の筒状領域と、
を備え、
前記目数変化領域が、
前記レッグ部の下縁に連結された上方目数変化領域と、
前記ソール部の上縁に連結された下方目数変化領域と、
前記上方目数変化領域と前記下方目数変化領域との間の複数の中間目数変化領域と、
を含んでおり、
前記上方目数変化領域のコース数が前記下方目数変化領域のコース数及び前記中間目数変化領域のコース数よりも少ない、
靴下。
[構成2]
前記目数変化領域が前記編成軸線に沿って交互に配置された目数増加領域及び目数減少領域から構成される、構成1に記載の靴下。
[構成3]
前記上方目数変化領域が目数増加領域から構成され、前記下方目数変化領域が目数減少領域から構成される、構成2に記載の靴下。
[構成4]
前記目数変化領域の数が6つで前記筒状領域の数が5つであるか又は前記目数変化領域の数が8つで前記筒状領域の数が7つである、構成1から3までのいずれか一項に記載の靴下。
[構成5]
編成軸線に沿いつつ丸編み又は横編みによって編成される靴下であって、
筒状のレッグ部と、筒状のソール部と、これらレッグ部とソール部との間のヒール部と、を備え、
前記ヒール部が、
前記編成軸線に沿って配置された複数の目数変化領域と、
これら目数変化領域同士の間に配置された複数の筒状領域と、
を備え、
前記目数変化領域が、
前記レッグ部の下縁に連結された上方目数変化領域と、
前記ソール部の上縁に連結された下方目数変化領域と、
前記上方目数変化領域と前記下方目数変化領域との間の複数の中間目数変化領域と、
を含んでおり、
前記目数変化領域が前記編成軸線に沿って交互に配置された目数増加領域及び目数減少領域から構成される、
靴下。
[構成6]
編成軸線に沿いつつ丸編み又は横編みによって編成される靴下であって、
筒状のレッグ部と、筒状のソール部と、これらレッグ部とソール部との間のヒール部と、を備え、
前記ヒール部が、
前記編成軸線に沿って配置された複数の目数変化領域と、
これら目数変化領域同士の間に配置された複数の筒状領域と、
を備え、
前記目数変化領域が、
前記レッグ部の下縁に連結された上方目数変化領域と、
前記ソール部の上縁に連結された下方目数変化領域と、
前記上方目数変化領域と前記下方目数変化領域との間の複数の中間目数変化領域と、
を含んでおり、
着用者の足長のバラツキに対応するために、前記目数変化領域の数が6つで前記筒状領域の数が5つであるか又は前記目数変化領域の数が8つで前記筒状領域の数が7つである、
靴下。
【符号の説明】
【0036】
1 靴下
L レッグ部
H ヒール部
S ソール部
V1,V2,V3,V4,V5,V6 目数変化領域
V1 上方目数変化領域
V6 下方目数変化領域
V2,V3,V4,V5 中間目数変化領域
C1,C2,C3,C4,C5 筒状領域
CV1 上方目数変化領域のコース数
CV6 下方目数変化領域のコース数
CV2,CV3,CV4,CV5 中間目数変化領域のコース数
K 編成軸線
【要約】
【課題】着用者の足長のバラツキに対応可能な、いわゆるサイズフリーの靴下を提供する。
【解決手段】編成軸線に沿いつつ丸編み又は横編みによって編成される靴下1は、筒状のレッグ部Lと、筒状のソール部Sと、これらレッグ部とソール部との間のヒール部Hと、を備える。ヒール部は、編成軸線Kに沿って配置された複数の目数変化領域V1,V2,V3,V4,V5,V6と、これら目数変化領域同士の間に配置された複数の筒状領域C1,C2,C3,C4,C5と、を備える。レッグ部の下縁に連結された上方目数変化領域V1のコース数CV1は、他の目数減少領域V2,V3,V4,V5,V6のコース数CV2,CV3,CV4,CV5,CV6よりも少ない。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8