特許第6473614号(P6473614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473614
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】自動結束機
(51)【国際特許分類】
   B65B 13/22 20060101AFI20190207BHJP
   B65B 13/18 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   B65B13/22 Z
   B65B13/18 A
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-255298(P2014-255298)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-113197(P2016-113197A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107697
【氏名又は名称】ストラパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100081695
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 正明
(74)【代理人】
【識別番号】100103414
【弁理士】
【氏名又は名称】戸村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】小松 仁
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−048115(JP,A)
【文献】 特開平11−035007(JP,A)
【文献】 特開平05−193607(JP,A)
【文献】 特開2001−122523(JP,A)
【文献】 特開2000−296807(JP,A)
【文献】 実公昭49−008710(JP,Y1)
【文献】 米国特許第05916108(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 13/22
B65B 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空シャフトと,該中空シャフトと共に回転して先端部が所定の回転軌道上を移動する回転アームとを備えた紐巻付手段と,紐が巻かれたボビンを回転可能に軸支するボビン台を備え,前記紐巻付手段に対し前記ボビンより引き出した紐を供給する紐供給手段を備え,前記ボビンより引き出した紐を,前記回転アームの先端部に通した後,所定位置に設けた紐係止ボタンに係止した状態で前記紐巻付手段を回転させることにより,前記回転アームの前記先端部の回転軌道の内側に配置された被結束物に対し前記紐を巻回可能とした自動結束機において,
前記紐供給手段が,
前記ボビンから前記紐巻付手段に至る迄のいずれかの位置にある紐が通されるガイドを備え,所定の第1揺動位置と第2揺動位置間を揺動すると共に,前記第1揺動位置から第2揺動位置に揺動する際に前記ボビンから紐を引き出し,前記第2揺動位置から第1揺動位置に揺動する際に引き出した紐を送り出す揺動アームと,
前記揺動アームと係合して,前記揺動アームを前記第1揺動位置から第2揺動位置に揺動させる揺動アーム駆動手段を備え,
前記揺動アームを,前記揺動アーム駆動手段との係合が解除されているとき前記第1揺動位置に自動で復帰するよう構成すると共に,
前記揺動アーム駆動手段を,前記紐巻付手段が1の結束作業のための回転を終了して原位置で待機した状態にあるときに前記揺動アームと係合して前記揺動アームを前記第1揺動位置から第2揺動位置に揺動させて前記ボビンから紐を引き出した状態で,前記第2揺動位置停止して待機するよう構成すると共に,前記紐巻付手段が次の結束作業のための回転を開始すると同時に,前記第2揺動位置にある前記揺動アームとの係合を解除して前記紐巻付手段に紐を送り出すよう構成したことを特徴とする自動結束機。
【請求項2】
前記揺動アームが前記第2揺動位置から第1揺動位置へ自動で復帰することにより送り出される紐の送り出し速度を,前記紐巻付手段による紐の引き込み速度に対し,わずかに速くしたことを特徴とする請求項1記載の自動結束機。
【請求項3】
前記ボビン台が,
前記ボビンの中心に挿入されて前記ボビンと共に回転するボビンシャフトと,
前記ボビン外に突出した前記ボビンシャフトの一端を回転可能に軸支した支持台と,
前記ボビンシャフトに回転抵抗を与えるブレーキ手段を備え,
前記ブレーキ手段が,
前記ボビンシャフトの外周に近接及び離間する方向に揺動可能に設けられたシューブラケットと,
前記シューブラケットの前記ボビンシャフトとの接触面に取り付けられたブレーキシューと,
前記シューブラケットを,前記ボビンシャフトの外周に向けて付勢すると共に圧接させる付勢手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の自動結束機。
【請求項4】
前記ボビンシャフトの前記一端側にフランジを設けると共に,該フランジの前記ボビンと接触する側の面に,ボビン内に嵌合される位置決め用の突起を設けたことを特徴とする請求項3記載の自動結束機。
【請求項5】
前記ブレーキシューを皮革製としたことを特徴とする請求項3又は4記載の自動結束機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動結束機に関し,より詳細には,被結束物に紐を巻回した後,結び,切断する迄の工程を自動で行う自動結束機において,ボビンに巻かれた状態にある紐を引き出して被結束物に対し紐の巻付けを行う紐巻付手段に対し供給する構成を備えた自動結束機に関する。
【0002】
なお,本発明において,「結束」の語は,複数の被結束物を束ねた状態に紐で結ぶことの他,単一の被結束物に紐を掛けて結ぶことも含む。
【背景技術】
【0003】
被結束物に対する紐の巻回と,この紐を結び,切断する迄の一連の工程を自動で行う自動結束機,例えば,花(野菜)等の結束機は,被結束物を束ねた状態で結束する作業等に広く使用されている。
【0004】
この自動結束機100は,被結束物Wの回りを周回するL字状の回転アーム122を備えた紐巻付手段120を備えており,回転アーム122の先端部に設けたガイド129に通した紐105の先端を紐係止ボタン107に係止した状態で紐巻付手段120を回転させることで,被結束物Wに対して紐105を巻回することができるように構成されている。
【0005】
このような紐巻付手段120を備えた自動結束機100の構成例を,図8(特許文献1の図1)を参照して説明する。
【0006】
図8に示す自動結束機100は,所定の間隙Gを介して配置された2つのテーブル111,112と,前記テーブル111,112の下方で紐の先端を係止する紐係止ボタン107と,前記紐係止ボタン107に先端が係止された紐105が取り付けられた紐巻付手段120を備え,図示せざるモータによってこの紐巻付手段120を回転させて,2つのテーブル111,112間に跨って載置された被結束物Wの外周を紐巻付手段120に設けた回転アーム122の先端部に周回させることで,テーブル111,112間の間隙Gを通過した紐105によって被結束物Wの外周を巻回することができるよう構成されている。
【0007】
前述の紐巻付手段120は,回転軸である中空シャフト121と,この中空シャフト121に取り付けられた回転アーム122及びテンションアーム123によって構成されており,中空シャフト121の一端より挿入した紐105を,中空シャフト121の他端寄りの側面に形成した取出孔124より取り出すと共に,取出孔124より取り出した紐を回転アーム122に設けたガイド126,127に通した後,回転アーム122より先端部が離れる方向にコイルスプリング123aで付勢されたテンションアーム123の先端に設けたガイド125に通し,その後,再度,回転アームに設けたガイド128,129に通して回転アーム122の先端部を経由させ,更に,前述した紐係止ボタン107に係止することで紐の取り付けが行われている。
【0008】
そして,被結束物Wに対する紐の巻回,結び,切断時において,紐105を所定のテンションがかかった状態に維持することができるよう,図8に示す自動結束機100では,ロール状に巻かれた状態から引き出された紐を,ブレーキ手段170に設けた板バネで挟持して長手方向に対する紐105の移動に対し抵抗を与えると共に,前述のテンションアーム123によって回転アーム122より離間する方向に紐を引き出しており,これによりブレーキ手段170で与えた抵抗と,テンションアーム123に設けたコイルスプリング123aの付勢力とのバランスによって,ブレーキ手段170と紐係止ボタン107間の紐105に所定のテンションが付加されている。
【0009】
なお,図8を参照して説明した自動結束機100では,中空シャフト121に導入される紐に,ブレーキ手段170によって比較的大きな抵抗が付加されているため,ブレーキ手段170と紐係止ボタン107間の紐にかかるテンションが大きなものとなる。
【0010】
これに対し,紐にかかるテンションを減少させると共に安定させるために,中空シャフト121に対し,ボビン141に巻かれた紐を引き出して供給する紐供給手段130を備えた自動結束機100も提案されている。
【0011】
このような自動結束機100の一例として,図9に示す自動結束機100に設けられている紐供給手段130は,ボビン141より引き出した紐105を掛け渡すドライブローラ132,固定ガイド133,及び上下に昇降移動する可動ガイド134を備え,可動ガイド134に通した後の紐を,前述した紐巻付手段120の中空シャフト121に連通する挿入孔131に導入するように構成されている(特許文献2の図2参照)。
【0012】
図9に示した紐供給手段130では,ドライブローラ132を常時回転させた状態とすることで,紐巻付手段120が作動しておらず,従って,挿入孔131を介した紐105の引き込みが行われていない状態では可動ガイド134が自重によって最下降位置に下降した状態にあり,ドライブローラ132に掛け渡された紐が弛んだ状態となることで,ドライブローラ132の外周に紐が接触していない,あるいは接触抵抗が低い状態となりドライブローラ132によるボビン141からの紐105の引き出しが停止した状態にある。
【0013】
一方,紐巻付手段120によって被結束物に対し紐の巻き付けが開始され,挿入孔131を介した紐105の引き込みが始まると,可動ガイド134が吊り上げられて上昇し,可動ガイド134の重みによって紐105にテンションがかかることで,紐105がドライブローラ132の外周に圧接されてボビン141からの紐105の引き出しが開始され,挿入孔131を介した紐の引込量に対応した長さの紐がドライブローラ132によってボビン141より引き出されるように構成されている。
【0014】
このように,図9を参照して説明した特許文献2に記載の自動結束機100の構成では,挿入孔131に引き込まれる紐105には,吊り下げた可動ガイド134の重量に応じた抵抗が加わるものの,ボビン141の回転抵抗が加わらないようになっているため,可動ガイド134と紐係止ボタン107間における紐のテンションの減少と,ボビン141の巻糸量等の変化によって紐105にかかるテンションが変化することが防止されている。
【0015】
なお,前述した自動結束機100では,一般に結束に使用する紐として,PE製等の比較的高強度の紐を使用すると共に,紐に対し,比較的高いテンションを掛けた状態で被結束物の外周に紐を巻き付ける構成を採用している。
【0016】
これに対し,食品加工の分野において,例えば,ロールキャベツや昆布巻き等の巻物系の煮物料理において,外側に巻かれているキャベツや昆布が調理中にほどけて中の具材が飛び出してしまうことを防止するために,具材を収納したキャベツや昆布を巻いた後,更にその外周に,かんぴょう等の可食性紐を巻回して結び付けることが行われている。
【0017】
この可食性紐による食品の結束作業は,現在,人による手作業で行われているが,人件費高騰の折,このように可食性紐の巻き付け作業の機械化が要望されており,このような加工食品に対する使用を目的として,機械強度が高く,煮込んでも伸びない可食性の紐として,こんにゃくを主成分とするゲルの乾燥物からなる紐も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特許第3445613号公報
【特許文献2】特開2001−48115号公報
【特許文献3】特開2001−186856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
以上で説明したように,自動結束機は,一般にPE紐等の比較的高強度の紐を使用して,比較的高いテンションを掛けた状態で被結束物の結束を行うことを予定したものであることから,このような自動結束機によって低強度の紐を使用して結束を行おうとすると,作業中に紐切れが生じてしまい結束を行うことができない。
【0020】
前述した巻物系の煮物料理に使用する可食性紐として,特許文献3として紹介したように,結束の機械化を目的として機械的強度を高める研究も進められており,高強度化に関し一定の成果は得られている。
【0021】
しかし,可食性紐は,食べることができる(噛み切れる)ものでなければならないから,如何に高強度であるとはいっても高強度化には限界があり,事実,特許文献3の出願人が市販している可食性紐(ナカキ食品株式会社製「グルコン紐」)を入手して測定したところ,引張強度は13〜25N,平均20N(約2kgf)程度で,一般に150N(約15kgf)以上の引張強度を有するPE紐等と比較した場合,その強度は大幅に低いことから,依然として既存の自動結束機での結束に耐え得る強度を備えていない。
【0022】
仮に,可食性紐としてより機械的強度の高いものが開発されたとしても,既存の自動結束機で紐に付加されている比較的高いテンションで被結束物を巻回すると,食品等の脆弱な被結束物を対象とした結束では,巻回時に紐が被結束物に食い込んで被結束物を変形させ,あるいは被結束物を切断してしまう等,被結束物にダメージを与えるおそれもあり,この点からも加工食品等の脆弱な被結束物に対する自動結束機の利用には制約がある。
【0023】
このような問題を解消するためには,被結束物の結束時に紐にかかるテンションを微弱なものとすることが必要で,前述した可食性紐の使用を想定する場合,紐にかかるテンションを20N(約2kgf)以下,より確実には10N(約1kgf)以下という極めて微弱な範囲に抑える必要がある。
【0024】
紐にかかるテンションをこのような微弱なものにしようとすれば,図8を参照して説明した装置構成からブレーキ手段170を除去する等して,紐巻付手段120の中空シャフト121に引き込まれる紐に対し与えていた抵抗を解除することが考えられる。
【0025】
しかし,単純にブレーキ手段170によって紐105に与えていた抵抗を解除してしまうと,紐105に余分な弛みや遊びが生じるため,被結束物Wに対する紐の巻き付け作業中に遊んでいる紐が暴れる等して自動結束機の構成部品との接触や干渉,巻き込み等が生じて紐の円滑な供給が阻害されるおそれがある。
【0026】
紐105に余分な弛みや遊びが生じることを防止するために,例えば紐を巻き付けたボビンを回転可能に軸支して,紐巻付手段120の回転に伴って中空シャフト121に引き込まれる長さ分の紐がボビンより引き出されるようにすることも考えられるが,この構成では,中空シャフト121内に引き込まれる紐にはボビンの回転抵抗が加わるため,抵抗を与えることなく紐を供給することはできない。
【0027】
しかも,この構成では,中空シャフト121に対する紐の引き込みが停止した後にもボビンが慣性によって回転を継続して本来の停止位置よりも余分に回転するオーバーランを起こすことで,必要以上に紐が繰り出されて紐に余分な弛みや遊びが生じることも防止できず,このようなオーバーランを防止するために,ボビンの回転にブレーキを掛ければ,更に中空シャフト121に導入される紐には大きな抵抗が加わることとなる。
【0028】
しかも,ボビンから引き出した紐を直接,中空シャフト121に導入する構成では,ボビンに巻かれた紐の残量変化に伴いロール径が変化すると,ボビンから紐を引き出すために必要な力も変化し,中空シャフト121に導入される紐105に加わる抵抗が一定しないという問題も生じる。
【0029】
これに対し,特許文献2として紹介した紐供給手段130を備えた自動結束機100では,ボビン141から挿入孔131に至る紐に余分な弛みや遊びが生じない構成となっており,紐105が暴れる等して供給不良が発生することを防止できるものとなっている。
【0030】
また,特許文献2に記載の紐供給手段130では,ボビン141からの紐105の引き出しをドライブローラ132によって行う一方,挿入孔131(中空シャフト121)に引き込まれる紐に対する抵抗の付与を,可動ガイド134の吊り下げにより行っていることから,中空シャフト121に供給される紐に対し,ボビン141の回転抵抗が及ばないようになっており,これにより可動ガイド134と紐係止ボタン107間の紐のテンションを低下させることができると共に,ボビン131に巻かれた紐の残量によって紐105のテンションが変化するという問題も解消される。
【0031】
しかし,特許文献2に記載の紐供給手段130を備えた自動結束機100では,挿入孔131に引き込まれる紐105によって可動ガイド134を吊り下げる構成を採用しているため,挿入孔131に導入される紐には,依然として可動ガイド134の重量に応じた抵抗が加わっているため,紐に加わる抵抗を減少させることができたとしても,抵抗を与えずに挿入孔131に導入できる構成とはなっていない。
【0032】
以上で説明したように,紐巻付手段120の中空シャフト121に導入される紐に抵抗を与えない構成を採用しようとすれば,紐105に余分な弛みや遊びが生じてしまう一方,紐の余分な弛みや遊びを除去しようとすれば,紐に対し少なからず抵抗を与えることとなり,低強度の紐を使用した結束や,脆弱な被結束物に対する結束を可能とするためには,上記2つの相反する要求を同時に満足させ得る,新規な紐供給手段が必要となる。
【0033】
なお,特許文献2に記載の紐供給手段130を備えた自動結束機100では,ボビン141から紐を引き出す構成(ドライブローラ132)と,挿入孔131に引き込まれる紐に対し抵抗を与える構成(可動ガイド134)を分けたことで,ボビン141の回転抵抗が,挿入孔131に引き込まれる紐に及ばないようにした点で優れたものであるが,上記特許文献2に記載の構成にあっても,ボビン141のオーバーランによって余分な紐が引き出されると,紐に必要以上の弛みや遊びが生じて紐の供給不良が発生し得ることから,ボビン141のオーバーランは防止されなければならない。
【0034】
しかし,PE紐等の比較的高強度の紐の使用を予定している既存の自動結束機でボビン141の回転にブレーキを掛けているブレーキ手段はブレーキ力が強すぎるため,このブレーキ手段を,可食性紐等の低強度の紐が巻かれたボビンに適用すると紐切れが生じる。
【0035】
一方,ブレーキ手段によりブレーキが掛けられていないボビン141より紐を引き出せば,前述したオーバーランが生じる。
【0036】
仮に,ボビン141からの紐の引出速度を,オーバーランが生じない程度に十分に遅くしたとしても,紐として可食性紐のように太さが一定でない紐を使用する場合,これをボビン141に巻き取ってできた紐のロールは,回転中心から重心がずれた偏心した状態にあるため,ブレーキを掛けることなくボビンを回転自在に軸支すると,紐の引き出しが終了しても,ボビンは,偏心した重心を回転中心の下側に配置した安定姿勢となるまで回転を継続するため,引出速度の低速化等によってもボビンのオーバーランを完全には防止できない。
【0037】
そのため,結束用の紐として低強度の紐を使用する場合,特に低強度で,かつ,ボビン141に巻き取った際に偏心が生じる,例えば可食性紐を使用する場合には,ボビンのオーバーランを防止できるが,紐切れを生じさせない程度の,絶妙に調整された回転抵抗をボビン141に与えることができるブレーキ手段の新たな開発が必要となる。
【0038】
なお,以上の説明では,主として,可食性紐を使用した加工食品の結束を想定した場合における問題点について説明したが,前述したように微弱なテンションで被結束物の結束が可能となれば,可食性紐を使用した加工食品の結束だけでなく,可食性紐以外の低強度の紐を使用した結束であっても紐切れを起こすことなく結束することが可能となると共に,食品以外の脆弱な被結束物の結束にあっても被結束物にダメージを与えることなく結束することも可能となることから,従来の自動結束機では結束することができなかった材質の紐や,脆弱な被結束物に対する自動結束の適用範囲を拡大し得ることから,自動結束機の新たな販路の開拓にも貢献し得る。
【0039】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,紐巻付手段に対し抵抗を与えることなく紐を供給し得るものでありながら,紐に余分な弛みや遊びが生じることを防止するという,相反する要求を同時に満たすことができる紐供給手段を備えた自動結束機を提供することにより,被結束物に巻回する紐のテンションを微弱なものとすることを可能とし,可食性紐等の低強度の紐を使用した場合であっても紐切れを生じさせることなく,また,食品,その他の脆弱な被結束物を結束した場合であっても被結束物に対しダメージを与えることなく結束を行うことができる自動結束機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0040】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために記載したものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0041】
上記目的を達成するために,本発明の自動結束機1は,
中空シャフト21と,該中空シャフト21と共に回転して先端部が所定の回転軌道S上を移動する回転アーム22とを備えた紐巻付手段20と,
紐が巻かれたボビン41を回転可能に軸支するボビン台40を備え,前記紐巻付手段20に対し前記ボビン41より引き出した紐5を供給する紐供給手段30を備え,
前記ボビン41より引き出した紐5を,前記回転アーム22の先端部に通した後,所定位置に設けた紐係止ボタン7に係止した状態で前記紐巻付手段20を回転させることにより,前記回転アーム22の前記先端部の回転軌道Sの内側に配置された被結束物Wに対し前記紐5を巻回可能とした自動結束機1において,
前記紐供給手段30が,
前記ボビン41から前記紐巻付手段20に至る迄のいずれかの位置にある紐5が通されるガイド51を備え,所定の第1揺動位置と第2揺動位置間を揺動すると共に,前記第1揺動位置から第2揺動位置に揺動する際に前記ボビン41から紐5を引き出し,前記第2揺動位置から第1揺動位置に揺動する際に引き出した紐を送り出す揺動アーム50と,
前記揺動アーム50と係合して,前記揺動アーム50を前記第1揺動位置から第2揺動位置に揺動させる揺動アーム駆動手段60を備え,
前記揺動アーム50を,前記揺動アーム駆動手段60との係合が解除されているとき前記第1揺動位置に自動で復帰するよう構成すると共に,
前記揺動アーム駆動手段60を,前記紐巻付手段20が1の結束作業のための回転を終了して原位置で待機した状態にあるときに前記揺動アーム50と係合して前記揺動アーム50を前記第1揺動位置から第2揺動位置に揺動させて前記ボビン41から紐5を引き出した状態で,前記第2揺動位置停止して待機するよう構成すると共に,前記紐巻付手段20が次の結束作業のための回転を開始すると同時に,前記第2揺動位置にある前記揺動アーム50との係合を解除して前記紐巻付手段20に紐を送り出すよう構成したことを特徴とする(請求項1)。
【0042】
前記揺動アーム50が前記第2揺動位置から第1揺動位置へ自動で復帰することにより送り出される紐の送り出し速度は,前記紐巻付手段20による紐の引き込み速度に対し,わずかに速くすることが好ましい(請求項2)。
【0043】
更に,前記ボビン台40には,
前記ボビン41の中心に挿入されて前記ボビン41と共に回転するボビンシャフト42と,
前記ボビン41外に突出した前記ボビンシャフト42の一端42aを回転可能に軸支した支持台43と,
前記ボビンシャフト42に回転抵抗を与えるブレーキ手段47を設け,
前記ブレーキ手段47を,
前記ボビンシャフト42の外周に近接及び離間する方向に揺動可能に設けられたシューブラケット473と,
前記シューブラケット473の前記ボビンシャフト42との接触面に取り付けられたブレーキシュー471と,
前記シューブラケット473を,前記ボビンシャフト42の外周に向けて付勢すると共に圧接させるコイルスプリング等の付勢手段475によって構成するものとしても良い(請求項3)。
【0044】
上記ボビン台40の構成において,前記ボビンシャフト42の前記一端42a側にフランジ44を設けると共に,該フランジ44の前記ボビン41と接触する側の面に,ボビン41内に嵌合される位置決め用の突起44aを設けるものとしても良い(請求項4)。
【0045】
なお,前記ブレーキ手段47で使用するブレーキシュー471は,これを牛革等の皮革製とすることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0046】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の自動結束機1では前述した紐供給手段30を備えたことにより,紐巻付手段20が1の結束作業のための回転を終えて原位置で待機しているときに予めボビンより引き出しておいた紐を,紐巻付手段20による次の結束作業のための紐の巻回開始と同時に開放して送り出すことで,紐巻付手段20に対し抵抗を与えることなく紐5を供給することが可能であると共に,紐5に対し余分に弛みや遊びが生じることを防止できた。
【0047】
その結果,被結束物Wに巻回される紐のテンションを,中空シャフト21内や取出孔24,各ガイドを通過する際に不可避的に受ける接触抵抗程度しか付加されていない状態とすることができ,これにより紐にかかるテンションが微弱なものとなり,可食性紐のように低強度の紐を使用した場合であっても紐切れを生じさせることなく結束を行うことが可能であると共に,脆弱な被結束物についてもダメージを与えることなく結束を行うことができる自動結束機を提供することができた。
【0048】
しかも,前述したように紐巻付手段20に供給される紐5に抵抗を与えない構成でありながら,紐5に余分な弛みや遊びが発生することも好適に防止でき,このような余分な弛みや遊びの発生によって生じる,紐5の供給不良についても好適に防止することができた。
【0049】
前記揺動アーム50が第2揺動位置から第1揺動位置へ復帰することで送り出される紐5の送り出し速度を,前記紐巻付手段20による紐の引き込み速度に対しわずかに速く形成した構成では,紐巻付手段20に引き込まれる紐5に対し,揺動アーム50の僅かな揺動抵抗すら与えない構成とするものでありながら,紐5に生じる弛みや遊びを可及的に減少させることができた。
【0050】
ボビンシャフト42の外周にブレーキシュー471を圧接するブレーキ手段47を設けたことで,ボビン41のオーバーランを好適に防止できる一方,ボビン41に巻かれた紐5のロール径に比較して細径であるボビンシャフト42の外周にブレーキシュー471を圧接していることで,ブレーキが掛かった状態にあっても,紐5を比較的弱い力で引き出すことでボビン41を円滑に回転させることができ,可食性紐等の低強度の紐を使用した場合であっても紐切れが発生することを防止できた。
【0051】
しかも,上記ブレーキ手段47では,シューブラケット473を揺動可能とし,このシューブラケット473をコイルスプリング等の付勢手段475によってボビンシャフト42に向けて付勢する構成を採用しているため,ブレーキシュー471が摩耗して厚みが減った場合であっても,ボビンシャフト42に対するブレーキシュー471の押圧を安定して行うことができた。
【0052】
前記ボビンシャフト42の前記一端42a側にフランジ44を設けると共に,該フランジ44の前記ボビン41と接触する側の面に,ボビン41内に嵌合される位置決め用の突起44aを設けた構成では,ボビン41の内径に位置決め用の突起44aを嵌合させるだけで,ボビンシャフト42をボビン41の中心に,簡単かつ正確に取り付けることが可能である。
【0053】
ブレーキシュー471として皮革製のものを使用したことで,ボビン41の回転に適度な摩擦抵抗を与えることができただけでなく,皮革は人体に無害であり,摩擦等によって削れたブレーキシューの成分が,万が一,被結束物(例えば加工食品)に付着する場合があったとしても安全である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の自動結束機の外観斜視図。
図2図1中に一点鎖線で示した円内の拡大図。
図3】紐巻付手段20部分の拡大斜視図。
図4】紐供給手段の動作説明図であり,(A)は結束作業開始前の待機位置で,ボビン41から紐5を引き出し終えた状態である第2揺動位置を示し,(B)は被結束物に対する紐の巻き付けに対応して紐を送り出している状態,(C)は紐の送り出し完了後,ボビンからの紐の引き出しを開始する直前の状態で,同図(B)及び(C)は,揺動アーム50が,挿入孔31に対し紐5の送り出し以降の状態にある第1揺動位置を示し,また,同図(C)は,揺動アーム駆動手段60の第1回転位置を,同図(A)は,同手段60の第2回転位置をそれぞれ,示す,(D)はボビンから紐を引き出している状態を示す。
図5】ボビン台の側面図。
図6】ボビン台の側面断面図。
図7】ボビン台に設けたブレーキ手段の正面図。
図8】従来の自動結束機の概略説明図(特許文献1の図1に対応)。
図9】従来の自動結束機の背面図(特許文献2の図2に対応)。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に,添付図面を参照しながら本発明の自動結束機1について説明する。
【0056】
〔全体構成〕
図1に,本発明の自動結束機1の外観斜視図を示す。この自動結束機1は,第1テーブル11と第2テーブル12間に形成された間隙G上に跨るように配置された被結束物Wに対して,前記間隙Gを通過させた紐5を巻回することができるように構成したもので,被結束物Wに対して紐5を巻回する基本原理は,図8を参照して説明した従来の自動結束機と同様である。
【0057】
図示の実施形態において,前述の第1テーブル11の上面には,図2に示すように上向きに突設された2枚の板体によって構成されたワークガイド13が設けられていると共に,第2テーブル12上にも,被結束物Wの載置位置を規制する規制板14を設け,第2テーブル12の規制板14に突合させた状態で,かつ,第1テーブル11のワークガイド13内に挿入されるように,テーブル11,12上に被結束物Wを載置した状態で後述する紐巻付手段20に設けた回転アーム22を旋回させることにより,被結束物Wに対し紐5を正確に巻き付けることができるように構成されている。
【0058】
〔紐巻付手段〕
第1テーブル11に対し紙面奥側(第2テーブル12と反対側)には,図3に示すように回転軸を成す中空シャフト21と,前記中空シャフト21と共に回転して被結束物Wの外周に紐を巻き付ける略L字状の回転アーム22と,被結束物Wに巻き付けられる紐のテンションを調整するテンションアーム23を備えた,紐巻付手段20が設けられている。
【0059】
図示の実施形態において,中空シャフト21は,自動結束機1の本体に固定された固定ギヤ28,28の中心に形成した軸孔内にベアリング等を介して回転可能に軸支され,図示せざるモータからの回転が伝達されることにより,回転アーム22の先端部が図中に破線で示した回転軌道S上を移動するよう,図中に矢印で示したように時計回りに旋回するように構成されている。
【0060】
この紐巻付手段20には,後述する紐供給手段30より供給された紐5が,中空シャフト21の一端より挿入されて,中空シャフト21の他端側に設けた取出孔24より引き出された後,テンションアーム23の先端部に設けたガイド25,回転アーム22に設けたガイド26,27に通されることで,紐巻付手段20に対する紐の取り付けが行われ,その後,この紐の先端部を,テーブル12の下側に設けた紐係止ボタン7に係止している。
【0061】
このようにして,紐巻付手段20及び紐係止ボタン7に紐を取り付けた状態で,紐巻付手段20を図中に矢印で示す方向に回転させると,被結束物Wに対し紐を巻回することができる。
【0062】
本発明の自動結束機1においては,前述したテンションアーム23はそれ自体を板バネによって形成し,別途,コイルスプリング等を設ける必要のない構造とすることで,その構造を簡略化させていると共に,コイルスプリングによってテンションアームを付勢する図8を参照して説明した従来のテンションアームの構造に比較して,紐にかかるテンションを微弱なものとすることを可能としているが,このテンションアーム23の構成は,図8を参照して説明したように,コイルスプリング等で付勢する既知の構成のものであっても良い。
【0063】
〔紐供給手段〕
前述した紐巻付手段20に対し紐を供給する紐供給手段30の構成例を図4に示す。
【0064】
この紐供給手段30は,本実施形態では自動結束機1の背面に設けられており,紐が巻かれたボビン41を回転可能に軸支するボビン台40と,紐巻付手段20の中空シャフト21に連通した挿入孔31と,前記ボビン41から前記紐巻付手段20(挿入孔31)に至る迄のいずれかの位置における紐5が通されるガイド51を備え,所定の第1揺動位置〔図4(B),図4(C)参照〕から所定の第2揺動位置〔図4(A)参照〕に揺動することで前記ボビン41から紐を引き出す揺動アーム50と,前記揺動アーム50を前記第1揺動位置から第2揺動位置に揺動させる揺動アーム駆動手段60を備えている。
【0065】
(1)ボビン台
前述のボビン台40は,紐5の巻芯であるボビン41を回転可能に軸支するもので,図6に示すように,前記ボビン41の中心に挿入されて前記ボビン41と共に回転するボビンシャフト42と,前記ボビン41外に突出した前記ボビンシャフト42の一端42aによって貫通されると共に,該ボビンシャフト42の一端42aを回転可能に軸支した支持台43を備える。
【0066】
図示の実施形態にあっては,自動結束機1の背面カバー(図1紙面後方)を前述した支持台43とし,背面カバーに設けた貫通孔にボビンシャフト42の一端42aを軸支する軸受を形成している。
【0067】
中空に形成されたボビン41の中心に正確にボビンシャフト42を配置するために,好ましくは,前記一端42a側において前記ボビンシャフト42はフランジ44を備えており,このフランジ44のボビン側の面に,ボビン41内に嵌合する位置決め用の突起44aを設け,この突起44aをボビン41内に嵌合した状態で,ボビンシャフト42の他端42bを端板45の中心に形成した開孔内に挿入すると共に,このボビンシャフト42の他端42bに形成した雄ネジにナット46を螺合してフランジ44と端板45間でボビン41を挟持することで,ボビンシャフト42に対するボビン41の取り付けを行っている。
【0068】
図示の実施形態にあっては,ボビンシャフト42の他端42b側にもボビン41の内径に対応した外径を有するカラー49を取り付け,ボビン41内にボビンシャフト42を挿入するとカラー49がボビン41の内周面と接触し,ボビンシャフト42をボビン41の中心に正確に配置することができるようにしている。
【0069】
このボビン台40には,更に,ボビンシャフト42の回転,従って,ボビン41の回転を規制するためのブレーキ手段47が設けられている。
【0070】
このブレーキ手段47は,図7に示すように,支持台43である自動結束機1の背面カバーを貫通して機内に突出したボビンシャフト42の一端42a外周に対し,ブレーキシュー471を圧接することによりボビン41の回転を規制するもので,支持台43に取り付けたヒンジベース472に,ブレーキシュー471を取り付けたシューブラケット473を,ブレーキシュー471の取り付け面がボビンシャフト42の一端42aの外周に近接,離間する方向に揺動可能にヒンジ止めすると共に,同じく支持台43(自動結束機の背面カバー)に取り付けたプッシャープレート474に設けたプッシャー(図示の実施形態にあってはコイルスプリング)475によってシューブラケット473をボビンシャフト42に向けて付勢して,ブレーキシュー471をボビンシャフト42の一端42a外周に圧接することで,ボビン41の回転にブレーキをかけている。
【0071】
なお,図示の実施形態にあっては,円筒状のスリーブ48を取り付けることによりボビンシャフト42の一端42aを延長し,この延長された部分のボビンシャフト42の外周(スリーブ48の外周)に対しブレーキシュー471を圧接することで,ブレーキシュー471との摺接によってボビンシャフト42の一端42a(スリーブ48)が摩耗した場合であっても,ボビンシャフト42全体を交換することなく,スリーブ48のみの交換で対応することができるようにしている。
【0072】
また,符号476は調節ネジであり,この調節ネジ476の締付具合によってブレーキ手段47がボビンシャフト42に与えるブレーキ力を調整可能としている。
【0073】
このように,ボビン41と共に回転するボビンシャフト42の外周にブレーキシュー471を押し当てて回転を規制することで,ボビン41のオーバーランを防止することができる一方,ボビン41に巻かれた紐のロール径に対し直径が大幅に小さいボビンシャフト42の外周にブレーキシュー471を当てて回転を規制することにより,ブレーキがかかった状態でも比較的弱い力で紐を引くことでボビン41から紐5を引き出すことが可能となり,可食性紐のような低強度の紐を使用した場合であっても紐切れが生じない程度の弱い力でブレーキを掛けることを容易としている。
【0074】
また,前述したブレーキ手段47の構成では,ブレーキシュー471が摩耗して厚みが減った場合であっても,プッシャー475であるコイルスプリングの付勢力によってブレーキシュー471はボビンシャフト42の外周に押し当てられた状態を維持するため,ブレーキが解除されることはない。
【0075】
前述したブレーキシュー471としては,ゴム,その他の樹脂や,焼結金属等,ブレーキシュー471として既知の各種の材質を使用可能であるが,本実施形態にあっては,このブレーキシュー471として皮革,一例として牛革を使用することで,ボビンシャフト42の外周に対し適度な摩擦抵抗を加えることができるだけでなく,アスベスト等の人体に有害な成分を含む場合がある既知のブレーキシューとは異なり,人体に無害である皮革を使用することで,万が一,摩擦によって削られて生じた摩耗粉が付着する等してブレーキシュー471の成分が食品である被結束物Wに付着等した場合であっても安全性を確保できるようにした。
【0076】
(2)揺動アーム
以上のように構成されたボビン台40に回転可能に軸支されたボビン41より引き出された紐5は,紐巻付手段20の中空シャフト21に通じる挿入孔31に導入されると共に,このボビン41から挿入孔31に至る何れかの位置において紐を揺動アーム50に設けたガイド51に通すことで,揺動アーム50の揺動によってボビン41から紐を引き出すと共に,引き出した紐5を送り出すことができるように構成している。
【0077】
図4に示した実施形態にあっては,ボビン41と挿入孔31との間に,紐の向きを変えるための第1〜第3変向ガイド32,33,34を設け,ボビン41と第1変向ガイド32間の紐を,揺動アーム50の先端に設けたガイド51に通すことで,揺動アーム50の揺動によってボビン41からの紐5の引き出しを行うことができるように構成しているが,例えば,揺動アーム50の先端部に設けたガイド51に,第1変向ガイド32と第2変向ガイド33間の紐,あるいは第2変向33ガイドと第3変向ガイド34間の紐を通すものとしても良く,あるいは,第1変向ガイド32と第2変向ガイド33を省略して,ボビン41と第3変向ガイド34間の紐5に対し揺動アーム50の先端部に設けたガイド51を通すように構成しても良く,揺動アーム50の揺動によってボビン41から紐5の引き出しを行い得るものであれば,図示の構成に限定されず,他の構成を採用するものとしても良い。
【0078】
揺動アーム50は,前述したように紐を通すためのガイド51,図示の例ではローラガイドを先端部に備え,図4(B),図4(C)に示すように,挿入孔31に対し紐5を送り出した状態にある第1揺動位置と,図4(A)に示すように,ボビン41から紐5を引き出し終えた状態である第2揺動位置間で揺動可能に軸支されており,図示の実施形態にあっては揺動アーム50の揺動範囲を規制するストッパ52,53を設けることで,揺動アーム50が前述した第1揺動位置と第2揺動位置間を揺動するように構成している。
【0079】
この揺動アーム50には,後述する揺動アーム駆動手段60と係合すると共に,揺動アーム駆動手段60の輪郭に沿って摺接移動する係止ピン54が設けられており,図示の実施形態にあっては,この係止ピン54にベアリングを取り付け,ベアリングの外輪と後述する揺動アーム駆動手段60とを接触,係合させることで,揺動アーム駆動手段60の輪郭に沿って係止ピン54を移動させる際の摺動抵抗を低減して円滑な揺動が行われるよう構成している。
【0080】
また,揺動アーム50は,揺動アーム駆動手段60との係合が解除された状態において前述した第1揺動位置に自動で復帰するよう構成されており,図示の実施形態にあっては,支軸55に対し先端側と反対側にも揺動アームを延長し,この延長部分にウエイト56を取り付ける構成を採用しているが,この構成に限定されず,揺動アーム50を例えばスプリングにより付勢する等して,前述した第1揺動位置に自動で復帰させることができるように構成しても良く,揺動アーム50の構成は図示の構成に限定されない。
【0081】
以上のように構成された揺動アーム50の先端に設けたガイド51には,図示の例ではボビン41と第1変向ガイド32間の紐が通され,これにより揺動アーム50が後述する揺動アーム駆動手段60によって前述した第1揺動位置から第2揺動位置に向かって揺動された際にボビン41から紐が引き出され,揺動アーム駆動手段60との係合が解除されて第2揺動位置から第1揺動位置に復帰する際に,紐巻付手段20による被結束物Wに対する紐の巻き付けに伴って生じる挿入孔31からの紐の引き込みに対応して,ボビン41より引き出しておいた紐を開放して,挿入孔31側に送り出すことができるよう構成されている。
【0082】
(3)揺動アーム駆動手段
前述の揺動アーム50を駆動する揺動アーム駆動手段60は,支軸61を中心に所定方向,図示の例では紙面時計回りの方向に回転することにより,図4(C)に示す所定の第1回転位置において,第1揺動位置にある揺動アーム50に設けた係止ピン54との係合を開始し,その後,図4(A)に示す所定の第2回転位置に回転する迄の間,係止ピン54との係合を維持して,前述した揺動アーム50を前記第1揺動位置から第2揺動位置に揺動させると共に,第2回転位置を超えると,再度第1回転位置に至る迄,前記揺動アーム50との係合が解除され,その後,前述した動作を繰り返すように構成されている。
【0083】
本実施形態において,揺動アーム駆動手段60は支軸61を中心に紙面時計回り方向に回転するアームによって構成しているが,この構成に代え,カム,その他の手段によって揺動アーム駆動手段60を構成するものとしても良い。
【0084】
この揺動アーム駆動手段60は,前述した紐巻付手段20の運転に連動して動作するように構成されており,前記紐巻付手段20が1の被結束物Wを結束するための回転を終了して原位置に戻った後,次の被結束物Wを結束するための回転を開始する迄の待機状態にある間に,前述した第1回転位置から第2回転位置に回転して第2回転位置で停止して待機することで,揺動アーム50を前述した第1揺動位置から第2揺動位置迄揺動させてボビン41から紐を引き出した後,第2揺動位置に保持して待機した状態となり,その後,紐巻付手段20が次の被結束物Wを結束するための回転を開始すると同時に揺動アーム駆動手段60も回転を開始して,揺動アーム50との係合を解除し,紐巻付手段20による挿入孔31を介した紐の引き込みが開始されると同時に揺動アーム50を第1揺動位置に復帰させて紐の送り込みを行うことができるように構成されている。
【0085】
〔使用方法及び作用等〕
以上のように構成された本発明の自動結束機1において,自動結束機1の背面に設けた紐供給手段30のボビンから引き出された紐は,図4に示すように揺動アーム50の先端に設けたガイド51を通した後,第1変向ガイド32,第2変向ガイド33,第3変向ガイド34を介して,紐巻付手段20の中空シャフト21に連通する挿入孔31に挿入される。
【0086】
前述の挿入孔31より挿入された紐5は,図3に示すように紐巻付手段20の中空シャフト21内に挿入され,取出孔24を介して中空シャフト21より引き出された後,テンションアーム23の先端に設けたガイド25,回転アーム22に設けたガイド26,27を通した後,テーブル12の下面に配置された紐係止ボタン7に係止されて紐の取り付けが完了する。
【0087】
紐巻付手段20が,被結束物Wに対する紐の巻回を開始する前の原位置において待機した状態にあるとき,自動結束機1の背面に設けた紐供給装置30は,図4(A)に示すように揺動アーム駆動手段60が第2回転位置で,揺動アーム50がボビンから最も離間した第2揺動位置で待機状態にあり,ボビン41から最大長の紐5が引き出された状態となっている。
【0088】
この状態で,オペレータは自動結束機1のテーブル上の所定位置に被結束物Wを配置し,被結束物Wの結束を開始するためにフットスイッチ9(図1参照)を踏むと,紐巻付手段20が回転を開始して被結束物Wに紐の巻回を開始すると共に,紐供給手段30に設けた揺動アーム駆動手段60がこの紐巻付手段20の回転開始と同時に,図4(A)の第2回転位置から紙面時計回りに回転を開始し,揺動アーム50の係止ピン54との係合を解除して揺動アーム50を開放する。
【0089】
前述した紐巻付手段20の回転と共に,被結束物Wの外周に紐が巻き付けられるに伴い,挿入孔31を介して紐の引き込みが開始される一方,揺動アーム駆動手段60との係合から開放された揺動アーム50は,ウエイト56の重みにより図4(B)に示すように第2揺動位置から第1揺動位置に復帰することで,紐巻付手段20によって挿入孔31を介して引き込まれた分の紐が送り込まれ,紐5に余分な弛みや遊びを生じさせることなく,かつ,紐に抵抗を与えることなく,紐巻付手段20に紐が供給される。
【0090】
特に,揺動アーム50が第2揺動位置から第1揺動位置に復帰することに伴う紐の送り出し速度を,紐巻付手段20による紐の引き込み速度に対し僅かに速く形成した構成では,紐巻付手段20に供給する紐5には,第1〜第3ガイド32から34を通過する際に紐が不可避的に受ける抵抗以上の抵抗を与えることなく導入することが可能である。
【0091】
このようにして,揺動アーム駆動手段60と揺動アーム50との係合が解除されている間,従って,揺動アーム駆動手段60が第2回転位置から第1回転位置に回転する迄の間に,紐巻付手段20は所定数の回転を行い,被結束物の外周に所定の巻き数で紐を巻回した後,原位置に復帰して待機状態となり,紐巻付手段20がこの原位置に復帰した待機状態にある時にノッタ(図示せず)による紐を結ぶ作業と,カッタ(図示せず)による紐を切断する作業,及び,新たに生じる紐の先端部を紐係止ボタン7に係止する作業が行われ,被結束物Wに対する紐5の結束が終了する。
【0092】
このようにして結束作業の終了後,揺動アーム駆動手段60は更に回転して図4(C)に示すように第1回転位置に至ると,揺動アーム駆動手段60は第1揺動位置にある揺動アーム50の係止ピン54と係合し,更に回転することで,図4(D)に示すように揺動アーム50の先端部をボビン41より離間させる方向に押し下げる。
【0093】
挿入孔31を介して紐巻付手段20に導入された紐の先端は,紐係止ボタン7に係止されているため,この揺動アーム50の揺動によって紐5にかかるテンションが上昇し,このテンション上昇によって紐巻付手段20に設けたテンションアーム23が変形すると共に,ボビン41からの紐5の引き出しが開始される。
【0094】
ボビン41の中心を貫通するボビンシャフト42には,前述したブレーキ手段47によってブレーキが掛けられているものの,そのブレーキ力は比較的弱いものであるために,揺動アーム50の揺動に伴って紐切れを生じることなく円滑にボビン41より紐が引き出され,このような紐の引き出しは,揺動アーム駆動手段60が第2回転位置迄回転し,揺動アーム50が第2揺動位置に揺動する図4(A)となる迄行われる。
【0095】
揺動アーム駆動手段60は,第2回転位置まで回転するとその回転を停止し,紐供給手段30は,ボビン41より所定長さの紐を引き出した図4(A)に示す状態で,次の被結束物Wの結束が開始される迄,待機状態となる。
【0096】
このように,本発明の自動結束機1では,前述した紐供給手段30を設けたことにより,殆ど抵抗を与えることなく紐巻付手段20に対して紐を供給することが可能である一方,このような抵抗を与えない構成であるにも拘わらず,紐に対し余分な弛みや遊びが生じることを好適に防止することができるものとなっている。
【0097】
特に,前述したブレーキ手段47を紐供給手段30のボビン台40に設けた構成では,ボビン41と,ボビン41から紐の引き出しを行う揺動アーム50間における紐切れの発生についても好適に防止し得るものでありながら,ボビン41のオーバーランの発生を防止でき,このようなオーバーランの発生に伴う紐の弛みや遊びの発生についても好適に防止することが可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 自動結束機
5 紐
7 紐係止ボタン
9 フットスイッチ
11 第1テーブル
12 第2テーブル
13 ワークガイド
14 規制板
20 紐巻付手段
21 中空シャフト
22 回転アーム
23 テンションアーム
24 取出孔
25〜27 ガイド
28 固定ギヤ
30 紐供給手段
31 挿入孔
32 第1変向ガイド
33 第2変向ガイド
34 第3変向ガイド
40 ボビン台
41 ボビン
42 ボビンシャフト
42a 一端(ボビンシャフトの)
42b 他端(ボビンシャフトの)
43 支持台
44 フランジ
44a 突起
45 端板
46 ナット
47 ブレーキ手段
471 ブレーキシュー
472 ヒンジベース
473 シューブラケット
474 プッシャープレート
475 プッシャー(コイルスプリング)ないし付勢手段
476 調整ネジ
48 スリーブ
49 カラー
50 揺動アーム
51 ガイド
52,53 ストッパ
54 係止ピン
55 支軸
56 ウエイト
60 揺動アーム駆動手段
61 支軸
100 自動結束機
105 紐
107 紐係止ボタン
111,112 テーブル
120 紐巻付手段
121 中空シャフト
122 回転アーム
123 テンションアーム
123a コイルスプリング
124 取出孔
125〜129 ガイド
130 紐供給手段
131 挿入孔
132 ドライブローラ
133 固定ガイド
134 可動ガイド
141 ボビン
170 ブレーキ手段
G 間隔(テーブル間の)
W 被結束物
S 回転軌道(回転アームの先端部の)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9