(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記後部電極が、前記液体の噴霧状態を所定の状態に調整するために、前記液体ノズルに沿うように移動可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の静電噴霧装置。
前記後部電極が、正面視で、第1方向に沿った幅よりも前記第1方向に略直交する第2方向に沿った幅の方が小さいことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
なお、特に断りがない場合、「先(端)」や「前(方)」等の表現は、各部材等において液体の噴霧方向側を表し、「後(端)」や「後(方)」等の表現は、各部材等において液体の噴霧方向と反対側を表すものとする。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る第1実施形態の静電噴霧装置10の全体構成を示す断面図である。
図1に示すように、静電噴霧装置10は、液体ノズル22を有する液体噴霧部20と、後部電極30と、液体噴霧部20と液体噴霧部20に対する異極となる異極部40との間に電圧を印加する電圧印加手段(電圧電源)50と、を備える。
【0012】
(液体噴霧部)
図2は、液体噴霧部20と後部電極30とを分解した分解断面図である。
図2に示すように、液体噴霧部20は、液体の供給される液体供給口21aを有する液体流路21bが形成された絶縁材料からなる胴体部21と、貫通孔が胴体部21の液体流路21bに連通するように胴体部21の先端に設けられる液体ノズル22と、胴体部21の液体流路21b内及び液体ノズル22の貫通孔内に配置される導電材料からなる心棒23と、を備えている。
【0013】
胴体部21には、心棒23を後端側に取り出すために、液体流路21bと連通した孔部21cが設けられ、その孔部21c内には、心棒23との間の隙間をシールして液体が漏れないようにするシール部材24が設けられている。
なお、本実施形態では、シール部材24としてOリングを用いているが、Oリングに限らず、シールが可能なものであればよい。
【0014】
そして、孔部21cを通じて胴体部21の後端側に位置する心棒23の後端には、絶縁材料からなる摘み部23aが設けられているとともに、摘み部23aのほぼ中央を貫通するように設けられた導電材料からなる電気配線接続部23bが設けられている。
【0015】
図1に示すように、電気配線接続部23bには、電圧印加手段50からの電気配線が接続される。
そして、
図2に示すように、電気配線接続部23bが心棒23に接触するようにされることで心棒23と電気配線接続部23bとが電気的に接続されている。
【0016】
また、胴体部21の後端開口部21dの内周面には、摘み部23aを螺合接続するための雌ネジ構造21eが設けられ、一方、摘み部23aの先端外周面には、雄ネジ構造23cが設けられている。
【0017】
したがって、胴体部21の後端開口部21dの雌ネジ構造21eに摘み部23aの先端外周面の雄ネジ構造23cを螺合させることで心棒23が取外し可能に胴体部21に取付けられている。
また、摘み部23aの螺合量を調節することで心棒23を前後方向に移動させることができ、心棒23の先端面23dの位置を前後方向に調節できるようになっている。
【0018】
ここで、一般に、静電噴霧装置の液体を噴霧するノズルは、液体が流れる貫通孔の直径が小さい微細な液体流路とされる。
これは、液体が流れ出るノズル先端の開口直径が大きいと、安定した液体の霧化状態が得られなくなるためと推察される。
例えば、一般には、ノズル先端の開口直径は0.1mm未満とされている。
【0019】
このため、液体が乾燥したりすると直ぐに、ノズル先端の開口部が目詰まりするが、開口直径が小さいため、この目詰まりを解消することが難しいという問題がある。
【0020】
しかしながら、理由については、後ほど説明するが、心棒23を用いるようにすることで、従来に比較して、ノズル先端の開口径を大きな開口直径としても良好な霧化ができることを見出し、このため、本実施形態の液体ノズル22の先端の開口部22bの開口直径は0.2mmの大きな開口直径にできている。
この結果、目詰まりが発生する頻度を大幅に低減することができるようになっている。
【0021】
なお、液体ノズル22の開口部22bの開口直径は0.2mmに限定されるものではなく、心棒23を用いる形態においては、開口直径は1mm程度であっても問題はない。
【0022】
液体ノズル22の開口部22bの開口直径は、目詰まりが起きにくく、また、目詰まりが起きても清掃ができることを考慮すると、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、さらに0.2mmより大きくすることが好ましい。
【0023】
一方、液体ノズル22の開口部22bの開口直径は、霧化の安定性を考慮すると、1.0mm以下が好適であり、より好ましく0.8mm以下であり、さらに好ましくは0.5mm以下とするのが良い。
【0024】
また、本実施形態では、上述のように、心棒23を前後方向に移動させることができるため、目詰まりが起きても心棒23を移動させることで目詰まりの解消を行うことができる。
さらに、液体ノズル22の貫通孔の内径も心棒23を配置できる程度に大きくできているため、心棒23を取り外して洗浄液を大量に流して洗浄することも可能になっている。
【0025】
図3は、液体噴霧部20の先端側を拡大した拡大図であり、
図3(a)は、心棒23の先端面23dが後方に位置する場合であり、
図3(b)は、
図3(a)の状態よりも心棒23の先端面23dが前方に位置する場合である。
【0026】
図3(a)に示すように液体ノズル22は、開口部22b側に向かってテーパ状に内径が小さくなるテーパ角度がαであるテーパ状内径部(範囲A参照)を有しており、心棒23は、先端面23dに向かって外径が小さくなるテーパ角度がβであるテーパ形状部(範囲B参照)を有している。
【0027】
そして、液体ノズル22のテーパ状内径部のテーパ角度αが、心棒23のテーパ形状部のテーパ角度βよりも大きくされている。
また、心棒23の先端面23dの直径は、液体ノズル22の開口部22bの開口直径よりも小さい直径とされているが、心棒23のテーパ形状部は、後端側に向かって徐々に直径が大きくなり、液体ノズル22の開口部22bの開口直径よりも直径の大きい部分を有するように形成されている。
【0028】
上記のように、液体ノズル22及び心棒23の先端側を形成することによって、
図3(a)及び(b)を見比べるとわかるように、心棒23を前後方向に移動させることで液体ノズル22と心棒23とで形成される隙間の幅を調節できるようになり、液体ノズル22の開口部22bから出る液体の量を調節することができる。
【0029】
また、
図3(b)で示す状態よりも、さらに、心棒23を前方側に動かすことで、心棒23が液体ノズル22の内周面に当接し、液体ノズル22の開口部22bを閉塞することが可能である。
したがって、液体を噴霧しない状態において、液体ノズル22の開口部22bを心棒23で閉塞させ、液体ノズル22内の液体が乾燥することを防止することが可能であり、液体ノズル22の目詰まりを抑制できる。
【0030】
(後部電極)
図2に示すように、後部電極30は、雌ネジ構造が設けられたネジ孔31aを有している。
そして、後部電極30は、液体噴霧部20の液体ノズル22上に装着された後、後部電極30のネジ孔31aに固定ネジ31を螺合させて液体ノズル22の外周を固定ネジ31で押圧するように固定ネジ31を締め付けることで液体ノズル22に固定される。
【0031】
このようにして、後部電極30は、
図4に示すように、液体噴霧部20の液体ノズル22の先端外周近傍に配置されるように取り付けられている。
より具体的には、本実施形態では、後部電極30は、
図1に示すように、液体ノズル22の先端外周縁22aよりも後方に配置されるように液体ノズル22の外周に固定されている。
そして、上述したように、後部電極30は、固定ネジ31によって固定されるようになっているので固定ネジ31を緩めることで液体ノズル22に沿うように移動させることができ、液体ノズル22に沿った前後方向の位置調整が可能になっている。
【0032】
なお、本実施形態では、後部電極30を液体ノズル22に固定する場合を示しているが、固定自体は液体噴霧部20の胴体部21に対して行うようにしても良く、アーム構造などで後部電極30の電極を構成する部分が液体ノズル22の先端外周近傍に配置されるようになっていれば良い。
【0033】
そして、
図1に示すように、後部電極30には、電圧印加手段50から電気配線接続部23bに接続される電気配線から分岐された電気配線が接続されている。
したがって、心棒23と後部電極30とは、同電位になっている。
【0034】
(異極部40)
本実施形態では、異極部40に被塗物を用いた場合を示しており、心棒23に接続されるのと反対側の電気配線が被塗物に接続されることで被塗物自体が液体噴霧部20に対する異極となるようにされている。
また、異極部40となる被塗物は、アース手段80でアースされるようになっている。
このアース手段80は必須の要件ではないが、被塗物のようなものの場合、作業者が触れたりすることがあり得るので安全面の観点で設けることが好ましい。
【0035】
なお、本実施形態では、被塗物を異極部40とするために被塗物に電圧印加手段50からの電気配線を接続している場合を示しているが、被塗物を異極部40とするために、直接、電気配線を接続する必要はない。
【0036】
例えば、被塗物が搬送装置などによって、塗料などの液体を塗布する位置に搬送されるような場合には、電圧印加手段50からの電気配線を搬送装置の被塗物が載置される載置部に接続されているようにして、載置部を介して被塗物が電圧印加手段50に電気的に接続されるようにしても良い。
【0037】
次に、
図5を参照しながら、上記のような構成を有する第1実施形態の静電噴霧装置10を用いて液体を噴霧する状態について説明を行う。
なお、
図5では、液体噴霧部20と後部電極30とだけを図示した断面図になっている。
【0038】
胴体部21の液体供給口21aに供給された液体は、液体ノズル22の先端側に供給されていき、被塗物(異極部40)と心棒23との間に印加される電圧に伴う静電気力によって、前方側に引っ張られて前方に離脱・霧化する。
【0039】
なお、液体の供給は、噴霧により消費されることで液体噴霧部20から失われる分の液体が順次供給されていれば良く、液体ノズル22の開口部22b(より正確には、開口部22bと心棒23との間の隙間)から液体が噴射するような圧力で圧送供給される必要はなく、液体が勢いよく噴射される状態の場合、かえって霧化ができなくなるようなことが起こる。
【0040】
より具体的には、心棒23の先端面23d及び液体ノズル22の先端外周縁22aへの表面張力や粘度による付着力に対して、液体を前方に引っ張る静電気力が釣り合うことで、
図5に示すように、液体ノズル22の先端側に供給された液体が、その先端で円錐形の形状となるテーラコーン60が形成される。
【0041】
このテーラコーン60は、電場の作用によって、液体中で正/負電荷の分離が起こり、過剰電荷で帯電した液体ノズル22先端のメニスカスが変形して円錐状となって形成されているものである。
そして、テーラコーン60の先端から静電気力によって液体が真直ぐに引っ張られ、その後静電爆発によって広い範囲に液体が噴霧される。
【0042】
この噴霧される液体、つまり、液体ノズル22から離脱して液体粒子となった液体は、離脱前の状態に比べ、空気に触れる面積が飛躍的に大きくなるため溶媒の気化が促進され、その溶媒の気化に伴って帯電している電子間の距離が近づき、静電反発(静電爆発)が発生して、さらに、小さい粒径の液体粒子に分裂する。
【0043】
この分裂が起こると、さらに、分裂前に比べ空気に触れる表面積が増えることになるため、溶媒の気化が促進され、上述したのと同様に静電爆発が発生し、さらに、小さい粒径の液体粒子に分裂する。
このような静電爆発が繰り返されることで液体が霧化される。
【0044】
ここで、本実施形態では、液体ノズル22内に心棒23を設けるようにしている。
仮に、従来の静電噴霧装置のように、この心棒23を設けないものとすると、液体が付着できる部分は、液体ノズル22の先端外周縁22aだけとなる。
【0045】
そして、このような状態で液体ノズル22の開口部22bの開口直径を大きくすると、液体の付着できる部分が、液体ノズル22の先端外周縁22aだけのため、例えば、液体ノズル22の上下左右に液体がふらついたりし易く、きれいなテーラコーン60が形成できなくなったり、また、テーラコーン60自体が維持できなくなるため、液体ノズル22から離脱する液体粒子の安定性(粒子の大きさ、数、及び、帯電状態などの安定性)が得られなくなり、結果、液体の安定した霧化ができなくなるものと推察される。
【0046】
一方、本実施形態では、液体ノズル22内に心棒23を配置して、液体ノズル22の先端外周縁22aだけでなく、心棒23の先端面23dとの間でも液体は付着する。
したがって、液体ノズル22の開口部22bの開口直径が大きくても、開口部22bの中央部に液体が付着できる心棒23の先端面23dが存在するため、安定したテーラコーン60を形成することができ、液体の安定した霧化ができるようになっているものと考えられる。
【0047】
なお、心棒23の先端面23dが液体ノズル22の先端外周縁22a(つまり、液体ノズル22の開口部22bの先端面)から前方に出過ぎると液体ノズル22から出る液体に電場が作用し難くなり、一方、心棒23の先端面23dが液体ノズル22の開口部22bの先端面から後方に引っ込み過ぎると、開口部22bの中央部に液体が付着できる部分が存在しないのと同じ状態となる。
【0048】
このことから、心棒23の先端面23dの位置は、液体を噴霧する状態において、液体ノズル22の開口部22bの先端面を基準にして、心棒23の中心軸に沿った前後方向で、液体ノズル22の先端の開口部22bの開口直径の10倍以内に位置することが好適であり、より好ましくは5倍以内に位置することが好適であり、さらに、好ましくは3倍以内に位置することが好適である。
【0049】
例えば、本実施形態では、液体ノズル22の開口部22bの開口直径が0.2mmであり、静電気力を考慮しない場合、液体ノズル22の開口部22bから出た液体は、液体ノズル22の先端で直径が約0.2mmの半球状となるように出てくる。
【0050】
そして、この液体ノズル22の先端に出てきた液体に電場(静電気力)が作用して円錐状のテーラコーン60が形成できるように、心棒23の先端は、この液体の近くに存在することが良く、このため液体ノズル22の開口部22bの先端面から前方(出る方向)に2mm以内に位置するようにするのが好適であり、一方、液体の付着に作用するように、心棒23の先端が液体ノズル22の開口部22bの先端面から後方(引っ込む方向)に2mm以内に位置するようにするのが好適である。
【0051】
上記のように、心棒23を設けることによって、液体ノズル22の開口部22bの開口直径を大きくしても安定した液体の霧化が行える。
このため、液体ノズル22の開口部22bの開口直径を目詰まりが抑制できるような大きな開口直径にすることができる。
また、液体ノズル22の開口部22bの開口直径を大きくできるため機械加工で液体ノズル22が製作できる。
【0052】
なお、本実施形態では、心棒23の先端が先端面23dとして平坦な平面としている場合を示しているが、必ずしも、心棒23の先端が平坦な平面である必要はなく、安定したテーラコーン60の形成に寄与すれば良いので、例えば、心棒23の先端はR形状のように、前方側に向かって突出する曲面になっていても良い。
【0053】
一方、後部電極30を有しない場合、噴霧される霧化液体は、
図5に一点斜線で示す角度θ2のような大きな広がり角度の霧化状態となるが、本実施形態のように後部電極30を設けることで、二点斜線で示すように、小さな広がり角度θ1のような霧化状態とすることができ、所定の霧化状態を得ることができる。
【0054】
本実施形態では、上述したように、後部電極30が液体ノズル22に沿うように移動可能とされている。
このように、後部電極30を移動可能とすることで、後部電極30を前方側に動かすと、θ1よりもさらに小さい広がり角度となるように霧化状態を調整することができる。
【0055】
但し、後部電極30が液体ノズル22の先端よりあまり出るようにすると、液体ノズル22の先端の液体に電場(静電気力)が作用しなくなり、液体の噴霧ができなくなるので、液体ノズル22の先端近傍から後方側に位置するようにするのが好適である。
【0056】
また、後部電極30を液体ノズル22に沿うように後方側に動かすと、θ1よりも大きい広がり角度となるように調整することができる。
但し、後部電極30を後方に動かし過ぎると、後部電極30が設けられていないのと同様になり、θ2の広がり角度と同じ霧化状態となるので後部電極30の位置は、所定の霧化状態が得られるように霧化状態に作用できる程度に前方側に設けるようにする。
【0057】
そして、後部電極30は、上述したように、従来の収束ガードリングと異なり、ターゲットとノズルとの間に配置する必要がなく、また、液体ノズル22の先端外周近傍に配置できるものであることから、液体噴霧部20に取付ける構成とすることができ、被塗物に液体を塗布する場合に液体噴霧部20を動かしても、複雑な構成とすることなく、その液体噴霧部20と共に移動する構成とできるとともに、被塗物と液体噴霧部20との間に位置するものでもないので、作業の邪魔になることもない。
【0058】
本実施形態では、
図4に示すように、後部電極30は、円形状の形状としている。
このため、噴霧される霧化液体は、円形に広がるような状態で噴霧されるが、後部電極30の形状を変えることで円形に広がるのとは異なる広がり方の噴霧も可能である。
【0059】
例えば、
図6に示すように、後部電極30の上下幅よりも左右幅を小さくするようにすると、上下方向に長軸を持つような楕円状に広がる状態の噴霧を行うことができる。
つまり、後部電極30が、前方側から見る正面視で見たときに、第1方向に沿った幅(上下幅)よりも第1方向に略直交する第2方向に沿った幅(左右幅)の方が小さい場合、第1方向(上下方向)に長軸を持つような楕円状に広がる状態の噴霧を行うことができる。
なお、
図6において、後部電極30を90度回転させて配置し、正面視で第1方向が左右方向となるように後部電極30を配置すると、左右方向に長軸を持つような楕円状に広がる状態の噴霧を行うことができる。
【0060】
このような縦横の幅が異なる後部電極30の場合においても、後部電極30を前後に動かすと、その楕円形状の噴霧状態を大きくしたり、小さくしたりすることが可能である。
【0061】
一方、本実施形態では、後部電極30が液体ノズル22に沿うように移動可能としているが、後部電極30を移動させるのではなく、例えば、より大きな円形の後部電極30に変更したり、より小さい後部電極30に変更したりすることでも、噴霧状態を所定の状態に調節することが可能である。
したがって、後部電極30を移動させることで、噴霧状態を所定の状態に調整するのに限定されるものではなく、後部電極30を交換可能として噴霧状態を所定の状態に調整するようにしても良い。
【0062】
(第2実施形態)
図7は、本発明に係る第2実施形態の静電噴霧装置10’の全体構成を示す断面図である。
第1実施形態と第2実施形態とは、第2実施形態の静電噴霧装置10’が、後部電極30よりも正面視で外側に配置されるとともに、後部電極30よりも液体噴霧方向前方に設けられる近接電極70を備えている点が主に異なり、その他は、第1実施形態と同様である。
【0063】
図7に示すように、近接電極70には、心棒23に接続されるのと反対側の電気配線が接続されており、近接電極70が液体噴霧部20に対する異極である異極部となるようになっている。
近接電極70もアース手段80でアースされるようになっており、被塗物(異極部40)と同電位(0(v))になっている。
この場合、液体ノズル22に近い近接電極70の方が、上述した液体ノズル22の先端からの液体の離脱・霧化に寄与する電極となる。
なお、本実施形態の場合、被塗物(異極部40)は液体の離脱・霧化にほとんど寄与しないが完全に寄与しないわけではない。
【0064】
本実施形態では、近接電極70は、絶縁材料からなる近接電極ホルダ71を介して液体ノズル22の外周に固定されるようにしているが、近接電極ホルダ71は液体ノズル22に対して固定されることに限定されるものではなく、胴体部21に対して固定されていても良い。
そして、近接電極70の電位と液体噴霧部20(より具体的には心棒23)の電位との電位差によって発生する静電気力によって、液体は液体ノズル22の先端から脱離・霧化する。
【0065】
近接電極70は、この噴霧される霧化液体が塗布されないように、外側に配置されており、また、この噴霧された直後の霧化液体は、液体粒子の大きさが大きく慣性力が大きいので近接電極70に静電気力で引き寄せられるゾーンを超えて飛行し、多くは、被塗物(異極部40)側に主に静電気力で引き寄せられて塗着する。
【0066】
一方、近接電極70の近くを通る霧化液体の中には、近接電極70に静電気力で引き寄せられて近接電極70に塗着するものや、通り過ぎた後に静電気力により近接電極70に引き寄せられて塗着するようなるようなものもあり、そのような塗着が起こると近接電極70を洗浄しなければならなくなったりする。
【0067】
しかしながら、本実施形態では、後部電極30によって、噴霧される液体の霧化状態を所定の状態、つまり、近接電極70に液体が塗着しない程度に、液体の噴霧状態が小さい広がり角度となる状態とすることができるので、近接電極70への液体の塗着を抑制することができる。
【0068】
また、後部電極30は、液体噴霧部20(心棒23)と同電位であるため、液体噴霧部20(心棒23)に対する異極となっていないため、第1実施形態の場合、被塗物(異極部40)がないと液体の噴霧ができないが、第2実施形態の場合、被塗物(異極部40)がなくても近接電極70が異極部となるため液体の噴霧を行うことができる。
【0069】
ここで、液体の噴霧開始直後は、液体の霧化(液体の噴霧量や粒子径など)が安定しない場合があるため、このような霧化が安定していない状態で被塗物への霧化液体の塗布を行うと塗布ムラの原因などとなる場合がある。
このため、被塗物への霧化液体の塗布は、噴霧開始直後を避けて、霧化が安定してから行うのが好適である。
【0070】
しかしながら、被塗物(異極部40)を液体噴霧部20の極に対する異極として、被塗物(異極部40)と液体噴霧部20だけで液体の霧化を行うような構成の場合、霧化液体の塗布が行われる位置に被塗物(異極部40)が位置する状態でしか霧化液体の噴霧開始が行えないので、上述のような噴霧開始直後の霧化液体の被塗物への塗布を避けることができない。
【0071】
その点、本実施形態の場合、被塗物に霧化液体を塗布するために、霧化液体が塗布される位置に被塗物を位置させる前の段階から、液体噴霧部20と近接電極70との間の電位差で発生する静電気力によって、液体の帯電及び脱離を行い、霧化液体が噴霧されている状態にできるので、霧化が安定してから霧化液体を塗布する位置に被塗物を配置するようにして霧化液体の塗布を行うことが可能である。
したがって、本実施形態の静電噴霧装置10’であれば、被塗物に対する液体の塗布ムラを抑制することができる。
【0072】
また、被塗物が搬送装置で順次自動搬送されながら、被塗物に霧化液体の塗布を行う場合にも、被塗物が無くても噴霧状態を維持できるため、塗布ムラの少ない液体の連続塗布を行うことができる。
【0073】
図8は、第2実施形態の液体噴霧部20、後部電極30、及び、近接電極70だけを示した斜視図である。
図8に示すように、本実施形態の近接電極70は、円形のリング状とされているが、近接電極70は、これに限らず、多角形のリング状及び円弧状のようなものであっても良い。
【0074】
以上、具体的な実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を実施しても良い。
例えば、第2実施形態では、電圧印加手段50から被塗物(異極部40)に接続される電気配線を直接分岐することで近接電極70に電気配線を設ける場合を示したが、近接電極70への電気配線の接続は、可変抵抗などを介して近接電極70が被塗物(異極部40)と異なる電位を有するようにされていても、液体噴霧部20(心棒23)に対して異極となるようにされていれば問題はない。
【0075】
このように、本発明は、具体的な実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。