特許第6473814号(P6473814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6473814銀ナノワイヤーベースの透明導電性フィルム形成用のヨウ化物添加剤入り短鎖フッ素系界面活性剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473814
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】銀ナノワイヤーベースの透明導電性フィルム形成用のヨウ化物添加剤入り短鎖フッ素系界面活性剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20190207BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20190207BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20190207BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20190207BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   C09K3/00 Z
   C09D5/24
   C09D7/61
   C09D11/52
   C09D201/00
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-523449(P2017-523449)
(86)(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公表番号】特表2018-501328(P2018-501328A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】US2015059240
(87)【国際公開番号】WO2016073717
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2017年6月19日
(31)【優先権主張番号】62/075,733
(32)【優先日】2014年11月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】317001367
【氏名又は名称】カンブリオス フィルム ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ラモス テレサ
(72)【発明者】
【氏名】ツァン リン
(72)【発明者】
【氏名】ペイ リリィ
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−513534(JP,A)
【文献】 特表2014−511551(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/129604(WO,A1)
【文献】 特開2003−177494(JP,A)
【文献】 特表2012−526359(JP,A)
【文献】 特開2003−100143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C09D
B05D
H01B
B01F 17/
B01D 19/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)化学式(I):
【化1】

で表される短鎖フッ素系界面活性剤と、
(2)前記短鎖フッ素系界面活性剤の3質量%未満の量の、化学式(II)で表される不純物と、
【化2】

(3)前記短鎖フッ素系界面活性剤の0.5−2.5質量%の量のヨウ化物を与えるヨウ化物添加剤と、を備える、精製された界面活性剤配合物であって、
mは0,1,2,3,4または5であり;
nは1,2,3または4であり;
Xは−O−;−S−;または直接結合であり;
Yは水素、−OH、またはフルオロであり;
Zは−CH,−CHF,−CHFまたは−CFであり;
はLi,Na,K,HまたはNHであり;かつ、
それぞれR,R,R,RおよびRは、同じまたは異なる、独立したフルオロまたは水素を示す、
精製された界面活性剤配合物。
【請求項2】
請求項1において、前記化学式(I)の前記フッ素系界面活性剤が6個以下のフルオロベアリング炭素を有する、
精製された界面活性剤配合物。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項において、Xが直接結合である、
精製された界面活性剤配合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、Yが−OHである、
精製された界面活性剤配合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、Zが−CFである、
精製された界面活性剤配合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、化学式(II)の不純物が前記フッ素系界面活性剤の0.4質量%よりも少ない、
精製された界面活性剤配合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、前記フッ素系界面活性剤配合物中のヨウ化物が前記フッ素系界面活性剤の0.6−2.4質量%である、
精製された界面活性剤配合物。
【請求項8】
(1)a)複数の銀ナノワイヤーと;
b)粘度調整剤と;
c)任意の分散剤と;および
d)水を含む液体キャリアと;
を含むナノワイヤー含有配合物を含む第1の容器と、
(2)請求項1〜7のいずれか一項にかかる精製された界面活性剤配合物を含む第2の容器と、
を備える銀ナノワイヤーコーティング用の2パートのキットであって、
前記ナノワイヤー含有配合物は1質量%の前記銀ナノワイヤーに対して0.005−0.02質量%の銀イオンを備え;かつ、
前記精製された界面活性剤配合物は、前記ナノワイヤー含有配合物における銀イオンに対して略等モル量のヨウ化物イオンを備える、
2パートのキット。
【請求項9】
請求項8において、ヨウ化物イオンと銀イオンのモル比が0.98:1−1.3:1である、2パートのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年11月5日に出願され、その全体が本明細書に参照として組み込まれる米国仮出願62/075,733号の、35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本開示は、フッ素界面活性剤を用いた、光安定性透明導電性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
透明導電性フィルムは、タッチスクリーンや液晶ディスプレイ(LCD)などの平面パネルディスプレイ装置に不可欠な部品である。溶液ベースの方法を用いることで、強固な透明導電性フィルムを、広範囲のフレキシブルな基板上に作製することができる。
【0004】
コーティングする組成物またはインクは、導電性ナノ構造体(たとえば、銀ナノワイヤー)を備え、硬い基板からフレキシブルな基板まで幅広い範囲のものの上に塗布されることができ、透明で導電性を有する薄いフィルムやコーティングを形成する。適切なパターンとして、ナノワイヤーベースの透明導電体は、液晶ディスプレイ(LCD)などの平面パネル型エレクトロクロミックディスプレイ(flat panel electrochromic displays)内の透明電極または薄膜トランジスタ、タッチパネル、プラズマディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)などのエレクトロルミネッセンス素子(electroluminescent devices)、薄膜光電池(PV)などとして用いられる。ナノワイヤーベースの透明導電体による他の応用例は、帯電防止層や電磁波遮蔽層を含む。連続ロールツーロール方式のような従来のプリント方法は、製造コストのさらなる削減や処理量の向上のために導電性ナノ構造体のコーティングに採用され得る。
【0005】
共に係属中、共に所有する、米国特許第8048333号明細書、第8709125号明細書、第8760606号明細書、第8632700号明細書、第8815126号明細書、および米国特許出願公開第2010/0307792号明細書、第2013/0001478号明細書には、導電性ナノワイヤー(たとえば、銀ナノワイヤー)を合成して、多数のコーティング方法やプリント方法によって導電性フィルムを調製するための様々なアプローチが記載されている。これらの文書は、その全体が本明細書に参照として組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コーティング方法に応じて、ナノワイヤーインク組成物は、インクの安定性や水和性、フィルム欠陥の抑制といった特定の要求に対処するように、しばしば配合される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で提供されるものは、コーティング組成物(インク)であって、導電性ナノ構造体(銀ナノワイヤーを含む)と短鎖フッ素系界面活性剤を備える。
【0008】
一つの実施形態は、
(1)化学式(I):
【化1】

で表される短鎖フッ素系界面活性剤と、
(2)前記短鎖フッ素系界面活性剤の3質量%未満の量の、化学式(II)で表される不純物と、
【化2】
(3)前記短鎖フッ素系界面活性剤の0.5−2.5%の量のヨウ化物を与えるヨウ化物添加剤と、を備える、精製された界面活性剤配合物であって、
mは0,1,2,3,4または5であり;
nは1,2,3または4であり;
Xは−O−;−S−;または直接結合であり;
Yは水素、−OH、またはフルオロであり;
Zは−CH,−CHF,−CHFまたは−CFであり;
はLi,Na,K,HまたはNHであり;かつ、
それぞれR,R,R,RおよびRは、同じまたは異なる、独立したフルオロまたは水素を示す、精製された界面活性剤配合物を提供する。
【0009】
さらなる実施形態は、(1)複数の銀ナノワイヤーと;粘性調整剤と;任意の分散剤と;水を含む液体キャリアと;を含むナノワイヤー配合物を含む第1の容器と、(2)本明細書に記載の精製された界面活性剤配合物を含む第2の容器と、を備える2パートのキットであって、そのうち、ナノワイヤー含有配合物は1質量%の銀ナノワイヤーに対して0.005−0.02質量%の量の銀イオンを備え;かつ、精製された界面活性剤配合物は、ナノワイヤー含有配合物における銀イオンに対して略等モル量のヨウ化物イオンを備える、2パートのキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、様々な信頼性試験条件下の、導電性フィルムのシート抵抗の時間変化を示す。
図2図2は、促進光(accelerated light)条件下の、導電性フィルムのシート抵抗の時間変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
導電性ナノ構造体(銀ナノワイヤーを含む)を塗布するための水溶コーティング組成物は本明細書に記載される。このコーティング組成物(または「インク」)は、そのコーティング組成物の分散・安定化・湿潤を促進するフッ素系界面活性剤をさらに含む。
【0012】
フッ素系界面活性剤は、パーフルオロ界面活性剤としても知られるが、典型的に炭化水素鎖の水素を置換するフルオロ置換基(「パーフルオロ」)を、多数含む界面活性剤である。ZONYL(登録商標)FSA(DuPontによる)を含む特定のフッ素系界面活性剤は、導電性ナノ構造体のコーティング組成物として使われることが知られている。たとえば米国特許第8632700号明細書を参照されたい。ところが、既知のフッ素系界面活性剤は一般的に長炭素鎖(すなわち、少なくとも7個か8個のフルオロベアリング炭素(fluoro-bearing carbons))をもつ。これらの長鎖フッ素系界面活性剤は、特別に長い半減期をもつ。従って、これらの物質の生体蓄積や環境残留性といった大きな懸念がある。
【0013】
本開示は、従って、技術的に現在使われている長鎖フッ素系界面活性剤に比べ、格段に環境影響が低い短鎖フッ素系界面活性剤を指向するものである。
【0014】
銀ナノワイヤーとフッ素系界面活性剤が個別に保存され、コーティングする少し前に限って混合させられる場合、優れた保存安定性が達成されることを見いだした。従って、この短鎖フッ素系界面活性剤は、界面活性剤配合物に配合され、この界面活性剤配合物は、塗布できる状態の最終コーティング組成物を形成するためにナノワイヤー含有配合物に加えられることになる。
【0015】
加えて、この短鎖フッ素系界面活性剤は、導電性ナノ構造体を不動態化させうる不純物を最小限に抑えるために精製される。特に、短鎖フッ素系界面活性剤を調整するための特定の反応物は、導電性ナノ構造体(たとえば銀ナノワイヤー)と親和性があるためにワイヤー間の接触を妨げて導電性を下げる不動態層を形成する官能基(たとえば、−SH)を含む。
【0016】
さらに、フッ素系界面活性剤配合物は、光安定な導電性フィルムを形成するのに有効な量のヨウ化物添加剤をさらに備える。いずれの理論にも結びつけられてはいないものの、微量の銀イオン(Ag)は、ナノワイヤー配合物中の銀ナノワイヤーの量に比例するとわかっており、イオンマイグレーションのために導電性フィルム内の銀ナノワイヤーの劣化を最終的に引き起こすおそれがあると信じられている。ヨウ化物添加剤は効果的に銀イオンと結合してヨウ化銀(AgI)を形成し、ゆえに銀イオンを固定すると信じられている。
【0017】
一つの実施形態はこのように、
(1)化学式(I):
【化3】
で表される短鎖フッ素系界面活性剤と、
(2)前記短鎖フッ素系界面活性剤の3質量%未満の量の、化学式(II)で表される不純物と、
【化4】

(3)前記短鎖フッ素系界面活性剤の0.5−2.5%の量のヨウ化物を与えるヨウ化物添加剤と、を備える、精製された界面活性剤配合物であって、
mは0,1,2,3,4,または5であり;
nは1,2,3,または4であり;
Xは−O−;−S−;または直接結合であり;
Yは水素、−OHまたはフルオロであり;
Zは−CH,−CHF,−CHFまたは−CFであり;
はLi,Na,K,HまたはNHであり;かつ、
それぞれR,R,R,RおよびRは、同じまたは異なる、独立したフルオロまたは水素を示す、精製された界面活性剤配合物を指向する。
【0018】
さらに特定の実施形態においては、化学式(I)のフッ素系界面活性剤において6個以下のフルオロベアリング炭素(fluoro-bearing carbons)を有する。「フルオロベアリング炭素」とは、少なくとも1つのフルオロで置換された炭素原子を意味する。
【0019】
好ましい実施形態においては、4個か5個か6個のフルオロベアリング炭素を有する。
【0020】
好ましい実施形態においては、Xは直接結合である。
【0021】
好ましい実施形態においては、Yは−OHである。
【0022】
好ましい実施形態においては、Zは−CFである。
【0024】
いくつかの実施形態においては、化学式(II)の不純物はチオール含有アルカン酸(たとえば、RとRが水素で、MがH)である。アルカン酸の長さはnに依存する。
【0025】
好ましい実施形態においては、短鎖フッ素系界面活性剤は6個のフルオロベアリング炭素を有し、Hexafor612N(Maflon, Bergamo Italy)の商標名にて市販で入手できる。
【0026】
市販用の供給源からのHexafor612Nは一般的に、ロットによるが、8000−20000ppmのチオール含有不純物を、25%界面活性剤溶液に含む。
【0027】
特に、チオール含有不純物は3−メルカプトカルボン酸、すなわち化学式(II)においてnが2、MがH、RとRが水素のものである。
【0028】
フッ素系界面活性剤を精製する目的で、化学式(II)の不純物は、まずフッ素系界面活性剤を不溶性の酸形態(MはH)に変換し、それからフッ素系界面活性剤の酸形態を不純物から分離することで、取り除かれてもよい。この酸形態は、それから、適切な塩の形(たとえば、MはLi)に変換して戻す。この精製の詳細は、実施例1でさらに記述している。
【0029】
このようにして、精製されたフッ素系界面活性剤配合物は、フッ素系界面活性剤配合物の3質量%未満の、化学式(II)の不純物をもつ。
【0030】
好ましい実施形態においては、チオール含有の不純物は、フッ素系界面活性剤の略2質量%未満、または略1.5質量%未満、または略1質量%未満、または略0.5質量%未満、または略0.2質量%未満である。
【0031】
好ましい実施形態においては、チオール含有の不純物は、フッ素系界面活性剤の略0.4質量%未満である。このため、25%界面活性剤溶液において、不純物は1000ppm未満である。
【0032】
本明細書において「略」とは、具体的な数値から±25%までの生じうる誤差を示す。たとえば「略2.5%」は、2.5%から3.125%(すなわち2.5%×1.25)の任意の値、または2.5%から1.875%(すなわち2.5%×0.75)の任意の値を含んでよい。さらに「略等モル量」は、1:1のモル比を元に、0.75:1から1.25:1のモル比までの任意の値を含んでよい。
【0033】
フッ素系界面活性剤配合物はさらに、短鎖フッ素系界面活性剤の0.5−2.5%の量のヨウ化物を与えるヨウ化物添加剤を備える。適したヨウ化物添加剤は、好ましくは、水中で少なくとも部分的に自由ヨウ化物イオンに解離できる、水溶性のヨウ化物塩である。この例は、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化アンモニウム(NHI)などを含む。水中で自由に解離するヨウ化物塩(たとえばLiI)は好ましいが、ヨウ化銀の生成は他の多くのヨウ化物塩に比べ熱力学的に有利なため、水中で完全に解離することは、厳密には必要であるというわけではない。
【0034】
好ましい実施形態においては、フッ素系界面活性剤配合物におけるヨウ化物の量は、フッ素系界面活性剤の0.6−2.4質量%である。従って、25質量%のフッ素系界面活性剤をもつフッ素系界面活性剤配合物において、ヨウ化物の濃度は1500−6000ppmである。

【0035】
様々な実施形態において、ヨウ化物の量は、フッ素系界面活性剤の0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、1質量%、1.1質量%、1.2質量%、1.3質量%、1.4質量%、1.5質量%、1.6質量%、1.7質量%、1.8質量%、1.9質量%、2.0質量%、2.1質量%、2.2質量%、2.3質量%、2.4質量%、または2.5質量%とし得る。
【0036】
フッ素系界面活性剤配合物におけるヨウ化物の量は、ナノワイヤー配合物における銀イオンの量に相当するように調節される。一般的に言えば、ヨウ化物の量は銀イオンと略等モル量とするべきである。ヨウ化物はこのようにして、ヨウ化銀を形成するために銀イオンと結合するようにされ、それによってイオンマイグレーションによる銀の劣化を抑える。
【0037】
ここに実施例として示すように、コーティング溶液内のヨウ化物の存在が、長期間のフィルムの信頼性をはっきりと向上させる(たとえば、長時間の光暴露後においてシート抵抗のドリフトがない、またはほとんどない)。さらに、ヨウ化物とナノワイヤーがコーティング前に短時間で(たとえば、2時間以内で)混合されるときは、これまで想定していなかったメリットがある。コーティングプロセス中において隔離されていない銀イオンの存在が、ほとんど欠陥(たとえば、気泡)のないフィルムを作成できることを発見した。従って、銀イオンはワイヤーの分散を(たとえば、イオン反発によって)促進し、それによってコーティングの質を上げると推測できる。
【0038】
さらに他の実施形態は、それゆえ、
(1)a.複数の銀ナノワイヤーと;
b.粘度調整剤と;
c.任意の分散剤と;
d.水を含む液体キャリアと;
を含むナノワイヤー配合物を含む第1の容器と、
(2)上述の、精製された界面活性剤配合物を含む第2の容器と、
を備える銀ナノワイヤーコーティング用の2パートのキットであって、
そのうち、
ナノワイヤー含有配合物は1質量%の前記銀ナノワイヤーに対して0.005−0.02質量%の銀イオンを備え;
前記精製された界面活性剤配合物は、前記ナノワイヤー含有配合物における銀イオンに対して略等モル量のヨウ化物イオンを備える、2パートのキットを開示する。
【0039】
銀ナノワイヤーは、好ましくは直径が30nm以下であって、5μmより長い。様々な実施形態においては、銀ナノワイヤーの平均直径は略21−23nmの間で、標準偏差は3−4nmの範囲である。他の実施形態においては、銀ナノワイヤーの平均長さは略12−20μmであって、標準偏差は略6−8μmである。銀ナノワイヤーは、同時係属中で共有されており、その全体が本明細書に参照として組み込まれる米国特許出願公開第2015/0290715号明細書に記載の方法で調製されてもよい。
【0040】
様々な実施形態においては、粘度調整剤は、親水性ポリマーであってもよく、たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、そしてヒドロキシエチルセルロースが含まれる。
【0041】
様々な実施形態においては、銀ナノワイヤーと粘度調整剤の比は0.00626から5の範囲内である。好ましい実施形態においては、その比は0.1−1の範囲内である。さらに好ましい実施形態においては、その比は0.4−0.5の範囲内である。
【0042】
様々な実施形態においては、ナノワイヤー配合物は任意で分散剤を含む。分散剤は第2の容器内の精製された界面活性剤と同じでもよいし、異なっていてもよい。好ましくは、最終コーティング組成物におけるヨウ化物の供給源が、量を制御されたフッ素系界面活性剤配合物からのみのものと確実にするため、分散剤はヨウ化物を含むべきではない。ナノワイヤー配合物の分散剤の例は、FS-3100(Dupont)の商標名にて売られている界面活性剤であってもよい。
【0043】
液体キャリアは水を含む。様々な実施形態においては、液体キャリアはさらに一つ、あるいは複数の水混和性共溶媒を含んでもよく、共溶媒はイソプロパノール、アセトン、ジアセトンアルコールなどを含む。
【0044】
ナノワイヤー配合物は濃縮されていても(すなわち「インク濃縮物」であっても)よく、フッ素系界面活性剤配合物と混合させる前に、インク濃縮物が希釈されていてもよく、このプロセスは、インク濃縮物をさらに希釈する。
【0045】
様々な実施形態においては、インク濃縮物の希釈およびフッ素系界面活性剤との組み合わせた後、最終コーティング組成物は、0.05質量%から1.4質量%までの金属ナノワイヤーと、0.0025質量%から0.1質量%までのフッ素系界面活性剤と、0.02質量%から4質量%までの粘度調整剤と、94.5質量%から99.0質量%までの液体キャリアと、を含む。
【0046】
最終コーティング組成物は、スロットダイ、スピンコーティング、あるいはロールツーロールといったコーティング方法によって基板に塗布されるようにしてもよい。「基板」は非導電性材料を表し、その上に金属ナノ構造体が塗布あるいは薄層化される。基板は、硬くても、フレキシブルであってもよい。基板は、透明であっても、不透明であってもよい。適した硬い基板は、たとえば、ガラス、ポリカーボネート類、アクリル類などを含む。適したフレキシブルの基板は以下のものを含むが、これらに限定されるものではない:ポリエステル類(たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルナフタレート、およびポリカーボネート)、ポリオレフィン類(たとえば、直鎖、分枝、および環状ポリオレフィン)、ポリビニル類(たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン、ポリアクリル酸塩類など)セルロースエステル基材(たとえば、セルローストリアセテート、セルロースアセテート)、ポリエーテルスルフォンなどのポリスルフォン類、ポリイミド類、シリコーン類、およびその他従来の高分子フィルム。適した基板のさらなる例は、たとえば、米国特許第6975067号明細書で見出すことができる。
【0047】
コーティングの後で、水や任意の共溶媒を含む揮発性組成物は、蒸発や加熱によって除かれる。銀ナノワイヤー、粘度調整剤、および短鎖フッ素系界面活性剤を含む不揮発性組成物は、ナノワイヤー層を形成し、層内で銀ナノワイヤーは導電性ネットワークを形成する。ナノワイヤー層はさらに光学積層体に加工されてもよく、光学積層体は保護膜層にオーバーコートされたものや、光学透明接着剤(OCA)によって他の層と結合されたものを含む。
【0048】
特定の実施形態においては、保護膜は下層の銀ナノワイヤーを安定化させる添加剤を含む。特定の実施形態においては、その全体が本明細書に参照として組み込まれる米国特許出願公開第2015/0270024号明細書に記載されている通り、添加剤は遷移金属錯体(たとえばFe(acac)3)である。
【0049】
典型的には、透明導電体(すなわち、非導電性基板上の導電性ネットワーク)の光の透過性や透明さは、光透過率やヘイズ含むパラメータによって定量的に定義することができる。「光透過率」は、媒体を透過した入射光の割合をいう。様々な実施形態においては、導電層の光透過率は少なくとも80%で、98%ほどまで高くてもよい。粘着層、反射防止層、あるいは防眩層といった性能向上層は、透明導電体の全体としての光透過率の減少にさらに寄与することがある。様々な実施形態においては、透明導電体の光透過率(T%)は少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、あるいは少なくとも80%とすることができ、また少なくとも91%から92%、あるいは少なくとも95%ほどまで高くてもよい。
【0050】
ヘイズ(H%)は光拡散の尺度である。これは、透過中に入射光から分かれて分散した光の量の割合をいう。主に媒体の性質である光透過率と異なり、ヘイズはしばしば作製上の懸念であって、典型的には表面粗さや埋め込まれた粒子、あるいは媒体内の組成の不均一性に起因する。典型的には、導電性フィルムのヘイズはナノ構造体の直径に重要な影響を受けうる。より大きな直径のナノ構造体(たとえば、太めのナノワイヤー)は、典型的には、より高いヘイズと関連する。様々な実施形態においては、透明導電体のヘイズは10%以下、8%以下、もしくは5%以下であって、2%以下、1%以下、あるいは0.5%以下、または0.25%以下まで低くてもよい。
【0051】
透明導電体や、それらの電気的・光学的性質、そしてパターン方法は以下の非限定の例によって、さらに詳細に記載される。
【実施例】
【0052】
[実施例1]
[短鎖フッ素系界面活性剤の精製]
特定のフッ素系界面活性剤内に存在する不純物は、コーティング性能への悪い影響をもちうる。市販の短鎖フッ素系界面活性剤(Hexafor612N)内の知られている不純物の一つは、未反応の3−メルカプトプロピオン酸(3-mercaptopropionic acid)で、これは銀ナノワイヤーを不動態化する可能性があり、それゆえワイヤーとワイヤーの接触を低下させることでネットワークを非伝導性にする。流入する原料を精製することは、ナノワイヤーネットワーク生成に否定的に作用する全ての成分が、最終コーティング組成物を配合するより前に除かれることを確実にすることができる。これはまた、全てのコーティング成分の、ロット毎の一貫性についての信頼性を確かにするものでもある。
【0053】
Hexafor612Nは、酢酸塩を酸の形に変換することで精製された。強酸溶液は、はじめに、70%硝酸(EMD, Darmstadt Germany)110gを容器中の水12kgに加えることで調製した。その後、2kgのHexafor612N(Maflon, Bergamo Italy)が、脱イオン水(DI water)と酸を含んだ容器に50ml/分の割合で加えられ、140rpmで撹拌した。Hexafor612Nの酸の形は脱イオン水に不溶で、固形物として沈殿した。水と不純物はそれから、沈殿物からデカントされ、固形物は加えた3kgの脱イオン水によってさらに洗浄され、140rpmで15分混合され、続いて、酸性化工程時に導入した硝酸塩と同様に、不純物をさらに可溶化させるために流体をデカントした。次に、固形沈殿物は0.175kgのIPA(Ultrapure Solutions, Castroville CA)に溶かされ、IPAと溶解されたHexafor612Nの酸とわずかな水とを含む有機層と、脱イオン水とわずかなIPAとを含む分離水層の二相の溶液を形成した。脱イオン水層が除かれたのち、追加の0.864kgのIPAが加えられ、その後Hexafor612Nの酸を塩の形に戻すために、99.995%LiOH(Alfa Aesar, Ward Hill, MA)の5%の0.403kgを脱イオン水に加える。このプロセスは精製された25%のHexafor612Nリチウム塩と、残りが50%IPA/25%HOである溶液を生成する。
【0054】
[実施例2]
[ヨウ化物添加剤付きの精製されたフッ素系界面活性剤配合物]
0.1341kgの99.995%ヨウ化リチウム(Aldrich, St Louis MO)は、実施例1における、精製された25%のHexafor612Nが50%IPA/25%HO中にある溶液に加えられ、140rpmで30分撹拌された。結果物のフッ素系界面活性剤配合物は4500ppmのLiIを含む。
【0055】
[実施例3]
[精製された25%のHexafor612Nと4500ppmのLiIを含むインク1配合物]
0.735kgのインク濃縮物は0.136%の銀(Ag)と0.28%のMethocell 311 バインダ(Dow Chemical, Midland Ml)と、175ppmのFS-3100(Dupont Wilmington, DE)とを含み、初めに1.264kgの脱イオン水を加えて希釈された。希釈溶液は500rpmで5分混合された。
【0056】
0.0028kgのフッ素系界面活性剤配合物は精製された25%のHexafor612N(Maflon, Bergamo Italy)と4500ppmのヨウ化リチウム(Sigma Aldrich, St Louis MO)を含んでおり、上記希釈溶液に加えられて500rpmで10分混合され、最終コーティング組成物(「インク1」)を形成した。
【0057】
[実施例4]
[未精製の25%のHexafor612Nと4500ppmのLiIを含むインク2配合物]
0.735kgのインク濃縮物は0.136%の銀(Ag)と0.28%のMethocell 311 バインダ(Dow Chemical, Midland Ml)と、175ppmのFS-3100(Dupont Wilmington, DE)とを含み、初めに1.264kgの脱イオン水を加えて希釈された。希釈溶液は500rpmで5分混合された。
【0058】
0.0028kgのフッ素系界面活性剤配合物は未精製の25%Hexafor612N(Maflon, Bergamo Italy)と4500ppmのヨウ化リチウム(Sigma Aldrich, St Louis MO)を含んでおり、上記希釈溶液に加えられて500rpmで10分混合され、最終コーティング組成物(「インク2」)を形成した。
【0059】
[実施例5]
[インク1およびインク2から形成した導電性フィルムの比較結果]
インク1とインク2は、PETフィルム(たとえば、MELINEX-454またはTORAY U483)上に、スロットダイ・ロールツーロールコーティング方式によって別々に塗布された。それぞれのインクはコーティング前に−28“Hgで30分脱気された。それぞれのインクは、それから15ml/分の流量で塗布され、40℃、60℃、そして90℃でそれぞれ1分乾燥させられた。乾燥後、試料は2MPaの圧力で薄層化された。
【0060】
それぞれのコーティングからのフィルム試料は非接触導電率計でシート抵抗が測定され、ヘイズ(%)は積分球を用いて測定された。結果は下表の通りである:
【表1】
示された通り、未精製のHexafor612Nを含むインク2から生成したフィルムは、不動態化させる不純物のために非導電性のフィルムとなった。対照的に、インク1は、配合前にHexafor612Nを精製したことのみがインク2と異なっていたが、十分なシート抵抗とヘイズ特性をもった導電性ネットワークを形成した。
【0061】
[実施例6]
[コーティング欠陥の減少]
本実施例は、短鎖フッ素系界面活性剤によって、欠陥レベルがZONYL(登録商標)FSAに比べて著しく減少したことを示す。
【0062】
透明導電体薄膜中の気泡欠陥と粒子欠陥は、非常に問題となりうる。タッチパネル製作において、パターン線内の欠陥はショートや信頼性の問題を引き起こすことがあり、このことは収量を減少させ、製作する価値に否定的な影響を与える。本明細書に記載された短鎖フッ素系界面活性剤(Hexafor612Nを含む)は、当該技術において、ZONYL(登録商標)FSAに比べ、ナノワイヤーインクの気泡欠陥に関してかなり低い傾向をもつ。加えて、精製済みHexafor612Nもまた、粒子欠陥レベルを下げる。
【0063】
インク1とインク2は、それぞれ実施例3と4に従って調製された。
【0064】
加えて、Zonyl FSAを用いたインク3が、まず、1.264kgの脱イオン水を0.735kgのインク濃縮物に4Lのナルゲン瓶(Nalgene bottle)内で加えて混合することで、0.136%の銀(Ag)と0.28%のMethocell 311 バインダ(Dow Chemical, Midland Ml)と175ppmのFS-3100(Dupont Wilmington, DE)とを含むインク濃縮物を希釈して調製された。その後、この希釈溶液(インク濃縮物と水)に、25%のZONYL(登録商標)FSA(Dupont Wilmington, DE)を含む溶液0.0021kgが加えられ、10分混合された。
【0065】
それぞれのインクは別々に、スロットダイ・ロールツーロールコーティング方式で塗布された。溶液はコーティング前に−28“Hgで30分脱気された。溶液は15ml/分の流量で塗布され、40℃、60℃、そして90℃でそれぞれ1分乾燥させられた。乾燥後、試料は2MPaの圧力で薄層化された。
【0066】
フィルム試料は、2メートル以上の長さのコーティングの300mmにわたり、黒の背景に対してビデオランプを用いて欠陥の調査がされ、欠陥レベルは下表にリストされた:
【表2】
【0067】
これらの結果は、気泡欠陥が短鎖フッ素系界面活性剤(たとえば、インク1およびインク2)の導入によって大いに減少されたことを示す。加えて、原材料の精製は、気泡の数を少なく保ちつつ粒子欠陥を一桁減少させた(インク1を見られたい)。
【0068】
Zonyl(登録商標)FSAは、本来ヨウ化物を含むことに留意する。しかし、短鎖フッ素系界面活性剤はZonyl(登録商標)FSAよりもフィルム形成において一層よく機能した。
【0069】
[実施例7]
[ヨウ化物添加剤の安定化効果]
この例は、ヨウ化物のようなアニオンが最終コーティング組成物に付加するとき、銀カチオンにヨウ化物イオンが結合し得るために、結果物の導電性フィルムが信頼性の向上を示すことを実証する。信頼性試験の条件は85℃、乾燥、周囲の室内照明および蛍光である。
【0070】
過剰の自由な銀カチオンは、光と熱の存在下において、バルクの銀ナノワイヤーの信頼性に有害となりうることを見いだした。ヨウ化物のようなアニオンの追加分は銀カチオンと結合でき、フィルムの信頼性を大きく向上させることができる。
【0071】
銀カチオン、銀、およびヨウ化物の相対量の計算は以下の通りである:
[Ag]含有量:1%の銀に対して0.014%のAg
コーティング組成物中の[Ag]は0.05%の銀、従って[Ag]含有量は0.014%×0.05%Ag/1%Ag=0.0007%
Agモル=[Ag]/Ag分子量(M.W.)=0.0007%/108=6.5×10−8
【0072】
LiIはHexafor612に4500ppmで加えられた;Hexafor612は353ppmでインクに加えられた;Hexafor612は25%の濃度であった。
[I]=0.000353/25%×0.004500=6.354×10−6
モル=[I]/I分子量=6.354×10−6/127=5×10−8
【0073】
異なるAg/Iモル比の3つのインク組成物が調製され、その中で2つ(インク1とインク5)が等モル近くのAgとIを有し、その中でインク4はヨウ化物をもたなかった。
【0074】
さらに具体的には、上述の計算によって、実施例3のインク1は6.5×10−8molの銀カチオン(Ag)と5×10−8molのヨウ化物を含み、以下のモル比を生ずる:
Ag/Iモル比=6.5×10−8/5×10−8=1.3/1
【0075】
インク4は、ヨウ化物を有さないが、まず0.136%の銀ナノワイヤーと6.5×10−8molの銀カチオンと0.28%のMethocell 311 バインダ(Dow Chemical, Midland Ml)と175ppmのFS-3100(Dupont Wilmington, DE)とを含む0.735kgのインク濃縮物に、1.264kgの脱イオン水を加えたのちに希釈溶液を500ppmで5分混合することによって希釈し、調製された。その後、この希釈溶液に、精製された25%のHexafor612N(Maflon, Bergamo Italy)を含み、追加のヨウ化リチウムのないフッ素系界面活性剤溶液のうち0.0021kgが加えられ、500ppmで10分混合された。
【0076】
インク5は、インク1よりもヨウ化物を有するが、まず0.136%の銀ナノワイヤーと0.28%のMethocell 311 バインダ(Dow Chemical, Midland Ml)と175ppmのFS-3100(Dupont Wilmington, DE)とを含む0.735kgのインク濃縮物に、1.264kgの脱イオン水を加えたのちに希釈溶液を500ppmで5分混合することによって希釈し、調製された。その後、この希釈溶液に、精製された25%のHexafor612N(Maflon, Bergamo Italy)と6000ppmのヨウ化リチウム(6.6×10−8モルのヨウ化物)とを含むフッ素系界面活性剤溶液のうち0.0021kgが加えられ、10分混合された。
【0077】
インク1、インク4およびインク5は別々に、スロットダイ・ロールツーロールコーティング方式で塗布された。それぞれのインクはコーティング前に−28“Hgで30分脱気された。各インクはそれから15ml/分の流量でコートされ、40℃、60℃、および90℃でそれぞれ1分乾燥させられた。乾燥後、試料は2MPaの圧力で薄層化された。
【0078】
それぞれのコーティングからの試料フィルムは、非接触導電率計でシート抵抗(R)が測定され、ヘイズ(%)は積分球を用いて測定された。それらの結果は下表の通りである:
【表3】
【0079】
これらの試料フィルムは信頼性試験チャンバー内で様々な条件に暴露された:制御(control)(20−25℃の範囲内の周囲温度、周囲蛍光);85℃/乾燥(dry);85℃/85%相対湿度(RH);および60℃/90%相対湿度(RH)である。図1は、試験条件下におけるこれらの試料フィルムの、時間に対するシート抵抗変化を示している。示された通り、インク5(等モルのAg/I)で形成されたフィルムが最もよい信頼性を示し、全ての条件下で400時間よりも長い期間にわたり、無視できるほどのシート抵抗のドリフト(5%よりも小さい)を示している。同様に、インク1(等モルに近いAg/I)で形成されたフィルムは、それほどでもないが、匹敵する信頼性を示している。際だったことに、インク4(ヨウ化物をもたない)で形成されたフィルムは、急速に導電性のロス(すなわち、シート抵抗の急速な増加)が全ての条件で示された。
【0080】
インク1、インク4およびインク5から調製されたフィルム試料は、促進光条件下についてもテストされた。促進光条件下では、光の強度は典型的には、与えられたデバイスの作動光(operating light)の強度に比べて大幅に上昇させられる;導電性フィルムの信頼性テストのための光暴露の持続時間はそれゆえ、同じデバイスの通常の寿命と比較して大幅に圧縮される。典型的には、光強度はルーメン(Lumens)、光束の単位で測定される。促進光条件下において、光はデバイスの光条件の約30から100倍強い。
【0081】
図2は、促進光条件下において、インク5(等モルのAg/I)から調製された試料フィルムが、とりわけ500時間の水準の後、他の試料よりも大幅に良い性能であったことを示す。
【0082】
本明細書で参照された、及び/又は出願データシートに列挙された、上記米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許刊行物のすべてを参照によりその全体を本明細書に援用する。
図1
図2