(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6473553
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】ノイズ低減体、その製造方法およびこれを用いた電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20190207BHJP
C01B 32/28 20170101ALI20190207BHJP
【FI】
H05K9/00 M
C01B32/28
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-555287(P2018-555287)
(86)(22)【出願日】2017年8月16日
(86)【国際出願番号】JP2017029440
【審査請求日】2018年10月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507085690
【氏名又は名称】金城 徹
(73)【特許権者】
【識別番号】509001423
【氏名又は名称】株式会社京楽産業ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100101982
【弁理士】
【氏名又は名称】久米川 正光
(72)【発明者】
【氏名】金城 徹
(72)【発明者】
【氏名】樋口 泰典
【審査官】
ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−513462(JP,A)
【文献】
特開2014−203985(JP,A)
【文献】
特開2002−299238(JP,A)
【文献】
特表2013−512554(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0241236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
C01B 32/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路に影響を及す電磁ノイズを低減するノイズ低減体において、
互いに独立して励起し、静電容量を有し、かつ、半導体としての特性を備えた複数のクラスター型セルよりなり、
前記複数のクラスター型セルのそれぞれは、
自発電荷を有し、かつ、アモルファスシリコンでコーティングされた複数の結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子が房状に結合していることを特徴とするノイズ低減体。
【請求項2】
前記クラスター型セルの直径は、15nm以上30nm以下であることを特徴とする請求項1に記載されたノイズ低減体。
【請求項3】
前記結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子の直径は、3nm以上8nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載されたノイズ低減体。
【請求項4】
前記結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子の活性化エネルギーレベルは、0.3eV以上0.7eV以下であることを特徴とする請求項3に記載されたノイズ低減体。
【請求項5】
互いに独立して励起し、静電容量を有し、かつ、半導体としての特性を備えた複数のクラスター型セルよりなり、前記クラスター型セルのそれぞれが、自発電荷を有し、かつ、アモルファスシリコンでコーティングされた結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子が複数房状に結合していると共に、電気回路に影響を及す電磁ノイズを低減するノイズ低減体の製造方法において、
前記結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子と、アモルファスシリコンの粉末とが混入された純水に、一対の電極を介して直流電圧を印加することによって、前記結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子を前記アモルファスシリコンでコーティングする第1のステップと、
前記アモルファスシリコンでコーティングされた前記結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子が混入された純水に、一対の電極を介してパルス電圧を印加することによって、前記ノイズ低減体を生成する第2のステップと
を有することを特徴とするノイズ低減体の製造方法。
【請求項6】
前記クラスター型セルの直径は、15nm以上30nm以下であることを特徴とする請求項5に記載されたノイズ低減体の製造方法。
【請求項7】
前記結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子の直径は、3nm以上8nm以下であることを特徴とする請求項5または6に記載されたノイズ低減体の製造方法。
【請求項8】
前記結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子の活性化エネルギーレベルは、0.3eV以上0.7eV以下であることを特徴とする請求項7に記載されたノイズ低減体の製造方法。
【請求項9】
電子機器において、
電気回路の一部を構成すると共に、電磁ノイズを発生し、または、電磁ノイズの影響を受ける回路要素と、
前記回路要素に接触して、または、前記回路要素の近傍に設けられ、前記電磁ノイズを低減するノイズ低減体とを有し、
前記ノイズ低減体は、互いに独立して励起し、静電容量を有し、かつ、半導体としての特性を備えた複数のクラスター型セルよりなり、
前記複数のクラスター型セルのそれぞれは、自発電荷を有し、かつ、アモルファスシリコンでコーティングされた複数の結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子が房状に結合していることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
前記クラスター型セルの直径は、15nm以上30nm以下であることを特徴とする請求項9に記載された電子機器。
【請求項11】
前記結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子の直径は、3nm以上8nm以下であることを特徴とする請求項9または10に記載された電子機器。
【請求項12】
前記結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子の活性化エネルギーレベルは、0.3eV以上0.7eV以下であることを特徴とする請求項11に記載された電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ノイズを低減するノイズ低減体、その製造方法、および、これを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナノダイヤモンド粒子は、磁気ディスクのガラス基板研磨等における研磨材として広く使用されているが、近年、ナノダイヤモンド半導体が有する自発電荷に着目した応用例が注目されている。例えば、特許文献1は、自発電荷を有する活性化エネルギーレベル0.8−2.0eVを持つ結晶系ナノダイヤモンド半導体を太陽電池保護膜として使用する技術が開示されている。この太陽電池保護膜は、粒子サイズ3−8nmのナノダイヤモンド半導体粒子の光散乱効果により光吸収能を増し、自発電荷により太陽電池表面の汚れ付着を防止して出力の経年劣化を防止すると共に、400nm以下の紫外線波長帯域を0.5−2.0μmの波長帯域に変換して光電気変換効率を向上させる。
【0003】
また、特許文献2には、ナノダイヤモンド半導体粒子を繊維中に分散させた機能性繊維が開示されている。具体的には、室温付近で荷電粒子を発生させる活性化エネルギーレベルが0.1−1.0eVであるナノダイヤモンド半導体粒子を用いることで、生体赤外線及び荷電粒子放射能の大きな繊維を作成する。半導体粒子は、繊維高分子結晶の間隙に浸透して擬似的に直列接続され、体温程度の加熱での励起で発生した粒子間の電位が積算されることによって、大きな起電力を発生し、生体効果を発揮する。
【0004】
さらに、特許文献3には、紫外線吸収能および紫外線から赤外線に波長を変換する光エネルギー変換能を有するナノダイヤモンド半導体粒子を用いた有機機能性材料が開示されている。有機機能性材料は、0.2−1.0eVの活性化エネルギーレベルを有するナノダイヤモンド半導体粒子を0.0005wt%以上含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−203985号公報
【特許文献2】特開2011−074553号公報
【特許文献3】特開2011−10635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明者らは、以前から結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子に関する研究を行っているが、この研究過程において、結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子を主体とした特定の構造が、電気回路に影響を及す電磁ノイズを低減する作用を有することを発見した。
【0007】
そこで、本発明の目的は、結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子を用いた新規なノイズ低減体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、電気回路に影響を及す電磁ノイズを低減するノイズ低減体を提供する。このノイズ低減体は、互いに独立して励起し、静電容量を有し、かつ、半導体としての特性を備えた複数のクラスター型セルによって構成されている。それぞれのクラスター型セルは、自発電荷を有し、かつ、アモルファスシリコンでコーティングされた複数の結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子が房状に結合している。
【0009】
第2の発明は、互いに独立して励起し、静電容量を有し、かつ、半導体としての特性を備えた複数のクラスター型セルよりなり、クラスター型セルのそれぞれが、自発電荷を有し、かつ、アモルファスシリコンでコーティングされた結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子が複数房状に結合していると共に、電気回路に影響を及す電磁ノイズを低減するノイズ低減体の製造方法を提供する。この製造方法では、第1のステップとして、結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子と、アモルファスシリコンの粉末とが混入された純水に、一対の電極を介して直流電圧を印加することによって、結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子をアモルファスシリコンでコーティングする。第2のステップとして、アモルファスシリコンでコーティングされた結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子が混入された純水に、一対の電極を介してパルス電圧を印加することによって、ノイズ低減体を生成する。
【0010】
第3の発明は、回路要素と、ノイズ低減体とを有する電子機器を提供する。回路要素は、電気回路の一部を構成すると共に、電磁ノイズを発生し、または、電磁ノイズの影響を受ける。ノイズ低減体は、回路要素に接触して、または、回路要素の近傍に設けられ、電磁ノイズを低減する。このノイズ低減体は、互いに独立して励起し、静電容量を有し、かつ、半導体としての特性を備えた複数のクラスター型セルによって構成されている。それぞれのクラスター型セルは、自発電荷を有し、かつ、アモルファスシリコンでコーティングされた複数の結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子が房状に結合している。
【0011】
ここで、第1から第3の発明において、上記クラスター型セルの直径は15nm以上30nm以下、上記結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子の直径は3nm以上8nm以下、上記結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子の活性化エネルギーレベルは0.3eV以上0.7eV以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電気回路に影響を及す電磁ノイズを有効に低減することができる。典型的には、ノイズ低減体は、電磁ノイズを発生する回路要素や電磁ノイズの影響を受ける回路要素と接触して、または、その近傍に設けられ、電磁ノイズが及す電子機器への悪影響を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図12】ノイズ低減体の塗布前後における出力リップルノイズの比較図
【
図13】ノイズ低減体が塗布された紙の介在前後における出力リップルノイズの比較図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本実施形態に係るノイズ低減体の模式図、
図2はノイズ低減体の電子顕微鏡写真、および、
図3はその拡大図である。ノイズ低減体1を構成する個々のクラスター型セル2は常温では振動しているため、常温では精細な電子顕微鏡写真を撮影することができない。そこで、電子顕微鏡による撮影は、クラスター型セル2の振動が停止する極低温環境(例えば、−60℃)で行っている。
【0015】
このノイズ低減体1は、互いに独立して励起する多数のクラスター型セル2によって構成されている。それぞれのクラスター型セル2は、略球形状であって、静電容量を有し、かつ、半導体としての特性を備えている。一つのクラスター型セル2は、複数の結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子3が房状(クラスター状)に結合した構造、すなわち、クラスター構造を有しており、その直径は15nm以上30nm以下である。それぞれのクラスター型セル2は、奇数個、かつ、同数の結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子3によって形成されている。結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子3は、自発電荷を有し、かつ、アモルファスシリコン4でコーティング(被覆)されている。
【0016】
本実施形態では、結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子3として、3nm以上8nm以下の粒子径を有するものを用いる。このサイズの粒子は以下のような特徴を有している。第1に、表面炭素SP2層が薄くなるため、励起荷電粒子の発生効率が良く、配合量が少なくて済む。第2に、自発分極をもち自発電荷による性能が大きい。第3に、自発電荷の活性化エネルギーレベルが0.3eV以上0.7eV以下を有し、励起された荷電粒子が多く発生する。
【0017】
結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子3は、典型的には、衝撃圧縮法によって得ることができる。この方法は、爆発法や爆轟法などとも称され、火薬の爆発エネルギー等によって細かく粉砕することによって生成される。空気が存する環境下で火薬(炭素元素を含む。)を爆発させ、この爆発エネルギーが巨大なものである場合、ナノサイズのダイヤモンドが自ずと生成される。よって、粉砕すべき物質の塊を特段用意する必要はない。人工ダイヤモンドの合成の歴史は古く、1953年頃に、ソビエト連邦が、高温高圧合成(HPHT)と化学気相蒸着(CVD)法とを用いた、最初の再現可能な合成方法を発表した。その後、炭素元素を含む爆薬を使用し、爆轟(デトネーション)による合成法が1990年代後半に開発された。よって、結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子3の製法、それ自体は、本願出願時の技術常識というべきものである。
【0018】
つぎに、ノイズ低減体1の製造方法について説明する。
図4に示すように、処理容器には、アノードおよびカソードよりなる一対の電極が所定の間隔を空けて配置されていると共に、エタノール等のアルコール系の液体が貯留されている。また、一対の電極を接続する配線には、直流電源、保護抵抗、電流計などが接続されている。
【0019】
まず、処理容器内に貯留された高純度の純水(チラー)に、結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子と、アモルファスシリコンの粉末とを混入する。そして、これらが混入された液体に、一対の電極を介して直流電圧を印加する。これにより、
図1に示したように、結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子3の周囲がアモルファスシリコン4でコーティングされる。アモルファスシリコン4のコーティング処理を行う理由は、クラスター型セル2内において、結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子3相互で電子が通過する機能を付与すること、換言すれば、ホール移相層を形成するためである。
【0020】
つぎに、アモルファスシリコン4でコーティングされた結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子3が混入された純水に、一対の電極を介してパルス電圧を印加する。パルス電圧の印加対象となる混入水は、
図4の工程で処理された水をそのまま用いてもよいし、乾燥工程を経て粉末化されたコーティング済の結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子3を純水に再度混入することによって生成してもよい。パルス電圧の印加によって、
図1に示したように、奇数個、かつ、同数の結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子3が結合してグループ化される(スラスター化)。これにより、互いに独立して励起し、かつ、静電容量を有し、半導体としての特性を備えたノイズ低減体1が生成される。
【0021】
以下に例示するように、ノイズ低減体1は、電気回路に影響を及す電磁ノイズを低減する用途で広く用いることができる。ノイズ低減体1は、電気回路を備える電子機器において、電磁ノイズを発生する回路要素(ノイズ発生源)、および、電磁ノイズの影響を受ける回路要素の少なくとも一方に接触または近接して設けられる。前者の例としては、ループアンテナやスイッチング回路などが挙げられる。一般に、高周波電流が流れる回路では、配線のインダクタンスなどによってノイズとなる不要電磁波(電磁ノイズ)が発生する。また、後者の例としては、ICチップなどが挙げられる。なお、以下の例では、前者および後者が存在する構造を示しているが、どちらか一方のみが存在する構造であってもよい。
【0022】
図5は、第1の例に係る電子機器の要部断面図である。この電子機器5Aは、基板6上に実装された電気回路を備えている。具体的には、プリント基板6上には、少なくとも一層の導電層7が所定のパターンで形成されており、その上部には、所定のパターンを有する表面絶縁層8aが形成されている。この表面絶縁層8aは部分的に除去されており、これによって露出した導電層7には、電磁ノイズを発生する回路要素9aと、電磁ノイズの影響を受ける9bとが接続されている。
【0023】
表面絶縁層8aには、上述したノイズ低減体1が含まれている。このような構成は、ノイズ低減体1を混合した絶縁性の塗布剤を塗布することで得られる他、絶縁性の塗布剤を塗布して表面絶縁層8aを形成した後、その表面に、ノイズ低減体1をシリコン系オイルに分散させた液状剤を更に塗布することでも得られる。後者の場合、塗布した液状剤を事後的に拭き取ったとしても、ミクロ的に見れば、表面絶縁層8aの微小な凹凸に侵入したノイズ低減体1が残存するため、表面絶縁層8a中にノイズ低減体1が含まれている状態が損なわれることはない。
【0024】
この構成では、デバイス9a,9bの下方近傍にノイズ低減体1が存在する。デバイス9aの下方近傍に存在するノイズ低減体1は、デバイス9aにて発生した電磁ノイズが、デバイス9bなどの他の回路要素に及す影響を低減する。また、デバイス9bの下方近傍に存在するノイズ低減体1は、デバイス9aなどの他の回路要素にて発生した電磁ノイズがデバイス9bに及す影響を低減する。これにより、電磁ノイズの影響を受け難い電子機器5Aを実現できる。
【0025】
図6は、第2の例に係る電子機器の要部断面図である。この電子機器5Bでは、複数の導電層7が積層されており、上下の導電層7の間にはノイズ低減体1が含まれた層間絶縁膜8bが介在している。このような構成は、層間絶縁膜8bとして、ノイズ低減体1を混合した絶縁性の塗布剤を塗布することで得ることができる。それ以外の点は
図5と同様なので、同一の符号を付してここでの説明を省略する(以下の
図7〜11も同様。)。この構成では、デバイス9a,9bの下方近傍にノイズ低減体1を設けることによって、電磁ノイズの影響を受け難い電子機器5Bを実現できる。
【0026】
図7は、第3の例に係る電子機器の要部断面図である。この電子機器5Cでは、導電層7および表面絶縁層8aが形成された基板8に回路要素9a,9bが実装されていると共に、ノイズ低減体1をシリコン系オイルに分散させた液状剤が、その表面全体に塗布されている。ノイズ低減体1は、デバイス9a,9bに接触して、または、これらの近傍に存在する。これにより、電磁ノイズの影響を受け難い電子機器5Cを実現できる。
【0027】
図8は、第4の例に係る電子機器の要部断面図である。この電子機器5Dでは、導電層7および表面絶縁層8aが形成された基板8に回路要素9a,9bが実装されていると共に、ノイズ低減体1をシリコン系オイルに分散させた液状剤が、回路要素9a,9bの接点(端子)に部分的に塗布されている。これらの接点は、外部に露出しており、外部に電磁ノイズを放射し易く、または、外部の電磁ノイズが入射し易い。よって、これらの接点にノイズ低減体1を部分的に存在させるだけでも、電磁ノイズの影響を受け難い電子機器5Dを実現できる。
【0028】
図9は、第5の例に係る電子機器の要部断面図である。この電子機器5Eでは、導電層7および表面絶縁層8aが形成された基板8に回路要素9a,9bが実装されていると共に、ノイズ低減体1をシリコン系オイルに分散させた液状剤が、接点を含めて回路要素9a,9bに部分的に塗布されている。これらの回路要素9a,9bは、外部に露出しており、外部に電磁ノイズを放射し易く、または、外部の電磁ノイズが入射し易い。よって、これらにノイズ低減体1を部分的に存在させるだけでも、電磁ノイズの影響を受け難い電子機器5Eを実現できる。
【0029】
図10は、第6の例に係る電子機器の要部断面図である。この電子機器5Fでは、導電層7および表面絶縁層8aが形成された基板8に回路要素9a,9bが実装されており、その全体がノイズ低減体1を含むカバー体10で覆われている。ノイズ低減体1は、カバー体10を形成する材質中に混合してもよいし、カバー体10の形成後にノイズ低減体1を含む液状剤を塗布してもよい。これにより、電磁ノイズの影響を受け難い電子機器5Fを実現できる。
【0030】
図11は、第7の例に係る電子機器の要部断面図である。この電子機器5Gでは、導電層7および表面絶縁層8aが形成された基板8に回路要素9a,9bが実装されており、これらの回路要素9a,9bが電磁ノイズの影響を低減するためのシールドで覆われている。ノイズ低減体1は、シールド11を形成する材質中に混合してもよいし、シールド11の形成後にノイズ低減体1を含む液状剤を塗布してもよい。これにより、シールド11のノイズ低減効果が高まり、電磁ノイズの影響を受け難い電子機器5Gを実現できる。
【0031】
本実施形態によれば、電気回路に影響を及す電磁ノイズを有効に低減することができる。典型的には、ノイズ低減体1は、電磁ノイズを発生する回路要素9aや電磁ノイズの影響を受ける回路要素9bと接触して、または、その近傍に設けられ、電磁ノイズが及す電子機器への悪影響を低減する。現時点では、結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子を主体とした特定の構造が電磁ノイズを低減する機序については定かではないものの、以下の実験結果からノイズ低減効果を奏することが実証される。
【0032】
第1の実験として、ノイズ低減体1の塗布の前後において、DC/DCコンバータの磁界放射に関する特性(出力リップルノイズ)をループアンテナで測定した。
図12は、ノイズ低減体1の塗布前後における出力リップルノイズの比較図であり、同図(a)はノイズ低減体1の塗布前、同図(b)はノイズ低減体1の塗布後の特性をそれぞれ示す。塗布前は1.252Vp-pなのに対して塗布後は0.457Vp-pであり、上下のピークの高低差が約1/3に低減する結果が得られた。このことから、ノイズ低減体1をDC/DCコンバータ(回路要素)に直接接触するように設けた場合、電磁ノイズを有効に低減できることが理解できる。
【0033】
第2の実験として、ノイズ低減体1を塗布または含浸した紙をDC/DCコンバータとループアンテナとの間(隙間)に介在させる前後において、出力リップルノイズをループアンテナで測定した。
図13は、ノイズ低減体1付き紙の介在前後における出力リップルノイズの比較図であり、同図(a)は紙の介在前、同図(b)は紙の介在後の特性をそれぞれ示す。介在前は371.25mVp-pなのに対して介在後は165.00mVp-pであり、上下のピークの高低差が1/2以上低減する結果が得られた。このことから、ノイズ低減体1をDC/DCコンバータ(回路要素)の近傍に設けた場合でも、電磁ノイズを有効に低減できることが理解できる。
【0034】
なお、上述した実施形態において、電子機器5A〜5Gとしては、受動素子として機能するデバイス、能動素子として機能するデバイス、容量素子として機能するデバイスなどが挙げられ、電気回路に伴う電線や基板など材料に使用すればノイズ低減効果を発揮する。また、ノイズ低減体1は、電磁ノイズを低減する用途で、電気機器のケース、衣類などの繊維、建築材などを含めて、様々な応用製品に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ノイズ低減体
2 クラスター型セル
3 結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子
4 アモルファスシリコン
5A〜5G 電子機器
6 プリント基板
7 導電層
8a 表面絶縁層
8b 層間絶縁膜
9a,9b 回路要素
10 カバー体
11 シールド
【要約】
【課題】結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子を用いた新規なノイズ低減体を提供する。
【解決手段】ノイズ低減体1は、電気回路に影響を及す電磁ノイズを低減する。このノイズ低減体1は、互いに独立して励起し、静電容量を有し、かつ、半導体としての特性を備えた複数のクラスター型セル2によって構成されている。それぞれのクラスター型セル2は、自発電荷を有し、かつ、アモルファスシリコン4でコーティングされた複数の結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子3が房状に結合している。クラスター型セル2の直径は15nm以上30nm以下、結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子3の直径は3nm以上8nm以下、結晶系ナノダイヤモンド半導体粒子3の活性化エネルギーレベルは0.3eV以上0.7eV以下であることが好ましい。