【実施例1】
【0029】
  先ず、本発明に係る一実施例としての植物用波長センサ装置10の概略的な構成について、
図1から
図8を用いて説明する。なお、
図6では、理解を容易とするために、各種の出力した信号や、それに伴う動作としての各発光部材26から出射される各測定光Pを矩形波として示しているが、実際の態様と必ずしも一致するものではない。
【0030】
  本発明に係る実施例1の植物用波長センサ装置10では、
図1に示すように、任意の波長帯域の複数の測定光Pを照射領域IAに照射する。なお、この測定光Pにおける波長とは、当該測定光Pのスペクトルにおいて強度がピーク値となる波長をいう。植物用波長センサ装置10では、生育状況測定対象とする植物(
図2の符号Cr参照)に対して特定の波長帯域の測定光Pを照射し、その測定光Pの生育状況測定対象からの反射光Pr(
図3参照)を取得する。そして、植物用波長センサ装置10では、その測定光Pおよび反射光Prを用いて、特定の波長帯域に対する生育状況測定対象からの反射光Prの光量(生育状況測定対象からの反射光量)や当該生育状況測定対象での反射率を求めることで、特定の波長帯域に対応する生育要素Eg(
図2参照)の含有量を求める(推定する)。
【0031】
  ここで、生育状況測定対象では、含有する生育要素Egの種類に応じて、測定光として用いるべき波長帯域やその数が変化する。このため、植物用波長センサ装置10では、測定対象とすることのできる複数の生育要素Egを予め設定し、その設定した各生育要素Egの推定に必要な複数の波長帯域を予め設定する。一例としての実施例1の植物用波長センサ装置10では、生育要素Egとして、窒素とタンパク質(プロテイン)とタンパク質に関連する水とを設定する。そして、窒素の推定のために、735nmと808nmとの2つの波長帯域を設定する。また、タンパク質(プロテイン)の推定のために、480nmと700nmと1050nmとの3つの波長帯域を設定し、そのタンパク質の推定に関係する水の推定のために、950nmの1つの波長帯域を設定する。以下では、この設定した各波長帯域において、小さなものから順に、480nmを第1波長帯域λ1とし、700nmを第2波長帯域λ2とし、735nmを第3波長帯域λ3とし、808nmを第4波長帯域λ4とし、950nmを第5波長帯域λ5とし、1050nmを第6波長帯域λ6とする。これらの情報は、図示を略す記憶部に適宜読み出し可能に格納されることで、後述するCPU23(制御部)に登録される。
【0032】
  そして、植物用波長センサ装置10(その後述する制御部)では、次のように生育要素Egの定量分析を行う。実施例1では、生育状況測定対象を小麦(wheat)とし、その小麦に含まれている成分としてのタンパク質(プロテイン)の定量分析を行うものとして説明する。植物用波長センサ装置10では、上述したように、タンパク質の量の推定に関係する第1波長帯域λ1、第2波長帯域λ2および第6波長帯域λ6の測定光Pを照射するとともに、タンパク質の量の推定に関係する水分(Moisture)の吸収波長帯域の第5波長帯域λ5の測定光Pを照射する。
【0033】
  この第1波長帯域λ1、第2波長帯域λ2、第5波長帯域λ5および第6波長帯域λ6は、実施例1では、小麦からの反射光の分光分布曲線(分光スペクトル(そのデータ))を多数取得し、その各データにPLS(Partial  Least  Squares)回帰分析の手法を適用することで決定する。そして、タンパク質の量の真値(公知のタンパク質の定量分析に用いられている分析手法により得られたタンパク質の量の値)と、上記したように決定した第1波長帯域λ1、第2波長帯域λ2、第5波長帯域λ5および第6波長帯域λ6と、を用いて重回帰分析から検量線を作成し、タンパク質に関する推定係数を決定する。加えて、水分量の真値(公知の水分の定量分析に用いられている分析手法により得られた水分量の値)と、上記したように決定した第1波長帯域λ1、第2波長帯域λ2、第5波長帯域λ5および第6波長帯域λ6と、を用いて重回帰分析から検量線を作成し、水分量に関する推定係数を決定する。なお、実施例1では、水分量の影響を主に受ける波長は、第5波長帯域λ5の950nmの近傍の波長域であるため、第5波長帯域λ5に重みを付け、推定係数の決定には第1波長帯域λ1、第2波長帯域λ2、第5波長帯域λ5および第6波長帯域λ6の全てを用いて水分量に関する推定係数を決定している。
【0034】
  そして、植物用波長センサ装置10(制御部)では、第1波長帯域λ1、第2波長帯域λ2、第5波長帯域λ5および第6波長帯域λ6の測定光Pに対する小麦(生育状況測定対象)での反射光量と、上記したように重回帰分析により得られた推定係数と、により生育要素Egとしてのタンパク質の量を推定する。このことは、生育状況測定対象に含まれている成分としての窒素の定量分析を行う場合であっても同様である。これにより、植物用波長センサ装置10(制御部)では、生育状況測定対象に含まれている生育要素Egの定量分析を行うことができる。
【0035】
  加えて、植物用波長センサ装置10(制御部)では、生育状況測定対象の第3波長帯域λ3の測定光Pおよび第4波長帯域λ4の測定光Pに対するそれぞれの反射率を生成することで、生育状況測定対象の分光植生指標を求める。この反射光Prの取得による反射率の生成については、後に説明する。本発明の植物用波長センサ装置10(制御部)では、分光植生指標の一例として、生育状況測定対象とする植物の生育状況(そこに含まれる栄養素の量)を示す正規化差植生指数(NDVI)を求める。このため、植物用波長センサ装置10(制御部)では、上述したように、第3波長帯域λ3の測定光Pとして赤の波長帯域の光を用いるとともに、第4波長帯域λ4の測定光Pとして赤外の波長帯域の光を用いる。そして、植物用波長センサ装置10(制御部)では、この赤の波長帯域(第3波長帯域λ3)の測定光Pの反射率(Rとする)と、赤外の波長帯域(第4波長帯域λ4)の測定光Pの反射率(IRとする)と、を用いて、(NDVI=(IR−R)/(IR+R))により正規化差植生指数(NDVI)を求める。
【0036】
  植物用波長センサ装置10には、図示は略すが、各種機能の実行させる操作を行うための操作部が設けられる。この各種機能は、各測定光Pによる照射や、その照射領域IAの回転姿勢の調整や、選択された生育要素Egの含有量の算出(推定)や、正規化差植生指数(NDVI)の算出の実行等を含む。また、植物用波長センサ装置10には、取付部11が設けられ、その取付部11により任意の箇所への取り付けが可能である。
【0037】
  植物用波長センサ装置10は、例えば、
図2に示すように、農業用機械(Agricultural  machine)の一例としてのトラクターTRに取付部11を介して設置して使用する。この
図2の例では、トラクターTRの左右に1つずつの植物用波長センサ装置10を搭載し、それぞれがトラクターTRの側方に照射領域IA(
図1および
図5等参照)を形成する。このトラクターTRでは、自らが走行する両脇に両植物用波長センサ装置10が照射領域IAを形成するので、栽培する作物Crの脇を通行することにより、その作物Crの各生育要素Egの含有量や正規化差植生指数(分光植生指標)を取得することができる。この例のトラクターTRには、
図5に示すように、肥料散布機Fsが搭載されている。その肥料散布機Fsは、図示は略すが制御部の制御下で量を調整しつつ肥料を散布する。肥料散布機Fsは、制御部が各植物用波長センサ装置10の後述するドライバー回路36やドライバー回路37(
図3参照)を介して各植物用波長センサ装置10(そのCPU23(制御部))とのデータの遣り取りが可能とされ、各植物用波長センサ装置10で取得した各生育要素Egの含有量や正規化差植生指数(分光植生指標)に応じた量の肥料を散布する。このため、トラクターTRでは、作物Crを栽培している農地(圃場)に沿って走行するだけで、作物Crの生育状況に応じた適切な量の肥料を当該作物Crに散布することができ、作物Crを効率よく栽培することができる。
【0038】
  この植物用波長センサ装置10は、
図3に示すように、発光ユニット21と受光ユニット22とCPU(制御ユニット)23とAPCユニット24と演算処理ユニット25とを備える。その発光ユニット21は、照射する各測定光Pを出射する発光部であり、設定された複数の生育要素Egの推定に必要な複数の波長帯域に個別に対応する複数の発光部材26、すなわちnを1以上の自然数として、登録(設定)されたn個の波長帯域に個別に対応してn個の発光部材26を有する。実施例1では、上述したように6個の波長帯域が設定されていることから、発光ユニット21は、第1発光部材261と第2発光部材262と第3発光部材263と第4発光部材264と第5発光部材265と第6発光部材266とを有する。また、発光ユニット21では、各発光部材26に対応して、温度調節素子27(第1温度調節素子271、第2温度調節素子272、第3温度調節素子273、第4温度調節素子274、第5温度調節素子275、第6温度調節素子276)と、温度検出素子28(第1温度検出素子281、第2温度検出素子282、第3温度検出素子283、第4温度検出素子284、第5温度検出素子285、第6温度検出素子286)と、が設けられる。
【0039】
  第1発光部材261は、第1波長帯域λ1の測定光Pを出射し、実施例1では、出射光のピーク値の波長を480nmとするパルス発振型のレーザダイオード(PLD)で構成する。第2発光部材262は、第2波長帯域λ2の測定光Pを出射し、実施例1では、出射光のピーク値の波長を700nmとするパルス発振型のレーザダイオード(PLD)で構成する。第3発光部材263は、第3波長帯域λ3の測定光Pを出射し、実施例1では、出射光のピーク値の波長を735nmとするパルス発振型のレーザダイオード(PLD)で構成する。第4発光部材264は、第4波長帯域λ4の測定光Pを出射し、実施例1では、出射光のピーク値の波長を808nmとするパルス発振型のレーザダイオード(PLD)で構成する。第5発光部材265は、第5波長帯域λ5の測定光Pを出射し、実施例1では、出射光のピーク値の波長を950nmとするパルス発振型のレーザダイオード(PLD)で構成する。第6発光部材266は、第6波長帯域λ6の測定光Pを出射し、実施例1では、出射光のピーク値の波長を1050nmとするパルス発振型のレーザダイオード(PLD)で構成する。
【0040】
  各発光部材26(261から266)は、後述するように、測定光出力制御部(APCユニット24および演算処理ユニット25)の制御下で駆動(出力調整および点消灯)される。その各発光部材26の温度を個別に調整するために、上述したように、各温度調節素子27(271から276)と各温度検出素子28(281から286)とが設けられる。
【0041】
  各温度調節素子27は、対応する各発光部材26を加熱または冷却するものであり、実施例1ではペルチェ効果型素子で形成する。その各温度調節素子27は、対応する各発光部材26に適合する大きさ寸法および形状としている。各温度検出素子28は、対応する各発光部材26の温度を検出するものであり、実施例1ではサーミスタで形成する。
【0042】
  実施例1の発光ユニット21では、
図4に示すように、ベース基板29に各温度調節素子27を取り付け、その各温度調節素子27に適宜金属板を介して各発光部材26を設ける。その各発光部材26に対応する各温度検出素子28を取り付ける。なお、実施例1の発光ユニット21では、
図3に示すように、さらに、各種回路を設けたプリント回路基板PCBの温度を検出する第7温度検出素子287としてのサーミスタを設ける。この第7温度検出素子287は、例えば、受光部(受光ユニット22(測定用受光部材31)やAPCユニット24(監視用受光部材38))に接近して設けることで、その受光部の駆動回路を設けたプリント回路基板PCBの温度を検出して、当該受光部における受光値の補正に用いることができる。
【0043】
  発光ユニット21では、各温度検出素子28の検出出力をCPU23に入力させる。CPU23は、各温度検出素子28からの検出結果に基づいて、各発光部材26の温度を一定とするように対応する温度調節素子27を制御する。このため、CPU23は、各発光部材26の温度を制御する温度制御回路として機能する。その各温度調節素子27は、実施例1ではペルチェ効果型素子で形成しているので、CPU23によりこのペルチェ効果型素子に流れる電流の向きが制御されることで、温度調節を行う。
【0044】
  受光ユニット22は、測定用受光部材31と増幅回路32とA/D(アナログ・デジタル)変換器33とを有する。測定用受光部材31は、各測定光Pが照射された生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prを取得すべく設けられ、受光面に光が入射するとその光量に応じた電気信号を出力する。この測定用受光部材31は、実施例1では、図示は略すが6つのPD(Photodiode)で形成しており、電気信号(検出出力(受光値))を増幅回路32へ向けて出力する。なお、測定用受光部材31から出力される電気信号には、生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prの光量に応じた分に加えて、外乱光の光量に応じた分も含まれている。その増幅回路32は、入力された電気信号を適宜増幅してA/D変換器33へ向けて出力する。そのA/D変換器33は、入力された電気信号(受光値)をデジタル信号に変換して演算処理ユニット25へ向けて出力する。この受光ユニット22における反射光Prの取得動作は、受光信号Sr(
図6参照)に応じて行われる。その受光信号Srは、CPU23の制御下で、後述する発光信号Se(
図6参照)に対応して、すなわち発光信号Seが出力されるときと、当該発光信号Seと次の発光信号Seとの間と、に受光ユニット22へと出力される。これは、後述するように、各発光部材26が点灯しているときと、その後に当該発光部材26が消灯したときと、で受光ユニット22が受光値を得ることによる。
【0045】
  CPU(中央演算処理装置)23は、植物用波長センサ装置10において、図示を略す記憶部に記憶されたプログラムに基づいて、外部電力供給源35から電源回路34を経て電力が供給される各構成部を統括的に制御する制御ユニットとして機能する。そのCPU23は、RS−232Cの規格に対応するドライバー回路36やキャン通信が可能とされたドライバー回路37を介して外部とのデータの遣り取りが可能であり、植物用波長センサ装置10の駆動に必要なデータまたはプログラムを適宜取得する。加えて、CPU23は、上述したように、各発光部材26の温度調整(各温度調節素子27の駆動制御)を行う。さらに、CPU23は、後述するスイッチ素子44に切替信号Ss(
図6参照)を出力することで、当該スイッチ素子44における電路(後述する接続先)を切り替える。
【0046】
  また、CPU23は、後述するように、演算処理ユニット25(その積算部42)から出力される積算信号に基づいて、生育状況測定対象(作物Cr)における、照射した各測定光Pに対する反射光量や反射率を算出する演算部として機能する。加えて、CPU23は、後述するように、その算出結果(各反射率)に基づいて生育状況測定対象(作物Cr)の正規化差植生指数(NDVI)を算出する演算部として機能する。
【0047】
  APCユニット24は、各発光部材26の出力パワー、すなわち出射される各測定光Pの強度(発光量)を所定の大きさに安定させる(フィードバック制御)。このAPCユニット24は、監視用受光部材38と増幅回路39とフィードバック回路41とを有する。監視用受光部材38は、後述するように、植物用波長センサ装置10(その出射部としてのシリンドリカルレンズ81)から出射される前の各測定光Pの一部を取得すべく後述する照射光学系60に設けられる(
図4参照)。この監視用受光部材38は、受光面に光が入射すると、その光量に応じた電気信号を出力するものであり、実施例1ではPD(Photodiode)で形成する。監視用受光部材38は、電気信号(検出出力(受光値))を増幅回路39へ向けて出力する。その増幅回路39は、入力された電気信号を適宜増幅してフィードバック回路41へ向けて出力する。そのフィードバック回路41は、入力された電気信号に基づいて、その受光値の大きさが一定となるように各発光部材26の駆動電流を制御する。これにより、各発光部材26は、そこから出射される各測定光Pの強度が一定となるように自動的に制御される。
【0048】
  このため、APCユニット24では、監視用受光部材38が、各発光部材26から生育状況測定対象(作物Cr)に向けて照射される各測定光Pの一部を受光する補助受光素子として機能する。また、APCユニット24では、増幅回路39とフィードバック回路41とが、補助受光素子からの受光値に基づいて各測定光Pの強度が一定となるように各発光部材26の出力パワーを制御する光量制御部として機能する。
【0049】
  演算処理ユニット25は、FPGA(Field  Programmable  Gate  Array)で形成しており、測定用受光部材31での受光値を所定時間積算して積算信号を出力する積算機能(積算部42)と、各発光部材26の発光制御のためのパルス信号を生成する発光制御機能(パルス生成部(発光制御部)43)と、を有する。積算部42の動作については、後に説明する。パルス生成部43は、CPU23の制御下で、各発光部材26の発光を異なるタイミングとするように、各発光部材26を発光制御するためのパルス信号(後述する発光信号Se)を生成して、当該パルス信号を各発光部材26に出力する。このパルス生成部43(演算処理ユニット25)が生成したパルス信号を対応する各発光部材26に出力するために、実施例1ではスイッチ素子44を設けている。
【0050】
  そのスイッチ素子44は、各発光部材26のうちのいずれか1つの発光部材26を選択し、その選択した発光部材26をパルス生成部43(演算処理ユニット25)からの接続先として接続することが可能とされている。スイッチ素子44は、CPU23から入力された切替信号Ssに対応する発光部材26をパルス生成部43(演算処理ユニット25)からの接続先とする。この切替信号Ssは、第1発光部材261に対応するものを第1切替信号Ss1とし、第2発光部材262に対応するものを第2切替信号Ss2とし、第3発光部材263に対応するものを第3切替信号Ss3とし、第4発光部材264に対応するものを第4切替信号Ss4とし、第5発光部材265に対応するものを第5切替信号Ss5とし、第6発光部材266に対応するものを第6切替信号Ss6とする。このため、スイッチ素子44は、第n切替信号Ssnが入力されると、パルス生成部43(演算処理ユニット25)と第n発光部材26nとを接続する電路を選択して導通させ、他の電路を非導通状態とする。
【0051】
  このため、演算処理ユニット25(そのパルス生成部43)は、スイッチ素子44、CPU23およびAPCユニット24と協働して、各発光部材26の駆動(出力調整および点消灯)を制御する測定光出力制御部として機能する。実施例1では、測定光出力制御部(その演算処理ユニット25)は、選択した生育要素Egのために設定された波長帯域に対応する各発光部材26を順に同一の時間幅で出射させるとともに、それぞれの出射後に等しい時間の駆動停止(消灯)時間を設定している。
【0052】
  これらのことから、実施例1の植物用波長センサ装置10では、CPU23、APCユニット24および演算処理ユニット25が、各発光部材26と受光部(測定用受光部材31)とを駆動制御するとともに、各測定光Pおよびその反射光Prから生育状況測定対象(作物Cr)での反射率や反射光量や分光植生指標(正規化差植生指数)を求める制御部として機能する。
【0053】
  この植物用波長センサ装置10では、
図4に示すように、各発光部材26により所定の照射領域IA(
図5等参照)を形成するための照射光学系60を有する。その照射光学系60は、発光ユニット21の各発光部材26に加えて、その第1発光部材261に対応する第1レンズ61と、第2発光部材262に対応する第2レンズ62と、第3発光部材263に対応する第3レンズ63と、第4発光部材264に対応する第4レンズ64と、第5発光部材265に対応する第5レンズ65と、第6発光部材266に対応する第6レンズ66とを有する。この第1から第6の各レンズ(61から66)は、対応する発光部材26(261から266)から出射される測定光Pを、当該発光部材26の出射光軸Lrに平行な光束とする。この各出射光軸Lrは、実施例1では、互いに平行とされており、それらと直交して照射光学系60における照射光軸Lを設定している。
【0054】
  また、照射光学系60は、照射光軸L上に、第1ダイクロイックミラー67と第2ダイクロイックミラー68と第3ダイクロイックミラー69と第4ダイクロイックミラー71と第5ダイクロイックミラー72とミラー73と第7レンズ74とを有する。加えて、照射光学系60は、光ファイバ75とミキシング部76と第8レンズ77と第9レンズ78とハーフミラー79とシリンドリカルレンズ81と監視用受光部材38と、を有する。
【0055】
  照射光軸L上の第1ダイクロイックミラー67は、第1発光部材261の出射光軸Lrと照射光軸Lとが交差する位置に設けられ、設定した波長帯域の中の第1波長帯域λ1以外の波長帯域の測定光Pの透過を許すとともに、第1発光部材261からの第1波長帯域λ1の測定光Pを反射して照射光軸L上へと進行させる。この第1ダイクロイックミラー67は、実施例1では、第1波長帯域λ1としての480nmの周辺の波長帯域の光を反射するとともに、第2波長帯域λ2としての700nmの周辺よりも大きい波長帯域の光の透過を許す光学性能を有する。第2ダイクロイックミラー68は、第2発光部材262の出射光軸Lrと照射光軸Lとが交差する位置に設けられ、設定した波長帯域の中の第1波長帯域λ1および第2波長帯域λ2以外の波長帯域の測定光Pの透過を許すとともに、第2発光部材262からの第2波長帯域λ2の測定光Pを反射して照射光軸L上へと進行させる。この第2ダイクロイックミラー68は、実施例1では、第2波長帯域λ2としての700nmの周辺の波長帯域の光を反射するとともに、第3波長帯域λ3としての735nmの周辺よりも大きい波長帯域の光の透過を許す光学性能を有する。
【0056】
  第3ダイクロイックミラー69は、第3発光部材263の出射光軸Lrと照射光軸Lとが交差する位置に設けられ、設定した波長帯域の中の第1波長帯域λ1、第2波長帯域λ2および第3波長帯域λ3以外の波長帯域の測定光Pの透過を許すとともに、第3発光部材263からの第3波長帯域λ3の測定光Pを反射して照射光軸L上へと進行させる。この第3ダイクロイックミラー69は、実施例1では、第3波長帯域λ3としての735nmの周辺の波長帯域の光を反射するとともに、第4波長帯域λ4としての808nmの周辺よりも大きい波長帯域の光の透過を許す光学性能を有する。第4ダイクロイックミラー71は、第4発光部材264の出射光軸Lrと照射光軸Lとが交差する位置に設けられ、設定した波長帯域の中の第5波長帯域λ5および第6波長帯域λ6の波長帯域の測定光Pの透過を許すとともに、第4発光部材264からの第4波長帯域λ4の測定光Pを反射して照射光軸L上へと進行させる。この第4ダイクロイックミラー71は、実施例1では、第4波長帯域λ4としての808nmの周辺の波長帯域の光を反射するとともに、第5波長帯域λ5としての950nmの周辺よりも大きい波長帯域の光の透過を許す光学性能を有する。
【0057】
  第5ダイクロイックミラー72は、第5発光部材265の出射光軸Lrと照射光軸Lとが交差する位置に設けられ、設定した波長帯域の中の第6波長帯域λ6の波長帯域の測定光Pの透過を許すとともに、第5発光部材265からの第5波長帯域λ5の測定光Pを反射して照射光軸L上へと進行させる。この第5ダイクロイックミラー72は、実施例1では、第5波長帯域λ5としての950nmの周辺の波長帯域の光を反射するとともに、第6波長帯域λ6としての1050nmの周辺よりも大きい波長帯域の光の透過を許す光学性能を有する。ミラー73は、第6発光部材266の出射光軸Lrと照射光軸Lとが交差する位置に設けられ、第6発光部材266からの第6波長帯域λ6の測定光Pを反射して照射光軸L上へと進行させる。このミラー73は、実施例1では、全ての波長帯域の光を反射する光学性能を有する。
【0058】
  このため、第1から第5のダイクロイックミラー(67から72)およびミラー73は、各発光部材26の出射光路を合流させて同一の照射光軸L上で第7レンズ74(後述する共通出射光路)へと向かわせる光路合流手段として機能する。その第7レンズ74は、各発光部材26から出射されて照射光軸L上を進行する各測定光Pを、光ファイバ75の一端に設けた入射端面75aに集光する。なお、各発光部材26の設定位置は、適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されるものではない。その場合、第1から第5のダイクロイックミラー(67から72)およびミラー73は、各発光部材26の設定位置に応じて、それぞれの光学性能(透過および反射させる波長帯域)を適宜設定すればよい。
【0059】
  その光ファイバ75は、入射端面75aから入射された各測定光Pを、他端に設けた出射端面75bから出射させる。光ファイバ75では、各測定光Pをミキシングさせつつ内部を進行させる作用を有する。実施例1の光ファイバ75では、ミキシング作用を促進するために、その導光路内におけるモード間の光パワーの相互交換を誘起するモードスクランブル処理を施すべくミキシング部76を設けている。そのミキシング部76は、実施例1では、光ファイバ75を曲げ許容半径の範囲内で巻付部材に巻き付けることで、モードスクランブル処理を行う。このため、光ファイバ75(その出射端面75b)から出射される各測定光Pは、進行方向に直交する面で見て均一な強度とされるとともに無偏光(ランダム偏光)とされる。これにより、各測定光Pは、進行方向に直交する面で見て、対応する発光部材26から出射される際には楕円形状とされているが、出射端面75bから出射される際にはその出射端面75bに応じた円形状とされる。この光ファイバ75は、入射端面75aから入射された各測定光Pを、出射端面75bから照射光軸L上で第8レンズ77へ向けて出射させる。
【0060】
  その第8レンズ77は、出射端面75bから出射される各測定光Pを、照射光軸Lに平行な光束とする。その照射光軸L上の第8レンズ77の後ろに、ハーフミラー79を設ける。このハーフミラー79は、入射される平行光束(各測定光P)の一部を透過させるとともに、残部を第9レンズ78が配置された分岐光軸Lb上へと反射する。この第9レンズ78は、ハーフミラー79により反射された平行光束(各測定光P)を、分岐光軸Lb上でAPCユニット24の監視用受光部材38の入射面38aに集光する。このため、ハーフミラー79は、入射される各測定光Pの一部を、測定光出力制御部を構成する監視用受光部材38へ向けて分岐する光束分岐手段として機能する。これにより、APCユニット24では、光ファイバ75(共通出射光路)を経て均一な強度分布で無偏光な各測定光Pを用いて、対応する各発光部材26の出力パワーを調整することができる。
【0061】
  シリンドリカルレンズ81は、ハーフミラー79を経た照射光軸L上に設けられる。そのシリンドリカルレンズ81は、照射光軸Lに直交する平面で見て、一方向のみに屈折力を持つ光学部材であり、ハーフミラー79を経た各測定光Pを照射光軸Lに直交する平面での一方向に拡大する。ここで、各測定光Pは、光ファイバ75の出射端面75bから出射される際には、上述したように照射光軸Lに直交する平面で見ると円形状とされる。このため、ハーフミラー79を経た断面円形状の各測定光Pは、シリンドリカルレンズ81により一方向のみが所定の大きさ寸法に拡大された楕円形状とされる。
【0062】
  このシリンドリカルレンズ81は、回転駆動部82(
図4参照)により、照射光軸Lを中心として回転(自転)可能に支持される。この回転駆動部82は、図示は略すが、植物用波長センサ装置10において照射光学系60を収容する筐体に固定されて設けられる。シリンドリカルレンズ81は、照射光学系60における各測定光Pの出射面を形成する。このため、照射光学系60では、回転駆動部82(
図4参照)でシリンドリカルレンズ81を照射光軸L回りに回転(自転)させることで、照射光軸Lに直交する平面で見て各測定光Pを拡大させる方向(上述した一方向)を変更することができ、各測定光Pによる照射領域IAを照射光軸L回りに回転(自転)させることができる。
【0063】
  この照射光学系60では、
図4に示すように、演算処理ユニット25のパルス生成部43による点灯制御に応じて、各発光部材26から対応する各測定光Pを出射する。その各発光部材26から出射した各測定光Pは、対応するレンズ(61から66)を経て対応するダイクロイックミラー(67から72)またはミラー73により反射されて、照射光軸L上で第7レンズ74へと進行する。このため、照射光学系60では、ダイクロイックミラー(67から72)およびミラー73により各測定光Pの出射(照射)光路が合流されて、照射光軸L上で第7レンズ74へと向かう。その第7レンズ74へと進行した光束(各測定光P)は、入射端面75aから光ファイバ75へと入射され、その光ファイバ75による導光路を経て出射端面75bから出射されて、第8レンズ77へと進行する。その照射光軸L上で第8レンズ77を経た光束(各測定光P)は、一部がハーフミラー79により反射されて分岐光軸Lb上で第9レンズ78を経て監視用受光部材38へと入射し、他部がシリンドリカルレンズ81により一方向が拡大された楕円形状とされて当該シリンドリカルレンズ81から出射される。このため、第7レンズ74、光ファイバ75、第8レンズ77、およびハーフミラー79を経てシリンドリカルレンズ81へと向かう光路が、光路合流手段としてのダイクロイックミラー(67から72)およびミラー73と、出射面を規定する出射部としてのシリンドリカルレンズ81と、を接続する共通出射光路として機能する。
【0064】
  これにより、照射光学系60では、同一のシリンドリカルレンズ81から各測定光Pを同一の照射光軸L上で出射させることができ、各測定光Pで楕円形状を呈する同一の照射領域IAを形成することができる。また、照射光学系60では、
図5に示すように、回転駆動部82(
図4参照)でシリンドリカルレンズ81を適宜回転させることにより、各測定光Pによる照射領域IAを照射光軸L回りに回転(自転)させることができる(実線と二点鎖線とで示す照射領域IA参照)。このため、植物用波長センサ装置10では、トラクターTR(
図1参照)への取り付け状態に拘らず、トラクターTRの周辺での照射領域IAの形成位置を適宜調整することができ、トラクターTRへの取り付けの自由度を高めることができる。また、植物用波長センサ装置10では、トラクターTRに取り付けた後であっても、トラクターTRの周辺での照射領域IAの形成位置を適宜調整することができる。
【0065】
  演算処理ユニット25のパルス生成部43(
図3参照)から出力される発光信号Seは、各発光部材26を周期的に発光させるべく、それぞれが等しいパルス時間幅でかつそれぞれが等しい間隔で順に発生されて、等しい周期とされる(
図6参照)。このため、各発光部材26は、それぞれが等しい間隔でかつ等しい時間幅で順に測定光Pを出射させる。この発光信号Seは、タンパク質(水を含む)の量の推定を行う際の動作を示す
図6の例では、互いに等しい周期の第1発光信号Se1と第2発光信号Se2と第5発光信号Se5と第6発光信号Se6とを有する。その第1発光信号Se1は、第1発光部材261を周期的に発光させ、第2発光信号Se2は、第2発光部材262を周期的に発光させ、第5発光信号Se5は、第5発光部材265を周期的に発光させ、第6発光信号Se6は、第6発光部材266を周期的に発光させる。この発光信号Seは、CPU23からの切替信号Ssによりスイッチ素子44の電路が切り替えられることで、対応する発光部材26へと送信される。このため、発光信号Seが出力される際(厳密には発光信号Seが出力される直前)には、対応する切替信号Ssがスイッチ素子44へと出力される。
図6の例では、第1切替信号Ss1がスイッチ素子44に出力されて第1発光信号Se1が第1発光部材261に出力され、第2切替信号Ss2がスイッチ素子44に出力されて第2発光信号Se2が第2発光部材262に出力され、第5切替信号Ss5がスイッチ素子44に出力されて第5発光信号Se5が第5発光部材265に出力され、第6切替信号Ss6がスイッチ素子44に出力されて第6発光信号Se6が第6発光部材266に出力される。
【0066】
  その演算処理ユニット25の積算部42では、上述したように、受光ユニット22(その測定用受光部材31(
図3参照))からの受光値を所定時間積算して積算信号を出力する積算機能を有する。ここで、受光ユニット22(測定用受光部材31)は、各発光部材26が出射している際に受光することで、各測定光Pの反射光成分と外乱光に起因する外乱光成分とを含んだ光量を取得(受光)する。また、受光ユニット22(測定用受光部材31)は、各発光部材26が消灯している際に受光することで、各測定光Pの反射光成分が除かれて外乱光成分を含んだ光量に相当する受光値が周期的に順に出力される。このため、受光ユニット22からは、各測定光Pの反射光成分と外乱光成分とを含んだ光量に相当する受光値と、外乱光成分のみを含んだ光量に相当する受光値と、が周期的に順に出力される。積算部42では、受光ユニット22から受光値を受けると、パルス生成部43による各発光部材26の点灯制御に同期する第1積算ステップと、パルス生成部43による各発光部材26の消灯制御に同期する第2積算ステップと、を実行する。この積算部42(演算処理ユニット25)での積算処理の一例を以下で説明する。
【0067】
  積算部42は、例えば、各測定光Pの反射光成分と外乱光成分とを含んだパルス的受光値としての受光値SNのパルス幅を、
図7(a)に示すように互いに等しい区間t1〜t10に分割し、区間毎に(各t1〜t10で)受光出力を複数回サンプリングし、各サンプリング値を加算(積算)してこの加算値を一時的に記憶する。このとき、例えば、区間t1において、受光出力を8回サンプリングし、8個のサンプリング値を加算して、
図7(b)に示すように加算値K1を取得し、この加算値K1を一時的に記憶する。積算部42は、同様にして、残りの各区間(各t2〜t10)に対応する加算値K2〜K10を得る処理を実行し、加算値K1〜K10の値から最も大きな加算値を抽出し、その抽出した加算値を受光値SNのピーク値(最大値)を示す受光出力値として取得する。この
図7(b)に示す例では、受光出力値(受光値SN(
図7(a)参照)のピーク値)は加算値K6となる。積算部42(演算処理ユニット25)は、この受光出力値(ピーク値)の取得を、所定時間内で受光した複数の受光値についてそれぞれ実行し、その各受光値の受光出力値(ピーク値)を所定個数積算して、対応する測定光Pによる反射光成分が強調された第1積算信号を得る。この第1積算信号を得ることが第1積算ステップとなり、積算部42は、それらの積算結果をCPU23に向けて出力する。
【0068】
  また、積算部42(演算処理ユニット25)は、対応する測定光Pの反射光成分が除かれたパルス的受光値としての複数の受光値についても、同様の演算を行う。これにより、積算部42は、当該受光値の受光出力値(ピーク値)をそれぞれ取得し、当該受光出力値(ピーク値)を所定個数積算して、対応する測定光Pの反射光成分が除かれて外乱光のみに起因する第2積算信号を得る。この第2積算信号を得ることが第2積算ステップとなり、積算部42は、それらの積算結果をCPU23に向けて出力する。
【0069】
  CPU23は、演算処理ユニット25(その積算部42)から第1積算信号と第2積算信号とが入力されると、第1積算信号から第2積算信号を減算して、外乱光に起因する光量成分が除かれた測定光Pの反射光成分を示す反射受光値(反射光量)を算出する。また、CPU23は、対応する測定光Pを出射した発光部材26の全発光量と、上記したように求めた反射受光値と、に基づいて、対応する測定光Pを照射した生育状況測定対象(作物Cr)における反射率を算出する。その全発光量は、各発光部材26における設定と出力した発光信号Seとに基づいて求めることができ、また、監視用受光部材38での受光値に基づいて求めることができる。CPU23は、この動作を出射した各測定光Pに対して行うことにより、各波長帯域に対する生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光量や当該生育状況測定対象での反射率を求めることができる。また、CPU23は、このように求めた反射率を用いて、上記したように正規化差植生指数(NDVI)を算出することができる。
【0070】
  このため、CPU23は、外乱光に起因する光量成分の影響を極めて少なくした各測定光Pに対する反射光量や反射率を求めることができ、それらに基づいて生育状況測定対象(作物Cr)の正規化差植生指数(NDVI)を取得することができるので、当該生育状況測定対象(作物Cr)の生育状況に関する情報をより正確に取得することができる。この生育状況測定対象(作物Cr)の生育状況に関する情報は、上述したように、ドライバー回路36やドライバー回路37を介して、外部にデータとして出力することができる。
【0071】
  次に、植物用波長センサ装置10を用いて選択された生育要素Egの量を推定するための波長帯域に対する生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光量および反射率を算出する反射測定処理について、
図8を用いて説明する。その
図8は、実施例1における制御部(CPU23)にて実行される反射測定処理を示すフローチャートである。この反射測定処理は、制御部(CPU23)の内蔵する記憶部もしくは当該制御部(CPU23)の外部に設けられた記憶部に記憶されたプログラムに基づいて、制御部(CPU23)が実行する。以下では、この
図8のフローチャートの各ステップ(各工程)について説明する。この
図8のフローチャートは、植物用波長センサ装置10に電源を投入することにより開始される。
【0072】
  ステップS1では、生育要素Egが選択されたか否かを判断し、Yesの場合はステップS2へ進み、Noの場合はステップS1を繰り返す。このステップS1では、図示を略す操作部に生育要素Egを選択する選択操作が為されたか否かを判断し、この判断を生育要素Egが選択されるまで繰り返す。
【0073】
  ステップS2では、ステップS1での生育要素Egが選択されたとの判断に続き、選択された生育要素Egに対応する波長帯域の組み合わせを選出して、ステップS3へ進む。このステップS2では、選択された生育要素Egに対応する波長帯域の組み合わせ、すなわち当該生育要素Egの推定に必要な複数の波長帯域を選出し、その情報(該当する波長帯域およびその数)を記憶部に格納する。実施例1では、上述したように、選択可能な生育要素Egとして窒素とタンパク質(プロテイン)とタンパク質に関連する水とが設定されている。そして、ステップS2では、生育要素Egとして窒素が選択されると、第3波長帯域λ3(735nm)と第4波長帯域λ4(808nm)とを選択し、その第3波長帯域λ3を1番目の波長帯域とし、第4波長帯域λ4を2番目の波長帯域として、波長帯域の数kを2(k=2)とする。同様に、ステップS2では、生育要素Egとしてタンパク質(プロテイン)(水を含む)が選択されると、第1波長帯域λ1(480nm)と第2波長帯域λ2(700nm)と第5波長帯域λ5(950nm)と第6波長帯域λ6(1050nm)とを選択し、その第1波長帯域λ1を1番目の波長帯域とし、第2波長帯域λ2を2番目の波長帯域とし、第5波長帯域λ5を3番目の波長帯域とし、第6波長帯域λ6を4番目の波長帯域として、波長帯域の数を4(k=4)とする。加えて、ステップS2では、生育要素Egとして水分量によらないタンパク質(プロテイン)が選択されると、第1波長帯域λ1(480nm)と第2波長帯域λ2(700nm)と第6波長帯域λ6(1050nm)とを選択し、その第1波長帯域λ1を1番目の波長帯域とし、第2波長帯域λ2を2番目の波長帯域とし、第6波長帯域λ6を3番目の波長帯域として、波長帯域の数を3(k=3)とする。
【0074】
  ステップS3では、ステップS2での波長帯域の組み合わせの選出、あるいは、ステップS13での測定を終了されたとの判断に続き、受光値の積算のための経過時間のカウントを開始して、ステップS4へ進む。このステップS3では、積算部42(演算処理ユニット25)が所定時間内に受光した複数の受光値に対して積算処理を行うことから、積算処理を実行している経過時間のカウントを開始する。
【0075】
  ステップS4では、ステップS3での経過時間のカウントの開始、あるいは、ステップS10での所定時間が経過していないとの判断に続き、変数nを1(n=1)として、ステップS5へ進む。この変数nは、現在行っている測定光Pの出射およびその反射光Prの取得が何番目に設定された波長帯域に対して行っているのかをカウントするために用いるものであり、ステップS4では当該変数nを1とする。
【0076】
  ステップS5では、ステップS4での変数nを1とすること、あるいは、ステップS9でのn+1を新たな変数nとすることに続き、n番目の波長帯域の測定光Pを照射して、ステップS6へ進む。このステップS5では、スイッチ素子44に第n切替信号Ssnを出力してn番目の波長帯域に対応する発光部材26とパルス生成部43(演算処理ユニット25)とを導通させ、そのn番目の波長帯域に対応する発光部材26に第n発光信号Senを出力する。これにより、対応する発光部材26からのn番目の波長帯域の測定光Pを生育状況測定対象(作物Cr)へ向けて照射する。
【0077】
  ステップS6では、ステップS5でのn番目の波長帯域の測定光Pの照射に続き、その測定光Pの生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prを取得して、ステップS7へ進む。このステップS6では、第n発光信号Senに対応して出力された受光信号Srに応じて、受光ユニット22が受光値を取得する。実施例1では、受光信号Srが、n番目の波長帯域に対応する発光部材26が出射しているときと、その直後であって当該発光部材26が消灯しているときと、に出力される。これにより、ステップS6では、n番目の波長帯域に対応する発光部材26が出射しているときの受光値と、その直後であって当該発光部材26が消灯しているときの受光値と、を受光ユニット22が取得して出力する。
【0078】
  ステップS7では、ステップS6での反射光Pr(その受光値)の取得に続き、その取得した反射光Pr(受光値)における受光出力値を算出して、ステップS8へ進む。このステップS7では、n番目の波長帯域に対応する発光部材26が出射しているときの受光値における受光出力値(第1積算ステップ)と、その直後であって当該発光部材26が消灯しているときの受光値における受光出力値(第2積算ステップ)と、を算出する。
【0079】
  ステップS8では、ステップS7での受光出力値の算出に続き、変数nが波長帯域の数kと等しいか否か(n=k?)を判断し、Yesの場合はステップS10へ進み、Noの場合はステップS9へ進む。このステップS8では、ステップS5からステップS7までの動作が何番目に設定された波長帯域に対して行われたものであるのかをカウントする変数nが、設定した波長帯域の数kと等しいか否かを判断する。すなわち、ステップS8では、設定した全ての波長帯域に対する受光値を取得したか否かを判断する。
【0080】
  ステップS9では、ステップS8での変数nが波長帯域の数kと等しくないとの判断に続き、n+1を新たな変数nとして、ステップS5へ戻る。このステップS9では、設定した全ての波長帯域に対する受光値(受光出力値)を取得していないことから、残りの波長帯域に対する受光値を取得すべく、変数n(その現状の値)に1を加算して新たな変数n(n=n+1)としてステップS5に戻る。
【0081】
  ステップS10では、ステップS8での変数nが波長帯域の数kと等しいとの判断に続き、所定時間が経過したか否かを判断し、Yesの場合はステップS11へ進み、Noの場合はステップS4へ戻る。このステップS10では、ステップS3でカウントを開始した経過時間が、積算処理を実行する所定時間に到達したか否かを判断することで、所定時間が経過したか否かを判断する。
【0082】
  ステップS11では、ステップS10での所定時間が経過したとの判断に続き、選出した全ての波長帯域に対する受光出力値の積算信号を取得して、ステップS12へ進む。このステップS11では、選出した全ての波長帯域に対するステップS5からステップS7までの動作を所定時間繰り返すことにより得られた選出した全ての波長帯域に対する受光出力値の積算信号、すなわち選出した全ての波長帯域に対する第1積算信号および第2積算信号を取得する。
【0083】
  ステップS12では、ステップS11での選出した全ての波長帯域に対する受光出力値の積算信号の取得に続き、反射光量および反射率を算出して、ステップS13へ進む。このステップS12では、選出した全ての波長帯域に対して、ステップS11で取得した受光出力値の第1積算信号から第2積算信号を減算することで、生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光成分を示す反射受光値(反射光量)を算出する。また、ステップS12では、選出した全ての波長帯域に対して、反射受光値と、対応する測定光Pを出射した発光部材26の全発光量(例えば監視用受光部材38での受光値に基づく値)と、に基づいて、対応する測定光Pを照射した生育状況測定対象(作物Cr)における反射率を算出する。そして、このように求めた反射率を用いて、適宜正規化差植生指数(NDVI)を算出する。
【0084】
  ステップS13では、ステップS12での反射光量および反射率の算出に続き、植物用波長センサ装置10を用いた測定を終了されたか否かを判断し、Yesの場合はこの反射測定処理を終了し、Noの場合はステップS3へ戻る。このステップS13では、植物用波長センサ装置10を用いた測定を終了する旨の操作(終了操作)が為されたか否かを判断し、当該操作(終了操作)が為されていない場合には、反射光量および反射率を算出すべく上記した動作を繰り返す。
【0085】
  次に、生育要素Egの量を推定する際の植物用波長センサ装置10の動作について、生育要素Egとしてタンパク質(プロテイン)(水を含む)が選択された場合を例とした
図6を用いて説明する。
【0086】
  先ず、生育要素Egとしてタンパク質(プロテイン)(水を含む)が選択されると、
図8のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進むことにより、第1波長帯域λ1(480nm)と第2波長帯域λ2(700nm)と第5波長帯域λ5(950nm)と第6波長帯域λ6(1050nm)とを選出する。その後、
図8のフローチャートにおいて、ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進むことにより、第1発光部材261から出射により第1波長帯域λ1(480nm)の測定光P(第1測定光P1)を照射する(
図6の時間T1参照)。そして、
図8のフローチャートにおいて、ステップS6→ステップS7へと進むことにより、第1波長帯域λ1(480nm)に対する生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prを取得してその受光出力値を算出する(
図6の時間T1、T2参照)。その後、
図8のフローチャートにおいて、ステップS8→ステップS9→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進むことを繰り返すことにより、第2発光部材262から第2波長帯域λ2(700nm)の測定光P(第2測定光P2)を照射し(
図6の時間T3参照)、第5発光部材265から第5波長帯域λ5(950nm)の測定光P(第3測定光P3)を照射し(
図6の時間T5参照)、第6発光部材266から第6波長帯域λ6(1050nm)の測定光P(第4測定光P4)を照射して(
図6の時間T7参照)、各波長帯域に対する生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prを取得し(
図6の時間T3からT8参照)その受光出力値を算出する。そして、所定時間が経過するまで、
図8のフローチャートにおいて、ステップS8→ステップS10→ステップS4へと進んで上記した動作を繰り返す。そして、所定時間が経過すると、
図8のフローチャートにおいて、ステップS10→ステップS11→ステップS12へと進むことにより、4つの波長帯域に対する、生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光成分を示す反射受光値(反射光量)と、生育状況測定対象(作物Cr)における反射率と、を算出する。これにより、上記した所定時間において照射領域IAとされた場所に存在する生育状況測定対象(作物Cr)に含まれるタンパク質(プロテイン)と水との量を推定することができる。その後、終了操作が為されるまでは、
図8のフローチャートにおいて、ステップS12→ステップS13→ステップS3へと進んで上記した動作を繰り返すことにより、次に照射領域IAとした場所に存在する生育状況測定対象(作物Cr)に含まれるタンパク質(プロテイン)と水との量を推定することができる。
【0087】
  ここで、生育要素Egとして窒素が選択された場合には、第3波長帯域λ3(735nm)と第4波長帯域λ4(808nm)とを選出し、第3発光部材263から第3波長帯域λ3(735nm)の測定光Pを照射し、第4発光部材264から第4波長帯域λ4(808nm)の測定光Pを照射することを除くと、上記した動作と同様の動作を行う。このように、植物用波長センサ装置10では、生育要素Egが選択されると、その選択された生育要素Egの推定に必要な複数の波長帯域の測定光Pに対する生育状況測定対象(作物Cr)での反射光量および反射率を求めることができ、当該生育要素Egが含まれる量の推定を行うことができる。
【0088】
  このように、本発明に係る実施例1の植物用波長センサ装置10では、生育要素Egが選択されると、その生育要素Egの推定に必要な複数の波長帯域の測定光Pを生育状況測定対象(作物Cr)に照射し、その各測定光Pに対する生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prを受光する。そして、植物用波長センサ装置10では、生育要素Egの推定に必要な複数の波長帯域の生育状況測定対象(作物Cr)での反射光量および反射率を求める。このため、植物用波長センサ装置10では、選択された生育要素Egの推定に必要な各波長帯域の反射光量および反射率を求めることができるので、生育状況測定対象(作物Cr)に含まれる様々な生育要素Egの量を推定することができる。
【0089】
  また、植物用波長センサ装置10では、選択可能な複数の生育要素Egと、その各生育要素Egの推定に必要な複数(n個)の波長帯域と、を予め登録し、発光部としての発光ユニット21に登録した波長帯域の数(n個)の発光部材26を設けている。このため、植物用波長センサ装置10では、選択された生育要素Egの推定に必要な複数の波長帯域の測定光Pで生育状況測定対象(作物Cr)を照射することを、容易なものとすることができる。
【0090】
  さらに、植物用波長センサ装置10では、選択された生育要素Egの推定に必要な複数の波長帯域を選出し、その各波長帯域に対応する発光部材26から測定光Pを出射させることで、選択された生育要素Egの推定に必要な複数の波長帯域の測定光Pで生育状況測定対象(作物Cr)を照射する。このため、植物用波長センサ装置10では、予め設けられた複数(n個)の発光部材26の中から、選択された生育要素Egに対応する発光部材26を動作させるだけで、選択された生育要素Egの推定に必要な複数の波長帯域の測定光Pを照射することができる。
【0091】
  植物用波長センサ装置10では、複数(n個)の発光部材26を順に出射させる、すなわち時系列に出射させることから、各波長帯域の測定光Pに対する生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prの取得をより容易で適切なものとすることができる。
【0092】
  植物用波長センサ装置10では、選択可能な生育要素Egとして窒素を登録するとともに、その窒素の推定に必要な波長帯域として赤の波長帯域(上記した実施例では第3波長帯域λ3(735nm))および近赤外光の波長帯域(上記した実施例では第4波長帯域λ4(808nm))を登録している。このため、植物用波長センサ装置10では、生育状況測定対象(作物Cr)に含まれる生育要素Egとしての窒素の量を容易にかつ適切に推定することができる。
【0093】
  植物用波長センサ装置10では、選択可能な生育要素Egとしてタンパク質(プロテイン)を登録するとともに、そのタンパク質(プロテイン)の推定に必要な波長帯域として互いに異なる2つの可視光の波長帯域(上記した実施例では第1波長帯域λ1(480nm)、第2波長帯域λ2(700nm)と)および近赤外光の波長帯域(上記した実施例では第6波長帯域λ6(1050nm))を登録している。このため、植物用波長センサ装置10では、生育状況測定対象(作物Cr)に含まれる生育要素Egとしてのタンパク質(プロテイン)の量を容易にかつ適切に推定することができる。
【0094】
  植物用波長センサ装置10では、選択可能な生育要素Egとしてタンパク質(プロテイン)とその推定に関係する水とを登録するとともに、そのタンパク質(プロテイン)の推定に必要な波長帯域として互いに異なる2つの可視光の波長帯域(上記した実施例では第1波長帯域λ1(480nm)、第2波長帯域λ2(700nm)と)および近赤外光の波長帯域(上記した実施例では第6波長帯域λ6(1050nm))と、を登録し、水の推定に必要な波長帯域として近赤外光の波長帯域(上記した実施例では第5波長帯域λ5(950nm))を登録している。このため、植物用波長センサ装置10では、生育状況測定対象(作物Cr)に含まれる生育要素Egとしてのタンパク質(プロテイン)および水の量を容易にかつ適切に推定することができる。
【0095】
  植物用波長センサ装置10では、肥料散布機Fsと施肥システムを構成して、取得した生育要素Egが含まれる量の情報に基づいて肥料散布機Fsが肥料の散布量を調整するものとすると、生育状況測定対象(作物Cr)の状況に適合させた量の肥料を各照射領域すなわち当該生育状況測定対象(作物Cr)に散布することができる。このことは、生育状況測定対象(作物Cr)における生育要素Egの過不足に応じて肥料の散布量を調整することができるので、当該生育状況測定対象(作物Cr)の発育を促すのは勿論のこと、生育状況測定対象(作物Cr)の育成状況が良すぎる箇所(照射領域)では肥料の散布量を少なくして当該生育状況測定対象(作物Cr)の発育を抑制することで、生育状況測定対象(作物Cr)が自重により倒れることを防止することができる。これにより、植物用波長センサ装置10では、肥料散布機Fsと施肥システムを構成することで、生育状況測定対象(作物Cr)を簡易にかつ効率よく肥料を散布することができる。このことは、例えば、肥料散布機Fsを搭載するトラクターTRに植物用波長センサ装置10を設けて施肥システムを構成すると、トラクターTRで生育状況測定対象(作物Cr)を栽培している農地(圃場)に沿って走行するだけで、生育状況測定対象(作物Cr)の生育状況に応じた適切な量の肥料を当該生育状況測定対象(作物Cr)に散布することができ、生育状況測定対象(作物Cr)を効率よく栽培することができる。
【0096】
  したがって、本発明に係る実施例1の植物用波長センサ装置10では、生育状況測定対象(作物Cr)の様々な生育要素Egに対応することができる。
【0097】
  なお、上記した実施例1では、スイッチ素子44により電路を切り替えることで、対応する発光部材26とパルス生成部43(演算処理ユニット25)とを導通させていたが、選出した複数(実施例2では6つ)の波長帯域の測定光Pを照射するものであれば、他の構成であってもよく、上記した実施例1の構成に限定されるものではない。
 
【実施例2】
【0098】
  次に、本発明の実施例2の植物用波長センサ装置としての植物用波長センサ装置10Aについて、
図9から
図11を用いて説明する。この実施例2の植物用波長センサ装置10Aは、各波長帯域の測定光Pの照射の仕方、受光ユニット22Aの構成および各波長帯域の測定光Pに対する反射光Prの取得の仕方が実施例1の植物用波長センサ装置10とは異なる例である。この実施例2の植物用波長センサ装置10Aは、基本的な構成および動作は上記した実施例1の植物用波長センサ装置10と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0099】
  実施例2の植物用波長センサ装置10Aでは、
図9に示すように、受光ユニット22Aにおいて、6つの測定用受光部材31すなわち第1測定用受光部材311と第2測定用受光部材312と第3測定用受光部材313と第4測定用受光部材314と第5測定用受光部材315と第6測定用受光部材316とが設けられている。その第1測定用受光部材311は、第1波長帯域λ1の反射光Prを取得するものであり、実施例2では、6つのPDの前に480nmの周辺の波長帯域の光を透過させかつ他の波長帯域の光の透過を阻むフィルタを設けて構成している。第2測定用受光部材312は、第2波長帯域λ2の反射光Prを取得するものであり、実施例2では、6つのPDの前に700nmの周辺の波長帯域の光を透過させかつ他の波長帯域の光の透過を阻むフィルタを設けて構成している。第3測定用受光部材313は、第3波長帯域λ3の反射光Prを取得するものであり、実施例2では、6つのPDの前に735nmの周辺の波長帯域の光を透過させかつ他の波長帯域の光の透過を阻むフィルタを設けて構成している。第4測定用受光部材314は、第4波長帯域λ4の反射光Prを取得するものであり、実施例2では、6つのPDの前に808nmの周辺の波長帯域の光を透過させかつ他の波長帯域の光の透過を阻むフィルタを設けて構成している。第5測定用受光部材315は、第5波長帯域λ5の反射光Prを取得するものであり、実施例2では、6つのPDの前に950nmの周辺の波長帯域の光を透過させかつ他の波長帯域の光の透過を阻むフィルタを設けて構成している。第6測定用受光部材316は、第6波長帯域λ6の反射光Prを取得するものであり、実施例2では、6つのPDの前に1050nmの周辺の波長帯域の光を透過させかつ他の波長帯域の光の透過を阻むフィルタを設けて構成している。この受光ユニット22Aでは、実施例1の受光ユニット22と同様に入力された受光信号Srに応じて反射光Prの取得動作を行う。
【0100】
  また、植物用波長センサ装置10Aでは、各発光部材26とパルス生成部43(演算処理ユニット25)との間にスイッチ素子44を設けることに変えて、受光ユニット22Aにおいてスイッチ素子44Aを設けている。そのスイッチ素子44Aは、各測定用受光部材31のうちのいずれか1つの測定用受光部材31を選択し、その選択した測定用受光部材31を増幅回路32への接続先として接続することが可能とされている。スイッチ素子44Aは、CPU23から入力された切替信号Ssに対応する測定用受光部材31を増幅回路32への接続先とする。この切替信号Ssは、第1測定用受光部材311に対応するものを第1切替信号Ss1とし、第2測定用受光部材312に対応するものを第2切替信号Ss2とし、第3測定用受光部材313に対応するものを第3切替信号Ss3とし、第4測定用受光部材314に対応するものを第4切替信号Ss4とし、第5測定用受光部材315に対応するものを第5切替信号Ss5とし、第6測定用受光部材316に対応するものを第6切替信号Ss6とする(
図10参照)。このため、スイッチ素子44Aは、第n切替信号Ssnが入力されると、第n測定用受光部材31nと増幅回路32とを接続する電路を選択して導通させ、他の電路を非導通状態とする。
【0101】
  これに伴って、植物用波長センサ装置10Aでは、演算処理ユニット25のパルス生成部43から出力される発光信号Seが、直接各発光部材26に入力される。なお、
図9および
図10では、パルス生成部43から各発光部材26に同一の発光信号Seが入力されるものとして示しているが、実施例1のSe1からSe6のように各発光部材26に個別に対応して異なる発光信号Seを一斉に出力する。このため、各発光部材26に発光信号Seが一斉に出力されることで、各発光部材26が同時に周期的に発光する(
図10参照)。そして、上記した切替信号Ssは、発光信号Seが出力される際(厳密には発光信号Seが出力される直前)にスイッチ素子44Aに出力されることで、そのスイッチ素子44Aの電路を切り替えて、所望の波長帯域に対応する測定用受光部材31での反射光Prの取得を可能とする。タンパク質(水を含む)の量の推定を行う際の動作を示す
図10の例では、第1切替信号Ss1がスイッチ素子44Aに出力されて第1測定用受光部材311で反射光Prを取得し、第2切替信号Ss2がスイッチ素子44Aに出力されて第2測定用受光部材312で反射光Prを取得し、第5切替信号Ss5がスイッチ素子44Aに出力されて第5測定用受光部材315で反射光Prを取得し、と第6切替信号Ss6がスイッチ素子44Aに出力されて第6測定用受光部材316で反射光Prを取得する。
【0102】
  次に、植物用波長センサ装置10Aを用いて選択された生育要素Egの量を推定するための波長帯域に対する生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光量および反射率を算出する反射測定処理について、
図11を用いて説明する。その
図11は、実施例2における制御部(CPU23)にて実行される反射測定処理を示すフローチャートである。この反射測定処理は、制御部(CPU23)の内蔵する記憶部もしくは当該制御部(CPU23)の外部に設けられた記憶部に記憶されたプログラムに基づいて、制御部(CPU23)が実行する。以下では、この
図11のフローチャートの各ステップ(各工程)について説明する。この
図11のフローチャートは、植物用波長センサ装置10Aに電源を投入することにより開始される。
【0103】
  ステップS21では、生育要素Egが選択されたか否かを判断し、Yesの場合はステップS22へ進み、Noの場合はステップS21を繰り返す。このステップS21は、
図8のフローチャートにおけるステップS1と同様である。
【0104】
  ステップS22では、ステップS3での生育要素Egが選択されたとの判断に続き、選択された生育要素Egに対応する波長帯域の組み合わせを選出して、ステップS23へ進む。このステップS22は、
図8のフローチャートにおけるステップS2と同様である。
【0105】
  ステップS23では、ステップS22での波長帯域の組み合わせの選出、あるいは、ステップS33での測定を終了されたとの判断に続き、受光値の積算のための経過時間のカウントを開始して、ステップS24へ進む。このステップS23は、
図8のフローチャートにおけるステップS3と同様である。
【0106】
  ステップS24では、ステップS23での経過時間のカウントの開始、あるいは、ステップS30での所定時間が経過していないとの判断に続き、変数nを1(n=1)として、ステップS25へ進む。このステップS24は、
図8のフローチャートにおけるステップS4と同様である。
【0107】
  ステップS25では、ステップS24での変数nを1とすること、あるいは、ステップS29でのn+1を新たな変数nとすることに続き、全ての波長帯域の測定光Pを照射して、ステップS26へ進む。このステップS25では、全ての発光部材26に発光信号Seを出力することにより、全ての発光部材26からの測定光Pを生育状況測定対象(作物Cr)へ向けて照射する。このため、測定光Pには、設定した全ての波長帯域(実施例2では、第1から第6までの6つの波長帯域(λ1からλ6))の光が含まれることとなる。
【0108】
  ステップS26では、ステップS25での全ての波長帯域の測定光Pの照射に続き、その測定光Pの生育状況測定対象(作物Cr)からのn番目の波長帯域の反射光Prを取得して、ステップS27へ進む。このステップS26では、スイッチ素子44Aに第n切替信号Ssnを出力して、受光ユニット22Aにおいてn番目の波長帯域に対応する測定用受光部材31と増幅回路32とを導通させる。そして、ステップS26では、発光信号Seに対応して出力された受光信号Srに応じて、n番目の波長帯域に対応する測定用受光部材31が反射光Prを取得する。実施例2では、受光信号Srが、実施例1と同様に、各波長帯域に対応する発光部材26が出射しているときと、その直後であって各発光部材26が消灯しているときと、に出力される。これにより、ステップS26では、各発光部材26が出射しているときのn番目の波長帯域に対応する反射光Prの受光値と、その直後であって各発光部材26が消灯しているときのn番目の波長帯域に対応する反射光Prの受光値と、を受光ユニット22Aが取得して出力する。
【0109】
  ステップS27では、ステップS26でのn番目の波長帯域の反射光Pr(その受光値)の取得に続き、その取得した反射光Pr(受光値)における受光出力値を算出して、ステップS28へ進む。このステップS27は、
図8のフローチャートにおけるステップS7と同様である。
【0110】
  ステップS28では、ステップS26での受光出力値の算出に続き、変数nが波長帯域の数kと等しいか否か(n=k?)を判断し、Yesの場合はステップS30へ進み、Noの場合はステップS29へ進む。このステップS28は、
図8のフローチャートにおけるステップS8と同様である。
【0111】
  ステップS29では、ステップS28での変数nが波長帯域の数kと等しくないとの判断に続き、n+1を新たな変数nとして、ステップS25へ戻る。このステップS29は、
図8のフローチャートにおけるステップS9と同様である。
【0112】
  ステップS30では、ステップS28での変数nが波長帯域の数kと等しいとの判断に続き、所定時間が経過したか否かを判断し、Yesの場合はステップS31へ進み、Noの場合はステップS24へ戻る。このステップS30は、
図8のフローチャートにおけるステップS10と同様である。
【0113】
  ステップS31では、ステップS30での所定時間が経過したとの判断に続き、選出した全ての波長帯域に対する受光出力値の積算信号を取得して、ステップS32へ進む。このステップS31は、
図8のフローチャートにおけるステップS11と同様である。
【0114】
  ステップS32では、ステップS31での選出した全ての波長帯域に対する受光出力値の積算信号の取得に続き、反射光量および反射率を算出して、ステップS33へ進む。このステップS32は、
図8のフローチャートにおけるステップS12と同様である。
【0115】
  ステップS33では、ステップS32での反射光量および反射率の算出に続き、植物用波長センサ装置10Aを用いた測定を終了されたか否かを判断し、Yesの場合はこの反射測定処理を終了し、Noの場合はステップS23へ戻る。このステップS33は、
図8のフローチャートにおけるステップS13と同様である。
【0116】
  次に、生育要素Egの量を推定する際の植物用波長センサ装置10Aの動作について、生育要素Egとしてタンパク質(プロテイン)(水を含む)が選択された場合を例とした
図10を用いて説明する。
【0117】
  先ず、生育要素Egとしてタンパク質(プロテイン)(水を含む)が選択されると、
図11のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22へと進むことにより、第1波長帯域λ1(480nm)と第2波長帯域λ2(700nm)と第5波長帯域λ5(950nm)と第6波長帯域λ6(1050nm)とを選出する。その後、
図11のフローチャートにおいて、ステップS23→ステップS24→ステップS25へと進むことにより、全ての発光部材26から出射により登録(設定)された全ての波長帯域(実施例2では、第1から第6までの6つの波長帯域(λ1からλ6))を含む測定光P(第1測定光P1から第6測定光P6)を照射する(
図10の時間T1参照)。そして、
図11のフローチャートにおいて、ステップS26→ステップS27へと進むことにより、第1測定用受光部材311で第1波長帯域λ1(480nm)に対する生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prを取得してその受光出力値を算出する(
図10の時間T1、T2参照)。その後、
図11のフローチャートにおいて、ステップS28→ステップS29→ステップS25→ステップS26→ステップS27へと進むことを繰り返すことにより、第2測定用受光部材312で第2波長帯域λ2(700nm)に対する生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prを取得し(
図10の時間T3、T4参照)、第5測定用受光部材315で第5波長帯域λ5(950nm)に対する生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prを取得し(
図10の時間T5、T6参照)、第6測定用受光部材316で第6波長帯域λ6(1050nm)に対する生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prを取得して(
図10の時間T7、T8参照)、それらの受光出力値を算出する。そして、所定時間が経過するまで、
図11のフローチャートにおいて、ステップS28→ステップS30→ステップS24へと進んで上記した動作を繰り返す。そして、所定時間が経過すると、
図11のフローチャートにおいて、ステップS30→ステップS31→ステップS32へと進むことにより、4つの波長帯域に対する、生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光成分を示す反射受光値(反射光量)と、生育状況測定対象(作物Cr)における反射率と、を算出する。これにより、上記した所定時間において照射領域IAとされた場所に存在する生育状況測定対象(作物Cr)に含まれるタンパク質(プロテイン)と水との量を推定することができる。その後、終了操作が為されるまでは、
図11のフローチャートにおいて、ステップS32→ステップS33→ステップS23へと進んで上記した動作を繰り返すことにより、次に照射領域IAとした場所に存在する生育状況測定対象(作物Cr)に含まれるタンパク質(プロテイン)と水との量を推定することができる。
【0118】
  ここで、生育要素Egとして窒素が選択された場合には、第3波長帯域λ3(735nm)と第4波長帯域λ4(808nm)とを選出し、第3測定用受光部材313で第3波長帯域λ3(735nm)に対する生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prを取得し、第4測定用受光部材314で第4波長帯域λ4(808nm)に対する生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prを取得することを除くと、上記した動作と同様の動作を行う。このように、植物用波長センサ装置10Aでは、生育要素Egが選択されると、その選択された生育要素Egの推定に必要な複数の波長帯域の測定光Pに対する生育状況測定対象(作物Cr)での反射光量および反射率を求めることができ、当該生育要素Egが含まれる量の推定を行うことができる。
【0119】
  このように、本発明に係る植物用波長センサ装置10Aでは、基本的に実施例1の植物用波長センサ装置10と同様の構成であることから、基本的に実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0120】
  それに加えて、実施例2の植物用波長センサ装置10Aでは、全ての発光部材26から測定光Pを出射させるので、測定光Pの照射のための制御や構成を簡易なものとすることができる。また、植物用波長センサ装置10Aでは、複数(n個)の測定用受光部材31で順に受光する、すなわち時系列に受光することから、各波長帯域の測定光Pに対する(作物Cr)からの反射光Prの取得をより容易で適切なものとすることができる。
【0121】
  したがって、本発明に係る実施例2の植物用波長センサ装置10Aでは、生育状況測定対象(作物Cr)の様々な生育要素Egに対応することができる。
【0122】
  なお、上記した実施例2では、登録(設定)された波長帯域に個別に対応して複数(実施例2では6つ)の測定用受光部材31を設けていたが、登録(設定)された波長帯域の反射光Prを取得するものであれば、例えば、単一の測定用受光部材31(6つのPD)の前において当該波長帯域の数のフィルタを切り替え可能に設けるものであってもよく、他の構成であってもよく、上記した実施例2の構成に限定されるものではない。
【0123】
  また、上記した実施例2では、登録(設定)された波長帯域に個別に対応して複数(実施例2では6つ)の測定用受光部材31を設けていたが、全ての波長帯域の反射光Prを取得した後に、選出された各波長帯域における反射光Prの成分を分析(抽出)して検出するものであってもよく、上記した実施例2の構成に限定されるものではない。このような構成とすると、登録(設定)された波長帯域であれば、後の分析(抽出)によりいかなる組み合わせであっても検出することができるので、使い勝手を向上させることができる。
【0124】
  なお、上記した各実施例では、本発明に係る植物用波長センサ装置の一例としての植物用波長センサ装置10、植物用波長センサ装置10Aについて説明したが、生育状況測定対象を照射する測定光を出射する発光部と、前記生育状況測定対象による前記測定光の反射光を受光する受光部と、前記発光部と前記受光部とを駆動制御する制御部と、を備え、前記制御部は、選択された生育要素に対応する波長帯域の前記測定光を前記発光部から出射し、選択された前記生育要素に対応する前記各波長帯域の前記測定光に対する前記生育状況測定対象からの前記反射光を前記受光部で受光して、前記生育状況測定対象による前記生育要素に対応する前記各波長帯域での反射光量を求める植物用波長センサ装置、または生育状況測定対象を照射する測定光を出射する発光部と、前記生育状況測定対象による前記測定光の反射光を受光する受光部と、前記発光部と前記受光部とを駆動制御する制御部と、を備え、前記制御部は、選択された生育要素に対応する波長帯域の前記測定光を前記発光部から出射し、選択された前記生育要素に対応する前記各波長帯域の前記測定光に対する前記生育状況測定対象からの前記反射光を前記受光部で受光して、前記測定光および前記反射光から前記生育状況測定対象による前記生育要素に対応する前記各波長帯域での反射率を求める植物用波長センサ装置であればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0125】
  また、上記した各実施例では、生育要素Egとして、窒素とプロテイン(タンパク質)とそれに関連する水とを登録(設定)していたが、例えば、それらの2つのみを登録(設定)することや、それらとともにあるいは適宜それらに変えてリンやカリウムやクロロフィルやカロテノイドを登録(設定)することのように、生育要素Egの数や種類は適宜登録(設定)すればよく、上記した各実施例の構成に限定されるものではない。そのようにする場合、各生育要素Egの推定に適した波長帯域は適宜登録(設定)することは言うまでもない。
【0126】
  さらに、上記した各実施例では、窒素の推定のために735nmと808nmとの2つの波長帯域を登録(設定)し、タンパク質(プロテイン)の推定のために480nmと700nmと1050nmとの3つの波長帯域を登録(設定)し、タンパク質の推定に関係する水の推定のために950nmの1つの波長帯域を登録(設定)している。しかしながら、生育要素Egに対する波長帯域は、生育要素Egの推定に適したものを適宜登録(設定)すればよく、上記した各実施例の構成に限定されるものではない。ここで、赤の波長帯域の光(光束)と赤外の波長帯域の光(光束)とを用いると窒素を良好に推定することができ、互いに異なる2つの可視光としての波長帯域の光(光束)と近赤外の波長帯域の光(光束)とを用いるとタンパク質(プロテイン)を良好に推定することができ、さらに異なる近赤外光の波長帯域の光(光束)を用いるとタンパク質(プロテイン)の推定に関係する水を良好に推定することができる。
【0127】
  上記した各実施例では、生育状況測定対象として、農作物としての作物Crを例にあげていたが、測定光に対する反射率を用いて生育状況を把握することが可能なものであれば、栽培された植物や自生植物を生育状況測定対象としてもよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0128】
  上記した各実施例では、肥料散布機Fsを搭載するトラクターTRに植物用波長センサ装置10を設けていたが、取得した生育要素Egの量や分光植生指標(正規化差植生指数(NDVI))の情報に基づいて肥料散布機Fsが肥料の散布量を調整すべく当該肥料散布機Fsと植物用波長センサ装置10との間で情報の遣り取りを可能とする施肥システムであればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0129】
  以上、本発明の植物用波長センサ装置を各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成についてはこの各実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。