(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473731
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】開閉装置とその給油方法
(51)【国際特許分類】
E02B 7/36 20060101AFI20190207BHJP
【FI】
E02B7/36
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-226640(P2016-226640)
(22)【出願日】2016年11月22日
(65)【公開番号】特開2018-84053(P2018-84053A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2018年6月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】森 慎治
【審査官】
田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−129390(JP,A)
【文献】
特開2001−055722(JP,A)
【文献】
特開2007−023510(JP,A)
【文献】
特開2014−109168(JP,A)
【文献】
特開2012−251404(JP,A)
【文献】
実公昭57−043173(JP,Y2)
【文献】
米国特許第04484728(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20−7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車を具備する動力伝達機構を介して伝達される駆動力によって扉体を昇降させる開閉装置において、
前記扉体に接続されたチェーンと、
前記チェーンに噛合して設けられ、前記動力伝達機構により駆動源から駆動力を伝達されて回収方向に回転し、前記扉体を上昇させる出力ホイルとを備え、
前記歯車は、潤滑油に部分的に浸漬された状態で設けられ、前記出力ホイルの前記回収方向の回転及び該回収方向とは反対の送り出し方向の回転に伴って回転し、
前記チェーンは、前記扉体が最下位置に配された状態で、前記出力ホイルが前記送り出し方向に回転可能な長さを有し、
前記扉体が最下位置に配された状態で、前記動力伝達機構を介して前記駆動源から駆動力を与えて前記出力ホイルを送り出し方向に回転させ、前記扉体を上昇させることなく前記歯車を回転させて前記動力伝達機構へ前記潤滑油を供給することを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
歯車を具備する動力伝達機構を介して伝達される駆動力によって扉体を昇降させる開閉装置の該動力伝達機構へ潤滑油を給油する給油方法において、
前記歯車を、前記潤滑油に部分的に浸漬した状態で設ける第1工程と、
前記扉体に接続されたチェーンに噛合して設けられ、前記動力伝達機構により駆動源から駆動力を伝達されて回収方向に回転し、前記扉体を上昇させる出力ホイルを、前記扉体が最下位置に配された状態で、前記回収方向とは反対の送り出し方向に回転させるのに伴って、前記扉体を上昇させることなく前記歯車を回転させて前記動力伝達機構へ前記潤滑油を供給する第2工程とを有し、
前記チェーンは、前記扉体が最下位置に配された状態で、前記出力ホイルが前記送り出し方向に回転可能な長さであることを特徴とする給油方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水門の扉体を昇降する開閉装置とその給油方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水路や河川等の水門には、歯車等の複数の部材を具備する動力伝達機構を介してモータ(駆動源)の駆動力を伝達し、扉体を上昇させる開閉装置が設置されている(特許文献1参照)。開閉装置の動力伝達機構の各部材は、給油によって焼き付けや摩耗が防止されている。給油方法の一つであるはねかけ潤滑法は、一部が油の貯留部に浸漬した歯車を回転させることによって油をはね上げ飛沫を発生さて給油するものであり、はねかけ潤滑法を採用した開閉装置は、扉体を昇降する際に回転する動力伝達機構の歯車によって油のはね上げを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−129390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、はねかけ潤滑法を採用した開閉装置は、扉体を最下位置(即ち、これ以上降下しない位置)に配した状態が続く場合、次に扉体を上昇させるまで、動力伝達機構の歯車が回転する機会がなく、動力伝達機構の各部材への給油が滞るという課題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、最下位置に配された扉体を上昇させることなく、潤滑のための給油を行うことが可能な開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る開閉装置は、歯車を具備する動力伝達機構を介して伝達される駆動力によって扉体を昇降させる開閉装置において、前記扉体に接続されたチェーンと、前記チェーンに噛合して設けられ、前記動力伝達機構により駆動源から駆動力を伝達されて回収方向に回転し、前記扉体を上昇させる出力ホイルとを備え、前記歯車は、潤滑油に部分的に浸漬された状態で設けられ、前記出力ホイルの前記回収方向の回転及び該回収方向とは反対の送り出し方向の回転に伴って回転し、前記チェーンは、前記扉体が最下位置に配された状態で、前記出力ホイルが前記送り出し方向に回転可能な長さを有し
、前記扉体が最下位置に配された状態で、前記動力伝達機構を介して前記駆動源から駆動力を与えて前記出力ホイルを送り出し方向に回転させ、前記扉体を上昇させることなく前記歯車を回転させて前記動力伝達機構へ前記潤滑油を供給する。
【0006】
前記目的に沿う第2の発明に係る給油方法は、歯車を具備する動力伝達機構を介して伝達される駆動力によって扉体を昇降させる開閉装置の該動力伝達機構へ潤滑油を給油する給油方法において、前記歯車を、前記潤滑油に部分的に浸漬した状態で設ける第1工程と、前記扉体に接続されたチェーンに噛合して設けられ、前記動力伝達機構により駆動源から駆動力を伝達されて回収方向に回転し、前記扉体を上昇させる出力ホイルを、前記扉体が最下位置に配された状態で、前記回収方向とは反対の送り出し方向に回転させるのに伴って、
前記扉体を上昇させることなく前記歯車を回転させ
て前記動力伝達機構へ前記潤滑油を供給する第2工程とを有
し、前記チェーンは、前記扉体が最下位置に配された状態で、前記出力ホイルが前記送り出し方向に回転可能な長さである。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明に係る開閉装置は、歯車が、潤滑油に部分的に浸漬された状態で設けられ、出力ホイルの回収方向の回転及び回収方向とは反対の送り出し方向の回転に伴って回転し、チェーンが、扉体が最下位置に配された状態で、出力ホイルが送り出し方向に回転可能な長さを有しているので、扉体が最下位置に配された状態でも出力ホイルの送り出し方向の回転によって、歯車を回転させて、潤滑油を動力伝達機構に給油することが可能である。
【0008】
また、第2の発明に係る給油方法は、歯車を、潤滑油に部分的に浸漬した状態で設ける第1工程と、扉体に接続されたチェーンに噛合して設けられ、動力伝達機構により駆動源から駆動力を伝達されて回収方向に回転し、扉体を上昇させる出力ホイルを、扉体が最下位置に配された状態で、回収方向とは反対の送り出し方向に回転させるのに伴って、歯車を回転させる第2工程とを有するので、扉体が最下位置に配された状態でも、潤滑油を動力伝達機構に給油可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る開閉装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る開閉装置10は、歯車11、11aを具備する動力伝達機構12を介して伝達される駆動力によって扉体Dを昇降させる装置であって、扉体Dに接続されたチェーン13と、チェーン13に噛合して設けられ、動力伝達機構12によって電動モータ(駆動源の一例)18から駆動力を伝達されて回収方向に回転し、扉体Dを上昇させる出力ホイル14を備えている。以下、詳細に説明する。
【0011】
開閉装置10は、
図1に示すように、基礎部15に固定された支持ベース16と、支持ベース16によって支持された筺体17と、筺体17に取り付けられた電動モータ18を備えている。筺体17内には、電動モータ18の出力軸に連結され電動モータ18から駆動力が与えられる動力伝達機構12が設けられており、動力伝達機構12は、図示しない回転軸、ウォームギア、
図2に示す歯車11、11a等の複数の部材によって構成されている。
【0012】
噛み合った径の異なる歯車11、11aは、
図2に示すように、それぞれ潤滑油Lに部分的に浸漬された状態で設けられている。
動力伝達機構12を介して電動モータ
18から駆動力を与えられる出力ホイル14は、
図1に示すように、両端が基礎部15及び扉体Dにそれぞれ接続されたチェーン13に噛合して設けられている。チェーン13には、出力ホイル14に加え、基礎部15の近傍に配された複数の案内用の補助歯車19が噛合されている。
【0013】
歯車11、11a及び出力ホイル14は、電動モータ18の作動によって回転し、扉体Dは、出力ホイル14の回転によって昇降する。電動モータ
18の出力軸は、2方向に回転でき、出力ホイル14は、電動モータ
18の出力軸が第1の方向に回転する際、扉体Dを上昇させる回収方向に回転し、電動モータ
18の出力軸が第2の方向に回転する際、扉体Dを降下させる送り出し方向(回収方向とは反対の方向)に回転する。
【0014】
従って、出力ホイル14は、回収方向に回転することで扉体Dを上昇させ、送り出し方向に回転することで扉体Dを降下させる。扉体Dは、出力ホイル14の送り出し方向の回転によって、下端が川底に接触し、それ以上降下できない状態となる。本実施の形態では、扉体Dの下端が川底に接触する高さ位置を最下位置とする。扉体Dが最下位置に配された際、
図1に示すように、チェーン13の出力ホイル14から扉体Dまでの領域は、全体が鉛直に配された状態となる。
【0015】
チェーン13は、扉体Dが最下位置に配された状態で、出力ホイル14が、更に送り出し方向に回転可能な長さを有し、扉体Dが最下位置に配された状態で出力ホイル14が送り出し方向に回転すると、チェーン13は、
図3に示すように、出力ホイル14から扉体Dまでの領域に弛みが生じた状態となる。
【0016】
歯車11、11aは、電動モータ18の作動による出力ホイル14の回収方向の回転及び送り出し方向の回転に伴って回転し、潤滑油Lをはね上げて潤滑油Lの飛沫を発生させて、動力伝達機構12の各部材(回転軸、ウォームギア、歯車11、11a等)に給油(潤滑油Lの供給)を行う。
扉体Dが最下位置に配された状態で出力ホイル14が更に送り出し方向に回転することによって、歯車11、11aは動力伝達機構12の各部材に給油することが可能である。そのため、開閉装置10は、最下位置に配された扉体Dを上昇させることなく、動力伝達機構12の各部材への給油を行うことができる。
【0017】
よって、本発明の一実施の形態に係る給油方法、即ち、歯車11、11aを具備する動力伝達機構12を介して伝達される駆動力によって扉体Dを昇降させる開閉装置10の動力伝達機構12への潤滑油Lの給油方法は、歯車11、11aを、潤滑油Lに部分的に浸漬した状態で設ける第1工程と、扉体Dに接続されたチェーン13に噛合して設けられ、動力伝達機構12によって電動モータ18から駆動力を伝達されて回収方向に回転し、扉体Dを上昇させる出力ホイル14を、扉体Dが最下位置に配された状態で、回収方向とは反対の送り出し方向に回転させるのに伴って、歯車11、11aを回転させて潤滑油Lをはね上げる第2工程とを有することとなる。
【0018】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、歯車の外周部全体のみに潤滑油を給油すればよい場合、歯車を回転させるだけでよく、潤滑油をはね上げ飛沫を発生させる必要はない。
また、扉体の最下位置は扉体をこれ以上降下させることができない位置であればよく、扉体は最下位置で必ずしも川底に接触する必要はない。
【符号の説明】
【0019】
10:開閉装置、11、11a:歯車、12:動力伝達機構、13:チェーン、14:出力ホイル、15:基礎部、16:支持ベース、17:筺体、18:電動モータ、19:補助歯車、D:扉体、L:潤滑油