(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本明細書で使用されるとき、明示的な他の記載がない限り、値、範囲、量または百分率を表している数等、すべての数は、「約」という用語が明示的に出現していない場合であっても、「約」という単語によって前置きされている場合と同じように解釈され得る。さらに、複数形の用語および/または語句は、単数形の均等物を包摂しており、逆もまた真であることに留意すべきである。例えば、「1種」のポリマー、「1種」の架橋剤および任意の他の構成要素は、これらの構成要素の1種または複数種にも言及している。
【0015】
値の何らかの数値範囲に言及しているとき、当該数値範囲は、記載された範囲の最小値と最大値の間のありとあらゆる数および/または分数を含んでいると理解される。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「ポリマー」という用語は、オリゴマーおよびホモポリマーとコポリマーとの両方に広範に言及している。「樹脂」という用語は、「ポリマー」と互換的に使用される。
【0017】
「アクリル」および「アクリレート」という用語は、明確な他の記載がない限り、(互換的に使用することが所期の意味を変えない限り)互換的に使用され、アクリル酸、アクリル酸無水物、およびその誘導体、例えばそのC
1〜C
5アルキルエステル、低級アルキル置換アクリル酸、例えば、C
1〜C
2置換アクリル酸、例えばメタクリル酸、エタクリル酸等、およびそのC
1〜C
4アルキルエステルを含む。「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」という用語は、提示された材料、例えば(メタ)アクリレートモノマーのアクリル/アクリレート形態と、メタクリル/メタクリレート形態との両方を包含することが意図される。「(メタ)アクリルポリマー」という用語は、1種または複数種の(メタ)アクリルモノマーから調製されたポリマーを指す。
【0018】
本明細書で使用されるとき、分子量は、ポリスチレン標準品を使用してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定する。他の記載がない限り、分子量は、重量平均を基準にしている。
【0019】
「ガラス転移温度」という用語は、T. G. Fox、Bull. Am. Phys. Soc. (Ser. II)1巻、123頁(1956年)およびJ. Brandrup、E. H. Immergut、Polymer Handbook第3版、John Wiley、New York、1989年に従ってモノマー組成を基準にしてFoxの方法によって計算された、ガラス転移温度の理論値である。
【0020】
本明細書で使用される「フッ化ビニリデンポリマー」(PVDF)は、その意味の中に通常、高分子量ホモポリマー、コポリマーおよびターポリマーのいずれも含む。上述のコポリマーは、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニル、ペンタフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテルおよびフッ化ビニリデンと容易に共重合する任意の他のモノマーからなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーと共重合することができる、少なくとも75モル%および少なくとも80モル%および少なくとも85モル%等、少なくとも50モルパーセントのフッ化ビニリデンを含有するコポリマーを含む。
【0021】
PVDFは、典型的には、少なくとも100,000等の少なくとも50,000、典型的には100,000から1,000,000までの重量平均分子量を有する高分子量ポリマーである。PVDFは、Arkemaから商標KYNARで市販されている。
【0022】
(メタ)アクリルポリマー分散剤は、アルファ,ベータ−エチレン性不飽和カルボン酸を含むアルファ,ベータ−エチレン性不飽和(メタ)アクリルモノマーと、ヒドロキシル基を含有する共重合性エチレン性不飽和モノマー等の少なくとも1つの他の異なる共重合性エチレン性不飽和モノマーとの混合物を重合することによって調製される。
【0023】
一般に、アルファ,ベータ−エチレン性不飽和カルボン酸は、ポリマー生成物の2重量パーセントから50重量パーセントまで、より好ましくは2重量パーセントから20重量パーセントまでを構成しており、百分率は、ポリマー生成物の調製に使用される重合性モノマーの合計重量を基準にしている。
【0024】
アルファ,ベータ−エチレン性不飽和カルボン酸の例は、アクリル酸およびメタクリル酸等の最大10個の炭素原子を含有するアルファ,ベータ−エチレン性不飽和カルボン酸である。他の不飽和酸の例は、マレイン酸またはその無水物、フマル酸およびイタコン酸等のアルファ,ベータ−エチレン性不飽和ジカルボン酸である。さらに、これらのジカルボン酸の半エステルも利用することができる。
【0025】
上記アルファ,ベータ−エチレン性不飽和カルボン酸と異なり、かつ、上記アルファ,ベータ−エチレン性不飽和カルボン酸と共重合できる、アルファ,ベータ−エチレン性不飽和モノマーの例は、メチルメタクリレート等のアルキル基中に1個から3個までの炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルである。これらのモノマーは、合計モノマー重量を基準にして最大98重量パーセントの量、典型的には、30〜90重量パーセント等の30重量パーセントから96重量パーセントまでの量で使用することができる。
【0026】
他のアルファ,ベータ−エチレン性不飽和共重合性モノマーの例は、炭素が4〜18個のアルキル(メタ)アクリレートである。この種類の適切な不飽和モノマーの具体例には、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレートおよびドデシルアクリレートが挙げられる。これらのモノマーは、合計モノマー重量を基準にして最大70重量パーセントの量、典型的には、2重量パーセントから60重量パーセントまでの量で使用することができる。
【0027】
上記アルファ,ベータ−エチレン性不飽和カルボン酸のアルキルエステルに加えて、置換アルキルエステル、例えば、ヒドロキシエチルおよびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルエステルも、使用することができる。これらのモノマーは、合計モノマー重量を基準にして最大30重量パーセントの量、典型的には、2重量パーセントから20重量パーセントまで等の少なくとも2重量パーセントの量で使用することができる。
【0028】
ヒドロキシアルキル(Hydroxyalky)エステルは通常、バインダー組成物が、アミノプラスト、ポリカルボジイミド、ポリエポキシドおよびブロック化ポリイソシアネート等、カルボン酸基および/またはヒドロキシル基と反応性である別途添加された架橋剤、あるいは、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミドモノマーと関連しているN−アルコキシアミド基等、カルボン酸基および/もしくはヒドロキシル基またはそれら自体と反応性である自己架橋モノマーを使用する架橋剤を含有する場合に存在する。上述のモノマーの例は、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドおよびN−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミドである。さらに、ブロック化イソシアネート基を含有する架橋モノマーも、使用することができる。上述のモノマーの例には、硬化温度で非ブロック化する化合物とイソシアナト基が反応する(「ブロック化される」)、イソシアナトエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。適切なブロック化剤の例には、エプシロン−カプロラクトンおよびメチルエチルケトキシムが挙げられる。架橋モノマーは、使用される場合、典型的には、合計モノマー重量を基準にして2重量パーセントから20重量パーセントまで等の最大30重量パーセントの量で存在する。
【0029】
他のアルファ,ベータ−エチレン性不飽和モノマーの例は、スチレン、アルファ−メチルスチレン、アルファ−クロロスチレンおよびビニルトルエン等のビニル芳香族化合物、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル等の有機ニトリル、アリルクロリドおよびアリルシアニド等のアリルモノマーならびに1,3−ブタジエンおよび2−メチル−1,3−ブタジエン等のモノマー型ジエンである。これらのモノマーは、存在する場合、合計モノマー重量を基準にして2重量パーセントから20重量パーセントまで等の最大30重量パーセントの量で存在する。
【0030】
モノマーおよび相対量は、得られる(メタ)アクリルポリマーが100℃のTgまたはそれより低いTg、典型的には−50℃から+70℃までのTgを有するように選択される。
【0031】
酸基含有アクリルポリマーは通常、重合性モノマーを溶媒または溶媒の混合物中に溶解させ、変換が完了するまでフリーラジカル開始剤の存在下で重合する、従来のフリーラジカル開始方式の溶液重合技法によって調製される。
【0032】
フリーラジカル開始剤の例は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(アルファ,ガンマ−メチルバレロニトリル)、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルアセテート、ベンゾイルペルオキシド、ジtert−ブチルペルオキシドおよびtert−アミルペルオクテート等のモノマーの混合物に可溶なフリーラジカル開始剤である。
【0033】
任意選択で、アルキルメルカプタン、例えばtert−ドデシルメルカプタン、メチルエチルケトン等のケトン、クロロホルム等の塩化炭化水素等、モノマーの混合物に可溶な連鎖移動剤を、使用することができる。連鎖移動剤は、様々なコーティング用途に必要とされる粘度を有する生成物が生じるように分子量に対する制御を提供する。tert−ドデシルメルカプタンは、モノマーからポリマー生成物への高い変換率をもたらすので、好ましい。
【0034】
酸基含有アクリルポリマーを調製するためには、最初に溶媒を加熱還流し、フリーラジカル開始剤を含有する重合性モノマーの混合物を、還流している溶媒にゆっくり添加する。反応混合物は、遊離モノマー含量を1.0パーセント未満、通常0.5パーセント未満に低下させるように重合温度に維持する。
【0035】
本発明のプロセスにおける使用に関しては、上記のように調製された酸基含有アクリルポリマーは、好ましくは、10,000から100,000までおよび25,000から50,000まで等の約5000から500,000までの重量平均分子量を有するべきである。
【0036】
酸基含有アクリルポリマーは、塩基によって処理されて、その水分散性塩を形成する。適切な塩基の例は、アミン等の有機塩基、ならびに、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム、水酸化リチウムならびに炭酸リチウム等の無機塩基である。適切なアミンの例は、アンモニア、ヒドロキシアルキルアミンを含む第一級、第二級および第三級アミンを含む、水溶性アミンである。例には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンおよびモルホリンが挙げられる。酸基含有ポリマーは、理論的な完全中和に対して通常少なくとも20パーセント程度まで、さらには通常少なくとも40パーセント程度まで少なくとも部分的に中和される。
【0037】
酸基含有アクリルポリマーを、塩基によって処理した後、水性媒体中に分散させる。分散のステップは、中和されたまたは部分的に中和されたポリマーを水性媒体と合わせることによって達成される。中和および分散は、酸基含有アクリルポリマーと塩基を含有する水性媒体とを合わせることによって、1つのステップで達成することができる。ポリマー(またはその塩)を水性媒体に添加してもよく、水性媒体をポリマー(またはその塩)に添加してもよい。分散系のpHは、好ましくは、7.0から9.0までの範囲である。
【0038】
水性分散系は、透析または限外ろ過によって処理して、乳化剤または界面活性剤等の低分子量材料および過剰な塩基を除去することができる。上述の処理は、蓄電デバイス特性を改善することができる。
【0039】
中和されたまたは部分的に中和された酸基含有(メタ)アクリルポリマーは、PVDFのための分散剤として働く。典型的には、低せん断混合しながらPVDFを、(メタ)アクリルポリマー分散剤を含有する水性媒体に添加して、電極バインダーを形成する。
【0040】
PVDFおよび(メタ)アクリルポリマー分散剤に加えて、電極バインダーは、(メタ)アクリルポリマー分散剤のための別途添加された架橋剤をさらに含有し得る。架橋剤は、水を用いて溶解可能または分散可能であるべきであり、かつ、カルボン酸基およびヒドロキシル基(存在する場合、これらは(メタ)アクリルポリマーと関連している)と反応性であるべきである。適切な架橋剤は、アミノプラスト樹脂、ポリカルボジイミド、ブロック化ポリイソシアネートおよびポリエポキシドである。
【0041】
アミノプラスト樹脂の例は、メラミンまたはベンゾグアナミン等のトリアジンをホルムアルデヒドと反応させることによって形成された、アミノプラスト樹脂である。これらの反応生成物は、反応性N−メチロール基を含有する。好ましくは、これらの反応性基を、典型的には、メタノール、エタノール、ブタノール(それらの混合物を含む)によってエーテル化して、それらの反応性を和らげる。アミノプラスト樹脂の化学的調製および使用に関しては、「The Chemistry and Applications of Amino Crosslinking Agents or Aminoplast」、第5巻、第2部、21頁以下、Dr. Oldring編、John Wiley & Sons/Cita Technology Limited、London、1998年を参照されたい。これらの樹脂は、Ineosから商標RESIMENEで市販されている。
【0042】
適切なカルボジイミド架橋剤は、一般構造:RN=C=NR
1(式中、RおよびR
1は独立に、脂肪族基または脂環式基である)の炭酸の脂肪族および/または脂環式二窒素類縁体を含む。脂肪族基は、1個〜6個の炭素原子を含み得る。例には、ジブチルカルボジイミドおよびジシクロヘキシルカルボジイミドが挙げられる。オリゴマー型またはポリマー型カルボジイミド架橋剤を使用することもできる。上述の材料の例は、日清紡ケミカル株式会社から商標CARBODILITEで入手可能なものである。
【0043】
ブロック化ポリイソシアネート架橋剤は、典型的には、そのイソシアネート基がエプシロン−カプロラクトンおよびメチルエチルケトキシム等の材料と反応した(「ブロック化された」)それらのイソシアナトダイマーおよびイソシアナトトリマーを含むトルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートである。硬化温度において、ブロック化剤は、(メタ)アクリルポリマーと関連しているヒドロキシル官能基と反応性であるイソシアネート官能基を曝露することを非ブロック化する。ブロック化ポリイソシアネート架橋剤は、BayerからDESMODUR BLとして市販されている。
【0044】
ポリエポキシド架橋剤の例は、グリシジルメタクリレートを他のビニルモノマーと共重合させたものから調製したエポキシ含有(メタ)アクリルポリマー等のエポキシ含有(メタ)アクリルポリマー、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等の多価フェノールのポリグリシジルエーテル、ならびに、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の脂環式ポリエポキシドである。
【0045】
架橋モノマーと関連している架橋剤および別途添加された架橋剤を含めて、架橋剤が望ましく、それは、架橋剤が親水性のカルボン酸基および/またはヒドロキシル基と反応して、リチウムイオン二次電池において問題になるであろう水分をこれらの基が吸収するのを妨げるからである。
【0046】
上記のように、電極バインダーは典型的には、PVDFを、(メタ)アクリルポリマー分散剤および、存在する場合には、架橋剤を含有する水性媒体に添加し、安定な分散系が形成されるまで低せん断混合することによって調製される。分散系は、典型的には、30重量パーセントから80重量パーセントまで、通常40重量パーセントから70重量パーセントまでの樹脂固形分含量を有する。PVDFは通常、45重量パーセントから96重量パーセントまでの量、典型的には50重量パーセントから90重量パーセントまでの量で分散系中に存在し、(メタ)アクリルポリマー分散剤は通常、2重量パーセントから20重量パーセントまでの量、典型的には5重量パーセントから15重量パーセントまでの量で存在し、別途添加された架橋剤は通常、最大15重量パーセントの量、典型的には1重量パーセントから15重量パーセントまでの量で存在し、重量による百分率は、樹脂固形分の重量を基準にしている。
【0047】
バインダー分散系の含水量は、典型的には、分散系の合計重量を基準にして20重量パーセントから80重量パーセントまでであり、通常30重量パーセントから70重量パーセントまでである。
【0048】
任意選択で、有機希釈剤は、分散系の合計重量を基準にして10重量パーセントから30重量パーセントまで等の最大40重量パーセントの量でバインダー組成物中に存在し得る。有機希釈剤の例には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン、プロピレンカーボネート等のカーボネート、エタノールおよびブタノール等のアルコール、エチレングリコールおよびプロピレングリコール等のグリコール、ならびに、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのC
1〜C
6アルキルエーテル等のエーテルが挙げられる。
【0049】
リチウムイオン蓄電デバイスのための電極を調製するためには、リチウムイオンの吸蔵(放出)が可能である電気活性な物質、導電剤、および任意選択の成分を合わせて、スラリーを形成する。放電中は、放出として公知のプロセスにより、リチウムイオンが負極から放出され、電流を正極に流す。充電中は、吸蔵として公知のプロセスにより、リチウムイオンが正極から負極に移動し、負極においてリチウムイオンは、電極に埋め込まれた状態になる。
【0050】
電極スラリー中に含有されている活物質粒子を構成する材料は、特に限定されておらず、適切な材料が、目的の蓄電デバイスの種類に応じて選択され得る。しかしながら、本発明の正極のためのバインダー組成物を使用することによって製造された電極スラリー中に含有されている活物質粒子は、典型的には、リチウムの吸蔵/放出が可能である電気活性なリチウム化合物である。例は、LiCoO
2、LiNiO
2、LiFePO
4、LiCoPO
4、LiMnO
2、LiMn
2O
4、Li(NiMnCo)O
2、Li(NiCoAl)O
2、炭素被覆されたLiFePO
4およびこれらの混合物等、リチウム原子を含有する酸化物およびホスフェートである。
【0051】
電気活性なリチウム化合物は通常、スラリーの固形分重量を基準にして45重量パーセントから95重量パーセントまでの量、典型的には50重量パーセントから90重量パーセントまでの量でスラリー中に存在する。
【0052】
電極スラリーは、上記構成要素に加えて必要とされる他の構成要素も含有する。他の構成要素は、導電性付与剤および増粘剤ならびに任意選択で有機溶媒を含む。
【0053】
上記導電性付与剤の例には、炭素質材料が挙げられる。炭素質材料の例には、黒鉛、活性炭、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維およびフラーレンが挙げられる。これらの中でも特に、アセチレンブラックまたはファーネスブラックが使用され得る。導電性付与剤は通常、スラリーの固形分重量を基準にして2重量パーセントから20重量パーセントまでの量、典型的には5重量パーセントから10重量パーセントまでの量でスラリー中に存在する。
【0054】
電極スラリーは、カレントコレクタをコーティングするための適切なスラリー粘度をもたらしながら固形分の沈降を妨げるための増粘剤を含有する。増粘剤の例には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース化合物、上記セルロース化合物のアンモニウム塩およびアルカリ金属塩、ポリ(メタ)アクリル酸および改質ポリ(メタ)アクリル酸等のポリカルボン酸、上記ポリカルボン酸のアルカリ金属塩、ポリビニルアルコール、改質ポリビニルアルコールおよびエチレン−ビニルアルコールコポリマー等のポリビニルアルコールベースの(コ)ポリマー、(メタ)アクリル酸、マレイン酸またはフマル酸等の不飽和カルボン酸とビニルエステルとのコポリマーのけん化生成物等の水溶性ポリマー、ならびにアニオン性(メタ)アクリルポリマー増粘剤が挙げられる。
【0055】
これらの増粘剤の市販製品は、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩としての(ダイセル化学工業株式会社の)CMC1120、CMC1150、CMC2200、CMC2280およびCMC2450、ならびに、Dow製のACRYSOL ASE60および75というアニオン性(メタ)アクリルポリマー増粘剤が挙げられる。
【0056】
増粘剤の含量は通常、電極スラリーの合計固形分含量を基準にして20wt%以下、典型的には0.5wt%から10wt%まで等の0.1wt%から15wt%までである。
【0057】
水は、典型的には、スラリーの合計重量を基準にして2重量パーセントから20重量パーセントまで等の1重量パーセントから30重量パーセントまでの量で電極スラリー中に存在する。
【0058】
電極スラリーは、スラリーの安定性およびコーティング性を改善するための有機希釈剤を含有してもよい。有機希釈剤の例には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン、ならびに、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのC
1〜C
4アルキルエーテル等のエーテルが挙げられる。有機希釈剤は、存在する場合、スラリーの合計重量を基準にして最大60重量パーセントの量、典型的には2重量パーセントから50重量パーセントまでの量で存在する。
【0059】
電極スラリーは、電気活性なリチウム化合物、架橋剤を含むバインダー、導電性材料、増粘剤、必要な場合にはさらなる水、および任意選択の添加剤を一つに混合することによって製造することができる。これらの物質は、撹拌器、ビーズミルまたは高圧ホモジナイザー等の公知の手段を用いた撹拌によって一つに混合することができる。
【0060】
電極スラリーの製造のための混合および撹拌に関しては、活物質粒子の集塊がスラリー中に残留しない程度にまでこれらの構成要素を撹拌することができるミキサー、および必要かつ満足な分散条件が、選択されなければならない。分散度は、粒子用ゲージによって測定することができるが、好ましくは、混合および分散を実施して、100ミリミクロンまたはそれ超の集塊が確実に存在しなくなるようにする。この条件を満たすミキサーの例には、ボールミル、サンドミル、顔料用分散器、研削盤、超音波分散器、ホモジナイザー、遊星型ミキサーおよびHobart型ミキサーが挙げられる。
【0061】
電極は、上記スラリーを金属箔またはメッシュ等の適切なカレントコレクタの表面に塗布して、コーティングフィルムを形成し、そして、このコーティングフィルムを硬化することによって製造することができる。
【0062】
カレントコレクタは、導電性材料から作製されているものであれば、特に限定されない。リチウムイオン二次電池において、鉄、銅、アルミニウム、ニッケルまたはステンレス鋼等の金属から作製されたカレントコレクタが、使用される。典型的には、シート形態またはメッシュ形態のアルミニウムまたは銅が、使用される。
【0063】
カレントコレクタの形状および厚さは、特に限定されないが、カレントコレクタは、好ましくは、約0.001mmから0.5mmまでの厚さを有するシート状である。
【0064】
スラリーをカレントコレクタに塗布する方法は、特に限定されない。スラリーは、ドクターブレードコーティング、ディップコーティング、リバースロールコーティング、ダイレクトロールコーティング、グラビアコーティング、押出コーティング、浸漬またはブラシ塗りによって塗布することができる。スラリーの塗布量は特に限定されていないが、液体媒体の除去後に形成された活物質層の厚さは、典型的には、30μmから125μmまで等の25ミクロン(μm)から150ミクロンまでである。
【0065】
塗布後のコーティングフィルムを硬化または架橋する方法は、少なくとも150℃等の高温、例えば、225℃〜300℃等の少なくとも200℃で加熱することによって実施することができる。加熱時間は、温度にいくらか依存する。一般に、温度が高くなるほど、硬化に必要な時間が短くなる。典型的には、硬化時間は、15分から60分まで等の少なくとも15分である。硬化温度および硬化時間は、硬化フィルム中の(メタ)アクリルポリマーが架橋されるように十分であるべきであり、すなわち、共有結合が、カルボン酸基およびヒドロキシル基、ならびにアミノプラストのN−メチロール基および/もしくはN−メチロールエーテル基、または自己硬化型(メタ)アクリルポリマーの場合におけるN−アルコキシメチルアミド基等、(メタ)アクリルポリマー鎖上の共反応性基間に形成されるように十分であるべきである。硬化または架橋の程度は、典型的には、メチルエチルケトン(MEK)等の溶媒に対する抵抗性として測定される。試験は、ASTM D−540293で記述されたように実施される。1回の前進後退運動である往復摩擦(double rub)の数を報告する。この試験は、「MEK Resistance」と呼ばれることが多い。この結果、(メタ)アクリルポリマーおよび架橋剤(自己硬化型(メタ)アクリルポリマーおよび(メタ)アクリルポリマーと、別途添加された架橋剤も含める)が、バインダー組成物から単離され、フィルムとして堆積し、バインダーフィルムを加熱する温度および時間で加熱される。架橋フィルムは、MEK Resistanceについて測定される。したがって、架橋(メタ)アクリルポリマーは、少なくとも50回、典型的には少なくとも75回の往復摩擦のMEK Resistanceを有する。さらに、架橋(メタ)アクリルポリマーは、後述する電解質の溶媒に対して抵抗性の溶媒である。
【0066】
蓄電デバイスは、上記電極を使用することによって製造することができる。電池等の蓄電デバイスは、電解液が中に入っており、一般的に使用される方法に従ってセパレータ等の部品を使用することによって製造することができる。より具体的な製造方法として、負極および正極を、負極と正極の間に来るセパレータと一緒に組み立て、得られた組立体を、電池の形状に応じてロール加工または曲げ加工し、電槽に入れ、電解液を電槽に注入し、電槽を密封する。電池の形状は、コイン状、ボタン状もしくはシート状、円筒形、正方形または平坦であり得る。
【0067】
電解液は、液体であっても、ゲルであってもよく、電池として効果的に働き得る電解液は、負極活物質および正極活物質の種類に応じて、蓄電デバイスにおいて使用される公知の電解液の中から選択することができる。
【0068】
電解液は、適切な溶媒中に溶解した電解質を含有する溶液であり得る。
【0069】
上記電解質として、リチウムイオン二次電池用の従来公知のリチウム塩を使用することができる。リチウム塩の例には、LiClO
4、LiBF
4、LiPF
6、LiCF
3CO
2、LiAsF
6、LiSbF
6、LiB
10Cl
10、LiAlCl
4、LiCl、LiBr、LiB(C
2H
5)
4、LiB(C
6H
5)
4、LiCF
3SO
3、LiCH
3SO
3、LiC
4F
9SO
3、Li(CF
3SO
2)
2N、LiB
4CH
3SO
3LiおよびCF
3SO
3Liが挙げられる。
【0070】
上記電解質を溶解させるための溶媒は、特に限定されていないが、こうした溶媒の例には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネートおよびジエチルカーボネート等のカーボネート化合物、γ−ブチルラクトン等のラクトン化合物、トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフランおよび2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル化合物、ならびに、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド化合物が挙げられる。
【0071】
電解液中の電解質の濃度は、好ましくは0.5モル/Lから3.0モル/Lまで、より好ましくは0.7モル/Lから2.0モル/Lまでである。
【0072】
対電極の場合、活物質は一般に、上記の炭素質材料、または、リチウムイオンをドープすることができる他のマトリックス材料である。対電極は一般に、上記のように調製される。
【実施例】
【0073】
下記の実施例は、本発明について例示するものであり、それらの詳細に本発明を限定するものと解釈すべきでない。実施例においておよび本明細書全体にわたってすべての部および百分率は、他の記載がない限り、重量によるものである。
【0074】
下記実施例において、実施例1〜2は、様々なポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーを水性媒体中に分散させるために使用した、(メタ)アクリルポリマーの合成を示している。
【0075】
実施例3〜5は、実施例1および2の(メタ)アクリルポリマー分散剤を用いて調製したPVDFバインダー分散系を示している。
【0076】
実施例7〜13は、実施例3〜5のPVDFバインダー分散系、導電性炭素、電気活性なリチウム化合物およびアミノプラストを用いて調製される水性スラリーの調製を示している。これらの実施例も同様に、リチウムイオン電池内で正極として働くカレントコレクタへのスラリーの塗布を示している。
【0077】
実施例6(比較用)は、N−メチル−2−ピロリドン中に溶解させたPVDFの従来のバインダーを示している。
【0078】
実施例14(比較用)は、実施例6のPVDFバインダーを用いて調製されるスラリーの調製、およびリチウムイオン電池内で正極として働くカレントコレクタへのスラリーの塗布を示している。
(実施例1)
【0079】
69℃の理論的なガラス転移温度(Tg)を有する(メタ)アクリルポリマーを、下記のように調製した。
【表A】
【0080】
撹拌器、還流凝縮器、温度計、加熱マントルおよび窒素導入口を装着した適切な反応容器に、投入物1を周囲温度で添加した。次いで、還流するまで温度を上昇させ(約120℃)、還流した時点で、投入物2の開始剤プリミックスを185分にわたって添加した。投入物2の開始から5分後、投入物3を180分にわたって添加した。投入物2および3が完了した後、投入物4を添加し、続いて、還流(約120℃)状態でさらに60分維持した。次いで、投入物5を30分にわたって添加し、続いて、投入物6を添加し、還流状態でさらに90分維持した。冷却して110℃より低くした後、投入物7を10分にわたって添加し、撹拌を15分継続した後、投入物8を60分にわたって添加した。その後、反応温度を40℃に冷却した。この結果形成されたポリマー生成物は、29%の理論的な固形分を有していた。
(実施例2)
【0081】
このポリマーを、プロピレングリコールのメチルエーテルをジアセトンアルコールに置きかえ、ジメチルエタノールアミンを水酸化ナトリウムに置きかえたことを除いて、実施例1のポリマーと同じ方法によって調製した。
(実施例3)
【0082】
2リットルプラスチック収容器の中に、115.3グラムの脱イオン水、319.5グラムの実施例1の(メタ)アクリルコポリマーおよび0.77グラムのDrewplus Y−281消泡剤を入れた。得られた混合物を、適度なボルテックスを維持しながらCowlesブレードを使用して激しく撹拌した。この混合を継続する一方で、244.7グラムのポリ二フッ化ビニリデン粉末、PG−11(Arkema)を小分けにして添加した。すべてのポリ二フッ化ビニリデン粉末を添加した後、混合をさらに30分継続した。
(実施例4〜5)
【0083】
同様の手順により、下記の表1に示されたように、PVDF分散系は、(メタ)アクリルコポリマーと、PVDFと、Ineos製のResimene HM−2608メラミン型架橋剤とをそれぞれ25/70/5の重量比にした組合せ物から調製し、ここで、最初の分散が終了した時点で、Resimene HM−2608を混ぜ入れた。
【表1】
(実施例6)(比較用)
【0084】
プラスチック収容器に、溶媒グレードのN−メチル−2−ピロリドン(Ashland、570.7グラム)を添加した。Cowlesブレードによって撹拌しながら、ポリ二フッ化ビニリデン、Kynar HSV900 PVDF(Arkema、29.3グラム)を少しずつ添加した。ポリマーが完全に溶解するまで、撹拌を継続した。
(実施例7)
【0085】
小型の混合用プラスチックカップに、5.55グラムのエタノール、56グラムのDI水および0.5グラムのナトリウムカルボキシメチルセルロースを添加した。透明な溶液になるまで混合した後、2.0グラムのTimcal C−NERGY(商標)Super C65導電性炭素を添加した。このブレンドを二重非対称遠心ミキサーに入れ、2350rpmで5分間混合した。カソード活性粉末リン酸鉄リチウム(LFP)(22.6グラム)を、この混合ブレンドに添加し、得られた組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第2の混合を施した。次に、2.74グラムの実施例3のバインダーおよび0.14グラムのHM−2608を添加し、この組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第3の混合を施した。そして最後に、10グラムの2−ブトキシエタノール溶媒を添加し、この混合物を最後に、二重非対称遠心ミキサーにより、2350rpmで5分間混合した。
【0086】
ドクターブレードを使用してこの配合スラリーをドローダウン塗布することにより、湿潤フィルムを、予めきれいにしておいたアルミニウム箔上に調製した。この湿潤フィルムを、オーブン内で、少なくとも10分間190℃の最高温度に加熱した。冷却後、43ミクロンの平均乾燥フィルム厚さを、測微計による5回の測定から決定した。
【0087】
このコーティングの電池性能データを、表3に示す。
(実施例8)
【0088】
小型の混合用プラスチックカップに、5.55グラムのエタノール、56グラムのDI水および0.5グラムのナトリウムカルボキシメチルセルロースを添加した。透明な溶液になるまで混合した後、2.0グラムのSuper C65を添加した。このブレンドを二重非対称遠心ミキサーに入れ、2350rpmで5分間混合した。LFP(22.6グラム)を、この混合ブレンドに添加し、得られた組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第2の混合を施した。次に、2.74グラムの実施例3のバインダーおよび0.14グラムのHM−2608を添加し、この組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第3の混合を施した。そして最後に、10グラムの2−ブトキシエタノール溶媒を添加し、この混合物を最後に、二重非対称遠心ミキサーにより、2350rpmで5分間混合した。
【0089】
ドクターブレードを使用してこの配合スラリーをドローダウン塗布することにより、湿潤フィルムを、予めきれいにしておいたアルミニウム箔上に調製した。この湿潤フィルムを、オーブン内で、少なくとも10分間246℃の最高温度に加熱した。冷却後、43ミクロンの平均乾燥フィルム厚さを、測微計による5回の測定から決定した。
【0090】
このコーティングの電池性能データを、表3に示す。
(実施例9)
【0091】
小型の混合用プラスチックカップに、3.9グラムのエタノール、39.2グラムのDI水および0.35グラムのナトリウムカルボキシメチルセルロースを添加した。透明な溶液になるまで混合した後、1.4グラムのSuper C65を添加した。このブレンドを二重非対称遠心ミキサーに入れ、2350rpmで5分間混合した。LFP(15.88グラム)を、この混合ブレンドに添加し、得られた組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第2の混合を施した。次に、2.09グラムの実施例3のバインダーおよび上記組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第3の混合を施した。そして最後に、7グラムの2−ブトキシエタノール溶媒を添加し、この混合物を最後に、二重非対称遠心ミキサーにより、2350rpmで5分間混合した。
【0092】
ドクターブレードを使用してこの配合スラリーをドローダウン塗布することにより、湿潤フィルムを、予めきれいにしておいたアルミニウム箔上に調製した。この湿潤フィルムを、オーブン内で、少なくとも10分間190℃の最高温度に加熱した。冷却後、50ミクロンの平均乾燥フィルム厚さを、測微計による5回の測定から決定した。
【0093】
このコーティングの電池性能データを、表3に示す。
(実施例10)
【0094】
小型の混合用プラスチックカップに、3.04グラムのエタノール、30.4グラムのDI水および水酸化ナトリウムによって中和した11.2グラムのAcrysol ASE−60(Dow製のアニオン性増粘剤)を添加した。透明な溶液になるまで混合した後、1.37グラムのSuper C65を添加した。このブレンドを二重非対称遠心ミキサーに入れ、2350rpmで5分間混合した。LFP(15.5グラム)を、この混合ブレンドに添加し、得られた組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第2の混合を施した。次に、2.32グラムの実施例3のバインダーおよび0.08グラムのHM−2608を添加し、この組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第3の混合を施した。そして最後に、6.08グラムの2−ブトキシエタノール溶媒を添加し、この混合物を最後に、二重非対称遠心ミキサーにより、2350rpmで5分間混合した。
【0095】
ドクターブレードを使用してこの配合スラリーをドローダウン塗布することにより、湿潤フィルムを、予めきれいにしておいたアルミニウム箔上に調製した。この湿潤フィルムを、オーブン内で、少なくとも10分間190℃の最高温度に加熱した。冷却後、45ミクロンの平均乾燥フィルム厚さを、測微計による5回の測定から決定した。
【0096】
このコーティングの電池性能データを、表3に示す。
(実施例11)
【0097】
小型の混合用プラスチックカップに、3.9グラムのエタノール、39.2グラムのDI水および0.35グラムのナトリウムカルボキシメチルセルロースを添加した。透明な溶液になるまで混合した後、1.4グラムのSuper C65を添加した。このブレンドを二重非対称遠心ミキサーに入れ、2350rpmで5分間混合した。LFP(15.88グラム)を、この混合ブレンドに添加し、得られた組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第2の混合を施した。次に、2.2グラムの実施例4のバインダーおよび上記組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第3の混合を施した。そして最後に、7グラムの2−ブトキシエタノール溶媒を添加し、この混合物を最後に、二重非対称遠心ミキサーにより、2350rpmで5分間混合した。
【0098】
ドクターブレードを使用してこの配合スラリーをドローダウン塗布することにより、湿潤フィルムを、予めきれいにしておいたアルミニウム箔上に調製した。この湿潤フィルムを、オーブン内で、少なくとも10分間190℃の最高温度に加熱した。冷却後、55ミクロンの平均乾燥フィルム厚さを、測微計による5回の測定から決定した。
【0099】
このコーティングの電池性能データを、表3に示す。
(実施例12)
【0100】
小型の混合用プラスチックカップに、3.9グラムのエタノール、39.2グラムのDI水および0.35グラムのナトリウムカルボキシメチルセルロースを添加した。透明な溶液になるまで混合した後、1.4グラムのSuper C65を添加した。このブレンドを二重非対称遠心ミキサーに入れ、2350rpmで5分間混合した。LFP(15.88グラム)を、この混合ブレンドに添加し、得られた組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第2の混合を施した。次に、2.1グラムの実施例5のバインダーおよび上記組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第3の混合を施した。そして最後に、7グラムの2−ブトキシエタノール溶媒を添加し、この混合物を最後に、二重非対称遠心ミキサーにより、2350rpmで5分間混合した。
【0101】
ドクターブレードを使用してこの配合スラリーをドローダウン塗布することにより、湿潤フィルムを、予めきれいにしておいたアルミニウム箔上に調製した。この湿潤フィルムを、オーブン内で、少なくとも10分間190℃の最高温度に加熱した。冷却後、50ミクロンの平均乾燥フィルム厚さを、測微計による5回の測定から決定した。
【0102】
このコーティングの電池性能データを、表3に示す。
(実施例13)
【0103】
小型の混合用プラスチックカップに、2.6グラムのエタノール、26グラムのDI水および水酸化ナトリウムによって中和した9.58グラムのAcrysol ASE−60を添加した。透明な溶液になるまで混合した後、1.17グラムのSuper C65を添加した。このブレンドを二重非対称遠心ミキサーに入れ、2350rpmで5分間混合した。LFP(13.27グラム)を、この混合ブレンドに添加し、得られた組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第2の混合を施した。次に、2.11グラムの実施例5のバインダーおよび上記組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第3の混合を施した。そして最後に、5.2グラムの2−ブトキシエタノール溶媒を添加し、この混合物を最後に、二重非対称遠心ミキサーにより、2350rpmで5分間混合した。
【0104】
ドクターブレードを使用してこの配合スラリーをドローダウン塗布することにより、湿潤フィルムを、予めきれいにしておいたアルミニウム箔上に調製した。この湿潤フィルムを、オーブン内で、少なくとも10分間190℃の最高温度に加熱した。冷却後、48ミクロンの平均乾燥フィルム厚さを、測微計による5回の測定から決定した。
【0105】
このコーティングの電池性能データを、表3に示す。
(実施例14)
【0106】
プラスチックカップに、NMP(15.7グラム)、実施例6のバインダー溶液(27.66グラム)およびSuper C65(1.35グラム)を添加した。このブレンドを二重非対称遠心ミキサーに入れ、2350rpmで5分間混合した。LFP(15.3グラム)を、この混合ブレンドに添加し、得られた組合せ物に、二重非対称遠心ミキサー内で、2350rpmで5分間第2の混合を施して、配合スラリーを生成した。
【0107】
ドクターブレードを使用してこの配合スラリーをドローダウン塗布することにより、湿潤フィルムを、予めきれいにしておいたアルミニウム箔上に調製した。この湿潤フィルムを、オーブン内で、少なくとも10分間120℃の最高温度に加熱した。冷却後、44ミクロンの平均乾燥フィルム厚さを、測微計による5回の測定から決定した。
【0108】
このコーティングの電池性能データを、表3に示す。
【0109】
下記の表2では、実施例7〜14の組成物を要約している。
【表2】
【0110】
表3
実施例から調製されたコイン型セル電池の放電データ。表3は、様々な放電Cレート(1時間当たり)におけるセルの比容量(1グラム当たりのミリアンペア時)を示している。
【表3】
【0111】
上記の実施例で使用した二重非対称遠心ミキサーは、Flack Tec, Inc.製のモデルDAC400.1 FVZまたはThinky USA, Inc.製のモデルARM−310であった。電気活性なリチウム化合物は、Phostech Lithium, Inc.製のリン酸鉄リチウムLife Power P2ロット番号1110GY195であった。Targray製のアルミニウム箔合金1085を、アセトンによってきれいにした後、スラリーを塗布した。調節可能なドクターブレードを89mm/秒の速度で使用する大型の自動式フィルムコーター(MTI Corporation製のMSK−AFA−II)を使用して、配合品をアルミニウム箔上に湿潤フィルムとして塗布した。湿潤しているコーティングされた箔を、電池性能用のオーブンに入れた。
【0112】
次いで、乾燥しているコーティングされた箔に、ロールカレンダープレス(MTI Corporation)を通過させて、25%〜30%の圧縮を達成した。真空乾燥後、アノードとしてのリチウム金属および電解質としてのエチレンカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジメチルカーボネート溶媒中1モル濃度のLiPF6を使用して、乾燥しているコーティングされた箔1つ当たり2つのコイン型半セル電池を組み立てた。次いで、コイン型セル電池を、4.1ボルト〜2.5ボルトの電位窓を使用する電池試験器(Arbin Instruments)により、0.2C、0.4C、0.8C、1.6C、3.2Cおよび6.4Cの充電/放電速度に相当する電流のそれぞれにおいて5サイクルにわたって試験し、続いて、1Cレートに相当する電流における50サイクルにわたって試験した。ミリアンペア時におけるリン酸鉄リチウム1グラム当たりの放電容量を、各Cレートの第1の5サイクルの平均から計算した。所与の乾燥しているコーティングされた箔に関して、2つの複製セルのうちで容量が高い方のコイン型半セルからの放電容量平均を、表3に報告している。容量維持率を、1Cにおける第1の充電−放電サイクル後および1Cにおける最後の充電−放電サイクル後の放電容量の比率から計算し、式:100×第1のサイクルの容量/最後のサイクルの容量に従って百分率として報告した。
【0113】
なお、「Cレート」は、時間単位でのCレート値の逆数に等しい、ある期間に一定の電気容量を有するセルを完全に放電するのに必要な電流値を指す。例えば、0.2Cにおける放電容量は、5時間で電池を完全に放電するのに必要な電流値での、リン酸鉄リチウム1グラム当たりのミリアンペア時単位での乾燥しているコーティングされたフィルムの容量を指す。同様に、1Cにおける放電容量は、1時間で電池を完全に放電するのに必要な電流値での、リン酸鉄リチウム1グラム当たりのミリアンペア時単位での乾燥しているコーティングされたフィルムの容量を指す。
【0114】
実施例からのいくつかの観察結果:
【0115】
1. (メタ)アクリルバインダーと一緒に水性媒体中に分散させたPVDFバインダー(実施例7〜13)は、対照と比較して優位にある良好な性能をもたらしている。実施例14は、バインダーがN−メチル−2−ピロリドン中に溶解させた電池グレードPVDFである、標準対照である。
【0116】
2. 硬化温度が高くなるほど、性能が向上していく。実施例8と実施例7とを比較されたい。
【0117】
3. 実施例10および11は、低分子量PVDFと高分子量PVDFとが、等価な性能をもたらすことを示している。
【0118】
本発明の特定の実施形態について、説明を目的として上述してきたが、添付の特許請求の範囲において規定された本発明から逸脱することなく、本発明の詳細に関する数多くの変更がなされ得ることは、当業者には明白である。
【0119】
本発明の様々な実施形態について、「含む(comprising)」の観点から記述してきたが、から本質的になる実施形態またはからなる実施形態もまた、本発明の範囲に含まれる。