特許第6473838号(P6473838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473838
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】導電装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20190207BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20190207BHJP
   G06F 3/02 20060101ALI20190207BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20190207BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   G06F3/041
   G06F3/044 Z
   G06F3/041 590
   G06F3/041 660
   G06F3/02 F
   H05K3/12 610B
   H05K1/09 A
【請求項の数】8
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2018-51753(P2018-51753)
(22)【出願日】2018年3月19日
(62)【分割の表示】特願2015-555851(P2015-555851)の分割
【原出願日】2013年12月30日
(65)【公開番号】特開2018-136957(P2018-136957A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年3月30日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物:株式会社スイッチ・パブリッシング 刊行物名:Switch(Aug.2013 VOL.31 NO.8) 発行年月日:平成25年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】510216968
【氏名又は名称】株式会社GOCCO.
(74)【代理人】
【識別番号】100103023
【弁理士】
【氏名又は名称】萬田 正行
(72)【発明者】
【氏名】森 誠之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】高岸 進
【審査官】 星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−173226(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/161966(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0273263(US,A1)
【文献】 特開2012−230866(JP,A)
【文献】 特開2011−216756(JP,A)
【文献】 特開2011−134298(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/070593(WO,A1)
【文献】 特開2012−99093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/02
G06F 3/044
H05K 1/09
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体としての基材と、
前記基材の所定の面に、銀ペーストを印刷により所定のパターンとなるよう塗布して形成された導電層パターンとを備え、
前記導電層パターンを形成する銀ペーストは、銀粒子として、粒子径が3.0〜5.0μmの範囲内にあり、かつ、最大厚み部分の厚みが100nm以下で最小厚み部分の厚みが50nm以下の範囲内にある銀フレークのみを含有し、
前記導電層パターンは、前記銀フレークを厚み方向に積層することにより、膜厚が10μm以下の範囲内となるよう形成され、
前記導電層パターンを形成する銀フレークは、少なくとも前記最小厚み部分で互いに融着状態又は凝集密着状態にあることを特徴とする導電装置。
【請求項2】
前記基材は、第1の方向における第1の寸法と、前記第1の方向と直交する第2の方向における第2の寸法とを有する主要部としてのベース部と、前記ベース部の前記第1の方向における一端に連続して形成される付属部としての把持部とを有し、
前記導電層パターンは、第1の導電層部としての所定面積の面状の指接触部と、前記ベース部の裏面において前記第1の方向と交差するように延びると共に前記指接触部に電気的に接続して形成される第2の導電層部としての所定面積の面状の延設部と、前記ベース部の裏面において前記延設部から前記ベース部の第1の方向に直線的に延びるよう前記延設部に電気的に接続して形成される第3の導電層部としての導線状の所定の複数の導通部と、前記ベース部の裏面において前記導通部の各々の先端に電気的に接続して形成された第4の導電層部としての所定面積の面状の所定の複数のPC側接触部を含み、
前記導電層パターンの延設部は、前記複数のPC側接触部のうちの2つのPC側接触部を前記ベース部の第2の方向の両端部に配置したときに、前記導通部のうち当該2つのPC側接触部を先端に形成した2つの導通部の基端位置まで延びるよう所定の延設角度で延設されることを特徴とする請求項1記載の導電装置。
【請求項3】
更に、前記基材の裏面に形成した前記導電層パターンの全体を完全に遮蔽する遮蔽層としての一次コート及び二次コートを備え、
前記一次コートは、下塗層として前記基材の裏面に形成した前記導電層パターンの上に形成される格子状の塗膜からなり、
前記二次コートは、上塗層として前記一次コートの上に形成される完全密閉状のフィルム状の塗膜からなることを特徴とする請求項1記載の導電装置。
【請求項4】
前記導電層パターンは、前記銀フレークを所定のバインダーに分散させた銀ペーストインキから形成され、前記銀フレークを分散させるバインダーとして、ポリウレタン樹脂及び耐熱性樹脂の混合物を含有することを特徴とする請求項1記載の導電装置。
【請求項5】
前記導電層パターンは、前記銀ペーストインキにおける前記銀フレークの含有率を30〜45重量%の範囲内としたものであることを特徴とする請求項4記載の導電装置。
【請求項6】
前記導電層パターンは、厚みが5μm〜6μmの範囲内であることを特徴とする請求項5記載の導電装置。
【請求項7】
前記銀ペーストインキは、前記銀フレークを所定のバインダーに分散させたものであり、前記銀フレークを分散させるバインダーとして、ポリウレタン樹脂及び耐熱性樹脂の混合物を使用し、
前記銀フレークの配合率は30〜45重量%の範囲内とし、前記希釈剤の配合率は3〜5重量%の範囲内とし、前記バインダーの配合率は50〜67重量%の範囲内としたことを特徴とする請求項1記載の導電装置。
【請求項8】
比抵抗としてa×10−5Ωcm(「a」は、1以上で10未満の範囲の任意の実数)を得るための含有率範囲として、前記銀フレークの含有率を40〜45重量%の範囲としたことを特徴とする請求項1記載の導電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電装置に関し、特に、絶縁性の基材の表面に導電層パターンを形成してなる導電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[一例としての静電容量式タッチパネルを備えたコンピュータ装置(タブレット等)]
本発明の導電装置(絶縁性の基材の表面に導電層パターンを形成してなる導電装置)の一種である識別子提供装置を適用可能なコンピュータ装置の一例として、典型的には、静電容量式タッチパネルや静電容量式タッチパッド(以下、「静電容量式タッチ装置」ということがある。)を備えたタブレットやスマートフォン等のコンピュータ装置(以下、「タッチ式コンピュータ装置」という。)がある。このタッチ式コンピュータ装置は、例えば、使用者がタッチパネルを所定の指の本数でタッチ(マルチタッチ)することで、所定の情報処理を実行開始するように構成されている。この場合、タッチ式コンピュータ装置は、使用者のマルチタッチのタッチポイント数及び各タッチポイントの座標を取得し、マルチタッチのタッチポイント数及び各タッチポイントの座標に応じて、あらかじめ設定された情報処理動作を実行する。
【0003】
[タッチ式コンピュータ装置用のマルチタッチ動作用駆動装置]
一方、本発明者らは、使用者がタッチパネルに直接指を触れることなく、タッチ式コンピュータ装置に上記のようなマルチタッチによる情報処理動作を実行させるための駆動装置の発明を考案し、更に研究開発を継続した結果、低コスト化及び量産化を図ることができる駆動装置の発明を完成した。この駆動装置に関する発明は、下記特許出願(特願2010−208419号)として出願されている。
【0004】
この特許出願の発明は、静電容量方式のマルチタッチディスプレイを備えた情報処理装置と対をなす別個独立(別体)の駆動装置を情報処理装置のマルチタッチディスプレイに接触させることで、情報処理装置に所望の情報処理を実行させるマルチタッチ機能を利用した情報処理システムに関し、特に、当該情報処理装置用の駆動装置、及び、当該情報処理装置及び駆動装置を備えた情報処理システムに関する。この発明は、マルチタッチディスプレイでのマルチタッチを簡単かつ確実に行うことができるようにし、小型のマルチタッチディスプレイの場合でも、所定の複数の接触位置に的確かつ複数同時に指を接触することができるようにすることを課題としている。そして、この発明は、その課題の解決手段として、駆動装置の対向面に情報処理装置を押し当てることにより、所定の配置態様の接触部が、マルチタッチディスプレイにおける対応する配置態様の接触領域(画面に設定されたボタン状の領域)に接触し、対応する処理(コンテンツ表示処理等)を情報処理装置に実行させる構成を採用すると共に、電荷蓄積部が、接触部から導通部を介して、接触領域の電荷移動を可能にし、接触領域の静電容量変化を確実に生起させるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−134298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この駆動装置の発明は、コンピュータ装置からなる情報処理装置に、所定の情報処理を実行させるための指令として一意の識別子を提供する識別子提供装置に適用することもできる。一方、この発明を具体的に実施した駆動装置は、所定の情報処理を実行させる指令として一意の識別子を提供するために、絶縁体からなるベース又は基材の表面に所定の導電層パターン(前記接触部を所定の配置態様で離間配置することにより形成される導電層からなるパターン)を形成する必要があるが、この導電層パターンを介してマルチタッチディスプレイの摂食領域に所定の静電容量変化を生起させるためには、相当多量の銀ペーストをベースに塗布することが必要となることを本発明者らは鋭意の研究開発の過程で確認した。また、本発明者らは、ベース上の銀ペーストの量が多量となることにより、導電層パターン自体の厚みが相対的に大きくなり、かつ、導電層パターンの面積も相当程度必要となることも、実験等により確認した。しかし、導電層パターンの原材料としての銀ペーストは非常に高価であり、上記駆動装置の発明では、量産化を図ったとしても製造コストが大きく増大することが予想される。また、ベース上に所定パターンの銀ペーストを塗布して導電層パターンを形成にする場合、量産性等の観点からスクリーン印刷等を使用することが好ましいが、上記のようにベース上に多量の銀ペーストを塗布する場合、製造後の品質にむらが発生し、歩留まりが相当程度低下する可能性があることを本発明者らは確認した。
【0007】
そこで、本発明は、絶縁体からなるベースの表面に、最小必要量の銀ペーストだけで、極めて厚みの小さい、かつ、必要最低限の面積の導電層パターンを形成することで、必要な導電率(比抵抗)を達成して、製造コストを大幅に低減することができ、更に、最小必要量の銀ペーストによって極小厚み/必要最低限面積の導電層パターンを形成しても、十分に良好な歩留まりを達成して量産化を図ることができる導電層パターンをベース表面に有する導電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る導電装置により構成されるコンピュータ装置用の識別子提供装置は、コンピュータ装置からなる情報処理装置に、所定の情報処理を実行させるための指令として一意の識別子を提供する識別子提供装置である。この識別子提供装置を構成する導電装置は、絶縁体(典型的には、絶縁材料からなる所定形態の固体)としての基材と、前記基材の所定(典型的には、所定範囲及び/又は所定面積)の面に、銀ペーストを印刷により所定のパターンとなるよう塗布して形成された導電層パターンとを備えている。導電層パターンを形成する銀ペーストは、銀粒子として、粒子径dが3.0〜5.0μm(好ましくは、3.5〜4.5μm)の範囲内にあり、かつ、最大厚み部分の厚みT11が100nm以下(好ましくは、50nm以下)で最小厚み部分の厚みT13が50nm以下(例えば、30〜50nm、好ましくは、20〜30nm)の範囲内にある銀フレークのみを含有している。導電層パターンは、前記銀フレークを厚み方向に(典型的には、略平行に)積層することにより、膜厚T2が10μm以下(好ましくは、5〜6μm)の範囲内となるよう形成されている。前記導電層パターンを形成する銀フレークは、前記最小厚み部分で互いに融着状態又は凝集密着状態にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、絶縁体からなるベースの表面に、最小必要量の銀ペーストだけで、極めて厚みの小さい、かつ、必要最低限の面積の導電層パターンを形成することで、(例えば、コンピュータ装置からなる情報処理装置に、所定の情報処理を実行させるための指令として一意の識別子を提供するために、本発明の導電装置を識別子提供装置として具体化した場合において、前記コンピュータ装置に前記所定の情報処理動作を実行させるために)必要な導電率(比抵抗)を達成して、製造コストを大幅に低減することができ、更に、最小必要量の銀ペーストによって極小厚み/必要最低限面積の導電層パターンを形成しても、十分に良好な歩留まりを達成して量産化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置を示す平面図である。
図2図2は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置の導電層パターン側の面を表す底面図である。
図3図3は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置の導電層パターン側の面を表す底面図であり、(a)は一次コートを形成した状態を示し、(b)は二次コートを形成した状態を示す。
図4図4は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置を形成する工程を示す工程図であり、(a)は導電性パターン形成工程を示し、(b)は一次コート形成工程を示す。
図5図5は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置を形成する工程を示す工程図であり、(a)は二次コート形成工程を示し、(b)は模様形成工程を示す。
図6図6は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置の導電層パターンの断面(及び表面コーティングの断面)を表す断面図である。
図7図7は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置を示す断面図である。
図8図8は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置を示す断面図である。
図9図9は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置を示す断面図である。
図10図10は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置を示す断面図である。
図11図11は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置を示す断面図である。
図12図12は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置の導電層パターン形成用の銀フレークを表す説明図である。
図13図13は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置の導電層パターン中の積層状態の選別銀フレークの一部融着構造を示す説明図である。
図14図14は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置の導電性パターン形成工程(スクリーン印刷)を示す説明図である。
図15図15は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置の導電性パターン形成工程(スクリーン印刷)における製造パラメータ(原料粘度、スキージ速度、印圧、アタック角)を示す説明図である。
図16図16は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置の導電性パターン形成工程におけるスクリーン印刷を示す説明図である。
図17図17は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置の導電性パターン形成工程(スクリーン印刷)を示す説明図である。
図18図18は本発明の実施の形態1に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置の導電性パターン形成工程(スクリーン印刷)を示す説明図である。
図19図19は本発明の実施の形態2に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置を示す平面図である。
図20図20は本発明の実施の形態3に係る導電装置を具体化したコンピュータ装置用の識別子提供装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)を説明する。なお、各実施の形態を通じ、同一の部材、要素または部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0012】
{実施の形態1}
[識別子提供装置の全体構成]
本発明の導電装置は、図1図11に示す実施の形態(実施の形態1)の識別子提供装置として具体化することができる。以下、この識別子提供装置について図1図11を参照して説明する。本実施の形態の識別子提供装置は、図1に示すように、所定形状となるよう一体形成された基材10と、図2に示すように、基材10の面の所定の範囲に一体形成された導電層パターン20とを備える。以下、識別子提供装置の各部の構成について詳述する。
【0013】
[識別子提供装置の各部の構成]
<基材>
詳細には、下図(図1)に示すように、基材10は、所定形状のベース部11に、所定形状の把持部としてのタブ12を一体形成してなるものである。より詳細には、ベース部11は、正円形状状のシート形状を有している。また、タブ12は、長円形状又はトラック形状のシート材を長さ方向で半分に切断した半トラック形状のシート形状を有している。タブ12は、その基端が、ベース部11の外周縁の所定角度位置に一体的に連続するよう接合され、ベース部11と同一面内を(面一となって)外方に(正確には、ベース部11の放射方向外方に)延びている。基材10は、所定の紙質の1枚の紙材により前記ベース部11及びタブ12からなる(図1に示す)シート形状となるよう一体形成されている。
【0014】
基材10は、任意の絶縁体(非導電材料又は絶縁材料からなる所定形状の固体)から形成することでき、例えば、紙素材、木質素材、合成樹脂等の電気的絶縁素材(誘電材料)から形成することができ、場合によっては、絶縁体である限りにおいて、石素材等の無機物素材によっても形成することができる。しかし、基材10は、典型的には、紙素材からなる紙シート、合成樹脂素材からなる合成樹脂シート等の薄いシート状(通常の紙シートと同等の肉厚のシート状)に形成される。なお、基材10のベース部11の表面には、図1に示すように、所定の模様13が印刷等により設けられているが、模様13を設けないことも可能である。
【0015】
<導電層パターン>
導電層パターン20は、図2(a)に示すように、人体側接地部としての指接触部21、汎用導線部としての延設部22、個別導線部としての導通部23、及び、PC駆動部としてのPC側接触部24からなる所定パターン形状の導電層である。導電層パターン20は、所定の鱗片状、薄片状又はフレーク状の銀粒子(以下、「銀フレーク」という。)であって、極小厚みで均一粒径を有するように調製及び/又は選別して得られた銀フレーク(以下、「選別銀フレーク」ということがある。)を含有するスラリー状の銀ペーストインキを、前記基材10のベース部11の面に(典型的には、スクリーン印刷等の印刷技術により)所定のパターンとなるように塗布して形成される。詳細には、指接触部21は、基材10のタブ12の裏面の全体に、印刷により塗布して一体的に積層形成され、タブ12に対応する形状の塗膜状をなしている。延設部22は、基材10のベース部11の裏面において、タブ12を中心として円周方向両側(互いに離間する方向)に所定角度範囲延びるよう、印刷により塗布して一体的に積層形成され、所定の延設角θのアーチ状の塗膜状をなしている。導通部23は、基材10のベース部11の裏面において、延設部22の内周縁から、ベース部11の直径方向と平行な方向(以下、「直径平行方向」ということがある。)に直線的に延びるよう(そして、前記タブ11の長軸方向と平行な方向に延びるよう)、印刷により塗布して一体的に積層形成され、所定幅d(以下、「導線幅d」ということがある。)の直線的細線状の塗膜状をなしている。PC側接触部24は、基材10のベース部11の裏面において、導通部23の先端に、印刷により塗布して一体的に積層形成され、所定の直径W(以下、「接触部径W」ということがある。)の正円形状の塗膜状をなしている。
【0016】
上記のように、本実施の形態の識別子提供装置では、基材10は、主要部としてのベース部11と、ベース部11の一端に連続して形成される付属部としての把持部12とを含んでいる。ここで、ベース部11は、第1の方向(図2中の上下方向)における第1の寸法(図2中の上端から下端までの上下寸法、即ち、上下方向の直径)と、前記第1の方向と直交する第2の方向(図2中の左右方向)における第2の寸法(図2中の(把持部12を除く)左端から右端までの左右寸法、即ち、左右方向の直径)とを有している。また、導電層パターン20の指接触部21は、把持部12の裏面に形成されて、使用者の指が基材10の把持部12を把持したときに使用者の指と導通する第1の導電層部としての所定面積の面状をなしている。また、延設部22は、ベース部11の裏面において前記第1の方向と交差するように延びると共に、指接触部21に電気的に接続して形成される第2の導電層部としての所定面積の面状をなしている。また、導通部23は、所定の複数本(図示の例では3本)設けられ、それぞれが、ベース部11の裏面において延設部22からベース部11の第1の方向に直線的に延びるよう延設部22に電気的に接続して形成される第3の導電層部としての導線状をなしている。また、PC側接触部24は、前記導通部23と同一の複数(図示の例では3個)設けられ、それぞれが、ベース部11の裏面において導通部23の先端に電気的に接続して形成された第4の導電層部としての所定面積の面状をなしている。そして、使用者の指が基材10の把持部12を把持した状態で、基材10のベース部11の導電層パターン20側の面(裏面)をタッチ式コンピュータ装置のタッチパネルに当接させたときに、導電層パターン20のPC側接触部24が、導通部23、延設部22及び指接触部21を介して使用者の指と導通し、タッチパネルに静電容量変化を生起させるようにしている。更に、導電層パターン20の延設部22は、前記複数のPC側接触部24のうちの2つのPC側接触部24(図2の例では、上下のPC側接触部24)をベース部11の第2の方向の両端部(図2中の上下両端部)に配置したときに、導通部23のうち当該2つのPC側接触部24を先端に形成した2つの導通部23(図2中の上下の導通部23)の基端位置まで延びるよう、所定の延設角度で延設される。
【0017】
[延設部22の延設角θ(本発明の特徴の一つ)]
ここで、図2(a)に示すように、延設部22は、延設角θが、正円形状をなすベース部11の一方の(即ち、タブ12側の)半円部分の範囲内において、当該半円部分の外周縁の角度範囲内(即ち、タブ12側の180度の角度範囲内)の所定角度となるよう、ベース部11に設けられる。延設部22の延設角θは、延設部22の円周方向の両端から直線状の導通部23を(ベース部11の直径方向と平行な)直径平行方向に延設した場合において、その先端に接続される所定直径WのPC側接触部24の配設位置が、ベース部11の裏面の全範囲を網羅するように設定される。
【0018】
具体的には、図2(b)に示すように、まず、ベース部11においてタブ12の幅方向中心を通る直径方向(図2中の左右方向、以下、「左右直径方向」ということがある。)、及び、左右直径方向と直交する直径方向(図2中の上下方向、以下、「上下直径方向」ということがある。)を想定する。この場合において、PC側接触部24を、ベース部11の上下直径方向の仮想線上の上下両端に配置し、導通部23の先端をそのPC側接触部24に接続し、その導通部23を直径平行方向に延設部22へと向かって直線的に延ばしたときに、その導通部23の基端がベース部11の外周縁と交差する位置に延設部22の周方向両端が存在すれば、下図(図2(b))に示すように、PC側接触部24をベース部11のどの位置に配置しても、PC側接触部24から直径平行方向に直線的に延びる導通部23の基端を延設部22に接続することができる。
【0019】
換言すると、PC側接触部24をベース部11の上下直径方向の仮想線の上端及び下端に配置し、その接触部直径Wの中心から延設部22に向かって左右直径方向に伸ばした直線の終端がベース部11の外周縁と交差する角度位置まで、それぞれ、延設部22を延設すれば、ベース部11の裏面の全範囲を網羅するよう、所定直径WのPC側接触部24をベース部11の所望の位置に配置することができる。そして、上記延設角θの設定値は、PC側接触部24の接触部直径Wにも依存するが(及び、導通部23の導線幅dにも若干依存するが)、例えば、接触部直径Wを7mm〜10mmの範囲とした場合において、延設部22の延設角θを115度〜125度の範囲内とすれば、ベース部11の裏面の全範囲を網羅するよう、所定直径WのPC側接触部24をベース部11の所望の位置に配置することができる。好ましくは、接触部直径Wを7mmとした場合、延設部22の延設角θを120度の角度範囲となるよう設定する。
【0020】
このように、導電層パターン20の延設部22を上記のような延設角θで設けると、タッチ式コンピュータ装置のタッチパネル又はタッチパッドを利用した所定の情報処理動作のために、PC側指接触部24の配置位置及び/又は配置個数を変更する場合でも、延設部22については全く同一の構成(即ち、同一の配置位置、同一の塗膜平面形状、及び、同一面積)として、導通部23及びPC側接触部24のみの構成を必要に応じて(即ち、PC側接触部24の所望の配置位置に応じて)変更するだけでよい。したがって、導電層パター20を印刷により基材10の裏面に印刷する場合において、印刷機側の構成(典型的には、スクリーン印刷の場合のマスク及びマスク開口部の構成)については、指接触部21及び延設部22を同一の構成として、全てのPC側接触部24の配置の変更に対処することができ、マスク等にかかる製造コストを低減すると共に、マスク作業に関連する製造時の作業性を向上することができ、全体的な製造コスト及び作業性の向上に寄与することができる。
【0021】
[遮蔽層(本発明の特徴の一つ)]
<一次コート>
下図(図3)に示すように、識別子提供装置の基材10の裏面全体(即ち、ベース部11及びタブ12の裏面の全体)は、遮蔽層としての一次コート31及び二次コート32により完全に遮蔽される。これにより、基材10の裏面に形成した導電層パターン20の全体も、遮蔽層としての一次コート及び二次コートにより完全に遮蔽される。詳細には、一次コート31は、図3(a)に示すように、下塗り層として、基材10の裏面の全範囲にわたって、基材10の裏面部分(正確には、導電層パターン20により覆われていない露出部分)及び基材10上の導電層パターン20の全体を覆うよう、基材10及び導電層パターン20の上に印刷により塗布して一体的に積層形成され、基材10の外形と同一外形の下側遮蔽層となる。一次コート31は、格子状又はマトリックス状の塗膜であり、多数の矩形状の開口部を基材10の上下方向及び左右方向に一定間隔で密に配設したものである。即ち、一次コート31の開口部からは、基材10の裏面及び導電層パターン20の一部が露出している。なお、一次コート31は、青色系(ウルトラブルー、ブルー等)の印刷インキにより、上記の格子塗膜状に形成される。
【0022】
<二次コート>
一方、二次コート32は、図3(b)に示すように、上塗り層又は露出層として、基材10の裏面の全範囲にわたって、基材10の裏面部分及び基材10上の導電層パターン20の全体を、一次コート31の更に上から覆うよう、一次コート31の上に印刷により塗布して一体的に積層形成され、基材10の外形と同一外形の上側遮蔽層となる。二次コート32は、(隙間及び開口部のない)完全密閉状のシート状又はフィルム状の塗膜である。即ち、二次コート32からは、(格子状の一次コート31を介して)基材10の裏面及び導電層パターン20の一部が露出することは全くなく、二次コート32が、基材10の裏面の全体を、導電層パターン20を含めて、完全に外部から遮蔽している。なお、二次コート32も、一次コート31と同様の(好ましくは、同一の)青色系の印刷インキにより、上記のフィルム塗膜状(又は孔なしのべた塗り塗膜状)に形成される。
【0023】
<青色系の一次コート31(格子塗膜状)及び二次コート32(フィルム塗膜状)による効果>
上記の例では、一次コート31及び二次コート32は、青色系の印刷インキにより形成され、基材10上の銀系色の導電層パターン20を外部から完全に遮蔽し、内部の導電層パターン20が外部から容易には視認できないようにしている。ここで、一次コート31及び二次コート32を青色系の印刷インキにより形成する場合において、一次コート31を上記のような格子塗膜状とし、二次コート32をフィルム塗膜状とすると、特に一次コート31の多数の格子(及び多数の開口)による(遮蔽層に進入する外部光に対する)光学的効果により、基材10上の銀系色の導電層パターン20の外部からの視認を妨げる効率(以下、「視覚遮蔽効率」ということがある。)を増大することができる。
【0024】
[遮蔽層の別例(本発明の特徴の一つ)]
<一次コート>
一方、前記識別子提供装置は、基材10上の導電層パターン20を外部から遮蔽する遮蔽層として、白色系及び/又は灰色系の印刷インキを使用することもできる。この場合、別例の遮蔽層の下塗り層としての一次コートは、前記一次コート31と同様、基材10の裏面の全範囲を覆うよう、基材10及び導電層パターン20の上に印刷により塗布して一体的に積層形成され、基材10の外形と同一外形の下側遮蔽層となる。一方、この一次コートは、グレー系(灰色系)の印刷インキを、前記二次コート32と同様の(隙間及び開口部のない)完全密閉状のシート状又はフィルム状の塗膜として形成する。即ち、この場合、下塗り層としての一次コートからも、基材10の裏面及び導電層パターン20の一部が露出することは全くなく、一次コートが、基材10の裏面の全体を、導電層パターン20を含めて、完全に外部から遮蔽している。
【0025】
<二次コート>
更に、別例の遮蔽層の上塗り層としての二次コートは、前記二次コート32と同様、基材10の裏面の全範囲にわたって、基材10の裏面部分及び基材10上の導電層パターン20の全体を、グレー系の一次コートの更に上から覆うよう、その一次コートの上に印刷により塗布して一体的に積層形成され、基材10の外形と同一外形の上側遮蔽層となる。一方、この二次コートは、白色系の印刷インキにより、前記二次コート32と同様のフィルム塗膜状に形成される。即ち、この二次コートからも、基材10の裏面及び導電層パターン20の一部が露出することは全くなく、二次コートが、一次コートの更に上から、基材10の裏面の全体を、導電層パターン20を含めて、完全に外部から遮蔽している。
【0026】
<グレー系の一次コート(フィルム塗膜状)及び白色系の二次コート(フィルム塗膜状)による効果>
上記の例では、一次コート31及び二次コート32は、それぞれ、グレー系及び白色系の印刷インキにより形成され、基材10上の銀系色の導電層パターン20を外部から完全に遮蔽し、内部の導電層パターン20が外部から容易には視認できないようにしている。ここで、一次コート31及び二次コート32を白色系及び/又は灰色系の印刷インキにより形成する場合において、一次コート31を上記のようなグレー系のフィルム塗膜状とし、二次コートを白色系のフィルム塗膜状とすると、特に、導電層ペースト20と同系色の一次コートによる(遮蔽層に進入する外部光に対する)光学的効果と、一次コートの灰色の明度を増大する白色系の二次コートによる光学的効果との相乗効果により、基材10上の銀系色の導電層パターン20の外部からの視認を妨げる効率(以下、「視覚遮蔽効率」ということがある。)を増大することができる。
【0027】
[識別子提供装置の製造方法]
<裏面の導電層パターン20の印刷>
本実施の形態の識別子提供装置は、典型的には、紙素材を基材10の原材料とし、導電性インキとしての銀ペーストインキを導電性パターン20の原材料とし、通常の印刷インキを模様部13及び遮蔽層31,32の原材料として、スクリーン印刷技術を利用して大量生産することができる。
【0028】
詳細には、まず、図4(a)に示すように、原紙セット工程において、基材を構成する紙素材からなる原紙100をスクリーン印刷機(図示略)にセットし、次の導電性パターン形成工程において、原紙の一側面(即ち、識別子提供装置の裏面となる面)に、銀ペーストインキにより前記導電性パターン20を印刷して形成する。この導電性パターン形成工程においては、原紙100には、原紙100の幅方向(図4(a)中の上下方向)に複数行で、原紙100の長さ方向(図4(a)中の左右方向)に複数行となるよう、所定の複数の導電性パターン20を形成する。なお、図4(a)中、二点鎖線は、(最終工程としての切り抜き工程後に)識別子提供装置の外周縁(ベース部11の外周縁)となる境界線を示す仮想線(以下、「ベース部外周縁」ということがある。)であり、導電層パターン20の指接触部21の外周縁、延設部22の外周縁、及び、ベース部11の導電層パターン非形成部分の外周縁(即ち、前記指接触部21の外周縁及び延設部22の外周縁以外の部分の外周縁)を合わせた輪郭線が、一つの識別子提供装置の輪郭線(即ち、基材10の輪郭、以下、「基材輪郭線」ということがある。)となる。
【0029】
<裏面の一次コート31の印刷>
次に、図4(b)に示すように、一次コート形成工程において、スクリーン印刷機により、原紙100上の各導電層パターン20の上から、前記基材輪郭線の内側の領域全体を覆うよう、所定の青系の印刷インキにより前記一次コート31を印刷して形成する。
【0030】
<裏面の二次コート32の印刷>
次に、図5(a)に示すように、二次コート形成工程において、スクリーン印刷機により、原紙100上の各二次コート31の上から、前記基材輪郭線の内側の領域全体を覆うよう、所定の青系の印刷インキにより前記二次コート32を印刷して形成する。なお、図5(a)中の破線は、二次コート32(及び一次コート31)の下側にある導電層パターン20の延設部22の内周縁の輪郭線、並びに、導通部23及びPC側接触部24の輪郭線を示す隠れ線である。
【0031】
<表面の模様部13の印刷>
次に、図5(b)に示すように、模様形成工程において、スクリーン印刷機により、原紙の他側面(即ち、識別子提供装置の表面となる面)に、前記一側面(裏面)の各基材輪郭線に整合するよう、所定の印刷インキにより前記模様部13を印刷して形成する。このようにして、原紙100の表面及び裏面に、所定数の識別子提供装置の表側の印刷部(即ち、模様部13)、並びに、裏側の印刷部(即ち、導電層パターン20、一次コート31、二次コート32)をスクリーン印刷により形成することができる。
【0032】
<識別子提供装置の切り抜き(打ち抜き)>
次に、図5(b)に示す所定数の識別子提供装置を、前記基材輪郭線で所定の(図示しない)切り抜き装置(又は打ち抜き装置)により切り抜く(又は打ち抜く)。これにより、最終製品としての識別子提供装置が完成する。このようにして、完成した識別子提供装置は、図7(導通部23及びPC側接触部24の断面を含む識別子提供装置の横断面図)、図8(導通部23の断面を含む識別子提供装置の横断面図)、図9(導通部23及びPC側接触部24の断面を含む識別子提供装置の横断面図)、図10(指接触部21の断面を含む識別子提供装置の縦断面図)、図11(導通部23及びPC側接触部24の断面を含む識別子提供装置の縦断面図))に示すように、基材10上に導電層パターン20が、所定の膜厚で、かつ、所定の配線パターンとなるよう積層形成されている。なお、導電層パターン20の上には、図7図10に示すように、一次コート31が積層形成されているが、更に、(図7図10には描画していないが)上記のように、一次コート31の上には二次コート32が積層形成される。
【0033】
[製造方法の特徴的構成(本発明の一つの特徴)]
<銀ペーストインキのバインダー>
本実施の形態の識別子提供装置の製造において、導電層パターン20形成用の原料インキとなる銀ペーストインキは、前記選別銀フレーク50を所定のバインダーに分散させたものであり、前記選別銀フレーク50を分散させるバインダーとして、ポリウレタン樹脂及び耐熱性樹脂の混合物を使用している。このバインダーは、原料インキとしての銀ペースインキ中に、所定の配合率で配合される。バインダーの配合率は、銀ペーストインキ中の選別銀フレーク50の配合率(又は含有率)と、希釈剤の配合率(又は添加率)とに応じて設定される。例えば、後述するように、選別銀フレーク50の配合率が、30〜45重量%の範囲内の任意の値で、希釈剤の配合率が、3〜5重量%の範囲内の任意の値のとき、バインダーの配合率は、50〜67重量%の範囲内の任意の値として設定することができる。(本実施の形態を含む)本発明の識別子提供装置は、前記銀ペーストインキのバインダーをポリウレタン樹脂及び耐熱性樹脂の混合物により構成したことで、基材10に導電層ペースト20を印刷した(及び、遮蔽層を印刷した)製品状態で、基材10を大きく折り曲げても(極端な場合は、180度折り曲げても)、導電層パターン20(特に、後述するように互いに電気的接続状態にある選別銀フレーク50、及び、その接続部位)に亀裂や損傷等が発生することがなく、導電層パターン20が本来の良好な導電性を維持する。これは、主に、バインダーがポリウレタン樹脂を含有することにより、導電層パターン20に十分な可撓性が付与されるためであると考えられる。また、これは、原紙100に印刷した銀ペーストインキを後述する加熱乾燥工程において加熱して導電層を形成するときに、バインダー中の耐熱性樹脂が耐熱性を発揮し、加熱後の(及び、製品形態となった)バインダー中のポリウレタン樹脂の可撓性を十分な値に維持し、識別子提供装置の導電層パターン20の折り曲げ耐性を向上するためであると考えられる。即ち、本発明の識別子提供装置は、銀ペーストインキ中のバインダーが、ポリウレタン樹脂及び耐熱性樹脂の相乗効果により、導電層パターン20に非常に大きな折り曲げ耐性を付与して、導電層パターン20が断線しない(即ち、所定の導電率を維持する)ようにしている。
【0034】
<銀ペーストインキ中の溶剤の含有率>
本実施の形態の識別子提供装置の製造において、導電層パターン20形成用の原料インキとなる銀ペーストインキは、従来の導電ペーストインキのように、導電ペースト(即ち、本実施の形態の場合は、銀ペースト)を溶剤により相当の希釈倍率(例えば、数十重量%〜数百重量%)まで希釈したものではなく、希釈剤を非常に限定された量のみ添加している。詳細には、原液としての銀ペーストインキの粘度が高いため、そのままでは印刷速度が大きく低下することから、原液としての銀ペーストインキを従来と同様の希釈率で希釈することの要望がある。しかし、本発明者らは、このように従来と同様の希釈率で原液を希釈した場合、原紙100への印刷はできても、所期の導電率をえることができず、希釈率が上がれば上がるほど、導電率が低下して、最終的な導電層パターン20が非導通となることを確認している。また、銀ペーストインキを従来と同様の希釈率で原液を希釈した場合、形成した導電層パターンは、ある程度の導電率(導通度)を得ることができた場合でも、タッチ式コンピュータ装置の静電容量式タッチ装置に本発明の識別子提供装置の導電層パターン20を対向状態で密接させた場合に、静電容量式タッチ装置を駆動するために十分な静電容量が得られないことも確認している。
【0035】
したがって、本発明の識別子提供装置の製造において、原液としての銀ペーストインキは、所定の希釈剤を、非常に限定された量だけ(即ち、非常に限定された添加率で)添加している。具体的には、本発明では、原液の銀ペーストインキの希釈剤として、エチレングリコールモノブチルエーテル(別名ブチルセロソルブ又はブチセロ)(分子式C6H14O2)を使用している。また、当該希釈剤の添加率を、3〜5%(重量%)の範囲内の非常に限定された(非常に小さい)添加率としている。この希釈剤の希釈率が5%を超えると、識別子提供装置の導電層パターン20の導電率が所期の値より低下し、導電層パターン20を静電容量式タッチ装置に対向状態で密接させた場合に、静電容量式タッチ装置を駆動するために十分な静電容量が得られない可能性がある。一方、この希釈剤の希釈率が3%未満では、原液としての銀ペーストインキの粘度が高すぎて、原紙100への印刷自体の困難性や、印刷速度低下に伴う量産性の低下という問題が発生する。本発明者らは、この程度の非常に小さい添加率(3〜5%)によって、製造後の識別子提供装置の量産のための十分な印刷速度と、識別子提供装置の所期の導電率とを両立できることを確認している。
【0036】
<銀ペーストインキ中の銀粒子(銀フレーク)の含有率>
従来の銀ペーストインキにおいて、一般的に、所望の比抵抗(体積抵抗率)である10−5Ωcmを得るために、(球状銀粒子及びフレーク状銀粒子のいずれの場合も)銀粒子の含有率は80〜90%の範囲に設定されており、これよりも低い含有率では、所望の比抵抗(体積抵抗率)である10−5Ωcmを得ることができない。
【0037】
これに対し、(本実施の形態を含む)本発明の識別子提供装置では、その製造において、銀ペーストインキにおける前記選別銀フレーク50の含有率を、30〜45%(重量%)の範囲内としており、その最低量(下限値)として30%の含有率を採用している。なお、印刷品質のばらつき等を考慮して、所望の比抵抗(体積抵抗率)である10−5Ωcmを得るための安全な含有率範囲としては、選別銀フレーク50の含有率を40〜45%(重量%)の範囲とすることが好ましい。本発明の識別子提供装置は、このように少ない選別銀フレーク50の含有率の銀ペーストインキを使用するにもかかわらず、その銀ペーストインキにより製造した導電層パターン20は、確実な導電を得るために必要な所望の比抵抗(体積抵抗率)であるa×10−5Ωcm(ここで、「a」は、1以上で10未満の範囲の任意の実数)、例えば、1.0×10−5Ωcm又はこれに近似する値を得ることができることを、本発明者らは確認している。(ちなみに、バルク銀の比抵抗は、1.59×10−6Ωcmであり、(本実施の形態を含む)本発明の識別子提供装置の導電層パターン20の比抵抗は、バルク銀の比抵抗と比べても十分に良好な値となる。)
【0038】
<製造パラメータ(原料粘度、スキージ速度、印圧、アタック角)>
次に、本発明では、下図(図14)に示すように、前記導電性パターン形成工程において、スクリーン印刷機により、原紙100上に、銀ペーストインキにより導電性パターン20をスクリーン印刷するときに、原料インキ(所定の希釈剤を所定の限定された添加率で添加した銀ペーストインキ)の粘度等のインキ条件、スクリーンのメッシュ等のスクリーン条件、並びに、印刷速度(スキージ速度)、印圧及び(スキージの)アタック角等の印刷条件を含め、スクリーン印刷の製造パラメータを所定の値に設定している。
【0039】
詳細には、本発明の識別子提供装置のスクリーン印刷プロセスにおいて、原料インキのインキ条件として、上記のとおり、ポリウレタン樹脂及び耐熱樹脂からなる所定配合率のバインダーに、選別銀フレーク50を所定の配合率で配合して銀ペーストインキの原液を調製し、かつ、この銀ペーストインキの原液を所定の希釈剤により非常に限定された希釈率で希釈した(粘度調整後の)銀ペーストインキを使用している。
【0040】
また、スクリーン条件としては、所定メッシュサイズ(例えば、100〜500メッシュの範囲内の任意のメッシュサイズ)で、所定の紗厚のスクリーン110を使用している。なお、スクリーン110としては、前記選別銀フレーク50の最大粒径のもの(例えば、5μmのもの)が通過する開口径を有するメッシュサイズのスクリーン110を使用する。このスクリーン110は、マスク部111により所定の導電層パターン20を形成するようマスクされている。即ち、スクリーン110は、スクリーン110のマスク部111により、所定の導電層パターン20に対応するマスク開口部112を形成している。
【0041】
更に、印刷条件としては、所定の材質(例えば、硬度60〜90度の範囲の任意の値の硬度を有するポリウレタンゴム、又は、シリコン)で所定形態(例えば、平形)のスキージ120を使用している。
【0042】
また、印刷条件として、図15に示すように、スキージ120のアタック角θ1は所定の角度に設定されている。アタック角θ1は、例えば、70度以下の範囲内の任意の値とすることができ、高粘度となる(本実施の形態を含む)本発明の銀ペーストインキをスクリーン110のマスク開口部112に円滑に充填できるよう、30〜35度の角度範囲、35〜40度の角度範囲、40〜45度の角度範囲、45〜50度の角度範囲等、70度の角度よりも大幅に小さな角度とすることもできる。更に、印刷条件として、印圧Fを所定圧力に設定することで、スキージ120の硬度(及び、硬度に依存して決定される弾性率)との関連で、印刷時に、実際のスキージ角度θ2が、前記アタック角θ1よりも小さい所定の角度に維持されるようにしている。(本実施の形態を含む)本発明では、高粘度となる本発明の銀ペーストインキのスクリーン110への充填性を高めるため、前記アタック角θ1ではなく、前記実際のスキージ角度θ2が、30〜35度の角度範囲、35〜40度の角度範囲、40〜45度の角度範囲、45〜50度の角度範囲等、70度の角度よりも大幅に小さな角度となるよう、印圧F及びスキージ120の硬度を設定してもよい。また、印刷条件として、スキージ速度(印刷速度)Vは、所定の速度に設定されている。例えば、スキージ速度Vは、1mm〜100mm/secの範囲とすることができ、好ましくは、高粘度の銀ペーストインキの印刷品質を高めると共に量産性を高めるため、両者のバランスを考えて、例えば、1〜5mm/sec、5〜10mm/sec、10〜15mm/sec、15〜20mm/sec、20〜25mm/sec、25〜30mm/sec、30〜35mm/sec、35〜40mm/sec、40〜45mm/sec、又は、45〜50mm/sec等の範囲とすることができる。
【0043】
上記印刷条件でのスクリーン印刷においては、例えば、図14に示すように、銀ペーストインキからなる原料インキ130が、スキージ120の移動に伴って、スクリーン110のマスク開口部112にローリングしながら充填される。このとき、原料インキ130は、図14に示すように、スクリーン110のマスク開口部112の直前の位置(図14(a)の位置)から、マスク開口部112上を転動して、まず、マスク開口部112の奥側の壁面と接触し、その接触抵抗によって、当該奥側の壁面部分から充填される(即ち、図15の区間1L1の部分から充填開始される。)。次に、原料インキ130は、マスク開口部112上を更に転動して、図14のスクリーン110のマスク開口部の奥側から手前側に代えて順次充填される。なお、原料インキ130は、マスク開口部112上を転動(ローリング)することによって、(そのチキソ性によって)その粘度を低下させるため、原料インキ130のマスク開口部112への充填が容易かつ円滑に行われることになる。
【0044】
ここで、図15に示すように、スクリーン110のマスク開口部112の区間1L1(奥側の部分)では、スキージ速度Vと(アタック角θ1により影響される)原料インキ高さHとが、区間1L1への原料インキ130の充填効率に大きな影響を与える。一方、マスク開口部112の区間3L3(手前側の部分)では、スキージ速度V、アタック角θ1、及び、実際のスキージ角θ2が、区間3L3への原料インキ130の充填効率に大きな影響を与える。なお、マスク開口部112の区間2L2(スキージ120の移動方向における中間部分)では、(印圧Fやスクリーン110自体の可撓性によって決定される)押し込み量stと、印圧Fとが、区間2L2への原料インキ130の充填効率に影響を与える。したがって、(本実施の形態を含む)本発明では、スクリーン110のマスク開口部112における区間1L1、区間2L2及び区間3L3でのインキ充填動作を均質かつ効率よく行うために、各区間L1,L2,L3におけるスキージ速度V、アタック角θ1、及び、実際のスキージ角θ2等の各パラメータを最適な値に設定する。
【0045】
上記のようにして、原紙100に銀ペーストインキをスキージ120によってスクリーン印刷することにより、図16に示すように、原料インキ130が、ローリングしながら、スクリーン110の各マスク開口部112に充填され、スクリーン110の下の原紙110の印刷面に印刷される。
【0046】
このとき、図17に示すように、スクリーン印刷の印刷ギャップによる版離れ動作時において、版離れ開始時は、スクリーン110のマスク開口部112内の原料インキ130は、マスク開口部112の壁面との間でのせん断方向へのせん断応力によって、せん断変形部131を発生する。よって、原料インキ130は、このせん断変形部131でのせん断変形力による(チキソ性による)粘度低下によって、マスク開口部112から円滑に抜け出て、原紙100の面に、導電層20Aとして印刷される。
【0047】
その結果、図17に示すように、スクリーン110の完全な版離れ時に、原紙100の面には、前記導電層20Aが所定のパターンで印刷されて、最終的に、原紙100上に所定パターン形状の導電層パターン20を形成する。
【0048】
<印刷方向>
(本実施の形態を含む)本発明では、上記スクリーン印刷において、図4(a)に示す原紙100の長さ方向(図中左右方向)に、導電層パターン20の直線状の導通部23の長さ方向が一致するよう、スクリーン110をマスク部111によりマスクして、マスク開口部112を形成し、そのスクリーン110によりスクリーン印刷を行う。これにより、スクリーン印刷時には、スキージ120の移動方向とスクリーン110のマスク開口部112における導通部23部分の長さ方向とが一致するため、原紙100に多数の導電層パターン20を円滑、かつ、高品質で印刷することができる。
【0049】
[導電層パターンの特徴的構成(本発明の主要な特徴)]
<銀ペーストの銀粒子の素材>
本実施の形態の識別子提供装置は、導電層パターン20を形成する銀ペーストの銀粒子として、図12(a)に示すような鱗片状、薄片状又はフレーク状の銀粒子からなる銀フレークであって、極小厚みで均一粒径を有するように調製及び/又は選別して得られた選別銀フレーク50を使用する。なお、同図に示す選別銀フレーク50の外形輪郭は模式的なものであり、実際の選別銀フレーク50は、通常の銀フレークと同様に、外形輪郭が様々で一定に定まることのない鱗片状となっている。この選別銀フレーク50は、(不純物を除いて)実質的に銀100%(純銀)のフレーク状粒子である。なお、導電層パターン20を形成する銀ペーストの選別銀フレーク50を、純銀(銀100%)以外の銀素材(即ち、銀合金)により形成することは好ましくない。即ち、そのような(純銀以外)銀素材では、銀フレークの形状を後述する所定のフレーク形状に維持することが困難であるため、導電層パターン20を形成する銀ペーストの選別銀フレーク50は、銀100%の銀素材により形成する必要がある。また、銀以外の高導電材料として、銅又は銅含有銀合金があるが、これらの金属素材では、本実施の形態の純銀製の選別銀フレーク50と同等の特性(主にその厚みに起因する特性)を得ることが困難である。即ち、純銀は(金に次いで)展性/延性が良好なため、本発明の導電層パターン20に要求される平均厚みを後述する所定厚み(典型的には、平均厚み約50nm)として確保し、後述する本発明の導電層パターン20に特有の効果を発揮することができるが、その他の(金を除く)金属素材では、本発明の導電層パターン20に要求される平均厚みをかかる極小厚みとして確保することができない。一方、金は、銀よりも展性/延性に富むため平均厚みを極小厚みとする点からはより好ましいが、金は銀よりも相当高価となるため、コスト面から、やはり銀を使用することが好ましい。更に、比抵抗(抵抗率)は、銀の方が金よりも若干良好であるため、導電性の点からも銀を使用することが好ましい。(比抵抗:金=2.21×10−8Ωm(2.21×10−6Ωcm)、銀=1.59×10−8Ωm(1.59×10−6Ωcm)。)
【0050】
<銀ペーストの各選別銀フレークの平均厚み>
本発明及び本実施の形態の識別子提供装置の導電層パターン20を形成する銀フレークは、上記のように、所定の小さい厚み、かつ、略均一粒径(非常に限定された粒径範囲)を有するように調製及び/又は選別して得られた選別銀フレーク50のみからなり、選別銀フレーク50以外の銀粒子は全く含有していない。この選別銀フレーク50は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察により測定した平均厚みが、前記所定厚み(典型的には、約50nm)となっている。なお、選別銀フレーク50として、50nmよりも小さい平均厚みの銀フレークを使用することも理論上は可能であるが、実用的には、50nmよりも小さい厚みの銀フレークを製造する困難性(製造困難性)、製造コスト、量産性等の観点から、選別銀フレーク50としては、平均厚み約50nmのものを使用することが好ましい。ここで、選別銀フレーク50の平均厚みとしての50nmは、このように非常に小さい厚みの選別銀フレーク50の1枚の厚みを計測することが非常に困難であることから、多数枚の積層状態にある選別銀フレーク50のうち、所定枚数(例えば、10枚)だけの積層状態の選別銀フレーク50の集合体の合計厚みを、例えばSEM観察により計測して、その合計厚みを前記所定枚数で除することにより算出している。例えば、積層枚数10枚の選別銀フレーク50の集合体の合計厚みが、SEM観察により約500nmとなることから、1枚の選別銀フレーク50の平均厚みが(500nm/10=)約50nmであると算出している。
【0051】
<銀ペーストの各選別銀フレークの平均厚み及び厚み分布(極小厚み部分の存在)>
前記各選別銀フレーク50は、前記所定の平均厚みの典型例として約50nmの平均厚みを有しているが、場合によっては、50nm〜60nmの範囲、50nm〜55nmの範囲等、50nmを実用的な下限値として上方にある程度の幅を有する所定範囲を、前記平均厚みとして有する場合もある。また、各選別銀フレーク50は、図12(b)に示すように、基本的には、その中央部や端部を含めた全体が均一な厚みとなっているわけではなく、部位に応じて異なる厚みを有している。具体的には、各選別銀フレーク50は、模式的に単純化して説明すると、最大厚T1の最大厚み部分、最小厚T3の最小厚み部分、及び、(最大厚T1及び最小厚T3の中間的な厚みである)中間厚T2の中間厚み部分を有している。前記最大厚T1は、選別銀フレーク50の前記平均厚み(約50nm)よりも大きく、例えば、最大で100nm程度となる(典型的には、50nm〜100nmの範囲内)。また、前記最小厚T3は、前記平均厚みよりも小さく、例えば、最小で25nm程度となる(典型的には、30〜50nmの範囲内であり、小さいものでは20〜40nm、25nm〜35nm、若しくは、20nm〜30nmの範囲内)。この最小厚みT3の最小厚み部分は、極小厚部分として、基本的には、選別銀フレーク50の外周縁部に存在するが、外周縁部よりも中央側の部分(極端な場合は中央部)に存在する場合もあると考えられる。なお、図12(b)は、かかる選別銀フレーク50の厚み分布を模式的に単純化して示すための説明図であり、説明の便宜上、選別銀フレーク50の中央位置の部位を最大厚T1として、外周縁近傍位置の部位を最小厚T3とすると共に、中央位置と外周縁近傍位置との間の中間位置の部位を中間厚T2として描画しているが、上記のとおり、最大厚T1、中間厚T2及び最小厚T3は、それぞれ、中央位置、中間位置及び外周縁近傍位置に存在するとは限らず、別の位置に存在する場合もある。
【0052】
<銀ペーストの各選別銀フレークの極小厚み部分による特徴>
いずれにしても、後述するように、(本実施の形態を含む)本発明では、選別銀フレーク50において厚みが前記平均厚み以下(好ましくは、上記のように、50nm以下)となる全ての部分(以下、「極小厚み部分」ということがある。)の極小厚みを利用して、互いに積層状態にあり隣接して当接又は密着する選別銀フレーク50間の前記極小厚み部分を、(銀ペーストの加熱処理用の)所定の第1の加熱温度域での加熱によって部分溶融させることで、それらの極小厚み部分間の溶着を達成することを主要な特徴の一つとしている。なお、この「部分溶融」とは、選別銀フレーク50の少なくとも前記「極小厚み部分が溶融」状態となる(即ち、その他のより厚みの大きい部分は基本的には「溶融」状態にならない)との意味で使用している。即ち、前記第1の加熱温度域は、少なくとも選別銀フレーク50の前記極小厚み部分が溶融状態となる(即ち、「部分溶融」状態となる)温度域であって、その下限値が約200℃であり、典型的には、その上限値を約300℃に設定し、約200℃〜約300℃の温度範囲、約200℃〜約250℃の温度範囲、約200℃〜約230℃の温度範囲、約230℃〜約300℃の温度範囲、約230℃〜約250℃の温度範囲、約250℃〜約300℃の温度範囲等の種々の温度範囲とすることができる。なお、かかる第1の加熱温度域を、以下、説明の便宜上、「部分溶融温度域」ということがある。また、当該部分溶融温度域において、約230℃未満の温度域(即ち、約200℃〜約230℃の温度域)では、選別銀フレーク50の極小厚み部分において前記「部分溶融」状態とならない部分が多少なりとも存在する可能性があることを本発明者らは実験等により確認しているが、約230℃を下限値とする温度域(即ち、約230℃以上の温度域)では、選別銀フレーク50の極小厚み部分が前記「部分溶融」状態となる割合を大きく高めることができ、更に、約250℃を下限値とする温度域(即ち、約250℃以上の温度域)では、選別銀フレーク50の極小厚み部分が前記「部分溶融」状態となる割合をほぼ100%又は100%にすることができることを、本発明者らは実験等により確認している。
【0053】
こうすることで、前記部分溶融温度域での加熱によって、原紙100に塗布した原料インキ130の銀ペースト中の隣接する選別銀フレーク50が、少なくとも、それらの極小厚み部分で部分溶融して当該極小厚み部分において部分的に溶着(部分溶着)し、それらの極小厚み部分間の溶着部(部分溶着部)を介して、隣接配置される選別銀フレーク50間の電気伝導率(及び比抵抗の特性)を飛躍的に向上し、最終的に、多数の選別銀フレーク50が積層した状態にある導電層パターン20の比抵抗を所望の比抵抗値(10−5Ωcmオーダーの比抵抗値)となるようにしている。なお、選別銀フレーク50の極小厚み部分は、典型的には、前記最小厚T3の最小厚み部分であり、これに加えて、中間厚み部分や、中間厚み部分と最小厚み部分との間の部分の厚みが50nm以下となる場合の当該部分や、中間厚み部分と最大厚み部分との間の部分で厚みが50nm以下となる場合の当該部分も、前記極小厚み部分となる。
【0054】
また、(本実施の形態を含む)本発明の選別銀フレーク50は、前記第1の加熱温度域よりも低い温度域である所定の第2の加熱温度域による加熱であっても、特に前記極小厚み部分が、(前記「部分溶融」状態にはならないものの)軟化状態、又は、溶融状態に近づく状態となり、銀ペースト中で隣接配置される選別銀フレーク50が、少なくとも、それらの極小厚み部分で容易に軟化変形して当該極小厚み部分において部分的に凝集(部分凝集)し、それらの極小厚み部分間の凝集部(部分凝集部)を介して、隣接配置される選別銀フレーク50間の電気伝導率(及び比抵抗の特性)を(前記「部分溶着」の場合よりは低いものの)大幅に向上し、最終的に、多数の選別銀フレーク50が積層した状態にある導電層パターン20の比抵抗を所望の比抵抗値(10−5Ωcmオーダーの比抵抗値)となるようにすべく機能する。前記第2の加熱温度域は、選別銀フレーク50の少なくとも前記極小厚み部分が軟化凝集状態となる(即ち、「部分凝集」状態となる)温度域であって、その上限値が200℃未満の温度値であると共にその下限値が約80℃の温度値であり、典型的には、約80℃〜約200℃の温度範囲、好ましくは、約80℃〜約180℃の温度範囲、更に好ましくは、約80℃〜約150℃の温度範囲とすることができる。或いは、第2の加熱温度域は、約150℃〜約200℃の温度範囲、約150℃〜約180℃の温度範囲、約80℃〜約130℃の温度範囲等、他の温度範囲とすることもできる。なお、かかる第2の加熱温度域を、以下、説明の便宜上、「部分凝集温度域」ということがある。
【0055】
更に、本発明では、選別銀フレーク50において厚みが、25nm〜35nm、20nm〜30nm、若しくは、20nm〜35nmの範囲内となる全ての部分(以下、「超極小厚み部分」ということがある。)の超極小厚みを利用して、互いに積層状態にあり隣接して当接又は密着する選別銀フレーク50間の前記超極小厚み部分を、前記部分溶融温度域でより確実に部分溶融(或いは、当該超極小厚み部分の全体を完全溶融)させることで、それらの超極小厚み部分間の溶着を達成することを主要な特徴の一つとしている。こうすることで、(前記極小厚み部分の部分溶着部に加えて)それらの超極小厚み部分間の溶着部を介して隣接配置される選別銀フレーク50間の電気伝導率(及び比抵抗の特性)を飛躍的に向上し、最終的に、多数の選別銀フレーク50が積層した状態にある導電層パターン20の比抵抗を所望の比抵抗値(10−5Ωcmオーダーの比抵抗値)となるようにしている。なお、選別銀フレーク50の超極小厚み部分は、典型的には、前記最小厚T3の最小厚み部分である場合がほとんどであると考えられるが、前記極小厚み部分の場合と同様、これに加えて、中間厚み部分やその他の部分が超極小厚み部分となる可能性も皆無ではないと考えられる。
【0056】
<銀ペーストの選別銀フレークの粒径及び粒径範囲(略均一粒径)>
前記導電層パターン20を形成する銀ペーストの選別銀フレーク50は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察により測定した粒子径が、非常に小さく、かつ、非常に限定された粒径範囲(典型的には、約3.5〜約4.5μmの小さな粒径範囲、以下、「極小限定粒径範囲」ということがある。)に収まる銀フレークのみから構成され、基本的には、かかる極小限定粒径範囲以外の銀フレークは全く含有しておらず、当該極小限定粒径範囲(即ち、非常に小さい粒径で、かつ、非常に狭い粒度分布の)の選別銀フレーク50のみが銀粒子として使用されている。即ち、銀フレークは、一般に、製造後の製品形態として必ずある程度の粒度分布を有し、その粒度分布は、通常、少なくとも数μmの範囲の粒度分布(少なくとも3μm以上又は4μm以上のばらつき)を有する。しかし、本発明は、かかる粒度分布を有する銀フレークを分級してその粒度を選別し、所定範囲の限定された粒径の銀フレークのみを選択的に使用して選別銀フレーク50を構成し、当該限定粒径範囲の選別銀フレーク50のみで調製した銀ペーストを使用して導電層パターン50を形成している。換言すれば、選別銀フレーク50は、(図示はしないが)粒度分布グラフにおいて粒子径が非常に狭い粒子径範囲内(典型的には、1μm程度の粒子径範囲内)に包含される銀ペーストのみを選別して使用しており、粒度分布グラフにおいて非常にシャープな立ち上がり及び立下りの粒度分布を有する(具体的には、上記限定粒径範囲の場合は、粒子径「3.5μm」の近辺からほぼ垂直に急激に立ち上がり、粒子径「4.5μm」の近辺でほぼ垂直に急激に立ち下がる粒度分布を有している)。かかる限定粒径範囲を有する選別銀フレーク50の粒径は、例えばレーザー回折・散乱式粒子径・粒度分布測定法による測定結果を利用して確認することができる。
【0057】
<銀ペーストの選別銀フレークの粒径及び粒径範囲(略均一粒径)の別例>
ところで、本発明の選別銀フレーク50の粒径は、上記のように約3.5〜約4.5μmの範囲とすることが望ましいが、これ以外にも、前記限定粒径範囲(1μm程度の範囲)内に粒径を収める限りにおいて、例えば、3.0〜4.0の範囲内の粒径、4.0〜4.5μmの範囲内の粒径とする等、他の粒径とすることも可能である。ただ、銀フレークの製造技術上の制限等を含む実用的な見地からは、選別銀フレーク50の粒径は、上記のように約3.5〜約4.5μmの範囲とすることが望ましい。
【0058】
<銀ペーストの選別銀フレークの粒径と粒径範囲との関係>
また、(本実施の形態を含む)本発明では、銀ペーストの選別銀フレーク50は、前記粒径範囲(3.5〜4.5μm)のうち、中央値(4.0μm)から最大値(4.5μm)までの幅(比率)が、(0.5/4.0=)12.5%であり、中央値(4.0μm)から最小値(3.5μm)までの幅(比率)が、同じく、(0.5/4.0=)12.5%であり、中央値の上下にそれぞれ12.5%の幅(全体で25%の幅)を備える粒度分布を有することになるが、この点も、上記のような特有の効果(微細印刷の実現等)を得る観点からは、本発明の特徴の一つとなる。
【0059】
<銀ペーストの選別銀フレークの限定粒径範囲による特徴>
上記のように、本発明では、上記限定粒径範囲内に粒子径が限定された選別銀フレーク50のみを銀ペーストに含有し、その銀ペーストによって前記導電層パターン20を形成することで、導電層パターン20を形成する選別銀フレーク50が、上記の約3.5μm〜約4.5μmという非常に小さな粒径を有する一方で、その粒径範囲が、上記の(約1μmの範囲という)非常に狭い範囲に集中しており、かかる選別銀フレーク50は、実質的に粒径が前記極小粒径(約3.5μm〜約4.5μm)でほぼ均一化した銀フレークの集合体とみなすことができる。かかる選別銀フレーク50は、その小さな粒径と均一化された粒径範囲を有することにより、導電層パターン20の導電層形成工程において、バインダーと共に銀ペーストに含有されて基材10にスクリーン印刷されるときに、鱗片状の外形を有するにもかかわらず、スクリーン(メッシュ版)のマスク開口部を容易かつ円滑に通過し、マスク開口部周縁にあるメッシュ(紗)に干渉してマスク開口部の通過を妨げられることがない。したがって、このとき、銀ペーストに含有される選別銀フレークの一部がスクリーンを通過できずにスクリーンに目詰まりする不具合を生じることはない。その結果、銀ペーストに含有される選別銀フレークの全てが、基材10上に印刷形成された(導電層を形成することになる)銀ペースト層の内部に含有され、銀ペースト中の銀フレークの本来の充填密度を維持することができる。
【0060】
即ち、銀ペースト中の選別銀フレークの含有率は、後述するように、(従来の銀ペーストにおける銀粒子の含有率よりも大幅に低い)所定の含有率に設定されるが、本発明では、銀ペーストに含有される選別銀フレークの全てが、基材10上に印刷形成された銀ペースト層の内部に含有される(即ち、その含有率が低下することがない)ことになり、銀ペースト中の銀フレークの本来の含有率を維持して、導電層中における選別銀フレーク50の充填密度を所定の密度に維持することができ、これにより、当該所定の充填密度による所期の導電効率を発揮することができる。特に、例えば、導電層パターン20の導通部23を微細幅とする場合等、微細な印刷を行うために、メッシュ数の大きなスクリーンを使用する場合(即ち、スクリーンのマスク開口部の径が非常に小さくなる場合)でも、選別銀フレーク50は、鱗片状の外形を有するにもかかわらず、球状の銀粒子と同様に、スクリーンのマスク開口部を円滑に通過するため、この場合でも、導電層を形成する銀ペースト中の銀フレークの本来の含有率を維持して、導電層中における選別銀フレーク50の充填密度を所定の密度に維持することができ、導電層パターン20として非常に微細なパターンの印刷が可能となる。
【0061】
<銀ペースト中の選別銀フレークの含有率(導電層中の充填密度)>
(本実施の形態を含む)本発明では、導電層パターン20を形成する銀ペーストは、前記選別銀フレーク50を所定の含有率で含有しているが、上記のように十分に優れた比抵抗(10−5Ωcm)を達成する一方で、従来の銀ペーストと比較してその含有率を大幅に少なくしており、(高価な銀の相対的使用量を低減することで)原料コストの低減に寄与している。詳細には、従来の銀ペーストは、例えば、球状の銀粒子を使用する場合、10−5Ωcmレベルの比抵抗を得るためには、銀粒子の含有率は、80〜90%とする必要がある。一方、(本実施の形態を含む)本発明では、銀ペーストは、前記選別銀フレーク50の含有率を30〜45%(重量%)の範囲内としているが、10−5Ωcmレベルの比抵抗を得ている。これは、選別銀フレーク50が、上記のような極小粒径及び限定粒径範囲を有し、スクリーン印刷された基材10上の導電層において所定の含有率(及び充填率)を確実に維持しており、かつ、上記の極小厚み部分又は超極小厚み部分を有することで、後述するように、隣接する選別銀フレーク50間に部分溶着部(及び/又は、温度域によっては前記部分凝集部)が形成されて、特にその部分溶着部により形成された導電層の比抵抗が飛躍的に向上しているため、従来よりも大幅に少ない銀フレークの含有率であっても、その銀ペーストによる導電層が所望の比抵抗を確保することができるためであると考えられる。ここで、銀ペースト中の選別銀フレーク50の含有率は、(最低必要量又は下限値として)30%(重量%)の含有率とすることができ、又は、30〜35%、35〜40%、40〜45%等の範囲、若しくは、それらの範囲内の任意の値とすることもできる。一方、銀ペースト中の選別銀フレーク50の含有率は、形成した導電層において所望の比抵抗(少なくとも10−5Ωcmレベルの比抵抗)を確実に得るために、40〜45%の範囲、又は、当該範囲内の任意の値(例えば、40%又は45%)とすることが好ましい。
【0062】
<導電層を形成する銀ペースト中の選別銀フレークの積層状態(略平行積層)>
図12(c)の模式図に示すように、導電層パターン20の原材料である銀ペーストSPは、バインダー60中に選別銀フレーク50を前記所定の含有率で分散して含有しており、スクリーン印刷により原紙100上に印刷された直後の(加熱乾燥前の)状態では、所定厚みの層状又は膜状をなしている。なお、スクリーン印刷により銀ペーストをスクリーンを介して原紙100上に印刷したときに、バインダー中60に分散する選別銀フレーク50は、自身の鱗片形状等によるバインダー60中での姿勢変更により、図12(c)に示すように、バインダー60中で互いにほぼ平行となるよう配向される。そして、原紙100上の銀ペーストSPの層を加熱乾燥すると、バインダー60の揮発分(及び、銀ペーストSPが希釈剤を含有する場合の希釈剤)が揮発し、前記導電層パターン20の導電層を形成する。この導電層は、バインダーの固形分及び選別銀フレーク50からなる前記所定厚みの薄膜状をなしている。このとき、導電層の内部では、隣接する選別銀フレーク50が、(加熱等による)バインダー60の固化収縮に伴う収縮応力によって少なくとも一部を重なり合わせ、その重なり合い部分で相互に面接触して電気伝導する。或いは、導電層の内部では、隣接する選別銀フレーク50が、バインダー60の固化収縮に伴う収縮応力によって(密接するまでは至らないが)近接し、バインダー60の固形分を間に挟んで近距離で対向する場合もあるが、この場合でも、近接状態の選別銀フレーク50間のバインダー60が絶縁破壊することにより電気伝導が確保される。
【0063】
<導電層パターン中の積層状態の選別銀フレークの一部融着構造>
更に、本発明では、上記原紙100上の銀ペーストSPを加熱処理することで、最終的な導電層としての導電層パターン20を形成するが、この導電層パターン20内部の選別銀フレーク50は、上記のように、最大厚T1から最小厚T3までの厚みを有する。そして、導電層パターン20内部の選別銀フレーク50は、少なくとも、厚み50nm以下となる極小厚み部分では、スクリーン印刷後の加熱乾燥工程における前記部分溶融温度域での加熱処理により、少なくとも部分的に溶着又は融着している(或いは、前記部分凝集温度域での加熱処理により、少なくとも部分的に凝集している)。詳細には、原紙100上の銀ペーストSPを所定の部分溶融温度域の加熱温度で所定時間だけ加熱処理する。この加熱乾燥工程における加熱温度は、好ましくは、基材10が加熱乾燥工程中の加熱により変質開始する温度(以下、「変質開始温度」ということがある。)よりも低い温度(変質開始温度未満の温度)とする。例えば、基材10として紙素材を使用する場合、紙素材の発火温度又は発火点よりも十分に低い温度域の温度とする。例えば、紙素材が模造紙等の一般的な洋紙の場合、発火点が450℃であることから、例えば、230℃未満の温度とし、好ましくは200℃未満の温度、又は、180度未満の温度とすることができる。或いは、この場合、加熱温度は、180〜230℃、180〜220℃、180〜210℃、180〜200℃、又は、180〜190℃の温度範囲とすることができる。或いは、この場合、加熱温度は、更に低い温度域として、150〜180℃、150〜170℃、又は、150〜160℃の温度範囲とすることもできる。更に、基材10が紙素材の場合、紙素材中の水分が飛散しない温度(即ち、1気圧の雰囲気の場合、100℃未満の温度、以下、「第1の低温度域」ということがある。)、或いは、第1の低温度域よりも更に所定温度(例えば、10〜15℃程度)低い第2の低温度域とすることもできる。こうすると、加熱乾燥工程における紙素材からなる基材10の変質を効果的に防止して、最終製品としての識別子提供装置の品質を良好に維持する点で望ましい。例えば、この場合、加熱温度は、70〜90℃、75〜85℃の温度範囲としたり、75〜80℃又は80〜85℃の温度範囲としたりすることができる。
【0064】
具体的には、例えば、加熱乾燥工程における所定の加熱温度を前記部分溶融温度域内の所定温度とする。ここで、図12(c)に示すように、原紙100上に印刷された導電層20Aの内部では、選別銀フレーク50が相互にほぼ平行となった状態で重なり合っている。このとき、図13(a)に示すように、(厚さ方向に)隣接する選別銀フレーク50が、バインダー中に分散された状態で、その全体がほぼ完全に重なり合うような場合、それらの選別銀フレーク50は、極小厚み部分又は超極小厚み部分が、典型的にはそれぞれの周縁部で、(基本的にはバインダー成分を間に挟んで)相互に重なり合うことになる。したがって、この場合、選別銀フレーク50の各々の極小厚み部分又は超極小厚み部分が、それぞれ、最小厚T3等の前記極小厚み(50nm以下の厚み)又は超極小厚み(25〜35nm等の厚み)となり、前記部分溶融温度域内の所定温度(以下、従来と比して相対的に低い銀ペーストの加熱温度域という意味で「相対的低温度域」ということがある。)でも、上記のように部分溶融状態となることを、本発明者らは、確認している。そして、この場合、図13(b)に示すように、前記相対的低温度域での加熱に伴い、バインダーの揮発成分が蒸散して、隣接する選別銀フレーク50が相互に密接し、それらの対向する極小厚み部分又は超極小厚み部分が溶融して互いに融着して融着部52となる。なお、選別銀フレーク50の極小厚み部分又は超極小厚み部分以外の部分は、(選別銀フレーク50が、溶融はしないものの、熱により軟化変形等して相互に距離を接近させることで)相互の面が密着する密着部51になっていると考えられる。その結果、隣接する選別銀フレーク50間で、特に融着部52を介して大きな電気伝導性を得ることができ、また、密着部51においても、良好な電気伝導性を得ることができる。なお、密着部51の一部においては、選別銀フレーク50間にバインダーの樹脂成分(固形分)が残留していることも考えられるが、この場合も、選別銀フレーク50間の間隔は(数nm又は数十nm程度と)非常に微細であると考えられ、この場合も、選別銀フレーク50間のバインダーの樹脂成分が絶縁破壊して、やはり、電気伝導性を確保することができると考えられる。
【0065】
次に、図13(c)に示すように、(厚さ方向に)隣接する選別銀フレーク50が、バインダー中に分散された状態で、その一部(径方向に半分程度)が重なり合うような場合、それらの選別銀フレーク50は、極小厚み部分又は超極小厚み部分が、典型的にはそれぞれの周縁部で、(基本的にはバインダー成分を間に挟んで)相互に重なり合うことになる。したがって、この場合も、選別銀フレーク50の各々の極小厚み部分又は超極小厚み部分が、それぞれ、最小厚T3等の前記極小厚み(50nm以下の厚み)又は超極小厚み(25〜35nm等の厚み)となり、前記相対的低温度域でも、そのサイズ効果によって溶融することを、本発明者らは、確認している。そして、この場合、前記相対的低温度域での加熱に伴い、図13(d)に示すように、バインダーの揮発成分が蒸散して、隣接する選別銀フレーク50が相互に密接し、それらの対向する極小厚み部分又は超極小厚み部分が溶融して互いに融着して融着部52となる。なお、選別銀フレーク50の極小厚み部分又は超極小厚み部分以外の部分は、上記と同様に、相互の面が密着する密着部51になっていると考えられる。その結果、隣接する選別銀フレーク50間で、特に融着部52を介して大きな電気伝導性を得ることができ、また、密着部51においても、良好な電気伝導性を得ることができ、更に、密着部51の一部においてバインダーの樹脂成分(固形分)が残留する場合でも、その絶縁破壊により電気伝導性を確保することができると考えられる。
【0066】
次に、図13(e)に示すように、(厚さ方向に)隣接する選別銀フレーク50が、バインダー中に分散された状態で、その周縁部のみが重なり合うような場合、それらの選別銀フレーク50は、極小厚み部分又は超極小厚み部分が、それぞれの周縁部で、(基本的にはバインダー成分を間に挟んで)相互に重なり合うことになる。したがって、この場合も、選別銀フレーク50の各々の極小厚み部分又は超極小厚み部分が、それぞれ、最小厚T3等の前記極小厚み(50nm以下の厚み)又は超極小厚み(25〜35nm等の厚み)となり、前記相対的低温度域でも、そのサイズ効果によって溶融することを、本発明者らは、確認している。そして、この場合、前記相対的低温度域での加熱に伴い、図13(f)に示すように、バインダーの揮発成分が蒸散して、隣接する選別銀フレーク50が相互に密接し、それらの対向する極小厚み部分又は超極小厚み部分が溶融して互いに融着して融着部52となる。なお、選別銀フレーク50の極小厚み部分又は超極小厚み部分以外の部分は、上記と同様に、相互の面が密着する密着部51になっていると考えられる。その結果、隣接する選別銀フレーク50間で、特に融着部52を介して大きな電気伝導性を得ることができ、また、密着部51においても、良好な電気伝導性を得ることができ、更に、密着部51の一部においてバインダーの樹脂成分(固形分)が残留する場合でも、その絶縁破壊により電気伝導性を確保することができると考えられる。
【0067】
このように、(本実施の形態を含む)本発明は、銀ペーストインキの銀粒子成分としての選別銀フレーク50が、(不純物を除いて)実質的に銀100%(純銀)であり、その良好な展性・延性によって、上記の微細な平均厚みを維持すると共に、極小厚み及び超極小厚みを確保しているため、選別銀フレーク50は、特に、その極小厚み部分及び超極小厚み部分で、(いわゆるサイズ効果により)所定の相対的低温度域内の温度で少なくとも部分的に溶融する。即ちまた、選別銀フレーク50の平均厚みを50nmとすると、前記相対的低温度域の下限値以上の温度、例えば、約200℃では、選別銀フレーク50が全体的に溶融開始し、230℃以上の温度では、選別銀フレーク50の全体が完全に溶融する。
【0068】
<導電層の厚み>
(本実施の形態を含む)本発明の識別子提供装置において、印刷及び加熱後の最終状態で、導電層パターン20は、厚みが5μm〜6μmの範囲内となるよう、前記スクリーン印刷プロセスにおいて、銀ペーストインキの塗布厚みを設定している。ここで、従来の銀ペーストを利用した導電層では、導電層の厚みが所定厚み以上ないと動作しないことが知られている。即ち、導電層のアスペクト比(厚み/幅)が、1:1程度等の大きな値でないと、十分な導電性を得られないとされている。また、従来、導電層に凹凸があると反応性が低下すると共に、歩留まりが低下することも知られている。そして、従来は、導電層に比抵抗10−5Ωcmを得るために、最低でも導電層の厚みが10μm程度は必要となっていた。
【0069】
一方、(本実施の形態を含む)本発明の識別子提供装置では、導電層パターン20の平均厚みは、従来の最低値とされている10μmの約半分の、5μm程度(或いは、5〜6μmの範囲)とされている。或いは、(本実施の形態を含む)本発明の識別子提供装置では、導電層パターン20の平均厚みは、1〜2μの範囲、1〜3μmの範囲等、更に小さな厚みとすることも可能である。ここで、導電層パターン20の平均厚みが5〜6μmの場合、その内部には、その厚み方向に、典型的には、(選別銀フレーク50の平均厚みから算定して)数十層〜百層未満の選別銀フレーク50が、一部融着状態(及び他の部分は略密接状態)で、互いに積層された状態にある。また、導電層パターン20の平均厚みが1μmの場合でも、その内部には、その厚み方向に、十数層程度(又は10〜20層程度)の選別銀フレーク50が、一部融着状態(及び他の部分は略密接状態)で、互いに積層された状態にある。このような非常に小さい平均厚みの導電層パターン20においても、十分な導電性を得ることができることを本発明者らは確認しているが、これは、上記のように、選別銀フレーク50が少なくとも一部で融着している(融着部52を形成している)ことに大きく依存すると考えられる。
【0070】
<導電層の厚みによる遮蔽層の効果>
(本実施の形態を含む)本発明の識別子提供装置では、上記のとおり、導電層パターン20の平均厚みが非常に小さい厚み(例えば、5μm〜6μm)であるため、基材10の導電層パターン20の上から遮蔽層(一次コート及び二次コート)を塗布して導電層パターン20を外部から遮蔽する場合に、導電層パターン20の輪郭が浮き出て目立つことがなく、外部からの視認に対する遮蔽性を非常に向上することができる。
【0071】
ここで、遮蔽層と一次コート及び二次コートの二層印刷とする場合において、特に遮蔽層を青色インキにより印刷形成する場合、上記のように、第1層をメッシュ状の青インクによる一次コート31とし、その上の第2層を青色べたインクからなる二次コートとすると、その遮蔽効果を向上することができる。
【0072】
一方、遮蔽層を白インキで印刷形成して、基材10上の導電層パターン20を外部から遮蔽する場合、一層のみの遮蔽層とすることも可能であるが、やはり、外部からの視認を確実に遮蔽するためには、遮蔽層を二層構造とすることが好ましい。なお、この場合、青色インキの場合のように、第1層をメッシュ状とすることは不要である。
【0073】
ここで、導電層パターン20の平均厚みが10μmになると、(本発明の平均厚みの5〜6μmの)約2倍になるため、基材10上の導電層パターン20を遮蔽層によって遮蔽しようとしても、導電層パターン20の厚みによってその輪郭が凸状に浮き出ることになり、印刷インキによる遮蔽が事実上不可能になる。したがって、この場合、更に肉厚の遮蔽フィルム又は遮蔽シートを基材10の導電層パターン20の上から貼付して導電層パターン20を外部から隠ぺいする必要があり、作業効率が大きく低下すると共に、製造コストが大きく上昇する。
【0074】
なお、上記のように、基材10の(銀色を呈する)導電層パターン20を白色インキの印刷で遮蔽する場合、銀色を呈する導電層パターン20の上に(銀色と)同系色のグレーインクを塗布して第1の遮蔽層を形成し、更にその上に、白色のインクを印刷して第2の遮蔽層と形成することができるが、この場合において、第2の遮蔽層の白色インキ層を、第1の遮蔽層のグレー色が透過して、基材10の裏面(導電層パターン20を形成する面)の全体がグレー調に見えることがある。この場合、第2の遮蔽層の上から、更に一層、第3の遮蔽層として白色層を塗布して、基材10の裏面(導電層パターン20を形成する面)の全体を白色調として、意匠性を向上することもできる。更に、第2の遮蔽層又は第3の遮蔽層の上に、ニス等により透明保護膜を塗布形成すると、遮蔽層の剥離を効果的に防止することができるが、この場合、合計4層となり、コスト高となるため、識別子提供装置の用途に応じて、(コストが見合う場合は)そのような透明保護膜を形成する。
【0075】
このように、(本実施の形態を含む)本発明の識別子提供装置は、基材10の導電層パターン20を外部から遮蔽(目隠し)する必要がある場合に、印刷インキで完全な遮蔽(目隠し)を行うことができるため、遮蔽フィルムや遮蔽紙等を貼付して遮蔽する場合に比較して、製造コストを大幅に低減することができる。
【0076】
また、基材10の導電層パターン20の遮蔽(目隠し)を行う場合にも、印刷による遮蔽層の数をあまり多くすると、製造コストもその分上昇し、また、識別子提供装置全田の外観に対する影響が無視できないため、やはり、数回程度で目隠し(2〜3層で遮蔽)することが好ましい。本発明の場合、導電層パターン20の平均厚みが非常に小さいため、1〜2回の印刷インキの印刷による積層形成で、基材10の導電層パターン20を完全に目隠しすることができる。これは、遮蔽層としての印刷インキ層(第1コート31、第2コート等)においても、数十〜数百ナノレベル又は数ミクロンレベルで、印刷インキが基材10の導電層パターン20の上に塗布形成されるためであると考えられる。即ち、従来のように、導電層の厚みが大きいと、その導電層の輪郭が必然的に外部に表れるため、導電層の厚みは小さいほど、外部からの遮蔽を行う場合に有利となる。例えば、従来の球状の銀粒子からなる導電層の場合、その平均厚みが30μm程度となり、そのような肉厚の導電層を印刷インキにより遮蔽して目隠ししようとしても、完全に目隠しすることができない。
【0077】
<銀ペーストインキの添加剤としてのシリコン(光拡散材)>
(本実施の形態を含む)本発明は、上記のように、基材10の導電層パターン20の遮蔽層としての印刷インキに、更に、シリコン粒子を所定の少量(例えば、2%程度)添加することができる。こうすると、この印刷インキにより遮蔽層を形成した場合において、遮蔽層の内部に分散するシリコン粒子により、遮蔽層を通過する光が乱反射され、遮蔽効果を更に向上することができる。即ち、上記のとおり、基材10の導電層パターン20を外部から遮蔽して見え難くするには、印刷インキの遮蔽層の数を増やすほどよいが(例えば、5〜6層にすることが好ましいが)、この場合、コスト高となる。よって、遮蔽層の数を増やす代わりに、遮蔽層用の印刷インキにシリコン粒子を所定の少量だけ添加して、その光乱反射効果を利用する。なお、上記の第1コート31用の青インキに2%のシリコン粒子を添加することで、導電層パターン20の外部からの視認を完全に抑制できることを、本発明者らは確認している。なお、遮蔽用の印刷インキに添加するシリコン粒子の量が多すぎると、シリコン粒子が、導電層パターン20の(選別銀フレーク50による)導電作用を阻害する可能性が大きくなるため、電気的反応が悪化する可能性が大きくなる。したがって、遮蔽用の印刷インキに添加するシリコン粒子の割合は、1〜3重量%の範囲の少量とすることが好ましく、2重量%とすることが更に好ましい。なお、遮蔽用の印刷インキに添加するシリコン粒子の割合は、1〜2重量%とすることも可能であるが、割合が1%に近付くにつれ、光乱反射効果が小さくなるため、やはり。2%に近い値とすることが好ましい。
【0078】
<導電層のアスペクト比(導通部)>
(本実施の形態を含む)本発明の識別子提供装置において、導電層パターン20の面方向のサイズとしては、例えば、導通部23を1mmの幅とし、PC側接触部24を7mmの直径とすることができる。この場合、導通部23の部分では、厚み:幅=5μm:1mm(1000μm)=1:200となり、アスペクト比(厚みに対する幅の割合)が200となる。ここで、従来の導電ペーストを利用した導電層による回路パターン形成の場合、導電層の幅に対する厚みが所定厚み以上ないと、即ち、そのアスペクト比がかなり小さい値でないと所定の導電動作を行うことができないとされている(典型的には、厚み:幅=1:1のアスペクト比1程度が望ましい値であるとされる場合もある)。
【0079】
一方、(本実施の形態を含む)本発明では、上記のとおり、例えば、導電層パターン20の導通部23においては、厚み:幅=5μm:1mm(1000μm)=1:200となり、アスペクト比が200と非常に大きなものになるにもかかわらず、PC側接触部24と延設部22との間の必要な導電性を確保できることを本発明者らは確認している。即ち、本発明は、導電層のアスペクト比を200程度(或いは、100〜200程度の範囲内)としても、良好な導電性を確保することができる技術であるといえる。
【0080】
<印刷による導電層の形成>
(本実施の形態を含む)本発明は、必要な導電層(即ち、導電層パターン20)を、全て、(スクリーン印刷等の)印刷技術によって量産することができる。従来の銀ペーストを含む導電ペーストを(紙等の)基材に印刷して導電層を形成する技術(以下、「従来の基材上導電層形成技術」ということがある。)では、(本実施の形態を含む)本発明のように、(プロトタイプは可能であるとしても)小ロット、大ロットを含めて、上記のように非常に小さい平均厚みの導電層を量産することは、非常に困難であった。即ち、従来の基材上導電層形成技術では、基材上に導電層を印刷形成しても、その導電層が十分に反応しない(即ち、導電層が通電していない)場合もあることを本発明者らは確認している。これは、基材上に銀ペースト等により導電層を印刷形成する場合は、基材上の導電層が凸凹になったり、スクリーン上のインクの盛り方が難しい等、解決すべき印刷技術上の課題があったためであると考えられる。例えば、導電層に凹凸がある場合、導電層の反応性が低下し、また、歩留まりが低下する。更に、印刷により基材上に導電層を形成する場合、印刷インキ(即ち、銀ペーストインキ)の特性に応じた混練方法も必要となる。(本実施の形態を含む)本発明は、上記のとおり、これらの印刷技術上の課題を解決し、量産化を可能にしている。そして、本発明は、例えば、導電層パターン20の導電性を飛躍的に向上することで、PC側接触部24を7mmという非常に小さな直径としても、タッチ式コンピュータ装置の静電容量式タッチ装置に対して十分な静電容量の変化を得ることができる。
【0081】
<他の印刷方法>
(本実施の形態を含む)本発明の識別子提供装置は、その製造において、上記のようにスクリーン印刷技術を利用する以外に、その他の印刷技術を利用することもでき、例えば、グラビア印刷技術を利用することも可能である。グラビア印刷の場合、基材10に形成する導電層パターン20の平均厚みを、スクリーン印刷の場合(上記平均厚み5〜6μm)よりも小さくすることができる(例えば、平均厚み1μmとすることができる。)。ただし、グラビア印刷の場合、グラビア印刷用のシリンダーのセル(凹型の窪み)の内部に、10〜20個の選別銀フレーク50を充填する必要があり、各セルの内部における選別銀フレーク50の充填率がこれ以下の場合、形成した導電層が断線する可能性がある。よって、各セルの内部における選別銀フレーク50の充填率が、10〜20の範囲となるよう、選別銀フレーク50の粒径は、スクリーン印刷の場合と同様、3.5〜4.5μmの範囲内とすることが好ましい。
【0082】
[作用及び効果]
本実施の形態の識別子提供装置は、使用者が手で基材10の把持部としてのタブ12を把持して、ベース部11の(タッチ式コンピュータ装置のタッチパネル等との対向面である)裏面側をタッチパネルに接近して当接させると、PC側接触部24がタッチパネルの対応する接触領域にそれぞれ面的に接触状態となり、前記複数のPC側接触部24がタッチパネルの(予め選択された複数の接触領域としての)ボタンに(同時に、或いは、若干のタイムラグを置いて)接触する。このとき、使用者が、識別子提供装置のタブ12を把持したときから(少なくとも、識別子提供装置をタッチパネルに押し当てたときに)、使用者の指とタッチパネルの前記選択した複数のボタンとが、導通部23を介して電気的に接続(電気的に導通)する。これにより、使用者の指とPC側接触部24が接触するボタンとの間で電荷が移動して、ボタンの静電容量が変化し、ボタンの組み合わせに対応して予め設定された固有の処理をタッチ式コンピュータ装置が実行する。
【0083】
{実施の形態2}
本発明の導電装置は、図19に示す実施の形態(実施の形態2)の識別子提供装置として具体化することができる。この識別子提供装置は、図19に示すように、所定形状となるよう一体形成された基材210と、基材210の面の所定の範囲に一体形成された導電層パターン220とを備える。基材210は、全体として一体のシート状に形成され、縦長長方形状の外形を有しており、その長さ方向一端側の主要部分である長方形部分をベース部211とし、残りの部分である長さ方向他端側の長方形部分を把持部212としている。基材210は、所定の紙質の1枚の紙材により前記ベース部211及び把持部212からなる(図19に示す)シート形状となるよう一体形成されている。
【0084】
一方、導電層パターン220は、人体側接地部としての指接触部221、汎用導線部としての延設部222、個別導線部としての導通部223、及び、PC駆動部としてのPC側接触部224からなる所定パターン形状の導電層である。導電層パターン220は、実施の形態1の導電層パターン20と同様、所定の選別銀フレークを含有するスラリー状の銀ペーストインキを、前記基材210のベース部211の裏面に所定のパターンとなるように塗布して形成される。詳細には、指接触部221は、実施の形態1のタブ12の裏面の指接触部21と同様、前記把持部212の裏面全体に塗布形成された所定膜厚の導電層であり、指接触部21と同様に動作して、使用者が把持部221を指により把持したときに、使用者の指と導通するための部分である。また、導通部222は、実施の形態1の導通部23と同様の構成であり、導通部23と同様に動作する。更に、PC側接触部223は、実施の形態1のPC側接触部24と同様の構成であり、PC側接触部24と同様に動作する。即ち、導通部222及びPC側接触部223は、それぞれ、ベース部211の裏面の所定位置及び所定部位に所定の配置態様で塗布形成された(前記指接触部212と同一の膜厚である)所定膜厚の導電層である。ここで、基材210のベース部211の長さは、例えば、基材210の全体の長さの約60〜90%の長さ、好ましくは、約60〜80%の長さ、更に好ましくは、約70%の長さとすることができ、一方、把持部212の長さは、例えば、基材210の全体の長さの約10〜40%の長さ、好ましくは、約20〜40%の長さ、更に好ましくは、約30%の長さとすることができるが、銀ペーストの使用量を削減するためには、把持部211の長さを短くしてその面積を小さくすることが好ましい。なお、導電層パターン220は、実施の形態1の導電層パターン20と同様の原料インキにより実施の形態1と同様にして形成される。
【0085】
実施の形態2の識別子提供装置は、実施の形態1の識別子提供装置と同様にして製造することができ、実施の形態1の識別子提供装置と同様の作用及び効果を発揮する。
【0086】
{実施の形態3}
本発明の導電装置は、図20に示す実施の形態(実施の形態3)の識別子提供装置として具体化することができる。この識別子提供装置は、図20に示すように、所定形状となるよう一体形成された基材310と、基材310の面の所定の範囲に一体形成された導電層パターン320とを備える。基材310は、全体として一体のシート状に形成され、縦長扇形状又は角丸二等辺三角形状の外形を有しており、その長さ方向一端側の主要部分である略台形部分をベース部311とし、残りの部分である長さ方向他端側の短い扇形状又は小さい二等辺三角形状部分を把持部312としている。基材310は、所定の紙質の1枚の紙材により前記ベース部311及び把持部312からなる(図20に示す)シート形状となるよう一体形成されている。なお、把持部312の表面は、実施の形態1の模様部13と同様の模様部313とされている。ここで、図20(a)は、この識別子提供装置の裏面側の構成を示しているが、説明の便宜上、基材310の裏面に遮蔽層を設けない状態(即ち、導電層パターン320を露出した状態)を描画している。即ち、基材310の裏面は、導電層パターン320を形成した後に、実施の形態1と同様の遮蔽層により被覆される。
【0087】
一方、導電層パターン320は、人体側接地部としての指接触部321、汎用導線部としての延設部322、個別導線部としての導通部323、及び、PC駆動部としてのPC側接触部324からなる所定パターン形状の導電層である。導電層パターン320は、実施の形態1の導電層パターン20と同様、所定の選別銀フレークを含有するスラリー状の銀ペーストインキを、前記基材310のベース部311の裏面に所定のパターンとなるように塗布して形成される。詳細には、指接触部321は、実施の形態1のタブ12の裏面の指接触部21と同様、前記把持部312の裏面のほぼ全体(図20の例では、下端の一部を除く全ての部分)に塗布形成された所定膜厚の導電層であり、指接触部21と同様に動作して、使用者が把持部312を指により把持したときに、使用者の指と導通するための部分である。また、導通部322は、実施の形態1の導通部23と同様の構成であり、導通部23と同様に動作する。更に、PC側接触部323は、実施の形態1のPC側接触部24と同様の構成であり、PC側接触部24と同様に動作する。即ち、導通部322及びPC側接触部323は、それぞれ、ベース部311の裏面の所定位置及び所定部位に所定の配置態様で塗布形成された(前記指接触部312と同一の膜厚である)所定膜厚の導電層である。ここで、基材310のベース部311の長さは、例えば、基材310の全体の長さの約50〜80%の長さ、好ましくは、約60〜70%の長さ、更に好ましくは、約60%の長さとすることができ、一方、把持部312の長さは、例えば、基材210の全体の長さの約20〜50%の長さ、好ましくは、約30〜40%の長さ、更に好ましくは、約40%の長さとすることができるが、銀ペーストの使用量を削減するためには、把持部311の長さを短くしてその面積を小さくすることが好ましい。なお、導電層パターン320は、実施の形態1の導電層パターン20と同様の原料インキにより実施の形態1と同様にして形成される。
【0088】
実施の形態3の識別子提供装置は、実施の形態1の識別子提供装置と同様にして製造することができ、実施の形態1の識別子提供装置と同様の作用及び効果を発揮する。
【0089】
{本発明の応用}
本発明は、上記のように構成したため、基材10,210,310として紙素材にも対応することができる。即ち、本発明は、従来の導電インクを、紙素材へ転用し(マテリアルを変更し)、デバイス化することができる。また、本発明は、印刷により基材上に所望の識別子(ID)を容易かつ確実に作成することができる。更に、本発明は、銀ペーストによる所定パターンの導電層を印刷により基材に形成することができるため、コンピュータ装置のソフトウエア処理で利用される識別情報(ID)を、必要に応じて個別に(一意となるよう)パターン化して容易に形成することができる。なお、本発明の導電装置を具体化した識別子提供装置は、導電層パターン20,220,320のパターン自体が(従来の電子回路のように)特定の意味を持つものではなく、バーコードと同様に、コンピュータ装置に読み込まれて、そのコンピュータ装置に一意の識別子を提供し、そのコンピュータ装置に対して、その一意の識別子に対応する処理又は動作を実行させるものであり、かかる識別子を提供する装置を、印刷技術により製造するものである。したがって、基本的には、識別子提供装置の導電層パターン20,220,320自体が特定のコンテンツとなることはなく(そのように構成することは可能であるが)、その導電層パターン20,220,320は、あくまで一意の識別子として機能するものであり、コンピュータ装置による処理は、その一意の識別子に基づく別個の処理として実行される。
【0090】
また、本発明の導電装置は、基材の材料として、紙以外にも、汎用性の高い電気的絶縁素材であれば任意の素材を利用することができ、例えば、アクリル樹脂、木、プラスチック、PET等の素材も使用可能であり、更には、(汎用性は低いが)陶器や石も使用可能である。
【0091】
更に、本発明の導電装置を具体化した識別子提供装置では、上記のように基材10,210,310上の導電層パターン20,220,320を外部から遮蔽層によって目隠しすることが基本であるが、遮蔽層を設けない場合もある。また、本発明の導電装置を具体化した識別子提供装置は、静電容量式タッチ装置以外にも、導電層の特定パターン形状を利用して駆動する構成の電子機器又はコンピュータ装置に適用することができ、例えば、NFC(近距離無線通信)に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の導電装置は、印刷により絶縁素材からなる各種の基材上に、所望の識別子(ID)を各種のパターンで形成する各種の識別子提供装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
10:基材、11:ベース部、12:タブ(把持部)、13:模様部
20:導電層パターン、21:指接触部、22:延設部、23:導通部
24:PC側接触部、31:遮蔽層、32:遮蔽層、50:選別銀フレーク
210:基材、211:ベース部、212:把持部
220:導電層パターン、221:指接触部、222:導通部、223:PC側接触部
310:基材、311:ベース部、312:把持部、313:模様部
320:導電層パターン、321:指接触部、322:導通部、323:PC側接触部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図18
図19
図20