【文献】
Maxim Greenberg, Meir Orenstein,Multimode add-drop multiplexing by adiabatic linearly tapered coupling,Optics Express,米国,Optical Society of America,2005年11月14日,Vol.13, No.23,pp.9381-9387
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記円形の光ファイバと結合する多モード導波路の端部の断面形状は、正方形状又は、縦長あるいは横長の長方形の形状であり、基板に対して平行方向のコア幅と垂直方向のコア厚との比率は前記端部面から伝搬方向に沿って漸次変化することを特徴とする、
請求項5に記載のモード合分波器。
【背景技術】
【0002】
大容量光通信技術において、伝送媒体として単一モードファイバの他、より大きな通信容量を有したモード多重用数モードファイバが用いられようとしている。複数モードの伝送を可能とするファイバとして、コア径が太いマルチモードファイバや、コア径を単一モードファイバと多モードファイバとの中間とする数モードファイバがある。なお、数モードファイバが伝送可能なモード数は例えば2〜3乃至10程度と云われているが、特定のモード数が規定されるものではない。
【0003】
図1は単一モードファイバと数モードファイバの概略を説明するための図である。数モードファイバのコア径は、単一モードファイバのコア径よりも太径とし、複数の伝搬モードに異なる情報を載せてモード多重伝送を行う。なお、
図1に示すコア径の数値は一例であり、この数値に限られるものではない。
【0004】
モード多重伝送では、単一モード信号を形成し、伝送時に複数の単一モード信号をモード多重信号に合波してモード多重信号として多モード伝送路で送信し、受信側において受信したモード多重信号を複数の単一モード信号に分波した後に復号する。
【0005】
モード多重通信では、複数の単一モードの信号が1本の多モードファイバあるいは数モードファイバ内においてモード多重信号の形態で伝送されるため、送受信部において、単一モード信号とモード多重信号との間で合波及び分波(分離)を行う必要がある。
【0006】
光ファイバを伝搬する導波モードにおいて、伝搬定数がほぼ等しく、重ね合わせによって直線偏波を構成できるモード群はLPモードと呼ばれる。LPモードは基本モード(0次モード)及び高次モードを備える。
図2(a)は0次モードのLP
01モードを示している。単一モードファイバはLP
01モードのみが伝搬するファイバであり、数モードファイバはLP
01モードに加えてLP
11モード等の高次モードを伝搬するファイバである。
【0007】
図2(b),(c)は1次のLPモードであるLP
11evenモードとLP
11oddモードの電磁界強度分布を示し、
図2(d),(e)はLP
11evenとLP
11oddの電磁界振幅分布を示している。LP
11evenモードとLP
11oddモードは伝搬定数が等しく、縮退している。LP
11evenモードとLP
11oddモードは、それぞれ偏光方向を90度異にする2つの電磁界分布が存在するため、合わせて同じ伝搬定数を持つ4つの異なる電磁界分布によって4重縮退の状態となっている。
【0008】
なお、LP
11evenモードとLP
11oddモードの定義は,ここでは円筒座標系を用いて、コア断面内縦軸(
図3のy軸)から角度座標を用いた場合のcos関数で表される振幅分布をeven(偶)モード、sin関数で表されるモードとodd(奇)モードと定義する。したがって,
図3のようにx軸とy軸を定義すると、LP
11evenモードはx軸方向に関して偶関数の電磁界振幅分布を持ち,LP
11oddモードはx軸に関して奇関数の電磁界振幅分布を持つ。
【0009】
単一モード信号とモード多重信号との間で行う合波及び分波(分離)の技術として特許文献1,2が知られている。
【0010】
特許文献1には、単一モード導波路と多モード導波路とを断熱的に近接させ、基本モード間の相互作用によって導波路間で信号を遷移させる構成が示されている。
【0011】
特許文献2には、導波路幅が異なる並進された2本の導波路からなる方向性結合器を含む平面光波回路から構成された光モード変換・合波分離器が示されている。この光モード変換・合波分離器では、平面光波回路のコア厚及び曲げ半径を規定することによって高次モード光を水平方向及び垂直方向について制御すること、2つの光モード変換・合波分離器の基板をXY平面で90度異ならせて光学的に接続させることによって、E
11モードからE
32モードの6つの伝搬モードに対応させることが示されている。
【0012】
また、矩形の導波路におけるモードの合成分離に関する技術として特許文献3が知られている。特許文献3には、コアの上下方向に対して鏡映関係のモード分布(縦方向に偶対称の電界分布)と、コアの縦方向に点対称のモード分布(縦方向に奇対称の電界分布)との電界分布を異にするモード分布をモード合成分離する構成として、石英平面光波回路(PLC)を用いたモード合分波器において、単一モード導波路と多モード導波路との間に、平面光波回路の厚み方向において誘電率分布を非対称とする誘電率調整部を設ける構成が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
コアの断面形状が矩形である導波路では、数モードファイバのLP
11evenモードに対応する電磁界分布TE
01とTM
01と、LP
11oddモードに対応する電磁界分布TE
10とTM
10とを備える。
図3(a),(c)は電界がx方向のみを有するTE
01モードとTE
10モードを示し、
図3(b),(d)は電界がy方向のみを有するTM
01とTM
10を示している。
【0015】
矩形導波路においてコアの断面形状が正方形である正方形導波路では、TE
01モードとTE
10モード、及びTM
01モードとTM
10モードの各モードは伝搬定数が同じ伝搬定数であるため縮退している。
【0016】
なお、矩形導波路では偏光方向は厳密にはx方向またはy方向に100%偏光しているわけではなく、直交する座標方向の成分が理論的には存在するが、比屈折率差Δが1%以下と小さい場合には電界はほぼx方向またはy方向に偏光しているため、便宜的にTEモードあるいはTMモードと呼ばれる。あるいはTE-likeモードやTM-likeモードと呼ばれる場合もある。一方、モード番号(あるいはモードラベル)については、
図3のようにx軸とy軸を定義して、TE
ijの最初の下付き添え字iがx方向のモード次数、2番目の下付き添え字jがy方向のモード次数を表す。
【0017】
また、コアの断面形状が正方形でない場合であっても、比屈折率差Δが1%程度の小さい場合には、伝搬定数の偏光依存性が小さいため、TEモードとTMモードの伝搬定数はほとんど一致して縮退する。
【0018】
したがって、コアの断面形状が正方形の正方形導波路や、コアの断面形状が長方形である場合であっても比屈折率差Δが1%程度の小さい矩形導波路では、TEモードとTMモードは縮退する。
【0019】
そのため、数モードファイバと矩形導波路とを突き合わせた構成では、数モードファイバにおいて縮退状態にあるLP
11evenモードとLP
11oddモードは、正方形導波路においてそれぞれ、TE
01モードとTE
10モードおよびTM
01モードとTM
10モードの各縮退モードが混合した状態となる。また、矩形導波路で縮退状態にあるTE
01モードとTM
01モード及びTE
10モードとTM
10モードは、数モードファイバにおいてそれぞれLP
11evenモードとLP
11oddモードに対応する。
【0020】
図4は正方形導波路の縮退を説明するための図である。
図4では、各N次モードにおいて、Vパラメータ値(横軸)に対する規格化伝搬定数b(縦軸)を示している。0次モード(N=0)ではTE
00とTM
00が縮退しているため同一の特性曲線上にあり、1次モード(N=1)ではTE
01モードとTE
10モードとTM
01モードとTM
10モードの4つのモードが縮退しているための同一の特性曲線上にある。
【0021】
上記した特許文献1,2に開示される技術は、単一モードと多モードとの間で各次数のモードごとにモード合波あるいは分波(分離)するモード合分波器に係るものである。特許文献1,2はTE
01モードとTE
10モード、あるいはTM
01モードとTM
10モードを分離する方法を示している。特許文献1では基板に垂直な縦方向の高次モードの分離を行うことは示されていない。また、特許文献2においては方向性結合器を用いているので、縮退しているモード間(TE
01モードとTE
10モード)の結合係数を正確に設計する必要がある。
【0022】
また、上記した特許文献3では、コアの上下方向に対して鏡映関係のモード分布(縦方向に偶対称の電界分布)と、コアの縦方向に点対称のモード分布(縦方向に奇対称の電界分布)との電界分布を異にするモード分布をモード合成分離する構成について開示され、TE
01モードとTE
10モード、との間のモード合成分離を示唆するものの、石英平面光波回路(PLC)を用いたモード合分波器において、単一モード導波路と多モード導波路との間に、平面光波回路の厚み方向において誘電率分布を非対称とする誘電率調整部を設ける必要があるという問題がある。
【0023】
そこで、本願発明は前記した従来の問題点を解決し、矩形導波路におけるTE
01モードとTE
10モードの縮退、及びTM
01モードとTM
10モードの縮退の解除において、方向性結合器を不要とし、縮退しているモード間(TE
01モードとTE
10モード)の結合係数について厳密な設計や製作を不要とすることを目的とする。
【0024】
また、矩形導波路において、誘電率調整部を用いることなく、導波路自体の構成によってTE
01モードとTE
10モードの縮退、及びTM
01モードとTM
10モードの縮退を解いて分離することを目的とする。
【0025】
また、光の相反性から、TE
01モードとTE
10モード、及びTM
01モードとTM
10モードを矩形導波路に合波させること、誘電率調整部を用いることなく、導波路自体の構成によってTE
01モードとTE
10モード、及びTM
01モードとTM
10モードを合波させること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願発明のモード合分波器は、多モード導波路と単一モード導波路とで形成される非対称テーパー結合モード遷移型導波路を用いて、多モードと単一モードとの間で断熱的なモード相互作用によるモード変換を行うものであり、多モード導波路の伝搬定数と単一モード導波路の伝搬定数の大小関係を伝搬方向に沿って入れ替え、この伝搬定数の入れ替えで生じる光電力の移行によって、高次モードの縮退の解除と分離、あるいは縮退した高次モードの生成を行う。
【0027】
本願発明のモード合分波器は、多モード導波路のコアのコア幅またはコア厚、あるいはコア幅とコア厚の両方を伝搬方向に沿ってテーパー形状とすることによって伝搬定数を伝搬方向に断熱的に変化させる。高次モードの縮退の解除においては、正方形導波路で縮退しているTEモードとTMモードの1次モード、すなわちTE
01モードとTE
10モードとTM
01モードとTM
10モードを、基板平行方向の1次モード、すなわちTE
10モードとTM
10モードと,基板垂直方向の1次モード、すなわちTE
01モードとTM
01モードに分離する。他方、縮退した高次モードの生成においては、矩形導波路においてTEモードとTMモードの1次モードを合波させる。
【0028】
本願発明のモード合分波器は、基板上にコアの断面形状が矩形の単一モード導波路と多モード導波路とで形成される非対称テーパー結合モード遷移型導波路を備える。
【0029】
多モード導波路は、基板に対して平行方向のコア幅と垂直方向のコア厚との比率が伝搬方向に沿って漸次変化するテーパー形状に構成され、このテーパー形状によって伝搬定数を伝搬方向に沿って漸次変化させることができる。コア幅とコア厚が等しい正方形断面の場合には、多モード導波路の高次モードの伝搬定数は等しいため縮退している。一方、コア幅とコア厚の比率が変化すると、多モード導波路の高次モードの伝搬定数に違いが生じるため縮退は解かれる。
【0030】
本願発明のモード合分波器は、このコア幅とコア厚の比率変化による伝搬定数の変化を利用し、多モード導波路の高次モードの縮退を解いて分離したり、多モード導波路において高次モードを合波させる。
【0031】
単一モード導波路は、基板上において湾曲した曲線形状で、基板に対してコア幅が伝搬方向に沿って漸次大きくなるテーパー形状であり、これによって伝搬定数は伝搬方向に沿って漸次変化すると共に、並置する多モード導波路との距離を漸次変更することができる。
【0032】
多モード導波路と単一モード導波路との配置において、2つの単一モード導波路の内、第1の単一モード導波路は多モード導波路のコア幅方向の面に対して伝搬方向に沿って並置され、第2の単一モード導波路は多モード導波路のコア厚方向の面に対して伝搬方向に沿って並置され、第2の単一モード導波路はコア厚方向に積層される。
【0033】
多モード導波路と単一モード導波路の並置において、並置される2つの単一モード導波路は、単一モード導波路が湾曲形状用いることによって、単一モード導波路を多モード導波路に対して断熱的なモード相互作用を呈する距離に近接させ、そのた後に離隔させる構成とすることができる。
【0034】
多モード導波路と単一モード導波路との間において、多モード導波路の高次モードの伝搬定数と単一モード導波路の基本モードの伝搬定数の大小関係の変化に伴ってモードの断熱遷移が行われる。本願発明のモード合分波器は、伝搬定数の大小関係の変化に伴うモード遷移を用いることで、多モード導波路で縮退を分離した高次モードを単一モード導波路に分離させたり、あるいは、単一モード導波路の基本モードを多モード導波路に分波させる。
【0035】
本願発明のモード合分波器は、多モード導波路のコア幅とコア厚の比率変化による高次モードの縮退状態の変化、及び多モード導波路と単一モード導波路間におけるモードの断熱遷移を用いることによって、TE及びTMの縦と横の一次モードである、TE
10モードとTE
01モード及びTM
10モードとTM
01モードを合波あるいは分波(分離)することができる。
【0036】
本願発明のモード合分波器が備える2つの単一モード導波路において、多モード導波路のコア幅方向の面に並置される第1の単一モード導波路は、多モード導波路との間で基板平行方向のモード分布をモード遷移する。他方、多モード導波路のコア厚方向の面に並置される第2の単一モード導波路は、多モード導波路との間で基板垂直方向のモード分布をモード遷移する。
【0037】
したがって、本願発明のモード合分波器は、多モード導波路に対して単一モード導波路をコア幅方向とコア厚方向に並置する構成とすることによって、基板平行方向のモード分布と基板垂直方向のモード分布をそれぞれ異なる単一モード導波路との間でモード遷移することができる。
【0038】
多モード導波路と単一モード導波路との並置において、単一モード導波路は湾曲形状によって多モード導波路に対し近接した後に離隔される。
【0039】
このとき、単一モード導波路と多モード導波部とが近接した部分は結合分岐部を形成する。この結合分岐部において、単一モード導波路と多モード導波路とは断熱的なモード相互作用を呈する距離に近接している。多モード導波路と単一モード導波路との間のモード遷移は結合分岐部の範囲内で行われる。
【0040】
なお、結合分岐部の範囲は、両導波路間が各伝搬方向において断熱的なモード相互作用を呈する距離に近接している範囲を示すものとして表すものであり、この範囲は臨界的なものではなく、例えばモード相互作用の程度を電界強度で表したときに、任意に定めた設定値との比較に基づいて定めることができるものである。
【0041】
本願発明のモード合分波器の結合分岐部において、多モード導波路と単一モード導波路との間のモード遷移は、各導波路の伝搬定数の大小関係によって設定することができる。なお、等価屈折率n
eqは規格化伝搬定数βを真空中の伝搬定数k
0で除した値であるため、伝搬定数の大小関係に代えて等価屈折率の大小関係で設定することもできる。
【0042】
モード遷移を行う伝搬定数の大小関係は、多モード導波路の高次モードの伝搬定数と単一モード導波路の基本モードの伝搬定数の大小関係が結合分岐部の範囲内で入れ替わるように設定する。
【0043】
多モード導波路の高次モードと単一モード導波路の基本モードの伝搬定数が一致している場合には、伝搬定数が一致しているため導波路間でモード遷移は行われず、モード結合が起きる。これに対して、多モード導波路と単一モード導波路の伝搬定数が異なる場合には、伝搬定数が大きい導波路に電磁界分布が局在する。
【0044】
したがって、並置される多モード導波路と単一モード導波路とを、その入射端において多モード導波路の高次モードの伝搬定数が単一モード導波路の基本モードの伝搬定数よりも大きくなるように構成し、結合分岐部内において両導波路の伝搬定数の大小関係が入れ替わるように設定することによって、伝搬定数が入射端では小さい単一モード導波路へ、入射端では伝搬定数が大きい多モード導波路の高次モードからモード遷移を行わせて分離することができる。
【0045】
多モード導波路のテーパー形状は断面の太さの変化を2つの形態で設定することができる。
【0046】
テーパー形状の第1の形態において、多モード導波路のテーパー形状は、縮退したモードを入射又は出射する端部側から縮退が解かれたモードを出射又は入射する端部側に向かって細く形成する。他方、単一モード導波路のテーパー形状は、縮退が解かれたモードを出射又は入射する端部側に向かって太く形成してなる。
【0047】
テーパー形状の第2の形態において、多モード導波路のテーパー形状は、縮退したモードを入射又は出射する端部側から縮退が解かれたモードを出射又は入射する端部側に向かって太く形成する。他方、単一モード導波路のテーパー形状は、第1の形態と同様に、縮退が解かれたモードを出射又は入射する端部側に向かって太く形成する。
【0048】
第1の形態及び第2の形態において、テーパー形状は、例えば、導波路のコア厚を一定としたとき、導波路のコア幅をコア厚に対して小さくすることで細くし、導波路のコア幅をコア厚に対して大きくすることで太くすることができる。また、テーパー形状は、導波路のコア幅を一定としたとき、導波路のコア厚をコア幅に対して小さくすることで細くし、導波路のコア厚をコア幅に対して大きくすることで太くすることができる。
【0049】
コア厚を一定とするテーパー形状の第1の形態は、コア厚を導波路の伝搬方向に向かって一定とすることができるため、テーパー形状の第2の形態のようにコア厚を導波路の伝搬方向に向かって変化させる必要がないため、基板上において導波路の形成を容易に行うことができる。
【0050】
本願発明のモード合分波器は、光ファイバを伝搬する縮退されたモードを入射して各次数のモードに分波し、分波した各次数のモードを各ポートに分離して出射するモード分波器として用いる他、各ポートから入射したモードを合波し、合波したモードを数モード光ファイバに出射するモード合波器として用いることができる。
【0051】
ポートからモードを分離する際、分波したモードには偏光方向が90°異なるTEモードとTMモードが含まれている。このTEモードとTMモードを分離するために偏光分離部材を用いることができる。
【0052】
モード合分波器に対する光ファイバ及び偏光分離部材の設置において、多モード導波路の一端に断面形状が円形の光ファイバを突き合わせて接続し、単一モード導波路の一端に偏光分離部材を配置する。あるいは、断面形状が円形の光ファイバの出射端に偏光分離部材を配置して、その後に偏光分離部材の1つの偏光を出射する端にモード合分波器の多モード導波路の一端を突き合わせて接続し、他方の偏光を出射する端にも同様のモード合分波器の多モード導波路の一端を突合せ接続する構成とすることもできる。
【0053】
光ファイバと多モード導波路との結合において、円形の光ファイバと結合する多モード導波路の端部の断面形状は、正方形の形状から、基板に対して平行方向のコア幅と垂直方向のコア厚との比率を端部面から伝搬方向に沿って漸次変化させて長方形の形状とする構成の他に、正方形の形状を経ること無く、端部の断面を縦長あるいは横長の長方形の形状とし、この長方形のコア幅とコア厚との比率を端部面から伝搬方向に沿って漸次変化させる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0054】
以上説明したように、本願発明のモード合分波器によれば、矩形導波路におけるTE
01モードとTE
10モードの縮退、及びTM
01モードとTM
10モードの縮退の解除において、方向性結合器を不要とすることができ、縮退しているモード間(TE
01モードとTE
10モード)の結合係数について厳密な設計や製作を不要とすることができる。
【0055】
矩形導波路において、誘電率調整部を用いることなく、導波路自体の構成によってTE
01モードとTE
10モードの縮退、及びTM
01モードとTM
10モードの縮退を解いて分波(分離)することができる。
【0056】
また、光の相反性から、TE
01モードとTE
10モード、及びTM
01モードとTM
10モードを矩形導波路に、誘電率調整部を用いることなく、導波路自体の構成によって合波させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本願発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。以下、
図5〜6を用いて本願発明のモード合分波器に用いる平板導波路を説明し、
図8〜12を用いて本願発明のモード合分波器の第1の構成例を説明し、
図13〜15を用いて本願発明のモード合分波器の第2、3の構成例を説明する。
【0059】
[平板導波路の概略構成]
はじめに、本願発明のモード合分波器に用いる矩形導波路と、最も基本的な光導波路である平板導波路について説明する。
図5は平板導波路の構造パラメータを説明するための概略図であり、
図6は平板導波路の偏光モード(偏波モード)を説明するための概略図である。
【0060】
図5は、平板導波路として対称3層平板導波路を示している。対称3層平板導波路は、基板上においてコアをクラッドによって縦方向(図中のy軸方向)に挟んで構成する3層構造であり、横方向(図中のx方向)をコア幅の方向とし、縦方向(図中のy軸方向)をコア厚の方向とし、奥行き方向(図中のz軸方向)を伝搬方向としている。
【0061】
ここで、光が主に導波される領域であるコアの屈折率をn
1とし、コアを囲む領域であるクラッドの屈折率をn
2とすると、比屈折率差Δは以下の式(1)で表される。
Δ=(n
12−n
22)/2n
12 ・・・(1)
なお、平板導波路のコア半幅(半厚)aは光ファイバのコア径(半径)aに相当する。
【0062】
導波路パラメータのVパラメータ、及び規格化伝搬定数bはそれぞれ以下の式(2),(3)で表される。
V=κ
0n
1a(2Δ)
1/2=(2π/λ)n
1a(2Δ)
1/2 ・・・(2)
b=((β/k
0)
2−n
22)/(n
12−n
22) ・・・(3)
なお、k
0は真空中の伝搬定数であり、βは規格化伝搬定数であり、λは波長である。
【0063】
平板導波路では、電界がy方向のみの成分を有するTEモード(Transverse Electric mode)と磁界がy方向のみの成分を有するTMモード(Transverse Magnetic mode)が伝搬される。
図6は平板導波路の偏光モード(偏波モード)を説明するための図であり、
図6(a)はTEモード(S波)を示し、
図6(b)はTMモード(P波)を示している。図において伝搬方向は左から右に向かう方向である。TEモードとTMモードとは、偏光(偏波)方向が90°相違している。
【0064】
矩形導波路の高次モードでは、TEモードは電磁界分布に節ができる方向が90°相違するTE
01モードとTE
10モードがあり、TMモードも同様に電磁界分布に節ができる方向が90°相違するTM
01モードとTM
10モードがある。コアの断面形状が正方形である正方形導波路では、TE
01モードとTE
10モード、及びTM
01モードとTM
10モードの各モードは伝搬定数が同じであるため縮退している。
【0065】
なお、矩形導波路における厳密なモードは、前記したように、偏光方向は厳密にはx方向またはy方向に100%偏光しているわけではなく、直交する座標方向の成分が理論的には存在するが、比屈折率差Δが1%以下と小さい場合には電界はほぼx方向またはy方向に偏光しているため、便宜的にTEモードあるいはTMモードと呼ばれる。あるいは、TE-likeモードやTM-likeモードと呼ばれる場合もある。一方、モード番号(あるいはモードラベル)については、
図3のようにx軸とy軸を定義して、TE
ijの最初の下付き添え字iがx方向のモード次数、2番目の下付き添え字jがy方向のモード次数を表す。
【0066】
平板導波路ではTEモードの伝搬定数は比屈折率差Δに依存しないが、TMモードは比屈折率差Δが大きい場合には伝搬定数がTEモードの伝搬定数よりも小さくなる。そのため、比屈折率差Δが大きい場合にはTEモードとTMモードの伝搬定数に差が生じる。
【0067】
これに対して、比屈折率差Δが小さい場合にはTEモードとTMモードの伝搬定数はほぼ同じであり、コアの断面形状が正方形でない場合であっても、比屈折率差Δが1%程度の小さい場合には、伝搬定数の偏光依存性が小さいため、TEモードとTMモードの伝搬定数はほとんど一致して縮退している。したがって、コアの断面形状が正方形の正方形導波路や、コアの断面形状が長方形である場合であっても比屈折率差Δが1%程度の小さい矩形導波路の矩形導波路では、TEモードとTMモードは縮退する。
【0068】
なお、矩形導波路のTE
01モードとTM
01モードは数モードファイバのLP
11evenモードに対応し、矩形導波路のTE
10モードとTM
10モードは数モードファイバのLP
11oddモードに対応している。
【0069】
図7は平板導波路の分散曲線を説明するための図であり、
図7(a)は比屈折率差Δが小さい場合の平板導波路の分散曲線を示し、
図7(b)は比屈折率差Δが大きい場合の平板導波路の分散曲線を示している。
図7の分散曲線は、Vパラメータに対する規格化伝搬定数bを示している。
【0070】
[モード合分波器の第1の構成例]
次に、本願発明のモード合分波器の第1の構成例について説明する。
図8,9は、モード合分波器の第1の構成例の概略構成を示す斜視図及びコア厚方向から見た図である。
【0071】
モード合分波器1Aは、基板(図示していない)上にコアの断面形状が矩形の多モード導波路2と第1および第2の単一モード導波路3,4とが形成されてなり、多モード導波路2と第1および第2の単一モード導波路3,4は非対称テーパー結合モード遷移型導波路を構成している。
【0072】
多モード導波路2は、基板(図示していない)に対して平行方向(図中のx軸方向)のコア幅と垂直方向(図中のy軸方向)のコア厚との比率が伝搬方向(図中のz軸方向)に沿って漸次変化して先細りとなるテーパー形状であり、縮退したモードが伝搬するバスラインを構成している。
【0073】
第1および第2の単一モード導波路3,4は、基板(図示していない)上において、多モード導波路2のコア幅方向(図中のx軸方向)の側面(図中のA面で、以下、多モード導波路の側面という)に対して遠ざかる方向に湾曲した曲線形状であり、基板に対してコア幅(図中のx軸方向の長さ)が伝搬方向(図中のz軸方向)に沿って漸次大きくなるテーパー形状であり、多モード導波路2との距離が伝搬方向において近接した後に徐々に離隔する。
【0074】
第1および第2の単一モード導波路3,4は、多モード導波路2から分離された高次モードがモード遷移される場合には、モード遷移したモード信号を出射するドロップラインを構成する。一方、第1および第2の単一モード導波路3,4は、基本モードが多モード導波路2にモード遷移する場合には、基本モードを入射するインラインを構成する。
【0075】
多モード導波路2及び第1と第2の単一モード導波路3,4との配置において、第1の単一モード導波路3は多モード導波路2のコア幅方向(図中のx軸方向)の側面(図中のA面)に対して伝搬方向(図中のz軸方向)に沿って並置され、第2の単一モード導波路4は多モード導波路2のコア厚方向(図中のy軸方向)の上面(図中のB面)に対して伝搬方向に沿って積層して並置される。第1の単一モード導波路3と第2の単一モード導波路4はコア厚方向に積層される。
【0076】
なお、第1の単一モード導波路3は図中のA面と反対側の多モード導波路2の側面に並置してもよく、また、第2の単一モード導波路4は図中のB面と反対側の多モード導波路2の下面に並置してもよい。
【0077】
多モード導波路2と第1および第2の単一モード導波路3,4の並置において、第1および第2の単一モード導波路3,4は湾曲形状によって多モード導波路2に対して近接した後に離隔する。この近接において、第1および第2の単一モード導波路3,4と多モード導波路2とが断熱的なモード相互作用を呈する距離に近接することで結合分岐部C,Dが形成される。
【0078】
結合分岐部C,Dにおいて、多モード導波路2のテーパー形状によって、断面が正方形ではなくなることで、TE
01モードとTE
10モードの伝搬定数、あるいはTM
01モードとTM
10モードの伝搬定数に差異が生じ、モードの縮退が解かれ、他方、断面が長方形から正方形となることでモードの伝搬定数が一致し、モードが縮退する。
【0079】
また、結合分岐部C,Dにおいて、多モード導波路2の高次モードの伝搬定数と第1および第2の単一モード導波路3,4の基本モードの伝搬定数の大小関係が変化することに伴って、導波路間でモードの断熱遷移が行われ、伝搬定数が小さい導波路から伝搬定数が大きい導波路に向かって断熱的な相互作用によって光電力の局在部分が遷移する。したがって、結合分岐部C,Dでは、多モード導波路から単一モード導波路へのモードの分離と、単一モード導波路から多モード導波路へのモードの合波が行われる。
【0080】
多モード導波路に縮退が解かれた高次モードが伝搬している状態において、多モード導波路と並置された単一モード導波路との伝搬定数の大小関係が入れ替わり、単一モード導波路の基本モードの伝搬定数が多モード導波路の高次モードの伝搬定数よりも大きくなった場合には、多モード導波路を伝搬する高次モードは単一モード導波路の基本モードにモード遷移する。
【0081】
また、単一モード導波路にモード信号が伝搬している状態において、単一モード導波路の基本モードの伝搬定数と多モード導波路の高次モードとの伝搬定数の大小関係が入れ替わり、多モード導波路の高次モードの伝搬定数が単一モード導波路の基本モードの伝搬定数よりも大きくなった場合には、単一モード導波路の基本モードは多モード導波路の高次モードにモード遷移する。
【0082】
多モード導波路のTE及びTMの一次モードとして、TE
10モード、TE
01モード、TM
10モードとTM
01モードがあり、本願発明のモード合分波器は、これらの一次モードの縮退を解いて分波(分離)して単一モード導波路の基本モードにモード遷移することができる他、複数の単一モード導波路の基本モードを多モード導波路にモード遷移し合波することができ、多モード導波路において複数のモードを伝搬させることができる。
【0083】
第1の構成例は、光ファイバ11を伝搬する縮退したモードを入射して各次数のモードに分波し、分波した各次のモードを第1および第2の単一モード導波路3,4も各ポートGから分離して出射するモード分波器として用いる他、各ポートGから入射したモードを合波し、合波したモードを合波して光ファイバ11に出射するモード合波器として用いることができる。
【0084】
ポートGからモードを分離する際、分波したモードには偏光方向が90°異なるTEモードとTMモードが含まれている。このTEモードとTMモードを分離するために各ポートFに偏光分離部材12を設けることができる。
【0085】
多モード導波路2の一方の端部Eには光ファイバ11が接続され、光ファイバ11と多モード導波路1との間でモード信号の授受が行われ、モード分波器として用いる場合には入射端として用いられ、モード合波器として用いる場合には合波した高次モードを光ファイバ11側に出射する出射端として用いられる。
【0086】
多モード導波路2の他方の端部Fは、モード分波器として用いる場合には、第1および第2の単一モード導波路3,4に分波(分離)されて残った基本モードが出射される出射端として用いられ、モード合波器として用いる場合には入射端として用いられる。端部Fのポートにも偏光分離部材12が設置される。
【0087】
モード合分波器1Aに対する光ファイバ11及び偏光分離部材12の設置において、多モード導波路2の一端Eに断面形状が円形の光ファイバ11を突き合わせて結合させ、第1および第2の単一モード導波路3,4の一端のポートGに偏光分離部材12を結合させる。
【0088】
あるいは、断面形状が円形の光ファイバの出射端に偏光分離部材を配置して、その後に偏光分離部材の1つの偏光を出射する端にモード合分波器の多モード導波路の一端を突き合わせて接続し、他方の偏光を出射する端にも同様のモード合分波器の多モード導波路の一端を突合せ接続する構成とすることもできる。
【0089】
偏光分離部材の設置位置は、各分離ポートとする他に、入射端Eに設置する構成としても良い。この構成によれば、直交する偏光を入射端Eに設けた偏光分離部材で分離し、その後にモード分離することができる。また、合波においても、端部Eに偏光合波器を設置しても良い。
【0090】
光ファイバ11と多モード導波路2との接続において、円形の光ファイバ11と接続する多モード導波路2の端部Eの断面形状を正方形の形状とし、基板に対して平行方向のコア幅と垂直方向のコア厚との比率を端部Eの面から伝搬方向に沿って漸次変化させて長方形の形状とする構成の他に、正方形の形状を経ること無く、端部Eの断面を縦長あるいは横長の長方形の形状とし、この長方形のコア幅とコア厚との比率を端部Eの面から伝搬方向に沿って漸次変化させる構成とすることもできる。
【0091】
次に、第1の構成例の動作例について、モード分波器として用いる場合について、
図10〜
図12を用いて説明する。
【0092】
図10は矩形(長方形)導波路の分散曲線を示している。図示する例では、コアの屈折率がn
1=1.4678、クラッドの屈折率がn
2=1.4530の矩形導波路において、コア厚hを8μmとしてコア幅Wを変化させたときの等価屈折率n
eqを示している。等価屈折率n
eqは規格化伝搬定数βを真空中の伝搬定数k
0で除した値であるため、
図10は、矩形導波路のコア幅とコア厚との比率に対する伝搬定数の変化を示している。
【0093】
図10の分散曲線は、0次モードのTE
00と1次モードのTE
01モード、TE
10モード、及びTE
11モードの各伝搬定数を示している。なお、ここでは、異なる偏光のTM
00モード、TM
01モード、TM
10モード、及びTM
11モードは示していない。
【0094】
コア厚hが8μmであるため、コア幅Wが8μmである矩形導波路はコアの断面形状が正方形である正方形導波路に相当する。この正方形導波路では、1次モードのTE
01モードとTE
10モード、及びTM
01モードとTM
10モードの各モードは伝搬定数が同じであるため縮退している。
図10中において、TE
01モードとTE
10モードとが交差する点はモードが縮退した状態にある。
【0095】
コア幅Wとコア厚hの比率が1:1からずれると矩形導波路のコアの断面形状は正方形から長方形となる。このように、矩形導波路のコア幅Wとコア厚hとの比率が1:1からずれると、TE
01モードとTE
10モードの伝搬定数が異なるため縮退が解かれる。
図10において、コア幅Wが8μmよりも大きい場合(TE
01モードとTE
10モードとの交点Pよりも図中の右側)には、TE
10モードの等価屈折率n
eqはTE
01モードの等価屈折率n
eqよりも大きくなる。他方、コア幅Wが8μmよりも小さい場合(TE
01モードとTE
10モードとの交点Pよりも図中の左側)にはTE
01モードの等価屈折率n
eqはTE
10モードの等価屈折率n
eqよりも大きくなる。
【0096】
本願発明のモード合分波器では、この矩形導波路のコア幅Wとコア厚hの比率が1:1からずれて断面形状が正方形から長方形となる場合に、TE
01モードとTE
10モードの伝搬定数が異なって縮退が解かれることを利用するものであり、縮退が解かれたTE
01モードとTE
10モードを、多モード導波路に並置した単一モード導波路に断熱遷移させることによって各モードを分波(分離)する。
【0097】
また、光の相反性から逆方向の作用も同様に行うことができ、単一モード導波路から多モード導波路に断熱遷移させることにより、多モード導波路においてモードを合波させることができる。
【0098】
図11を用いて、モードの縮退を解いて単一モード導波路の分波する動作について説明する。
図11では、多モード導波路の矩形導波路のコア幅Wがコア厚hよりも次第に小さくなり先細りとなる導波路の例について説明する。
【0099】
図11(a)は、
図10と同様に多モード導波路の分散曲線を示し、
図11(b)は第1および2の単一モード導波路の分散曲線を示している。
図11(a),(b)の横軸の下方に示す矩形は、コアの断面形状の変化を模式的に示している。
【0100】
図11(a)の多モード導波路では、コア断面のコア幅Wが次第に小さくなって正方形形状から先細りの長方形となるに従ってTE
01モードとTE
10モードの縮退が解け、TE
01モードの等価屈折率n
eq(図中の破線で表示)はTE
10モードの等価屈折率n
eq(図中の太い実線で表示)よりも大きくなる。
【0101】
図11(b)の第1および2の単一モード導波路では、コア断面のコア幅Wが次第に大きくなるに従って等価屈折率n
eqが大きくなる。
【0102】
図11(c)〜(e)は、多モード導波路と第1および第2の単一モード導波路とを断熱的なモード遷移が生じる程度に近接させた場合において、多モード導波路(TE
01モードとTE
10モード)と単一モード導波路間のモード遷移を示している。TE
01モードは破線で示し、TE
10モードは実線で示し、単一モード導波路の基本モードは一点鎖線で示している。
【0103】
図11(c)は、
図11(a)の多モード導波路のTE
01モード、TE
10モード、及びTE
11モードの分散曲線と
図11(b)の第1および第2の単一モード導波路の分散曲線とを重ね合わせた状態を示している。なお、TE
10モードの分離部(
図8および
図9のC)では第1の単一モード導波路のコア厚hが多モード導波路のコア厚と同じであるため、
図11(b)の単一モード導波路の分散曲線は、
図11(a)の多モード導波路のTE
00モードの分散曲線と同じになっている。一方、TE
01モードの分離部(
図8および
図9のD)では第2の単一モード導波路のコア厚hは必ずしも多モード導波路のコア厚と同じである必要はないが、ここでは説明の単純化のため、
図11(b)の第2の単一モード導波路の分散曲線は、
図11(a)の多モード導波路のTE
00とモードの分散曲線と同じと仮定して説明する。
【0104】
TE
01モードの分離部(
図8および
図9のD)の第2の単一モード導波路のコア厚hが多モード導波路のコア厚と異なる場合には、
図11(b),(e)の第2の単一モード導波路の分散曲線は、
図11(a)の多モード導波路のTE
00とモードの分散曲線とは異なるが、コア幅が零の場合に規格化伝搬定数が零になる点は共通であり、本願発明のモード合分波器の動作の基本原理は同じである。
【0105】
図11(c)において、第1の単一モード導波路の分散曲線(図中の一点鎖線)は、断面形状が最初は細い状態から太くなる方向(横軸の右方向)に変化する過程で、はじめに多モード導波路の縮退が解けたTE
10モードの分散曲線(図中の太い実線)と点Qで大小関係が入れ替わり、次に第2の単一モードの分散曲線(図中の一点鎖線)がTE
01モードの分散曲線(図中の破線)と点Rで大小関係が入れ替わる。
【0106】
図11(d)は、第1の単一モード導波路の基本モードの分散曲線と多モード導波路のTE
10モードの分散曲線との伝搬定数の大小関係の入れ替わりを示している。
【0107】
多モード導波路との断面形状が細くなる方向(横軸の左方向)において、第1の単一モード導波路は断面形状が最初は細い状態から伝搬方向に太くなるので、第1の単一モード導波路の基本モードの分散曲線と多モード導波路のTE
10モードの分散曲線とが伝搬定数の大小関係の入れ替わる点Qよりも手前(図中の点Qよりも右側)では、第1の単一モード導波路の基本モードの伝搬定数はTE
10モードの伝搬定数よりも小さいため、多モード導波路から第1の単一モード導波路への断熱遷移による分波は起こらない。
【0108】
次に、点Qよりも後(図中の点Qよりも左側)では、伝搬定数の大きさが入れ替わって、第1の単一モード導波路の基本モードの伝搬定数は多モード導波路のTE
10モードの伝搬定数よりも大きくなるため、多モード導波路から第1の単一モード導波路への断熱遷移によって、TE
10モードが第1の単一モード導波路に分波される。
【0109】
多モード導波路の断面形状が細くなる方向(横軸の左方向)において、第2の単一モード導波路の基本モードの分散曲線は、点Qの次に点RにおいてTE
01モードの分散曲線と大小関係が入れ替わる。
【0110】
図11(e)は、第2の単一モード導波路の基本モードの分散曲線と多モード導波路のTE
01モードの分散曲線との大小関係が入れ替わりを示している。
【0111】
多モード導波路の断面形状が細くなる方向(横軸の左方向)において、第2の単一モード導波路の基本モードの分散曲線と多モード導波路のTE
01モードの分散曲線とが大小関係が入れ替わる点Rよりも手前(図中の点Rよりも右側)では、第2の単一モード導波路の基本モードの伝搬定数はTE
01モードの伝搬定数よりも小さいため、多モード導波路から第2の単一モード導波路への断熱遷移による分波は起こらない。
【0112】
次に、点Rよりも後(図中の点Rよりも左側)では、伝搬定数の大きさが入れ替わって、第2の単一モード導波路の基本モードの伝搬定数はTE
01モードの伝搬定数よりも大きくなるため、多モード導波路から第2の単一モード導波路への断熱遷移によって、TE
01モードが第2の単一モード導波路に分波される。ただし、この場合のモード遷移は縦方向(
図8のy方向)に起こるため、第2の単一モード導波路は
図8のように多モード導波路の上側または下側に配置される。
【0113】
上記動作から、多モード導波路は縮退が解けた後、はじめにTE
10モードが第1の単一モード導波路の基本モードにモード遷移し、次にTE
01モードが第2の単一モード導波路の基本モードにモード遷移する。
【0114】
図8,9に示すモード合分波器の構成例では、多モード導波路2からTE
10モードを第1の単一モード導波路3に分波(分離)し、TE
01モードを第2の単一モード導波路4に分波(分離)する。TE
10モードとTE
01モードとを分波(分離)した残りのTE
00モードは多モード導波路2の先細りの端部Fから出射される。
【0115】
図12はモード合分波器の結合分岐部C,Dにおけるモードの伝搬解析を示し、伝搬方向に2mmの間における多モード導波路と単一モード導波路のx方向とy方向の電磁界強度分布を示し、z=0μmの位置では数モードファイバのLP
11evenモードとLP
11oddモードが入射された状態を示している
【0116】
図12(a)は結合分岐部CにおけるTE
10モードの伝搬解析を示し、結合分岐部CにおいてTE
10モードが多モード導波路2から第1の単一モード導波路3に遷移する状態を示している。この結合分岐部Cのモード分岐比は25dBである。
【0117】
図12(b)は結合分岐部DにおけるTE
01モードの伝搬解析を示し、結合分岐部DにおいてTE
01モードが多モード導波路2から第1の単一モード導波路3に遷移する状態を示している。この結合分岐部Dのモード分岐比は19dBである。
【0118】
なお、結合分岐部Cは、多モード導波路2及び多モード導波路2に対してx方向に並置された第1の単一モード導波路3で構成され、結合分岐部Dは、多モード導波路2及び多モード導波路2に対してy方向に積層して並置された第2の単一モード導波路4とで構成されている。
【0119】
[モード合分波器の第2の構成例]
次に、本願発明のモード合分波器の第2の構成例について説明する。
図13(a)は、モード合分波器の第2の構成例の概略構成を示す図であり、コア厚方向から見た状態を示している。
【0120】
モード合分波器1Bは、モード合分波器1Aと同様に、基板(図示していない)上にコアの断面形状が矩形の多モード導波路2と第1および第2の単一モード導波路3,4とが形成されてなり、多モード導波路2と第1および第2の単一モード導波路3,4は非対称テーパー結合モード遷移型導波路を構成する。
【0121】
第1および第2の単一モード導波路3,4の構成は第1の構成例と同様とすることができ、第1の構成例とは第1および第2の単一モード導波路3,4の多モード導波路2に対する配置位置の構成で相違する。
【0122】
第1の構成例では、第1の単一モード導波路3と第2の単一モード導波路4とを多モード導波路2の伝搬方向にずらした位置に配置するのに対して、第2の構成例では、第1の単一モード導波路3と第2の単一モード導波路4とを多モード導波路2の伝搬方向においてほぼ同じ位置に配置する。
【0123】
図14を用いて、第2の構成例において、モードの縮退を解いて単一モード導波路の分波する動作について説明する。
【0124】
図14(a)は、
図11(a)と同様に多モード導波路の分散曲線を示し、
図14(b)は
図11(a)と同様に第1および第2の単一モード導波路の分散曲線を示している。
図14(a),(b)の横軸の下方に示す矩形は、コアの断面形状の変化を模式的に示している。なお、
図14(b)では第1および第2の単一モード導波路のコア厚が異なる場合を示している。
【0125】
図14(c)〜(e)は、多モード導波路と第1および第2の単一モード導波路とを断熱的なモード遷移が生じる程度に近接させた場合において、多モード導波路(TE
01モードとTE
10モード)と第1および第2の単一モード導波路間のモード遷移を示している。TE
01モードは破線で示し、TE
10モードは太い実線で示し、第1および第2の単一モード導波路の基本モードはそれぞれ一点鎖線および二点鎖線で示している。
【0126】
図14(c)は、
図14(a)の多モード導波路のTE
01モード、TE
10モード、及びTE
11モードの分散曲線と第1および第2の単一モード導波路の分散曲線とを重ね合わせた状態を示している。ここでは、2本の単一モード導波路の分散曲線を一点鎖線と二点鎖線で示している。
【0127】
図14(c)において、2本の単一モード導波路の分散曲線は、点Pから多モード導波路の断面形状が細くなる方向(横軸の左方向)に向う方向において、入射端Eに近い位置では、多モード導波路の縮退が解けたTE
10モードの分散曲線(図中の太い実線)及びTE
01モードの分散曲線(図中の破線)よりも小さく設定する。
【0128】
図14(d)は、多モード導波路に対してx方向に配置した第1の単一モード導波路3の場合を示している。この単一モード導波路3の基本モードの伝搬定数は、入射端Eに近い位置では、多モード導波路のTE
10モードの伝搬定数よりも小さく、伝搬方向に徐々に大きくなって多モード導波路のTE
10モードの伝搬定数よりも大きくなるため、多モード導波路から単一モード導波路への断熱遷移によって、多モード導波路のTE
10モードが単一モード導波路3に分波される。
【0129】
図14(e)は、多モード導波路に対してy方向に配置して積層させた第2の単一モード導波路4の場合を示している。この単一モード導波路4の基本モードの伝搬定数は、入射端Eに近い位置では、多モード導波路のTE
01モードの伝搬定数よりも小さく、伝搬方向に徐々に大きくなって多モード導波路のTE
01モードの伝搬定数よりも大きくなるため、多モード導波路から単一モード導波路への断熱遷移によって、多モード導波路のTE
01モードが単一モード導波路4に分波される。
【0130】
上記動作から、多モード導波路は縮退が解けた後、TE
10モードは多モード導波路に対してx方向に配置した第1の単一モード導波路3にモード遷移し、TE
01モードは多モード導波路に対してy方向に配置した第2の単一モード導波路4にモード遷移する。ここで、TE
10モードのモード遷移とTE
01モードのモード遷移を異なる単一モード導波路に行うことによって、TE
10モードとTE
01モードを分波(分離)することができる。
【0131】
[モード合分波器の第3の構成例]
次に、本願発明のモード合分波器の第3の構成例について説明する。
図13(b)は、モード合分波器の第3の構成例の概略構成を示す図であり、コア厚方向から見た状態を示している。
【0132】
モード合分波器1Cは、モード合分波器1Aと同様に、基板(図示していない)上にコアの断面形状が矩形の多モード導波路2と第1および第2の単一モード導波路3,4とが形成されてなり、多モード導波路2と第1および第2の単一モード導波路3,4は非対称テーパー結合モード遷移型導波路を構成する。
【0133】
第1の構成例の多モード導波路2は、光ファイバ11が結合される端部から他方端に向かう伝搬方向に対して先細りであるのに対して、第3の構成例の多モード導波路5は先太りとする構成である。
【0134】
図15を用いて、第3の構成例において、モードの縮退を解いて単一モード導波路の分波する動作について説明する。
【0135】
図15(a)は
図11(a)と同様に多モード導波路の分散曲線を示し、
図15(b)は
図14(b)と同様に第1および第2の単一モード導波路の分散曲線を示している。
図15(a),(b)の横軸の下方に示す矩形は、コアの断面形状の変化を模式的に示している。
【0136】
図15(a)の多モード導波路において、点Pからコア幅Wが大きくなる方向(図中の右方向)に向かって正方形形状から先太りの長方形となるに従ってTE
01モードとTE
10モードの縮退が解け、TE
10モードの等価屈折率n
eq(図中の破線で表示)はTE
01モードの等価屈折率n
eq(図中の太い実線で表示)よりも大きくなる。
【0137】
図15(b)の第1および第2の単一モード導波路では、コア断面のコア幅Wが次第に大きくなって先太りの長方形となるに従って等価屈折率n
eqが大きくなる。
【0138】
図15(c)〜(e)は、多モード導波路と第1および第2の単一モード導波路とを断熱的なモード遷移が生じる程度に近接させた場合において、多モード導波路(TE
01モードとTE
10モード)と第1および第2の単一モード導波路間のモード遷移を示している。TE
01モードは破線で示し、TE
10モードは太い実線で示し、単一モード導波路の基本モードは一点鎖線で示している。
【0139】
図15(c)は、
図15(a)の多モード導波路のTE
01モード、TE
10モード、及びTE
11モードの分散曲線と
図15(b)の第1および第2の単一モード導波路の分散曲線とを重ね合わせた状態を示している。
図15(c)において、点Pから図中の右側は、多モード導波路の断面形状が先太りになる範囲である。
【0140】
図15(c)において、第1の単一モード導波路の分散曲線(図中の一点鎖線)は、断面形状が太くなる方向(横軸の右方向)において、はじめに多モード導波路の縮退が解けたTE
10モードの分散曲線(図中の太い実線)と点Sで伝搬定数の大小関係が入れ替わり、次に第2の単一モード導波路の分散曲線(図中の二点鎖線)はTE
01モードの分散曲線(図中の破線)と点Tで伝搬定数の大小関係が入れ替わる。
【0141】
図15(d)は、第1の単一モード導波路の基本モードの分散曲線と多モード導波路のTE
10モードの分散曲線との伝搬定数の大小関係の入れ替わりを示している。
【0142】
多モード導波路の断面形状が太くなる方向(横軸の右方向)において、第1の単一モード導波路の基本モードの分散曲線と多モード導波路のTE
10モードの分散曲線との伝搬定数の大小関係が入れ替わる点Sよりも手前(図中の点Sよりも左側)では、第1の単一モード導波路の基本モードの伝搬定数はTE
10モードの伝搬定数よりも小さいため、多モード導波路から第1の単一モード導波路の基本モードへの断熱遷移による分波は起こらない。
【0143】
次に、点Sよりも後(図中の点Sよりも右側)では、伝搬定数の大きさが入れ替わって、第1の単一モード導波路の基本モードの伝搬定数はTE
10モードの伝搬定数よりも大きくなるため、多モード導波路から第1の単一モード導波路への断熱遷移によって、多モード導波路のTE
10モードが単一モード導波路に分波される。なお、このとき多モード導波路の幅はTE
11モードが伝播し始めるカットオフ点Mよりも太くはならないものとし、また第1の単一モード導波路の幅はTE
10モードが伝播し始めるカットオフ点Lよりも太くはならないものとする。
【0144】
多モード導波路と単一モード導波路の断面形状が太くなる方向(横軸の右方向)において、第1の単一モード導波路の基本モードの分散曲線は、点SにおいてTE
10モードの分散曲線と伝搬定数の大小関係が入れ替わり、次に第2の単一モード導波路が点TにおいてTE
01モードの分散曲線と伝搬定数の大小関係が入れ替わる。
【0145】
図15(e)は、第2の単一モード導波路の基本モードの分散曲線と多モード導波路のTE
01モードの分散曲線との伝搬定数の大小関係の入れ替わりを示している。
【0146】
多モード導波路と単一モード導波路の断面形状が太くなる方向(横軸の右方向)において、単一モード導波路の基本モードの分散曲線と多モード導波路のTE
01モードの分散曲線と伝搬定数の大小関係が入れ替わる点Tよりも手前(図中の点Tよりも左側)では、第2の単一モード導波路の基本モードの伝搬定数はTE
01モードの伝搬定数よりも小さいため、多モード導波路から単一モード導波路への断熱遷移による分波は起こらない。
【0147】
次に、点Tよりも後(図中の点Tよりも右側)では、伝搬定数の大きさが入れ替わって、第2の単一モード導波路の基本モードの伝搬定数は多モード導波路のTE
01モードの伝搬定数よりも大きくなるため、多モード導波路から単一モード導波路への断熱遷移によって、TE
01モードが単一モード導波路に分波される。なお、このとき多モード導波路の幅はTE
11モードが伝播し始めるカットオフ点Mよりも太くはならないもとのし、また第2の単一モード導波路の幅はTE
10モードが伝播し始めるカットオフ点Lよりも太くはならないものとする。
【0148】
上記動作から、多モード導波路は縮退が解けた後、はじめにTE
10モードが第1の単一モード導波路の基本モードにモード遷移し、次にTE
01モードが第2の単一モード導波路の基本モードにモード遷移する。
【0149】
なお、本願発明は前記各実施の形態に限定されるものではない。本願発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本願発明の範囲から排除するものではない。