(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の緑化構造では、建物壁面の周方向におけるルーバー設置領域の一部を緑化対象領域とする場合、緑化対象領域に設置される植栽ルーバーの形態と非緑化対象領域に設置される非植栽ルーバーの形態とが大きく異なるため、その不均一なルーバー形態によって建物の意匠性に悪影響を及ぼす虞がある。
【0007】
その上、緑化構造に用いられる従来の植栽ルーバーでは、容器状本体の開口部から装着された植栽物の基板マットが強風で飛ばされないように、容器状本体の返しフランジ部の突出代を大きくすると、これに伴って幅狭になった容器状本体の開口部に対して植栽物の基板マットを大きく圧縮した状態で通過装着しなければならないため、植栽作業に多くの手間を要するとともに、基板マットに植え付けられている植物を損傷する可能性がある。
【0008】
また、基板マット及びこれに植え付けられている植物を含む植栽物を他種の植栽物に植え替える場合では、容器状本体の唯一の開口部から出し入れを行う必要があるが、この開口部は植物の成長に伴って狭くなっているため、植栽物の植え替え作業においても多くの手間を要している。
【0009】
さらに、植栽物の基板マットに変えて土壌を使用した場合には、容器状本体の返しフランジ部の突出代を大きくしても、土壌自体の保形力及び植物の保持力が弱いため、強風時に土壌が飛ばされたり、植物が抜け出す虞がある。
【0010】
上述の実情に鑑み、本発明の主たる課題は、上述の不都合を解消することのできる
緑化構造及び植栽ルーバーを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
植栽用内部空間を備えた筒状の本体を有する植栽ルーバーであって、
前記本体には、その周側部に配置されて植栽の少なくとも一部を外部に露出させる第1開口部と、その第1開口部とは異なる位置に配置された植栽作業用の第2開口部とが設けられて
いる。
【0012】
上記構成によれば、建物等の緑化に用いられる植栽ルーバーには、茎葉部や葉状部等の植物の一部を外部に露出させるための第1開口部とは別に、植栽作業用の第2開口部が設けられているので、第1開口部とは異なる位置にある第2開口部を使用して、植栽ルーバーへの植栽物の組み付けや他種の植栽物への植え替え等の植栽作業を容易に行うことができる。
【0013】
植栽ルーバーにおいて、前記第1開口部は、前記本体の軸心方向に沿って延設され、前記第2開口部は、前記第1開口部に連通する状態で前記本体の軸心方向の端部に設けられ、前記第2開口部を閉塞する蓋体が設けられて
いる。
【0014】
上記構成によれば、本体の軸心方向に沿って開口形成された第1開口部と、本体の軸心方向の端部において開口形成された第2開口部とが連通するので、別の箇所で育成された植栽物を植栽ルーバーに組み付ける場合でも、植栽物における茎葉部や葉状部等の露出部分は第1開口部に沿ってスムーズに挿入することができると同時に、土壌等の植栽物の非露出部分は本体端部の第2開口部からスムーズに挿入することができる。
したがって、植栽物の露出部位の損傷を抑制しながら、植栽ルーバーに対して植栽物を能率良く容易に組み付けることができる。
【0015】
植栽ルーバーに対する植栽物の組み付け方法であって、
植物と土壌とを一体化した植栽ユニットを、前記第2開口部を通して前記本体の内部にスライド移動させて、前記本体に植物と土壌との植栽物を組み付
ける。
【0016】
上記構成によれば、植栽物を、植物と土壌とを一体化した植栽ユニットとすることにより、植栽ルーバー以外の別の箇所において、植栽ユニットの植物をそれの根が十分張って一体化が進んだ状態にまで育成することができる。その状態であっても、第2開口部及び第1開口部を通して本体の内部にスライド移動させながら能率良く容易に組み付けることができるとともに、植栽ルーバーの施工当初においても、強風時における土壌の飛散や植物の抜け出しを抑制することができる。
【0017】
しかも、植栽ルーバーに対しては、緑化工事時において、根が十分張って一体化が進んだ状態にまで育成された植栽ユニットを組み付けることが可能であるから、例えば、植栽ルーバーを植栽物の育成当初から栽培容器として使用する場合のような外観の汚れが少なく、植栽ルーバーの外観の清掃作業の簡素化を図ることができる。
【0018】
本発明による
第1特徴構成は、
植栽用内部空間を備えた筒状の本体に、その周側部に配置されて植栽物の少なくとも一部を外部に露出させる第1開口部と、その第1開口部とは異なる位置に配置された植栽作業用の第2開口部とが設けられている植栽ルーバーを用いて建物の壁面を緑化する緑化構造であって、
前記建物の周方向においてルーバー設置領域の一部を緑化対象領域とし、その残部を非緑化対象領域とし、
前記緑化対象領域には、建物の周方向に延びる状態で上下方向に所定間隔を隔てて複数の前記植栽ルーバーを配設し、
前記非緑化対象領域には、上下方向での前記植栽ルーバーの配設位置と同じ位置に前記植栽ルーバーと一連に連続する状態で非植栽ルーバーを配設し、
前記非植栽ルーバーは、前記植栽ルーバーと建物外方側の形状が同形状に形成されている点にある。
【0019】
上記構成によれば、植栽ルーバーを用いて建物の壁面を緑化する際、建物の周方向におけるルーバー設置領域が緑化対象領域と非緑化対象領域とに分かれる場合であっても、非緑化対象領域に配設される非植栽ルーバーが、緑化対象領域に配設される植栽ルーバーの配設位置と同じ位置で一連に連続し、且つ、非植栽ルーバーと植栽ルーバーとの建物外方側の形状が同形状に形成されているため、ルーバー設置領域全域においてルーバー形態の均一な外観を得ることができ、意匠性の高い壁面緑化を行うことができる。
また、本発明の第2特徴構成は、上述の第1特徴構成を有する緑化構造において、
前記第1開口部は、前記本体の軸心方向に沿って延設され、
前記第2開口部は、前記第1開口部に連通する状態で前記本体の軸心方向の端部に設けられ、
前記第2開口部を閉塞する蓋体が設けられている前記植栽ルーバーを用いる点にある。
本発明の第3特徴構成は、植栽用内部空間を備えた筒状の本体には、それの軸心方向に沿って周側部に配置されて植栽物の少なくとも一部を外部に露出させる第1開口部と、前記本体の軸心方向の端部において前記第1開口部に連通する植栽作業用の第2開口部とが設けられ、
前記第2開口部を閉塞する蓋体が設けられている植栽ルーバーであって、
前記本体は、前記植栽用内部空間を構成する左右の側壁部と底壁部とを備え、前記両側壁部の内面の各々には、前記蓋体をネジ止めするための突条部が軸芯方向に沿って突出形成され、前記底壁部の内面には、透水層が突出形成され、前記突条部と前記透水層とにより、前記本体の内面と前記植栽用内部空間内に配置される植栽物との間に空気層が形成可能に構成されている点にある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
図1は、ビル等の建物Bの壁面を緑化する緑化構造の一例を示す。この実施形態では、建物Bの全周に亘るルーバー設置領域のうち、周方向の一部を緑化対象領域A1とし、そ他の残部を非緑化対象領域A2としている。
【0022】
建物Bの緑化対象領域A1においては、
図2、
図10に示すように、上方に開口する植栽用内部空間1を備えたアルミニウム製の筒状の複数本の植栽ルーバー2が用いられている。この複数本の植栽ルーバー2は、建物Bの周方向に沿って水平に延びる状態で上下方向に所定間隔を隔てて配設されている。
建物Bの非緑化対象領域A2においては、
図2、
図8に示すように、内部空間が閉止されたアルミニウム製の筒状の複数本の非植栽ルーバー3が用いられている。この複数本の非植栽ルーバー3は、植栽ルーバー2の上下方向での配設間隔の1/2の配設間隔で上下方向に配設されている。
そのうち、上下方向で1本おきに位置する非植栽ルーバー3と植栽ルーバー2とが同じ高さ位置において水平方向に連続する状態で配設されている。
【0023】
植栽ルーバー2は、
図3〜
図6に示すように、二つの等しい長さの平行線と二つの半円形線からなる横断面形状が長円形状の横長筒体に形成されたルーバー本体2Aと、このルーバー本体2Aの筒軸心X方向両端部の第2開口部1bを止水状態で閉止する脱着可能な蓋体2Bとから構成されている。
また、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aにおける下方側の平行線形成部位が底壁部2aに、且つ、上方側の平行線形成部位が植栽用内部空間1の第1開口部1aに構成されている。そのため、ルーバー本体2Aの全長L2に亘る植栽用内部空間1の第1開口部1aとルーバー本体2Aの筒軸心X方向両端部の第2開口部1bとが連通する。
【0024】
さらに、
図4、
図5、
図7に示すように、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aにおける半円形線形成部位である長軸方向両側の両半円筒壁部
(側壁部)2bの内側面で、且つ、ルーバー本体2Aの高さ方向の中央位置に相当する部位には、蓋体2Bを取付けるビス4の捻じ込みに伴って雌ネジが形成される横断面形状が「C」の字状の突条部2cが筒軸心X方向に沿って一体形成されている。
【0025】
非植栽ルーバー3は、
図2、
図8に示すように、横断面形状が真円形状の円筒体に形成され、且つ、植栽ルーバー2と同じ長さに形成されたルーバー本体3Aと、このルーバー本体3Aの筒軸心X方向両端部の開口部を閉止する脱着可能な蓋体3Bとから構成されている。
【0026】
さらに、非植栽ルーバー3のルーバー本体3Aにおける内側面で、且つ、鉛直方向の中心線Yと交差する部位には、蓋体3Bを取付けるビス(図示せず)の捻じ込みに伴って雌ネジが形成される横断面形状が「C」の字状の突条部3aが筒軸心X方向に沿って一体形成されている。
【0027】
そして、植栽ルーバー2と非植栽ルーバー3は、
図4に示すように、少なくとも建物外方側の形状が同形状(同一形状から類似する形状までを含む)に形成されている。
当該実施形態においては、植栽ルーバー2と非植栽ルーバー3は、建物外方側の外面形状と建物内方側(建物Bの外壁5に対面する側)の外面形状とが同一又は略同一形状に構成されている。
詳しくは、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aの高さHと非植栽ルーバー3のルーバー本体3Aの外径(高さ)Dとが同一に構成され、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aにおける半円形線形成部位である長軸方向両側の両半円筒壁部2bと、非植栽ルーバー3のルーバー本体3Aにおける鉛直方向の中心線Yを対称軸とする左半側又は右半側の半円筒壁部3bとが同一曲率の半円形状に構成されている。
【0028】
また、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aにおける横幅Wが高さHよりも大なる寸法に構成されているため、植栽ルーバー2と非植栽ルーバー3とを水平方向で一連に連続配設するにあっては、
図2、
図4に示すように、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aにおける建物外方側の半円筒壁部2bの最外方側位置と、非植栽ルーバー3のルーバー本体3Aにおける建物外方側の半円筒壁部3bの最外方側位置とが水平方向で一直線状又は略一直線状に連続する状態で配置してある。
【0029】
そして、上述の構成により、建物Bの周方向におけるルーバー設置領域が緑化対象領域A1と非緑化対象領域A2とに分かれる場合であっても、非緑化対象領域A2に配設される非植栽ルーバー3が、緑化対象領域A1に配設される植栽ルーバー2の配設位置と同じ位置で一連に連続し、且つ、非植栽ルーバー3と植栽ルーバー2との少なくとも建物外方側の形状が同形状に形成されているため、ルーバー設置領域全域においてルーバー形態の均一な外観を得ることができ、意匠性の高い壁面緑化を行うことができる。
【0030】
さらに、
図1に示すように、建物Bのルーバー設置領域のうち、緑化対象領域A1と非緑化対象領域A2との境界が建物Bの角部に位置する箇所(
図1における建物Bの右上の角部に対応するルーバー交差箇所)においては、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aの端部と非植栽ルーバー3のルーバー本体3Aの端部の各々が、それらの交差角度に対応する突合せ傾斜角度(当該実施形態では45度の突合せ傾斜角度)でカットされ、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aの端部と非植栽ルーバー3のルーバー本体3Aの端部とが突合せ状態で配置されている。
【0031】
この突合せ配置状態では、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aの端部における建物外方側の外面と非植栽ルーバー3のルーバー本体3Aの端部における建物外方側の外面とが、平面視において段差の無い又は少ない状態で交差方向(当該実施形態では直角方向)に沿って連続する。しかも、上述のように植栽ルーバー2と非植栽ルーバー3との少なくとも建物外方側の形状が同形状に形成されているため、植栽ルーバー2と非植栽ルーバー3との交差箇所においてもルーバー形態の均一な外観を得ることができ、意匠性の高い壁面緑化を行うことができる。
【0032】
また、建物Bの周方向で隣接する両緑化対象領域A1の境界が建物Bの角部に位置する箇所(
図1における建物Bの右下の角部に対応するルーバー交差箇所)においても、隣接する両植栽ルーバー2のルーバー本体2Aの端部の各々が、それらの交差角度に対応する突合せ傾斜角度(当該実施形態では45度の突合せ傾斜角度)でカットされ、隣接する両植栽ルーバー2のルーバー本体2Aの端部同士が突合せ状態で配置されている。
【0033】
この突合せ配置状態においても、隣接する両植栽ルーバー2のルーバー本体2Aの端部における建物外方側の外面が、平面視において段差の無い又は少ない状態で交差方向(当該実施形態では直角方向)に沿って連続する。しかも、上述のように隣接する両植栽ルーバー2の建物外方側の形状が同一形状であるため、隣接する両植栽ルーバー2の交差箇所においてもルーバー形態の均一な外観を得ることができ、意匠性の高い壁面緑化を行うことができる。
【0034】
尚、
図2、
図4に示す植栽ルーバー2のルーバー本体2Aと非植栽ルーバー3のルーバー本体3Aとを、植栽ルーバー2の筒軸心Xと非植栽ルーバー3の筒軸心X1とが水平方向で一直線状又は略一直線状に連続する状態で配置すると、両ルーバー本体2A,3Aの隣接端部において段差が生じるが、この場合でも、非植栽ルーバー3と植栽ルーバー2との建物外方側の形状が同形状に形成され、且つ、高さも統一構成されているため、ルーバー設置領域全域においてルーバー形態の略均一な外観を確保することができる。
【0035】
また、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aにおける両半円筒壁部2bの上半部分は、上方ほどルーバー本体2Aの横幅方向中央位置側に近づく湾曲面に形成されているため、この両半円筒壁部2bの上半部分をもって、ルーバー本体2Aの植栽用内部空間1内に配置された植栽物Pがルーバー本体2Aの第1開口部1aから抜け出すことを阻止する返し部に兼用構成されている。
【0036】
次に、植栽ルーバー2の取付け構造について説明する。
図3〜
図6に示すように、建物Bの外壁5における水平方向及び上下方向に所定間隔を隔てた複数のルーバー取付け箇所には金属製のブラケット10が配設されている。
ブラケット10としては種々の形態が存在する。その一例を挙げると、
図3、
図4、
図6に示すブラケット10では、建物躯体側に溶接やアンカーボルト等で固定されるベースプレート10Aと、当該ベースプレート10Aから建物外方側に鉛直方向に沿う姿勢で垂直に突設される取付けプレート10B、及び、両プレート10A、10Bに固着される水平方向に沿う補強リブ10Cとが備えられている。
【0037】
水平方向で隣接する両ブラケット10の取付けプレート10Bの中心間距離L1は、
図6に示すように、植栽ルーバー2の全長L2よりも若干大なる寸法に設定され、水平方向で隣接する両植栽ルーバー2の端部間に、後述する植栽ルーバー2用のルーバー受け部材17を取付けるためのスペースを確保する空隙Sが形成されている。
【0038】
ブラケット10のうち、上下方向に配置される各列の複数のブラケット10の取付けプレート10Bに亘って、左右一対のアングル鋼製の支持部材11における一方の辺部11Aがボルト12・ナット13で共締め固定されている。
水平方向で隣接する両ブラケット10の取付けプレート10B間において対をなす両支持部材11の他方の辺部11Bの外側面には、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aにおける建物内方側の半円筒壁部2bの筒軸心X方向両端側部位がボルト14・ナット15で締め付け固定されている。
【0039】
この植栽ルーバー2のルーバー本体2Aをボルト14・ナット15で取付けるにあたっては、
図4、
図7に示すように、ルーバー本体2Aの半円筒壁部2bの内面に突出形成されている突条部2cを跨ぐ門の字状のボルト受け部材16が設けられている。
【0040】
両支持部材11の他方の辺部11Bには、
図3〜
図6に示すように、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aにおける底壁部2aの下面(外側面)を載置支持する載置板部17A、及び、当該載置板部17Aから両植栽ルーバー2の端部間の空隙Sを通して支持部材11に延設される腕部17Bとを備えたルーバー受け部材17が溶接等で固着されている。
【0041】
図3、
図5、
図7に示すように、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aにおける底壁部2aの筒軸心X方向両端側部位には排水取付け孔2dが貫通形成され、各排水取付け孔2dには、底壁部2aの上面(内側面)における排水取付け孔2dの開口周縁に当接する鍔部18aを備えた上側ニップル18と、底壁部2aの下面における排水取付け孔2dの開口周縁に下方側から当接するナット19aを備えた下側ニップル19とが止水状態で螺合装着されている。
【0042】
また、下側ニップル19の雄ネジ部19bには、上側の植栽ルーバー2の植栽用内部空間1内の水を下側の植栽ルーバー2の植栽用内部空間1内に流下案内する排水パイプ20、又は、最終排水順位に設定された植栽ルーバー2の植栽用内部空間1内の水を後述の縦樋26に排出案内する外部排水パイプ21が螺合接続されている。
【0043】
さらに、
図3〜
図7に示すように、排水パイプ20の下端部が貫通する振れ止め孔22aを備えたパイプ受け部材22が、支持部材11の他方の辺部11Bにボルト23・ナット24で締め付け固定されている。
【0044】
ルーバー受け部材17の載置板部17Aには、
図7に示すように、下側ニップル19のナット19aが回転操作可能な状態で入り込むバカ孔17aが形成されている。
【0045】
支持部材11の他方の辺部11Bは、建物Bの外壁5と植栽ルーバー2との間の空間に配置される縦樋26の取付け部に構成されている。具体的には、縦樋26を支持する縦樋ブラケット27が、支持部材11の他方の辺部11Bに対してパイプ受け部材22とボルト23・ナット24で共締め固定されている。
【0046】
当該実施形態では、上下方向に配設される多数の植栽ルーバー2を、複数のグループに分け、そのグループ内の最上部に位置する植栽ルーバー2内の水(潅水パイプから植栽物Pに供給された水や雨水)を順次下方の植栽ルーバー2に流下案内し、グループ内の最終排水順位である最下部の植栽ルーバー2内の水を縦樋26に排出する。
【0047】
尚、非植栽ルーバー3の取付け構造は、
図8に示すように、植栽ルーバー2の取付け構造で説明したブラケット10及び支持部材11が用いられ、この支持部材11に、非植栽ルーバー3のルーバー本体3Aにおける左右一側の半円筒壁部3bがボルト28・ナット29で締め付け固定されている。
【0048】
次に、植栽ルーバー2に植栽される植栽物P及び植栽ルーバー2に対する植栽物Pの組み付け方法について説明する。
植栽物Pは、
図9に示すように、植物30と栽培床材の一例である土壌31とを一体化した植栽ユニットPUから構成されている。
つまり、この植栽ユニットPUは、先ず、
図9(a)に示すように、透水性、通気性及び可撓性と適度の強度を備えた不織布(例えば、防草シート)等の栽培シート32を、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aにおける内面の横断面形状よりも少し小さな横断面形状の筒状に巻回し、この巻回された筒状の栽培シート32の長手方向の複数個所を型崩れしないように紐33で縛る。
紐33で結束された筒状の栽培シート32の筒軸心方向一端側の開口部は、例えば、植物30の苗木栽培用のビニール製(軟質のポリ塩化ビニル製)カップ材36を利用して閉塞する。
尚、栽培シート32の全長は、ボルト14・ナット15によるルーバー本体2Aの取付け間隔よりも小なる長さに構成されている。
【0049】
次に、
図9(b)に示すように、紐33で結束された筒状の栽培シート32を、閉塞処理されている筒軸心方向一端側の開口部が下方となる縦姿勢に保持し、上方に開口する筒軸心方向他端側の開口部から土壌31を充填する。
土壌31としては肥料を含んだ軽量な培養土が好ましい。
土壌31の充填が終了すると、筒状の栽培シート32の筒軸心方向他端側の開口部を、植物30の苗木栽培用のビニール製カップ材36を利用して閉塞する。
尚、当該実施形態では、筒状の栽培シート32の筒軸心方向両端側の開口部を苗木栽培用のビニール製カップ材36を利用して閉塞したが、栽培シート32と同じ材料や他の材料で閉塞してもよい。
【0050】
その後、
図9(c)に示すように、横向き姿勢で載置されている筒状の栽培シート32の上面にカッター等で十字形に切れ目32aを入れ、この切れ目32aからビニール製カップ材で栽培されていた若い草木等の植物30を移植する。
この状態で植物30を所定期間育成すると、若い草木等の植物30の生育に伴う根張りによって植物30と土壌31と栽培シート32とが一体化した植栽ユニットPUを製作することができる。
【0051】
上述のように、植栽物Pを、植物30と土壌31と栽培シート32とが一体化した植栽ユニットPUから構成することにより、強風時における土壌31の飛散や植物30の抜けを防止することができる。
【0052】
次に、栽培地での育成期間が終了して植栽ユニットPUが製作されると、
図10(d)に示すように、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aにおける筒軸心X方向両端部に形成されている植栽作業用の第2開口部1bの一方から植栽ユニットPUを筒軸心X方向に沿って挿入する。
このとき、植栽ユニットPUにおける茎葉部や葉状部等の成長した露出部位は、第2開口部1bに連通する第1開口部1aに沿って移動する。
植栽ユニットPUの組み付けを終了すると、ルーバー本体2Aの一方の第2開口部1bを蓋体2Bで水密に閉止する。
【0053】
植栽ユニットPUが植栽ルーバー2内の所定位置に組み付けられた状態では、
図10(e)に示すように、植栽ユニットPUの底面とルーバー本体2Aの底壁部2aとの間に、水の滞留を防止するための透水層(排水層)34が形成され、排水パイプ20又は外部排水パイプ21への排水流路が確保されている。
また、植栽ユニットPUの側面とルーバー本体2Aの内面との間には、植栽用内部空間1側に突出する左右の突条部2c及び透水層34によって空気層35が形成されている。
【0054】
そのため、植栽ユニットPU内の底部に水が溜まることに起因する植物30の根腐れ、或いは、夏期に於ける土壌31の高温化による植物30の枯死を抑制することができる。
【0055】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の第1実施形態では、植栽ルーバー2の横断面形状を長円形状に形成したが、非植栽ルーバー3と同様に、横断面形状を真円形状に形成してもよい。
また、ルーバーのデザインによっては、植栽ルーバー2の横断面形状及び非植栽ルーバー3の横断面形状を矩形(長方形、正方形)、台形、多角形(五角形以上)等に構成してもよい。
さらに、植栽ルーバー2のサイズは、植栽種や生育サイズ等の植栽条件に応じて適宜変更することができる。
【0056】
(2)上述の第1実施形態では、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aにおける建物内外方向での両壁部2bと非植栽ルーバー3のルーバー本体3Aにおける建物内外方向での両壁部3bとを同一又は類似する形状に形成したが、建物外方側の壁部2b、3bのみを同一又は類似する形状に形成し、建物内方側の壁部2b、3bを互いに異なる形状に形成してもよい。
【0057】
(3)上述の第1実施形態では、建物Bの全周に亘るルーバー設置領域のうち、周方向の一部を緑化対象領域A1とし、それ以外の残部を非緑化対象領域A2とする形態について説明したが、建物Bの全周に亘るルーバー設置領域の全てを緑化対象領域A1としてもよい。
また、緑化対象領域A1の建物Bの壁面が緩い曲面に構成されている場合でも、植栽ルーバー2の長さを短くすることで対応することができる。
勿論、植栽ルーバー2を建物Bの壁面の曲面に沿って湾曲形成してもよい。
【0058】
(4)上述の第1実施形態では、植栽ルーバー2を水平方向に沿って一直線状に配設したが、植栽ルーバー2の平面的な出入り(建物内外方向)は、植栽種類毎の育成や外観に変化を与えるので、植栽ルーバー2をルーバー設置領域の一部又は全部において千鳥配置等の平面的な出入り配置に構成してもよい。
【0059】
(5)上述の第1実施形態では、植栽ルーバー2のルーバー本体2Aにおける軸心方向両端部に、上方開口の第1開口部1aと連通する第2開口部1bを形成したが、この第2開口部1bをルーバー本体2Aの一端部にだけ形成してもよい。
さらに、第2開口部1bをルーバー本体2Aの端部以外の部位に形成してもよい。例えば、第1開口部1aの長手方向中間の一部を、植栽物Pの出し入れが可能な幅広に切欠き形成して、この切欠き形成によって増加した開口部分を第2開口部1bに構成してもよい。
【0060】
(6)植栽ルーバー2のルーバー本体2Aにおける第1開口部1aの開口縁に、土壌31の飛散を抑制するための返し部や鍔部を形成してもよい。この返し部や鍔部は、第1開口部1aの開口縁における建物内外方向の両側又は一側に形成する。
【0061】
(7)本発明の植栽ルーバー2は、ビルや家屋等の建物Bの壁面の緑化以外に、橋梁や道路等の建築物の壁面の緑化に用いることができ、さらに、壁面以外の屋上やバルコニー等の緑化にも用いることができる。
【0062】
(8)上述の第1実施形態では、植栽ルーバー2及び非植栽ルーバー3をアルミニウムから製作したが、植栽ルーバー2及び非植栽ルーバー3の材質としてはステンレス、鉄、塩化ビニル、繊維強化プラスチック(FRP)等を挙げることができる。