特許第6473634号(P6473634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473634
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】折り畳み自転車
(51)【国際特許分類】
   B62K 15/00 20060101AFI20190207BHJP
【FI】
   B62K15/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-38810(P2015-38810)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-159720(P2016-159720A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(74)【代理人】
【識別番号】100140464
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】太田 将夫
【審査官】 葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3116930(JP,U)
【文献】 中国実用新案第203612153(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップチューブとヘッドチューブとの間、前記ヘッドチューブとダウンチューブとの間、前記ダウンチューブとハンガーブラケットとの間、前記ハンガーブラケットと前記トップチューブとの間がそれぞれ軸支された四節リンク機構を有し、前記ダウンチューブと前記ハンガーブラケットとの軸支点と前記トップチューブと前記ヘッドチューブとの軸支点とが離間して前記ハンガーブラケットが上下に亘って配置される展開状態と、前記ダウンチューブと前記ハンガーブラケットとの軸支点と前記トップチューブと前記ヘッドチューブとの軸支点とが接近して前記ハンガーブラケットが前後に亘って配置される収縮状態に変形可能なフロントフレームと、
該フロントフレームに取り付けられて、前記ダウンチューブと前記ハンガーブラケットとの軸支点を前記トップチューブと前記ヘッドチューブとの軸支点に接近する方向に付勢する付勢手段と、を備え
前記付勢手段は、前記ヘッドチューブに一端が軸支され、他端が前記ハンガーブラケットに軸支されて、前記フロントフレーム内において前記ダウンチューブと前記ハンガーブラケットとの間に挟まれる角度である内角を広げる方向に付勢し、
前記ハンガーブラケットは、前記展開状態において前記付勢手段の他端を前記ダウンチューブと前記ハンガーブラケットとの軸支点よりも前方の第1死点位置に配置し、前記収縮状態において前記付勢手段の他端を前記ダウンチューブと前記ハンガーブラケットとの軸支点よりも後方の第2死点位置に配置することを特徴とする折り畳み自転車。
【請求項2】
前記ハンガーブラケットは、該ハンガーブラケットの下部に接合されたチェーンステイと、前記ハンガーブラケットの上部に接合されたシートステイとの協働により後輪を支持するリヤフレームを構成しており、
前記後輪は、前記展開状態において前記ハンガーブラケットの後方に配置され、前記収縮状態において前記ハンガーブラケットの下方に配置されることを特徴とする請求項に記載の折り畳み自転車。
【請求項3】
前記フロントフレームは、前記展開状態と前記収縮状態におけるヘッド角が同一であることを特徴とする請求項に記載の折り畳み自転車。
【請求項4】
前記ダウンチューブに固定されて上方に延びるシートチューブを有し、
前記トップチューブは、2本が対をなして互いに横幅方向に離間して設けられており、該2本のトップチューブの間に前記シートチューブが挿通されていることを特徴とする請求項に記載の折り畳み自転車。
【請求項5】
前記シートチューブは、前記展開状態で前記ハンガーブラケットに当接し、前記収縮状態で前記ハンガーブラケットから離間する位置に固定されていることを特徴とする請求項に記載の折り畳み自転車。
【請求項6】
前記フロントフレームを前記展開状態と前記収縮状態に固定し、該固定を解除可能な固定手段を有することを特徴とする請求項に記載の折り畳み自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばホイールベースを短縮した状態に変形させることができる折り畳み自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、後輪支持フレームとシートフレームがX字状に交叉して軸支されて前後に収縮するように折り畳み可能な折り畳み自転車の構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-302079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
折り畳み自転車は、折り畳む際のユーザへの負担を極力小さくするために、できる限り、少ない入力で折り畳むことができるようにする必要がある。また、折り畳んだ状態をよりコンパクトにする必要もある。そして、広げた状態では、高い剛性が求められている。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、折り畳む際の負担が小さく、折り畳んだ状態でよりコンパクトになる折り畳み自転車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の折り畳み自転車は、トップチューブとヘッドチューブとの間、前記ヘッドチューブとダウンチューブとの間、前記ダウンチューブとハンガーブラケットとの間、前記ハンガーブラケットと前記トップチューブとの間がそれぞれ軸支された四節リンク機構を有し、前記ダウンチューブと前記ハンガーブラケットとの軸支点と前記トップチューブと前記ヘッドチューブとの軸支点とが離間して前記ハンガーブラケットが上下に亘って配置される展開状態と、前記ダウンチューブと前記ハンガーブラケットとの軸支点と前記トップチューブと前記ヘッドチューブとの軸支点とが接近して前記ハンガーブラケットが前後に亘って配置される収縮状態に変形可能なフロントフレームと、前記フロントフレームに取り付けられて前記ダウンチューブと前記ハンガーブラケットとの軸支点を前記トップチューブと前記ヘッドチューブとの軸支点に接近する方向に付勢する付勢手段とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フロントフレームを展開状態から収縮状態に変形させる際に、付勢手段の付勢力によって変形動作を補助することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態における折り畳み自転車の展開状態を示す左側面図。
図2】本実施形態における折り畳み自転車の収縮状態を示す左側面図。
図3】本実施形態における折り畳み自転車の展開状態を左後方から示す斜視図。
図4】本実施形態における折り畳み自転車の収縮状態を左後方から示す斜視図。
図5】本実施形態における折り畳み自転車のフロントフレームが有する四節リンク機構を説明する図。
図6】本実施形態における付勢手段の構造を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態における折り畳み自転車の展開状態を示す左側面図、図2は、本実施形態における折り畳み自転車の収縮状態を示す左側面図、図3は、本実施形態における折り畳み自転車の展開状態を左後方から示す斜視図、図4は、本実施形態における折り畳み自転車の収縮状態を左後方から示す斜視図、図5は、本実施形態における折り畳み自転車のフロントフレームが有する四節リンク機構を説明する図である。
【0010】
折り畳み自転車1は、フレーム2に前輪3と後輪4が取り付けられており、さらに、前輪3を操作するハンドル5と、後輪4を回転駆動するためのクランクギヤ6と、サドル7を支持するシートポスト8が取り付けられている。その他、通常の自転車と同様にブレーキや、ブレーキレバー、ワイヤー類、ペダル等も取り付けられているが、図中では省略した。
【0011】
フレーム2は、フロントフレーム11とリヤフレーム12を有している。フロントフレーム11は、ヘッドチューブ21と、トップチューブ22と、ダウンチューブ23と、ハンガーブラケット31を有している。なお、ヘッドチューブ21と、トップチューブ22と、ダウンチューブ23には、それぞれチューブという名称を使用しているが、形状を管状に限定するものではなく、板状、棒状であってもよい。リヤフレーム12は、ハンガーブラケット31と、チェーンステイ32と、シートステイ33によって構成されている。ハンガーブラケット31は、フロントフレーム11の一部を構成すると共に、リヤフレーム12の一部も構成している。
【0012】
フロントフレーム11は、トップチューブ22とヘッドチューブ21との間、ヘッドチューブ21とダウンチューブ23との間、ダウンチューブ23とハンガーブラケット31との間がそれぞれ軸支された四節リンク機構を有する(図5を参照)。フロントフレーム11は、四節リンク機構により、ダウンチューブ23とハンガーブラケット31との軸支点44と、トップチューブ22とヘッドチューブ21との軸支点41とが離間してハンガーブラケット31が上下に亘って配置される展開状態(図1を参照)と、軸支点44と軸支点41とが接近してハンガーブラケット31が前後に亘って配置される収縮状態(図2を参照)に変形可能である。
【0013】
ヘッドチューブ21は、上下に長く、その上部と下部にトップチューブ22とダウンチューブ23が軸支されている。したがって、フロントフレーム11の展開状態においてヘッドチューブ21とトップチューブ22とダウンチューブ23とハンガーブラケット31によって囲まれる閉領域をより大きく確保することができ、フロントフレーム11として高い剛性を得ることができる。ヘッドチューブ21には、ハンドルポストが挿通されて回動自在に支持されており、ハンドルポストの上部にハンドル5が固定されている。ハンドルポストの下部には、前輪3を支持するフロントフォークが固定されている。
【0014】
トップチューブ22は、軸支点41によってヘッドチューブ21の上部にトップチューブ22の前部が軸支され、軸支点42によってハンガーブラケット31の上部にトップチューブ22の後部が軸支されている。トップチューブ22は、前部と後部との間の中間部分が上方に向かって凸となるよう湾曲して形成されている。したがって、収縮状態においてフロントフレーム11内の閉領域をより大きく確保して他の部品との干渉を回避することができる。トップチューブ22は、図3及び図4に示すように、2本が対をなして互いに横幅方向に離間して設けられており、その間にシートチューブ24が挿通されて前後に移動できるようになっている。
【0015】
ダウンチューブ23は、軸支点43によってヘッドチューブ21の下部にダウンチューブ23の前部が軸支され、軸支点44によってハンガーブラケット31の下部にダウンチューブ23の後部が軸支されている。ダウンチューブ23は、展開状態においてトップチューブ22とほぼ平行に配置されて対向し、収縮状態においてヘッドチューブ21に対向して配置される。ダウンチューブ23にはシートチューブ24が固定されている。
【0016】
シートチューブ24は、ダウンチューブ23の前部と後部の間の位置、すなわち、ダウンチューブ23がヘッドチューブ21と接続する箇所である軸支点43とダウンチューブ23がハンガーブラケット31と接続する箇所である軸支点44との間に配置されており、上方へ延びている。
【0017】
シートチューブ24は、展開状態でハンガーブラケット31に当接し、収縮状態でハンガーブラケット31から離間する位置に固定されている。シートチューブ24は、シートポスト8を挿入して保持することができ、シートポスト8の挿入長さを調整することによってサドル7の高さ位置を調整できる。シートチューブ24は、ダウンチューブ23に下部が固定されて、上部が一対のトップチューブ22の間を通過して上方に突出している。シートチューブ24の下部は、ダウンチューブ23を貫通しており、シートポスト8を下げた際に、シートポスト8の下端をシートチューブ24の下端から下方に突出させることができる。シートチューブ24の上部は、展開状態ではトップチューブ22の後部近傍位置に配置され、展開状態から収縮状態に変形する際に、一対のトップチューブ22の間を前方に移動し、収縮状態ではトップチューブ22の前部近傍位置に配置される。本実施例では、シートチューブ24をダウンチューブ23に固定した構造としているので、例えばシートチューブがリンク機構の一部を構成する構造のものと比較して、シートチューブ24の取付位置やシートアングルを任意に設定することができ、設計の自由度が高い。
【0018】
図2及び図4に示すように、シートチューブ24には、展開状態でハンガーブラケット31の上部と当接する当接部24aが設けられている。当接部24aは、フロントフレーム11が収縮状態のときは、ハンガーブラケット31の上部から離れており、収縮状態から展開状態への変形中にハンガーブラケット31の上部に漸次接近し、展開状態でハンガーブラケット31の上部に当接し、フロントフレーム11が展開状態に保持される。当接部24aは、ゴムなどの弾性樹脂製材料からなり、リヤフレーム12のクッションとしての効果も有する。
【0019】
シートチューブ24とダウンチューブ23との間には補強フレーム25が設けられている。補強フレーム25は、一端がダウンチューブ23の前部に固定され、他端がシートチューブ24の当接部24aに対向する位置に固定されている。そして、フロントフレーム11の展開状態においてハンガーブラケット31の上部から当接部24aを介してシートチューブ24に入力される力をダウンチューブ23に伝達して分散することができる。
【0020】
ハンガーブラケット31は、トップチューブ22の後部にハンガーブラケット31の上部が軸支され、ダウンチューブ23の後部にハンガーブラケット31の下部が軸支されている。ハンガーブラケット31は、展開状態において上下に亘って配置され、ヘッドチューブ21と平行に配置されて対向する。そして、収縮状態において前後に亘って配置され、トップチューブ22と対向する。ハンガーブラケット31の下部には、チェーンステイ32が接合され、ハンガーブラケット31の上部には、シートステイ33が接合されている。チェーンステイ32とシートステイ33は後部で互いに接合されており、後輪支持部に後輪4が支持されている。ハンガーブラケット31は、チェーンステイ32とシートステイ33との協働により後輪4を支持するリヤフレーム12を構成している。後輪4は、展開状態においてハンガーブラケット31の後方に配置され、収縮状態においてハンガーブラケット31の下方に配置される。
【0021】
ハンガーブラケット31とチェーンステイ32との接合部分にはBBシェルが設けられており、クランクギヤ6が回転可能に支持されている。BBシェルは、軸支点44と後輪4の支持部との間の位置に配置されている。
【0022】
軸支点42には、フロントフレーム11を展開状態と収縮状態に固定し、その固定を解除可能な固定手段45が設けられている。固定手段45は、種々の公知の構成を取ることができるが、本実施形態では、フロントフレーム11が展開状態と収縮状態にあるときに、爪部が溝部に係入してトップチューブ22とハンガーブラケット31との回動を規制し、フロントフレーム11を展開状態と収縮状態にそれぞれ保持するラチェット構造を有している。固定手段45による固定を解除する場合には、展開状態もしくは収縮状態で解除操作レバー46を上方に持ち上げて爪部の溝部への係入を外し、トップチューブ22とハンガーブラケット31との回動規制を解除する。
【0023】
フロントフレーム11は、図5に実線で示すように、展開状態においてヘッドチューブ21とハンガーブラケット31が略平行に配置されかつトップチューブ22とダウンチューブ23が略平行に配置されて、ヘッドチューブ21とトップチューブ22とダウンチューブ23とハンガーブラケット31によって囲まれた略矩形の閉領域を形成する。そして、図5に破線で示すように、収縮状態においてはヘッドチューブ21にダウンチューブ23が対向しかつトップチューブ22にハンガーブラケット31が対向して略三角形に潰れた閉領域を形成する。
【0024】
フロントフレーム11は、ヘッドチューブ21の長さL1とトップチューブ22の長さL2との合計長さが、ダウンチューブ23の長さL3とハンガーブラケット31の長さL4を加算した加算長さよりも長くなるように、それぞれの長さ寸法が設定されている(L1+L2>L3+L4)。
【0025】
本実施形態では、図5に破線で示すように、収縮状態において後輪4の中心が軸支点44の下方に配置され、さらに、図5に実線で示す展開状態と図5に破線で示す収縮状態の両方において、ヘッド角θがほぼ同一になるように、ヘッドチューブ21、トップチューブ22、ダウンチューブ23、ハンガーブラケット31の長さ寸法が設定されている。
【0026】
具体的には、ヘッドチューブ21の軸支点41と軸支点43との間の長さL1が260mm、トップチューブ22の軸支点41と軸支点42との間の長さL2が372mm、ダウンチューブ23の軸支点43と軸支点44との間の長さL3が347mm、ハンガーブラケット31の軸支点42と軸支点44との間の長さL4が162mmに設定されている。
【0027】
図6は、本実施形態における付勢手段の構造を説明する図である。
フロントフレーム11には、ダウンチューブ23とハンガーブラケット31との軸支点44をトップチューブ22とヘッドチューブ21との軸支点41に接近する方向に付勢する付勢手段としてガススプリング51が取り付けられている。ガススプリング51は、ヘッドチューブ21の前ブラケット55に一端である先端部52が軸支され、ハンガーブラケット31の後ブラケット54に他端である基端部53が軸支されており、先端部52と基端部53との間の距離を広げる方向に付勢している。後ブラケット54は、図6(a)に示すように、展開状態においてガススプリング51の基端部53を軸支点44よりも前方の第1死点位置に配置し、図6(b)に示すように、収縮状態においてガススプリング51の基端部53を軸支点44よりも後方の第2死点位置に配置する。
【0028】
ガススプリング51は、フロントフレーム11内においてダウンチューブ23とハンガーブラケット31との間に挟まれる角度である内角を広げる方向に付勢する。したがって、フロントフレーム11は、軸支点44が軸支点41から離間した展開状態から軸支点44が軸支点41に接近した収縮状態に変形する際に、その動作が補助される。
【0029】
したがって、ユーザが折り畳み操作を行う際に、より小さな力でフロントフレーム11を展開状態から収縮状態に変形させることができ、ユーザの負担を軽減し、例えば婦女子などの非力なユーザでも折り畳み操作を容易に行うことができる。また、例えば折り畳み操作の途中でユーザが手を離しても、ガススプリング51によって付勢されているので、自重によって急な速度で展開状態に戻ってしまうのを防ぐことができ、折り畳み操作を容易に行うことができる。
【0030】
そして、特に本実施形態では、ガススプリング51は、図6(a)に示すように、展開状態で最も縮められた状態とされており、基端部53は軸支点44よりも前方の第1死点位置に配置されている。そして、先端部52と基端部53とを結ぶガススプリング51の軸線が軸支点43と軸支点44とを結ぶダウンチューブ23の軸線とほぼ平行になっている。一方、図6(b)に示すように、収縮状態で最も伸ばされた状態とされており、基端部53は軸支点44よりも後方の第2死点位置に配置されている。そして、第1死点位置の場合と同様に、ガススプリング51の軸線がダウンチューブ23の軸線とほぼ平行になっている。
【0031】
フロントフレーム11の展開状態から収縮状態への変形に伴い、ガススプリング51の基端部53は、軸支点44を回動中心として第1死点位置から第2死点位置に向かって円弧状の軌跡を描いて移動し、第1死点位置と第2死点位置の中間点でダウンチューブ23の軸線から最も離間した位置を通過する。したがって、ガススプリング51は、基端部53が中間点に位置しているときに最も大きな付勢力をハンガーブラケット31に作用させることができる。
【0032】
したがって、展開状態と収縮状態の中間でフロントフレーム11の変形が止まるのを防ぎ、展開状態と収縮状態のいずれか一方の状態になるように付勢することができる。
【0033】
本実施形態では、付勢手段としてガススプリング51を用いる場合について説明したが、かかる構成に限定されるものではなく、フロントフレーム11を展開状態から収縮状態に変形する方向に付勢することができるものであればよい。したがって、例えばガススプリング51に代えてあるいはガススプリング51に加えて、捲きバネを用いてもよい。捲きバネを用いる場合には、例えば軸支点41〜軸支点44の少なくともいずれか一つに設けることができる。
【0034】
ただし、ガススプリング51の方が、捲きバネよりも力の変化が少なく、ゆっくりと動かすことができるので、フロントフレーム11を展開状態から収縮状態に変形させる際に、突発的な動きをすることがなく、手が挟まれるおそれがない。また、取り付け位置の調整が容易であり、取り付けるためにフレーム精度を高くする必要がない。したがって、付勢手段としてガススプリング51を用いることが好ましい。
【0035】
上記構成を有する折り畳み自転車1を折り畳む場合は、固定手段45の解除操作レバー46を上方に引き上げて、固定手段45によるトップチューブ22とハンガーブラケット31との回動規制を解除する。そして、解除操作レバー46を持ってフロントフレーム11全体を軽く上方に持ち上げる方向に移動させると、ガススプリング51の付勢力によってフロントフレーム11を展開状態から収縮状態に変形させる動作が補助され、簡単に収縮状態に変形させることができる。
【0036】
フロントフレーム11の収縮状態への変形により、ハンガーブラケット31は、軸支点42を回動中心として前方に向かって回動し、その回動に伴って後輪4が地面GL上を転がって前輪3に接近し、前輪3の後側に一列に並ぶように配置される。そして、シートチューブ24は、ダウンチューブ23の動きに応じて一対のトップチューブ22の間を前方に向かって移動してトップチューブ22の後部近傍の位置から前部近傍の位置に配置され、サドル7がハンドル5の上方に配置される。
【0037】
フロントフレーム11は、収縮状態に変形すると、固定手段45の溝部に爪部が係入してトップチューブ22とハンガーブラケット31との回動が規制され、収縮状態に固定される。したがって、折り畳み自転車1は、ホイールベースを短縮した折り畳み状態となる。
【0038】
折り畳み自転車1は、ガススプリング51によってフロントフレーム11が展開状態から収縮状態に変形する方向に付勢されているので、折り畳む際に解除操作レバー46を持って軽く上方に持ち上げるだけでよい。したがって、折り畳みに必要なユーザの力を小さくすることができ、容易に折り畳むことができる。
【0039】
折り畳み自転車1は、折り畳む前と後でヘッド角θが変わらないので、折り畳んだままで押して前進移動させた場合に操作性がよく、移動させやすいという効果を有する。また、後輪4の中心が軸支点44の下方に配置されているので、固定手段45によって収縮状態に固定する前に収縮状態から展開状態に自重によって自動的に変形するのを防ぎ、収縮状態を維持することができる。
【0040】
一方、折り畳み自転車1を折り畳んだ状態から通常の走行可能な状態にする場合は、固定手段45の解除操作レバー46を上方に引き上げて、固定手段45によるトップチューブ22とハンガーブラケット31との回動規制を解除する。そして、リヤフレーム12全体を軽く後方に向かって引くように移動させ、次いでサドル7に体重をかけて下方に移動させることにより、フロントフレーム11を収縮状態から展開状態に変形させることができる。
【0041】
フロントフレーム11は、ガススプリング51によって展開状態から収縮状態に変形する方向に付勢されているが、サドル7に体重をかけることによって、かかる付勢力に抗することができ、簡単に展開状態に変形させることができる。フロントフレーム11は、展開状態に変形すると、固定手段45の溝部に爪部が係入してトップチューブ22とハンガーブラケット31との回動が規制され、展開状態に固定される。これにより、折り畳み自転車1は、通常の走行可能な状態となる。
【0042】
折り畳み自転車1は、ヘッドチューブ21が上下に長く、その上部と下部にトップチューブ22とダウンチューブ23が軸支されているので、通常の走行可能な状態にされているときは、フロントフレーム11の閉領域をより大きく確保することができ、高い剛性を有しており、良好な走行安定性を得ることができる。
【0043】
上記した折り畳み自転車1によれば、ガススプリング51を用いてフロントフレーム11を展開状態から収縮状態に変形する方向に付勢しているので、フロントフレーム11を収縮状態に変形させるのに必要な力をより小さくすることができ、折り畳む際のユーザの負担を小さくすることができる。したがって、例えば腕力の少ない婦女子であっても簡単に折り畳み操作をすることができる。
【0044】
そして、折り畳み自転車1は、展開状態と収縮状態に変形可能な四節リンク機構のフロントフレーム11を有している。したがって、ホイールベースを短縮した折り畳み状態とすることができ、折り畳んだ状態でよりコンパクトにすることができる。
【0045】
特に、シートチューブ24がダウンチューブ23の前部と後部の間、すなわち、軸支点43と軸支点44との間に配置されており、上方へ延びている。したがって、展開状態から収縮状態に変形する際、軸支点43を中心にシートチューブ24が回動し、軸支点42を中心にリヤフレーム12が回動する。そして、図2に示すように、シートポスト8とサドル7はハンドル側(前方)に倒れ、リヤフレーム12は、シートステイ33がヘッドチューブ21と並行になる位置まで回動する。したがって、折り畳んだ状態では、シートポスト8及びサドル7は前方に倒れ、リヤフレーム12全体はヘッドチューブ21、トップチューブ22、シートステイで形成される閉じた領域に収まる。したがって、前後方向に自転車が広がらないので、全体がコンパクトになる。
【0046】
なお、本発明は、上述の実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、ガススプリング51をダウンチューブ23の左側に沿って1本設ける場合を例に説明したが、左右両側に対をなして設けてもよい。また、上述の実施形態では、ハンガーブラケット31がチェーンステイ32とシートステイ33との協働によりリヤフレーム12を構成する場合について説明したが、シートステイ33を省略した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 折り畳み自転車
2 フレーム
11 フロントフレーム
12 リヤフレーム
21 ヘッドチューブ
22 トップチューブ
23 ダウンチューブ
31 ハンガーブラケット
41〜44 軸支点
51 ガススプリング(付勢手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6