(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物からなる第一の部材と、レーザー吸収性を有する樹脂材料からなる第二の部材とを、前記第一の部材側からレーザー光を照射してレーザー溶着させてなる成形品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ポリスチレン及び/又はブタジエンゴム含有ポリスチレン及び(C)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部基準で、(A)を30〜90質量部、(B)を1〜50質量部、(C)を1〜50質量部含有し、結晶化温度が190℃以下であることを特徴とする。
【0012】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。以下の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。
【0013】
[(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の主成分である(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂としては、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有する高分子を示す。即ち、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーと当該共重合体との混合物を含む。
【0014】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよいが、他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4´−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸類などが挙げられる。
【0015】
ジオール単位としては、1,4−ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいてもよいが、他のジオール単位の具体例としては、炭素原子数2〜20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類などが挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオぺンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノ一ルAのエチレンオキシド付加ジオールなどが挙げられる。更に、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオールも挙げられる。
【0016】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましいが、また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸一種以上および/またはジオール単位として、前記1,4−ブタンジオール以外のジオール一種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。PBT樹脂は、機械的性質、耐熱性の観点から、ジカルボン酸単位中のテレフタル酸の割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。同様に、ジオール単位中の1,4−ブタンジオールの割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。
【0017】
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
【0018】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式または通続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレクタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下または減圧下固相重合させることにより、重合度(または分子量)を所望の値まで高めることができる。
【0019】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法が好ましい。
【0020】
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物などを挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどのチタンアルコラート、テトラフェニルチタネートなどのチタンフェノラートなどを挙げることができる。
【0021】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂であってもよいが、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類(特にはポリテトラメチレングリコール)を共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。
【0022】
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いる場合は、共重合体中のテトラメチレングリコール成分の割合は3〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%がさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性と耐熱性とのバランスに優れる傾向となり好ましい。
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合は、全カルボン酸成分に占めるダイマー酸成分の割合は、カルボン酸基として0.5〜30モル%であることが好ましく、1〜20モル%がより好ましく、3〜15モル%がさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性、長期耐熱性及び靭性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂として、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合は、全カルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の割合は、カルボン酸基として1〜30モル%であることが好ましく、1〜20モル%がより好ましく、3〜15モル%がさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性、耐熱性、射出成形性及び靭性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0023】
そして、これら共重合体の好ましい含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の総量100質量%中に、5〜50質量%、更には10〜40質量%、特には15〜30質量%である。
【0024】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5〜2dl/gであるものが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.6〜1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものが好ましい。固有粘度が0.5dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械的強度の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化したり、レーザー溶着性が低下する場合がある。なお、固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
【0025】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。50eq/tonを超えると、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しやすくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/tonである。
【0026】
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリアルキレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
【0027】
[(B)ポリスチレン及び/又はブタジエンゴム含有ポリスチレン]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(B)ポリスチレン及び/又はブタジエンゴム含有ポリスチレンを含有する。
ポリスチレンとしては、スチレンの単独重合体、あるいは他の芳香族ビニルモノマー、例えばα−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等を例えば、50質量%以下の範囲で共重合したものであってもよい。
【0028】
ブタジエンゴム含有ポリスチレンとしては、ブタジエン系ゴム成分を共重合またはブレンドしたものであり、ブタジエン系ゴム成分の量は、通常1質量%以上50質量%未満であり、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%である。ゴム成分としてアクリル系のゴム成分を含有するポリスチレンも考えられるが、靱性面にて乏しくなるので好ましくない。
ブタジエンゴム含有ポリスチレンとしては、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)が特に好ましい。
(B)ポリスチレン又はブタジエンゴム含有ポリスチレンの中では、ブタジエンゴム含有ポリスチレンが好ましく、特にハイインパクトポリスチレン(HIPS)が好ましい。
【0029】
(B)ポリスチレン又はブタジエンゴム含有ポリスチレンは、質量平均分子量が50,000〜500,000であることが好ましく、中でも100,000〜400,000、特に150,000〜300,000が好ましい。分子量が50,000より小さいと、成形品でブリードアウトが見られたり、成形時に分解ガスが発生して十分なウエルド強度が得られにくく、また分子量が500,000より大きいと、十分な流動性やレーザー溶着強度の向上が図りにくい。
【0030】
(B)ポリスチレン又はブタジエンゴム含有ポリスチレンは、200℃、98Nで測定されたメルトフローレート(MFR)が、0.1〜50g/10分であることが好ましく、0.5〜30g/10分であることがより好ましく、1〜20g/10分であることがさらに好ましい。MFRが0.1g/10分より小さいと、ポリブチレンテレフタレート樹脂と相溶性が不十分となり、射出成形時に層剥離の外観不良が生じる場合がある。またMFRが50g/10分より大きいと、耐衝撃性が大きく低下し好ましくない。
特に、(B)成分がポリスチレンである場合は、MFRは1〜50g/10分であることが好ましく、3〜35g/10分であることがより好ましく、5〜20g/10分であることがさらに好ましい。(B)成分がブタジエンゴム含有ポリスチレンである場合は、MFRは0.1〜40g/10分であることが好ましく、0.5〜30g/10分であることがより好ましく、1〜20g/10分であることがさらに好ましい。
【0031】
[(C)ポリカーボネート樹脂]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(B)ポリスチレン及び/又はブタジエンゴム含有ポリスチレンに加えて、(C)ポリカーボネート樹脂を含有する。
ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。
【0032】
(C)ポリカーボネート樹脂の原料のジヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましく、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
【0033】
(C)ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。更には、上述したポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
【0035】
(C)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、5,000〜30,000であることが好ましく10,000〜28,000であることがより好ましく、14,000〜24,000であることがさらに好ましい。粘度平均分子量が5,000より低いものを用いると、得られる溶着用部材が機械的強度の低いものとなりやすい。また30,000より高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化したり、レーザー溶着性が低下する場合がある。なお、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算される粘度平均分子量[Mv]である。
【0036】
(C)ポリカーボネート樹脂の、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)は、2〜5であることが好ましく、2.5〜4がより好ましい。Mw/Mnが過度に小さいと、溶融状態での流動性が増大し成形性が低下する傾向にある。一方、Mw/Mnが過度に大きいと、溶融粘度が増大し成形困難となる傾向がある。
【0037】
また、(C)ポリカーボネート樹脂の末端ヒドロキシ基量は、熱安定性、加水分解安定性、色調等の点から、100質量ppm以上であることが好ましく、より好ましくは200質量ppm以上、さらに好ましくは400質量ppm以上、最も好ましくは500質量ppm以上である。但し、通常1,500質量ppm以下、好ましくは1,300質量ppm以下、さらに好ましくは1,200質量ppm以下、最も好ましくは1,000質量ppm以下である。ポリカーボネート樹脂の末端ヒドロキシ基量が過度に小さいと、レーザー透過性が低下しやすい傾向にあり、また、成形時の初期色相が悪化する場合がある。末端ヒドロキシ基量が過度に大きいと、滞留熱安定性や耐湿熱性が低下する傾向がある。
【0038】
(C)ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融重合法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。中でも、(C)ポリカーボネート樹脂としては、溶融重合法で製造したポリカーボネート樹脂が、レーザー溶着性の点から好ましい。
【0039】
溶融重合法では、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応を行う。
【0040】
芳香族ジヒドロキシ化合物は、前述の通りである。
一方、炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートが挙げられる。なかでも、ジアリールカーボネートが好ましく、ジフェニルカーボネートが特に好ましい。なお、炭酸ジエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0041】
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの比率は所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが好ましく、なかでも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端ヒドロキシ基量を好適な範囲に調整できる。
【0042】
ポリカーボネート樹脂では、その末端ヒドロキシ基量が、熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす傾向がある。このため、公知の任意の方法によって末端ヒドロキシ基量を必要に応じて調整してもよい。エステル交換反応においては、通常、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率、エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端ヒドロキシ基量を調整したポリカーボネート樹脂を得ることができる。なお、この操作により、通常は得られるポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
【0043】
炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端ヒドロキシ基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0044】
溶融重合法によりポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0045】
溶融重合法において、反応温度は通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は通常2mmHg以下(267Pa以下)の減圧条件である。具体的操作としては、この範囲の条件で、ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
【0046】
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし、ポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
【0047】
溶融重合法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いても良い。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、ポリカーボネート樹脂に対して、通常1質量ppm以上であり、また、通常100質量ppm以下、好ましくは20質量ppm以下である。
【0048】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、(A)、(B)及び(C)の合計100質量部基準で30〜90質量部であり、好ましくは40〜80質量部であり、より好ましくは50〜70質量部である。含有量が30質量部未満であると、耐熱性が低下することなり、90質量部を超えると、レーザー透過率、レーザー溶着性が低下することとなる。
【0049】
(B)ポリスチレン及び/又はブタジエンゴム含有ポリスチレンの含有量は、(A)、(B)及び(C)の合計100質量部基準で1〜50質量部であり、好ましくは3〜45質量部であり、より好ましくは5〜40質量部である。含有量が1質量部未満では、レーザー溶着性、靱性が乏しくなり、50質量部を超えると、耐熱性が大きく低下することとなる。
【0050】
(C)ポリカーボネート樹脂の含有量は、(A)、(B)及び(C)の合計100質量部基準で1〜50質量部であり、好ましくは3〜45質量部であり、より好ましくは5〜40質量部である。含有量が1質量部未満では、レーザー溶着性が低下し、また、(B)ポリスチレン及び/又はブタジエンゴム含有ポリスチレンの分散が不良となり、成形品の表面外観が低下することとなる。50質量部を超えると、ポリブチレンテレフタレート樹脂とのエステル交換が進み、滞留熱安定性が低下することとなる。
【0051】
また、(A)、(B)及び(C)の合計100質量部中、(B)及び(C)成分の合計含有量は10〜55質量部であることが好ましく、20〜50質量部が好ましく、25〜45質量部がより好ましい。このような含有量とすることにより、耐熱性とレーザー透過率、レーザー溶着性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
【0052】
さらに、(B)、(C)成分の含有割合は、質量比で(B):(C)=5:1〜1:5であることが好ましく、4:1〜1:4であることがより好ましい。このような含有割合とすることにより、耐熱性とレーザー透過率、レーザー溶着性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
【0053】
[安定剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、安定剤を含有することが好ましい。
安定剤としては、リン系安定剤、硫黄系安定剤、フェノール系安定剤等、種々の安定剤が挙げられる。特に好ましいのはリン系安定剤及びフェノール系安定剤である。
【0054】
リン系安定剤の含有量は、(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対し、0.001〜2質量部であることが好ましい。安定剤の含有量が0.001質量部未満であると、溶着用部材の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、2質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。安定剤の含有量は、より好ましくは0.01〜1質量部であり、更に好ましくは、0.05〜0.5質量部である。
【0055】
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物又は有機ホスホナイト化合物が好ましく、特には有機ホスフェート化合物が好ましい。
有機ホスフェート化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【化2】
(一般式(1)中、R
1はアルキル基又はアリール基を表す。nは0〜2の整数を表す。なお、nが0のとき、2つのR
1は同一でも異なっていてもよく、nが1のとき、2つのR
1は同一でも異なっていてもよい。)
【0056】
上記一般式(1)において、R
1はアルキル基又はアリール基を表す。R
1は、炭素数が1以上、好ましくは2以上であり、通常30以下、好ましくは25以下のアルキル基、又は、炭素数が6以上、通常30以下のアリール基であることがより好ましいが、R
1は、アリール基よりもアルキル基が好ましい。なお、R
1が2以上存在する場合、R
1同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0057】
一般式(1)で示されるリン系より好ましくは、R
1が炭素原子数8〜30の長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられる。炭素原子数8〜30のアルキル基の具体例としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
【0058】
長鎖アルキルアシッドホスフェートとしては、例えば、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、オクタデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0059】
上記一般式(1)で表されるリン系安定剤の配合により、(A)成分と(C)成分のエステル交換反応を適度に抑制することとなり、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の結晶化温度が190℃以下となりやすい傾向となり、それにより、レーザー透過性、レーザー溶着性もより向上しやすくなる。
これらの中でも、オクタデシルアシッドホスフェートが好ましく、このものはADEKA社製の商品名「アデカスタブAX−71」として、市販されている。
【0060】
上記一般式(1)で表されるリン系安定剤の含有量は、(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対し、0.001〜1質量部であることが好ましい。含有量が0.001質量部未満であると、溶着用部材の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、1質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向があると同時に、レーザー透過率、レーザー溶着性が低下する傾向となる。より好ましい含有量は、0.01〜0.6質量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.4質量部である。
【0061】
フェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が好ましく、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0062】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製(商品名、以下同じ)「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
なお、ヒンダードフェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0063】
フェノール系安定剤の含有量は、(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対して、0.01〜1質量部であることが好ましい。含有量が0.01質量部未満であると、熱安定性が低下する傾向にあり、1質量部を超えると、レーザー透過率が低下する場合がある。より好ましい含有量は、0.05〜0.8質量部であり、さらに好ましくは0.1〜0.6質量部である。
本発明においては、上記一般式(1)で表されるリン系安定剤とフェノール系安定剤を併用することが、滞留特性と耐熱性、レーザー透過率、レーザー溶着性の観点から好ましい。
【0064】
[離型剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、更に、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましい。
【0065】
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、質量平均分子量が、700〜10,000、更には900〜8,000のものが好ましい。また、側鎖に水酸基、カルボキシル基、無水酸基、エポキシ基などを導入した変性ポリオレフィン系化合物も特に好ましい。
【0066】
脂肪酸エステル系化合物としては、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物等が挙げられ、中でも、炭素原子数11〜28、好ましくは炭素原子数17〜21の脂肪酸で構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0067】
また、シリコーン系化合物としては、樹脂との相溶性等の点から、変性されている化合物が好ましい。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したシリコーンオイル、ポリシロキサンの両末端及び/又は片末端に有機基を導入したシリコーンオイル等が挙げられる。導入される有機基としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基等が挙げられ、好ましくはエポキシ基が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入したシリコーンオイルが特に好ましい。
【0068】
離型剤の含有量は、(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対し、0.05〜2質量部であることが好ましい。0.05質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面性が低下する傾向があり、一方、2質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下し、また成形品表面に曇りが見られる場合がある。離型剤の含有量は、好ましくは0.1〜1.5質量部、更に好ましくは0.3〜1.0質量部である。
【0069】
[強化充填材]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、更に、強化充填材を含有することも好ましい。
強化充填材としては、常用のプラスチック用無機充填材を用いることができる。好ましくはガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維などの繊維状の充填材を用いることができる。また炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、ガラスビーズなどの粒状または無定形の充填材;タルクなどの板状の充填材;ガラスフレーク、マイカ、グラファイトなどの鱗片状の充填材を用いることもできる。
なかでも、レーザー光透過性、機械的強度、剛性および耐熱性の点からガラス繊維を用いるのが好ましい。
【0070】
強化充填材は、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いることがより好ましい。表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れるので好ましい。
【0071】
表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には、例えば、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシラン系カップリング剤が好ましく挙げられる。
これらの中では、アミノシラン系表面処理剤が好ましく、具体的には例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。
【0072】
また、表面処理剤として、ノボラック型等のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等も好ましく挙げられる。中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
シラン系表面処理剤とエポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いても複数種で用いてもよく、両者を併用することも好ましい。
【0073】
ガラス繊維は、レーザー溶着性の点から、断面における長径と短径の比が1.5〜10である異方断面形状を有するガラス繊維であることも好ましい。
断面形状は、断面が長円形、楕円形、まゆ型形状のものが好ましく、特に長円形断面が好ましい。また、長径/短径比が2.5〜8、更には3〜6の範囲にあるものが好ましい。さらに、成形品中のガラス繊維断面の長径をD2、短径をD1、平均繊維長をLとするとき、アスペクト比((L×2)/(D2+D1))が10以上であることが好ましい。このような扁平状のガラス繊維を使用すると、成形品の反りが抑制され、特に箱型の溶着体を製造する場合に効果的である。
【0074】
強化充填材の含有量は、(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対し、0〜100質量部である。強化充填材の含有量が100質量部を上回ると、流動性やレーザー溶着性が低下するので好ましくない。強化充填材のより好ましい含有量は、5〜90質量部であり、より好ましくは15〜80質量部、さらに好ましくは20〜70質量部、特には30〜60質量部である。
【0075】
[その他含有成分]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記した以外の他の添加剤あるいは他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。
その他の添加剤としては、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物における、その他の熱可塑性樹脂の割合は、(A)、(B)、(C)及びその他の熱可塑性樹脂成分の合計100質量部中20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0076】
[樹脂組成物の製造]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の製造方法としては、樹脂組成物調製の常法に従って行うことができる。通常は各成分及び所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸又は二軸押出機で溶融混練する。また各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本発明の樹脂組成物を調製することもできる。
さらには、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂、(B)ポリスチレン及び/又はブタジエンゴム含有ポリスチレン並びに(C)ポリカーボネート樹脂の一部に、他の成分の一部を配合したものを溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りの他の成分を配合して溶融混練してもよい。
なお、ガラス繊維等の繊維状の強化充填材を用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
【0077】
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220〜300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。
【0078】
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、その結晶化温度(Tc)が190℃以下であることを特徴とする。すなわち、(A)成分と(C)成分のエステル交換反応を適度に抑制し、結晶化温度(Tc)を低めにコントロールすることにより、レーザー透過性をより向上させることができる。結晶化温度(Tc)は好ましくは188℃以下、より好ましくは185℃以下、さらに好ましくは182℃以下、中でも好ましくは180℃以下である。また、その下限は、通常160℃、好ましくは165℃以上である。なお、結晶化温度(Tc)はDSCにより測定され、その詳細は実施例に記載されるとおりである。
【0079】
また、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、メルトボリュームレート(MVR;250℃、荷重5kgの条件下で測定。)が10cm
3/10分以上であることが好ましく、より好ましくは15cm
3/10分以上であるものを用いる。MVRがこのような範囲のものを用いることで、溶着用部材が、例えば、2mm以下、あるいは1.5mm以下の薄肉部、さらには1mm以下のような極めて薄い薄肉部があっても良好な成形性を確保できる。
【0080】
[レーザー溶着用成形体の製造]
レーザー溶着用成形体の製造方法は、特に限定されず、ポリブチレンテレフタレート樹脂系組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられる。中でも射出成形が好ましい。射出成形法としては、例えば、高速射出成形法や射出圧縮成形法等を用いることができる。
【0081】
射出成形の条件としては、特に制限はないが、射出速度は、10〜500mm/secが好ましく、30〜400mm/secがより好ましく、50〜300mm/secがさらに好ましく、80〜200mm/secが特に好ましい。また、樹脂温度は、250〜280℃が好ましく、255〜275℃がより好ましく、金型温度は40〜130℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。
【0082】
また、射出成形機の吐出ノズルから金型キャビティに射出される単位時間当りの樹脂材料容量として定義される射出率が10〜300cm
3/secであることが好ましく、15〜200cm
3/secがより好ましく、25〜100cm
3/secがさらに好ましく、50〜90cm
3/secが特に好ましい。射出率をこのような範囲とすることで、成形品の反ゲート側部分のレーザー透過率をより高くしやすくなり、ゲート位置の調整によって、成形品中の溶着部位の透過率をより高くすることができる。射出成形では単位時間あたりの樹脂材料の射出容積及び射出に要する時間の調整により、1回の射出において射出される樹脂組成物の体積が制御されるが、単位時間あたりの樹脂組成物の材料容量が射出率(単位:cm
3/sec)である。
【0083】
また、射出率を樹脂組成物が射出される金型キャビティの厚みで除した値として定義される面進行係数が100〜1200cm
3/sec・cmの条件で、射出成形することが好ましい。面進行係数をこのような範囲とすることで、成形品の反ゲート側部分のレーザー透過率をより高くしやすくなり、ゲート位置の調整によって、成形品中の溶着部位の透過率をより高くすることができる。好ましい面進行係数の範囲は200〜1100cm
3/sec・cm、より好ましくは250〜1000cm
3/sec・cm、さらに好ましくは300〜950cm
3/sec・cm、特に好ましくは400〜900cm
3/sec・cmである。
【0084】
得られた成形体は、レーザー溶着に供される。レーザー溶着する方法は、特に制限はなく、通常の方法で行うことができる。得られた成形体(第一の部材)を透過側にし、相手材の樹脂成形体(第二の部材、被着体)とを接触(特に少なくとも溶着部を面接触)させ、レーザー光を照射することにより二種の成形体を溶着、一体化して1つの成形品とする。
【0085】
本発明の樹脂組成物から得られた成形体をレーザー溶着する際には、射出成形金型のゲートからの距離が15mm以上離れた位置にあって、厚みが2mm以下である部位を溶着用部としてレーザー溶着することが好ましい。
【0086】
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、優れたレーザー透過性を示すが、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を射出成形した場合、成形体の部位(位置)によりレーザー透過性の変動が大きく、ゲート位置から近い部位では透過率が悪く、ゲートからの距離が遠くなると優れた透過率を示すことが、本発明者の検討により明らかとなった。例えば、後記実施例にも示されるように、ゲートからの距離が10mmと短い部位ではレーザー透過率が30%台であるのに対し、距離が長くなるにつれて50%台から60%台、さらには70%台、80%を超えるような極めて高い透過率が達成できることが見出された。
そのため、射出成形金型のゲートからの距離が15mm以上離れた位置にあって、厚みが2mm以下である部位を溶着用部としてレーザー溶着を行うことが好ましい。このようにすることでレーザー加工性が良く、より強固なレーザー溶着が可能となる。
【0087】
レーザー溶着に供する成形体の形状には制限はなく、射出成形金型のゲートからの距離が15mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは25mm以上、さらに好ましくは30mm以上、特に好ましくは35mm以上、最も好ましくは40mm以上離れた位置に溶着用部を有していれば、全体の形状はいかなるものであってよい。通常は、溶着用部を相手材(他の樹脂あるいは同じ樹脂の成形体)と接合してレーザー溶着にするため、溶着部は少なくとも接触面(平面など)を有する形状(例えば、板状)である。また、レーザー光の透過部位の厚みは、好ましくは0.1〜2mm、より好ましくは0.3〜1.5mm、さらには0.5〜1mm程度である。
【0088】
レーザー溶着用の部位は、波長940nmのレーザー光における透過率が40%以上であることが好ましく、より好ましくは45%以上、さらには50%以上、中でも55%以上、とりわけ60%以上、特には65%以上が好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
また、透過率は、成形体の厚みが薄いほど高くなるため、上記好ましい透過率とするために、成形体の厚み、射出成形金型のゲートからの距離、射出速度、射出率、面進行係数、樹脂温度及び金型温度等の成形条件等を適宜調整し、レーザー溶着用の部位がより高い透過率となるようにすればよい。
なお、本発明における透過率とは、波長940nmのレーザー光における透過率をいう。
【0089】
レーザー溶着する部位の結晶化温度(Tc)は190℃以下であることが好ましく、より好ましくは188℃以下、さらに好ましくは185℃以下、中でも好ましくは182℃以下、最も好ましくは180℃以下である。また、その下限は、通常160℃、好ましくは165℃以上である。なお、結晶化温度(Tc)の測定方法は、実施例に記載の通りである。
【0090】
射出成形した溶着用成形体の溶着用部と、レーザー光吸収剤を含有する相手側の部材とを、面接触または突合せ接触させ、通常、透過率の高い上記溶着用部材側からレーザー光を照射することにより、両者の界面を少なくとも部分的に溶融させ、冷却することにより一体化して1つの成形体とすることができる。
【0091】
レーザー光吸収剤を含有する相手側の部材としては、レーザー光を吸収することができ、レーザー光が吸収されることにより、溶融される熱可塑性樹脂組成物からなる部材であれば、特に限定されない。具体的には、レーザー光を吸収可能とするために通常カーボンブラックまたはレーザー吸収性染料を含有した樹脂組成物からなる部材等が挙げられる。カーボンブラック等の吸収剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物に対して0.2〜1質量%含有させることが好ましい。
【0092】
レーザー光吸収性染料としては、ニグロシン、アニリンブラック、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィリン、ペリレン、クオテリレン、アゾ染料、アントラキノン、スクエア酸誘導体及びインモニウム等が好ましく挙げられる。
レーザー光吸収性染料の含有量は、樹脂成分100質量部に対し、0.001〜0.2質量部であり、好ましくは0.003〜0.1質量部、さらに好ましくは0.005〜0.05質量部である。
【0093】
より高い溶着強度を得るためには、両方の部材がいずれも上記ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物であって、相手材がカーボンブラックまたはレーザー光吸収性染料を含有していることが好ましい。このような部材であれば、カーボンブラックまたはレーザー光吸収性染料の有無以外は同様の組成であるので、溶着された部材同士がなじみやすく、より強固に固着される。
【0094】
照射するレーザー光の種類は、近赤外レーザー光であれば任意であり、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶)レーザー(波長1064nm)、LD(レーザーダイオード)レーザー(波長808nm、840nm、940nm)等を好ましく用いることができる。
【0095】
レーザー溶着により一体化された成形品の形状、大きさ、厚み等は任意であり、溶着体の用途としては、自動車等の輸送機器用の電装部品、電気電子機器部品、産業機械用部品、その他民生用部品等に特に好適である。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例および比較例において、使用した成分は、以下の表1の通りである。
【0097】
【表1】
【0098】
(実施例A〜B、比較例C〜D)
[レーザー透過側成形体の製造]
上記表1に記載した各成分を以下の表2の透過材組成A〜Dとして記載した量(いずれも質量部)でブレンドし、これを30mmのベントタイプ2軸押出機を用いて250℃で混練してストランド状に押し出し、透過材組成A〜Dのペレットを得た。
【0099】
樹脂組成物の結晶化温度(Tc)は、示差走査熱量測定(DSC)機(パーキンエルマー社製「Pyris Diamond」)を用い、30〜300℃まで昇温速度20℃/minで昇温し、300℃で3分保持した後、降温速度20℃/minにて降温した際に観測される発熱ピークのピークトップ温度として、測定した。
【0100】
また、タカラ工業(株)製メルトインデクサーを用いて、得られたペレットを120℃で5時間乾燥した後、250℃、荷重5kgfの条件で測定した単位時間当たりの溶融流動体積MVR(単位:cm
3/10min)を測定した。
結果を表2に記載した。
【0101】
得られた上記透過材組成A〜Dのペレットを120℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日精樹脂工業社製、NEX80−9E)にて、シリンダー温度255℃、金型温度60℃、射出速度73mm/sec、射出率48cm
3/secで、射出成形して、縦60mm×横60mm、厚さ0.75mm、1mm及び1.5mmの3種の成形品を製造した。
得られた成形品から、
図1に示すように、フィルムゲート1からの距離が10mm、25mmおよび40mmの位置から、幅10mm×長さ40mmの透過材1(部位−1)〜透過材3(部位−3)を切り出した。
また、射出速度を100mm/sec、射出率66cm
3/secに変更した以外は上記と同じにして、ゲート1からの距離が10mm、25mmおよび40mmの位置から透過材1(部位−1)〜透過材3(部位−3)を切り出した。なお、
図1中の4は後述のレーザー溶着評価におけるレーザー照射箇所を示す。
【0102】
上記で得られた各透過材中心部のレーザー透過率を、分光光度計(島津製作所社製「UV−3100PC」)を用い、波長940nmの透過光強度と入射光強度を測定し、その比から透過率(単位:%)した。
結果を表2に記載した。
【0103】
【表2】
【0104】
[レーザー溶着評価]
(実施例1〜13、比較例1〜13)
上記で得られた表2に記載の透過材の中、厚さ1mm及び1.5mmで、表3、4に記載した透過材組成、部位、射出速度、射出率、面進行係数及び透過率の各透過材を透過側にして、以下のレーザー溶着試験を行った。
【0105】
相手材のレーザー吸収用部材としては、以下の組成の樹脂組成物を用いた以外は上記透過材と同じにして得られたペレットを用い、シリンダー温度255℃、金型温度60℃、射出速度73mm/sec、射出率48cm
3/sec、面進行係数:480cm
3/sec・cmの条件で、縦60mm×横60mm×厚さ1mmの成形品を成形した。得られた成形品から、上記透過材と同様に吸収材2(部位−2)を切り出したものを、レーザー吸収用部材(吸収材2)として用いた。。
・ポリブチレンテレフタレート樹脂 ノバデュラン(登録商標、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)5008:67.4質量%
・ガラス繊維 T−187(日本電気硝子社製):30質量%
・安定剤 アデカサイザーEP−17(ADEKA社製):0.4質量%
・安定剤 アデカスタブAO−60(ADEKA社製):0.2質量%
・カーボンブラックマスーバッチ(ノバデュラン5008を80質量%、カーボンブラックを20質量%):2質量%
【0106】
図2に示すように試験片を重ね合わせ、レーザー照射を行った。
図2中、(a)は試験片を側面から見た図を、(b)は試験片を上方から見た図をそれぞれ示している。試験片2は上記レーザー透過材1〜3(幅10mm、長さ40mm、厚さ0.75mm、1mm、及び1.5mm)を、試験片3は溶着する相手材である上記レーザー吸収材2(幅10mm、長さ40mm、厚さ1mm)を、4はレーザー照射箇所を、それぞれ示している。
試験片2と試験片3とを
図2のように重ね合わせ、試験片2側からレーザーを照射した。
【0107】
レーザー溶着は、ファインディバイス社製レーザー装置(レーザー140W ファイバーコア径0.6mm)を用い、レーザー波長:940nm、レーザースキャン速度:40mm/秒、スキャン長:10mm、レーザー出力:20W(厚さ1mm)又は50W(厚さ1.5mm)、加圧:0.4MPa、レーザーヘッドと試験片2間の距離:79.7mmで行った。
【0108】
溶着された試験片を用い、レーザー溶着強度測定を行った。溶着強度の測定は、引張試験機(インストロン社製「5544型」)を使用し、溶着して一体化された試験片2と3とを、その長軸方向の両端をクランプで挟み、引張速度5mm/分で引張って評価した。レーザー溶着強度は、溶着部の引張せん断破壊強度で示した。
溶着試験の結果を、以下の表3、4に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】