【文献】
J. Biomed. Mater. Res. A., 2003, Vol.65, No.2, pp.170-181
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外管及び/又は前記内管に、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)及び/又は肝細胞増殖因子(HGF)からなる群から選択される1以上の因子が結合されている請求項1又は2に記載の移植材料。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。また、以下に説明する実施形態の動物種は、ヒトがその一例として挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0019】
1.第一実施形態に係る血管再生用移植材料
図1は、本発明の第一実施形態に係る血管再生用移植材料を説明する図である。血管再生用移植材料Aは、外管1と内管2とからなる。外管1と内管2は、それぞれ生分解性単糸3の撚糸4が中空管状構造に編み込まれてなる。
【0020】
[生分解性単糸の撚糸]
生分解性単糸3は、生体内で酵素の作用により加水分解され得る天然又は合成の高分子(生分解性高分子)から形成されている。生分解性高分子は、体内で溶解、吸収されるため、異物反応の危険性を最小限に抑えることができ、安全性に優れる。
【0021】
生分解性高分子は、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコール酸/乳酸共重合体、ポリε−カプロラクトン、乳酸/ε−カプロラクトン共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ゼラチン、架橋ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、セルロース、デンプン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリジンなどを挙げることができる。生分解性高分子は、特に、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコール酸/乳酸共重合体が好ましい。
【0022】
生分解性単糸3の直径は、挿入すべき組織の特性および損傷の程度に応じて適宜選択できる。単糸直径は、例えば、200μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、さらに10μm以下であってもよい。単糸直径は、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜20μm程度とされる。
【0023】
生分解性単糸3の断面形状は、特に限定されず、円形又は多角形などであってよい。生分解性単糸3は、突起や微細凹凸を有していてもよい。
【0024】
撚糸4は、生分解性単糸3を複数本撚り合わせたものである。撚糸4には、材料、直径及び断面形状等が異なる複数種の生分解性単糸3を組み合わせて用いてもよい。撚糸4として束ねられる生分解性単糸3の本数は、特に限定されないが、2〜1000本、好ましくは4〜500本程度、特に好ましくは4〜100本程度とされる。外管1と内管2のそれぞれに用いられる生分解性単糸3及び撚糸4は、同一の符号を付しているが、材料、直径、断面形状等及び本数が異なっていてもよいものとする。
【0025】
また、生分解性単糸3は、それ自体が中空構造(管状構造)を有する中空糸であってもよい。さらに、生分解性単糸3には、形状記憶素材を用いてもよい。
【0026】
外管1及び内管2は、撚糸4を中空管状構造に編み込んで形成されている。具体的には、金属線、樹脂線及び繊維などの芯の周りに撚糸4を編み込んでいき、最後に芯を抜去することによって、中空管状構造を有する外管1及び内管2を得ることができる。なお、芯の材料は、上記の金属、樹脂及び繊維に限定されない。
【0027】
また、得られた外管1及び内管2には、撚糸4の編目構造に由来して、撚糸4の間に間隙5が形成される。間隙5は、外管1(あるいは内管2)の管腔の外部と内部を連絡し、管腔内外への細胞や酸素、血液及び細胞外液の移動経路となる。
【0028】
生分解性単糸3の材料、直径、断面形状及び本数や、撚糸4の編み組織及び編み込み時に糸に加える力などを調整することによって、外管1及び内管2の剛性や間隙5の形状及び大きさを変化させることが可能である。
【0029】
間隙5は、細胞や酸素、血液及び細胞外液が通過可能な大きさとされ、例えば、5μm〜2000μm程度とされる。間隙5の大きさは、10μm〜1000μm程度が好ましく、100μm〜500μm程度がより好ましい。なお、外管1の間隙5と内管2の間隙5は、同一の符号を付したが、形状及び大きさが異なっていてもよいものとする。
【0030】
[多重管構造]
本発明に係る血管再生用移植材料は、外管1の管腔に、内管2が少なくとも一つ配設された多重管構造を有している。本実施形態の血管再生用移植材料Aでは、外管1の管腔に、一つの内管2が配された二重管構造とされている。
【0031】
内管2は、外管1の管腔径d
1よりも小さい外径D
2を有する。内管2の外径D
2は、例えば、外管1の管腔径d
1の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%あるいは10%程度とされる。
【0032】
二重管構造は以下の手順により作製できる。まず、芯の周りに撚糸4を編み込んで外管1を作製する。次に、外管1の作製に用いた芯よりも径の小さな芯の周りに撚糸4を編み込んで内管2を作製する。そして、芯を抜き取った後の外管1の管腔に、内管2を芯とともに挿入する。最後に、内管2の芯を抜き取ることで、二重管構造を有する血管再生用移植材料Aを得る。使用する芯の径は、外管1の管腔径d
1及び内管2の管腔径d
2に応じて適宜設定すればよい。
【0033】
外管1の外径D
1は、挿入すべき組織の特性および損傷の程度に応じて適宜選択することができる。外径D
1は、最大10000μmまで可能である。外管1の管腔径d
1は、脊髄や皮下組織のように運動性を欠く臓器へ移植する場合には、100μm程度であっても、移植後に管腔が閉塞することはない。一方、筋肉のように収縮運動の盛んな臓器へ移植する場合には、管腔径d
1が100μm程度では管腔が閉塞するおそれがあるので、管腔径d
1は500μm程度とすることが望ましい。ヒトへの適応を考えれば、管腔径d
1を比較的大きくすることが、循環動態改善効果ならびに管腔閉塞防止のために有用である。
【0034】
外管1及び内管2の径の一例として以下の数値が挙げられる。
外管1:外径D
1600μm、管腔径d
1500μm
内管2:外径D
2300μm、管腔径d
2200μm
【0035】
また、血管再生用移植材料Aの長さは、2mm〜100cm程度とされ、好ましくは1cm〜30cm程度とされる。
【0036】
血管再生用移植材料Aは、外管1の管腔に、外管1の管腔内面と、内管2の外面とにより構成される空間11を備えている。この空間11は、生体に内在する細胞あるいは移植材料とともに移植した細胞による組織再生のためのスペースとなる。空間11の広さは、組織再生のためのスペースが確保されれば足り、特に限定されず、挿入すべき組織の特性および損傷の程度に応じて適宜設計される。
【0037】
血管再生用移植材料Aは、二重管構造(あるいは多重管構造)を有し、内管2が外管1の芯材としても機能するため、耐キンキング性に優れ、筋肉のように収縮運動の盛んな臓器へ移植した場合にも外管1及び内管2の管腔が閉塞し難い。また、仮に外力を受けて外管1が変形した場合にも、空間11が外管1の変形を緩衝し内管2の変形を防止するため、内管2の管腔(
図1(B)符号22参照)を維持できる。従って、血管再生用移植材料Aでは、移植部位において再生組織のための十分なスペースを確保し、該スペースにおける細胞の移動や、酸素、血液及び細胞外液の流れを促進して、血管の再生を効果的に誘導できる。より具体的には、組織中から外管1及び内管2の管腔に入った遊走細胞や、管腔に充填されていた移植細胞が、空間11及び内管2の管腔22に沿って宿主の細胞に邪魔されることなく成長できるため、新生血管の伸長が促進される。
【0038】
さらに、血管再生用移植材料Aは、外管1及び内管2が間隙5を有していることにより、外管1及び内管2の管腔内外への細胞や酸素、血液及び細胞外液の移動が可能とされている。従って、血管再生用移植材料Aでは、組織中の遊走細胞や組織液が間隙5を通過して管腔内に入ったり、管腔に充填しておいた移植細胞が間隙5を通過して組織中に出て行ったりすることが可能である。血管再生用移植材料Aの管腔から組織中に出た移植細胞は、移植部位及びその周囲に移動して血管の再構築に寄与する。
【0039】
[接着分子]
血管再生用移植材料Aには、細胞接着分子が結合されていてもよい。細胞接着分子とは、細胞の接着を促進する分子をいい、例えば、ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲン、ポリリジン及びポリオルニチンなどが挙げられる。
【0040】
血管再生用移植材料Aには、2種以上の細胞接着分子を組み合わせて結合してもよい。また、血管再生用移植材料Aの部位毎に異なる種の細胞接着分子を結合させてもよい。例えば、外管1と内管2とで異なる種の細胞接着分子を結合させたり、血管再生用移植材料Aの端部と中心部とで異なる種の細胞接着分子を結合させたりすることで、挿入する組織に存在する細胞及び血管再生用移植材料Aとともに移植する細胞に応じて所望の細胞接着特性を備えた血管再生用移植材料Aを作製することが可能である。
【0041】
血管再生用移植材料Aへの細胞接着分子の結合は、化学結合によるものであっても、物理的結合(例えば吸着)によるものであってもよい。例えば、血管再生用移植材料Aをラミニン水溶液(1〜1000μg/ml)中に室温にて2〜16時間浸漬させ、次に血管再生用移植材料Aを蒸留水で洗浄後、乾燥することにより、ラミニンが結合した血管再生用移植材料Aが得られる。
【0042】
[成長因子]
血管再生用移植材料Aには、ヘパリン及び/又はヘパラン硫酸が結合されていてもよい。へパリンとヘパラン硫酸は、アデノ随伴ウイルスなどの遺伝子導入用ベクターとして用いられているウイルスと結合親和性を有する。このため、血管再生用移植材料Aにヘパリン等を結合させておくことで、血管再生用移植材料Aにヘパリン等を介してウイルスベクターを結合させることができる。ウイルスベクターには、センダイウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター等も用いることができる。
【0043】
ウイルスベクターとしては、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF・bFGF)及び幹細胞増殖因子(HGF)などの新生血管の成長・成熟を促進する作用を有する因子を発現するウイルスベクターが挙げられる。
【0044】
また、へパリンとヘパラン硫酸は、VEGF、HGF、FGF・bFGF、上皮成長因子(EGF)、ケモカイン、ミッドカイン等の多くの栄養因子との結合親和性も有する。このため、血管再生用移植材料Aにヘパリン等を結合させておくことで、血管再生用移植材料Aにヘパリン結合性を有する栄養因子を結合させることもできる。さらに、これらの因子のタンパク質を血管再生用移植材料Aにヘパリンを介さず直接結合させることもできる。
【0045】
VEGF等の新生血管の成長・成熟を促進する作用を有する因子を導入、発現するための手段には、上記のウイルスベクターに限られず、プラスミド等の公知の遺伝子ベクターも採用できる。また、血管形成に関与する因子を発現させるための手段として、DNA(センス鎖、アンチセンス鎖を含む)やRNA(センス鎖、アンチセンス鎖、siRNA、miRNAを含む)を用いることもできる。例えばセンス鎖を用いれば、血管形成に関与する因子の発現を誘導できる。また、アンチセンス鎖を用いる場合やRNAiによる場合には、血管形成に関与する因子の発現抑制に機能している転写因子の発現を抑制することによって、血管形成に関与する因子の発現を誘導することが考えられる。また、上記のポリリジンのようにアミノ基を有する化合物は、DNAやRNAなどの核酸とイオン結合するため、血管再生用移植材料Aに細胞接着分子としてポリリジンを結合させれば、ポリリジンを介して血管形成に関与する遺伝子の発現を制御するための核酸を血管再生用移植材料Aに結合させることも可能である。本発明において、血管再生用移植材料に結合する成長因子の態様及び結合形態は、成長因子がその機能を発揮できるものであればよく、上記の通り、核酸の態様あるいはタンパク質の態様であってよく、これらの結合はヘパリン及び/又はヘパラン硫酸を介する形態あるいは介さない形態であってよく、さらに因子が核酸である場合には核酸そのものの態様あるいは遺伝子ベクターに搭載された態様であってよいものとする。
【0046】
外管1と内管2のそれぞれに上記因子の一以上を結合させてよく、外管1と内管2に異なる因子を結合してもよい。外管1と内管2のそれぞれに結合される因子の組み合わせは、挿入すべき組織の特性および損傷の程度に応じて適宜設定できる。
【0047】
一例として、血管内皮細胞を誘導、増殖させるVEGFを内管2に結合させ、他の血管形成関連因子(HGF、FGF2、PDGFなど)を外管1に結合させることで、生体内の血管に近い環境を再現できる。あるいは、外管1にVEGFを結合させ、内管2に他の血管形成関連因子(HGF、FGF2、PDGFなど)を結合させることも考えられる。血管再生用移植材料Aによって生体内の血管に近い環境を移植部位に構築することで、VEGF等を組織中に単に注入するだけの従来方法に比して、血管の再生を効果的に促進できる。
【0048】
[細胞]
空間11及び内管2の管腔22には、血管系細胞及び/又は血管系細胞に分化する細胞が充填されていてもよい。ここで、「血管系細胞」には、少なくも血管内皮細胞及び血管周皮細胞(ペリサイト)が含まれる。また、「血管系細胞に分化する細胞」には、血管内皮細胞及びペリサイトの前駆細胞、誘導性多能性幹細胞(iPS細胞)及び胚性幹細胞(ES細胞)等の幹細胞、間葉系幹細胞等が含まれる。
【0049】
さらに、空間11及び内管2の管腔22に、血管系細胞とともに心筋細胞を充填すれば、心筋梗塞や心筋症の治療への適用も可能である。さらに、内管2の管腔22に移植細胞を充填し、空間11にVEGF、PDGF、FGF・bFGF及びHGFなどの新生血管の成長・成熟を促進する作用を有する因子を結合してもよい。これによって、移植した血管内皮細胞等による血管構造の構築を促進できる。
【0050】
細胞に替えて、あるいは細胞と共に、空間11及び内管2の管腔22に、各種の栄養因子や薬物を導入してもよい。空間11及び内管2の管腔22にゲル化した栄養因子や薬物を充填すれば、長期にわたってこれらの物質が移植部位において放出されるようにできる。
【0051】
[磁性体]
血管再生用移植材料Aは、磁性体が接続されていてもよい。血管再生用移植材料Aに磁性体を接続することで、磁気発生装置を用いて、血管再生用移植材料Aを組織中の目的の部位に誘導して留置できる。
【0052】
磁性体の材料としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルトならびにこれらの合金(鉄クロムコバルト合金、アルミニッケルコバルト合金等)、フェライト、希土類磁石及び磁性ステンレスなどの任意の金属材料を用いることができる。希土類磁石としては、サマリウムコバルト(SmCo)磁石、ネオジウム(NdFeB)磁石などが挙げられる。磁性体には、これらの金属材料を、生体適合性を有する材料であって、従来注射針などのコートに用いられている材料で被覆したものを用いてもよい。生体適合性材料としては、例えば、パラキシリレン系ポリマーであるパリレン(登録商標)、シリコン、ポリプロピレン及びテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。金属材料として鉄クロムコバルト合金(FeCrCo)を使用する場合、市販FeCrCo線を熱により引き延ばしたナノワイヤを使用できる。
【0053】
磁性体は、血管再生用移植材料Aの一端に連結されていてもよく、血管再生用移植材料Aの管腔に少なくとも一部を挿入した状態で固定されていてもよい。
【0054】
磁性体を血管再生用移植材料Aの一端に連結するためには、磁性体の一端と血管再生用移植材料Aの一端とを糊剤や熱融着により結合させる。磁性体と血管再生用移植材料Aを1ケ所結合することで、外部磁場により磁性体と血管再生用移植材料Aを同時に制御できる。糊剤として例えば0.5%濃度でポリ乳酸(PLLA)とクロロホルムを混合した糊剤を使用できる。熱融着の場合、200℃程度のハンダコテを血管再生用移植材料Aにあてて融着してもよい。磁性体の一端と血管再生用移植材料Aの一端とを機械的に結合させる方法も考えられる。
【0055】
磁性体を血管再生用移植材料Aの管腔に少なくとも一部を挿入した状態で固定するためには、血管再生用移植材料Aの管腔に磁性体を挿し込み、200℃程度で数秒加熱し、糸を溶融させ磁性体と接着する。また、薬剤で接着してもよい。
【0056】
磁気発生装置による磁性体の誘導と組織内への挿入を容易にするため、磁性体は細い針状あるいは棒状に形成されることが好ましい。針状あるいは棒状とした磁性体(以下「針状磁性体」という)は、極細磁石であることが好ましい。磁性体を極細とすることで、血管再生用移植材料Aの挿入あるいは留置に伴う、組織の出血や損傷を最小限に抑えることができる。
【0057】
針状磁性体の直径は、挿入すべき組織の特性および損傷の程度に応じて適宜選択することができ、例えば、200μm以下、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは10μm以下とされる。針状磁性体の直径は、血管再生用移植材料Aの外径より小さいことが望ましい。針状磁性体の長さも、挿入すべき組織の特性および損傷の程度に応じて適宜選択することができる。
【0058】
磁場発生装置としては、例えば、国際公開第2001/061474号に開示される磁場制御装置を用いることができる。磁場発生装置は、電磁石と、発生する磁場を制御する制御装置とを備え、先端に誘導針を有する。誘導針は、電磁石から発生した磁場の磁束密度を高めるための磁性金属の針である。血管再生用移植材料Aを挿入する組織の付近に誘導針を密着させるかまたは挿入した後、制御装置を操作して磁場を発生させる。磁場の強度と誘導針の位置を調節することにより、磁性体を誘導して、血管再生用移植材料Aを組織内の所望の位置に挿入・留置できる。
【0059】
この際、高感度磁気センサーを利用することにより、磁性体の正確な位置をモニターできる。高感度磁気センサーを利用した手術中のモニター方法として、例えばホール素子、MI(磁気インピーダンス)センサー、SQUID(超伝導量子干渉素子)センサーの利用が考えられる。
【0060】
2.第二実施形態に係る血管再生用移植材料
図2は、本発明の第二実施形態に係る血管再生用移植材料を説明する図である。血管再生用移植材料Bは、外管1の管腔に、内管が複数配設されている点で、上述の血管再生用移植材料Aと異なる。すなわち、本実施形態の血管再生用移植材料Bでは、外管1の管腔に、3つの内管2a、2b、2cが配された多重管構造とされている。なお、外管1の管腔に配設される内管の数は2又は4以上であってもよい。
【0061】
血管再生用移植材料Bを構成する撚糸4(及び生分解性単糸3)、外管1及び内管2a、2b、2cの中空管状構造、間隙5等は、血管再生用移植材料Aと同じであるので詳細な説明を割愛する。
【0062】
内管2aは、外管1の管腔径d
1よりも小さい外径D
2aを有する。内管2aの外径D
2aは、例えば、外管1の管腔径d
1の70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%あるいは5%程度とされる。内管2b、2cについても同様であるが、内管2a、2b、2cの外径は同一であっても異なっていてもよい。
【0063】
多重管構造は以下の手順により作製できる。まず、芯の周りに撚糸4を編み込んで外管1を作製する。次に、外管1の作製に用いた芯よりも径の小さな芯の周りに撚糸4を編み込んで内管2a、2b、2cを作製する。そして、芯を抜き取った後の外管1の管腔に、内管2a、2b、2cを芯とともに挿入する。最後に、内管2a、2b、2cの芯を順に抜き取ることで、多重管構造を有する血管再生用移植材料Bを得る。使用する芯の径は、外管1の管腔径d
1、内管2aの管腔径d
2a(及び内管2b、2cの管腔径)に応じて適宜設定すればよい。同様にして、2又は4以上の内管を配置することもできる。
【0064】
外管1及び内管2a(及び内管2b、2c)の径の一例として以下の数値が挙げられる。
外管1:外径D
1600μm、管腔径d
1500μm
内管2a:外径D
2a200μm、管腔径d
2a100μm
【0065】
血管再生用移植材料Bは、外管1の管腔に、外管1の管腔内面と、内管2a、2b、2cの外面とにより構成される空間11を備えている。この空間11は、生体に内在する細胞あるいは移植材料とともに移植した細胞による組織再生のためのスペースとなる。
【0066】
血管再生用移植材料Bは、多重管構造を有し、内管2a、2b、2cが外管1の芯材としても機能するため、耐キンキング性に優れ、筋肉のように収縮運動の盛んな臓器へ移植した場合にも外管1及び内管2a、2b、2cの管腔が閉塞し難い。血管再生用移植材料Bは、外管1の管腔に複数の内管を配することで、上述の血管再生用移植材料Aに比して、より高い耐キンキング性が得られる。
【0067】
また、仮に外力を受けて外管1が変形した場合にも、空間11が外管1の変形を緩衝し内管2a、2b、2cの変形を防止するため、内管2a、2b、2cの管腔(
図2(B)符号22a、22b、22c参照)を維持できる。従って、血管再生用移植材料Bでは、移植部位において再生組織のための十分なスペースを確保し、該スペースにおける細胞の移動や、酸素、血液及び細胞外液の流れを促進して、効果的に血管の再生を誘導できる。より具体的には、組織中から外管1及び内管2a、2b、2cの管腔に入った遊走細胞や、管腔に充填されていた移植細胞が、空間11及び内管2a、2b、2cの管腔22a、22b、22cに沿って宿主の細胞に邪魔されることなく成長できるため、新生血管の伸長を促進できる。
【0068】
血管再生用移植材料Bには、上述した細胞接着分子、ヘパリン及び/又はヘパラン硫酸、成長因子、ウイルスベクター等を結合させてもよく、必要に応じて磁性体を結合させてもよい。この場合、内管2a、2b、2cには、それぞれ異なる細胞接着分子等を結合させることもできる。
【0069】
また、空間11及び内管2a、2b、2cの管腔22a、22b、22cには、血管系細胞及び/又は血管系細胞に分化する細胞が充填されていてもよく、ゲル化した栄養因子や薬物が充填されていてもよい。各管腔には、それぞれ細胞及び/又は薬物を任意の組み合わせで充填できる。本実施形態に係る血管再生用移植材料Bでは、内管を3つ配しているため、空間11及び内管2a、2b、2cの各管腔に充填する細胞や薬物について多様な組み合わせを実現できる。他方、上述の第一実施形態に係る血管再生用移植材料Aは、空間11及び内管2の管腔22を比較的広くとることができるため、多量の細胞や薬物を充填、移植するために適している。
【0070】
空間11及び内管2a、2b、2cの管腔22a、22b、22cに充填する細胞や薬物の組み合わせは例えば以下のようにできる。2又は4以上の内管が配されている場合にも同様に種々の組み合わせが可能である。
【0072】
3.第三実施形態に係る血管再生用移植材料
図3は、本発明の第三実施形態に係る血管再生用移植材料を説明する図である。血管再生用移植材料Cは、外管1の管腔に配置された第1の内管2dの管腔にさらに第2の内管2eが配設されている点で、上述の血管再生用移植材料Aと異なる。すなわち、本実施形態の血管再生用移植材料Cにおいては、第一の内管2dは、外管1に対しての内管であると同時に、第2の内管2eに対しての外管ともなっている。血管再生用移植材料Cは、3つの管状構造体(外管1、第1の内管2d、第2の内管2e)が「入れ子」になった多重管構造とされている。「入れ子」構造は、図に示す3重構造に限られず、4重以上であってもよい。
【0073】
血管再生用移植材料Cを構成する4(及び生分解性単糸3)、外管1及び第1・第2の内管2d、2eの中空管状構造、間隙5等は、血管再生用移植材料Aと同じであるので詳細な説明を割愛する。
【0074】
第1の内管2dは、外管1の管腔径d
1よりも小さい外径D
2dを有する。また、第2の内管2eは、第1の内管2dの管腔径d
2dよりも小さい外径D
2eを有する。第1の内管2dの外径D
2dは、例えば、外管1の管腔径d
1の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%あるいは10%程度とされる。同様に、第2の内管2eの外径D
2eは、例えば、第1の内管2dの管腔径d
2dの90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%あるいは10%程度とされる。
【0075】
多重管構造は以下の手順により作製できる。まず、芯の周りに撚糸4を編み込んで外管1を作製する。次に、外管1の作製に用いた芯よりも径の小さな芯の周りに撚糸4を編み込んで第1の内管2dを作製する。さらに、第1の内管2dの作製に用いた芯よりも径の小さな芯の周りに撚糸4を編み込んで第2の内管2eを作製する。そして、芯を抜き取った後の外管1の管腔に、第1の内管2dを芯とともに挿入した後、芯を抜き取る。さらに、芯を抜き取った後の第1の内管2dの管腔に、第2の内管2eを芯とともに挿入した後、芯を抜き取ることで、多重管構造を有する血管再生用移植材料Cを得る。使用する芯の径は、外管1の管腔径d
1及び第1・第2の内管2d、2eの管腔径d
2d、d
2eに応じて適宜設定すればよい。同様にして、4重以上の構造を作製することもできる。
【0076】
外管1及び第1・第2の内管2d、2eの径の一例として以下の数値が挙げられる。
外管1:外径D
1700μm、管腔径d
1600μm
第1の内管2d:外径D
2d400μm、管腔径d
2d300μm
第2の内管2e:外径D
2e200μm、管腔径d
2e100μm
【0077】
血管再生用移植材料Cは、外管1の管腔に、外管1の管腔内面と、第1の内管2dの外面とにより構成される空間11を備えている。また、第1の内管2dの管腔にも、第1の内管2dの管腔内面と、第2の内管2eの外面とにより構成される空間22dを備えている。これらの空間11、22dは、生体に内在する細胞あるいは移植材料とともに移植した細胞による組織再生のためのスペースとなる。
【0078】
血管再生用移植材料Cは、多重管構造を有し、第1・第2の内管2d、2eが外管1の芯材としても機能するため、耐キンキング性に優れ、筋肉のように収縮運動の盛んな臓器へ移植した場合にも外管1及び内管2d、2eの管腔が閉塞し難い。血管再生用移植材料Cは、「入れ子」状の多重構造とされることで、上述の血管再生用移植材料Aに比してより高い耐キンキング性を発揮する。
【0079】
また、仮に外力を受けて外管1が変形した場合にも、空間11が外管1の変形を緩衝し、第1の内管2dの変形を防止する。さらに、仮に第1の内管2dまでもが変形した場合にも、空間22dが第1の内管2dの変形を緩衝し、第2の内管2eの変形を防止する。このため、空間22d及び第2の内管2eの管腔(
図3(B)符号22e参照)が維持される。従って、血管再生用移植材料Cでは、移植部位において再生組織のための十分なスペースを確保し、該スペースにおける細胞の移動や、酸素、血液及び細胞外液の流れを促進して、効果的に血管の再生を誘導できる。より具体的には、組織中から外管1及び内管2d、2eの管腔に入った遊走細胞や、管腔に充填されていた移植細胞が、空間11、22d及び第2の内管2eの管腔22eに沿って宿主の細胞に邪魔されることなく成長できるため、新生血管の伸長を促進できる。
【0080】
血管再生用移植材料Cには、上述した細胞接着分子、ヘパリン及び/又はヘパラン硫酸、成長因子、ウイルスベクター等を結合させてもよく、必要に応じて磁性体を結合させてもよい。この場合、外管1及び内管2d、2eには、それぞれ異なる細胞接着分子等を結合させることもできる。
【0081】
また、空間11、22d及び第2の内管2eの管腔22eには、血管系細胞及び/又は血管系細胞に分化する細胞が充填されていてもよく、ゲル化した栄養因子や薬物が充填されていてもよい。各管腔には、それぞれ細胞及び/又は薬物を任意の組み合わせで充填できる。本実施形態に係る血管再生用移植材料Cでは、3つの管状構造体(外管1、第1の内管2d、第2の内管2e)が「入れ子」になって配されているため、空間11、22d及び第2の内管2eの管腔22eに充填する細胞や薬物について多様な組み合わせを実現できる。
【0082】
空間11、22d及び第2の内管2eの管腔22eに充填する細胞や薬物の組み合わせは例えば以下のようにできる。4重以上の構造とする場合にも同様に種々の組み合わせが可能である。
【0084】
さらに、本発明に係る血管再生用移植材料は、上述の第二実施形態における多重管構造と、第三実施形態における多重管構造とを組み合わせた構造を有していてもよいものとする。
【0085】
4.血管再生用移植材料の敷設方法
本発明に係る血管再生用移植材料の敷設様式としては、(1)全体を皮下及び/又は筋肉内に埋設する方式、(2)両端部を体外に露出し、中央部のみを皮下及び/又は筋肉内に埋設する方式、(3)片端部を体外に露出し、残余の部を皮下及び/又は筋肉内に埋設する方式のいずれであってもよい。
【0086】
[磁気による敷設]
本発明に係る血管再生用移植材料が磁性体を備える場合には、上述の通り、磁気発生装置を用いて組織中の目的の部位へ誘導し、敷設することができる。また、この際、高感度磁気センサーを用いることで、磁性体の位置をモニターして、血管再生用移植材料を目的の位置へ正確に移植できる。
【0087】
磁性体は、無害な鉄を用いる場合には挿入部位にそのまま留置してもよいし、磁性体を体外に導き出した後に、磁性体を血管再生用移植材料から切り離し、血管再生用移植材料のみを体内に留置してもよい。安全性を考慮すると血管再生用移植材料のみを体内に留置することが好ましい。
【0088】
比較的長い針状磁性体を血管再生用移植材料の管腔に挿入した構造の場合、血管再生用移植材料の全長に磁力線を挿入することが可能となるため強力な磁場誘導効果が得られる。
【0089】
[ガイドワイヤによる敷設]
また、本発明に係る血管再生用移植材料は、磁場を使用せずに、用手的に組織に挿入し、敷設することもできる。ガイドワイヤが目的部位へ到達したかは、例えばX線カメラ透視により確認できる。
【0090】
図4に本発明に係る血管再生用移植材料の敷設に使用可能なガイドワイヤを例示する。
【0091】
(A)に示す筒状のガイドワイヤは、先端の開口から血管再生用移植材料を通して用いるものであり、太い血管再生用移植材料の敷設に適する。先端は、筋肉内に進入できるように鋭利となっている。このガイドワイヤでは、上記(1)〜(3)の敷設様式が可能である。また、二本以上の血管再生用移植材料を同時に敷設することもできる。
【0092】
(B)に示すガイドワイヤは、先端部の溝に血管再生用移植材料を引っ掛けて用いる。先端は、筋肉内に進入できるように鋭利となっている。このガイドワイヤでは、先端を目的部位まで挿入後引き抜くだけで敷設でき、上記(2)(3)の敷設様式が可能である。また、二本以上の血管再生用移植材料を同時に敷設することもできる。
【0093】
(C)に示すガイドワイヤは、先端の孔に血管再生用移植材料を通して用いるものである。先端は、筋肉内に進入できるように鋭利となっている。このガイドワイヤでは、上記(1)(2)の敷設様式が可能である。
【0094】
また、図に示さないが、血管再生用移植材料の一端を閉鎖端とし、開口端である他の一端から血管再生用移植材料の管腔に挿入したガイドワイヤを用いて、血管再生用移植材料を組織中の目的の部位へ誘導してもよい。目的の部位へ挿入した後、開口端からガイドワイヤを引き抜く、あるいは、閉鎖端を切断して開口させ該開口からガイドワイヤを抜き取る。
【0095】
ガイドワイヤの長さは、通常、血管再生用移植材料の体内敷設長よりも長くされる。ガイドワイヤの長さは、臓器の種類や敷設部位などに応じて適宜設定されるものであり、特に限定されない。ガイドワイヤの材質は、特に限定されず、非磁性金属あるいはテフロン(登録商標)、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの有機素材を使用できる。
【0096】
[縫い込みによる敷設]
さらに、本発明に係る血管再生用移植材料を用手法的に組織に敷設する方法として、通常の手術糸のように、血管再生用移植材料を組織に縫い込む方法も採用できる。この方法は、細い血管再生用移植材料の敷設に適する。
【0097】
以上のようにして、血管再生用移植材料を敷設することにより、例えば虚血部位では、血管再生用移植材料に沿って血管が再生する。これにより、侵襲と危険が伴う血管再建術を行うことなく、心筋梗塞や、動脈硬化による下肢虚血(主に糖尿病)を治療できる可能性がある。また、血管内皮細胞あるいはその前駆細胞を血管再生用移植材料に付着させて、好ましくは血管再生用移植材料の管腔に充填して移植すれば、細胞を単に注入するだけの従来法ではほとんど不可能であった長い血管を目的臓器内に再生させることも可能となる。
【0098】
本発明の血管再生用移植材料は、動物に移植して血管を再生させることができる。動物種は、特に限定されないが、好ましくはヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ヒツジ、マウス、ラット等であり、更に好ましくは、ヒト、サル、イヌ、ネコ等であり、最も好ましくは、ヒトである。また、血管再生用移植材料は、上記のとおり作製することもできるが、購入することもできる。
【実施例】
【0099】
<参考例1:中空管状構造体の作製>
芯(直径100, 500μmのポリグリコール酸繊維(PGA))の周りにポリグリコール酸繊維(直径10μmの単糸を4〜8本撚り合わせて使用)を編み込んで中空管状構造体(外管あるいは内管に相当)を作製した。
【0100】
ヘパリンを10μg/mlで0.1N−リン酸バッファ(pH7.2)に溶解し、中空管状構造体を浸漬した(室温、16時間)。次に、中空管状構造体をリン酸バッファで洗浄し、乾燥させてヘパリン結合中空管状構造体とした。
【0101】
ヘパリン結合中空管状構造体をVEGF溶液に浸漬することによって、中空管状構造体にヘパリンを介してVEGFを結合させた。
【0102】
<参考例2:遺伝子導入用ベクターを結合した中空管状構造体による遺伝子導入>
参考例1で得た中空管状構造体を、GFP遺伝子を組み込んだアデノ随伴ウイルス(AAV)の溶液(ウイルス濃度1×10
12 viral particle/mlのリン酸バッファ)に浸漬し、37℃で1時間反応させた後、リン酸バッファで洗浄した。293細胞を培養皿一面に培養し、その上にAAVを搭載した中空管状構造体を載せ、3週間培養した。
【0103】
図5−1に示されるように、中空管状構造体に触れた細胞のみが緑色蛍光を発していた。このことは、AAVが中空管状構造体からほとんど離脱しないこと、及びAAVが活性を持った状態で中空管状構造体に結合していることを示している。なお、
図5−2は、
図5−1に示した写真において、中空管状構造体と、これに接触しかつGFPを発現する細胞と、が位置している領域を模式的に示した図である。
【0104】
<実施例1:血管再生用移植材料の筋肉内への移植>
参考例1で得た一重管構造を有する中空管状構造体(以下、本実施例及び実施例2、3において単に「中空管状構造体」という)のうち管腔径500μmのもの及び管腔径100μmのものを、ラット下肢の皮下結合組織に縫い込んで移植した。3日後に、中空管状構造体を縫い込んだ部位を採取し、定法に従って組織切片を作製し、光学顕微鏡により観察した。結果を
図6−1(A)及び(B)に示す。
【0105】
また、参考例1で得た中空管状構造体のうち管腔径100μmのものをラット下肢の筋肉内に縫い込んで移植した。さらに、参考例1で得た中空管状構造体のうち管腔径500μmのもの及び管腔径100μmのものをそれぞれ外管及び内管とし、芯を抜き取った外管の管腔に内管を芯とともに挿入し、内管の芯を抜き取ることで、二重管構造を有する中空管状構造体(すなわち、血管再生用移植材料)を得た。得られた血管再生用移植材料を、ラット下肢の筋肉内に縫い込んで移植した。3日後に、中空管状構造体あるいは血管再生用移植材料を縫い込んだ部位を採取し、定法に従って組織切片を作製し、光学顕微鏡により観察した。結果を
図6−1(C)及び(D)に示す。
【0106】
皮下結合組織に移植した場合には、管腔径500μm及び管腔径100μmのいずれの中空管状構造体でも、移植3日後にも、管腔が維持されていた(
図6−1(A)及び(B)、中空管状構造体及び管腔を模式的に示した
図6−2(A)及び(B)を参照)。しかし、筋肉内に移植した場合には、管腔径100μmの管状構造体では、移植3日後には管腔が閉塞し、管状構造が崩壊していた(
図6−1及び
図6−2の(C)参照)。一方、二重管構造を有する血管再生用移植材料では、筋肉内への移植後3日においても、内管の管腔スペースを維持でき、外管の管腔内面と内管の外面とにより構成された空間も維持できていることが明らかとなった(
図6−1及び
図6−2の(D)参照)。
【0107】
<実施例2:VEGFコート血管再生用移植材料の下肢虚血モデルマウス(ヌードマウス)への移植>
参考例1により管腔径100μmの中空管状構造体を得た。二重管構造を有する血管再生用移植材料は、参考例1により得た芯を抜き取った外管(管腔径500μm)の管腔に芯を抜き取った内管(管腔径100μm)を挿入することにより得た。
【0108】
ヘパリン(シグマ)を10mg/mlで注射用蒸留水に溶解し、中空管状構造体及び血管再生用移植材料を浸漬した(室温、16時間)。次に、中空管状構造体及び血管再生用移植材料を注射用蒸留水で洗浄し、ヘパリン結合中空管状構造体及びヘパリン結合血管再生用移植材料とした。
【0109】
組換えマウスVEGF(R&D systems)を5μg/mlになるようにリン酸緩衝生理食塩水に溶解し、ヘパリン結合中空管状構造体及びヘパリン結合血管再生用移植材料を浸漬した(室温、2時間)。次に、中空管状構造体及び血管再生用移植材料をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、VEGFが結合した中空管状構造体及び血管再生用移植材料を得た。
【0110】
下肢虚血モデル動物への血管再生用移植材料の移植は以下のように行った。ヌードマウス(CAnN.cg−Foxn1nu、チャールズリバー)の雌に、ソムノペンチル(登録商標)(共立製薬)を腹腔内投与することで全身麻酔を行った。右側下肢の皮膚を切開し、腹壁直下にて大腿動静脈を縫合糸にて結紮し、縫合部位から伏在動静脈にかけて血管を剥離した。続いて、大腿二頭筋に、VEGFが結合した中空管状構造体又は血管再生用移植材料を縫合針で縫い込むことにより移植した。皮膚を縫合し、移植部位を閉じた。
【0111】
移植3週間後に、アバーチン(2,2,2‐トリブロモエタノール、シグマ)麻酔下にて放血させることにより安楽死させた。移植用足場材を縫い込んだ部位を採取し、10%中性緩衝ホルマリンにて固定した。定法に従って組織のパラフィン切片を作製し、ヘマトキシリン(武藤化学)、エオシン(武藤化学)による染色を行った。光学顕微鏡(キーエンスBIOREVO X710)により観察した。
【0112】
結果を
図7に示す。(A)は中空管状構造体の移植部、(B)は血管再生用移植材料の移植部を示す。下肢筋肉に移植した3週間後、一重管構造を有する中空管状構造体は管腔が閉塞し、管状構造が崩壊していた。一方、二重管構造を有する血管再生用移植材料を移植した場合では、内管の管腔スペースを維持でき、外管の管腔内面と内管の外面により構成された空間も維持できていることが明らかとなった。
【0113】
<実施例3:VEGFコート血管再生用移植材料の下肢虚血モデルマウス(C57BL/6J)への移植>
次に、別のマウス系統において血管再生用移植材料の内部の管腔スペースの確保を確認するとともに、血管再生用移植材料の内部の血管再生を実証するための実験を実施した。C57BL/6Jマウス(チャールズリバー)の雌を用いて、実施例2と同様にして、下肢虚血モデルを作製し、VEGFを結合した中空管状構造体又は血管再生用移植材料を移植した。
【0114】
移植3週間後に、ビオチン結合トマトレクチン(ベクターラボラトリーズ)1mg/ml、100μlを尾静脈注射し、注射7分後にアバーチン麻酔薬の腹腔内投与を行い、注射10分後に開胸してリン酸緩衝生理食塩水20mlを灌流、さらに2%パラホルムアルデヒド溶液20mlを灌流した。
【0115】
中空管状構造体又は血管再生用移植材料を縫い込んだ部位を採取し、10%中性緩衝ホルマリンにて固定した。定法に従って組織のパラフィン切片を作製し、ヘマトキシリン、エオシン染色を行った。血管内皮細胞のマーカーであるCD31の抗体を用いた免疫組織染色を以下のように行った。0.5M Tris−HClバッファー(pH10.0)中での加熱処理により抗原の賦活化を行い、10%ロバ血清(ジャクソンイムノリサーチ)によるブロッキング後、ウサギ抗CD31抗体(アブカム)、enbisionキット+/HRP・抗ウサギ(ダコ)およびDAB+(3,3’−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド)基質キットを用いて染色を行った。また、静脈注射したビオチン結合トマトレクチンを検出するため、1mM EDTA溶液中での加熱処理により抗原の賦活化を行い、5%スキムミルク(BDバイオサイエンス)によるブロッキング後、西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジン(サーモサイエンティフィック)およびDAB+基質キット(ダコ)を用いて染色を行った。光学顕微鏡(キーエンスBIOREVO X710)により観察した。
【0116】
結果を
図8に示す。(A)は中空管状構造体の移植部、(B)は血管再生用移植材料の移植部を示す。下肢筋肉に移植した3週間後、一重管構造を有する中空管状構造体は管腔が一部閉塞していた。一方、二重管構造を有する血管再生用移植材料を移植した場合では、内管の管腔スペースを維持でき、外管の管腔内面と内管の外面により構成された空間も維持できていることが明らかとなった。実施例1の移植後3日の結果に加え、実施例2と実施例3の移植後3週間の結果からも、二重管構造を有する血管再生用移植材料の有用性が明らかとなった。
【0117】
CD31の染色を行うことにより、二重管構造を有する血管再生用移植材料の内部の血管再生を確認した。結果を
図9に示す。内管の管腔スペース、および外管の管腔内面と内管の外面により構成された空間のいずれにおいても、CD31陽性の血管が形成されていることが明らかとなった。
【0118】
静脈注射したビオチン結合トマトレクチンを検出することにより、二重管構造を有する血管再生用移植材料の内部の、血流を伴う機能的な血管再生を評価した。結果を
図10に示す。内管の管腔スペース、および外管の管腔内面と内管の外面により構成された空間のいずれにおいても、静脈注射したトマトレクチン陽性となる機能的な血管が形成されていることが明らかとなった。