特許第6473567号(P6473567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473567
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/28 20060101AFI20190207BHJP
   H02K 17/14 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   H02K3/28 J
   H02K17/14
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-38785(P2014-38785)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-163028(P2015-163028A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2017年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】堺 和人
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−028957(JP,A)
【文献】 特開2013−042574(JP,A)
【文献】 特開昭64−012846(JP,A)
【文献】 特開昭53−079208(JP,A)
【文献】 特開2001−275315(JP,A)
【文献】 特開2007−259513(JP,A)
【文献】 米国特許第04403160(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0327689(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/28
H02K 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3の倍数の奇数のスロット数を有する電機子鉄心とスロット内の導体が巻かれた電機子巻線から成る電機子と、前記電機子内に配置された、外部からの磁界によって該磁界の方向に磁化される複数の永久磁石を回転子鉄心に固定した回転子とを備え、
前記電機子は、3相の相配列が各相の60°相帯に入るように前記スロット内に3相の巻線導体を順に配置して、スロット数±1及びスロット数±1+スロット数×2×n(nは正の整数)のいずれかである4以上の極数の回転磁界を形成する巻線配置とし、
前記磁界によって前記永久磁石が磁化して前記磁界に応じた磁極が前記回転子に形成され、
前記回転子の磁極と同数の前記回転磁界の磁極が同期して前記回転子が回転する永久磁石同期電動機である
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
3の倍数の偶数のスロット数を有する電機子鉄心とスロット内に導体が巻かれた電機子巻線から成る電機子と、前記電機子内に配置された、外部からの磁界によって該磁界の方向に磁化される複数の永久磁石を回転子鉄心に固定した回転子とを備え、
前記電機子は、3相の相配列が各相の60°相帯に入るように前記スロット内に3相の巻線導体を順に配置して、スロット数±2及びスロット数±2+スロット数×2×n(nは正の整数)のいずれかである4以上の極数の回転磁界を形成する巻線配置とし、
前記磁界によって前記永久磁石が磁化して前記磁界に応じた磁極が前記回転子に形成され、
前記回転子の磁極と同数の前記回転磁界の磁極が同期して前記回転子が回転する永久磁石同期電動機である
ことを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機において、より多極となるスロット数±1+スロット数×2×n(nは正の整数)の極数の時に毎相毎極当たりのスロット数を1以下にしたことを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の回転電機において、より多極となるスロット数±1+スロット数×2×n(nは正の整数)の極数の時に毎相毎極当たりのスロット数を1/2以下にしたことを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の回転電機において、外部磁界で前記永久磁石を磁化して前記回転子の極数を可変することを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の回転電機において、電機子電流で生じる磁界で前記永久磁石を磁化して前記回転子の極数を可変することを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の回転電機において、低速回転域では極数の多い多極にし、高速回転域ではより少ない極数で運転することを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の回転電機において、トルク脈動又はコギングトルクが小さいことが要求される運転領域では極数の多い多極にし、前記以外の運転領域ではより少ない極数で運転することを特徴とする回転電機。
【請求項9】
3の倍数の奇数のスロット数を有する電機子鉄心とスロット内の導体が巻かれた電機子巻線から成る電機子と、前記電機子内に配置された、回転子鉄心と前記回転子鉄心のスロットに挿入されて外部からの磁界によって該磁界と同じ極数の磁界を形成する導体とで構成された回転子とを備え、
前記電機子は、3相の相配列が各相の60°相帯に入るように前記スロット内に3相の巻線導体を順に配置して、スロット数±1及びスロット数±1+スロット数×2×n(nは正の整数)のいずれかである4以上の極数の回転磁界を形成する巻線配置とし、
前記磁界によって前記導体が前記磁界に応じた磁極を前記回転子に形成し、
前記回転子の磁極と同数の前記回転磁界の磁極が同期して前記回転子が回転する誘導機である
ことを特徴とする回転電機。
【請求項10】
3の倍数の偶数のスロット数を有する電機子鉄心とスロット内の導体が巻かれた電機子巻線から成る電機子と、前記電機子内に配置された、回転子鉄心と前記回転子鉄心のスロットに挿入されて外部からの磁界によって該磁界と同じ極数の磁界を形成する導体とで構成された回転子とを備え、
前記電機子は、3相の相配列が各相の60°相帯に入るように前記スロット内に3相の巻線導体を順に配置して、スロット数±2及びスロット数±2+スロット数×2×n(nは正の整数)のいずれかである4以上の極数の回転磁界を形成する巻線配置とし、
前記磁界によって前記導体が前記磁界に応じた磁極を前記回転子に形成し、
前記回転子の磁極と同数の前記回転磁界の磁極が同期して前記回転子が回転する誘導機である
ことを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線切替不要の極数変換回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
環境とエネルギー問題からプラグインハイブリッド車や電気自動車の実用化が急速に進められており、低消費電力量で高出力、全運転領域で高効率のモータが必要とされている。希土類元素の永久磁石は従来の数十倍の磁力を生じるため高出力で高効率のモータが得られる。そのようなモータでは、電源電圧の制限下で中〜高速回転域でモータを駆動するため、インバータ制御を用い、弱め磁束制御と言われる永久磁石の磁力(磁束)と逆方向の磁力を形成して磁力(電圧)を制御している。そして、埋め込み型永久磁石式モータ(IPMモータ)はこの制御が効果的に作用する磁気的構造を持つ永久磁石式モータである。
【0003】
しかしながら、弱め磁束制御により可変速運転すると、高速回転域では高周波電圧で駆動するために鉄損が著しく増大して効率が低下する。また、低速回転域ではトルク脈動、出力脈動、コギングトルク(無負荷時の保持トルク)が問題となる。例えば、自動車駆動用モータでは坂道発進時や徐行運転時など、風力発電機では始動時のコギングトルクや低速での発電時の出力脈動などが問題となっていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】堺和人、湯澤成彰、「巻線切り替え無し極数変換磁石モータの基礎研究」、平成25年電気学会全国大会、5−008(2013年)
【非特許文献2】松井信行編著、「省レアアース・脱レアアースモータ」、日刊工業新聞社(2013年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされたもので、高速回転域での運転には極数変換により極数を少なくすることにより鉄損を低減でき、また低速回転域での運転には極数変換により極数を多くすることによりトルク脈動や出力脈動、コギングトルクを小さくできる巻線切替不要の極数変換回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、固定子電機子鉄心のスロット数を分数スロットとし、特定の分数スロット数と回転磁界の極数で、電機子巻線の接続切替をすることもなく極数変換ができる巻線切替不要の極数変換回転電機を特徴とする。
【0007】
また本発明は、3の倍数の奇数のスロット数を有する電機子鉄心とスロット内の導体が巻かれた電機子巻線から成る電機子と、前記電機子内に配置された、外部からの磁界によって該磁界の方向に磁化される複数の永久磁石を回転子鉄心に固定した回転子とを備え、前記電機子は、3相の相配列が各相の60°相帯に入るようにスロット内に3相の巻線導体を順に配置して、スロット数±1及びスロット数±1+スロット数×2×n(nは正の整数)のいずれかである4以上の極数の回転磁界を形成する巻線配置とし、磁界によって永久磁石が磁化して磁界に応じた磁極が回転子に形成され、回転子の磁極と同数の回転磁界の磁極が同期して回転子が回転する永久磁石同期電動機である回転電機を特徴とする。
【0008】
さらに本発明は、3の倍数の偶数のスロット数を有する電機子鉄心とスロット内に導体が巻かれた電機子巻線から成る電機子と、前記電機子内に配置された、外部からの磁界によって該磁界の方向に磁化される複数の永久磁石を回転子鉄心に固定した回転子とを備え、前記電機子は、3相の相配列が各相の60°相帯に入るように前記スロット内に3相の巻線導体を順に配置して、スロット数±2及びスロット数±2+スロット数×2×n(nは正の整数)のいずれかである4以上の極数の回転磁界を形成する巻線配置とし、磁界によって永久磁石が磁化して磁界に応じた磁極が回転子に形成され、回転子の磁極と同数の回転磁界の磁極が同期して回転子が回転する永久磁石同期電動機である回転電機を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電機子巻線の接続切替をすることもなく極数変換ができ、高速回転時には極数変換により極数を少なくすることによって鉄損を低減でき、また、低速回転時にはより多くの極数に変換することによってトルク脈動や出力脈動、コギングトルクを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態の永久磁石モータの断面図。
図2】上記第1の実施の形態の永久磁石モータの巻線(コイル)配置を示す断面図。
図3】実施例1の永久磁石モータの諸元説明図。
図4】実施例1の永久磁石モータの解析に用いた巻線(コイル)配置A〜Dの説明図。
図5】実施例1の永久磁石モータの解析に用いた極数と巻線(コイル)配置との対応関係を示す説明図。
図6】実施例1の永久磁石モータの平均トルク解析結果のグラフ。
図7】実施例1の永久磁石モータのトルクリプル解析結果のグラフ。
図8】本発明の第2の実施の形態の永久磁石モータの断面図。
図9】上記第2の実施の形態の永久磁石モータの巻線(コイル)配置を示す断面図。
図10】実施例2の永久磁石モータの諸元説明図。
図11】実施例2の永久磁石モータの解析に用いた巻線(コイル)配置A〜Dの説明図。
図12】実施例2の永久磁石モータの解析に用いた極数と巻線(コイル)配置との対応関係を示す説明図。
図13】実施例2の永久磁石モータの平均トルク解析結果のグラフ。
図14】実施例2の永久磁石モータのトルクリプル解析結果のグラフ。
図15】本発明の第3の実施の形態の永久磁石モータの断面図。
図16】上記第3の実施の形態の永久磁石モータの巻線(コイル)配置を示す断面図。
図17】実施例3の永久磁石モータの諸元説明図。
図18】実施例3の永久磁石モータの解析に用いた巻線(コイル)配置A〜Eの説明図。
図19】実施例3の永久磁石モータの解析に用いた極数と巻線(コイル)配置との対応関係を示す説明図。
図20】実施例3の永久磁石モータの平均トルク解析結果のグラフ。
図21】実施例3の永久磁石モータのトルクリプル解析結果のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1に示す第1の実施の形態の極数変換回転電機は、3の倍数の奇数のスロット数を有する電機子鉄心11とスロット12内の導体が巻かれた電機子巻線13から成る固定子電機子10と、当該電機子10内に配置された永久磁石型回転子20とを備え、電機子10は、スロット数±1、スロット数±1+スロット数×2×n(nは正の整数)の複数の極数の回転磁界を形成する巻線配置とした極数変換の永久磁石モータ1である。
【0013】
ここで、図1に示す第1の実施の形態では、電機子鉄心11のスロット12の数を、3の倍数の奇数として9スロットとしている。また、巻線配置は図2に示すものであり、このような巻線配置にすることにより、8極、10極(スロット数±1)、26極、28極(n=1で、スロット数±1+スロット数×2)、44極、46極(n=2で、スロット数±1+スロット数×4)に対して3相の相配列が各相の60°相帯に入るように3相の巻線導体13U,13W,13Vをこの相順に配置している。
【0014】
上記の回転子20は大きな外部磁界を瞬間的に受けることによりその外部磁界を受けた部分が磁界の方向に不可逆的に磁化される低保磁力の永久磁石21を、回転子鉄心22の表面に固定した表面磁石型の構成である。
【0015】
このような構成の永久磁石モータ1では、電機子巻線12に瞬間的なパルス電流を通電し、電流で生じる磁界で永久磁石21を磁化させ、磁界に応じた磁極を形成する。
【0016】
これにより、この永久磁石モータ1は、永久磁石21の磁極と同数の回転磁界の磁極が同期して回転し、出力を発生することができる。このとき、極数変換するときの周波数と極数で決まる回転磁界と近い回転数で同期して駆動する。または、以下の様に構成すると確実にその極数で磁化されて極数変換して駆動できる。極数変換の極数の多い多極とより極数の少ない少極において、少極の極数と同一の個数の保磁力の大きな永久磁石(前記電機子電流が形成する磁界によって永久磁石の磁化が変化しない程度の保磁力を有する永久磁石であり、ここでは固定磁力磁石と称す)を回転子に等配に配置し、その間には低保磁力の永久磁石(電機子電流が形成する磁界によって永久磁石の磁化が変化する程度の保磁力の可変磁力磁石)を配置する。8極にする場合は8極のd軸方向を基準として、変換前が26極であれば26極の逆位相になる角度だけ位相をシフトした角度に8極のd軸磁界を形成するように磁化するための電機子電流を通電する。これにより回転子20に8極の磁極が形成できる。逆に8極から26極に変化させる場合は、8極とは逆位相の磁界を形成する電機子電流の位相を基準にして26極と同相になる位相だけさらにシフトした位置に磁界を形成するように電機子電流の位相を決定してインバータから電機子電流を流して回転子の磁石を磁化させる。変化するのは可変磁力磁石のみなので、回転子に26極がほぼ形成できる。
【0017】
尚、このような表面永久磁石型に代えて、上記の低保磁力の永久磁石21を回転子鉄心22内に埋め込んで構成した埋め込み永久磁石型を採用することもできる。また、上記実施の形態で用いている固定子電機子10を誘導機に適用する場合、上記構成の永久磁石型回転子20に代えて、回転子鉄心と回転子鉄心のスロットに銅バーを挿入して構成される回転子を使用することにより磁極可変回転電機を構成できる。誘導機の極数変換は、極数変換するときの周波数と極数で決まる回転磁界に近いすべりが小さくなる回転数で動作しようとする。したがって、任意の回転数に対して、前記の様な小さなすべりの動作点になるように周波数を決定すると自動的に極数変換できる。
【実施例1】
【0018】
図3の諸元の表面磁石型モータについて、2極〜48極の各極数の得られる巻線配置を求めた。図4にその巻線配置A〜Dを示し、図5に各極数とその極数が得られる巻線配置との対応を示す。この各極数の表面磁石型モータについて、基本特性の磁界解析を行った。
【0019】
18極と36極は三相モータとして構成が不可能であった。その他の極数について、多極になるにつれ第5、第7高調波の減少が認められた。図6に平均トルク、図7にトルクリプルを示す。平均トルクが大きい極数は8極、10極であり、トルクリプル(脈動成分)が小さい極数は26極、28極である。そして、発生トルクが大きく、かつトルクリプルが小さい極数は8極、10極、26極、28極、44極、46極である。これらの極数はみな巻線配置Dである。このことから配置Dは平均トルク、トルクリプルの特性が良いことがわかった。尚、6極と12極はトルクは大きいが、トルクリプルも大きいのでモータとしての特性はよくない。
【0020】
このように、2極から48極において同一の巻線配置で運転が可能な極数の組み合わせが複数確認された。この結果より、巻線切替無しで極数を変換できる永久磁石モータの可能性が確認された。また、極数変換によりトルクリプルを大幅に低減できることがわかった。
【0021】
[第2の実施の形態]
図8に、第2の実施の形態の極数変換回転電機を示す。本実施の形態の極数変換回転電機は、3の倍数の偶数のスロット数を有する電機子鉄心11とスロット12内に導体が巻かれた電機子巻線13から成る電機子10と、電機子10内に配置された永久磁石型回転子20とを備え、電機子10は、スロット数±2、スロット数±2+スロット数×2×n(nは正の整数)の複数の極数の回転磁界を形成する巻線配置とした永久磁石モータ1Aである。
【0022】
本実施の形態の場合、電機子鉄心11のスロット12の数は3の倍数の偶数のスロット数で12スロットとしている。また、巻線配置は図9に示すものであり、このような巻線配置にすることにより、10極、14極(スロット数±2)、34極、38極(n=2で、スロット数±2+スロット数×2)に対して3相の相配列が各相の60°相帯に入るように3相の巻線導体13U,13W,13Vをこの相順に配置している。
【0023】
上記の回転子20も、大きな外部磁界を瞬間的に受けることによりその外部磁界を受けた部分が磁界の方向に不可逆的に磁化される低保磁力の永久磁石21を、回転子鉄心22の表面に固定した表面磁石型の構成である。
【0024】
このような構成の永久磁石モータ1Aでも第1の実施の形態と同様、電機子巻線12に瞬間的なパルス電流を通電し、電流で生じる磁界で永久磁石21を磁化させ、磁界に応じた磁極を形成する。
【0025】
これにより、この永久磁石モータ1は、永久磁石21の磁極と同数の回転磁界の磁極が同期して回転し、出力を発生することができる。
【0026】
尚、本実施の形態にあっても、第1の実施の形態と同様、このような表面永久磁石型に代えて、上記の低保磁力の永久磁石21を回転子鉄心22内に埋め込んで構成した埋め込み永久磁石型を採用することもできる。また、本実施の形態で用いている固定子電機子10を誘導機に適用する場合、上記構成の永久磁石型回転子20に代えて、回転子鉄心と回転子鉄心のスロットに銅バーを挿入して構成される回転子を使用することにより磁極可変回転電機を構成できる。
【実施例2】
【0027】
図10の諸元の表面磁石型モータについて、2極〜48極の各極数の得られる巻線配置を求めた。図11にその巻線配置A〜Dを示し、図12に各極数とその極数が得られる巻線配置との対応を示す。
【0028】
この各極数の表面磁石型モータについて、基本特性の磁界解析を行った。6極とその倍数極の極数は三相モータとして構成が不可能であった。図13に平均トルク、図14にトルクリプルを示す。平均トルクが大きい極数は10極、14極、16極であり、トルクリプルが小さい極数は34極、38極である。これらのうち、10極、14極、34極、38極の極数はみな巻線配置Dである。このことから配置Dは平均トルク、トルクリプルの特性が良いことがわかった。尚、16極はトルクは大きいが、トルクリプルも大きいのでモータとしての特性はよくない。
【0029】
このように、実施例2によっても、2極から48極において同一の巻線配置で運転が可能な極数の組み合わせが複数確認された。この結果より、巻線切替無しで極数を変換できる永久磁石モータの可能性が確認された。また、極数変換によりトルクリプルを大幅に低減できることがわかった。
【0030】
[第3の実施の形態]
図15に、第3の実施の形態の極数変換回転電機を示す。本実施の形態の極数変換回転電機は、3の倍数の奇数のスロット数を有する電機子鉄心11とスロット12内に導体が巻かれた電機子巻線13から成る電機子10と、電機子10内に配置された永久磁石型回転子20とを備え、電機子10は、スロット数±1、スロット数±1+スロット数×2×n(nは正の整数)の複数の極数の回転磁界を形成する巻線配置としたもう一つの永久磁石モータ1Bである。
【0031】
ここで、図15の実施の形態では、電機子鉄心11のスロット12の数を、3の倍数の奇数として15スロットとしている。また、巻線配置は図16に示すものであり、このような巻線配置にすることにより、14極、16極(スロット数±1)、44極、46極(n=1で、スロット数±1+スロット数×2)に対して3相の相配列が各相の60°相帯に入るように3相の巻線導体13U,13W,13Vをこの相順に配置している。
【0032】
上記の回転子20は大きな外部磁界を瞬間的に受けることによりその外部磁界を受けた部分が磁界の方向に不可逆的に磁化される低保磁力の永久磁石21を、回転子鉄心22の表面に固定した表面磁石型の構成である。
【0033】
このような構成の永久磁石モータ1Bでは、電機子巻線12に瞬間的なパルス電流を通電し、電流で生じる磁界で永久磁石21を磁化させ、磁界に応じた磁極を形成する。
【0034】
これにより、この永久磁石モータ1Bは、永久磁石21の磁極と同数の回転磁界の磁極が同期して回転し、出力を発生することができる。
【0035】
尚、このような表面永久磁石型に代えて、上記の低保磁力の永久磁石21を回転子鉄心22内に埋め込んで構成した埋め込み永久磁石型を採用することもできる。また、上記実施の形態で用いている固定子電機子10を誘導機に適用する場合、上記構成の永久磁石型回転子20に代えて、回転子鉄心と回転子鉄心のスロットに銅バーを挿入して構成される回転子を使用することにより磁極可変回転電機を構成できる。
【実施例3】
【0036】
図17の諸元の表面磁石型モータについて、2極〜48極の各極数の得られる巻線配置を求めた。図18にその巻線配置A〜Eを示し、図19に各極数とその極数が得られる巻線配置との対応を示す。この各極数の表面磁石型モータについて、基本特性の磁界解析を行った。6極とその倍数極の極数は三相モータとして構成が不可能であった。
【0037】
図20に平均トルク、図21にトルクリプルを示す。平均トルクが大きい極数は14極、16極であり、トルクリプルが小さい極数は44極、46極である。これらの極数はみな巻線配置Eである。このことから巻線配置Eは平均トルク、トルクリプルの特性が良いことがわかった。尚、10極と20極はトルクは大きいが、トルクリプルも大きいのでモータとしての特性はよくない。
【0038】
このように、2極から48極において同一の巻線配置で運転が可能な極数の組み合わせが複数確認された。この結果より、巻線切替無しで極数を変換できる永久磁石モータの可能性が確認された。また、極数変換によりトルクリプルを大幅に低減できることがわかった。
【0039】
本発明の極数変換において、少極と多極の極数を比較すると、多極はスロット数の2の倍数だけ少極よりも極数が大きくなる。したがって、極数変換における少極と多極の極数比をスロット数で調整できる。極数変換比を小さくしたければ、毎相毎極当たりのスロット数を1/2以下にし、極数変換比を大きくしたければ1以下にする。尚、毎相毎極当たりのスロット数が1以上では、本発明の毎相毎極当たりのスロット数(分数溝)の帯分数の整数部分が1以上になるだけであり、整数部分を除いた分数部分(真分数)が本発明と同様になり、この真分数の部分で評価すればよい。
【0040】
以上により、本発明によれば、3の倍数の奇数のスロット数を有する電機子鉄心とスロット内の導体が巻かれた電機子巻線から成る電機子と、電機子内に配置された回転子とを備え、電機子は、スロット数±1、スロット数±1+スロット数×2×n(nは正の整数)の複数の極数の回転磁界を形成する巻線配置とした極数変換回転電機、また3の倍数の偶数のスロット数を有する電機子鉄心とスロット内に導体が巻かれた電機子巻線から成る電機子と、前記電機子内に配置された回転子とを備え、電機子は、スロット数±2、スロット数±2+スロット数×2×n(nは正の整数)の複数の極数の回転磁界を形成する巻線配置とした極数変換回転電機については、巻線切替無しで極数を変換できる大小の極数の組み合わせで、平均トルクが大きくできる小さい極数とトルクリプルが小さくできる大きい極数との組み合わせができ、必要なトルクの出力ができ、しかも極数変換によりトルクリプルを大幅に低減できる極数変換回転電機が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の極数変換回転電機は、交通システムとしてハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道に利用でき、エネルギーシステムとして風力発電や海流発電に利用でき、さらに社会システムとしてエレベータやエアコン等家電機器に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1,1A,1B 永久磁石モータ
10 電機子
11 電機子鉄心
12 スロット
13 巻線
20 回転子
21 永久磁石
22 回転子鉄心
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