特許第6473685号(P6473685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473685
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】車両制御装置及び作業機械
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20190207BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20190207BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20190207BHJP
   G05D 1/02 20060101ALI20190207BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20190207BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20190207BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   G08G1/00 X
   G08G1/09 F
   G05D1/02 H
   B60W30/095
   B60W30/09
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-226679(P2015-226679)
(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公開番号】特開2017-97482(P2017-97482A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中 拓久哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小野 幸彦
【審査官】 黒嶋 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−091208(JP,A)
【文献】 特開2015−184903(JP,A)
【文献】 特開2008−293205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
B60W 30/00
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱山内の予め定められた走行経路上を予め設定された走行速度で自律走行する自律走行車両に搭載された車両制御装置において、
前記自律走行車両の進行方向前方に位置する第1被検知体を検出する第1進行方向監視センサの出力データに基づき、前記自律走行車両に対する前記第1被検知体の相対位置を検出する第1被検知体検出部と、
前記自律走行車両の進行方向前方に位置する第2被検知体を検出する第2進行方向監視センサであって、前記第1進行方向監視センサよりも空間分解能が高く、前記第1進行方向監視センサよりも前記自律走行車両の進行方向近傍側を検知する第2進行方向監視センサの出力データに基づき、前記自律走行車両に対する前記第2被検知体の相対位置及び前記第2被検知体の形状を検出する第2被検知体検出部と、
前記第1被検知体の相対位置に基づいて、前記自律走行車両が前記第1被検知体に干渉するかを判定するとともに、前記第1被検知体の相対位置及び前記第2被検知体の相対位置に基づいて前記第1被検知体及び前記第2被検知体の同一性を判定する干渉判定部と、
前記干渉判定部が前記第1被検知体と前記第2被検知体とが同一であると判定した場合において、前記第2被検知体の形状は、前記自律走行車両が当該第2被検知体上を通過することを許容する形状であるかを判定する形状判定部と、
前記干渉判定部が、前記第1被検知体に前記自律走行車両が干渉すると判定すると前記自律走行車両を減速させるための制御を行い、減速後に前記形状判定部が前記第2被検知体の形状は前記自律走行車両が当該第2被検知体上を通過することを許容する形状であると判定すると、減速を解除して前記予め設定された走行速度に復帰させるための制御を行う車両制御部と、
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記形状判定部は、前記第2被検知体の高さ及び凹みの深さが、前記自律走行車両が通過することを許容する範囲を示す通過許容範囲以内にあるかを判定する、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記干渉判定部が、前記第1被検知体に前記自律走行車両が干渉すると判定すると、
前記車両制御部は、前記第2進行方向監視センサの検知範囲が前記第1被検知体に到達するときの前記自律走行車両の走行速度が、前記形状判定部により前記第2被検知体の形状判定ができる空間分解能で前記第2被検知体が検出できる相対速度となるように、前記第2進行方向監視センサのサンプリングレートに対応させた減速度で減速するための制御を行う、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記干渉判定部が、前記第1被検知体に前記自律走行車両が干渉すると判定すると、
前記車両制御部は、前記第1被検知体の手前で前記自律走行車両が停止するための減速度を算出し、その減速度により減速するための制御を行う、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記第1被検知体検出部は、前記第1被検知体の相対位置を含む第1被検知体情報を前記干渉判定部に出力し、
前記第2被検知体検出部は、前記第2被検知体の相対位置及び前記第2被検知体の形状を含む第2被検知体情報を前記干渉判定部に出力し、
前記干渉判定部は、
前記第1被検知体及び前記第2被検知体が同一であると判定した場合は、前記自律走行車両が前記第2被検知体に干渉するかの判定を行うことなく、前記第2被検知体の形状を前記形状判定部に出力し、同一ではないと判定した場合は、前記自律走行車両が前記第2被検知体に干渉するかを判定し、前記第2被検知体に前記自律走行車両が干渉すると判定した場合に、前記第2被検知体の形状情報を前記形状判定部に出力する、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両制御装置において、
前記干渉判定部が、前記第1被検知体とは異なる第2被検知体に前記自律走行車両が干渉すると判定し、かつ前記形状判定部が前記異なる第2被検知体の形状は前記自律走行車両の通過を禁止する形状であると判定した場合は、前記車両制御部は前記第2被検知体の手前で停車するための減速度を算出し、その算出した減速度で減速するための制御を行う、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項7】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記通過許容範囲は、前記自律走行車両に備えられた車輪の半径、走行速度、又は操舵角の少なくとも一つに基づいて決定される、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記第1進行方向監視センサは、電磁波を放射し、当該電磁波の反射波を受けて前記第1被検知体を検出するミリ波レーダであり、
前記第2進行方向監視センサは、レーザ光を照射し、当該レーザ光の反射光を受けて前記第2被検知体を検出するレーザレーダである、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記車両制御部が減速を解除すると、減速解除の対象となった前記第1被検知体が検出された前記走行経路上の位置を含む減速解除情報を記憶する減速解除情報記憶部を更に備え、
前記自律走行車両が前記減速解除の対象となった前記第1被検知体が検出された地点に再度到達し、前記第1進行方向監視センサが新たな第1被検知体の相対位置を検出すると、前記干渉判定部は、前記新たな第1被検知体の相対位置及び前記減速解除情報を比較し、前記新たな第1被検知体が前記減速解除の対象となった第1被検知体と同一であるかを判定し、
前記干渉判定部が、前記新たな第1被検知体は前記減速解除の対象となった第1被検知体と同一であると判定した場合は、前記車両制御部は減速することなく予め定められた走行速度で走行するための制御を行う、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両制御装置において、
前記自律走行車両の交通管制を行う管制サーバ、または前記走行経路上を走行する他の自律走行車両から前記減速解除情報を受信する通信制御部を更に備え、
前記減速解除情報記憶部は、前記管制サーバ又は他の自律走行車両から受信した前記減速解除情報を記憶する、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項11】
鉱山内の予め定められた走行経路上を予め設定された走行速度で自律走行する作業機械において、
前記作業機械の進行方向前方に位置する第1被検知体を検出する第1進行方向監視センサと、
前記作業機械の進行方向前方に位置する第2被検知体を検出する第2進行方向監視センサであって、前記第1進行方向監視センサよりも空間分解能が高く、前記第1進行方向監視センサよりも前記作業機械の進行方向近傍側を検知する第2進行方向監視センサと、
制動装置及び走行装置を含む車体駆動装置と、
前記車体駆動装置に対して制動指示信号又は走行指示信号を出力する車体制御装置と、を備え、
前記車体制御装置は、
前記第1進行方向監視センサの出力データに基づき、前記作業機械に対する前記第1被検知体の相対位置を検出する第1被検知体検出部と、
前記第2進行方向監視センサの出力データに基づき、前記作業機械に対する前記第2被検知体の相対位置及び前記第2被検知体の形状を検出する第2被検知体検出部と、
前記第1被検知体の相対位置に基づいて、前記作業機械が前記第1被検知体に干渉するかを判定するとともに、前記第1被検知体の相対位置及び前記第2被検知体の相対位置に基づいて前記第1被検知体及び前記第2被検知体の同一性を判定する干渉判定部と、
前記干渉判定部が前記第1被検知体と前記第2被検知体とが同一であると判定した場合において、前記第2被検知体の形状は、前記作業機械が通過することを許容する形状であるかを判定する形状判定部と、
前記干渉判定部が、前記第1被検知体に前記作業機械が干渉すると判定すると前記車体駆動装置に対して前記制動指示信号を出力し、減速後に前記形状判定部が前記第2被検知体の形状は前記作業機械が通過することを許容する形状であると判定すると、減速を解除して前記予め設定された走行速度に復帰させるための前記走行指示信号を出力する車体制御部と、を含む、
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両制御装置及び作業機械に係り、特に露天掘り鉱山等において、オペレータが搭乗することなく自律走行する鉱山用の作業機械の誤停止を低減させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行制御技術の一例として、特許文献1は、「レーダー装置で検知した先行車との車間距離が所定値以下になると自動制動を行ったり運転者に警報を発したりして干渉の発生を防止するものにおいて、先行車のような移動物を検知するための、レーザレーダ装置やパルスレーダー装置のようなレーダー装置の反射波の受信レベルの閾値に対し、停止物を検知するための反射波の受信レベルの閾値を所定の領域で高く設定する。これにより、自車の障害とならないゲートや路上落下物を検知して障害物であると誤認するのを防止し、ゲートや路上落下物に対して必要のない自動制動や警報が行われるのを防止することができる(要約抜粋)」技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−102591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉱山用の作業機械、例えば運搬車両にミリ波レーダ等のセンサを搭載し、自車の進行方向前方に障害物がないか監視を続けながら自律走行させる技術がある。自律走行システムの搬送効率の向上を図るためには、運搬車両の走行速度を出来るだけ速くする方が良く、そのためには検知距離の長い進行方向監視センサを搭載するのが良いが、空間分解能が低下し、路面凹凸や上り坂などの非障害物を障害物として検知して運搬車両が誤停止する場合がある。一方、空間分解能が高いセンサは、検知対象が走行に支障のある障害物かどうか識別できるが、検知距離が短く走行速度を速くすることが出来ず搬送効率が低下してしまう。鉱山の搬送路は未舗装であり路面に多くの凹凸があったり、先行する運搬車両から荷こぼれた土砂や鉱石等の落下物がある。これら路面の凹凸や搬送路上の落下物の中には、反射波の強度が高いものが存在する。従って、鉱山用の作業機械の自律走行に際しては、障害物が通行の妨げにならないものかを高空間分解能で正確に検出したいという要望と、走行速度の低下による搬送効率の低下を避けたいという要望がある。この点について、特許文献1に記載の技術では、二つの要望を両立することはできないという課題がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、鉱山用の作業機械の進行方向監視に際し、高空間分解能と走行速度の低下の抑制とを両立させる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために、本発明は鉱山内の予め定められた走行経路上を予め設定された走行速度で自律走行する自律走行車両に搭載された車両制御装置において、前記自律走行車両の進行方向前方に位置する第1被検知体を検出する第1進行方向監視センサの出力データに基づき、前記自律走行車両に対する前記第1被検知体の相対位置を検出する第1被検知体検出部と、前記自律走行車両の進行方向前方に位置する第2被検知体を検出する第2進行方向監視センサであって、前記第1進行方向監視センサよりも空間分解能が高く、前記第1進行方向監視センサよりも前記自律走行車両の進行方向近傍側を検知する第2進行方向監視センサの出力データに基づき、前記自律走行車両に対する前記第2被検知体の相対位置及び前記第2被検知体の形状を検出する第2被検知体検出部と、前記第1被検知体の相対位置に基づいて、前記自律走行車両が前記第1被検知体に干渉するかを判定するとともに、前記第1被検知体の相対位置及び前記第2被検知体の相対位置に基づいて前記第1被検知体及び前記第2被検知体の同一性を判定する干渉判定部と、前記干渉判定部が前記第1被検知体と前記第2被検知体とが同一であると判定した場合において、前記第2被検知体の形状は、前記自律走行車両が当該第2被検知体上を通過することを許容する形状であるかを判定する形状判定部と、前記干渉判定部が、前記第1被検知体に前記自律走行車両が干渉すると判定すると前記自律走行車両を減速させるための制御を行い、減速後に前記形状判定部が前記第2被検知体の形状は前記自律走行車両が当該第2被検知体上を通過することを許容する形状であると判定すると、減速を解除して前記予め設定された走行速度に復帰させるための制御を行う車両制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鉱山用の作業機械の進行方向監視に際し、高空間分解能と走行速度の低下の抑制とを両立させることができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る車両制御装置を搭載した作業機械の自律走行システムの概略構成図である。
図2】自律走行システムを構成するダンプトラック及び管制サーバのハードウェア構成を示す機能ブロック図である。
図3】ダンプトラックに搭載される進行方向監視センサの検知距離を示す図である。
図4】本実施形態に係る車両制御装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態に係る車両制御装置による進行方向監視処理の流れを示すフローチャートである。
図6】ダンプトラックが被検知体を検出する状態を示す図であり、(a)は、ミリ波レーダが第1被検知体を検知した状態を示し、(b)は、減速をしながら前進をしている状態を示し、(c)は、レーザレーダが第2被検知体を検知した状態を示し、(d)は第1被検知体の手前で停止した状態を示し、(e)は、(a)から(d)までの第1、第2被検知体に対するダンプトラックの走行速度と目標速度とをダンプトラックの走行位置に応じて表した図である。
図7】ダンプトラックが被検知体を検出する状態を示す図であり、(a)は、ミリ波レーダが第1被検知体を検知した状態を示し、(b)は、減速をしながら前進をしている状態を示し、(c)は、レーザレーダが第2被検知体を検知した状態を示し、(d)は第1、第2被検知体上を通過している状態を示し、(e)は、(a)から(d)までの第1、第2被検知体に対するダンプトラックの走行速度と目標速度とをダンプトラックの走行位置に応じて表した図である。
図8】被検知体の高さとセンサ設置角度θとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両制御装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る車両制御装置を搭載した作業機械の自律走行システム1の概略構成図である。図2は、自律走行システム1を構成するダンプトラック10及び管制サーバ20のハードウェア構成を示す機能ブロック図である。図3は、ダンプトラックに搭載される進行方向監視センサの検知距離を示す図である。
【0010】
以下の実施形態において、車両と対象物との位置・状態関係を表す言葉として「干渉する」、「(通行を)妨げる」という用語を用いる。ここで「干渉する」とは、車両の走行経路上に対象物(例えば他車両や後述する第1被検知体、第2被検知体)が存在し、車両が走行を続けると対象物に接触したり対象物上を通過したりする状態を意味する。また「(通行を)妨げる」とは、車両が対象物に接触して停車したり、対象物上を通過できずに停車したりする状態(例えば乗り越えらえられない、また凹みから離脱できずに停車する状態を含む)を意味する。従って、「(通行を)妨げる」とは、干渉の一態様であって、車両が対象物と干渉した結果、停車する状態を意味する。
【0011】
図1に示す自律走行システム1は、自律走行する鉱山用作業機械の一例としてのダンプトラック10と、採石場の近傍若しくは遠隔の管制センタに設置された管制サーバ20とを無線通信回線4を介して通信接続して構成される。鉱山内には、ショベル30が掘削作業を行いダンプトラック10に掘削した土砂や鉱石を積込む積込場61と、ダンプトラック10が運搬した荷物を放土する放土場62と、積込場61及び放土場62を連結する搬送路60とが設置される。ダンプトラック10は、無線通信回線4を介して管制サーバ20から管制制御情報を受信し、それに従って搬送路60上を予め定められた走行速度で自律走行する。
【0012】
自律走行する鉱山用の作業機械はダンプトラック10に限定されず、例えばドーザ71、散水車72を自律走行させる場合には、これらダンプトラックとは異なる種類の作業機械に本発明を適用してもよい。
【0013】
図2に示すように、ダンプトラック10は、車両制御装置110、進行方向監視センサ120、自車位置検出センサ130、通信装置140及び車両駆動装置150を含む。
【0014】
車両制御装置110は、進行方向監視センサ120及び自車位置検出センサ130の其々からの出力、及び通信装置140から受信した管制制御情報を用いて操舵角や走行速度を決定し、決定した操舵角や走行速度でダンプトラック10を走行させるための車両駆動信号を車両駆動装置150に対して出力する。
【0015】
車両制御装置110は、CPU(Central Processing Unit)がメモリに格納されたプログラムを実行することで実現される各種機能構成モジュールを含む電子制御ユニット(ECU:Engine Control Unit)である。
【0016】
進行方向監視センサ120は、特性が異なる複数種類の進行方向監視センサを含む。本実施形態では、2種類のセンサ、すなわち第1進行方向監視センサ121及び第2進行方向監視センサ122を含み、其々をダンプトラック10の前方に設置する(図3参照)。本実施形態では、進行方向監視センサ120として、ダンプトラック10の前進時において、前方監視を行うセンサを例に挙げて説明するが、後進時に後方監視を行うセンサであってもよい。
【0017】
第1進行方向監視センサ121は、第2進行方向監視センサ122に比べて遠距離の被検知体を検知できるセンサを選択する。第2進行方向監視センサ122は、第1進行方向監視センサ121に比べて近距離しか検知できなくても良いが空間分解能の優れたセンサを選択する。
【0018】
図3に示すように、第1進行方向監視センサ121の検知範囲121aは、第2進行方向監視センサ122の検知範囲122aよりも遠い位置を含む。そのため、通常であれば、第1進行方向監視センサ121が被検知体310をはじめに検知し、ダンプトラック10が進行するにつれて、第2進行方向監視センサ122が被検知体310を検知する。被検知体は、路面320上の障害物に限らず、路面320の凹部321や凸部322も含む。
【0019】
鉱山現場では粉塵や霧、雨、照明変化などの環境変化に対するロバスト性が高いミリ波レーダやレーザセンサがよく使用される。ミリ波レーダは、一般的に波長域が数mmから数十mmの電磁波を照射し、その反射波が帰ってくるまでの時間と、ドップラーシフト量を計測する事で反射対象までの相対距離と相対速度を検出する事が出来る。一般的にミリ波レーダは他のセンサに比べて環境変化に対するロバスト性が高く、物体を遠方まで検出することが可能なセンサであるが、空間分解能が低く、反射波の受信レベルを表す受信強度しか得られないため、検出された物体が路面凹凸や落石、有人車両であるかどうかの識別が困難である特性を有する。
【0020】
一方レーザレーダはレーザ光を照射しその反射光が帰ってくるまでの時間を計測することで反射対象までの距離を検出する事が出来る。一般的に、ミリ波レーダに比べて環境変化に対するロバスト性が劣り、対象の反射率によっては検知距離が短くなるが、空間分解能が高いため、物体の大きさや形状を知る事ができる特性を有する。
【0021】
そこで本実施形態では、第1進行方向監視センサ121としてミリ波レーダを用い、第2進行方向監視センサ122としてレーザレーダを選択する。以下、ミリ波レーダ121、レーザレーダ122と記載する。
【0022】
ミリ波レーダ121は、ダンプトラック10の前面部分に路面320に対してほぼ水平に設置され、ダンプトラック10の前方の被検知体を検出する。ミリ波レーダ121の検知範囲121aは、ダンプトラック10から遠ざかるにつれて上下方向に広がっており、路面320が検知範囲121aに入ってしまうため、路面320からの反射波をミリ波レーダ121が受信してしまう。ミリ波レーダ121の設置角度を上向きにすることで路面320からの反射波を減らすことが出来るが、たとえそうしても、走行中にダンプトラック10がピッチング振動したり、積載物によって車体が傾いたりすると、路面320を検知してしまう。
【0023】
一方、レーザレーダ122は、路面320上の路面凹凸や落石、路肩、ダンプトラック10に比して車高が低い有人車両などを検出できるように、ダンプトラック10の前面上部に設置し、路面320にレーザ光が到達するように下向きに設置する。本実施形態で用いるレーザレーダ122は、レーザレーダの検知範囲122a内を所定の角度毎に順次レーザ光を照射して相対距離を測定し、照射角度に対して測定された相対距離情報を出力するセンサである。
【0024】
レーザレーダ122の路面に対する設置角度は空間分解能に応じて決められるが、レーザレーダ122が検出した被検知体の形状が、ダンプトラック10の通行の妨げとはならない、つまりダンプトラック10が被検知体上を通過することを許容する形状であるかを判別可能な空間分解能となるように決められる。設置角度は、出来るだけ遠方の路面320を監視できるように決められることが好ましい。これにより、被検知体を検出した後の制動距離を長くする事が出来る。
【0025】
本実施形態は、ダンプトラック10の通行の妨げにならない路面の凹凸を検出し、これによる誤停止を抑止するためことを目的とする。そこで、被検知体の形状は路面を基準とする被検知体の高さ及び凹みの深さとし、路面を基準とする正の値(凸形状)から負の値(凹形状)までの範囲(以下この範囲を「通過許容範囲内」という)として定義する。なお、被検知体の形状は高さに限らず、車幅方向の大きさや、尖った形状を判定基準としてもよい。
【0026】
本実施形態では、ミリ波レーダ121及びレーザレーダ122を使用する事例を説明するが、これらのセンサに限定される必要は無く、第1及び第2進行方向監視センサの上記特性に合わせたセンサを選択すれば良い。例えば、第2進行方向監視センサとしてカメラを用いても良いし、ミリ波レーダとは周波数帯の異なる電磁波を利用したセンサを用いても良い。また、第1進行方向監視センサに遠方を検出可能なレーザレーダやカメラを用いても良い。また、第2進行方向監視センサとしてレーザレーダを使用する場合も設置位置や設置角度を本実施形態と異なるように設置しても良い。また、レーザ光の照射方式も限定されるものではない。
【0027】
自車位置検出センサ130は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星から送信される電波をアンテナ131で受信することで自車両の位置や姿勢を検出するGPS受信機132や、加速度を検出するジャイロ装置133や加速度センサ134、また、車両の車輪回転速度を検出することが可能な車輪速センサ135を含む。ただし、これら以外のセンサを用いても良い。
【0028】
通信装置140は、無線通信回線4に接続する無線通信装置である。
【0029】
車両駆動装置150は、制動装置151、操舵モータ152、及び走行モータ(走行装置)153を含む。
【0030】
また、管制サーバ20は、管制制御装置210、表示装置220、入力装置230、及び通信装置240を含んで構成されている。
【0031】
管制制御装置210は、各ダンプトラック10の作業内容や走行位置、走行速度(停止状態を含む)を管理しており、作業現場における作業工程にあわせて、各ダンプトラック10に対して走行経路や走行許可領域、走行条件などを設定し、設定内容を示す管制制御情報を通信装置240に出力する。通信装置240は管制制御情報をダンプトラック10に送信すると共に、各ダンプトラック10から自車位置情報を受信する。
【0032】
上記走行許可領域とは、搬送路60上に設定された各ダンプトラック10の目標軌道の進行方向に沿った目標軌道上の部分区間であって、更に目標軌道上を走行する車両の車幅方向の幅を含んだ領域である。走行許可領域は、搬送路60上を走行する複数のダンプトラック同士の干渉(接触、衝突を含む)を抑止するために設けられる領域である。そのために、本実施形態における自律走行システム1では、走行許可領域を自車両のみの走行を許可する領域として設定する。換言すると、自車両に設定された走行許可領域には他車両が進入できないので、自車両の走行許可領域は、他車両に対しては閉塞領域として機能する。これにより、ダンプトラック同士の干渉を抑止する。
【0033】
表示装置220は、管制制御装置210が設定した走行許可領域や、搬送路60上の各ダンプトラック10の位置を表示する。
【0034】
入力装置230は、管制センタのオペレータが管制制御装置210に対して信号を入力する際のインターフェースである。
【0035】
通信装置240は、無線通信回線4に無線通信接続をするため無線通信装置である。
【0036】
管制制御装置210は、CPUに加え、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶部を含むハードウェアが管制制御装置210の機能を実現するためのソフトウェアを実行することにより構成される。
【0037】
次に図4を参照してダンプトラック10の詳細な構成について説明する。図4は、本実施形態に係る車両制御装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【0038】
車両制御装置110は、第1被検知体検出部111、第2被検知体検出部112、自車位置検出部113、干渉判定部114、形状判定部115、地図情報記憶部116、車両制御部117、及び通信制御部118を含む。図4の減速解除情報記憶部及び減速解除情報については後述する。
【0039】
第1被検知体検出部111及び第2被検知体検出部112は、進行方向監視センサ120の出力データに基づき、ダンプトラック10の進行方向前方にある被検知体と自車両との相対位置や相対速度を検出し、干渉判定部114、及び形状判定部115に必要となる被検知体情報を通知する機能を有している。
【0040】
より詳しくは、第1被検知体検出部111は、ミリ波レーダ121が検出した第1被検知体までの相対距離、相対速度、反射強度などの情報に基づき、数回しか連続して検出されないデータや反射強度の低いデータの除去、また車両の所定位置を基準とする車両座標系への座標変換などの処理を行う。この処理を行うことで、車両のピッチングやマルチパスなどの影響によって短期的に検出される被検知体情報の除去を行う事が出来る。また反射強度の低い路面や土手などの路肩からの反射波のデータを除去し、第1被検知体までの相対距離を含む第1被検知体情報を干渉判定部114に出力する。
【0041】
第2被検知体検出部112は、レーザレーダ122から得られた照射角度毎の相対距離情報に基づき、第2被検知体までの相対距離や相対速度、路面からの高さや幅、奥行きなどの大きさ、形状情報を検出する。また、第1被検知体検出部111と同様に、数回しか時間的に連続して検出されないデータの除去や車両の所定位置を基準とする車両座標系への座標変換などの処理を行う。第2被検知体検出部112も、第2被検知体の相対位置及び形状情報を含む第2被検知体情報を干渉判定部114に出力する。
【0042】
自車位置検出部113は、自車位置検出センサ130の出力データに基づき、自車両の位置や姿勢、走行速度を検出し、干渉判定部114及び車両制御部117にこれらの情報を通知する機能を有している。
【0043】
干渉判定部114は、自車位置検出部113で得られた自車位置情報と地図情報記憶部116に格納されている管制制御情報(これに走行経路情報や走行許可領域情報が含まれる)に基づき、ダンプトラック10の走行予定範囲内、すなわち管制サーバ20から付与され、これから通過する走行許可領域内上に第1被検知体が存在するが判定し、存在すると判定した場合、車両制御部117に減速制御のトリガとなる干渉判定結果情報を通知する。
【0044】
干渉判定部114は、地図情報記憶部116に記憶された走行経路を示す地図情報に代わり、自車位置検出部113から得られたダンプトラック10の旋回速度や走行速度などの運動情報に基づいて推定した走行経路を用いて干渉判定をしても良い。たとえば自車位置検出部113によって得られる位置情報に誤りがある場合や、自車位置センサ130内のGPS受信機132が使用できない場合に運動情報に基づき推定した走行経路を用いればよい。走行経路の推定方法はどのような方法を用いても良く、たとえばジャイロ装置133から出力されるヨーレートと車輪速センサ135から出力される車輪速度に基づく自車両の走行速度に基づき、旋回半径を求める事で推定しても良い。また、自車両の運動モデルを基に推定しても良い。
【0045】
形状判定部115は、第2被検知体情報に基づき第2被検知体の形状が、通行を妨げない形状であるかを判定する。本実施形態では、第2被検知体の路面からの高さ(凹みを含む)が通過許容範囲内にあるかを判定する。形状判定部115は、第2被検知体の高さに加え、第2被検知体の幅、奥行きのいずれかもしくはそれらの全てを更に算出し、その算出値を高さに合わせてダンプトラック10が第2被検知体上を通過可能であるかいないかを判定してもよい。更に、第2被検知体の大きさ以外にも、形状を考慮しても良い。たとえば、尖った形状があると判断された場合は、大きさが小さくても車両制御部117に通知すれば良い。この場合、例えば第2被検知体の輪郭形状の先鋭度を判定してもよい。
【0046】
地図情報記憶部116は、搬送路60上の走行経路を示す地図情報や、管制サーバ20から通知された走行許可領域、走行速度等の走行条件を含む管制制御情報が格納されている。
【0047】
車両制御部117は、管制サーバ20から指示された走行条件及び走行許可領域と自車位置検出部113から通知される自車位置情報に基づき、ダンプトラック10を走行経路に沿って走行させる機能を有している。また、車両制御部117は、干渉判定部114及び形状判定部115からの干渉判定結果情報及び形状判定結果情報に基づき、制動装置151を動作させるための制動指示信号を出力する。また減速を解除すると判定された場合に、予め定められた走行速度に復帰させるため走行指示信号を走行モータ153に出力する機能を有する。
【0048】
通信制御部118は、通信装置140を利用して管制サーバ20とダンプトラック10との間の相互通信を制御する機能を有している。
【0049】
次に図5乃至図7を参照して、本実施形態に係る車両制御装置110による進行方向監視処理について説明する。図5は、本実施形態に係る車両制御装置110による進行方向監視処理の流れを示すフローチャートである。図6は、ダンプトラックが被検知体を検出する状態を示す図であり、図6(a)は、ミリ波レーダが第1被検知体を検知した状態を示し、(b)は、減速をしながら前進をしている状態を示し、(c)は、レーザレーダが第2被検知体を検知した状態を示し、(d)は第1被検知体の手前で停止した状態を示し、(e)は、(a)から(d)までの第1、第2被検知体に対するダンプトラックの走行速度と目標速度とをダンプトラックの走行位置に応じて表した図である。図7は、ダンプトラックが被検知体を検出する状態を示す図であり、(a)は、ミリ波レーダが第1被検知体を検知した状態を示し、(b)は、減速をしながら前進をしている状態を示し、(c)は、レーザレーダが第2被検知体を検知した状態を示し、(d)は第1、第2被検知体上を通過している状態を示し、(e)は、(a)から(d)までの第1、第2被検知体に対するダンプトラックの走行速度と目標速度とをダンプトラックの走行位置に応じて表した図である。以降、図6及び図7の事例を交え、図5のステップ順に沿って処理内容を説明する。
【0050】
なお、ダンプトラックが走行する目標軌道は、図6及び図7では○で図示したノード(n1、n2、n3、n4、n5)と、隣接するノードを接続する直線で図示したリンクとにより定義される。そして走行許可領域は、目標軌道を基準にダンプトラック10の車幅方向(左右方向)に幅を有する領域600として設定される。
【0051】
ダンプトラック10は、地図情報記憶部116に記憶された目標軌道を示す地図情報を参照し、管制サーバ20が自車に対して付与した走行許可領域600に従って自律走行する。自律走行中は、ミリ波レーダ121及びレーザレーダ122が車両前方をセンシングする。
【0052】
走行中にミリ波レーダ121が検出した情報に基づき、第1被検知体検出部111が車両前方に第1被検知体を検出し(S501)、第1被検知体300、301と自車両の相対位置、及び相対速度を含む第1被検知体情報を干渉判定部114に出力する。図6(a)では、第1被検知体検出部111が第1被検知体300、301を検出する。図7(a)では、第1被検知体検出部111が第1被検知体302を検出する。
【0053】
干渉判定部114は、第1被検知体情報及び管制サーバ20から受信した走行許可領域を比較し、第1被検知体が走行許可領域600内に含まれるかを判定する(S502)。図6(a)では、第1被検知体300は走行許可領600内に存在するので干渉すると判定され、第1被検知体301は走行許可領域600外に存在するので干渉しないと判定する。そして干渉判定部114は、第1被検知体300の相対位置及び相対速度を含む干渉判定結果情報を車両制御部117に通知する(S502/Yes)。図7(a)では、干渉判定部114は第2被検知体302が走行許可領域600内にあり、干渉すると判定する。
【0054】
干渉判定部114が走行許可領域内に一つの被検知体もないと判定すると(S502/No)、ステップS505へ進む。
【0055】
車両制御部117は、第1被検知体に干渉することを示す干渉判定結果情報を受信すると、ダンプトラック10に対する目標速度を管制サーバ20が設定した走行速度から速度0に再設定する(図6(e)、図7(e)のt0参照)。干渉判定結果情報は第1被検知体との相対距離を含む。これと自車位置情報(自車の車輪速度に由来する走行速度を含む)に基づき、車両制御部117は、自車両が第1被検知体300と接触せずに第1被検知体300の手前で停止するための減速度aを式(1)によって算出する(S503)。ここで、v1[m/s]は、第1被検知体検出部111によって第1被検知体300、302が検出された時刻におけるダンプトラック10の走行速度を示し、L1[m]は第1被検知体300、302までの相対距離とする。
【数1】
【0056】
本実施形態では、第1被検知体300、302が停止している場合を想定しているため、第1被検知体300、302の速度は0[m/s]である。
【0057】
車両制御部117は、ステップS503で算出された減速度aで制動するために制動装置151に対して制動指示信号を出力する(S504)。
【0058】
ダンプトラック10が減速を開始した時刻t0以降、更にダンプトラック10が前進する。第1被検知体300、302がレーザレーダ122の検知範囲122aに入って第2被検知体検出部112によって第1被検知体300、302が第2被検知体として検出されると(S505/Yes、図6(c)、図7(c)参照)、検出された第2被検知体が第1被検知体300、302と同一であるかどうかを、干渉判定部114が判定する(S506)。
【0059】
同一判定を行う方法としては、たとえば第1被検知体情報に含まれる第1被検知体の相対位置と、第2被検知体情報に含まれる第2被検知体の相対位置との差が、所定値より小さい場合に同一被検知体と判定すればよい。
【0060】
干渉判定部114が第1被検知体と第2被検知体とが同一であると判定すると(S506/Yes)、干渉判定部114は第2被検体の相対位置及び形状を含む第2被検知体情報を形状判定部115に通知し、形状判定部115は、第2被検知体の形状が、通過許容範囲以内にあるか否かを判定する(S507)。
【0061】
形状判定部115は、第2被検知体の形状が通過許容範囲外であると判定すると(S507/No)、その形状判定結果情報を車両制御部117に出力し、車両制御部117は減速動作を継続させる(S508)。ダンプトラック10は、減速を継続し、最終的に第1被検知体300の手前で停止する(図6(d)参照)。このとき、図6(e)の時刻t3で示すように、走行速度は0となる。
【0062】
一方、形状判定部115が、第2被検知体の形状が通過許容範囲以内にあると判定すると(S507/Yes)、その判定結果を示す形状判定結果情報を車両制御部117に通知する。通過許容範囲以内の第2被検知体は、ダンプトラック10が接触又はそのまま通過しても通行の妨げにはならないので、車両制御部117は、上記形状判定結果情報を基に減速動作を解除し(S509;図7(e)のt0以降参照)、管制サーバ20が設定した走行経路に対する設定速度となるように走行速度を復帰させ(S510)、第2被検知体302上を通過する(図7(d)、図7(e)のt3参照)。その後、ステップS501へ戻る。なお、第1被検知体が走行許可領域内にあり(S502/Yes)、第2被検知体検出部112が第2被検知体を検出しない場合(S505/No)、例えば、自車両の前方に先行車両が停止または自車両よりも遅い速度で走行しておりミリ波レーダ121で検知した後、先行車両が自車両よりも速い速度で走行してレーザレーダ122の検知範囲内には先行車両が入らない場合も、減速を解除し(S509)、走行速度に復帰させる(S510)。
【0063】
なお、第1被検知体が検出されることなく(ステップS502/No)、第2被検知体も検出されない場合(ステップS505/No)は、ステップS509、510をスキップしてダンプトラック10は減速をすることなく管制サーバ20が設定した走行速度で走行し続ける。
【0064】
干渉判定部114が、第1被検知体と第2被検知体とが同一ではない(第2被検知体検出部112が新たな被検知体を検出した場合に相当する)と判定すると(S506/No)、干渉判定部114は、同一ではないと判定した第2被検知体が走行許可領域600内にあるかを判定する(S511)。
【0065】
走行許可領域600内にない場合(S511/No)は、ダンプトラック10とは干渉しないので、減速を解除し(S512)、走行経路の設定された走行速度に復帰させて(S513)、ステップS501へ戻る。
【0066】
なお、第1被検知体が検出されることなく(ステップS502/No)、第2被検知体が検出された場合(ステップS505/Yes、ステップS506/No)とは、例えば、ミリ波レーダ121では検出し難い凹部321をレーザレーダ122で検出した場合がある。この場合、ダンプトラック10はステップS503で減速をしていないので、ステップS512、S513をスキップして定められた走行速度で走行し続ける。
【0067】
干渉判定部114が、第1被検知体とは異なる第2被検知体が、走行許可領域600内にあると判定すると(S511/Yes)、ステップS507と同様、形状判定部115は、第2被検知体の形状が通過許容範囲以内にあるか否かを判定する(S514)。形状判定部115が通過許容範囲外であると判定すると(S514/No)、第2被検知体の手前で停止するための減速度を算出し(S515)、減速を実行する(S516)。その後ステップS501へ戻る。
【0068】
第1被検知体とは異なる第2被検知体の形状が、通過許容範囲以内であると判定されると(S514/Yes)、S503で減速をしている場合には原則を解除し(S512)、走行経路に設定された走行速度に復帰させる(S513)。その後ステップS501へ戻る。
【0069】
本実施形態に係る車両制御装置によれば、特性が異なる複数のセンサの出力を用いて進行方向監視を行うことで、検知距離がより長い第1進行方向監視センサの出力により、十分な制動距離が確保できるうちにときに第1被検知体を検出して減速を開始し、より接近してから高空間分解能の第2進行方向監視センサの出力を用いて第2被検知体が通行の妨げにならないかを判定し、通行の妨げにならないときは第2被検知体を回避することなく走行速度を復帰させて走行を続ける。その結果、従来であれば、路面凹凸のような被検知体を障害物として検出した場合、路面凹凸の手前で停車してしまっていたが、このような通行の妨げにならない被検知体の検出による自律走行車両の停車を抑止して、効率的な搬送作業を行う事が出来る。
【0070】
また、第1被検知体及び第2被検知体の同一性を判定することにより、同一であると判定された場合には、第2被検知体の干渉判定を省略できる。また、同一でない場合には、第1被検知体の検出に伴う減速の実行中であっても、また不検出により減速していない場合であっても、第2被検知体の手前で停車するための減速度を算出し、第2被検知体との干渉を避けることができる。
【0071】
以上本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更態様がある。
【0072】
例えば、上記では減速度aの算出を、走行速度及び被検知体との相対距離に基づいて算出したが、減速度aを第2進行方向監視センサ122のサンプリングレートや空間分解能を考慮し、第2進行方向監視センサ122が第2被検知体を的確に検出できる走行速度となるように減速させても良い。つまり、第2進行方向監視センサ122の検知範囲122aが第1被検知体に到達するときの自律走行車両の走行速度が、形状判定部115により、第2被検知体の形状判定ができる空間分解能で第2被検知体が検出できる相対速度となるように、第2進行方向監視センサ122のサンプリングレートに対応させた減速度を算出し、この減速度で減速させてもよい。
【0073】
減速度の算出例を図8を参照して説明する。図8は、被検知体の高さとセンサ設置角度θとの関係を示す図である。図8の例では、ダンプトラック10の前面上側に設置したレーザレーダ122が、レーザ光を路面320に向かって角度θで入射するように下側に向けられている場合、走行中に高さhの被検知体310を少なくともN回検出するためには次式に示す走行速度vrで走行する必要がある。ここで、レーザレーダ122のサンプリング周期をΔt[s]とし、ダンプトラック10は紙面に向かって右側に走行するものとする。
【数2】
【0074】
レーザレーダ122の検知範囲122aの長さをLs2[m]とすると、次式(3)で表す減速度aで減速することで、レーザレーダ122の検知範囲122aに被検知体310が入った場合のダンプトラック10の走行速度が式(3)を満足する。
【数3】
【0075】
ここで、高さhの設定は、レーザレーダ122で検出したい被検知体の高さにすれば良い。たとえば高さ1.5mの車両を検出したい場合、h=1.5[m]とすれば良い。検出回数Nは使用するレーザレーダ122の特性や車体振動の程度に応じ、検知したい対象の大きさが判断できる回数に設定すれば良い。また、減速度の設定において、式(1)及び(3)で算出した減速度のうち減速度の大きい値を選択しても良い。減速度の大きい値を選択することで、障害物の手前で必ず停止するようにできる。
【0076】
また、次式(4)で表されるレーザレーダ122の検知範囲の長さLs2[m]における減速度aがダンプトラック10の制動装置151で実現しうる減速度より小さい場合は、ステップS503で算出される減速度を0とし、減速を実行しなくても良い。ただし、走行路面の状態や積載物の重量に応じスリップしないような減速力となるように注意することが好ましい。
【数4】
【0077】
上記の例では、第2進行方向監視センサとしてレーザレーダを用い、サンプリングレートとしてレーザ照射・受光周期をもちいたが、第2進行方向監視センサとしてステレオカメラを用いる場合は、サンプリングレートとしてフレームレートを用いてもよい。
【0078】
また、通過許容範囲は、ダンプトラック10が被検知体に干渉しても通行の妨げとならない値として定められるので、ダンプトラック10のタイヤ径や走行速度を基に定めてもよい。例えば図3に示すように、タイヤ半径rに対して、通過許容範囲D(凹み321の深さ及び凸部322の高さ)を次式(5)のように定めてもよい。
−r/2≦D≦r/2・・・(5)
【0079】
また、走行速度がより速い場合は通過許容範囲Dがより狭くなるように設定してもよいし、同じ走行速度であっても操舵角がより大きい場合は、通過許容範囲Dがより狭くなるに設定してもよい。
【0080】
さらに鉱山用の作業機械として、ダンプトラック10のような運搬車両ではなく、他の作業機械に本発明を適用する際には、上記において車両制御装置が作業機械の走行制御を行う車体制御装置に、車両制御部が走行速度や制動制御を行う車体制御部に相当する。また作業機械の種類に応じて、通過許容範囲を変えてもよい。
【0081】
更に図4に示すように、ステップS509又はS512で減速解除をした第1被検知体の走行経路上の位置を記憶する減速解除情報記憶部を更に備え、再度ダンプトラック10が上記位置に到達して第1被検知体を検出すると、干渉判定部114が減速解除情報を参照し、車両制御部117に対して第1被検知体の検出による減速度の算出、実行(S503、S504)をしないように構成してもよい。減速解除の対象となる第1被検知体の検出情報のログ情報を用いて、不要な減速を抑制することができる。更に管制サーバ20が複数のダンプトラックの管制を行っている場合には、自車両が検出したダンプトラック10の減速解除情報を、管制サーバ20に送信し、管制サーバ20から他のダンプトラック10に送信してログを記録させてもよい。これにより、例えば前方走行車両が生成した減速解除情報を後方走行車両が用いることができる。また、車車間通信を行う場合には、管制サーバ20を介することなく減速解除情報を生成したダンプトラックから他車両に送信してもよい。
【0082】
またパトロールカーのように、オペレータが搭乗してその運転操作により走行する有人車両の進行方向監視技術に本発明を適用し、障害物検出時にオペレータに通知する際の誤通知を抑止する技術として用いてもよい。この場合、上記で説明した車両の減速を通知に読み替えるものとする。
【符号の説明】
【0083】
1:自律走行システム、10:ダンプトラック、20:管制サーバ、30:車両制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8