【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、土地の有効活用のため、機械式駐車場が普及している。この機械式駐車場は、ビルの一部や地下などに設けられている。そのため、
図10に示すように、公衆電話回線での無線通信ができない領域(以下、「電波圏外」、「圏外」と記す)に車両が収納されることがある。
この場合、その機械式駐車場にシェアカーが存在する時間帯には、
図6に示した「カーシェアリング管理サーバと車載機との無線通信」が途絶えることとなる。
【0019】
図7から
図9において、更に具体的な場面にて説明する。
まず、
図7に示したように、会員ユーザがカーシェアリングの予約を完了した後、予約完了を該当するシェアカーの車載機へ通信しておくことができない。したがって、該当車両のロック解除の条件を、シェアカーの車載機が把握できない。
続いて、
図8に示したように、会員ユーザがシェアカーの利用を開始し始めた時刻を、カーシェアリング管理サーバが把握できない。そのため、シェアカーの会員ユーザによる利用開始時刻を決定できず、利用料金の算出に窮することとなる。
更に、
図9に示したように、会員ユーザがシェアカーの利用を終了した際も、シェアカーの利用終了の時刻が決定できない。そのため、シェアカーの利用料金の算出に窮することとなる。
【0020】
公衆無線回線が届かない駐車スペースとして機械式駐車場を例にとって説明したが、公衆無線回線が届かない駐車スペースが一時的に発生した際には、前述した問題が生じるため、カーシェアリングのサービス提供に支障が出ることとなる。
中継器などを設置することによって独自の無線回線を確保する、という手法も、あまり合理的では無い。機械式駐車場を例にすると、駐車場内部の構造が複雑で有り、その複雑さにも対応した電波状況を確保することは容易ではない。
【0021】
本発明が解決しようとする課題は、カーシェアリングのサービスを提供するための車両が、公衆電話回線による無線通信が確保できない環境に保管されていても、カーシェアリングのサービスを円滑に運用するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前述した解決しようとする課題のうち、本願では、カーシェアリングのサービスを提供するための車両が公衆電話回線による無線通信が確保できない環境へ返却する場合であっても、カーシェアリングを円滑に開始できる技術を提供する。
【0023】
(第一の発明)
第一の発明は、車両共有サービスに用いるサービス対象車両に搭載されるデータ処理装置に係る。
当該サービス対象車両を管理する車両管理サーバとデータを送受信する車載機と、 当該サービス対象車両の位置を把握するためのGPS(Global Position System)と、 当該車両共有サービスを利用する利用者が保有するICカードとの短距離通信によって
当該サービス対象車両の施錠解錠を実行する車両解錠センサと、を備える。
前記の車載機は、
前記の車両管理データベースから予約データを受信するとともに、公衆電話回線による無線通信を確保している場合に定期的に車両管理サーバと通信して前記のGPSにて把握した当該サービス対象車両の位置データを送信する。
前記の車両解錠センサは、
前記のGPSにて把握した当該サービス対象車両の位置データが無線通信の確保できなくなる場所へ近づいたら、施錠が可能である状態とする。
【0024】
(用語説明)
「車両共有サービス」とは、カーシェアリングを管理運営するサービス、およびカーレンタルサービスの両方を指すものとする。
「サービス対象車両」とは、カーシェアリングであれば「シェアカー」、カーレンタルサービスであれば「レンタルされる車両(レンタカー)」を指すものとする。
「利用者」は、カーシェアリングの場合には、予め会員登録をした会員ユーザであることが一般的である。
「サービス対象車両が公衆電話回線による無線通信が確保できない環境に保管されている場合」とは、代表的には、サービス対象車両が電波の届かない機械式駐車場へ格納されている場合である。
【0025】
サービス対象車両の車載機は、公衆電話回線による無線通信を確保している場合においては、定期的に車両管理サーバと通信し、
サービス対象車両のGPSにて把握した当該サービス対象車両の位置データを送信する。
前記の車両解錠センサは、前記の車載機が公衆電話回線による無線通信が確保できなくなった場合に施錠が可能である状態とする。
サービス対象車両の利用者は、前記の車載機が公衆電話回線による無線通信が確保できなくなった場合、すなわち、公衆電話回線による無線通信を確保できない駐車場へサービス対象車両を返却する際にも、施錠することができる。
【0026】
(第二の発明)
第二の発明は、 車両共有サービスに用いるサービス対象車両およびそのサービス対象車両を利用する利用者を管理する車両管理サーバに係る。
すなわち、 前記のサービス対象車両に関する管理データを格納する車両管理データベースと、 利用者の利用料金に関するデータを格納する会員データベースと、 サービス対象車両を管理するための管理用データを受信するデータ受信手段と、 当該サービス対象車両が公衆電話回線による無線通信を確保できなくなった直前に受信した管理用データに基づいて返却時刻を推定する返却時刻推定手段と、を備えた車両管理サーバである。
【0027】
(作用)
サービス対象車両に関する管理データを車両管理データベースへ格納し、 利用者の利用料金に関するデータを会員データベースへ格納する。
サービス対象車両を管理するための管理用データをデータ受信手段が受信する。そして、サービス対象車両が公衆電話回線による無線通信を確保できなくなった直前に受信した管理用データに基づいて、返却時刻推定手段が返却時刻を推定する。
サービス対象車両を利用者が返却したか否か、およびその返却時刻がいつか、という点について、無線通信を確保できなくなった直前に受信した管理用データを使うことで推定可能となる。
【0028】
(第二の発明のバリエーション1)
第二の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、 前記のデータ受信手段が受信する管理用データには、当該サービス対象車両が公衆電話回線による無線通信を確保している場合に定期的に車両管理サーバと通信して当該車両の位置データを含むこととする。そして、 前記の車両管理データベースは、前記の位置データを格納することとする。
【0029】
(作用)
当該サービス対象車両が公衆電話回線による無線通信を確保している場合に定期的に車両管理サーバと通信して当該車両の位置データを含んでいる。したがって、車両管理サーバは、サービス対象車両の場所を把握することができる。
【0030】
(第二の発明のバリエーション2)
第二の発明における前述のバリエーション1は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の返却時刻推定手段は、前記の位置データに基づいて、サービス対象車両が公衆電話回線による無線通信を確保できなくなる区域へ近づいているか否かを判断する。
前記のデータ受信手段は、サービス対象車両が公衆電話回線による無線通信を確保できなくなる区域へ近づいた場合には、管理用データの受信頻度を上げることとする。
【0031】
(作用)
返却時刻推定手段は、サービス対象車両から送信されてくる管理用データにおける位置データに基づいて、サービス対象車両が公衆電話回線による無線通信を確保できなくなる区域へ近づいているか否かを判断する。
サービス対象車両が公衆電話回線による無線通信を確保できなくなる区域へ近づいた場合には、データ受信手段が管理用データの受信頻度を上げる。それによって、返却時刻の推定において、誤差が小さくなる。
【0032】
(第二の発明のバリエーション3)
第二の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の返却時刻推定手段が推定した推定返却時刻に基づいて利用者の利用料金を算出する料金算出手段を備えるとともに、 前記の会員データベースは、その料金算出手段が算出した利用料金を格納することとしてもよい。
【0033】
(作用)
返却時刻推定手段が推定した推定返却時刻に基づいて、料金算出手段が利用者の利用料金を算出する。会員データベースは、その料金算出手段が算出した利用料金を格納する。
【0034】
(第三の発明)
第三の発明は、車両共有サービスに用いるサービス対象車両に搭載されるデータ処理装置を制御するコンピュータプログラムに係る。
前記のデータ処理装置は、当該サービス対象車両を管理する車両管理サーバとデータを送受信する車載機と、
当該サービス対象車両の位置を把握するためのGPSと、 当該車両共有サービスを利用する利用者が保有するICカードとの短距離通信によって
当該サービス対象車両の施錠解錠を実行する車両解錠センサと、を備えている。
前記のコンピュータプログラムは、
前記の車両管理データベースから予約データを受信する予約データ受信手順と、 前記の車載機に対して、公衆電話回線による無線通信を確保している場合に定期的に車両管理サーバと通信して
当該サービス対象車両の位置データを送信させる位置データ送信手順と、 前記の車両解錠センサに対して、
前記のGPSにて把握した当該サービス対象車両の位置データが無線通信の確保できなくなる場所へ近づいた場合に、前記の車載機が公衆電話回線による無線通信が確保できなくなった場合に施錠が可能である状態とする施錠可能化手順、を実行させることとしたコンピュータプログラムである。
【0035】
(第四の発明)
第四の発明は、車両共有サービスに用いるサービス対象車両およびそのサービス対象車両を利用する利用者を管理する車両管理サーバを制御するコンピュータプログラムに係る。
前記の車両管理サーバには、 前記のサービス対象車両に関する管理データを格納する車両管理データベースと、 利用者の利用料金に関するデータを格納する会員データベースと、を備えている。
前記のコンピュータプログラムは、サービス対象車両を管理するための管理用データを受信するデータ受信手順と、 当該サービス対象車両が公衆電話回線による無線通信を確保できなくなった直前に受信した管理用データに基づいて返却時刻を推定する返却時刻推定手順と、を実行させることとした。
【0036】
(第四の発明のバリエーション1)
第四の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記のデータ受信手段が受信する管理用データには、当該サービス対象車両が公衆電話回線による無線通信を確保している場合に定期的に車両管理サーバと通信して当該車両の位置データを含むことする。
そして、前記の車両管理データベースへ前記の位置データを格納する位置データ格納手順と、 前記の位置データに基づいて、サービス対象車両が公衆電話回線による無線通信を確保できなくなる区域へ近づいているか否かを判断する圏外近接判断手順と、 サービス対象車両が公衆電話回線による無線通信を確保できなくなる区域へ近づいた場合には、管理用データの受信頻度を上げる受信頻度向上手順と、を実行させることとする。
【0037】
(第四の発明のバリエーション2)
第四の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、 前記の返却時刻推定手順にて推定した推定返却時刻に基づいて利用者の利用料金を算出する料金算出手順と、 その料金算出手順にて算出した利用料金を前記の会員データベースへ格納する利用料金格納手順と、
を実行させることとする。
【0038】
第三および第四の発明に係るコンピュータプログラムを、記録媒体へ記憶させて提供することもできる。
ここで、「記録媒体」とは、それ自身では空間を占有し得ないプログラムを担持することができる媒体である。例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−R、CD−RW、MO(光磁気ディスク)、DVD−R、DVD−RW、フラッシュメモリなどである。
また、この発明に係るプログラムを格納したコンピュータから、通信回線を通じて他の端末手段へ伝送することも可能である。