(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473621
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】摺動部材
(51)【国際特許分類】
F16C 33/10 20060101AFI20190207BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20190207BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
F16C33/10 Z
F16C17/02 Z
F16C33/20 Z
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-554446(P2014-554446)
(86)(22)【出願日】2013年12月24日
(86)【国際出願番号】JP2013084458
(87)【国際公開番号】WO2014104002
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年6月18日
【審判番号】不服2017-14757(P2017-14757/J1)
【審判請求日】2017年10月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-285578(P2012-285578)
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 周
(72)【発明者】
【氏名】千年 俊之
(72)【発明者】
【氏名】冨川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】壁谷 泰典
(72)【発明者】
【氏名】吉見 太一
【合議体】
【審判長】
大町 真義
【審判官】
内田 博之
【審判官】
尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭64−30923(JP,A)
【文献】
特開2004−211859(JP,A)
【文献】
特表2012−514170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/10 , F16C 17/02 , F16C 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の形状を有する合金で形成されたライニング層と、
前記ライニング層の相手軸と摺動する内周面側に樹脂で形成されたオーバレイ層であって、当該相手軸の軸方向の両端部から所定の範囲における高さが、当該所定の範囲以外の部分における高さよりも高い盛上部を有するオーバレイ層と
を有する摺動部材。
【請求項2】
前記盛上部は、前記相手軸の延びる方向における前記摺動部材の幅Kに対し、軸方向最端部からの距離がK/2よりも小さくなる位置を傾斜開始位置として、前記傾斜開始位置と前記軸方向最端部との間に頂部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
【請求項3】
前記所定の範囲以外の部分と前記頂部とにおける前記オーバレイ層の膜厚の差が6μm以下である
ことを特徴とする請求項2に記載の摺勤部材。
【請求項4】
前記オーバレイ層は、固体潤滑材および硬質物の少なくとも一方、並びにバインダー樹脂を含む
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の摺勤部材。
【請求項5】
前記バインダー樹脂は、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、およびポリフェニレンサルファイド樹脂のうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の摺動部材。
【請求項6】
前記固体潤滑材は、MoS2、PTFE、グラファイト、WS2、h−BN、Sb2O3のうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項4または5に記載の摺動部材。
【請求項7】
前記硬質物は、SiC、Al2O3、TiN、AlN、CrO2、Si3N4、ZrO2、Fe3Pの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項4ないし6のいずれか一項に記載の摺動部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すべり軸受等に用いられる摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
すべり軸受において、摩耗の防止、焼付きの防止は古くから認識されている課題である。この課題に対処するため、例えば特許文献1は、軸方向の一端から他端に向けて内周をテーパ形状に加工すること、さらに、内周面に凹部(油溜め部)を設けて油の保持性を高めることを開示している。
【0003】
図3および
図4は、従来技術に係る主軸受501を示している。主軸受501は、半割軸受503および505を有する。半割軸受503および505は接合され、円筒状の軸受となる。半割軸受503および505は、それぞれ、裏金507、ライニング(軸受合金)層509、およびオーバレイ層511を有する。半割軸受503には、内周面の中央部付近に油溝513が形成されている。さらに、半割軸受503には油穴515が形成されている。油穴515は、油溝513まで連通しており、油溝513は油穴515を介して外部に開放されている。また、半割軸受505には、油溝513に連なる切欠溝517が形成されている。
【0004】
また、主軸受501の軸方向両端部は、端に向って次第に内径が大きくなるテーパ状に形成されている(
図4)。テーパ状部分519には、油溜め部として周方向に延びる溝521が複数本形成されている。溝521は、上下の半割軸受503,505のオーバレイ層511に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−32837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された技術においては、軸受面の軸方向端部が端に向かって内径が大きくなっているため、エンジン停止時(回転停止時)に軸受端部方向に潤滑油が流れてしまう。このため、テーパ状部分519の油溜め部(溝521)以外の部分では、油膜がほとんど残らず、起動時のトルクが増大してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、回転停止時の油保持性を向上させ、起動時の摩擦トルクを低減させる摺動部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所定の形状を有する合金で形成されたライニング層と、前記ライニング層のうち相手軸と摺動する内周面において樹脂で形成されたオーバレイ層であって、当該相手軸の軸方向の両端部から所定の範囲における高さが、当該所定の範囲以外の部分における高さよりも高い盛上部を有するオーバレイ層とを有する摺動部材を提供する。
【0009】
前記盛上部は、前記相手軸の延びる方向における前記摺動部材の幅Kに対し、軸方向最端部からの距離がK/2よりも小さくなる位置を傾斜開始位置として、前記傾斜開始位置と前記軸方向最端部との間に頂部を有してもよい。
【0010】
前記所定の範囲以外の部分と前記頂部とにおける前記オーバレイ層の膜厚の差が6μm以下であってもよい。
【0011】
前記オーバレイ層は、固体潤滑材および硬質物の少なくとも一方、並びにバインダー樹脂を含んでもよい。
【0012】
前記バインダー樹脂は、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、およびポリフェニレンサルファイド樹脂のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0013】
前記固体潤滑材は、MoS
2、PTFE、グラファイト、WS
2、h−BN、S
b20
3のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0014】
前記硬質物は、SiC、Al
2O
3、TiN、AIN、CrO
2、Si
3N
4、Zr0
2、Fe
3Pの少なくとも1つを含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転停止時の油保持性を向上させ、起動時の摩擦トルクを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る主軸受11の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、一実施形態に係る主軸受11の構造を示す図である。主軸受11は摺動部材の一例であり、例えば、内燃機関のクランクシャフトとコネクティングロッド、またはクランクシャフトとエンジンブロックの間の軸受として用いられる。主軸受11は、2つの半割軸受13により構成される。2つの半割軸受13を接合すると円筒状の軸受が得られる。なお、
図1においては、単一の半割軸受13のみを示している。
【0018】
半割軸受13は、裏金15、ライニング(軸受合金)層17、およびオーバレイ層19を有する。裏金15は、ライニング層17の機械的強度を補強するための層である。裏金15は、例えば鋼で形成される。ライニング層17は、軸受の摺動面(軸と接触する面)に沿って設けられ、軸受としての特性、例えば、摩擦特性(摺動特性)、耐焼付性、耐摩耗性、なじみ性、異物埋収性(異物ロバスト性)、および耐腐食性等の特性を与えるための層である。ライニング層17は、軸受合金で形成されている。軸との凝着を防ぐため、軸受合金は軸といわゆる「ともがね(ともざい)」となることを避け、軸とは別の材料系が用いられる。この例では、鋼で形成された軸の軸受として用いるため、軸受合金としてアルミニウム合金が用いられる。
【0019】
オーバレイ層19は、ライニング層17の摩擦係数、なじみ性、耐腐食性、および異物埋収性(異物ロバスト性)等の特性を改善するための層である。オーバレイ層19は、バインダー樹脂と、バインダー樹脂中に分散された固体潤滑剤および硬質物の少なくとも一方を含む。なお、オーバレイ層19の成分は、固体潤滑材:30〜70体積%、硬質物:0〜5%、バインダー樹脂:残余、であることが好ましい。
【0020】
バインダー樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂が用いられる。具体的には、バインダー樹脂は、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルケーテルケトン樹脂、およびポリフェニレンサルファイド樹脂のうち少なくとも一種を含む。
【0021】
固体潤滑材は、摩擦特性を改善するために添加される。固体潤滑剤は、例えば、MoS
2、WS
2、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト、h−BN、およびSB
2O
3のうち少なくとも一種を含む。例えばMoS
2は、良好な潤滑性を与える。また、PTFEは分子間凝集力が小さいので、摩擦係数を低減する効果がある。さらに、グラファイトは濡れ性を向上させ、初期なじみ性を向上させる。初期なじみ性とは、摺動開始後に相手材と摺接する際、摺動面が摩耗して平滑になり、摺動性を向上させる性質である。初期なじみ性の発現により摺動性が向上すると、摺動層全体としての摩耗量が低減される。
【0022】
硬質物は、耐摩耗性を改善するために添加される。硬質物は、例えば、SiC、Al
2O
3、TiN、AlN、CrO
2、Si
3N
4、ZrO
2、Fe
3Pのうち少なくとも一種を含む。
【0023】
図1の半割軸受13と接合されるもう一方の半割軸受(図示略)には、内周面において油溝(図示略)が形成されている。この油溝は、軸方向(軸が延びる方向)において中央部付近に設けられている。またこの油溝は、周方向(摺動方向。軸方向と垂直)に延びている。この油溝は半割軸受の上部に形成された油穴(不図示)を介して外部に開放されている。
【0024】
図1に示す半割軸受13は、内周面に切欠溝21を有する。また、切欠溝21は周方向の端部において、もう一方の半割軸受に形成された油溝に連なる位置に形成されている。
【0025】
図2は、主軸受11の、相手軸23の軸方向に平行(かつ摺動方向に垂直)な断面を示す模式図である。
図2には、主軸受11の内周面を摺動する相手軸23も図示されている。主軸受11において、各層は、相手軸23に近い方から順に、オーバレイ層19、ライニング層17、および裏金15の順に積層されている。オーバレイ層19は、2つの盛上部33を有する。盛上部とは、軸方向に平行かつ摺動方向に垂直な断面において、他の部分よりも高さが高い(層の厚さが厚い)部分をいう。
図2の例では、オーバレイ層19の中央部分(領域31)は高さ(厚さ)が均一であるのに対し、端部(領域29)は中央部分よりも高く(厚く)盛り上がっている。盛上部33は、摺動方向に延びている。
【0026】
図2の例で、領域31においてオーバレイ層19の高さ(厚さ)は均一である。この断面で見ると点Pから外側に向かうとオーバレイ層が盛り上がっており、その意味で点Pを傾斜開始位置という。盛上部33は頂部37を有している。頂部37は、傾斜開始位置Pより外側(すなわち傾斜開始位置Pと端部35との間)に位置している。主軸受11の軸方向の幅Kに対し、傾斜開始位置Pは、端部35からの距離がK/2未満の位置にある。なお、傾斜開始位置Pは、(最も近い)端部35からの距離がK/3以下の位置にあることが好ましい。盛上部33の稜線の形状は、滑らかな曲線であることが好ましい。すなわち、傾斜開始位置Pから頂部37を介して端部35に至る稜線は滑らかな曲線であることが好ましい。
【0027】
また、盛上部33の高さ(他の部分からの高さ、膜厚差)dは、6μm以下であることが好ましい。
【0028】
オーバレイ層19は、例えば、スプレーコーティングを用いて形成される。具体的には、まず、樹脂、固体潤滑材および硬質物を希釈剤に溶かし、塗布液を調整する。希釈剤は、粘度を調整して、混合を容易とするためのものであり、樹脂が溶解可能なものであればどのようなものが用いられてもよい。例えばポリアミドイミド樹脂を用いる場合には、キシレン、N−メチル−2−ピロリドン、トルエンなどの有機溶剤が希釈剤として用いられる。次に、ベース層であるライニング層17に対しこの塗布液をスプレーで塗布する。このとき、塗布液を厚く(例えば3μm以上)塗布する。塗布後、150〜300℃で希釈剤を乾燥させ、オーバレイ層19を形成する。このとき、塗布液の表面張力により盛上部33が形成される。盛上部33の高さdは、例えば、塗布液の濃度、塗布液を塗布する厚さ、乾燥温度、または乾燥時間により制御される。この製造方法によれば、ライニング層や裏金等のコーティング元の形状に関係なく、表面張力を利用して盛り上がり形状を形成できるため、大掛かりな設備(例えば電解めっき)を用いなくても盛上部を形成することができる。
【0029】
別の例で、オーバレイ層19は、ロールコーティング(ロール転写)により形成されてもよい。具体的には、上記の塗布液を、中凸形状のロールによってライニング層17上に塗布する。中凸ロールとは、回転軸の延びる方向において中央部分の径が太く、軸方向の両端にいくにつれ径が細くなるロールである。塗布後、希釈剤を乾燥させる。盛上部33の高さdは、例えば、中凸ロールの形状により制御される。オーバレイ層19は、この外、タンブリング法、浸漬法、はけ塗り法、印刷法などにより形成されてもよい。
【0030】
主軸受11は、盛上部33により形成される油保持部40において潤滑油を保持し、起動時に相手軸23と主軸受11との間に潤滑油を引き込み易くできる。これにより、起動時の相手軸23と主軸受11との接触が緩和される。
【実施例】
【0031】
オーバレイ層19の膜厚差(高さの差)dおよび傾斜開始位置Pを変化させた試料(実施例1〜7および比較例1〜4)を作製し、これらの試料において起動トルクを測定した。なお起動トルクは、相手軸23と主軸受11との間に形成される油膜の厚さを示す指標である。油膜の厚さを直接測定することは困難であるので、油膜の厚さを示す指標として起動トルクを測定した。起動トルクがより小さいと油膜がより厚いことが示される。
【0032】
まず、試料の作製方法は以下のとおりである。鋼製の裏金15に、アルミニウム合金をライニング層17として圧接した。この材料を半割り円筒形状に加工した。オーバレイ層19の材料を溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)で希釈して塗布液を調整した。この塗布液をエアースプレー方法でコーティングした。次に、120℃、20minで乾燥した後、250℃、60minで焼成を行った。
【0033】
実施例1〜7および比較例1〜4に共通する特性は以下のとおりである。
軸受幅K:15mm
オーバレイ層の中央膜厚:6μm
オーバレイ層の成分:バインダー樹脂(PAI) 49体積%
固体潤滑剤(MoS
2) 50体積%
硬質物(SiC) 1体積%
各試料におけるオーバレイ層19の膜厚差dおよび傾斜開始位置Pは表1に記載されている。
【0034】
これらの試料に対し、起動トルクを測定した。起動トルク(Nm)は、上記のとおり作製した試料で作製した主軸受を実機エンジンのコネクティングロッドに組み込んだ状態で測定した。
【0035】
表1は、各試料における測定結果を示している。
【表1】
【0036】
表1から分かるように、膜厚差dが1〜6μmで、かつ傾斜開始位置PがK/3〜K/6である試料(実施例1〜7)の起動トルクは、膜厚差dが1〜6μmの範囲に無いかまたは傾斜開始位置がK/2である試料(比較例1〜4)の起動トルクより低くなった(すなわち、油膜厚さが厚いと推定される)。
【0037】
膜厚差dが1〜6μmの範囲に入っていても、傾斜開始位置PがK/2であると起動トルクが大きい傾向が見られた。例えば、実施例6、実施例7、および比較例3を比べると、傾斜開始位置PがK/2の試料(比較例3)は他の試料(実施例6および7)よりも起動トルクが大きかった(すなわち、この中では比較例3の油膜厚さが薄いと推定される)。また、傾斜開始位置Pが<K/2の範囲に入っていても、膜厚差dが1〜6μmの範囲に入っていないと起動トルクが大きい傾向が見られた。例えば、実施例4と比較例4とを比べると、膜厚差dが10μmの試料(比較例4)は他の試料(実施例4)よりも起動トルクが大きかった(すなわち、油膜厚さが薄いと推定される)。
【0038】
このように、本実施形態に係る主軸受によれば、エンジン停止時(回転停止時)の油保持性を向上させ、起動時の摩擦トルクを低減させることができる。起動トルクを低減することにより燃費性能が向上する。更に、片当たりが発生しやすい形状であっても周囲の油を引き込み相手軸との固体接触を避けることができるため、焼き付き難くすることができる。
【0039】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は単なる例示であり、本発明本発明はこれに限定されない。例えば、半円筒の部品を2つ接合して円筒状の軸受を得るのではなく、単一の部品を円筒状に成形して軸受としてもよい。また、軸受の形状は円筒状でなく、楕円筒状であってもよい。さらに、本発明は、軸受以外の摺動部材に用いられてもよい。
【0040】
例えば、オーバレイ層19の成分、実施形態で例示したPAI+MoS
2+SiCに限定されない。例えば、オーバレイ層19の成分は、PAI+PTFEまたはPAI+Gr+SiCでもよい。その他、固体潤滑材は複数組み合わせてもよく、硬質物も複数組み合わせてもよい。
【0041】
図5は、主軸受11の断面構造の別の例を示す図である。実施形態においては、盛上部33以外の部分(領域31)においてオーバレイ層19の膜厚が均一である例を説明した。しかし、領域31において、オーバレイ層19の膜厚は均一でなくてもよい。
図5(a)は、領域31において、オーバレイ層19に複数の溝が形成されている例を示している。この場合、膜厚差dは、例えば領域31における平均膜厚と頂部37との差として定義される。あるいは、領域31における最薄部と頂部37との差が膜厚差dとして定義されてもよい。
図5(b)は、領域31において、オーバレイ層19に凸部が形成されている例を示している。この場合も、
図5(a)の場合と同様に、領域31の平均膜厚(または最薄部の膜厚)と頂部37との差が膜厚差dとして定義される。要は、領域31の膜厚の代表値と、頂部37との差が膜厚差dとして定義される。膜厚の代表値としては、例えば、平均値、最小値、または最大値が用いられる。
【0042】
領域31の膜厚が均一でない場合において、傾斜開始位置Pは、例えば、オーバレイ層19の平均膜厚(または最薄部における膜厚)との差が所定のしきい値を超えた位置として定義されてもよい。あるいは、頂部37を含む所定の領域(例えば、頂部37を含み、頂部37との膜厚の差が所定のしきい値以内である領域)を盛上部33と定義し、盛上部33の境界を傾斜開始位置Pと定義してもよい。
【符号の説明】
【0043】
11…主軸受(摺動部材)
17…ライニング(ベース層)
19…オーバレイ層
23…相手軸
29…軸方向端部
31…軸方向中央部(軸方向端部を除く部分)
33…盛上部
35…軸方向最端部
37…頂部
d…膜厚差
P・・・傾斜開始位置