特許第6473749号(P6473749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473749
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】炭化水素混合物を分離するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/04 20060101AFI20190207BHJP
   C07C 9/06 20060101ALI20190207BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   C07C7/04
   C07C9/06
   C07C11/04
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-530929(P2016-530929)
(86)(22)【出願日】2014年10月30日
(65)【公表番号】特表2016-538290(P2016-538290A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】EP2014073284
(87)【国際公開番号】WO2015071105
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2017年10月27日
(31)【優先権主張番号】13005355.6
(32)【優先日】2013年11月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391009659
【氏名又は名称】リンデ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Linde Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】ジン トビアス
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−258119(JP,A)
【文献】 特開2006−188510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 7/04
C07C 9/06
C07C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気分解(10)により少なくとも部分的に得られた、エタンおよびエチレンを含む1つ、2つおよび3つの炭素原子を有する炭化水素を少なくとも含有する炭化水素混合物(参照数字C)を分離するための方法であり、第1の留分(参照数字C2−)が、少なくとも部分的に他の成分を分離することにより前記炭化水素混合物(C)から最初に得られ、前記留分が、前記炭化水素混合物(C)中にすでに含有されていた2つ以下の炭素原子を有する炭化水素の少なくとも50%を含有し、その後にさらなる留分(参照数字C1、C2、C2H4、C2H6)が前記第1の留分(C2−)から得られる、方法であって、
前記さらなる留分(C1、C2、C2H4、C2H6)が、リサイクルストリームとして水蒸気分解にリサイクルされるエタン(参照数字C2H6)を含み、エタンを含有する留分(参照数字S)が、前記炭化水素混合物(C)または前記第1の留分(C2−)からの前記他の成分の前記少なくとも部分的な分離と並行して、またはその下流側で、前記さらなる留分(C1、C2、C2H4、C2H6)を得る前に、前記第1の留分(C2−)中のエタン含量を25%未満に低減する量でさらに分離され、エタンを含有する前記留分(S)が、最大10モルパーセントの2つの炭素原子を有する他の炭化水素を含有することを特徴とする方法。
【請求項2】
水蒸気分解(10)により少なくとも部分的に得られた、エタンおよびエチレンを含む1つ、2つおよび3つの炭素原子を有する炭化水素を少なくとも含有する炭化水素混合物(参照数字C)を分離するための方法であり、第1の留分(参照数字C2+)が、少なくとも部分的に他の成分を分離することにより前記炭化水素混合物(C)から最初に得られ、前記留分が、前記炭化水素混合物(C)中にすでに含有されていた2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の少なくとも50%を含有し、その後にさらなる留分(参照数字C2、C2H4、C3+、C2H6)が前記第1の留分(C2+)から得られる、方法であって、
前記さらなる留分(C2、C2H4、C3+、C2H6)が、リサイクルストリームとして水蒸気分解にリサイクルされるエタン(参照数字C2H6)を含み、エタンを含有する留分(参照数字R)が、前記炭化水素混合物(C)からの前記他の成分の前記少なくとも部分的な分離と並行して、またはその下流側で、前記さらなる留分(C2、C2H4、C3+、C2H6)を得る前に、前記第1の留分(C2+)中のエタン含量を25%未満に低減する量でさらに分離され、エタンを含有する前記留分(R)が、最大10モルパーセントの2つの炭素原子を有する他の炭化水素を含有することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法であって、エタンを含有する前記留分(R、S)を分離することにより、前記第1の留分(C2+、C2−)中の前記エタン含量が、20%未満、17%未満、15%未満、13%未満、または10%未満のエタン含量まで低減されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法であって、エタンを含有する前記留分が、1.5%未満、1.0%未満、5000ppm未満、4000ppm未満または3000ppm未満のエチレンを含有することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、前記炭化水素混合物(C)から前記第1の留分(C2+)を得るために、前記炭化水素混合物(C)中にすでに含有されていた2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の少なくとも50%を前記第1の留分(C2)が含有するように、前記炭化水素混合物(C)中にすでに含有されていたメタンおよび水素の少なくとも50%を含有する留分(C1−)が分離されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記炭化水素混合物(C)から前記第1の留分(C2−)を得るために、前記炭化水素混合物(C)中にすでに含有されていた2つ以下の炭素原子を有する炭化水素の少なくとも50%を前記第1の留分(C2)が含有するように、前記炭化水素混合物(C)中にすでに含有されていた3つ以上の炭素原子を有する炭化水素の少なくとも50%を含有する留分(C3+)が分離されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法であって、前記炭化水素混合物(C)またはそれから誘導された留分(C2+)が、水素化プロセスに供されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項のプリアンブルに従う、炭化水素混合物を分離するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素を水蒸気分解するための方法および装置は知られており、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistryの「Ethylene」の項目(オンライン版、2007年4月15日現在、DOI 10.1002/14356007.a10_045.pub2)に記載されている。
【0003】
水蒸気分解法は、管状反応器において商業規模で行われており、管状反応器には、原則的に、エタンから典型的には600℃までの沸点の軽油に至る、複数種の炭化水素および炭化水素混合物(炉内装入材料(furnace charge)として知られる)が装入され得る。同一もしくは同等の分解条件(以下を参照)下で動作する反応管もしくは一連の反応管、または任意選択でさらに全体として均一な分解条件において動作する管反応器は、以下において「分解炉(cracking furnace)」と呼ばれる。したがって、本明細書において見られる使用法では、分解炉は、炉内装入材料を同一または同等の分解条件に曝露する、水蒸気分解に使用される構造ユニットである。水蒸気分解のためのシステムは、1つ以上のこの種類の分解炉を備えてもよい。
【0004】
それぞれの炉内装入材料は、分解炉内での水蒸気分解中、少なくとも部分的に反応し、最終的に粗ガスが得られる。複数の分解炉の粗ガスは組み合わされ、図1Aおよび1Bを参照してより詳しく記載されるように、一連の後処理ステップに供され得る。この種の後処理ステップは、まず、例えばクエンチ、冷却および乾燥により粗ガスを処理することを含み、最終的に分解ガスが得られる。時折、粗ガスは分解ガスとも呼ばれ、またその逆の場合もある。
【0005】
分解ガスは、様々な鎖長および構造の炭化水素を含む炭化水素混合物である。したがって、分解ガスから所望の生成物を得るためには、それを分離する必要がある。この目的のために、様々な方法が当該技術分野において知られており、例えば、上述のUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistryの「Ethylene」の項目において詳細に記載されている。また、分解ガスを処理するための方法は、例えば米国特許第5,372,009号および米国特許第5,361,589号において開示されている。
【0006】
以下にも記載されるように、水蒸気分解システムにおいて、1つ以上の分解炉の炉内装入材料は、一般に、外部から供給される1種以上の新鮮な装入材料、および分解ガスから分離された1種以上のリサイクルストリームまたはリサイクル留分で構成される。
【0007】
分解ガスの組成は、とりわけ、それぞれ使用される炉内装入材料の組成に依存する。炉内装入材料において使用される新鮮な装入材料のエタン分が濃いほど、分解ガスもまたより多くのエタンを含有する。したがって、エタン分の濃い炭化水素混合物が使用された場合、ナフサ等のエタン分の低い炭化水素混合物が使用された場合よりも、同様にはるかにより高い割合のエタンが分解ガス中に見られる。
【0008】
しかしながら、経済的な理由から、エタン分の濃い炭化水素混合物を使用することが望ましくなり得る。これらは、天然ガスの生産中に、とりわけ天然ガス液(NGL)の形態で大量に蓄積し、水蒸気分解により有用な生成物に変換され得る。水圧破砕法により提供される比較的エタン分の濃いシェールガスにも、同様のことが当てはまる。
【0009】
分解ガス中の比較的高いエタン含量は、著しい追加的な建設上の支出を伴うその後の分離の間にのみ対処され得るため、ナフサ等のエタンを含まない新鮮な装入材料を処理するためだけに設定された水蒸気分解システムは、無視できない量のエタンを含有する1種以上の新鮮な装入材料用に容易に変換することができない。
【0010】
例えば、このような状況では、複数の一連の分離ユニットを提供する必要があり、または一連の分離ユニットの容量を相当な労力をもって増加させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,372,009号明細書
【特許文献2】米国特許第5,361,589号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当然ながら、この種の問題は、ナフサ等の従来の新鮮な装入材料がよりエタン分の濃い新鮮な装入材料で完全に置き換えられる場合だけではなく、よりエタン分の濃い新鮮な装入材料が部分的にのみ使用される場合にも生じる。これは、達成され得るいかなる経済的利点をも打ち消してしまう。本発明は、この問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に関連して、上記目的は、独立請求項の特徴を有する、炭化水素混合物を分離するための方法により達成される。好ましい構成は、従属請求項および以下の明細書の主題を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】先行技術による、炭化水素生成物を生成するための方法のシーケンスを示す概略図である。
図1B】先行技術による、炭化水素生成物を生成するための方法のシーケンスを示す概略図である。
図2】本発明の実施形態による、炭化水素混合物を分離するための方法のシーケンスを示す概略図である。
図3】本発明の実施形態による、炭化水素混合物を分離するための方法のシーケンスを示す概略図である。
図4】本発明の実施形態による、炭化水素混合物を分離するための方法のシーケンスを示す概略図である。
図5】本発明の実施形態による、炭化水素混合物を分離するための方法のシーケンスを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の特徴および利点を記載する前に、基本原理および使用される用語を記載する。
【0016】
本明細書において、「炉内装入材料」という用語は、すでに上で使用されているが、1つ以上の分解炉に供給される1種以上の液体および/またはガス状のストリームを指す。この種の水蒸気分解法により得られるストリームはまた、以下に記載されるように、再び1つ以上の分解炉内に供給され、再び炉内装入材料として使用され得る。記載されるように、エタンから典型的には600℃までの沸点の軽油に至る、複数種の炭化水素および炭化水素混合物が、炉内装入材料として好適である。上述のように、本発明は、主に、比較的高いエタン含量を有する新鮮な装入材料を含む炉内装入材料の使用に関する。
【0017】
述べたように、この種の「新鮮な装入材料(fresh charge)」は、システム外部から供給され、例えば1種以上の石油留分、エタンを含む2つから4つの炭素原子を有する天然ガス成分、および/または天然ガス液から得られる。炉内装入材料はまた、1種以上の「リサイクルストリーム」、換言すれば、システム自体において生成され、再び対応する分解炉内に供給されるストリームからなってもよい。炉内装入材料はまた、1種以上の新鮮な装入材料と、1種以上のリサイクルストリームとの混合物からなってもよい。
【0018】
本明細書において見られる使用法において、「水蒸気分解システム」は、同一または異なる分解条件下で動作し、同一または異なる炉内装入材料が充填されてもよい1つ以上の分解炉を備え、得られた分解ガスを分離するように設定される「分離システム」は、典型的には一連の蒸留塔を備え、得られた炭化水素の沸点に基づいて分解ガスを複数の留分に分離するように設定される。
【0019】
当該技術分野において、この種の留分に対して、それぞれの場合において主に、または排他的に含有される炭化水素の炭素数を指定する略語が使用される。したがって、「C1留分」は、メタンを主に、または排他的に含有する留分である(但し、慣例により、時折、水素も含有し、この場合、これは「C1マイナス留分」とも呼ぶことができる)。対照的に、「C2留分」は、エタン、エチレンおよび/またはアセチレンを主に、または排他的に含有する。「C3留分」は、プロパン、プロピレン、メチルアセチレンおよび/またはプロパジエンを主に含有する。「C4留分」は、ブタン、ブテン、ブタジエンおよび/またはブチンを主に、または排他的に含有し、C4留分の源に依存して、それぞれの異性体が異なる割合で含有される可能性がある。「C5留分」、および、より高次の留分にも同様のことが当てはまる。また、方法に関して、および/または用語に関して、複数のこの種の留分が組み合わされてもよい。例えば、「C2プラス留分」は、2つ以上の炭素原子を有する炭化水素を主に、または排他的に含有し、「C2マイナス留分」は、1つまたは2つの炭素原子を有する炭化水素を主に、または排他的に含有する。
【0020】
本明細書において見られる使用法において、液体およびガス状ストリームは、1つ以上の成分が濃く、または低くてもよく、「濃い」とは、モル、重量、または体積で、少なくとも90%、95%、99%、99.5%、99.9%、99.99%または99.999%の含量を意味し得、「低い」とは、最大10%、5%、1%、0.1%、0.01%または0.001%の含量を意味し得る。「主に」という用語は、少なくとも50%、60%、70%、80%もしくは90%の含量を意味するか、または「濃い」という用語に相当する。本明細書において見られる使用法において、液体およびガス状ストリームは、1種以上の成分がさらに濃縮または枯渇していてもよく、これらの用語は、液体またはガス状ストリームが得られる出発混合物中の対応する含量に関連している。液体またはガス状ストリームは、出発混合物と比較して、対応する成分の含量の少なくとも1.1倍、1.5倍、2倍、5倍、10倍、100倍または1000倍を含有する場合、「濃縮」されており、含量の最大0.9倍、0.5倍、0.1倍、0.01倍または0.001倍を含有する場合、「枯渇」している。
【0021】
本明細書において見られる使用法において、新鮮な装入材料が「無視できない量」のエタンを含有する場合、これは例えば5%、10%、20%、30%または40%超のエタン含量を有する。原則的に、純粋なエタンでも、例えばナフサ等の他のより重い新鮮な装入材料と共に、新鮮な装入材料として使用され得る。しかしながら、典型的には、この種の新鮮な装入材料のエタン含量に対する上限値は、90%、80%、70%、60%または50%である。例えば、シェールガスおよび天然ガス液は、無視できない量のエタンを含有する新鮮な装入材料である。
【0022】
本出願において、パーセントは、体積、モルまたは質量パーセントであってもよい。圧力は、絶対圧力として示される。
【0023】
ストリームは、例えば任意の所望の成分の希釈、高濃度化、濃縮、枯渇、分離もしくは反応により、分離ステップにより、またはその他に、少なくとも1種のさらなるストリームとの組合せにより、別のストリームから「誘導」されてもよい。誘導ストリームはまた、出発ストリームを少なくとも2つのサブストリームに分割することにより形成されてもよく、その場合、各サブストリーム、またはさらには別のストリームが分離された後の残留ストリームが、この種の誘導ストリームである。
【0024】
[本発明の効果]
本発明は、水蒸気分解により少なくとも部分的に得られた炭化水素混合物を分離するための既知の方法から出発する。上述のように、この種の炭化水素混合物は、分解ガスまたは粗ガスと呼ばれ、1つ以上の処理ステップに供される。炭化水素混合物は、エタンおよびエチレンを含む、1つ、2つおよび3つの炭素原子を有する炭化水素を少なくとも含む。上述のように、この種の分解ガス中のエタンの量は、無視できない量のエタンを含有する新鮮な装入材料が使用される場合、水蒸気分解中に増加する。
【0025】
エタンを主に含有する炭化水素混合物が水蒸気分解のための炉内装入材料として使用された場合であっても、分解ガスは、3つより多い炭素原子を有する炭化水素を含有する。上述のように、ナフサ等の従来の新鮮な装入材料はまた、エタン分の濃い新鮮な装入材料と完全に置き換えられるとは限らず、したがって、この理由から、典型的には、3つより多い炭素原子を有するあまりに大量の炭化水素が分解ガス中に含有される。
【0026】
したがって、無視できない量のエタンを含有する新鮮な装入材料が水蒸気分解において使用される場合、行われる分離は、定性的には必ずしも異ならないが、定量的には(換言すれば、分離される留分のそれぞれの割合に関して)異なり得る。
【0027】
まず、少なくとも部分的に他の成分を分離することにより、炭化水素混合物から本明細書において「第1の留分」と呼ばれる留分が得られる。以下でより詳細に記載されるように、先行技術は、「脱メタン塔第1」法(”demethaniser−first”method)と「脱エタン塔第1」法(”deethaniser−first”method)とを区別している。概して言えば、これらの方法は、少なくとも部分的に他の成分を分離することにより、炭化水素混合物から、炭化水素混合物中にすでに含有されていた2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の主要部分、または炭化水素混合物中にすでに含有されていた2つ以下の炭素原子を有する炭化水素の主要部分を含有する「第1の」留分を最初に得ることを含む。
【0028】
この第1の留分は、炭化水素混合物がすでに脱メタン塔に通過された場合、換言すればより軽い成分(メタン、および該当する場合には水素)が分離された場合、炭化水素混合物中に含有される2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の主要な割合を含有する。対照的に、脱エタン塔においてこの種の炭化水素混合物から3つ以上の炭素原子を有する炭化水素が最初に分離された場合、炭化水素混合物中にすでに含有されていた2つ以下の炭素原子を有する炭化水素の主要部分を含有する第1の留分が残留する。
【0029】
したがって、この状況において分離プロセス(脱メタン塔または脱エタン塔)の下流側に存在する、本明細書において「第1の留分」と呼ばれる留分は、それぞれの場合において、元の炭化水素混合物(分解ガスまたは粗ガス)中に含有されるエタンの量の全体または主要な割合を含有するため、本発明による方法は、一般的に知られているような、脱メタン塔第1法または脱エタン塔第1法、ならびにこれらの方法の対応する変形型に好適である。繰り返し述べられているように、エタンのこの量は、無視できない量のエタンを含有する新鮮な装入材料が使用される場合、大幅に増加する。
【0030】
脱メタン塔第1法および脱エタン塔第1法の両方において、その後に、記載した第1の留分からさらなる留分が得られる。これらのさらなる留分は、様々なおよび/もしくは均一な鎖長の、ならびに/または同一の実験式および/もしくは構造式の炭化水素を含む留分であってもよい。例えば、この種のさらなる留分の典型的な例は、この種のシステムから引き出され、および/または水蒸気分解プロセス内に再び供給される(リサイクル留分)、エチレンおよび/もしくはブタジエン、ならびに/または様々なおよび/もしくは均一な鎖長の複数種の炭化水素の留分である。この種のリサイクル留分は、典型的には、分解ガスから分離されたエタンである。
【0031】
同じく繰り返し述べられているように、エタン分の低い新鮮な装入材料を処理するための水蒸気分解システムの一部として形成される分離システムは、よりエタン分の濃い新鮮な装入材料を処理する際に、容量または分離プロセスの点で、得られた炭化水素混合物(分解または粗ガス)中の比較的多量のエタンに対処するように設定されていない場合が多い。
【0032】
本発明は、元の炭化水素混合物から少なくとも部分的に他の成分を分離する間またはその後に、換言すれば第1の留分を形成している間またはその後に、特に脱メタン塔の下流側で、または脱エタン塔と並行して、もしくはその下流側で、第1の留分中のエタン含量が25%未満に低減されるように、エタンを含有する留分もまた分離されることを実現する。分離は、例えば、その後にさらなる留分が得られる前に行われてもよい。分離が、元の炭化水素混合物から少なくとも部分的に他の成分が分離されている間に、例えばこの種の分離ステップと並行して行われる場合、対応して低減されたエタン含量を有する第1の留分がすでに形成され、分離がその下流側で行われる場合、第1の留分のエタン含量が低減される。このようにして、第1の留分のエタン含量は、例えば、エタン分の低い新鮮な装入材料を使用した場合に得られたエタン含量に適合され得る。これにより、新鮮な装入材料が変更された場合、本発明により提供される手段から大きく変わらない様式で、分離システムの動作を継続することができる。
【0033】
換言すれば、エタンを含有する留分の本発明による分離を用いて、第1の留分のエタン含量は、既存の分離システムでも前記留分を処理することができるような程度まで低下される。さもなくばエタンの増加した量に対処するために必要となる、さらなる留分を得るための下流側の分離ユニットの容量増加の代わりに、本発明による方法は、比較的単純でコスト効率の良い増加したエタン含量の低減を可能とする。
【0034】
エタンと同様に、エタンを含有する留分は、第1の留分を得るために使用される方法に依存する、さらなる成分を含有し得る。このようにして、エタンを含有するこの種の留分は、例えば、脱メタン塔第1法が使用される場合、3つ以上の炭素原子を有する炭化水素を含有し得る。また、エタンを含有する留分は、主に(上で定義された意味において)エタンからなってもよい。
【0035】
いずれにしても、エタンを主に含有する留分は、上記の意味において、2つの炭素原子を有する他の炭化水素分が低く、好ましくはそれを含まない。2つの炭素原子を有するこの種の他の炭化水素は、下流側の分離ステップにおいて、第1の留分から得られる。例えば、エチレンは、最大1.5%、1.0%、5000ppm、4000ppmまたは3000ppmで含有される。
【0036】
本発明による方法は、特に、方法を実行するために使用される分離システムにおいて許容されるエタン含量を特定するステップを含む。エタン分の低い新鮮な装入材料が処理される場合に典型的に生じる値もまた、この種の特定に使用され得る。エタンを含有する留分の量は、それに従って適合される。したがって、記載されたように、第1の留分中のエタンの量は、下流側のデバイスまたは分離ユニット内の容認されるエタン含量が固守され得るような程度まで低減される。これはまた、例えば、20%、17%、15%、13%または10%未満のエタン含量である。
【0037】
エタンを主に含有する留分が分離された後の第1の留分中のエタン含量はまた、本明細書において「許容される」エタンの量が、例えば既存の構成成分の対応する水力学的制限にも依存するように、そのストリームの総量または体積を決定付ける。添付の図面に示されるような水素化デバイスもまた、限定された最大処理量を有し、したがってここでも、エタンの最大許容量(それぞれのストリームの量または体積流を決定付ける)を超過してはならない。
【0038】
記載されたように、エタンを含有する留分はまた、特に、さらなる炭化水素を、特に、微量のエチレンおよびアセチレン、ならびに潜在的に、3つ以上の炭素原子を有する他の炭化水素を含有してもよい。これらは、純粋なエタン留分またはエタン分の濃い留分がその後に存在するように、エタンを含有する留分から分離されてもよい。
【0039】
少なくとも部分的に水蒸気分解によりエタンを含有する留分を処理することが有利であり、これは、対応するエタンが、リサイクルストリームとして、使用される分解システムに通過されることを意味する。
【0040】
上で説明されたように、本発明による方法は、脱メタン塔第1法または脱エタン塔第1法に好適である。脱メタン塔第1法において、すでに説明されたように、炭化水素混合物から第1の留分を得るために、前記混合物中に含有されるメタンおよび水素の主要な割合を含有する留分が分離される(換言すれば、C1マイナス留分が分離される)。したがって、第1の留分は、炭化水素混合物中に含有される2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の主要な割合を含有する。
【0041】
本発明による方法はまた、上述の脱エタン塔第1法にも好適である。この種の方法において、上流側の粗ガス圧縮後、炭化水素混合物は、例えば−15℃から−30℃の温度に冷却される。非凝縮性成分および蓄積する凝縮物は、脱エタン塔に通され、そこでC2マイナス留分が残りのC3プラス留分から分離される。この場合、C2マイナス留分は、第1の留分と呼ばれる。記載されたように、本発明によれば、これからエタンを含有する留分が分離される。しかしながら、それはまた、脱エタン塔と並行して分離されてもよい。得られるC2マイナスストリームは、典型的にはC2水素化に供され、アセチレンが過剰の水素と反応する。本発明によれは、エタンの一部がこの時点ですでに分離されているため、これは、特にこの水素化プロセスには、その膨大な量のため、干渉することはない。
【0042】
水素化の結果としてアセチレンを含まないC2マイナスストリームは、一方で水素が、また他方で残留炭化水素(メタン、エタンおよびエチレン)が互いに実質的に分離されるまで、その後冷却されて部分的に凝縮される。メタン、エタンおよびエチレンを主に含有する得られた凝縮物は、その後メタン塔に供給され、そこでC2炭化水素がメタンから分離される。この種のメタン塔の上流側の本発明による部分的な先行するエタンの分離の結果、ここでも、対処される体積がより小さい。
【0043】
記載されたメタン塔において、液体エタン/エチレン混合物が得られ、これはC2分流器に供給され、そこでエタンがエチレンから実質的に分離される。本発明によるエタンの部分的除去により、ここでも対処される体積がより小さい。
【0044】
この種の分離システムは、少なくとも部分的に他の成分を分離することにより、炭化水素混合物から第1の留分を最初に得るように設定される、第1の分離ユニットを備え、前記留分は、炭化水素混合物中にすでに含有されていた2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の主要部分、または炭化水素混合物中にすでに含有されていた2つ以下の炭素原子を有する炭化水素の主要部分を含有する。その後第1の留分からさらなる留分を得るように設定される、さらなる分離ユニットが提供される。分離システムは、炭化水素混合物からの他の成分の少なくとも部分的な分離中、またはその後に、エタンを含有する留分を、第1の留分中のエタン含量を25%未満に低減する量で分離するように設定される、追加の分離ユニットを備える。エタンを主に含有するこの留分の特性は、上で詳細に記載されている。
【0045】
追加の分離ユニットは、好ましくは60個から120個、例えば70個から100個、特に80個から90個のトレイを備える蒸留塔の形態であってもよい。この採寸は、特に脱メタン塔第1法において好適である。有利に使用される動作圧力および動作温度は、プロセス環境およびそれぞれの分留シーケンスへの入口点に基づく。
【0046】
有利には、この種の分離システムは、上述のような方法を実行するように設定される。
【0047】
水蒸気分解システムは、エタンおよびエチレンを含む1つ、2つおよび3つの炭素原子を有する炭化水素を少なくとも含有する炭化水素混合物を調製するように設定される、少なくとも1つの分解炉を備え、有利には、上述のような少なくとも1つの分離システムを備え、同じ様式でその利点から利益を得る。
【0048】
例えば、本発明は、1種以上のエタン分の低い新鮮な装入材料のみを処理するように設定される水蒸気分解システムを、無視できない量のエタンを含有する1種以上の新鮮な装入材料を処理するように改良するための方法を含んでもよい。水蒸気分解システムは、新鮮な装入材料を使用して形成された炉内装入材料を水蒸気分解することにより、エタンおよびエチレンを含む1つ、2つおよび3つの炭素原子を有する炭化水素を少なくとも含有する炭化水素混合物を得るように設定される分離ユニットを装備する。これは、さらに、少なくとも部分的に他の成分を分離することにより、この炭化水素混合物から第1の留分を最初に得るように設定され、前記留分は、炭化水素混合物中にすでに含有されていた2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の主要部分、または炭化水素混合物中に含有される2つ以下の炭素原子を有する炭化水素の主要部分を含有する(換言すれば、脱メタン塔第1法または脱エタン第1法に対応する)。水蒸気分解システムは、さらに、その後第1の留分からさらなる留分を得るように設定されるさらなる分離ユニットを備える。改良は、炭化水素混合物からの他の成分の少なくとも部分的な分離中、またはその後に、エタンを主に含有する留分を、第1の留分中のエタン含量を25%未満に低減する量で分離するように設定される追加の分離ユニットを、さらなる分離ユニットの上流側に提供することを含む。この種の追加の分離ユニットの特徴は、すでに特定されている。
【0049】
以下、添付の図面を参照しながら、先行技術と関連させて本発明を記載する。
【0050】
図面において、対応する要素には同一の参照記号が付すが、簡潔性のため、2回以上は記載しない。
【0051】
[図面の詳細な説明]
図1Aは、先行技術による、水蒸気分解およびその後の得られた分解ガスの留分への分離によって、炭化水素生成物を生成するための方法のシーケンスを、概略的なストリームチャートの形態で示している。
【0052】
方法の中心部分は、水蒸気分解プロセス10であり、これは、1つ以上の分解炉11から13を使用して行うことができる。分解炉11の動作のみが以下に記載されるが、さらなる分解炉12および13も対応する様式で動作し得る。
【0053】
分解炉11には、炉内装入材料としてストリームAが充填され、これは、一部は、システム外部の源から提供される新鮮な装入材料であってもよく、一部は、方法自体において得られたリサイクルストリームであってもよい。他の分解炉12および13にもまた、対応するストリームが装入され得る。また、異なるストリームが異なる炉11から13に供給されてもよく、1つのストリームは、複数の分解炉の間で分割されてもよく、または、複数のサブストリームが組み合わされて合体流となってもよく、これは、例えば、分解炉11から13の1つにストリームAとして供給される。
【0054】
水蒸気分解プロセス10における水蒸気分解の結果、粗ガスストリームBが得られ、これはこの段階で時折すでに分解ガスストリームと呼ばれている。粗ガスストリームBは、処理プロセス20の一連の処理ステップ(図示せず)において処理され、例えば、油冷に供され、事前に留分され、圧縮され、さらに冷却され、乾燥される。
【0055】
それに応じて処理されたストリームB、実際の分解ガスC、ひいては本発明に関連して分離された炭化水素混合物は、その後、分離プロセス30に供される。分離プロセス30は、対応する分離システムにおいて実行される。いくつかの留分が得られ、上述のように、炭素数または主に含有されている炭化水素に従って示されている。図1Aに示される分離プロセス30は、「脱メタン塔第1」の原理により行われ、「脱エタン塔第1」の原理によるさらなる分離プロセスは、図1Bに示されている。
【0056】
分離プロセス30において、C1またはC1マイナス留分(参照記号C1で示される)が第1の分離ユニット31(脱メタン塔)で分解ガスCからガス状形態で最初に分離され、水素がこれまでにまだ除去されていない場合は水素をさらに含有し得る。この留分は、典型的には燃料ガスとして使用される。これにより、液体C2プラス留分(参照記号C2+)が残され、これは第2の分離ユニット32(脱エタン塔)に移送される。本出願において、C2プラス留分は、脱メタン塔第1法が使用される場合、「第1の」留分と呼ばれる。
【0057】
この第2の分離ユニット32において、C2プラス留分から、C2留分(参照記号C2)がガス状形態で分離される。C2プラス留分は、例えば、それに含有されるアセチレンをエチレンに変換するために、水素化処理プロセス41に供されてもよい。その後、C2留分は、C2分離ユニット35(C2分流器とも呼ばれる)において、エチレン(参照記号C2H4)およびエタン(参照記号C2H6)に分離される。このエタンは、リサイクルストリームDとして、1つ以上の分解炉11から13において再び水蒸気分解プロセス10に供されてもよい。示された例において、リサイクルストリームDおよびEは、ストリームAに加えられる。リサイクルストリームDおよびE、ならびにストリームAはまた、異なる分解炉11から13に移されてもよい。
【0058】
説明されたように、無視できない量のエタンを含有する新鮮な装入材料が使用される場合、分解ガスC中のエタンの割合が特に増加する。エタン分の低い新鮮な装入材料のみを使用するように設定された既存のシステムにおいては、説明された分離ユニットは、そのような大量のエタン用に構成されていない。
【0059】
液体C3プラス留分(参照記号C3+)は、第2の分離ユニット32において残され、第3の分離ユニット33(脱プロパン塔)に移され、そこでC3プラス留分からC3留分(参照記号C3)が分離され、例えば、C3留分中のメチルアセチレンをプロピレンに変換するために、さらなる水素化処理42に供される。その後、C3留分は、C3分離ユニット36において、プロペン(参照記号C3H6)およびプロパン(参照記号C3H8)に分離される。このプロパンは、リサイクルストリームEとして、他のストリームとは別個に、またはそれと共に、1つ以上の分解炉11から13において再び水蒸気分解プロセス10に供されてもよい。液体C4プラス留分(参照記号C4+)は、第3の分離ユニット33において残され、第4の分離ユニット34(脱ブタン塔)に移され、そこでC4留分(参照記号C4)がC4プラス留分から分離される。液体C5プラス留分(参照記号C5+)が残される。
【0060】
ガス状炉内装入材料のみが使用される場合、C3プラス、C4プラスまたはC5プラス炭化水素は生じないか、またはそれらははるかに少量で生じ、これにより最後の分離ユニットを省略することができる。
【0061】
言うまでもなく、示された留分はまた、全て、好適な後処理ステップに供されてもよい。例えば、1,3−ブタジエンは、得られる場合には、C4炭化水素ストリームから分離され得る。さらに、追加のリサイクルストリームが使用されてもよく、これは、リサイクルストリームDおよびEと同様に、水蒸気分解プロセス10に供されてもよい。
【0062】
図1Bは、先行技術による、水蒸気分解によって炭化水素を生成するための代替方法のシーケンスを、概略的なフローチャートの形態で示している。この場合も、方法の中心部分は、水蒸気分解プロセス10であり、これは、1つ以上の分解炉11から13を使用して行うことができる。図1Aの方法とは対照的に、この場合では、分解ガスCは、「脱エタン塔第1」の原理により、分離プロセス30に供される。
【0063】
この場合、分離プロセス30において、C2マイナス留分(参照記号C2−)が第1の分離ユニット37で分解ガスCからガス状形態で最初に分離され、メタン、エタン、エチレンおよびアセチレンを主に含有し、水素がこれまでにまだ除去されていない場合は水素もまたさらに含有し得る。本出願において、C2マイナス留分は、脱エタン塔第1法が使用される場合、「第1の」留分と呼ばれる。
【0064】
C2マイナス留分は、それに含有されるアセチレンをエチレンに変換するために、全体として水素化処理プロセス43に供されてもよい。その後、C2マイナス分離ユニット38においてC2マイナス留分からC1留分が分離され、上記のようにさらに使用される。これによりC2留分が残され、これは上記のようにC2分離ユニット35においてエチレンおよびエタンに分離される。この場合も、このエタンは、リサイクルストリームDとして、1つ以上の分解炉11から13において再び水蒸気分解プロセス10に供されてもよい。この場合も、液体C3プラス留分は、第1の分離ユニット37において残されてもよく、図1に関して前述されたように、分離ユニット33から36において、および任意選択で水素化処理ユニット42において処理される。
【0065】
この場合も、分解ガス中のエタンの増加した割合は問題となるが、これは、エタン分の低い新鮮な装入材料のみに対するシステムにおける説明された分離ユニットが、そのような大量のエタン用に構成されていないためである。
【0066】
特に分解ガスCの調製および/または使用される分離プロセスが異なる複数のさらなる代替方法は、例えば、上述のUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistryの「Ethylene」の項目から当業者に知られている。
【0067】
図2は、本発明の実施形態による、無視できない量のエタンを含有する新鮮な装入材料が使用される場合の、分解ガス中のエタンの増加した割合の問題を解決するための手法を示す。
【0068】
図2に示された方法は、概略的フローチャートの形態で示されており、脱メタン塔第1の原理による図1Aに示される方法に基づく。示された実施形態による方法の普遍的な適用可能性を示すために、分解ガスCを生成するために使用されるプロセスおよびデバイスは省略されている。
【0069】
しかしながら、対応する分解ガスCは、図1Aにおいて例示的に示された方法と同様にして得ることができる。特に、この種の分解ガスCは、無視できない量のエタンを含む新鮮な装入材料が炉内装入材料として少なくとも部分的に充填された1つ以上の分解炉11から13から生じる。
【0070】
説明されたように、ガス状炉内装入材料のみが使用される場合、C3プラス、C4プラスまたはC5プラス炭化水素は形成しないか、またはそれらははるかに少量で形成することが可能であり、したがって、対応する留分を分離するためのプロセスおよびデバイスは示されていない。対応する炭化水素が生じる場合には、この種のプロセスおよびデバイスもまた、図2に示される方法に提供され得る。
【0071】
分解ガスCの代わりに、一方では4つ以上の炭素原子を有する炭化水素、および他方では3つ以下の炭素原子を有する炭化水素への分離から得られる、対応する分解ガスの留分が使用され得る。
【0072】
本発明の実施形態による図2に示される方法は、特に、分離プロセス30における追加の分離ユニット51の使用において、図1Aに示される方法とは異なる。
【0073】
追加の分離ユニット51、例えば、上で特定された特徴を有する蒸留塔において、エタンを含有する液体留分が分離されるが、ここで示される種類の脱メタン塔第1法においては、より高沸点の成分、特にC3プラス、および、より高次の炭化水素がまだ含有される。含量は、上述のように、炉内装入材料に依存し、ガス状炉内装入材料のみの場合は比較的低い。エタンを主に含有するこの留分は、図2において、参照記号Rにより示される。
【0074】
エタン、および、より高沸点の成分を主に含有するこの留分Rは、2つの炭素原子を有する他の炭化水素分も低い。この留分はその後、さらなる分離ユニット52内に移送され、ここでより高沸点のC3プラス成分およびエタンが互いに分離される。エタンの一部または対応するエタン分の濃い留分の一部もまた、前述の分離ユニット35から分離ユニット52内に供給され得る(点線で示される)。その結果、エネルギーを節約することができ、いずれの場合でも利用可能である分離ユニット52の分離能力を利用することができる。このエタン留分は、分離ユニット35から、特に塔頂部において、典型的には蒸留塔の形態である分離ユニット52に放出され得る。さらに、破線矢印により示されるように、さらなるエタンがそれに供給されてもよい。
【0075】
分離ユニット52において得られたエタン留分、例えば対応する蒸留塔の塔頂生成物は、引き出されて、さらなるストリームと合わせられ、すでに示されたようにストリームDを使用して、分解プロセスに再び供給され得る。
【0076】
分離ユニット51において得られたさらなるストリームは、ここではC2として示されるが、エタンを主に含有する(またC3プラス炭化水素を含む)留分Rが分離された後に残されるC2プラス留分の一部であり、分離によって、任意の所望のエタン含量まで調節され得る。したがって、分離ユニット51の下流側に配置された分離ユニットは(図1Aに示されるように)、対応する分解システムがエタン分の低い新鮮な装入材料から(より)エタン分の濃い新鮮な装入材料に変換される際に、変更される必要がない。
【0077】
したがって、追加の分離ユニット51の機能は、従来の方法(図1Aを参照されたい)の分離ユニット32の機能に一部対応するが、分離ユニット51においては、「純粋な」C3プラス留分の代わりに、無視できない割合のエタンを含むC3プラス留分(具体的には、繰り返し言及されているエタンを含有する留分)が分離される。分離ユニット52の機能もまた、従来の方法の分離ユニット32の機能に一部対応するが、分離ユニット52においては、比較的純粋なエタンがC3プラス炭化水素から分離される点が異なる。機能的な意味では、これは、いずれの場合でも存在する脱エタン塔である。
【0078】
図3は、図2に示される方法の別の代替の図である。図3から分かるように、分離ユニット31、35、51および52は、対応するシステムにおいて蒸留塔の形態で実装される。
【0079】
図4もまた図2に対応し、炭化水素混合物または分解ガスCが「脱エタン塔第1」の原理により分離される本発明の実施形態を示す。記載されたように、これは、提供される第1の分離ユニット37において、分解ガスC中に含有される2つ以下の炭素原子を有する炭化水素の主要割合を含有する留分が、分解ガスCから形成されることを意味する。
【0080】
しかしながら、(より)エタン分の濃い新鮮な装入材料が水蒸気分解される場合、このC2マイナス留分は、前とちょうど同じ高さのエタン含量を有し、これは、従来の分離システムがエタン分の低い新鮮な装入材料を水蒸気分解することにより得られる分解ガスを分離するように設定されている場合、そのシステムにおいては許容され得ない可能性がある。
【0081】
ここでは、C3プラス炭化水素を処理するように設定された分離ユニット33のみが概略的に示されているが、また、下流側のデバイスと共に存在してもよい。
【0082】
また、したがって、追加の分離ユニット53において、第1の留分から、この場合では分離ユニット37の下流側の最初に存在するC2マイナス留分から、エタンを含有する留分Sが、具体的には、分離ユニット53の下流側の残留C2マイナス留分中のエタン含量を容認され得るレベルまで、例えば25%未満まで低減する量で、最初に分離される。これまでとは異なり、この場合、エタンを含有するこの留分は、大量のより重い成分、換言すればC3プラス炭化水素をいずれも含有しない。
【0083】
図1において前に示されたように、C2マイナス留分は、図2Bに関連して記載されたように動作する分離ユニット38に供給される。しかしながら、これにより処理される必要があるエタンの量は、上流側の分離ユニット53のために、はるかに少ない。
【0084】
水素化ユニット43は、好ましくは、追加の分離ユニット53の下流側でC2マイナスストリームを処理するだけでよいように、図4に示されるように配置される(図1と異なる配置を参照されたい)。
【0085】
分離ユニット37の下流側の追加の分離ユニット53の図4に示される配置の代替例として、これはまた、例えば、分離ユニット37と並行して、または、そこで生じるC2ストリームを処理するために、分離ユニット38の下流側に提供されてもよい。
【0086】
図5は、これらの代替例の第1の例を、具体的には分離ユニット37と並行した配置を示す。分離ユニット37は、追加の分離ユニット53と共に詳細に示されている。
【0087】
示された例において、分離ユニット37は、第1の分離デバイス371および第2の分離デバイス372(二重塔としても知られる)を備える。
【0088】
分解ガスCは、第1の分離デバイス371に供給される。第1の分離デバイス371は、液体返送ストリーム371aを使用して動作される。分解ガスCの成分の実質的に全てをまだ含有する塔底生成物は、第1の分離デバイス371の塔底部に沈殿する。これは、ストリーム371bとして引き出され、第2の分離デバイス372内に供給される。第1の分離デバイス371の塔頂部では、C2マイナスストリームである塔頂ストリーム371cが引き出されるが、そのエタン含量は、とりわけ返送ストリーム371aの量によって設定され得る。
【0089】
第2の分離デバイス372において、他の炭化水素分が低い、またはそれを含まないC3プラス留分の形態の塔底生成物372aが得られる。この第2の分離デバイス372の上部領域において、ストリーム372bが引き出され、一部は(凝縮器内での凝縮後、図示せず)液体返送ストリーム371aとして第1の分離デバイス371に移され、一部は例えば前述のような蒸留塔の形態の分離ユニット53に移送される。
【0090】
前述のように、分離ユニット53は、エタンを含有する留分Sを分離するために形成される。エタンを含有する(またおそらくはC3プラス炭化水素の残留物をさらに含有する)留分Sは、この分離ユニット53の塔底生成物である。対照的に、エタンだけでなく3つの炭素原子を有する他の炭化水素も含有するストリーム53a(分離ユニット53の塔底部に沈殿していない)は、分離ユニットの塔頂部から引き出される。したがって、このストリームは、第1の分離デバイス371の塔頂部で引き出された塔頂ストリーム371cと合わせられてもよい。
【0091】
合わせられたストリーム53aおよび371cは、図4による分離ユニット53において得られるようなC2マイナスストリームに対応する。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5