【文献】
FEAGAN BRIAN G,TREATMENT OF ACTIVE CROHN'S DISEASE WITH MLN0002, A HUMANIZED ANTIBODY TO THE α4β7 INTEGRIN,CLINICAL GASTROENTEROLOGY AND HEPATOLOGY,米国,AMERICAN GASTROENTEROLOGICAL ASSOCIATION,2008年12月 1日,V6 N12,P1370-1377
【文献】
View of NCT01224171 on 2010_12_22,2010年12月22日,URL,https://clinicaltrials.gov/archive/NCT01224171/2010_12_22
【文献】
View of NCT00783692 on 2011_03_18,2011年 3月18日,URL,https://clinicaltrials.gov/archive/NCT00783692/2011_03_18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は抗α4β7抗体を含む製剤に関する。製剤は、非還元糖、抗α4β7抗体及び少なくとも1つの遊離のアミノ酸を含む混合物であってもよく、非還元糖と抗α4β7抗体のモル比(モル:モル)は600の還元糖:1の抗α4β7抗体を超える。製剤は固体形態又は液体形態であり得る。
【0042】
定義
用語「医薬製剤」は、有効であるべき抗体の生物活性を可能にするような形態で抗α4β7抗体を含有し、製剤が投与される対象に対して受け入れがたいほど毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。
【0043】
「安定な」製剤は、保存の際、その中の抗体がその物理的な安定性及び/又はその化学的な安定性及び/又はその生物活性を実質的に保持するものである。態様の1つでは、製剤は、保存の際、その生物活性と同様にその物理的な安定性及び化学的な安定性を実質的に保持する。保存期間は一般に製剤の意図される有効期限に基づいて選択される。タンパク質の安定性を測定する種々の分析法が当該技術で利用可能であり、たとえば、Peptide and Protein Drug Delivery,247−301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90(1993)にて概説されている。
【0044】
「脱アミド化された」モノクローナル抗体は、1以上のアスパラギン又はそのグルタミン残基がアスパラギン酸又はイソアスパラギン酸に誘導体化されているものである。
【0045】
「脱アミド化に感受性」である抗体は、脱アミド化しやすいことが分っている1以上の残基を含むものである。
【0046】
「酸化に感受性」である抗体は、酸化しやすいことが分っている1以上の残基を含むものである。
【0047】
「凝集に感受性」である抗体は、特に凍結、加熱、乾燥、再構成及び/又は撹拌の際、他の抗体分子と凝集することが分っているものである。
【0048】
「断片化に感受性」である抗体は、たとえば、そのヒンジ領域にて2以上の断片に切断されることが分っているものである。
【0049】
「脱アミド化、酸化、凝集又は断片化を低減する」ことによって、異なるpH又は異なる緩衝液にて製剤化されたモノクローナル抗体に比べて脱アミド化、凝集又は断片化を妨げる又はその量を減らす(たとえば、80%、60%、50%、40%、30%、20%又は10%に)ことを意味するように意図される。
【0050】
「凝集体」、「SEC凝集体」又は「可溶性凝集体」は、共有結合、イオン結合又は疎水性の相互作用を介して一緒に会合してさらに大きなタンパク質体を形成する1を超えて10以下の抗体タンパク質及び/又は断片である。
【0051】
「不溶性凝集体」又は「粒子」は、共有結合、イオン結合又は疎水性の相互作用を介して一緒に会合してさらに大きなタンパク質体を形成する10を超える抗体タンパク質及び/又は断片である。
【0052】
本明細書で使用されるとき、モノクローナル抗体の「生物活性」は、抗原に結合し、試験管内又は生体内で測定することができる測定可能な生物反応を生じる抗体の能力を指す。そのような活性は拮抗性又は作動性であってもよい。
【0053】
細胞表面の分子、「α4β7インテグリン」又は「α4β7」は、α4鎖(CD49D、ITGA4)及びβ7(ITGB7)のヘテロダイマーである。各鎖は代替のインテグリン鎖とヘテロダイマーを形成し、α4β1又はα
Eβ7を形成することができる。ヒトのα4とβ7の遺伝子(GenBank (National Center for Biotechnology Information, Bethesda, MD)、それぞれRefSeq受入番号NM_000885及びNM_000889は、B及びTリンパ球、特に記憶CD4
+リンパ球によって発現される。多数のインテグリンα4β7は通常、休止状態又は活動状態に存在し得る。α4β7のリガンドには、血管細胞接着因子(VCAM)、フィブロネクチン及び粘膜アドレシン(MAdCAM、(たとえば、MAdCAM−1))が挙げられる。
【0054】
本明細書で使用されるとき、「α4β7複合体に結合特異性」を有するヒト免疫グロブリン又はその抗原結合断片はα4β7に結合するが、α4β1又はαEβ7には結合しない。
【0055】
本明細書で使用されるとき、「等張の」製剤は、ヒト血液と実質的に同一の浸透圧を有する。等張の製剤は一般に約250〜350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、たとえば、蒸気圧型又は氷凍結型の浸透圧計を用いて測定することができる。
【0056】
本明細書で使用されるとき、「緩衝化剤」は、その酸/塩基抱合成分の作用によるpHの変化に耐性である緩衝液を指す。緩衝化剤は本発明の液体又は固体の製剤に存在し得る。本発明の緩衝化剤は、製剤のpHを約5.0〜約7.5に、約5.5〜約7.5、約6.0〜約6.5、又は約6.3のpHに調整する。態様の1つでは、5.0〜7.5の範囲にてpHを制御するであろう緩衝化剤の例には、酢酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、カコジレート、2−[N−モルフォリノ]エタンスルホン酸(MES)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビス−トリス)、N−[2−アセトアミド]−2−イミノジ酢酸(ADA)、グリシルグリシン、及び他の有機酸緩衝液が挙げられる。別の態様では、本明細書での緩衝化剤はヒスチジン又はクエン酸塩である。
【0057】
「ヒスチジン緩衝液」はヒスチジンイオンを含む緩衝液である。ヒスチジン緩衝液の例には塩化ヒスチジン、酢酸ヒスチジン、リン酸ヒスチジン、硫酸ヒスチジンの溶液が挙げられる。ヒスチジン緩衝液又はヒスチジン/HCl緩衝液は、pH約5.5〜約6.5の間、pH約6.1〜約6.5の間、又はpH約6.3のpHを有する。
【0058】
「糖類」は本明細書では、単糖類、二糖類、三糖類、多糖類、糖アルコール、還元糖、非還元糖などを含む一般式(CH
2O)
nを有する化合物及びその誘導体である。態様の1つでは、糖類の例には、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、シリトール、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、グルシトール、マルチトール、ラクチトール、イソ−マルツロース等が挙げられる。糖類は凍結保護剤であることができる。別の態様では、糖類は本明細書では非還元性の二糖類、たとえば、スクロースである。
【0059】
「界面活性剤」は本明細書では、液体の表面張力を低下させる剤を指す。界面活性剤は非イオン性界面活性剤であることができる。態様の1つでは、界面活性剤の例には、ポリソルベート(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、たとえば、ポリソルベート20及びポリソルベート80);TRITON(t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、非イオン性界面活性剤、ミシガン州、ミッドランドのダウケミカル社のユニオンカーバイド子会社);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;ナトリウムオクチルグリコシド;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−又はステアリル−スルホベタイン;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−又はステアリル−サクロシン;リノレイル−、ミリスチル−、又はセチル−ベタイン;ラウロアミドプロピル−、コカアミドプロピル−、リノレアミドプロピル−、ミリストアミドプロピル−、パルミドプロピル−、又はイソステアルアミドプロピル−ベタイン(たとえば、ラウロアミドプロピル);ミリストアミドプロピル−、パルミドプロピル−、又はイソステアルアミドプロピル−ジメチルアミン;ナトリウムメチルココイル−又は二ナトリウムメチルオレイル−酒石酸;モノパルミチン酸ソルビタン;及びMONAQUATシリーズ(ニュージャージー州、パターソンのモナ・インダストリーズ社);ポリエチルグリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)及びポロキシエチレンとポロキシプロピレングリコールのコポリマー(たとえば、プルロニクス/ポロキサマー、PF68等)などが挙げられる。別の態様では、界面活性剤はポリソルベート80である。
【0060】
本明細書での用語「抗体」は、最も広義で使用され、ヒトの抗体、ヒト化抗体及び非ヒト種に由来する抗体及び単一機能抗体や2機能抗体のような組換え抗原結合形態を含めて、完全長のモノクローナル抗体、免疫グロブリン、ポリクローナル抗体、たとえば、それぞれ異なる抗原又はエピトープに対する少なくとも2つの完全長の抗体から形成される多重特異性抗体(たとえば、二重特異性抗体)、及びdAbs、scFv、Fab、F(ab)’
2、Fab’を含む個々の抗原結合断片を具体的に網羅する。
【0061】
本明細書で記載される他の賦形剤に対する抗α4β7抗体のモル量及びモル比は、抗体についての約150,000ダルトンという近似分子量の仮定の上で算出される。実際の抗体の分子量は、アミノ酸組成及び転写後修飾によって、たとえば、抗体を発現させる細胞株によって150,000ダルトンとは異なり得る。実際の抗体の分子量は、150,000ダルトンの±5%であり得る。
【0062】
用語「ヒト抗体」には、ヒトの免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウス(たとえば、XENOMOUSE遺伝的に操作されたマウス(カリフォルニア州、フレモントのAbgenix)、HUMAB−MOUSE(登録商標)、KIRIN TC MOUSE(商標)導入染色体マウス、KMMOUSE(登録商標)(ニュージャージー州、プリンストンのMEDAREX))に由来する抗体のようなヒトの生殖細胞の免疫グロブリン配列、ヒトファージディスプレイライブラリ、ヒト骨髄腫細胞又はヒトB細胞に由来する配列を持つ抗体が含まれる。
【0063】
用語「モノクローナル抗体」は本明細書で使用されるとき、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、たとえば、一般的に軽微な集団で存在する変異体のようなモノクローナル抗体の産生の間に生じ得る考えられる変異体を除いて、集団を構成する個々の抗体が同一であり、及び/又は同一のエピトープを結合する。通常、異なる決定基(エピトープ)に向けられた異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に向けられる。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体の集団から得られるような抗体の特徴を指し示すのであって、特定の方法による抗体の調製を必要とするとは解釈されるべきではない。たとえば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体はKohlerら、Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよいし、又は組換えDNA法(たとえば、米国特許第4,816,567号を参照)によって作製されてもよい。「モノクローナル抗体」は、たとえば、Clacksonら、Nature,352:624−628(1991)及びMarksら、J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載された技法を用いてファージ抗体ライブラリから単離されてもよい。
【0064】
本明細書のモノクローナル抗体は具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種に由来する又は特定の抗体のクラス若しくはサブクラスに属する抗体における相当する配列と同一である又は相同である一方で、鎖の残りが別の種に由来する又は別の抗体のクラス若しくはサブクラスに属する抗体における相当する配列と同一である又は相同である「キメラ」抗体、同様にそのような抗体の断片を、それらが所望の生物活性を呈する限り、含む(米国特許第4,816,567号; and Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))。本明細書での当該キメラ抗体は、非ヒト霊長類(たとえば、旧世界のサル、類人猿等)に由来する可変ドメイン抗原結合配列とヒトの定常領域の配列を含む「霊長類化」抗体を含む。
【0065】
本発明の製剤で調製されるヒト化免疫グロブリンの「抗原結合断片」は、抗α4β7抗体の重鎖及び/又は軽鎖の少なくとも可変領域を含む。たとえば、ベドリズマブの抗原結合断片は配列番号4のヒト化軽鎖配列のアミノ酸残基20〜131を含む。そのような抗原結合断片の例には、当該技術で既知のヒト化免疫グロブリンのFab断片、Fab’断片、scFv及びF(ab’)
2断片が挙げられる。本発明のヒト化免疫グロブリンの抗原結合断片は、酵素切断又は組換え法によって作出することができる。たとえば、パパイン切断又はペプシン切断を用いてそれぞれFab断片又はF(ab’)
2断片を生成することができる。天然の停止部位の上流に1以上の停止コドンを導入した抗体遺伝子を用いて種々の切り詰めた形態で抗体を作出することもできる。たとえば、F(ab’)
2断片の重鎖をコードする組換え構築物を設計して重鎖のCH1ドメインとヒンジ領域をコードするDNA配列を含めることができる。態様の1つでは、抗原結合断片はα4β7インテグリンがそのリガンドの1以上(たとえば、粘膜アドレシンMAdCAM(たとえば、MAdCAM1)、フィブロネクチン)に結合するのを阻害する。
【0066】
抗体のパパイン消化は、それぞれ単一の抗原結合部位を持つ「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及びその名が結晶化し易いその能力を反映する残りの「Fc」断片を生じる。ペプシン処理によって、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することが可能であるF(ab’)
2断片が得られる。
【0067】
「Fv」は、非共有結合の会合にて重鎖可変ドメイン1つと軽鎖可変ドメイン1つの二量体から成る抗体断片である。
【0068】
Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体のヒンジ領域に由来する1以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での2、3の残基の付加によってFabとは異なる。Fab’−SHは定常領域のシステイン残基が少なくとも1つの遊離のチオール基を持つFab’についての本明細書での記号表示である。F(ab’)
2抗体断片は元々、その間にヒンジシステインを有する一対のFab’断片として作出された。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。
【0069】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のV
H及びV
Lドメインを含み、これらのドメインが単一ポリペプチド鎖に存在する。態様の1つでは、Fvポリペプチドはさらに、scFvが抗原結合の所望の表面を形成するのを可能にするV
H及びV
Lドメインの間でのポリペプチドリンカーを含む。scFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照のこと。
【0070】
用語「2機能性抗体」は、2つの抗原結合部位を持つ小型の抗体断片を指し、その断片は同一ポリペプチド鎖(V
H−V
L)にて可変軽鎖ドメイン(V
L)に接続された可変重鎖ドメイン(V
H)を含む。同一鎖における2つのドメイン間で対合できるには短すぎるリンカーを用いて、ドメインを強制的に他の鎖の相補性のドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を創る。2機能性抗体は、たとえば、EP404,097;WO93/11161;及びHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)にてさらに完全に記載されている。
【0071】
「完全長の抗体」は、軽鎖定常ドメイン(C
L)及び重鎖定常ドメインC
H1、C
H2及びC
H3と共に抗原結合可変領域を含むものである。定常ドメインは天然の配列の定常ドメイン(たとえば、ヒトの天然の配列の定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列の変異体であってもよい。態様の1つでは、完全長の抗体は1以上のエフェクター機能を有する。
【0072】
「アミノ酸配列の変異体」抗体は本明細書では、主要種抗体とは異なるアミノ酸配列を持つ抗体である。普通、アミノ酸配列の変異体は、主要種抗体との少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の相同性を持つであろう。アミノ酸配列の変異体は、主要種抗体のアミノ酸の範囲内で又はそれに隣接して特定の位置にて置換、欠失及び/又は付加を持つが、抗原結合活性を保持する。抗体の定常領域の配列における変異は可変領域における変異よりも抗原結合部位に対する影響が少ない。可変領域では、アミノ酸配列の変異体は、主要種抗体と少なくとも約90%相同性、少なくとも約95%相同性、少なくとも約97%相同性、少なくとも約98%相同性、又は少なくとも約99%相同性であろう。
【0073】
「相同性」は、配列を並べ、必要に応じてギャップを導入し、最大比率の相同性を達成した後、同一であるアミノ酸配列変異体における残基の比率として定義される。配列比較の方法及びコンピュータプログラムは当該技術で周知である。
【0074】
「治療用モノクローナル抗体」は、ヒト対象の治療法に使用される抗体である。本明細書で開示される治療用モノクローナル抗体には抗α4β7抗体が含まれる。
【0075】
「グリコシル化変異体」抗体は本明細書では、主要種抗体に連結される1以上の糖質部分とは異なる、それに連結される1以上の糖質部分を持つ抗体である。グリコシル化変異体の例には本明細書では、そのFc領域に連結されるG0オリゴ糖の代わりにG1又はG2オリゴ糖を持つ抗体、その1又は2の軽鎖に連結される1又は2の糖質部分を持つ抗体、抗体の1又は2の重鎖に連結される糖質がない抗体、等、及びグリコシル化変化体の組み合わせが挙げられる。
【0076】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然の配列のFc領域又はアミノ酸配列変異体のFc領域)に起因するそれらの生物活性を指す。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合、補体依存性細胞傷害性、Fc受容体結合、抗体依存性の細胞介在性の細胞傷害性(ADCC)、貪食作用、細胞表面受容体(たとえば、B細胞受容体、BCR)の下方調節などが挙げられる。
【0077】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列によって、完全長の抗体は異なる「クラス」に割り振られる。完全長の抗体には5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらの幾つかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分けられ得る。抗体の異なるクラスに相当する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの様々なクラスのサブユニット構造及び三次元構成は周知である。
【0078】
脊椎動物種に由来する抗体の「軽鎖」はその定常ドメインのアミノ酸配列に基づいたカッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明瞭に異なる型の1つに割り振られる。
【0079】
「抗体依存性の細胞介在性の細胞傷害性」及び「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的な細胞傷害性の細胞(たとえば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)が標的細胞上に結合した抗体を認識し、その後標的細胞の溶解を引き起こす細胞が介在する反応を指す。ADCCに介在する主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血系細胞上でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet,Annu.Rev.Immunol9:457−92(1991)の464ページの表3にて要約されている。当該分子のADCC活性を評価するには、米国特許第5,500,362号又は同第5,821,337号に記載されたような試験管内のADCCアッセイを行ってもよい。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代わりに又はさらに、当該分子のADCC活性は、たとえば、Clynesら、PNAS(USA)95:652−656(1998)にて開示されたような動物モデルにて生体内で評価されてもよい。
【0080】
用語「Fc受容体」又は「FcR」は抗体のFc領域に結合する受容体を記載するのに使用される。態様の1つでは、FcRは天然配列のヒトFcRである。別の態様では、FcRはIgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、対立遺伝子変異体及びこれら受容体の選択的にスプライスされた形態を含むFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIのサブクラスを含む。FcγRII受容体には、主としてその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有するFcγRIIA(「活性型受容体」)及びFcγRIIB(「阻害型受容体」)が挙げられる。活性型受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンを基にした活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害型受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンを基にした阻害モチーフ(ITIM)を含有する(M.Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203−234(1997)における概説を参照)。FcRは、Ravetch及びKinet,Annu.Rev.Immunol9:457−92(1991);Capelら、Immunomethods 4:25−34(1994);並びにde Haasら、J.Lab.Clin. Med.126:33−41(1995)にて概説されている。将来同定されるものを含む他のFcRは本明細書では用語「FcR」によって包含される。用語はまた、母体IgGの胎児への移行に関与する新生児受容体、FcRnも含む(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))。
【0081】
用語「超可変領域」は本明細書で使用されるとき、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は一般に「相補性決定領域」又は「CDR」(たとえば、軽鎖可変領域における残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)及び重鎖可変領域における残基31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))に由来するアミノ酸残基及び/又は「超可変ループ」(たとえば、軽鎖可変領域における残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変領域における残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))に由来する残基を含む。「フレームワーク領域」又は「FR」の残基は、本明細書で定義されるような超可変領域の残基以外のそれら可変ドメインの残基である。超可変領域又はそのCDR1つの抗体鎖又は別の鎖又は別のタンパク質に移して得られる(複合)抗体又は結合タンパク質に抗原結合特異性を付与する。
【0082】
非ヒト(たとえば、齧歯類)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最少限の配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの部分については、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント)であり、レシピエントの超可変領域に由来する残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する、たとえば、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような非ヒト種の超可変領域に由来する残基(ドナー抗体)で置き換えられる。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(FR)の残基が相当する非ヒトの残基で置き換えられる。さらに、ヒト化抗体はレシピエント抗体又はドナー抗体に見られない残基を含み得る。これらの修飾を行って抗体の性能をさらに改良する。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、超可変ループのすべて又は実質的にすべては非ヒト免疫グロブリンのそれに相当し、FRのすべて又は実質的にすべてはヒト免疫グロブリンのそれである。ヒト化抗体は任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常ヒト免疫グロブリンのそれを含むであろう。さらなる詳細については、Jonesら、Nature、321:522−525(1986);Riechmannら、Nature、332:323−329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照のこと。
【0083】
「親和性成熟」抗体は、それらの変化を持たない親抗体に比べて抗原への抗体の親和性を改善する、その1以上の超可変領域における1以上の変化をもつものである。態様の1つでは、親和性成熟抗体は、標的抗原についてナノモル又はさらにピコモルの親和性を有するであろう。親和性成熟抗体は、当該技術で既知の手順によって作出される。Marksら、Bio/Technology、10:779−783(1992)はVHとVLの入れ替えによる親和性成熟を記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基の無作為変異誘発はBarbasら、Proc.Nat.Acad.Sci,USA、91:3809−3813(1994);Schierら、Gene、169:147−155(1995);Yeltonら、J.Immunol.155:1994−2004(1995);Jacksonら、J.Immunol.154(7):3310−9(1995);及びHawkinsら、J.Mol.Biol.226:889−896(1992)によって記載されている。
【0084】
「単離された」抗体は、その天然環境の成分から特定され、分離されている及び/又は回収されているものである。特定の実施形態では、抗体は、(1)ローリー法で測定されるときタンパク質の95重量%を超えて、或いは99重量%を超えて、(2)スピンキャップシークエネータの使用によって少なくとも15残基のN末端又内部のアミノ酸配列を得るのに十分な程度に、又は(3)クマシーブルー染色又は銀染色を用いて還元条件下若しくは非還元条件下でのSDS−PAGEによる均質性まで精製されるであろう。単離された抗体には、抗体の天然環境の成分の少なくとも1つが存在しないので、組換え細胞内のその場での抗体が含まれる。しかしながら、普通、単離された抗体は少なくとも1回の精製工程で調製されるであろう。
【0085】
「治療」は治療療法及び予防的な又は防御的な対策の双方を指す。治療を必要とするものには、すでに疾患のあるものと同様に疾患又はその再発が防がれるべきものが含まれる。従って、本明細書で治療される患者は、疾患を有すると診断されていてもよく、又は疾患に罹りやすい若しくは感受性であってもよい。用語「患者」及び「対象」は本明細書では相互交換可能に使用される。
【0086】
製剤化される抗体は実質的に純粋であり、望ましくは実質的に均質である(混入するタンパク質等を含まない)。「実質的に純粋な」抗体は、組成物におけるタンパク質の総重量に基づいて少なくとも約90重量%、少なくとも約95又は97重量%の抗体を含む組成物を意味する。「実質的に均質な」抗体は、タンパク質の総重量に基づいて少なくとも約99重量%のタンパク質が特異抗体、たとえば、抗α4β7抗体であるタンパク質を含む組成物を意味する。
【0087】
「臨床的な寛解」は、潰瘍性大腸炎の対象に関して本明細書で使用されるとき、完全なMayoスコア2点以下であり及び1点を超える個々のサブスコアがないことを指す。クローン病の「臨床的な寛解」は150点以下のCDAIスコアを指す。
【0088】
「臨床的な応答」は、潰瘍性大腸炎の対象に関して本明細書で使用されるとき、1点以上の直腸出血サブスコアの低下又は1点以下の絶対直腸出血スコアを伴った、完全Mayoスコアの3点以上又はベースラインからの30%の低下(外来では完全Mayoスコアを実施しなかったのであれば、部分Mayoスコアの2点以上又はベースラインからの25%以上)を指す。「臨床的な応答」は、クローン病の対象に関して本明細書で使用されるとき、ベースライン(0週)からのCDAIスコアでの70点以上の低下を指す。
【0089】
「粘膜治癒」は、潰瘍性大腸炎の対象に関して本明細書で使用されるとき、1点以下の内視鏡サブスコアを指す。
【0090】
本明細書で使用されるとき、「治療の失敗」は潰瘍性大腸炎又はクローン病の治療について疾患の悪化、救急療法の必要性、又は外科的介入を指す。救急療法は、新しい又は未解決の潰瘍性大腸炎又はクローン病の症状を治療するのに必要とされる新しい投薬又はベースライン投薬の用量に増加である(慢性下痢を制御するための下痢止め剤以外)。
【0091】
製剤
本明細書で記載されるように、抗α4β7抗体は、(モルベースで)過剰の非還元糖を伴った乾燥した、たとえば、凍結乾燥した製剤である場合、高度に安定であることが発見されている。特に、非還元糖と抗α4β7抗体の比(モル:モル)が600:1を超える凍結乾燥製剤は少なくとも2年間安定であることが本明細書で示される。
【0092】
本発明は、第1の態様にて安定な抗α4β7抗体製剤を提供する。態様の1つでは、製剤は、緩衝液と少なくとも1つの安定剤と抗α4β7抗体を含む。態様の1つでは、乾燥製剤は1以上の非還元糖と抗α4β7抗体を含み、非還元糖と抗α4β7抗体の比(モル:モル)は600:1を超える。製剤はまた1以上の遊離のアミノ酸も含む。1以上のアミノ酸は緩衝剤として作用することができる。態様の1つでは、1以上のアミノ酸は安定剤として作用することができる。製剤は任意でさらに少なくとも1つの界面活性剤を含み得る。一実施形態では、製剤は乾燥している、たとえば、凍結乾燥される。製剤における抗体は完全長の抗体であってもよいし、Fab、Fv、scFv、Fab’、又はF(ab’)
2のようなその抗原結合断片であってもよい。
【0093】
製剤は所望の非還元糖を含有することができる。態様の1つでは、製剤に含めることができる非還元糖には、たとえば、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、ラフィノース、スタキオース、メレジトース、デキストラン、マルチトール、ラクチトール、イソマルツロース、パラチニト及びそれらの組み合わせが挙げられる。別の態様では、非還元糖は、スクロース、トレハロース、マンニトール及びソルビトールである。製剤における非還元糖の絶対量は重要ではないが、非還元糖と抗α4β7抗体の比(モル:モル)は400:1を超える。別の態様では、非還元糖と抗α4β7抗体の比(モル:モル)は、少なくとも約600:1;少なくとも約625:1;少なくとも約650:1;少なくとも約675:1、少なくとも約700:1;少なくとも約750:1、少なくとも約800:1、少なくとも約1000:1、少なくとも約1200:1、少なくとも約1400:1、少なくとも約1500:1、少なくとも約1600:1、少なくとも約1700:1、少なくとも約1800:1、少なくとも約1900:1、又は少なくとも約2000:1である。一般に、たとえば、凍結乾燥及び/又は乾燥及び再構成の際に生じる凝集体形成のような可溶性の凝集体形成を低減する量で非還元糖が存在することが望ましい。約730:1よりも高い非還元糖と抗α4β7抗体の比(モル:モル)は、凍結乾燥状態にてやや減った可溶性凝集体形成を生じ得る。糖:タンパク質の重量比は1.5:1(w/w)より大きくすることができる。別の態様では、液体(たとえば、乾燥前又は再構成後)製剤における非還元糖の濃度は、約10mM〜約1M、たとえば、約60mM〜約600mM、約100mM〜450mM、約200mM〜約350mM、約250mM〜約325mM、及び約275mM〜約300mMの範囲内である。態様の1つでは、乾燥(たとえば、凍結乾燥)製剤における非還元糖の量は、約40%〜約70%(乾燥製剤のw/w)の範囲内である。別の態様では、乾燥(たとえば、凍結乾燥)製剤における非還元糖の量は、約40%〜約60%、約45%〜約55%又は約51%(w/w)の範囲内である。他の態様では、乾燥製剤にてタンパク質の量が約31%(乾燥製剤のw/w)である又は非還元糖とタンパク質の1.6:1の質量比を超える場合、乾燥(たとえば、凍結乾燥)製剤における非還元糖の量は、約51%(乾燥製剤のw/w)を超える。その上さらに別の態様では、スクロースは製剤で使用するための非還元糖である。
【0094】
製剤は、所望の遊離のアミノ酸を含有することができ、それはL−形態、D−形態又はこれらの形態の所望の混合物であることができる。態様の1つでは、製剤に含まれ得る遊離のアミノ酸には、たとえば、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン、グルタミン酸、セリン、リジン、トリプトファン、バリン、システイン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。一部のアミノ酸は、製造、乾燥、凍結乾燥及び/又は保存の間での分解に対して、たとえば、水素結合、塩架橋、抗酸化特性又は疎水性相互作用を介して、又はタンパク質表面からの排除によってタンパク質を安定化することができる。アミノ酸は、等張性調節因子として作用することができ、又は製剤の粘度を下げるように作用することができる。別の態様では、ヒスチジンやアルギニンのような遊離のアミノ酸は低温保護剤及び凍結保護剤として作用することができ、製剤の成分として凍結乾燥された場合、結晶化しない。グルタミン酸やヒスチジンのような遊離のアミノ酸は、単独で又は組み合わせで、5〜7.5の範囲のpHにて水溶液において緩衝化剤として作用することができる。その上さらに別の態様では、製剤は、ヒスチジン、又はヒスチジン及びアルギニンを含有する。その上さらにさらなる態様では、液体製剤のための遊離のアミノ酸の濃度は、約10mM〜約0.5M、たとえば、約15mM〜約300mM、約20mM〜約200mM、又は約25mM〜約150mM、約50mM又は約125mMの範囲内である。その上さらにさらなる態様では、乾燥(たとえば、凍結乾燥)製剤におけるヒスチジンの量は、約1%〜約10%(乾燥製剤のw/w)又は約3%〜約6%(w/w)の範囲内である。一部の実施形態では、タンパク質の量が乾燥製剤にて約31%(乾燥製剤のw/w)である又はヒスチジンとタンパク質の約0.15:1の質量比を超える場合、乾燥(たとえば、凍結乾燥)製剤におけるヒスチジンの量は、約4%(乾燥製剤のw/w)を超える。その上さらに別の態様では、乾燥(たとえば、凍結乾燥)製剤におけるアルギニンの量は、約4%〜約20%(乾燥製剤のw/w)又は約10〜約15%(w/w)の範囲内である。一部の実施形態では、タンパク質の量が乾燥製剤にて約31%(乾燥製剤のw/w)である又はアルギニンとタンパク質の約0.4:1の質量比を超える場合、乾燥(たとえば、凍結乾燥)製剤におけるアルギニンの量は、約13%(乾燥製剤のw/w)を超える。ヒスチジンとアルギニンのようなアミノ酸の組み合わせの実施形態では、総アミノ酸と抗体のモル比は少なくとも200:1、約200:1〜約500:1、又は少なくとも400:1であることができる。
【0095】
製剤は任意でさらに、少なくとも1つの界面活性剤を含有することができる。態様の1つでは、製剤に含めることができる例となる界面活性剤には、たとえば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー(プルロニック(登録商標)及びそれらの組み合わせが挙げられる。存在する場合、界面活性剤は一般に、たとえば、ビン詰め、凍結、乾燥、凍結乾燥及び/又は再構成の間、抗体の不溶性の凝集体の形成を低減する量で含められる。たとえば、乾燥前(たとえば、凍結乾燥)製剤又は再構成後の製剤における界面活性剤の濃度は一般に約0.0001%〜約1.0%、約0.01%〜約0.1%、たとえば、約0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08、%又は0.09%(w/v)、0.05%〜0.07%又は0.06%(w/v)である。乾燥(たとえば、凍結乾燥)製剤における界面活性剤の量は一般に、約0.01%〜約3.0%(w/w)、約0.10%〜約1.0%、たとえば、約0.15%、0.20%、0.25%、0.30%、0.35%、0.40%、又は0.50%(w/w)である。別の態様では、界面活性剤:抗体のモル比は約1:1である。非還元糖と抗α4β7抗体の比(モル:モル)が約600:1を超えるという条件で抗α4β7抗体は製剤にて所望の量で存在することができる。しかしながら、製剤は高濃度の抗α4β7抗体を含有することができる。たとえば、液体製剤は、少なくとも約10mg/ml、少なくとも約20mg/ml、少なくとも約30mg/ml、少なくとも約40mg/ml、少なくとも約50mg/ml、少なくとも約60ml/ml、少なくとも約70mg/ml、少なくとも約80mg/ml、少なくとも約90mg/ml、少なくとも約100mg/ml、約40mg/ml〜約80mg/mlの抗α4β7抗体、約60mg/mlの抗α4β7抗体を含むことができる。乾燥製剤(たとえば、凍結乾燥した)は重量で、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、又は約31%又は約32%の抗α4β7抗体を含有することができる。
【0096】
所望であれば、製剤はさらに他の薬学上許容可能な賦形剤と同様に金属キレート剤及び/又は抗酸化剤を含むことができる。好適な金属キレート剤には、たとえば、メチルアミン、エチレンジアミン、デスフェロキサミン、トリエンチン、ヒスチジン、リンゴ酸塩、ホスホネート化合物、たとえば、エチドロン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)等が挙げられる。好適な抗酸化剤には、たとえば、クエン酸、尿酸、アスコルビン酸、リポ酸、グルタチオン、トコフェロール、カロテン、リコペン、システイン等が挙げられる。
【0097】
製剤は液体又は固体であることができる。液体製剤は、水又は、水・アルコール混合物のような水性/有機性混合物のような好適な水性溶媒にて調製される水溶液又は水性懸濁液であることができる。液体製剤は、約5.5〜約7.5の間、約6.0〜約7.0の間、約6.0〜約6.5の間、たとえば、約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4又は6.5のpHを有することができる。液体製剤は室温、冷蔵(たとえば、2〜8℃)又は冷凍(たとえば、−20℃又は−80℃)で保存することができる。固体製剤は好適な方法で調製することができ、たとえば、凍結保護剤の添加によってケーキ又は粉末の形態であることができる。固体製剤は、経口送達用の球形又は経皮送達用のフィルムとして、たとえば、凍結乾燥、スプレー乾燥、フィルム(たとえば、経皮送達用)における風乾、液体エマルジョンとの混合及び乾燥によって、本明細書で記載されるように液体製剤を乾燥させることによって調製される。製剤が固体製剤である場合、製剤は、わずか約5%、わずか約4.5%、わずか約4%、わずか約3.5%、わずか約3%、わずか約2.5%、わずか約2%、わずか約1.5%、わずか約1%の水分を含むことができ、又は実質的に無水である。固体製剤は溶解することができ、すなわち、好適な媒体で再構成し、投与に好適な液体になることができる。固体製剤を再構成するのに好適な溶媒には、水、等張の生理食塩水、緩衝液、たとえば、リン酸緩衝化生理食塩水、リンガー(乳酸加又はデキストロース)溶液、必須無機質媒体、アルコール/水溶液、デキストロース溶液等が挙げられる。溶媒の量は、乾燥の前の量よりも高い、同じ又は低い治療用タンパク質の濃度を生じ得る。態様の1つでは、再構成された抗α4β7抗体の濃度は乾燥前の液体製剤と同じ濃度である。
【0098】
製剤は無菌であり得るが、これは、製剤の調製の前又は後でヒト対象への投与に好適な無菌医薬製剤を生成するための当業者に既知の手順に従って達成することができる。製剤は、たとえば、乾燥前及び/又は再構成後、小さな孔を介した濾過によって、無菌処理を介して又は紫外線照射への暴露によって、液体として無菌化することができる。フィルターの孔サイズは微生物を濾過するには0.1μm〜0.2μmであり、ウイルス粒子を濾過するには10〜20nmであることができる。代わりに又はさらに、乾燥製剤は、たとえば、γ線照射に暴露することによって無菌化することができる。態様の1つでは、抗α4β7抗体液体製剤は乾燥前の濾過によって無菌化される。
【0099】
態様の1つでは、製剤は保存に際して安定である。別の態様では、製剤は乾燥状態での保存の際、安定である。安定性は、製剤化の前後、同様に言及した温度で保存した後に、製剤における抗体の物理的安定性、化学的安定性及び/又は生物学的安定性を評価することによって調べることができる。液体製剤又は再構成した乾燥粉末の物理的な及び/又は化学的な安定性は、凝集体形成の評価(たとえば、サイズ排除(又はゲル濾過)クロマトグラフィ(SEC)、マトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF−MS)、分析用超遠心、光散乱法(光相関分光法、動的光散乱法((DLS)又は多角レーザー光散乱法(MALLS))、フローベースの顕微鏡画像化、電子インピーダンス(コールター)計数法、光不明瞭化又は他の液体粒子計数方式、(濁度を測定することによる、密度勾配遠心による及び/又は視覚検査による);カチオン交換クロマトグラフィ(Vlasak and Ionescu, Curr. Pharm. Biotechnol. 9:468-481 (2008) and Harris et al. J. Chromatogr. B Biomed. Sci. Appl. 752:233-245 (2001)も参照)、等電点電気泳動(IEF)、たとえば、キャピラリ―法又はキャピラリ―ゾーン電気泳動を用いて電荷不均質性を評価することによる;アミノ末端又はカルボキシ末端の配列解析;質量分光測定解析;断片化した、無傷の及び多量体(たとえば、二量体、三量体等)の抗体を比較するためのSDS−PAGE又はSEC解析;ペプチドマップ(たとえば、トリプシン又はLYS等);抗体の生物活性又は抗原結合機能を評価することを含む種々の異なる方法(たとえば、Analytical Techniques for Biopharmaceutical Development, Rodriguez-Diaz et al. eds. Informa Healthcare (2005)を参照)にて定性的に及び/又は定量的に評価することができる。生物活性又は抗原結合機能、たとえば、抗α4β7抗体のMAdCAM(たとえば、MAdCAM−1)への結合又はα4β7インテグリンを発現している細胞のMAdCAM(たとえば、MAdCAM−1)、たとえば、不動化MAdCAM(たとえば、MAdCAM−1)への結合の阻害は、技量のある医師に利用可能な種々の技法を用いて評価することができる(たとえば、 Soler et al., J. Pharmacol. Exper. Ther. 330:864-875 (2009)を参照)。
【0100】
固体状態の製剤の安定性は、たとえば、X線粉末回析法(XRPD)によって結晶構造を特定すること;フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)を用いて固体状態にて、抗体構造を評価すること;示差走査熱量法(DSC、たとえば、変性を評価するため)を用いて凍結乾燥固体にて熱転移(融解、ガラス転移等)を測定することのような直接試験、及びKarl Fisher試験によって水分含量を測定し、加水分解を介した化学的不安定性の可能性を推定することのような間接試験を含む種々の異なる方法によって定性的に及び/又は定量的に評価することもできる。乾燥製剤の水分の測定は、製剤がどのように化学的な又は物理的な分解を受けるかを示し、水分が高いほうが分解はさらに進む。
【0101】
安定性は、選択した温度にて選択した時間で測定することができる。態様の1つでは、(たとえば、凍結乾燥した)製剤は、約40℃、75%RHにて少なくとも約2〜4週間、少なくとも約2ヵ月間、少なくとも約3ヵ月間、少なくとも約6ヵ月間、少なくとも約9ヵ月間、少なくとも約12ヵ月間、又は少なくとも約18ヵ月間安定である。別の態様では、製剤(液体又は乾燥(たとえば、凍結乾燥した))は、約5℃及び/又は25℃及び60%RHにて少なくとも約3ヵ月間、少なくとも約6ヵ月間、少なくとも約9ヵ月間、少なくとも約12ヵ月間、少なくとも約18ヵ月間、少なくとも約24ヵ月間、少なくとも約30ヵ月間、少なくとも約36ヵ月間、又は少なくとも約48ヵ月間安定である。別の態様では、製剤(液体又は乾燥(たとえば、凍結乾燥した))は、約−20℃にて少なくとも約3ヵ月間、少なくとも約6ヵ月間、少なくとも約9ヵ月間、少なくとも約12ヵ月間、少なくとも約18ヵ月間、少なくとも約24ヵ月間、少なくとも約30ヵ月間、少なくとも約36ヵ月間、少なくとも約42ヵ月間、又は少なくとも約48ヵ月間安定である。さらに、液体製剤は、一部の実施形態では、凍結(たとえば、−80℃への)及び融解の後、たとえば、1、2又は3回の凍結融解の後、安定であり得る。
【0102】
不安定性には、凝集(たとえば、(疎水性の又は電荷の相互作用が原因となる)非共有結合性の可溶性凝集)、共有結合性の可溶性凝集(たとえば、ジスルフィド結合の再構成/置き換え)、不溶性の凝集(液体/空気及び液体固体の界面でのタンパク質の変性が原因となる)、脱アミド化(たとえば、Asnの脱アミド化)、酸化(たとえば、Metの酸化)、異性化(たとえば、Aspの異性化)、変性、クリッピング/加水分解/断片化(たとえば、ヒンジ領域の断片化)、スクシンイミドの形成、N末端の伸長、C末端のプロセッシング、グリコシル化の差異等のいずれか1以上が関与し得る。
【0103】
安定な製剤は、抗α4β7抗体の低い免疫原性に寄与することができる。免疫原性の抗α4β7抗体は、ヒト対象又は患者においてヒト/抗ヒト抗体(HAHA)反応を招き得る。抗α4β7抗体に対してHAHA反応を発症する患者は、治療の際、有害事象(たとえば、部位注入反応)を有することができ、又は抗α4β7抗体を迅速に排除することができ、治療により計画されたのよりも低い用量を生じる。抗α4β7抗体治療の早期試験の報告(Feagen et al. (2005) N. Engl. J. Med. 352:2499-2507)は、治療した患者の44%にて8週までにヒト抗ヒト抗体が発生することを示した。この試験における抗体は液体として保存され、ポリソルベートを含有しなかった。
【0104】
一部の実施形態では、製剤は、あまり安定ではない製剤のHAHAの結果に比べて、HAHA陰性の患者の比率を患者の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%まで増やすことができる。
【0105】
一部の実施形態では、抗α4β7抗体製剤は、≧50%の主要な荷電アイソフォーム、≧55%の主要な荷電アイソフォーム、又は65〜70%の主要な荷電アイソフォームを有する。他の態様では、安定な抗α4β7抗体製剤は、≦45%の酸性荷電アイソフォーム、≦40%の酸性荷電アイソフォーム、≦30%の酸性荷電アイソフォーム又は22〜28%の酸性荷電アイソフォームを有する。さらに他の態様では、安定な抗α4β7抗体製剤は、≦25%の塩基性アイソフォーム、≦20%の塩基性アイソフォーム、≦15%の塩基性アイソフォーム、約5%の塩基性アイソフォーム又は約10%の塩基性アイソフォームを有する。態様の1つでは、安定な抗α4β7抗体製剤は、たとえば、CEXによって測定されると、≧55%の主要アイソフォーム、≦30%の酸性アイソフォーム及び/又は≦20%の塩基性アイソフォームを有する。別の態様では、たとえば、cIEFによって測定されると、≧50%の主要アイソフォーム、≦45%の酸性アイソフォーム及び/又は≦10%の塩基性アイソフォームを有する。
【0106】
一部の態様では、抗α4β7抗体乾燥固体製剤は、≦10%の水分、≦5%の水分又は<2.5%の水分を有する。再構成に必要とされる時間は、≦60分、≦50分又は≦40分又は≦30分又は≦20分である。
【0107】
液体製剤又は再構成後の乾燥製剤における単量体含量及び/又は凝集体含量(たとえば、二量体、三量体、四量体、五量体、オリゴマー及びさらに高次の凝集体として)は、SEC、MALDI−TOFMS、分析用超遠心、光散乱法(DLS又はMALLS)、又はナノスケールの測定、たとえば、ナノ粒子追跡解析NTA(英国、ウィルトシャーのNanoSight社)によって測定することができる。凝集体の解像、性状分析及び定量は、たとえば、さらに長いカラムによって又は当初の分析用SECカラムに沿って第2以上のSECカラムを連続連結することによってSECカラム分離の長さを増すこと、光散乱によって単量体のSEC定量を補完することを含む多数の方法にて、又はNTAを用いることによって達成することができる。
【0108】
一実施形態では、抗α4β7抗体製剤は、≧90%の単量体抗体、≧95%の単量体抗体、又は97〜99%の単量体抗体を有する。別の実施形態では、抗α4β7抗体製剤における物質の大半は、≦20nm、≦15nm、≦10nm、又は約5〜約7nmの平均半径を有する。態様の1つでは、抗α4β7抗体製剤はタンパク質解析によって≧80%量の重鎖と軽鎖を有する。態様の1つでは、≧90%の重鎖と軽鎖がある。別の態様では、抗α4β7抗体製剤は≦10%の凝集体、≦5%の凝集体、≦2.5%の凝集体、≦1.5%の凝集体、≦1%の凝集体又は≦0.5%の凝集体を有する。別の態様では、抗α4β7抗体製剤は≧96%の単量体及び/又は≦2.5%の凝集体を有する。さらに別の態様では、抗α4β7抗体製剤は≧99%の単量体及び/又は≦1%の凝集体を有する。
【0109】
たとえば、再構成した製剤における凝集体又は溶解されない賦形剤の粒度は、光不明瞭化法(たとえば、Hach Ultra Analytics(オレゴン州、グランパス)による液体粒子計数方式(HIAC)、顕微鏡、コールターカウンタ、又はBrightwell(カナダ、オタワ)によるマイクロ流体工学画像化(MFI)のようなデジタル(フローベース)顕微鏡画像化に基づく方式、又は流体画像化法(メイン州、ヤーマス)によるFLOWCAM(登録商標)画像粒子アナライザによって測定することができる。態様の1つでは、抗α4β7抗体調製物における粒度は、約30μm、約25μm、約10μm、約5μm、約2μm、又は1μm以下である。粒子の量は抗体製剤ではできるだけ抑えるべきである。態様の1つでは、抗α4β7抗体製剤は、1回用量にて≧10μmの6000未満の粒子及び≧25μmの600未満の粒子を有する(米国薬局方Chp.788、光不明瞭化計数法;顕微鏡定量法によるそれらの量の半分)。さらに別の態様では、抗α4β7抗体製剤、たとえば、再構成された製剤の用量におけるMFI測定法によるミリリットル当たりの粒子の量は、ml当たり2〜10μmの粒子が約500〜約2000又は約1000〜約3000、ml当たり≧10μmの粒子が約50〜約350、及びml当たり≧25μmの粒子が約0〜約50である。
【0110】
一実施形態では、抗α4β7抗体製剤は、参照標準の抗α4β7抗体の約60%〜約140%の結合親和性を有する。態様の1つでは、本明細書で記載される製剤における抗α4β7抗体は、参照標準の約80%〜約120%の値で、たとえば、細胞(WO98/06248又は米国特許第7,147,851号)上のα4β7に結合する。別の実施形態では、抗α4β7抗体製剤は、α4β7インテグリンを発現している細胞のMAdCAM、たとえば、MAdCAM−1、たとえば、MAdCAM−Igキメラ(参照標準試料でもある米国特許出願番号20070122404を参照)への結合を少なくとも50%又は少なくとも60%阻害する能力を有する。
【0111】
上記で言及したように、製剤の凍結は本明細書では具体的に企図される。従って、凍結融解に際する安定性について製剤を調べることができる。その結果、液体製剤における抗体は製剤の凍結融解に際して安定であり得るし、たとえば、抗体は1、2、3、4、5回以上の凍結融解の後、安定であることができる。
【0112】
一部の実施形態では、製剤は、少なくとも約50mg/mL〜約100mg/mLの抗α4β7抗体と、緩衝化剤(たとえば、ヒスチジン)と、少なくとも9%(w/w)の非還元糖(たとえば、スクロース、トレハロース又はマンニトール)を含む液体製剤である。一実施形態では、製剤は、約50〜約80mg/ml、約60mg/mlの抗α4β7抗体と、緩衝化剤(たとえば、ヒスチジン)、遊離のアミノ酸(たとえば、アルギニン)と、少なくとも9%又は10%(w/w)の非還元糖(たとえば、スクロース、トレハロース又はマンニトール)を含む。
【0113】
別の実施形態では、製剤は、少なくとも約60mg/mlの抗α4β7抗体と、緩衝化剤(たとえば、ヒスチジン)と、遊離のアミノ酸(たとえば、アルギニン)と、少なくとも10%(w/w)の非還元糖(たとえば、スクロース、トレハロース又はマンニトール)を含む。そのような実施形態では、緩衝液濃度は約15〜約75mM、約25〜約65mM又は約50mMである。遊離のアミノ酸の濃度は約50〜約250mM、約75〜約200mM、約100〜約150mM又は約120mMである。
【0114】
一実施形態では、製剤は、非還元糖と、抗α4β7抗体と、ヒスチジンと、アルギニンと、ポリソルベート80の混合物を含む乾燥した固体の製剤(たとえば、凍結乾燥した製剤)であり、非還元糖と抗α4β7抗体のモル比(モル:モル)は600:1を超える。
【0115】
別の実施形態では、製剤は、非還元糖と、抗α4β7抗体と、ヒスチジンと、アルギニンと、ポリソルベート80の混合物を含む乾燥した固体の非晶性製剤(たとえば、凍結乾燥した製剤)であり、非還元糖と抗α4β7抗体のモル比(モル:モル)は600:1を超える。
【0116】
一実施形態では、製剤は、非還元糖と、抗α4β7抗体と、ヒスチジンと、アルギニン及と、ポリソルベート80を含む凍結乾燥した製剤であり、非還元糖と抗α4β7抗体のモル比(モル:モル)は600:1を超える。
【0117】
一実施形態では、製剤は、非還元糖と、抗α4β7抗体と、ヒスチジンと、アルギニンと、ポリソルベート80を含む凍結乾燥した製剤であり、製剤における非還元糖と抗α4β7抗体のモル比(モル:モル)は600:1を超え、製剤におけるアルギニンと抗α4β7抗体のモル比(モル:モル)は250:1を超える。
【0118】
一実施形態では、製剤は液体製剤であり、少なくとも約60mg/mlの抗α4β7抗体と、少なくとも10%(w/v)の非還元糖と、少なくとも約125mMの1以上の遊離のアミノ酸を含む。
【0119】
一実施形態では、製剤は液体製剤であり、少なくとも約60mg/mlの抗α4β7抗体と、少なくとも10%(w/v)の非還元糖と、少なくとも約175mMの1以上の遊離のアミノ酸を含む。
【0120】
一実施形態では、製剤は液体製剤であり、約60mg/ml〜約80mg/mlの抗α4β7抗体と、緩衝化剤と、少なくとも約10%(w/w)の糖を含む。
【0121】
一実施形態では、製剤は液体製剤であり、約60mg/ml〜約80mg/mlの抗α4β7抗体と、ヒスチジンと、少なくとも約10%(w/w)のスクロースを含む。
【0122】
一実施形態では、製剤は凍結乾燥され、バイアル1つにて単一用量として保存される。バイアルは望ましくは、それを必要とする対象に投与されるまで約2〜8℃で保存される。バイアルは(たとえば、60mg/ml用量について)、たとえば、20又は50ccであり得る。バイアルは、少なくとも約120mg、少なくとも約180mg、少なくとも約240mg、少なくとも約300mg、少なくとも約360mg、少なくとも約540mg、又は少なくとも約900mgの抗α4β7抗体を含有し得る。態様の一つでは、バイアルは約300mgの抗α4β7抗体を含む。
【0123】
Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第21版,Hendrickson,R.Ed.(2005)に記載されたような1以上他の薬学上許容可能なキャリア、賦形剤又は安定剤は、それらが製剤の所望の特徴に有害に影響しないという条件で製剤に含められ得る。許容可能なキャリア、賦形剤又は安定剤は、採用される投与量及び濃度にてレシピエントに非毒性であり、それらには、追加の緩衝化剤;共溶媒;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;EDTAのようなキレート剤;金属錯体(たとえば、Zn/タンパク質錯体);ポリエステルのような生分解性ポリマー;及び/又はナトリウムのような塩形成の対イオンが挙げられる。
【0124】
α4β7抗体
製剤での使用に好適な抗α4β7抗体には、たとえば、完全なヒト抗体、マウス抗体、ウサギ抗体等のような所望の供給源からの抗体、及びたとえば、キメラ抗体、ヒト化抗体等のような所望の操作された抗体が含まれる。たとえば、Fab、Fv、scFv、Fab’及びF(ab’)
2断片のような、これらの種類の抗体のいずれかの抗原結合断片も製剤での使用に好適である。
【0125】
抗α4β7抗体は、α4鎖上のエピトープ(たとえば、ヒト化MAb21.6(Bendig et al., U.S. Pat. No. 5,840,299))、β7鎖上のエピトープ(FIB504又はヒト化誘導体(たとえば、Fongらの米国特許第7,528,236号))、又はα4鎖とβ7鎖の会合によって形成される組み合わせエピトープに結合することができる。態様の1つでは、抗体はα4β7複合体上の組み合わせエピトープを結合するが、鎖が互いに会合しない限り、α4鎖又はβ7鎖上のエピトープを結合しない。α4インテグリンのβ7インテグリンとの会合は、エピトープを一緒に含む両鎖上に存在する残基を近接させることによって、又は一方の鎖、たとえば、α4インテグリン鎖又はβ7インテグリン鎖の上で、適当なインテグリンの相手の非存在下又はインテグリン活性化の非存在下では抗体結合にアクセスできない抗体結合部位を立体的に暴露することによって、組み合わせエピトープを創り出すことができる。別の態様では、抗α4β7抗体は、α4インテグリン鎖及びβ7インテグリン鎖の双方を結合するのでα4β7インテグリン複合体に対して特異的である。そのような抗体は、α4β7を結合することができるが、たとえば、α4β1を結合することはできず、及び/又はα
Eβ7を結合することはできない。別の態様では、抗α4β7抗体は、Act−1抗体(Lazarovits, A. I. et al., J. Immunol., 133(4): 1857-1862 (1984), Schweighoffer et al., J. Immunol., 151(2): 717-729, 1993; Bednarczyk et al., J. Biol. Chem., 269(11): 8348-8354, 1994)と同じ又は実質的に同じエピトープに結合する。マウスのAct−1モノクローナル抗体を産生するマウスのACT−1ハイブリドーマ細胞株は、2001年8月22日のブタペスト条約の規定のもとで、米国02139マサチューセッツ州、ケンブリッジ、Landsdowne通り40のMillennium Pharmaceuticals社の利益となるように、米国20110−2209バージニア州、マナッサスのブルバード大学10801のアメリカンタイプカルチャーコレクションに受入番号PTA−3663で寄託された。別の態様では、抗α4β7抗体は、米国特許出願公開番号2010/0254975で提供されたCDRを用いたヒト抗体又はα4β7結合タンパク質である。
【0126】
態様の1つでは、抗α4β7抗体は、そのリガンド(たとえば、粘膜アドレシン、たとえば、MAdCAM(たとえば、MAdCAM1)、フィブロネクチン及び/又は血管アドレシン(VCAM))の1以上へのα4β7の結合を阻害する。霊長類のMAdCAMはPCT公開WO96/24673に記載されており、その教示全体が参照によって本明細書に組み入れられる。別の態様では、抗α4β7抗体は、VCAMの結合を阻害することなく、MAdCAM(たとえば、MAdCAM1)及び/又はフィブロネクチンへのα4β7の結合を阻害する。
【0127】
態様の1つでは、製剤で使用するための抗α4β7抗体は、マウスAct−1抗体のヒト化型である。ヒト化抗体を調製する好適な方法は当該技術で周知である。一般に、ヒト化抗α4β7抗体は、マウスAct−1抗体の3つの重鎖相補性決定領域(CDRs、CDR1、配列番号:8、CDR2、配列番号:9及びCDR3、配列番号:10)を含有する重鎖と好適なヒト重鎖フレームワーク領域を含有し;且つマウスAct−1抗体の3つのCDRs(CDR1、配列番号:11、CDR2、配列番号:12及びCDR3、配列番号:13))を含有する軽鎖と好適なヒト軽鎖フレームワーク領域を含有するであろう。ヒト化Act−1抗体は、アミノ酸置換を伴って又は伴わずにコンセンサスフレームワーク領域を含む好適なヒトフレームワーク領域を含有することができる。たとえば、フレームワークアミノ酸の1以上をマウスAct−1抗体における相当する位置でのアミノ酸のような別のアミノ酸で置き換えることができる。ヒトの定常領域又はその一部は、存在するならば、対立遺伝子変異体を含めてヒト抗体のκ又はλ軽鎖及び/又はγ(たとえば、γ1、γ2、γ3、γ4)、μ又はε重鎖に由来することができる。特定の定常領域(たとえば、IgG1)、その変異体又は一部はエフェクター機能を誂えるように選択することができる。たとえば、変異のある定常領域(変異体)を融合タンパク質に組み入れてFc受容体への結合及び/又は補体を固定する能力をできるだけ抑えることができる(see e.g., Winter et al., GB 2,209,757 B; Morrison et al., WO 89/07142; Morgan et al., WO 94/29351, Dec. 22, 1994)。Act−1抗体のヒト化型は、PCT公開番号WO98/06248及びWO07/61679に記載されたが、そのそれぞれの教示全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0128】
別の態様では、製剤で使用するための抗α4β7ヒト化抗体は、配列番号2のアミノ酸20〜140を含む重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸20〜131又は配列番号5のアミノ酸21〜132を含む軽鎖可変領域を含む。所望であれば、好適なヒト定常領域が存在することができる。たとえば、ヒト化抗α4β7抗体は配列番号2のアミノ酸20〜470を含む重鎖及び配列番号5のアミノ酸21〜239を含む軽鎖を含むことができる。別の例では、ヒト化抗α4β7抗体は配列番号2のアミノ酸20〜470を含む重鎖及び配列番号4のアミノ酸20〜238を含む軽鎖を含むことができる。
図4はヒト抗体とマウス抗体の一般的な軽鎖を比較する配列比較を示す。配列比較によって、2つのマウス残基がヒト残基に入れ替わったベドリズマブ(たとえば、化学アブストラクトサービス(CAS、米国化学会)登録番号943609−66−3)のヒト化軽鎖はLDP−02の軽鎖(
図3)よりもヒト型であることを説明する。加えて、LDP−02は、幾分疎水性で自由度の高いアラニン114と、やや親水性でヒドロキシル含有のスレオニン114及び疎水性で内向きの可能性があるバリン115残基を持つベドリズマブにて置き換えられる親水性部位(アスパラギン酸115)とを有する。
【0129】
抗体配列に対するさらなる置換は、たとえば、重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域に対する変異であることができ、たとえば、配列番号14の残基2におけるイソロイシンのバリンへの変異;配列番号14の残基4におけるメチオニンのバリンへの変異;配列番号15の残基24におけるアラニンのグリシンへの変異;配列番号15の残基38におけるアラニンのリジンへの変異;配列番号15の残基40におけるアラニンのアルギニンへの変異;配列番号15の残基48におけるメチオニンのイソロイシンへの変異;配列番号15の残基69におけるイソロイシンのロイシンへの変異;配列番号15の残基71におけるアルギニンのバリンへの変異;配列番号15の残基73におけるスレオニンのイソロイシンへの変異;又はそれらの組み合わせ;重鎖CDRsのマウスAct−1抗体のCDRs(CDR1、配列番号:8、CDR2、配列番号:9及びCDR3、配列番号:10)による置換、及び軽鎖CDRsのマウスAct−1抗体の軽鎖CDRs(CDR1、配列番号:11、CDR2、配列番号:12及びCDR3、配列番号:13)による置換であることができる。
【0130】
一部の実施形態では、製剤で使用するための抗α4β7ヒト化抗体は、配列番号2のアミノ酸20〜140に対して約95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸20〜131又は配列番号5のアミノ酸21〜132に対して約95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。アミノ酸の配列同一性は、初期設定パラメータを用いる、たとえば、Lasergene方式(ウィスコンシン州、マジソンのDNASTAR社)のような好適な配列比較アルゴリズムを用いて決定することができる。実施形態では、製剤で使用するための抗α4β7抗体は、ベドリズマブ(CAS、米国化学会、登録番号943609−66−3)である。
【0131】
他のα4β7抗体も本明細書で記載される製剤及び投与計画に使用され得る。たとえば、その全体が参照によって本明細書に組み入れられるUS2010/0254975(Amgen社)に記載されたα4β7抗体は個体における炎症性大腸疾患を治療する製剤及び方法での使用に好適である。
【0132】
抗α4β7抗体は、生細胞、たとえば、培養中の細胞にて各鎖をコードする核酸配列を発現させることによって作出することができる。種々の宿主/発現ベクター系を利用して本発明の抗体分子を発現させ得る。そのような宿主/発現ベクター系は、当該コーディング配列が作られ、その後精製される媒体を表すが、適当なヌクレオチドコーディング配列で形質転換された又は形質移入された場合その場で抗α4β7抗体を発現し得る細胞を表すものではない。これらには、たとえば、抗体コーディング配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(たとえば、大腸菌、枯草菌);抗体コーディング配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(たとえば、Saccharomyces,Pichia)のような微生物;抗体コーディング配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(たとえば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;抗体コーディング配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(たとえば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を感染させた又は抗体コーディング配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(たとえば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;又は哺乳類細胞のゲノムに由来する(たとえば、メタロチオネインプロモータ)又は哺乳類ウイルスに由来する(たとえば、アデノウイルス後期プロモータ;ワクシニアウイルス7.5Kプロモータ)プロモータを含有する組換え発現構築物を抱く哺乳類細胞系(たとえば、COS、CHO、BHK、293、3T3、NS0)が挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、ヒトのサイトメガロウイルスに由来する主要中早期遺伝子プロモータエレメントのようなベクターを併せたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)のような哺乳類細胞は、抗体の有効な発現系である(Foecking et al., Gene 45:101 (1986); Cockett et al., Bio/Technology 8:2 (1990))。
【0133】
細菌の系では、発現される抗体分子の用途によって多数の発現ベクターが有利に選択され得る。たとえば、抗体分子の医薬組成物を生成するために大量のそのようなタンパク質が製造されるべきであるなら、精製しやすい融合タンパク質生成物を高レベルで発現することを指向するベクターが望ましくてもよい。そのようなベクターには、融合タンパク質が産生されるように抗体コーディング配列をlacZコーディング領域と共にフレーム内でベクターに個々に連結し得る大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al., EMBO J. 2:1791 (1983));pINベクター(Inouye & Inouye, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109 (1985); Van Heeke & Schuster, J. Biol. Chem. 24:5503-5509 (1989))等が挙げられるが、これらに限定されない。pGEXベクターを使用してグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)による融合タンパク質として外来ポリペプチドも発現させ得る。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、マトリクスグルタチオン/アガロースビーズへの吸着及び結合、その後の遊離のグルタチオンの存在下での溶出によって容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローニングした標的遺伝子がGST部分から解放できるようにトロンビン又は因子Xaプロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
【0134】
昆虫系では、外来遺伝子を発現するベクターとしてAutographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)が使用される。ウイルスはSpodoptera frugiperda細胞の中で増殖する。抗体コーディング配列を個々にウイルスの非必須領域(たとえば、ポリヘドリン遺伝子)にクローニングし、AcNPVプロモータ(たとえば、ポリヘドリンプロモータ)の制御下に置く。
【0135】
哺乳類宿主細胞では、多数のウイルスに基づく発現系が利用され得る。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合では、当該抗体コーディング配列をアデノウイルスの転写/翻訳制御複合体、たとえば、後期プロモータ及び三分節リーダー配列に連結し得る。次いで、試験管内又は生体内の組換えによってこのキメラ遺伝子をアデノウイルスのゲノムに挿入し得る。ウイルスゲノムの非必須領域(たとえば、領域E1又はE3)における挿入は、感染宿主にて生存可能で、抗体分子を発現することが可能である組換えウイルスを生じる(たとえば、Logan & Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:355-359 (1984)を参照)。挿入された抗体コーディング配列の効率的な翻訳には特定の開始シグナルも必要とされ得る。これらのシグナルにはATG開始コドン及び隣接配列が含まれる。さらに、開始コドンは所望のコーディング配列のリーディングフレームと同調して挿入物全体の翻訳を確保しなければならない。これらの外因性の翻訳制御シグナル及び開始コドンは種々の起源であってもよく、天然及び合成の双方であり得る。発現の効率は適当な転写エンハンサエレメント、転写終結因子等を含むことによって高められ得る(Bittner et al., Methods in Enzymol. 153:51-544 (1987)を参照)。
【0136】
加えて、挿入された配列の発現を調節し、遺伝子産物を所望の特定の方式で修飾し、プロセッシングする宿主細胞株を選択し得る。タンパク質産物のそのような修飾(たとえば、グリコシル化)及びプロセッシング(たとえば、切断)はタンパク質の機能にとって重要であり得る。様々な宿主細胞がタンパク質及び遺伝子産物の翻訳後のプロセッシング及び修飾について特徴及び特定のメカニズムを有する。適当な細胞株又は宿主系を選択して発現される外来タンパク質の正しい修飾及びプロセッシングを確保する。この目的で、一次転写物の適切なプロセッシング、遺伝子産物のグリコシル化及びリン酸化について細胞機構を持つ真核宿主細胞が使用され得る。そのような哺乳類宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、NS0、HeLa、VERY、幼若ハムスター腎臓(BHK)、サル腎臓(COS)、MDCK、293、3T3、WI38、ヒト肝細胞癌細胞(たとえば、HepG2)、たとえば、BT483、Hs578T、HTB2、BT20及びT47Dのような乳癌細胞株、並びにたとえば、CRL7030及びHs578Bstのような正常乳腺細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
様々な細胞種のグリコシル化機構は別の細胞種とは異なるグリコシル化組成を持つ抗体を作出することができ、又は細菌と同様にグリコシル化のない抗体を作出することができる。態様の1つでは、抗α4β7抗体の産生用の細胞種は、NS0細胞又はCHO細胞のような哺乳類細胞である。態様の1つでは、哺乳類細胞は、細胞のメカニズムに関与する酵素の欠失を含むことができ、当該外因性遺伝子は、たとえば、形質転換又は形質移入によって細胞に導入されるための構築物又はベクターにて置き換え酵素に操作可能に連結され得る。外因性遺伝子を伴った構築物又はベクターは、構築物又はベクターを招き入れる細胞に対して構築物又はベクターによってコードされるポリペプチドの産生を促す選択優位性を付与する。一実施形態では、CHO細胞は、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子の欠失又は不活化を含むDG44細胞(Chasin and Urlaub (1980) PNAS USA 77:4216)である。別の実施形態では、CHO細胞は、グルタミンシンターゼ酵素の欠失又は不活化を含むCHOK1細胞である(たとえば、米国特許第5,122,464号又は同第5,827,739号を参照)。
【0138】
固体製剤
本発明の固体製剤は一般に液体製剤を乾燥することによって調製される。任意の好適な乾燥方法、たとえば、凍結乾燥又はスプレー乾燥を使用することができる。凍結乾燥には普通、製剤を保存する、出荷する及び流通させるのに使用されるであろう容器(たとえば、バイアル)にて液体製剤を乾燥させることが関与する(たとえば、Gatlin and Nail in Protein Purification Process Engineering, ed. Roger G. Harrison, Marcel Dekker Inc., 317-367 (1994)を参照)。製剤がいったん凍結されると、大気圧が下げられ、温度は、たとえば、昇華を介して凍結溶媒を除けるように調整される。凍結乾燥過程のこの工程は、一次乾燥と呼ばれることもある。所望であれば、次いで温度を上げて乾燥製剤に依然として結合する溶媒を蒸発によって除くことができる。凍結乾燥過程のこの工程は、二次乾燥と呼ばれることもある。製剤が所望の乾燥程度に達すると、乾燥過程を終了し、容器を密封する。最終的な固体製剤を「凍結乾燥製剤」又は「ケーキ」と呼ぶこともある。凍結乾燥過程は好適な機器を用いて実施することができる。好適な凍結乾燥機器は多数の商業的供給源から入手可能である(たとえば、ニューヨーク州、ストーンリッジのSP Scientific)。
【0139】
種々の好適な装置を用いて液体製剤を乾燥して固体(たとえば、凍結乾燥した)製剤を製造することができる。一般に、凍結乾燥製剤は、その上に乾燥される液体製剤のバイアルが置かれる棚を含有する密閉チャンバーを用いて当業者によって調製される。棚の温度は冷却速度や加熱速度と同様に、チャンバー内部の圧のように制御することができる。本明細書で議論される種々の工程パラメータがこの種の装置を用いて実施される工程を指すことが理解されるであろう。当業者は本明細書で記載されるパラメータを所望であれば、他の種の乾燥装置に容易に適合させることができる。
【0140】
一次乾燥及び二次乾燥のために好適な温度及び真空の量は当業者によって容易に決定され得る。一般に、製剤は約−30℃以下、たとえば、−40℃又は−50℃の温度で凍結される。冷却の速度は、マトリクスにおける氷結晶の量及びサイズに影響を及ぼし得る。一次乾燥は一般に凍結温度よりも約10℃、約20℃、約30℃、約40℃、又は約50℃温かい温度で実施される。態様の1つでは、一次乾燥の条件は、製剤のガラス転移温度又は崩壊温度を下回って抗α4β7抗体を維持するように設定することができる。崩壊温度を上回ると、非晶性の凍結マトリクスが流れ(崩壊し)、タンパク質分子が硬い固体マトリクスに囲まれないかもしれない、タンパク質分子が崩壊マトリクスにて安定でないかもしれない結果となる。また、崩壊が起きるとすると、製剤は完全に乾燥しにくい可能性がある。製剤における結果的に多い水分量は、高い比率のタンパク質分解を招き得るし、品質が許容不能なレベルに低下する前に凍結乾燥製品を保存できる時間量が低下し得る。態様の1つでは、棚の温度及びチャンバーの圧は、一次乾燥の間、崩壊温度を下回る温度で製品を維持するように選択される。凍結製剤のガラス転移温度は、当該技術で既知の方法によって、たとえば、示差走査熱量法(DSC)によって測定することができる。崩壊温度は、当該技術で既知の方法によって、たとえば、凍結乾燥顕微鏡、光学コヒーレンス断層撮影によって測定することができる。非還元糖とタンパク質の比(モル:モル)及び他の製剤成分の量はガラス転移温度及び崩壊温度に影響するであろう。一部の実施形態では、α4β7抗体製剤のガラス転移温度は、約−35℃〜約−10℃、約−35℃〜約−25℃、又は約−35℃〜約−29℃である。別の実施形態では、α4β7抗体製剤のガラス転移温度は、約−29℃である。一部の実施形態では、α4β7抗体製剤のガラス転移温度は、約−30℃、約−31℃、約−32℃、約−33℃、約−34℃、約−35℃又は約−36℃である。一部の実施形態では、α4β7抗体製剤の崩壊温度は、約−30℃〜約0℃、約−28℃〜約−25℃、又は約−20℃〜約−10℃である。別の実施形態では、α4β7抗体製剤の崩壊温度は、約−26℃である。特定の理論に束縛されるのを望まないで、上昇速度が速ければ速いほど、製品の崩壊温度は高くなる。一次乾燥工程は、溶媒の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%以上を取り除くことができる。態様の1つでは、一次乾燥工程は、抗α4β7抗体製剤から80%を超える溶媒を取り除く。
【0141】
一次乾燥は棚の温度及び圧力に依存する。一次乾燥の条件は、異なる工程パラメータのもとでの凍結乾燥によって経験的に決定することができる。一次乾燥はまた製品温度に基づいて数学的にモデル化され得る。Rp及びKνの知識と合せた質量と熱転移の方程式(Milton, et al. (1997) PDA J of Pharm Sci & Tech, 51: 7-16)によって、棚の温度と圧力及びRp値で捕捉される製剤の変数のような工程の入力変数を含む入力変数の組み合わせ及び相互作用を理解するのが可能になる。これらのモデルは、崩壊温度と機器の容量による製品温度の限界に基づく効率的な工程で使用されるパラメータを決定するのに役立つ。
【数1】
【数2】
【0142】
方程式1は、容器(A
p)の内側断面積に対する一次乾燥中の昇華速度(dm/dt)、氷の蒸気圧(P
0)、チャンバーの圧力(P
c)及びケーキとストッパーについての面積を標準化した質量転移抵抗(R
p)に関する。昇華界面におけるP
0は方程式2から決定することができ、P
0は昇華界面での生成物氷の温度に関係し、それは、製品温度(T
p)からの近似であり、バイアルの底にて熱電対によって測定することができ、又は他の変数が決定される際の上記方程式に由来することができる。方程式3は、棚からバイアルへの熱転移速度に関係し、A
νはバイアルの面積であり、K
νはバイアルの熱転移係数であり、T
sは棚の温度であり、T
pは製品温度である。方程式4は熱と質量の転移の方程式を結合し、ΔH
sは昇華の熱である。
【0143】
一次乾燥についての方程式から分るように、棚の温度(T
s)、製品の温度(Tp)、チャンバーの圧力(P
c)、ケーキの質量転移抵抗(R
p)及び熱転移係数(K
ν)は昇華速度に影響を及ぼすことができる。
【0144】
凍結後及び一次乾燥前の任意の工程はアニーリングである。この工程では、凍結乾燥機の棚温度を、短時間、たとえば、約2〜6時間、約3〜5時間、又は約4時間、製剤のガラス転移温度を上回って高め、次いで棚温度を製剤のガラス転移温度を下回って再び下げる。アニーリングを用いて充填剤を結晶化し、さらに大きなさらに均一な氷結晶を形成する。アニーリング工程は、アニーリングせずに乾燥させたケーキよりもアニーリングして乾燥させたケーキの方が大きな表面積を有するので再構成の時間に影響することができる。α4β7抗体製剤のアニーリング工程は約−30℃〜約−10℃、又は約−25℃〜約−15℃であることができる。態様の1つでは、α4β7抗体製剤のためのアニーリング温度は約−20℃である。
【0145】
二次乾燥は一般に液体製剤の凍結温度を上回る温度で実施される。たとえば、二次乾燥は約10℃、約20℃、約30℃、約40℃又は約50℃で実施することができる。態様の1つでは、二次乾燥の温度は常温、たとえば、20〜30℃である。二次乾燥の時間は水分量が<5%に減るのに十分であるべきである。
【0146】
別の態様では、凍結乾燥サイクルには、約−45℃での凍結と、約−20℃でのアニーリングと、約−45℃での再凍結と、約−24℃及び150ミリトールでの一次乾燥と、約27℃及び150ミリトールでの二次乾燥が含まれる。
【0147】
R
pは、凍結DPの固形分によって及びケーキの孔構造に影響を及ぼすDPの熱履歴(凍結、アニーリング及び再凍結の段階)によって影響される。熱履歴はまた、二次乾燥段階にも影響することができ、さらに大きな表面積は水の脱離に役立つことができる(Pikal, et al. (1990) Int. J. Pharm., 60: 203-217)。一次及び二次の凍結乾燥段階の間で制御する有用な工程パラメータは、乾燥サイクルの各段階の間での棚温度及びチャンバーの圧力であり得る。
【0148】
規模を大きくするには、凍結乾燥機の負荷及び固形含量が乾燥サイクルに影響し得る。一次乾燥の時間は製剤における固形含量によって影響され得る。高い固形含量では、たとえば、固体全体(賦形剤及び/又はタンパク質)の濃度が、乾燥時間が決定される製剤からの10w/v%を超える、又は15w/v%を超える、たとえば、50〜100%の変異で変化する場合、乾燥時間が影響され得る。たとえば、高い固体含量の製剤は低い固体含量の製剤よりも長い乾燥時間を有し得る。一部の実施形態では、凍結乾燥機容量の利用率は約25〜約100%の範囲に及ぶことができる。容量の高い負荷%では、容量の低い負荷%に比べて一次乾燥時間は2倍まで増加し得る。固体含量が高まるにつれて、異なる負荷%での一次乾燥時間の間の差異が高まる。一実施形態では、固形含量は、20〜25%未満であり、負荷は25〜100%である。
【0149】
バイアルのサイズは凍結乾燥の間、棚及び真空にさらされる表面積に基づいて選択することができる。乾燥時間はケーキの高さに直接比例するので、バイアルのサイズは理に適ったケーキの高さであると判定されるものに基づいて選択され得る。体積に比べて大きな直径を持つバイアルは凍結乾燥サイクルの間、効率的な熱移転のために棚との大量の接触を提供することができる。液体の体積が多い希釈抗体溶液は乾燥にさらに多くの時間を必要とするであろう。大きなバイアルほど保存し、輸送するのに高価であり、上部空間と製剤の高い比を有し、高い比率の製剤を長期保存の間、水分の分解効果にさらし得るので、バイアルのサイズと製剤の体積のバランスを取る必要がある。300mg用量については、抗α4β7抗体製剤は、凍結乾燥の前、3ml、5ml、6ml、10ml、20ml、50ml又は100mlの体積を有することができる。態様の1つでは、バイアルのサイズは300mg用量における60mg/ml溶液について20mlである。
【0150】
凍結乾燥の後、バイアルは真空下で密封される、たとえば、栓で塞がれる。或いは、密封に先立って、容器の中に気体、たとえば、乾燥空気又は窒素を入れることができる。酸化が懸念される場合、凍結乾燥チャンバーに気体を入れることができ、凍結乾燥製品の酸化を遅らす又は妨げる気体を含むことができる。態様の1つでは、気体は含酸素ではない気体、たとえば、窒素又は不活性気体、たとえば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン又はキセノンである。別の態様では、気体は窒素又はアルゴンである。
【0151】
一部の実施形態では、凍結乾燥前の抗α4β7抗体製剤の体積は、投与前の再構成された溶液の体積と同じである。たとえば、凍結前約5.5mlである製剤は、乾燥固体の体積を考慮する量の液体、たとえば、水又は生理食塩水を加えることによって約5.5mlの体積に再構成することができる。他の実施形態では、再構成される溶液の体積とは異なる体積で抗α4β7抗体製剤を凍結乾燥することが望ましい。たとえば、抗α4β7抗体製剤を、たとえば、0.25×、0.5×、又は0.75×希釈溶液として凍結乾燥し、凍結乾燥前よりも75%、半分、又は25%少ない液体を加えることによって1×に再構成することができる。実施形態では、300mg用量を5%スクロースにて30mg/ml抗体溶液として凍結乾燥し、10%スクロースにて60mg/ml抗体溶液に再構成することができる。或いは、凍結乾燥した抗α4β7抗体製剤を凍結前の製剤よりもさらに希釈した溶液に再構成することができる。
【0152】
抗体製剤による治療
態様の1つでは、本発明は、たとえば、ヒトにおける疾患又は障害を治療するのに有効な量で本明細書に記載される抗α4β7抗体製剤を対象に投与することを含む、対象にて疾患又は障害を治療する方法を提供する。ヒト対象は、成人(たとえば、18歳以上)、若者又は小児であり得る。ヒト対象は65歳以上のヒトであり得る。代替の治療用投与計画とは対照的に、65歳以上のヒト対象は本明細書で記載される投与計画の修正を必要とせず、本明細書に記載される従来の抗α4β7抗体製剤が投与され得る。
【0153】
対象は、免疫調節因子TNF−α拮抗剤又はその組み合わせとの適切な応答を欠いていた、それに対する応答を欠如していた、又はそれによる治療に対して認容性ではなかった可能性がある。患者は、炎症性大腸疾患に対して少なくとも1つのコルチコステロイド(たとえば、プレドニゾロン)による治療を以前受けていた可能性がある。コルチコステロイドに対する不適正な応答は、毎日経口で2週間又は静脈内で1週間のプレドニゾロン30mgと同等の用量を含む少なくとも1回の4週間誘導計画の経験にもかかわらず、持続して活動性の疾患の兆候及び症状を指す。コルチコステロイドに対する応答の欠如は、毎日経口のプレドニゾロン10mgと同等の用量を下回るコルチコステロイドを徐々に減らす試みに2回失敗したことを指す。コルチコステロイドの非認容性には、クッシング症候群、骨減少症/骨粗鬆症、高血糖症、不眠症及び/又は感染の既往が挙げられる。
【0154】
免疫調節剤は、たとえば、経口のアザチオプリン、6−メルカプトプリン又はメソトレキセートであり得る。免疫調節剤に対する不適正な応答は、少なくとも1回の経口のアザチオプリン(≧1.5mg/kg)、6−メルカプトプリン(≧0.75g/kg)又はメソトレキセート(≧12.5g/kg)8週間の計画の経験にもかかわらず、持続して活動性の疾患の兆候及び症状を指す。免疫調節剤の非認容性には、嘔吐/吐き気、腹痛、膵炎、LFTの異常、リンパ球減少症、TPMT遺伝子変異及び/又は感染が挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
態様の1つでは、患者は、TNF−α拮抗剤治療に対する適切な応答を欠いていた、それに対する応答を欠如していた、又はそれに対して認容性ではなかった可能性がある。TNF−α拮抗剤は、たとえば、TNF−αの生物活性を阻害する、好ましくはTNF−αを結合する剤、たとえば、モノクローナル抗体、たとえば、REMICADE(インフリキシマブ)、HUMIRA(アダリムマブ)、CIMZIA(セルトリズマブペコール)、SIMPONI(ゴリムマブ)であり、又はENBREL(エタネルセプト)のような循環受容体融合タンパク質である。TNF−α拮抗剤に対する不適正な応答は、インフリキシマブ5mg/kgIVの少なくとも2週間離して2用量;80mgアダリムマブの1回皮下投与、その後少なくとも2週間離して40mgの単回投与;又は400mgのセルトリズマブペコールの皮下投与、少なくとも2週間離して2用量の少なくとも1回の4週間誘導計画の経験にもかかわらず、持続して活動性の疾患の兆候及び症状を指す。TNF−α拮抗剤に対する応答の欠如は、前の臨床的利益に続く維持投与の間での症状の再発を指す。TNF−α拮抗剤の非認容性には、点滴関連の反応、脱髄、鬱血性心不全及び/又は感染が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
寛解の維持の喪失は、潰瘍性大腸炎患者について本明細書で使用されるとき、Mayoスコアで少なくとも3点及び改変Baronスコアで少なくとも2点の上昇を指す。
【0157】
別の態様では、本発明は、(1)試験管内及び/又は生体内でα4β7インテグリンを結合することができ、(2)α4β7インテグリンの活性又は機能、たとえば、(a)結合機能(たとえば、α4β7インテグリンのMAdCAM(たとえば、MAdCAM1)、フィブロネクチン及び/又はVCAM−1に結合する能力)及び/又は(b)組織における白血球の動員及び/又は蓄積を含む白血球の浸潤(たとえば、腸管粘膜組織へのリンパ球の移動を阻害する能力)を調節することができる抗α4β7抗体製剤を提供する。一実施形態では、製剤中の抗体は、α4β7インテグリンを結合することができ、そのリガンド(たとえば、MAdCAM(たとえば、MAdCAM1)、VCAM−1、フィブロネクチン)の1以上へのα4β7インテグリンの結合を阻害することができ、それによって組織への白血球の浸潤(組織における白血球の動員及び/又は蓄積を含む)を阻害する。別の実施形態では、製剤中の抗体は、α4β7インテグリンを結合することができ、そのリガンド(たとえば、MAdCAM(たとえば、MAdCAM1)、VCAM−1、フィブロネクチン)の1以上へのα4β7インテグリンの結合を選択的に阻害することができ、それによって組織への白血球の浸潤(組織における白血球の動員及び/又は蓄積を含む)を阻害する。そのような抗α4β7抗体製剤は、試験管内及び/又は生体内で消化管関連の組織、リンパ系臓器又は白血球(特にT細胞又はB細胞のようなリンパ球)を含む粘膜組織にて血管内皮細胞へのα4β7インテグリンを持つ細胞の細胞接着を阻害することができる。さらに別の実施形態では、本発明の抗α4β7抗体製剤は、α4β7のMAdCAM(たとえば、MAdCAM1)及び/又はフィブロネクチンとの相互作用を阻害することができる。その上さらに別の実施形態では、本発明の抗α4β7抗体製剤は、たとえば、α4β7のVCAMとの相互作用を阻害することなく選択的にα4β7のMAdCAM(たとえば、MAdCAM1)及び/又はフィブロネクチンとの相互作用を阻害することができる。
【0158】
本発明の抗α4β7抗体製剤を用いて、α4β7インテグリンの結合機能及び/又は白血球(たとえば、リンパ球、単球)の浸潤機能を調節する(たとえば、阻害する(低減する又は妨げる)ことができる。たとえば、白血球(たとえば、リンパ球、単球)の組織、特に分子MAdCAM(たとえば、MAdCAM1)を発現している組織への浸潤(組織における白血球の動員及び/又は蓄積を含む)に関連する疾患の治療における方法に従って、リガンド(すなわち、1以上のリガンド)へのα4β7インテグリンの結合を阻害するヒト化免疫グロブリンを投与することができる。
【0159】
そのような疾患を治療するために、有効量の本発明の抗α4β7抗体製剤が個体(たとえば、ヒト又は他の霊長類のような哺乳類)に投与される。たとえば、消化管(消化管関連の内皮細胞を含む)、他の粘膜組織又は分子MAdCAM(たとえば、MAdCAM1)を発現している組織(たとえば、小腸及び大腸の固有層の小静脈のような消化管関連の組織、及び乳腺(たとえば、授乳している乳腺)に関連する疾患を含む炎症性疾患を本方法に従って治療することができる。同様に、MAdCAM(たとえば、MAdCAM1)を発現している細胞への白血球の結合の結果としての組織への白血球の浸潤に関連する疾患を有する個体を本発明に従って治療することができる。
【0160】
一実施形態では、従って治療することができる疾患には、たとえば、潰瘍性大腸炎、クローン病、回腸炎、セリアック病、非熱帯性スプルー、血清陰性の関節症に関連する腸疾患、顕微鏡的又はコラーゲン性の大腸炎、好中球性胃腸炎、又は直腸結腸切除後に生じる回腸嚢炎、及び回腸肛門吻合のような炎症性大腸疾患(IBD)が挙げられる。好ましくは、炎症性大腸疾患はクローン病又は潰瘍性大腸炎である。潰瘍性大腸炎は、中程度から重度の活動性潰瘍性大腸炎であり得る。治療は、中程度から重度の活動性潰瘍性大腸炎で苦しんでいる患者にて粘膜治癒を生じ得る。治療はまた患者によるコルチコステロイドの使用の低減、排除又は低減と排除も生じ得る。
【0161】
膵炎及びインスリン依存性の糖尿病は本発明の製剤を用いて治療することができる他の疾患である。MAdCAM(たとえば、MAdCAM1)は、BALB/c及びSJLマウスと同様にNOD(非肥満糖尿病)に由来する膵外分泌腺における一部の血管によって発現されることが報告されている。MAdCAMの発現は報告によれば、NODマウスの膵臓の炎症を起こした島における内皮細胞上に誘導され、MAdCAMは、膵島炎の早期段階でNODの島内皮によって発現される優勢なアドレシンであった(Hanninen, A., et al., J. Clin. Invest., 92: 2509-2515 (1993))。抗MAdCAM抗体又は抗α4β7抗体によるNODマウスの処理は、糖尿病の発症を妨げた(Yang et al., Diabetes, 46:1542-1547 (1997))。さらに、島内でのα4β7を発現するリンパ球の蓄積が認められ、MAdCAM−1が炎症を起こした島の血管への(Hanninen, A., et al., J. Clin. Invest., 92: 2509-2515 (1993))又はマントル細胞リンパ腫における消化管への(Geissmann et al., Am. J. Pathol., 153:1701-1705 (1998))α4β7を介したリンパ腫細胞の結合に関与するとみなされた。
【0162】
本発明の製剤を用いて治療することができる粘膜組織に関連する炎症性疾患の例には、胆嚢炎、胆管炎(Adams and Eksteen Nature Reviews 6:244-251 (2006) Grant et al., Hepatology33:1065-1072 (2001))、たとえば、原発性硬化性胆管炎、たとえば、腸のベーチェット病、又は胆管周囲炎(胆管及び肝臓の周囲の組織)、及び移植片対宿主病(たとえば、消化管にて(たとえば、骨髄移植後)(Petrovic et al. Blood103:1542-1547 (2004))が挙げられる。クローン病で見られるように、炎症は粘膜表面を越えて広がることが多いので、たとえば、サルコイドーシス、慢性胃炎、たとえば、自己免疫性胃炎(Katakai et al., Int. Immunol., 14:167-175 (2002))及び他の特発性の状態のような慢性の炎症性疾患は治療を受け入れることができる。
【0163】
本発明は、粘膜組織への白血球の浸潤を阻害する方法に関する。本発明はまた癌(たとえば、リンパ腫のようなα4β7陽性腫瘍)を治療する方法にも関する。本発明の製剤を用いて治療することができる粘膜組織に関連する炎症性疾患の他の例には、乳腺炎(乳腺)及び過敏性腸症候群が挙げられる。
【0164】
その病因がα4β7とのMAdCAM(たとえば、MAdCAM−1)の相互作用を利用する疾患又は病原体は、本明細書で記載される製剤における抗α4β7抗体によって治療することができる。そのような疾患の例にはたとえば、ヒト免疫不全ウイルス(たとえば、WO2008/140602を参照)が原因で起きる免疫不全障害が挙げられる。
【0165】
本発明の製剤は、α4β7がそのリガンドに結合するのを阻害するのに有効な量で投与される。治療法については、有効な量は、所望の治療(予防を含む)効果を達成するのに十分であろう(たとえば、α4β7インテグリンが介在する結合及び/又はシグナル伝達を低減し又は妨げ、それによって白血球の接着及び浸潤及び/又は関連する細胞性の応答を阻害するのに十分な量)。有効な量、たとえば、α4β7インテグリンの飽和、たとえば、中和を維持するのに十分な力価の抗α4β7抗体は、炎症性大腸疾患において臨床的な応答又は寛解を誘導することができる。本発明の製剤は単位用量又は複数回用量で投与することができる。投与量は当該技術で既知の方法によって決定することができ、たとえば、個体の年齢、感受性、認容性及び全体的な健康状態に左右され得る。投与様式の例には、たとえば、鼻内又は吸入又は経皮の投与のような局所経路、たとえば、補給チューブや座薬を介した経腸経路、及びたとえば、静脈内、筋肉内、皮下、動脈内、腹腔内又は硝子体内の投与のような非経口経路が挙げられる。抗体の好適な投与量は、治療当たり約0.1mg/体重kg〜約10.0mg/体重kg、たとえば、約2mg/kg〜約7mg/kg、約3mg/kg〜約6mg/kg、又は約3.5〜約5mg/kgであり得る。特定の実施形態では、投与される用量は、約0.3mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、又は約10mg/kgである。
【0166】
たとえば、抗α4β7抗体の再構成された抗体の希釈(たとえば、生理食塩水又は5%デキストロース点滴系にて)の後の最終投与形態は、投与のための約0.5mg/ml〜約5mg/mlであることができる。最終投与形態は、1.0mg/ml〜約1.4mg/ml、約1.0mg/ml〜約1.3mg/ml、約1.0mg/ml〜約1.2mg/ml、約1.0〜約1.1mg/ml、約1.1mg/ml〜約1.4mg/ml、約1.1mg/ml〜約1.3mg/ml、約1.1mg/ml〜約1.2mg/ml、約1.2mg/ml〜約1.4mg/ml、約1.2mg/ml〜約1.3mg/ml又は約1.3mg/ml〜約1.4mg/mlの間の濃度であり得る。最終投与形態は、約0.6mg/ml、0.8mg/ml、1.0mg/ml、1.1mg/ml、約1.2mg/ml、約1.3mg/ml、約1.4mg/ml、約1.5mg/ml、約1.6mg/ml、約1.8mg/ml又は約2.0mg/mlの濃度であり得る。一実施形態では、総用量は180mgである。別の実施形態では、総用量は300mgである。300mgの抗α4β7抗体の用量を投与のために250mlの生理食塩水又は5%のデキストロース溶液にて希釈することができる。
【0167】
一部の態様では、投与計画は2つの相、誘導相及び維持相を有する。誘導相では、たとえば、抗体又はその抗原結合断片に対する免疫寛容を誘導すること又は臨床な応答を誘導すること及び炎症性大腸疾患の症状を改善することのような特定の目的に好適な有効量の抗体又はその抗原結合断片を迅速に提供するような方法で、抗体又はその抗原結合断片が投与される。患者は、初めて抗α4β7抗体によって治療される場合、抗α4β7抗体療法以来、たとえば、3ヵ月を超えて、4ヵ月を超えて、6ヵ月を超えて、9ヵ月を超えて、1年を超えて、18ヵ月を超えて又は2年を超えて長い間治療を受けていない場合、又は抗α4β7抗体の維持相の間に、炎症性大腸疾患の症状の再発、たとえば、疾患の寛解からの再発があれば、誘導相の治療を受けることができる。一部の実施形態では、誘導相の計画は、維持計画の間で維持される平均定常状態のトラフ血清濃度よりも高い平均トラフ血清濃度、たとえば、次の用量の直前の濃度を生じる。
【0168】
維持相では、抗体又はその抗原結合断片は、誘導療法で達成された安定した抗体又はその抗原結合断片のレベルによる応答を継続するような方法で投与される。維持計画は症状の再発又は炎症性大腸疾患の再発を防ぐことができる。維持計画は、たとえば、単純な投与計画又は治療のための外来訪問が頻繁ではないなどのような患者に利便性を提供することができる。一部の実施形態では、維持計画には、低用量、少ない投与、自己投与及び前述の組み合わせから成る群から選択される戦略による、たとえば、本明細書で記載される製剤中の抗α4β7抗体又はその抗原結合断片の投与が含まれる。
【0169】
一実施形態では、たとえば、治療法の誘導相の間、投与計画は、ヒト患者における炎症性大腸疾患の寛解を誘導するために本明細書で記載される製剤における有効量の抗α4β7抗体又は抗原結合断片を提供する。一部の実施形態では、有効量の抗α4β7抗体は、誘導相の終了までに約5μg/ml〜約60μg/ml、約15μg/ml〜約45μg/ml、約20μg/ml〜約30μg/ml、又は約25μg/ml〜約35μg/mlの抗α4β7抗体の平均トラフ血清濃度を達成するのに十分である。誘導相の持続時間は、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、又は約8週間の治療であり得る。一部の実施形態では、誘導計画は、たとえば、本明細書で記載される製剤における抗α4β7抗体又はその抗原結合断片の高用量、頻繁な投与、及び高用量と頻繁な投与の組み合わせから成る群から選択される戦略を利用することができる。誘導投与は、1回又は1回を超える複数投与、たとえば、少なくとも2回投与であり得る。誘導相の間、用量は1日1回、2日に1回、週に2回、週に1回、10日に1回、2週間に1回又は3週間に1回投与することができる。一部の実施形態では、誘導用量は、治療の最初の2週間以内に抗α4β7抗体によって投与される。一実施形態では、誘導投与は、治療の開始(0日目)で1回及び治療の開始後約2週間で1回であり得る。別の実施形態では、誘導相の持続時間は6週間である。別の実施形態では、誘導相の持続時間は6週間であり、最初の2週間に複数の誘導用量が投与される。
【0170】
一部の実施形態では、たとえば、重度の炎症性大腸疾患の患者(たとえば、抗TNF−α療法が上手く行かなかった患者)の治療を開始する場合、誘導相は、軽度又は中程度の患者よりも長い持続時間を有する必要がある。一部の実施形態では、重度の患者の誘導相は、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、又は少なくとも14週間の持続時間を有することができる。一実施形態では、重度疾患の患者のための誘導投与計画は、0週目での投与(治療の開始)、2週目の投与及び6週目の投与を含むことができる。別の実施形態では、重度疾患の患者のための誘導投与計画は、0週目での投与(治療の開始)、2週目の投与、6週目の投与及び10週目の投与を含むことができる。
【0171】
一実施形態では、たとえば、治療法の維持相の間、投与計画は、平均定常状態トラフ血清濃度、たとえば、約5〜約25μg/mL、約7〜約20μg/mL、約5〜約10μg/mL、約10〜約20μg/mL、約15〜約25μg/mL又は約9〜約13μg/mLの抗α4β7抗体の次の投与直前のプラトー濃度を維持する。別の実施形態では、投与計画は、たとえば、治療法の維持相の間、約20〜約30μg/mL、約20〜約55μg/mL、約30〜約45μg/mL、約45〜約55μg/mL又は約35〜約40μg/mLの抗α4β7抗体の平均定常状態トラフ血清濃度を維持する。
【0172】
用量は、1週当たり1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、6週ごとに1回、8週ごとに1回、又は10週ごとに1回投与することができる。さらに高い又は頻繁な用量、たとえば、1週当たり1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回は、活動性疾患の寛解を誘導するために又は新しい患者を治療するために、たとえば、抗α4β7抗体に対して寛容を誘導するために有用であり得る。頻繁ではない用量、たとえば、4週ごとに1回、5週ごとに1回、6週ごとに1回、8週ごとに1回、又は10週ごとに1回の用量は、予防療法のために、たとえば、慢性疾患の患者で寛解を維持するために有用であり得る。態様の1つでは、治療計画は、約0日目、約2週目、約6週目及びその後4又は8週ごとの治療である。一実施形態では、維持投薬計画には8週ごとの投与が含まれる。8週ごとに1回の投与の維持投薬計画を受けている患者が1以上の疾患の症状の再来を経験する、たとえば、再発する実施形態では、投与回数を、たとえば、4週ごとに1回に上げることができる。
【0173】
投薬は約20分間、約25分間、約30分間、約35分間又は約40分間で患者に投与することができる。
【0174】
投与計画は患者の炎症性大腸疾患において臨床的な応答及び臨床的な寛解を誘導するために最適化することができる。一部の実施形態では、投与計画は治療を受けている患者の脳脊髄液にてCD4とCD8の比を変えない。
【0175】
一部の態様では、長く続く臨床的な寛解、たとえば、治療の開始後6ヵ月又は1年以内で担当医との少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回の外来を介して持続する臨床的な寛解は最適化された投与計画によって達成され得る。
【0176】
一部の態様では、長く続く臨床的な応答、たとえば、治療の開始後少なくとも6ヵ月、少なくとも9ヵ月、少なくとも1年持続する臨床的な応答は最適化された投与計画によって達成され得る。
【0177】
一実施形態では、投与計画は、300mgの初回投与、初回投与の約2週間後の300mgの第2の後続投与、初回投与の約6週間後の300mgの第3の後続投与、その後、第3の後続投与後4週ごと又は8週ごとの第4の後続投与を含む。
【0178】
一部の実施形態では、治療の方法、用量又は投与計画は、患者が抗α4β7抗体に対するHAHA反応を発生する可能性を低減する。たとえば、抗α4β7抗体に反応性である抗体によって測定されるようなHAHAの発生は、抗α4β7抗体のクリアランスを高めることができ、たとえば、抗α4β7抗体の血清濃度を下げることができ、たとえば、α4β7インテグリンに結合した抗α4β7抗体の数を減らすので、治療効果を下げてしまう。一部の実施形態では、HAHAを防ぐために、その後に維持計画が続く誘導計画によって患者を治療することができる。一部の実施形態では、誘導計画と維持計画の間には休止期間はない。一部の実施形態では、誘導計画は複数用量の抗α4β7抗体を患者に投与することを含む。HAHAを防ぐために、抗α4β7抗体による治療法を開始する場合、高い初回投与、たとえば、少なくとも1.5mg/kg、少なくとも2mg/kg、少なくとも2.5mg/kg、少なくとも3mg/kg、少なくとも5mg/kg、少なくとも8mg/kg、少なくとも10mg/kg又は約2〜約6mg/kg、又は頻繁な初回投与、たとえば、ほぼ1週間当たり1回、ほぼ2週ごとに1回又はほぼ3週ごとに1回の標準用量で患者を治療することができる。一部の実施形態では、治療方法は、患者の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%をHAHA陰性として維持する。他の実施形態では、治療方法は、少なくとも6週間、少なくとも10週間、少なくとも15週間、少なくとも6ヵ月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、又は治療法の持続期間について患者をHAHA陰性として維持する。一部の実施形態では、患者又はHAHAを発生している患者の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも60%は抗α4β7抗体の低力価、たとえば、≦125を維持する。実施形態では、治療方法は、患者の少なくとも70%を抗α4β7抗体による治療法を開始した後少なくとも12週間、HAHA陰性として維持する。
【0179】
製剤は、単独で又は別の剤と併用して個体(たとえば、ヒト)に投与され得る。本発明の製剤は、追加の剤の投与の前、それと共に、又はその後投与することができる。一実施形態では、α4β7インテグリンのそのリガンドへの結合を阻害する1を超える製剤が投与される。そのような実施形態では、剤、たとえば、抗MAdCAM又は抗VCAM−1モノクローナル抗体のようなモノクローナル抗体を投与することができる。別の実施形態では、追加の剤はα4β7経路とは異なる経路における白血球の内皮リガンドへの結合を阻害する。そのような剤は、ケモカイン(C−Cモチーフ)受容体9(CCR9)を発現するリンパ球の胸腺が発現するケモカイン(TECK又はCCL25)又はLFA−1の細胞内接着分子(ICAM)への結合を阻害する剤への結合を阻害することができる。たとえば、抗TECK抗体又は抗CCR9抗体又はPCT公開WO03/099773又はWO04/046092で開示された阻害剤のような小分子CCR9阻害剤、又は抗ICAM−1抗体、又はICAMの発現を妨げるオリゴヌクレオチドが、本発明の製剤に加えて投与される。さらに別の実施形態では、追加の有効成分(たとえば、たとえば、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、5−アミノサリチル酸含有抗炎症剤のような抗炎症性化合物、別の非ステロイド性抗炎症性化合物、ステロイド性抗炎症性化合物、又はIBDの制御のために一般に投与される抗生剤(たとえば、シプロフロキサシン、メトロニダゾール)、又は他の生物剤(たとえば、TNFα拮抗剤))を本発明の製剤と併用して投与することができる。
【0180】
実施形態では、一緒に投与される薬剤の用量は、抗α4β7抗体を含む製剤による治療期間の間、経時的に減らすことができる。たとえば、抗α4β7抗体製剤による治療の開始時、又はその前にステロイド(たとえば、プレドニゾン、プレドニゾロン)で治療されていた患者は、抗α4β7抗体製剤による治療の早ければ6週間で開始するステロイドの用量を減らす投薬計画を受けることになる。ステロイドの用量は、当初の薬量漸減の4〜8週以内で約25%、抗α4β7抗体製剤による治療の間の薬量漸減の約8〜12週で50%及び約12〜16週で75%減らされるであろう。態様の1つでは、抗α4β7抗体製剤による治療の約16〜24週までにステロイド投与は排除することができる。別の例では、抗α4β7抗体製剤による治療の開始時、又はその前に6−メルカプトプリンのような抗炎症性化合物で治療されていた患者は、上記で言及したようにステロイド投与についての薬量漸減計画に類似する抗炎症性化合物の用量を低下させる投薬計画を受けることになる。
【0181】
一実施形態では、方法は有効量の本発明の製剤を患者に投与することを含む。製剤が固体、たとえば、乾燥状態であるならば、投与の過程は製剤を液体状態に変換する工程を含むことができる。態様の1つでは、注射、たとえば、静脈内、筋肉内又は皮下の注射で使用するために、たとえば、上述のような液体によって乾燥製剤を再構成することができる。別の態様では、固体の又は乾燥した製剤を、たとえば、貼付剤、クリーム、エアゾール又は座薬にて局所に投与することができる。
【0182】
本発明は、分子MAdCAM(たとえば、MAdCAM−1)を発現している組織の白血球浸潤に関連する疾患を治療する方法にも関する。方法は、それを必要とする患者に有効量の本発明の抗α4β7抗体製剤を投与することを含む。実施形態では、疾患は移植片対宿主病である。一部の実施形態では、疾患は、分子MAdCAM(たとえば、MAdCAM−1)を発現している消化管関連の内皮へのα4β7インテグリンを発現している白血球の結合の結果としての組織の白血球浸潤に関連する疾患である。他の実施形態では、疾患は胃炎(たとえば、好中球性胃炎又は自己免疫性胃炎)、膵炎、又はインスリン依存性糖尿病である。さらに他の実施形態では、疾患は、胆嚢炎、胆管炎又は胆管周囲炎である。
【0183】
本発明はまた、患者において炎症性大腸疾患を治療する方法にも関する。一実施形態では、方法は有効量の本発明の抗α4β7抗体製剤を患者に投与することを含む。一部の実施形態では、炎症性大腸疾患は潰瘍性大腸炎又はクローン病である。他の実施形態では、炎症性大腸疾患はセリアック病、血清陰性の関節症に関連する腸疾患、顕微鏡的又はコラーゲン性の大腸炎、胃腸炎(たとえば、好中球性胃腸炎)、又は回腸嚢炎である。
【0184】
一部の実施形態では、抗α4β7抗体による治療はCD4:CD8リンパ球の比を変えない。CD4:CD8の比は血液、リンパ節吸引液及び脳脊髄液(CSF)にて測定することができる。健常な個体におけるCSFのCD4
+:CD8
+のリンパ球の比は通常約1以上である(Svenningsson et al., J. Neuroimmunol. 1995;63:39-46; Svenningsson et al., Ann Neurol. 1993; 34:155-161)。免疫調節剤はCD4:CD8の比を1未満に変化させることができる。
【0185】
製造物品
別の態様では、本発明は、本発明の医薬製剤を含有し、使用のための指示書を提供する製造物品である。製造物品は容器を含む。好適な容器には、たとえば、ビン、バイアル(たとえば、二重チャンバーバイアル、針付き又は針なしの液体製剤のバイアル、針付き又は針なしの再構成液のバイアル付き又はなしの固体製剤のバイアル)、シリンジ(たとえば、二重チャンバーシリンジ、事前負荷したシリンジ)及び試験管が挙げられる。容器は、たとえば、ガラス、金属又はプラスチックのような種々の物質から形成され得る。容器は、製剤とその上の又はそれに関連するラベルを保持し、容器は使用のための指示を示し得る。別の実施形態では、製剤は自己投与のために調製され、及び/又は自己投与のための指示書を含有することができる。態様の1つでは、製剤を保持する容器は単回使用バイアルであり得る。別の態様では、製剤を保持する容器は複数回使用バイアルであってもよく、それは再構成された製剤の1を超える部分を用いて製剤の反復投与(たとえば、2〜6回の投与)を可能にする。製造物品はさらに、他の緩衝液、希釈液、充填剤、針、シリンジ、前の項で言及した使用のための指示書を伴った添付文書を含む、商業的な見地及びユーザーの見地から望ましい他の物質を含み得る。
【0186】
臨床的な及び質的な解析
別の態様では、本発明は医薬製剤が製品の質的基準を満たすことを判定する方法である。方法は、製剤を調べ、外見を評価すること、再構成時間を確定すること、凍結乾燥製剤の水分含量を確定すること、凍結乾燥製剤における凝集体を測定すること、断片化を測定すること、酸化/脱アミド化を測定すること、任意で生物活性及び効能を測定することを含む凍結乾燥した医薬製剤(たとえば、ヒト化抗α4β7抗体)の評価を含み、所定の基準の達成は製品が臨床用途に適応されることを明示する。
【0187】
許容できる質的レベルには、≦5.0%の水分、≦40分の再構成時間、pH6.3±0.3の再構成液、54.0〜66.0mg/mlの抗体濃度、≧55.0%のCEXによる主要アイソフォーム、≧96.0%のSECによる単量体、≦2.5%の高分子量(凝集体)、≧90%のSDS−PAGEによるH+L鎖、60〜140%の参照標準接着が挙げられる。
【0188】
以下の実施例を参照することによって本発明はさらに完全に理解されるであろう。しかしながら、それらは本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではない。文献及び特許の引用はすべて参照によって本明細書に組み入れられる。
【0189】
製剤を作製するための開発プロトコール
A.抗α4β7抗体溶液
【0190】
凍結した高濃度の抗α4β7抗体調製物(ベドリズマブ、50mMのヒスチジン、125mMのアルギニン、0.06%のポリソルベート80、pH6.3)のビンを室温にて16〜24時間融解する。溶解したビンをステンレススチールの配合容器にプールし、混合する。次いで調製物を希釈緩衝液A(50mMのヒスチジン、125mMのアルギニン、0.06%のポリソルベート80、pH6.3)によって80mg/mlのベドリズマブに希釈し、混合する。次いでスクロースを含有する希釈緩衝液B(50mMのヒスチジン、125mMのアルギニン、40%のスクロース、0.06%のポリソルベート80、pH6.3)で調製物を希釈することによってスクロースを加える。この工程は、抗α4β7抗体調製物を60mg/mlのベドリズマブ、50mMのヒスチジン、125mMのアルギニン、10%のスクロース、0.06%のポリソルベート80、pH6.3の液体製剤に希釈する。
【0191】
B.凍結乾燥
50mMのヒスチジン、125mMのアルギニン、0.06%のポリソルベート80、10%のスクロース、pH6.3における60mg/mlの抗α4β7抗体製剤をバイアル当たり5.52mlでストッパー付きの20mlガラスバイアルに充填し、凍結乾燥位置に置く。凍結乾燥機にて約20℃に設定した棚にバイアルを装着する。バイアルをすべて装着し、ドアを閉めた後、棚温度を約−45℃に下げて溶液を凍結する。この温度で3時間の後、アニーリングのために棚の温度を−20℃に上げる。4時間アニーリングした後、棚の温度を約−45℃に下げて溶液を再び凍結する。この温度でバイアルを平衡化した後、チャンバーから空気を排出する。圧力が150ミリトールになると、棚温度を一次乾燥温度、約−24℃に徐々に上げる。一次乾燥は結晶氷すべてがバイアルから昇華するまで進行する。次いで二次乾燥のために水分が凍結乾燥製剤のほぼ2.5%未満になるまで棚温度を16時間27℃に上げる。二次乾燥が完了すると、常圧に達するまで窒素気体をチャンバーに充填し戻す。バイアルを栓で塞ぎ、凍結乾燥機から取り出す。
【0192】
C.凍結乾燥した抗α4β7抗体の保存及び使用
抗α4β7抗体の凍結したバイアルを−70℃、−20℃、2〜8℃又は25℃にて所望の時間保存する。使える状態である場合、バイアルを室温に平衡化する。次いで、21Gの針を用いて注射用水(「WFI」)を含有するシリンジでバイアルの内容物を再構成する。WFIの量は再構成した抗体溶液の最終体積が凍結乾燥前の溶液の体積と同一であるように決定する。5.52mlの凍結前の体積については、4.8mlのWFIを加える。バイアルを穏やかに回転させ、次いで10〜30分間保持して製剤を再構成させ、次いでシリンジを用いて抗体溶液を取り出し、患者へのIVバッグ又はIV点滴に添加する。
【実施例】
【0193】
例示
実施例1
凍結乾燥した製剤にて%糖及びアミノ酸を変化させることについての比較データ
実験アプローチの設計を行って糖(スクロース及びマンニトール)とタンパク質のモル比、アルギニンとタンパク質のモル比、及びヒスチジン緩衝液のモル量を変える効果を調べた。ヒスチジン及びアルギニンは凍結乾燥工程の間結晶化しないことが知られており、この点でこれらは低温保護剤又は凍結保護剤となっている。1.5mlの製剤を5mlのバイアルに充填し、凍結乾燥し、−30℃、150ミリトールで一次乾燥し、20℃、150ミリトールで二次乾燥した。様々な保存条件の後、1.5mlに再構成した凍結乾燥製剤の安定性を表1〜3(2つの実験の60mg/mlの結果を編集する)に示す。
図6Aは、40℃で保存し、pH及び糖とアルギニンのモル比を変化させた場合の単量体比率、凝集体比率及び主要アイソフォーム比率における変化についての予測モデルを示す。製剤の安定性は、低pHで(糖+アルギニン)とタンパク質のモル比が高い場合最良だった。調べたヒスチジンのモル量では、ヒスチジンは製剤の安定性に影響しなかった。製剤はすべて保存中1〜2%の水分を有した。
【0194】
【表1】
【0195】
【表2】
【0196】
【表3】
【0197】
図6Aは、表1〜3からの40℃のデータの統計的解析に基づいた予測モデルを示す。SEC解析による40℃での月当たりの単量体比率の変化についてのモデルは−3.10+(0.386)
*pH+0.000516
*((糖のモル+アルギニンのモル)/タンパク質のモル)である。SEC解析による40℃での月当たりの凝集体比率の変化についてのモデルは2.43−(0.263)
*pH−0.000787
*((糖のモル+アルギニンのモル)/タンパク質のモル)である。CEX解析による40℃での月当たりの主要アイソフォーム比率の変化についてのモデルは−2.54+(0.109)
*pH−0.00130
*((糖のモル+アルギニンのモル)/タンパク質のモル)である。中央線は予測モデルについての結果を示し、外側の線は予測モデルについての95%信頼限界を示す。
【0198】
図6Bは、入力因子がpH、糖:タンパク質のモル比及びアルギニン:タンパク質のモル比である場合の表1〜3に40℃でのデータの統計的な解析に基づく代替モデルを示す。SEC解析による40℃での月当たりの単量体比率の変化についてのモデルは−3.02+(0.370)
*pH+0.000482
*((糖のモル)/(タンパク質のモル))+0.000657
*(アルギニンのモル/タンパク質のモル)である。SEC解析による40℃での月当たりの凝集体比率の変化についてのモデルは2.35−(0.244)
*pH−0.000727
*((糖のモル)/(タンパク質のモル))−0.00102
*(アルギニンのモル/タンパク質のモル)である。CEX解析による40℃での月当たりの主要アイソフォーム比率の変化についてのモデルは−2.92+(0.210)
*pH+0.00164
*((糖のモル)/(タンパク質のモル))−0.000220
*(アルギニンのモル/タンパク質のモル)である。中央線は予測モデルについての結果を示し、外側の線は予測モデルについての95%信頼限界を示す。
【0199】
実施例2
安定性のデータ
指示された保存条件(24ヵ月まで5℃及び25℃/60%RH)で保存した後の安定性について製剤の3つの一次安定性バッチ(バッチA、B及びC)を調べた。3つのバッチはすべて、凍結された同一の液体製剤:60mg/mlの抗α4β7抗体、50mMのヒスチジン、125mMのアルギニン、10%のスクロース、0.06%のポリソルベート80、pH6.3を含有する。バッチAについては、3.5mlの溶液を20mlのバイアルに充填し、凍結乾燥し、バッチB及びCについては5.52mlの溶液を20mlのバイアルに充填し、凍結乾燥した。
【0200】
別の試験では、60mg/mlの抗α4β7抗体、50mMのヒスチジン、125mMのアルギニン、10%のスクロース、0.06%のポリソルベート80、pH6.3の単一薬剤製剤をそれぞれ3.5ml及び9.5mlの2つの体積で凍結乾燥し、安定性試料についてバッチR及びSを得て、それを38ヵ月にわたって解析した。ブランクはNT(試験せず)である。
【0201】
データ(表4〜19)は、5℃で38ヵ月まで及び25℃/60%RHで30カ月まで保存した場合、抗体製剤は安定のままであることを示した。製品はすべて38ヵ月の時点にわたって仕様の範囲内のままであったことによると考えられる。
【0202】
【表4】
【0203】
【表5】
【0204】
【表6】
【0205】
【表7】
【0206】
【表8】
【0207】
【表9】
【0208】
【表10】
【0209】
【表11】
【0210】
【表12】
【0211】
【表13】
【0212】
【表14】
【0213】
【表15】
【0214】
【表16】
【0215】
【表17】
【0216】
【表18】
【0217】
【表19】
【0218】
カチオン交換クロマトグラフィ(CEX)
高速液体クロマトグラフィ方式にて弱カチオン交換カラムでリン酸塩/塩化ナトリウムの勾配を用いて抗α4β7抗体製剤における荷電種を分離し、抗体種の電荷組成を測定する。主要アイソフォームの前に酸性アイソフォームが溶出し、主要アイソフォームの後に塩基性アイソフォームが溶出する。
【0219】
CEXアッセイを用いて生成したベドリズマブのバッチすべてについての安定性データを表3、6〜8及び14〜16に提示する。表は、これらの保存条件では、55%を下回って主要アイソフォーム比率を低下させる傾向はなかったことを示している。
【0220】
サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)
分析用SECカラム(ペンシルベニア州、キングオブプラシャのTosoh Bioscience,LLC)を用いてSECを行う。移動相はリン酸緩衝化生理食塩水溶液であり、吸収は280nmでモニターする。
【0221】
SECアッセイを用いて生成した安定性データを表1、2、4、5、12及び13に提示する。表は、列記した保存条件のいずれも96.0%を下回って単量体比率を低下させなかったことを示している。同様に、列記した保存条件のすべてにてバッチすべてについて凝集体比率は≦2.5%のままだった。
【0222】
SDS−PAGEアッセイ
還元条件では4〜20%及び非還元条件では4〜12%にてInvitorgen(カリフォルニア州、カールスバッド)のトリス/グリシンゲルを用いてSDS−PAGEを行う。再構成した抗体製剤を液体製剤緩衝液で希釈し、次いで、10%の2−メルカプトエタノールと共に(還元試料緩衝液)又は2−メルカプトエタノールを含まずに(非還元試料緩衝液)トリス/グリシンSDS試料緩衝液(2X、Invitrogen)で1:2に希釈する。試料を手短に加熱し、分子量マーカー(Invitrogen)と対比させて負荷する。メーカーの指示書に従ってコロイド状のクマシーブルー(Invitrogen)によってゲルを染色する。濃度測定法によってタンパク質バンドを解析し、還元ゲルでは重鎖及び軽鎖の%を特定し、非還元ゲルではIgGの%を特定する。
【0223】
還元SDS−PAGEアッセイを用いて生成した安定性データを表9及び17に提示する。安定性のロットについて列記した保存条件すべてにて重鎖+軽鎖(H+L)の比率に顕著な変化は認められなかった。バンドのパターンは参照標準に類似し、%(H+L)は≧90%のレベルのままだった。
【0224】
結合有効性
PBS、0.01%アジ化ナトリウム中1%BSAに浮遊させたHuT78細胞(ヒトT細胞リンパ腫細胞、バージニア州、マナッサスのアメリカンタイプカルチャーコレクション)を連続希釈した一次試験抗体と接触させる。氷上でインキュベートした後、細胞を洗浄し、蛍光標識した二次抗体で処理する。さらに洗浄した後、細胞を固定し、フローサイトメトリー(ニュージャージー州、フランクリンレイクスのBecton Dickinson)による解析のためにFACS試薬に浮遊させる。また、米国特許第7,147,851号も参照のこと。
【0225】
参照標準に比べてベドリズマブの結合有効性を測定し、%参照標準及びEC50として報告した。安定性データを表10及び18に提示する。%参照標準に関するデータは、変動を示したが、保存条件すべてにて仕様限界の範囲内に止まった。ベドリズマブの評価されたロットは、列記された保存条件で結合有効性を低下させる傾向を示さなかった。
【0226】
Karl Fischerによる水分
電量Karl Fischer水分決定法のために製剤をメタノールで滴定する。水分データを表11及び19に提示する。列記した保存条件すべてにてベドリズマブの評価したロットはすべて5%未満の水分を有した。
【0227】
キャピラリ等電点電気泳動(cIEF)
iCE280全カラム検出cIEFシステム(オンタリオ州、トロントのConvergent Biosciences)を用いてcIEFを行う。両性電解質はメーカーによって推奨されるように選択することができ、市販の両性電解質の組み合わせであり得る。有用な組み合わせは、3〜10及び5〜8のPHARMALYTE(商標)(ニュージャージー州、ピスカタウエイのGE Healthcare)である。
【0228】
実施例3:凍結乾燥工程の規模拡大のモデル化
凍結乾燥機における負荷及び製剤の固形分を操作しつつ、品質作り込みを用いた。負荷は33〜100%変化した。負荷にて標的製剤の0.5×、1.0×及び1.5×である製剤を含むことによって製剤の固形分は9〜27%変化した。これらの製剤は類似のT
gを有した。さらに多い固形物比率と共に、一次乾燥時間が増加した。加えて、さらに多い固形分にてさらに大きなR
pのために製品温度が上昇した。負荷はまた乾燥の双方の段階に影響を有する(
図8)。
【0229】
実施例4:非臨床的な安全性試験
アカゲザルEAEにおけるCNSの免疫監視機構に対するナタリズマブとベドリズマブの効果を比較するように試験を設計した。プラセボ対照を8匹の動物に週1回投与した。30mg/kgのナタリズマブを週1回7匹の動物に投与した。30mg/kgのベドリズマブを週1回7匹の動物に投与した。EAEの臨床症状を観察し:フローサイトメトリーによってCSFにおける白血球サブセットの頻度と比率を測定し;MRIを用いて脳におけるT2の総病変量を測定し;組織病理法を用いて脳の病変量と脱髄を測定した。
【0230】
ベドリズマブはプラセボ対照と比べてEAEの臨床症状の発症を遅らせなかった。それはEAEの発症を抑制しなかったし、臨床スコアの大きさも抑えなかった。ナタリズマブはプラセボ対照と比べてEAEの臨床症状の発症を有意に遅らせた(p<0.05)。それはEAEの発症及び臨床スコアの大きさを抑えた(
図9)。
【0231】
ベドリズマブは、白血球、Tリンパ球(ヘルパーTリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球)、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、又は単球によるCSFの浸潤を抑えなかった。これに対してナタリズマブはCSFの浸潤を阻害した。
【0232】
ベドリズマブは、MRIを介したT2の増大及びMTRの低下によって検出されるような脳の病変の蓄積を阻害しなかった。ナタリズマブは1匹の動物を除いてすべてで病変形成を妨げた。脳の浸潤及び脱髄における有意な(p<0.05)阻害は組織学によって測定した。
【0233】
生体内で投与されたベドリズマブと生体外で加えられた分析用の抗α4β7モノクローナル抗体の間での競合結合アッセイによって示されるように、検討中、α4β7インテグリンはベドリズマブによって飽和された。分析用の抗α4β7mAbは、ベドリズマブを投与された動物にて記憶ヘルパーT細胞に結合しない。従って、CNSにおけるベドリズマブの効果の欠如はα4β7インテグリンの消化管指向性の生物学によるものである。
【0234】
要約すると、ベドリズマブ(α4β7拮抗剤)はEAEを阻害しない。対照的にナタリズマブ(α4β1とα4β7の拮抗剤)はEAEを阻害する。α4β1インテグリンはEAEにおけるCNSの浸潤に介在する。従って、ベドリズマブは、α4β1インテグリンに拮抗せず、アカゲザルのEAEにおけるCNSの免疫監視機構を損傷しないので、ナタリズマブよりも患者がPMLに罹りやすくなるリスクが低い可能性がある。
【0235】
実施例5:ベドリズマブによるフェーズI臨床試験
49人の健常な対象を無作為化し、試験薬物を単回投与した:39人の対象がベドリズマブ(5mg/mlの抗体、20mMのクエン酸塩/クエン酸、125mMの塩化ナトリウム、0.05%のポリソルベート80、pH6.0(−70℃で長期、−20℃で3ヵ月保存された))の投与を受け、10人の対象がプラセボの投与を受けた。ベドリズマブの投与を受けた39人のうち、8人はそれぞれ0.2、2.0、6.0及び10.0mg/kg、7人は0.5mg/kgのベドリズマブの投与を受けた。49人全員が試験を完了した。
【0236】
人口統計的な又はベースラインの特徴についてベドリズマブのコホートには顕著な差異はなかった。平均年齢は35.4〜51.0歳であり;個々の対象は21歳から63歳に及んだ。
【0237】
PKの結果
0.2〜10.0mg/kgの30分間の静脈内点滴としてベドリズマブを投与した。Cmax及び血清薬剤濃度−時間曲線下面積(AUC)の値は用量の増加と共に増加した。用量補正したCmaxがコホートを横切ってほぼ同一であるということは、このパラメータの用量比例性を示した。ゼロから無限大までの血清薬剤濃度値下の用量標準化面積(AUC
0−∞)が2.0mg/kgまで用量が増加するのに伴って増加したということは、この試験で投与された用量の低範囲にわたる用量の増加に伴ってAUC
0−∞における非線形の増加があったことを示している。その後、AUC
0−∞が用量に比例して増加したということは、2.0〜10.0mg/kgの用量範囲にわたってAUC
0−∞の線形性を示している。AUC
0−∞における増加は0.2mg/kg用量と比較して10.0mg/kg用量で期待されるものよりも約2〜4倍高かった。
【0238】
同様に、クリアランスの推定、分布容積、及び最終半減期は0.2〜2.0mg/kgの用量範囲にわたって用量依存性であった。用量が増えるにつれて、クリアランスは低下し、分布容積は増加し、その結果最終半減期は延長した。しかしながら、2から10.0mg/kgまででは、これらのパラメータの明瞭な変化がなかったが、それは低濃度でのベドリズマブの迅速な排泄過程の飽和を示唆している。さらに遅い線形の排泄過程は、さらに高い用量でのベドリズマブのクリアランスの大きな分画の主な要因である可能性が高い。
【0239】
ベドリズマブに対してHAHAを発生した一部の対象では、各用量レベルの範囲内でHAHA陰性の対象に比べてベドリズマブの速いクリアランスが認められた。
【0240】
【表20-1】
【表20-2】
【0241】
C
maxに達した後、ベドリズマブの血清濃度は、濃度がほぼ1〜10mg/lに達するまで一般に単一指数関数的に低下した。その後、濃度は非線形的に低下すると思われた。
【0242】
C
max及びAUCの値は用量の上昇に伴った上昇した。利用可能なデータについては、用量補正したC
maxがコホートを横断してほぼ同一であったということは、このパラメータの用量比例性を示している。用量標準化面積AUC
0−∞が2.0mg/kgまで用量が増加するのに伴って増加したということは、この試験で投与された用量の低範囲にわたる用量の増加に伴ったAUC
0−∞における非線形の増加があったことを示している。その後、AUC
0−∞が用量に比例して増加したということは、2.0〜10.0mg/kgの用量範囲にわたってAUC
0−∞の線形性を示している。AUC
0−∞における増加は0.2mg/kg用量と比較して10.0mg/kg用量で期待されるものよりも約2〜4倍高かった。
【0243】
PDの結果
コホートによる0.2〜10.0mg/kgのベドリズマブの30分間の静脈内点滴に続くベドリズマブのPDのパラメータをAct−1及びMAdCAMについてそれぞれ表21及び表22に要約する。
【0244】
【表21】
【0245】
【表22】
【0246】
ベドリズマブは、ベドリズマブが血清にて測定可能であるすべての時点でPDパラメータ、Act−1及びMAdCAM−1−Fcをほぼ最大に阻害した。ベドリズマブの濃度がいったんアッセイの検出限界を下回って低下すると、Act−1及びMAdCAM−1−Fcの阻害はほぼベースラインのレベルまで回復した。
【0247】
ベドリズマブに対するHAHAを発生した一部の対象では、各用量レベルでHAHA陰性の対象に比べてα4β7受容体の飽和の速い喪失が認められた。
【0248】
安全性の結果
ベドリズマブは一般に安全であり、10.0mg/kgの単回IV投与で上手く認容された。試験中、死亡、重篤な有害事象(SAE)又は試験の中断を招くAEは生じなかった。
【0249】
免疫原性/ヒト抗ヒト抗体(HAHA)の形成
プラセボ群で1人(10%)及び併用ベドリズマブ投与群で21人の対象(54%)が試験の一部の時点で陽性HAHAを有した。陽性HAHA試料は投与コホートすべてに認められたが、>125のHAHA力価は2つのベドリズマブ最低用量群のみで見られた。HAHA形成の用量依存性の抑制は以前ベドリズマブで認められていた。HAHA陽性である22人のベドリズマブで治療した対象のうち19人は現在中和HAHAを有した。
【0250】
【表23】
【0251】
プラセボ群で1人及びベドリズマブ群で11人の対象が持続してHAHA陽性だった。
【0252】
【表24】
【0253】
結論
このフェーズI試験はCHO細胞に由来するベドリズマブのPK/PD及び当初の安全性特性を特徴付けた。この試験の結果を用いて炎症性大腸疾患のフェーズ3の重要な試験のための用量選択を支援した。
【0254】
ベドリズマブは、Cmaxパラメータについて調べた用量範囲にわたって用量比例性を示したが、AUC0−inf、CL、Vz及びt1/2における用量依存性の変化が0.2〜2.0mg/kgで認められたということは、ベドリズマブの非線形のPK挙動を示唆している。2.0mg/kgより大きな用量レベルでは、これらのパラメータにさらなる変化は認められず、それは、低濃度でのベドリズマブの迅速な排泄過程の飽和を示唆している。さらに遅い線形の排泄過程は、さらに高い用量でのベドリズマブのクリアランスの大きな分画の主な要因である可能性が高い。
【0255】
ベドリズマブは、ベドリズマブが血清で測定可能である時点すべてにおいて最大レベル又は最大に近いレベルでPDパラメータ、Act−1及びMAdCAM−1−Fcを阻害した。ベドリズマブがいったんアッセイの検出限界を下回って低下すると、Act−1及びMAdCAM−1−Fcの阻害はほぼベースラインのレベルまで回復した。
【0256】
ベドリズマブに対するHAHAを発生した一部の対象では、各用量レベルの範囲内でHAHA陰性対象に比べてベドリズマブの速いクリアランス及びα4β7受容体飽和の速い喪失が認められた。
【0257】
ベドリズマブは上手く認容された。試験中、死亡、SAE又は試験薬剤投与の中断を招くAEは生じなかったし、用量/毒性の関係も認められなかった。全身性の日和見感染(PMLを含む)又は悪性腫瘍も報告されなかった。
【0258】
非特異的なα4拮抗剤とは異なって、ベドリズマブはリンパ球増加症又は循環する好酸球、好塩基球、単球の平均増加に関係することなく、又はリンパ球の枯渇の証拠もなかった。
【0259】
ベドリズマブはHAHAの形成を誘発したが、最高の力価(>125)は2つの最低用量群でしか見られず、それは免疫原性における用量依存性の低下の以前の所見を支持する知見である。これらのデータは高い用量のベドリズマブの投与が臨床的に有意なHAHAの形成をできるだけ抑えることを示している。
【0260】
結論的には、ベドリズマブは一般に安全であり、健常対象に0.2〜10.0 mg/kgの単回用量で投与した際、上手く認容された。
【0261】
実施例6:CD4:CD8の比に対するベドリズマブの効果の判定
10%スクロースの凍結乾燥製剤から再構成され、0.9%の生理食塩水の点滴系に希釈されたベドリズマブの単回450mg用量にて18〜45歳の健常対象を処理した。ベドリズマブの単回450mg投与前(ベースライン)及び5週間後に腰椎穿刺によって脳脊髄液を採取した。各対象は彼ら自身対照として役立った。
【0262】
ナタリズマブで治療したMS患者が、たった1回の投与の後、CSFのCD4+:CD8+リンパ球の比に対する影響及び脳の病変数の減少を実証したことを示した以前の試験(Stuve et al. Arch Neurol. 2006; 63: 1383-1387; Stuve et al. Ann Neurol. 2006;59:743-747. Miller et al. N Engl J Med. 2003;348(1):15-23)に基づいて、またベドリズマブの5週での450mg用量が、標的を飽和するのに十分であり、4週ごとの300mgのフェーズ3の投与計画に関連する推定定常状態トラフレベルを超える血清濃度を提供するので5週の時点を選択した。
【0263】
免疫的な表現型決定のために各対象からおよそ15mlのCSFを得た。以下の基準:試料当たり≦10のRBC/μl(末梢血の混入をできるだけ抑えるために);陰性のCSF培養結果;各フローサイトメトリー試料における適正なTリンパ球数;及びベドリズマブに対する血清抗体が検出されないことを満たせばCSF試料を解析に含めた。
【0264】
5週目の中央値(34.80μg/ml)及び個々の対象の血清ベドリズマブ濃度(24.9〜47.9μg/mlの範囲)は、フェーズ3の投与計画についての推定される定常状態のトラフ濃度(約24μg/ml)よりも高かった。高い程度(>90%)のα4β7受容体の飽和がMAdCAM−1−Fcによって測定されたように5週目で認められたということは、終点評価の時点での標的のベドリズマブの飽和を示している。
【0265】
ベドリズマブはどのCSF試料にも検出されなかった(検出限界=0.125μg/ml)
【0266】
CD4+及びCD8+のTリンパ球の数及び比に対する効果
ベドリズマブはCD4+及びCD8+の比を有意に低下させなかった(表25)。投与後<1のCD4+及びCD8+の比を有する対象はいなかった(p<0.0001、片側t検定)。ベドリズマブはCSFにてCD4+及びCD8+のTリンパ球の数を有意に減らさなかった。加えて、CSFの%CD4+及び%CD8+のTリンパ球に有意な変化はなかった(表26)。また、末梢血WBC、CD4+及びCD8+の記憶Tリンパ球における有意な変化も認められなかった(表27)。
【0267】
【表25】
【0268】
【表26】
【0269】
【表27】
【0270】
要約
ベドリズマブは、450mgの単回投与後の健常志願者におけるCSFのCD4+及びCD8+の細胞数又はCD4
+及びCD8
+の比に影響を及ぼさなかった。投与後、CSFのCD4+:CD8+の比が1未満に低下した対象はいなかった。ベドリズマブはCSFでは検出されなかった。加えて、末梢血における総WBC又は記憶Tリンパ球のCD4+及びCD8+のサブセットでの変化は認められなかった。血液における標的(α4β7)の飽和は終点評価の時点で対象全員にて生じた。CSFのCD4+及びCD8+のリンパ球のレベル及び比は文献で報告された以前のものに類似していた。
【0271】
これらの結果は、サルの生理的なCNSの免疫監視機構及び病理的なCNSの炎症の双方にベドリズマブが影響を欠くことに一致している(実施例4を参照)。
【0272】
実施例7:IBDの治療に関するベドリズマブによる長期臨床経験
フェーズ2の非盲検安全性延長試験を完了してベドリズマブの長期の薬物動態(PK)、薬力学(PD)、安全性及び有効性を評価した。患者は18歳〜75歳であり、潰瘍性大腸炎患者における以前のPK/PD安全性試験に以前加わったことがあるか、又は36ヵ月のスクリーニング内で内視鏡で、及び/又は組織病理学的に及び/又は放射線検査で確認された少なくとも2ヵ月間のIBDの症状を有していた。
【0273】
患者はすべて、2mg/kg又は6mg/kgのベドリズマブ(5mg/mLの抗体、20mMのクエン酸塩/クエン酸、125mMの塩化ナトリウム、0.05%のポリソルベート80、pH6.0(長期には−70℃で3ヵ月までは−20℃で保存)を1、15及び43日目、その後、合計78週まで8週ごとに受け取った。患者は、治療を受けたことがない潰瘍性大腸炎若しくはクローン病の患者、又は以前の臨床試験に加わったことがある潰瘍性大腸炎患者であった。
【0274】
有効性/生活の質(QOL)、部分Mayoスコア(PMS)、クローン病活動性指数(CDAI)及び炎症性大腸疾患アンケート(IBDQ)を用いて試験の結果を評価した。
【0275】
PKの結果
平均の点滴前のベドリズマブ濃度は用量比例性であり、固定したままであり、試験全体を通して検出可能だった。
【0276】
PDの結果
すべての用量レベルで試験全体を通して受容体(%ACT−1+[CD4+CD45RO高]及び%MADCAM+[CD4+CD45RO高]はほぼ完全に阻害された。
【0277】
部分Mayoスコア
ベースラインの平均PMSは、潰瘍性大腸炎を繰り返す患者(2.3)よりも治療したことがない潰瘍性大腸炎患者の方が(5.4)高かった。43日目までに、PMSは、繰り返し患者及び治療したことがない潰瘍性大腸炎患者の双方で顕著な低下を示した。155日目までに、2群の平均スコアは類似した。平均PMSは267日目までの間、低下し続け、その後、平らになった。
【0278】
クローン病活動性指標
CD患者のCDAIはベースラインの294.6から43日目で237.7まで低下し、155日目までの間低下し続けた(156.1)。
【0279】
IBDQ
潰瘍性大腸炎を繰り返す患者はベースラインで最高平均値のIBDQスコアを有した。43日目までに3つの疾患群すべてで増加した。平均IBDQスコアは3つの疾患群すべてで経時的に増加し続け、クローン病患者では155日目に、治療したことがない潰瘍性大腸炎患者及び潰瘍性大腸炎を繰り返す患者では491日目に最高に達した。
【0280】
C−反応性タンパク質
潰瘍性大腸炎を繰り返す患者及びクローン病患者は155日目までの間低下する平均CRPレベルを示し、その後平らになった。治療したことがない潰瘍性大腸炎患者は、潰瘍性大腸炎を繰り返す患者よりもベースラインで低い平均CRPレベルを有した(2.28対7.09)。治療したことがない潰瘍性大腸炎患者の平均CRPレベルは、評価された時点すべてで相対的に一定のままだった。
【0281】
他の安全性の結果
試験の間、全身性の日和見感染(PMLを含む)は報告されなかった。患者1人が単一時点でJCウイルス血症陽性であったが、他の時点ではすべてJCV陰性だった。72人の患者のうち3人(4%)が陽性のHAHA成績(これらのうち2人は一時的に陽性)を有した。試験は、肝臓毒性、リンパ球増加症、又はリンパ球減少症、又は他の薬剤関連の臨床検査値の変化の証拠を示さなかった。
【0282】
結論
78週まで8週ごとに1回、2.0又は6.0mg/kgで投与されたベドリズマブは、標的受容体の飽和を達成し、疾患の活動性の長く続く平均的な低下と改善されたIBDQを伴い、一般に安全で上手く認容され、許容可能な免疫原性を示した。
【0283】
実施例8:中程度から重度の活動性クローン病患者における応答及び寛解の誘導
無作為二重盲検プラセボ対照多施設試験を完了して、6週目(0及び2週目での2回の投与の後)及び10週目(3回投与後)にてTNFα拮抗剤で失敗した患者において300mg用量(凍結乾燥した50mMのヒスチジン、125mMのアルギニン、0.06%のポリソルベート80、10%スクロース、pH6.3における60mg/mlの抗体の製剤から再構成した)でのベドリズマブの誘導効果を評価した。試験は416人の患者から成り、そのうち75%はTNFα拮抗剤で失敗した患者であり、25%はTNFαの投薬経験がなかった。人口統計学及び付随するIBDの投薬は治療群全体にわたって均衡を取った。ベースラインの疾患の特徴もベースラインの疾患の活動性を除いて治療群全体にわたって均衡を取った。
【0284】
試験で指定された一次終点は、TNFα拮抗剤で失敗した集団では6週目の寛解(%)であった。評価される(順次試験手順)鍵となる二次終点は、集団全体での6週目の寛解(%)、TNFα拮抗剤で失敗した集団及び集団全体での10週目の寛解(%)(Hochberg法を用いて)、TNFα拮抗剤で失敗した集団及び集団全体での6週と10週での持続した寛解(%)(Hochberg法を用いて)、及びTNFα拮抗剤で失敗した集団での6週目の向上した応答(%)であった。
【0285】
【表28】
【0286】
【表29】
【0287】
【表30】
【0288】
【表31】
【0289】
試験は、TNFα拮抗剤で失敗した患者が寛解の誘導に3回の投与を必要とすることを示した。TNFα拮抗剤で失敗した患者における寛解率は6週目と10週目の間で増加したが、ベドリズマブ群(プラセボではない)についてのみだった。TNFα拮抗剤の投与経験がない患者についての寛解率は6週目と10週目の間では実質的に増加しなかった。疾患の重症度の程度が高いTNFα拮抗剤で失敗した患者のうち、43%はTNFα拮抗剤に決して応答しなかったし、45%は応答を喪失した。
【0290】
実施例9:中程度から重度の活動性クローン病における応答及び寛解の誘導及び維持
中程度から重度の活動性の潰瘍性大腸炎患者における応答と寛解の誘導と維持を評価するために2つの無作為二重盲検多施設試験を含む単回試験を設計した。人口統計的な及びベースラインの疾患の特徴は治療群すべてにわたって同等だった。
【0291】
静脈内投与を用いた誘導試験を、50mMのヒスチジン、125mMのアルギニン、0.06%のポリソルベート80、10%スクロース、pH6.3における60mg/mlの抗体の凍結乾燥製剤から再構成した300mg用量にて、ベドリズマブの2回投与後6週間での終点でベドリズマブに対するプラセボと比較した。
【0292】
誘導試験と同じ製剤及び経路を用いた維持試験をベドリズマブに対するプラセボと比較したが、ベドリズマブは4週ごとに投与し、ベドリズマブに対するプラセボは8週ごとに投与した。各患者は18〜80歳であり、中程度から重度の活動性の潰瘍性大腸であると診断され、過去5年間にわたって従来の治療法(たとえば、コルチコステロイド)の少なくとも1つに対して不適切な応答、応答の喪失又は非認容性を示したが、IBDに対する従来の治療法の治療投与を受けていてもよい。この試験の終点は52週であり、誘導応答者の集団を解析した。試験の双方のフェーズはその一次終点、すなわち、誘導における臨床的な応答及び維持での臨床的な寛解を満たした。
【0293】
血液試料を採取して試験中のベドリズマブの濃度を測定した。誘導相の終了時でのベドリズマブの平均血清濃度は20〜30μg/mLだった。300mg用量投与の30分間IV点滴の後の定常状態でのベドリズマブの平均トラフ血清濃度はq8wks投薬計画では9〜13μg/mLの間であり、q4wks投薬計画では35〜40μg/mLの間であった。点滴終了時のベドリズマブの中央値血漿濃度は、q8wks(8週)投薬計画では98〜101μg/mLの間であり、q4wks(4週)投薬計画では129及び137μg/mL前後であった。
【0294】
誘導試験及び維持試験の応答の要約を表32〜35に提供する。ベドリズマブで治療した患者の有意に大きな集団がプラセボに比べて6週間で臨床的な応答、寛解及び粘膜治癒を達成した(表32)。誘導相の包括解析集団の39%は過去の抗TNF−α療法で失敗を有した。臨床的な応答及び寛解の比率は、過去の抗TNF−α療法での失敗がある患者及び抗TNF−αに暴露されていない患者の双方でベドリズマブの方がプラセボより高かった。6週間までの間での予備的な解析では、有害事象(AE)、重篤なAE及び試験の中止を招く有害事象の比率はベドリズマブ群よりプラセボ群で高かった。プラセボ患者よりも有意に高いベドリズマブ患者の集団が、52週での臨床的な寛解、粘膜治癒、及びコルチコステロイドなしの寛解、及び長く続く応答と寛解を達成した(表33)。維持試験の集団の32%は過去の抗TNF−α療法で失敗を有した。臨床的な寛解及び長く続く応答の比率は、TNFで失敗した患者及びTNF経験のない患者の双方でプラセボよりもベドリズマブの方が高かった。0〜52週での安全性の集団(N=895)では、有害事象(AE)、重篤なAE及び重篤な感染は、ベドリズマブ群とプラセボ群の間で類似していた。日和見感染又は腸内感染の比率の上昇はベドリズマブ群では認められなかった。
【0295】
【表32】
【0296】
【表33】
【0297】
【表34】
【0298】
【表35】
【0299】
実施例10:中程度から重度の活動性のクローン病患者における応答と寛解の誘導と維持
中程度から重度の活動性のクローン病患者における応答と寛解の誘導と維持を評価するために2つの無作為二重盲検多施設試験を含む単回試験を設計した。人口統計的な及びベースラインの疾患の特徴は治療群すべてにわたって同等だった。
【0300】
静脈内投与を用いた誘導試験を、50mMのヒスチジン、125mMのアルギニン、0.06%のポリソルベート80、10%スクロース、pH6.3における60mg/mlの抗体の凍結乾燥製剤から再構成した300mg用量にて、ベドリズマブの2回投与後6週間での終点でベドリズマブに対するプラセボと比較した。
【0301】
誘導試験と同じ製剤及び経路を用いた維持試験をベドリズマブに対するプラセボと比較したが、ベドリズマブは4週ごとに投与し、ベドリズマブに対するプラセボは8週ごとに投与した。この試験の終点は52週であり、誘導応答者の集団を解析した。
【0302】
驚くべきことに、この試験は、Q4週及びQ8週の群ではよく似た結果が得られることを示した。誘導試験及び維持試験の応答の要約を表36〜39に提供する。プラセボに比べてベドリズマブで治療した患者の有意に大きな集団が臨床的な寛解及び高い応答を達成した(表36)。臨床的な寛解及び高い応答の比率は、過去にTNFで失敗したもの及び過去にTNF暴露のないもの双方でプラセボよりもベドリズマブ患者において高かった。有害事象(AE)、重篤なAE及び重篤な感染の比率はベドリズマブ群及びプラセボ群の双方で類似していた。日和見感染又は腸内感染の比率の上昇はベドリズマブ群では認められなかった。
【0303】
【表36】
【0304】
【表37】
【0305】
【表38】
【0306】
【表39】
【0307】
【表40】
【0308】
本発明はその好まれる実施形態を参照して特に示され、記載されてきたが、添付のクレームに包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において種々の変更がその中で為され得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0309】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]安定な製剤であって、非還元糖と抗α4β7抗体と少なくとも1つの遊離のアミノ酸の混合物を含み、前記製剤は固体形態であり、非還元糖と抗α4β7抗体のモル比(モル:モル)が600:1を超える安定な製剤。
[2]前記製剤がさらに緩衝化剤を含む[1]に記載の製剤。
[3]前記非還元糖が、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース及びそれらの組み合わせから成る群から選択される[1]に記載の製剤。
[4]前記遊離のアミノ酸が、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン、グルタミン酸及びそれらの組み合わせから成る群から選択される[1]に記載の製剤。
[5]前記製剤がさらに界面活性剤を含む[1]に記載の製剤。
[6]前記界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー及びそれらの組み合わせから成る群から選択される[5]に記載の製剤。
[7]前記製剤が凍結乾燥され、凍結乾燥前に少なくとも約5%〜約10%の抗α4β7抗体を含む[1]に記載の製剤。
[8]前記製剤が、凍結乾燥前に少なくとも約6%の抗α4β7抗体を含む[1]に記載の製剤。
[9]前記製剤が、約100mM〜約175mMの間の遊離のアミノ酸を含む[1]に記載の製剤。
[10]前記製剤が液体製剤である[1]に記載の製剤。
[11]前記製剤が乾燥製剤である[1]に記載の製剤。
[12]前記製剤が40℃、75%RHにて少なくとも3ヵ月安定である[1]に記載の製剤。
[13]安定な液体製剤であって、水溶液中にて非還元糖と抗α4β7抗体と少なくとも1つの遊離のアミノ酸を含み、非還元糖と抗α4β7抗体のモル比(モル:モル)が600:1を超える安定な液体製剤。
[14]前記製剤がさらに緩衝化剤を含む[13]に記載の液体製剤。
[15]前記非還元糖が、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース及びそれらの組み合わせから成る群から選択される[13]に記載の液体製剤。
[16]前記遊離のアミノ酸が、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン、グルタミン酸及びそれらの組み合わせから成る群から選択される[13]に記載の液体製剤。
[17]前記製剤がさらに界面活性剤を含む[13]に記載の液体製剤。
[18]前記界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー及びそれらの組み合わせから成る群から選択される[17]に記載の液体製剤。
[19]前記製剤が約5.5〜約7.5の間のpHを有する[13]に記載の液体製剤。
[20]前記製剤が約6.0〜約6.5の間のpHを有する[13]に記載の液体製剤。
[21]前記製剤が、少なくとも約60mg/ml〜約80mg/mlの抗α4β7抗体を含む[13]に記載の液体製剤。
[22]前記製剤が、少なくとも約60mg/mlの抗α4β7抗体を含む[13]に記載の液体製剤。
[23]安定な製剤であって、少なくとも約60mg/ml〜約80mg/mlの抗α4β7抗体と緩衝化剤と少なくとも約10%(w/w)の糖を含み、前記製剤が液体製剤である安定な製剤。
[24]前記緩衝化剤がヒスチジン緩衝液である[23]に記載の製剤。
[25]前記糖がスクロースである[23]に記載の製剤。
[26]安定な製剤であって、少なくとも約60mg/mlの抗α4β7抗体と少なくとも約10%(w/w)の非還元糖を含み、前記製剤が凍結乾燥される安定な製剤。
[27]前記製剤がポリソルベート80をさらに含む[26]に記載の製剤。
[28]前記非還元糖がスクロースである[26]に記載の製剤。
[29]安定な製剤であって、非還元糖と抗α4β7抗体とヒスチジンとアルギニンとポリソルベート80の混合物を含み、前記製剤は固体形態であり、非還元糖と抗α4β7抗体のモル比(モル:モル)が600:1を超える安定な製剤。
[30]前記製剤がさらに金属キレート剤を含む[13]〜[25]のいずれかに記載の製剤。
[31]前記製剤がさらに抗酸化剤を含む[13]〜[25]のいずれかに記載の製剤。
[32]前記抗体がベドリズマブである[1]〜[31]のいずれかに記載の製剤。
[33][1]〜[32]のいずれか1項に記載の製剤を作製する方法であって、前記方法が一次乾燥の間、崩壊温度を下回る製品温度を維持することを含む方法。
[34]さらにアニーリング工程を含む[33]に記載の方法。
[35]品質について凍結乾燥した製剤を判定する方法であって、外見について製剤を検査することと、再構成の時間を確定することと、水分含量を確定することと、存在する凝集体の比率を確定することと、存在する断片の比率を確定することと、酸化/脱アミド化レベルを確定することを含む方法。
[36]製剤の生物活性及び効能を確定することをさらに含む[35]に記載の方法。
[37]炎症性大腸疾患で苦しむヒト患者を治療する方法であって、前記方法が、
ヒトα4β7インテグリンに対する結合特異性を有するヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片を炎症性大腸疾患で苦しむヒト患者に投与する工程を含み、
ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が以下の投与計画:
(a)静脈内点滴としての300mgのヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の初回投与、
(b)その後の、初回投与の約2週間後での静脈内点滴としての300mgのヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の第2の後続投与、
(c)その後の、初回投与の約6週間後での静脈内点滴としての300mgのヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の第3の後続投与、
(d)その後の、ヒト化抗体の第3の後続投与後、必要に応じて4週ごと又は8週ごとの静脈内点滴としての300mgのヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の第4の後続投与に従って患者に投与され、
前記投与計画が患者の炎症性大腸疾患における臨床的な応答及び臨床的な寛解を誘導し;
さらに、ヒト化免疫グロブリン又は抗原結合断片が、非ヒト起源の抗原結合領域とヒト起源の抗体の少なくとも一部を含み、ヒト化免疫グロブリン又は抗原結合断片がα4β7複合体に対して結合特異性を有し;抗原結合領域が、CDRs:軽鎖CDR1:配列番号9,CDR2:配列番号10,CDR3:配列番号11;重鎖CDR1:配列番号12,CDR2:配列番号13,CDR3:配列番号14を含む方法。
[38]患者が、免疫調節剤、腫瘍壊死因子α拮抗剤又はそれらの組み合わせの少なくとも1つに対して適切な応答を欠いていた、応答を喪失していた、又はそれによる治療に認容性ではなかった[37]に記載の方法。
[39]炎症性大腸疾患がクローン病又は潰瘍性大腸炎である[37]に記載の方法。
[40]炎症性大腸疾患が潰瘍性大腸炎である[39]に記載の方法。
[41]炎症性大腸疾患が中程度から重度の活動性の潰瘍性大腸炎である[39]に記載の方法。
[42]投与計画が、中程度から重度の活動性の潰瘍性大腸炎で苦しむ患者にて粘膜治癒を生じる[41]に記載の方法。
[43]投与計画が、患者によるコルチコステロイドの使用の軽減、排除又は軽減と排除を生じる[37]に記載の方法。
[44]患者が、炎症性大腸疾患のために少なくとも1種のコルチコステロイドによる治療を以前受けていた[37]に記載の方法。
[45]ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が、約1.0mg/ml〜約1.4mg/mlの濃度での最終投与形態で投与される[37]に記載の方法。
[46]ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が、約1.2mg/mlの濃度での最終投与形態で投与される[45]に記載の方法。
[47]ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が、約30分間で患者に投与される[37]に記載の方法。
[48]ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が、凍結乾燥した製剤から再構成される[45]に記載の方法。
[49]ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が再構成されて安定な液体製剤を構成する[45]に記載の方法。
[50]投与計画が、前記治療を受けている患者の脳脊髄液におけるCD4とCD8の比を変化させない[37]に記載の方法。
[51]炎症性大腸疾患の治療療法についての投与計画であって、方法が、ヒトα4β7インテグリンに対する結合特異性を有するヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片を炎症性大腸疾患で苦しむ患者に投与する工程を含み、
ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が以下の投与計画:
(a)静脈内点滴としての300mgのヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の初回投与、
(b)その後の、初回投与の約2週間後での静脈内点滴としての300mgのヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の第2の後続投与、
(c)その後の、初回投与の約6週間後での静脈内点滴としての300mgのヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の第3の後続投与、
(d)その後の、ヒト化抗体の第3の後続投与後、必要に応じて4週ごと又は8週ごとの静脈内点滴としての300mgのヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片の第4の後続投与;に従って患者に投与され、
前記投与計画が患者の炎症性大腸疾患における臨床的な応答及び臨床的な寛解を誘導し;
さらに、ヒト化免疫グロブリン又は抗原結合断片が、非ヒト起源の抗原結合領域とヒト起源の抗体の少なくとも一部を含み、ヒト化免疫グロブリン又は抗原結合断片がα4β7複合体に対して結合特異性を有し;抗原結合領域が、以下で示す相補性決定領域(CDRs):軽鎖CDR1:配列番号9,CDR2:配列番号10,CDR3:配列番号11;重鎖CDR1:配列番号12,CDR2:配列番号13,CDR3:配列番号14を含む、投与計画。
[52]患者が、免疫調節剤、腫瘍壊死因子α拮抗剤又はそれらの組み合わせの少なくとも1つに対して適切な応答を欠いていた、応答を喪失していた、又はそれによる治療に認容性ではなかった[51]に記載の投与計画。
[53]炎症性大腸疾患がクローン病又は潰瘍性大腸炎である[51]に記載の投与計画。
[54]炎症性大腸疾患が潰瘍性大腸炎である[52]に記載の投与計画。
[55]炎症性大腸疾患が中程度から重度の活動性の潰瘍性大腸炎である[54]に記載の投与計画。
[56]投与計画が、中程度から重度の活動性の潰瘍性大腸炎で苦しむ患者にて粘膜治癒を生じる[55]に記載の投与計画。
[57]投与計画が、患者によるコルチコステロイドの使用の軽減、排除又は軽減と排除を生じる[51]に記載の投与計画。
[58]患者が、炎症性大腸疾患のために少なくとも1種のコルチコステロイドによる治療を以前受けていた[51]に記載の投与計画。
[59]ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が、約1.0mg/ml〜約1.4mg/mlの濃度での最終投与形態で投与される[51]に記載の投与計画。
[60]ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が、約1.2mg/mlの濃度での最終投与形態で投与される[59]に記載の投与計画。
[61]ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が、約30分間で患者に投与される[51]に記載の投与計画。
[62]ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が、凍結乾燥した製剤から再構成される[61]に記載の方法。
[63]ヒト化免疫グロブリン又はその抗原結合断片が再構成されて安定な液体製剤を構成する[61]に記載の投与計画。
[64]投与計画が、前記治療を受けている患者の脳脊髄液におけるCD4とCD8の比を変化させない[51]に記載の投与計画。
[65]患者が65歳以上の人であり、さらに患者が投与計画の調整を必要としない[51]に記載の方法。
[66]患者が65歳以上の人であり、さらに患者が投与計画の調整を必要としない[51]に記載の投与計画。
[67]遊離のアミノ酸と抗体のモル比が少なくとも250:1である[1]に記載の製剤。
[68]遊離のアミノ酸と抗体のモル比が少なくとも250:1である[13]に記載の製剤。