特許第6473847号(P6473847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6473847
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】廃棄物処理設備及びその非常運転方法
(51)【国際特許分類】
   F23L 5/02 20060101AFI20190207BHJP
   F23G 5/44 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   F23L5/02
   F23G5/44 F
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-147038(P2018-147038)
(22)【出願日】2018年8月3日
【審査請求日】2018年10月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】山口 修史
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 圭
(72)【発明者】
【氏名】迫田 健吾
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−025325(JP,A)
【文献】 特開2017−203434(JP,A)
【文献】 実開昭59−099196(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 5/02
F23G 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を焼却処理する焼却炉と、
前記焼却炉に供給される燃焼用空気を加熱する予熱器と、
前記予熱器に供給される燃焼用空気を圧縮する圧縮部と、前記予熱器で加熱された燃焼用空気によって回転することにより前記圧縮部を駆動させるタービン部と、を含む過給機と、
前記圧縮部と前記タービン部との間の燃焼用空気の経路に配置された切替弁であって、前記切替弁よりも上流側と下流側との間で空気の流通を許容する開状態と当該流通を阻止する閉状態とを切り替える前記切替弁と、
前記経路における前記切替弁よりも上流側の位置からの空気の放出を許容する開状態と当該放出を阻止する閉状態とを切り替える放風弁と、
前記経路における前記切替弁よりも下流側の位置に空気を送る送風部と、
前記圧縮部においてサージングを検知した時に、前記送風部を作動させると共に前記切替弁を前記閉状態とし且つ前記放風弁を前記開状態とする制御を行う制御部と、を備え
前記切替弁は、前記経路における前記予熱器よりも上流側の位置に配置されており、
前記放風弁は、前記経路における前記圧縮部よりも下流側の位置から空気を放出するように配置されており、
前記送風部は、前記経路における前記予熱器よりも上流側の位置に空気を送るように配置されている、廃棄物処理設備。
【請求項2】
前記圧縮部に吸入される燃焼用空気の温度を測定する温度測定部をさらに備え、
前記制御部は、前記温度測定部により測定された温度に基づいて、前記圧縮部におけるサージングの発生の有無を検知する、請求項1に記載の廃棄物処理設備。
【請求項3】
廃棄物を焼却処理する焼却炉と、前記焼却炉に供給される燃焼用空気を加熱する予熱器と、前記予熱器に供給される燃焼用空気を圧縮する圧縮部と前記予熱器で加熱された燃焼用空気によって回転することにより前記圧縮部を駆動させるタービン部とを含む過給機と、を備えた廃棄物処理設備において、前記圧縮部でサージングを検知した時の非常運転を行う方法であって、
上流側と下流側との間で空気の流通を許容する開状態と当該流通を阻止する閉状態とを切り替える切替弁を、前記圧縮部と前記タービン部との間の燃焼用空気の経路に設けることと、
前記圧縮部におけるサージングの発生の有無を検知することと、
前記圧縮部におけるサージングを検知した時に、前記切替弁を前記閉状態にすると共に前記経路における前記切替弁よりも上流側の位置から空気を放出し且つ前記経路における前記切替弁よりも下流側の位置に空気を送りつつ前記廃棄物処理設備を運転する非常運転を行うこと、を備え
前記経路における前記予熱器よりも上流側の位置に前記切替弁を設け、
前記非常運転において、前記経路における前記圧縮部よりも下流側の位置から空気を放出すると共に、前記経路における前記予熱器よりも上流側の位置に空気を送る、廃棄物処理設備の非常運転方法。
【請求項4】
前記圧縮部に吸入される燃焼用空気の温度を測定すると共に、当該測定温度に基づいて前記圧縮部におけるサージングの発生の有無を検知する、請求項に記載の廃棄物処理設備の非常運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理設備及びその非常運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、下水汚泥などの廃棄物を焼却処理する廃棄物処理設備が知られている。特許文献1には、汚泥を焼却処理する焼却炉と、焼却炉の後段に配置され且つ焼却炉から排出された排ガスが流入する予熱器と、焼却炉に燃焼用空気を送る過給機と、を備えた廃棄物処理設備が記載されている。この廃棄物処理設備では、過給機の圧縮部から吐出された圧縮空気が予熱器において排ガスとの熱交換により加熱され、その後、過給機のタービン部を通過して焼却炉内に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−170703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の廃棄物処理設備では、過給機の圧縮部においてサージングが発生する場合があり、当該サージングが続くと過給機の故障や破損を招くことがある。ここで、過給機の駆動を停止させてサージングを解消させようとすると、焼却炉への空気の供給が断たれるため、廃棄物の焼却処理が停止してしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、焼却炉における廃棄物の焼却処理を継続しつつ過給機でのサージングを速やかに解消させることが可能な廃棄物処理設備及びその非常運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る廃棄物処理設備は、廃棄物を焼却処理する焼却炉と、前記焼却炉に供給される燃焼用空気を加熱する予熱器と、前記予熱器に供給される燃焼用空気を圧縮する圧縮部と、前記予熱器で加熱された燃焼用空気によって回転することにより前記圧縮部を駆動させるタービン部と、を含む過給機と、前記圧縮部と前記タービン部との間の燃焼用空気の経路に配置された切替弁であって、前記切替弁よりも上流側と下流側との間で空気の流通を許容する開状態と当該流通を阻止する閉状態とを切り替える前記切替弁と、前記経路における前記切替弁よりも上流側の位置からの空気の放出を許容する開状態と当該放出を阻止する閉状態とを切り替える放風弁と、前記経路における前記切替弁よりも下流側の位置に空気を送る送風部と、前記圧縮部においてサージングを検知した時に、前記送風部を作動させると共に前記切替弁を前記閉状態とし且つ前記放風弁を前記開状態とする制御を行う制御部と、を備えている。上記廃棄物処理設備において、前記切替弁は、前記経路における前記予熱器よりも上流側の位置に配置され、前記放風弁は、前記経路における前記圧縮部よりも下流側の位置から空気を放出するように配置され、前記送風部は、前記経路における前記予熱器よりも上流側の位置に空気を送るように配置されている。
【0007】
この廃棄物処理設備は、圧縮部におけるサージングを検知した時に、切替弁を閉状態とし且つ放風弁を開状態とした状態で運転することができる(非常運転)。これにより、切替弁よりも上流側から経路内の空気が放出され、圧縮部の出口側における圧力が低下するため、圧縮部でのサージングを速やかに解消させることができる。そして、この非常運転の間に送風部を作動させることにより、当該切替弁よりも下流側の経路内に空気を送ることができる。これにより、非常運転中にも焼却炉に空気が供給され続けるため、非常運転中においても焼却炉内での廃棄物の焼却処理を継続することができる。しかも、非常運転中にタービン部にも空気が流れ続けるため、過給機(圧縮部)の駆動状態を維持することもできる。これにより、サージングの要因が解消された後、切替弁及び放風弁をそれぞれ開状態及び閉状態に戻すだけで、非常運転から通常運転へスムーズに復旧させることができる。また上記構成によれば、非常運転中において送風部から予熱器内に空気を流し続けることができる。これにより、予熱器の温度が上がり過ぎるのを防ぎ、予熱器を保護することができる。
【0012】
上記廃棄物処理設備は、前記圧縮部に吸入される燃焼用空気の温度を測定する温度測定部をさらに備えていてもよい。前記制御部は、前記温度測定部により測定された温度に基づいて、前記圧縮部におけるサージングの発生の有無を検知してもよい。
【0013】
この構成によれば、圧縮部の入口における圧力や圧縮部での振動及び騒音をサージング検知の指標とする場合に比べて、より簡単で且つ正確にサージングを検知することができる。したがって、サージングの誤検知を防止することができる。
【0014】
本発明の他局面に係る廃棄物処理設備の非常運転方法は、廃棄物を焼却処理する焼却炉と、前記焼却炉に供給される燃焼用空気を加熱する予熱器と、前記予熱器に供給される燃焼用空気を圧縮する圧縮部と前記予熱器で加熱された燃焼用空気によって回転することにより前記圧縮部を駆動させるタービン部とを含む過給機と、を備えた廃棄物処理設備において、前記圧縮部でサージングを検知した時の非常運転を行う方法である。この方法は、上流側と下流側との間で空気の流通を許容する開状態と当該流通を阻止する閉状態とを切り替える切替弁を、前記圧縮部と前記タービン部との間の燃焼用空気の経路に設けることと、前記圧縮部におけるサージングの発生の有無を検知することと、前記圧縮部におけるサージングを検知した時に、前記切替弁を前記閉状態にすると共に前記経路における前記切替弁よりも上流側の位置から空気を放出し且つ前記経路における前記切替弁よりも下流側の位置に空気を送りつつ前記廃棄物処理設備を運転する非常運転を行うこと、を備えている。上記廃棄物処理設備の非常運転方法において、前記経路における前記予熱器よりも上流側の位置に前記切替弁を設け、前記非常運転において、前記経路における前記圧縮部よりも下流側の位置から空気を放出すると共に、前記経路における前記予熱器よりも上流側の位置に空気を送る。
【0015】
この廃棄物処理設備の非常運転方法によれば、圧縮部におけるサージングを検知した時に、切替弁を閉状態にすると共に当該切替弁よりも上流側から経路内の空気を放出する非常運転を行うことができる。これにより、圧縮部の出口側における圧力が低下し、圧縮部の入口側と出口側との間の圧力差が小さくなるため、圧縮部でのサージングを解消させることができる。そして、この非常運転中に切替弁よりも下流側の経路内に空気を送ることにより、焼却炉に空気が供給され続けるため、非常運転中においても焼却炉内での廃棄物の焼却処理を継続することができる。しかも、非常運転中にタービン部にも空気が流れ続けるため、過給機(圧縮部)の駆動状態を維持することもできる。したがって、サージングの要因が解消された後、切替弁及び放風弁をそれぞれ開状態及び閉状態に戻すだけで、非常運転から通常運転へスムーズに復旧させることができる。またこの方法によれば、非常運転中に経路内に送られた空気を予熱器内に流し続けることができる。これにより、予熱器の温度が上がり過ぎるのを防止し、予熱器を保護することができる。
【0020】
上記廃棄物処理設備の非常運転方法において、前記圧縮部に吸入される燃焼用空気の温度を測定すると共に、当該測定温度に基づいて前記圧縮部におけるサージングの発生の有無を検知してもよい。
【0021】
この方法によれば、圧縮部の入口における圧力や圧縮部での振動及び騒音をサージング検知の指標とする場合に比べて、より簡単で且つ正確にサージングを検知することができる。したがって、サージングの誤検知を防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、焼却炉における廃棄物の焼却処理を継続しつつ過給機でのサージングを速やかに解消させることが可能な廃棄物処理設備及びその非常運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態1に係る廃棄物処理設備の構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施形態2に係る廃棄物処理設備の構成を模式的に示す図である。
図3】本発明の実施形態3に係る廃棄物処理設備の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る廃棄物処理設備及びその非常運転方法について詳細に説明する。
【0025】
(実施形態1)
<廃棄物処理設備>
まず、本発明の実施形態1に係る廃棄物処理設備1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、廃棄物処理設備1の全体構成を模式的に示している。廃棄物処理設備1は、下水汚泥などの廃棄物W1を焼却処理するものであり、焼却炉2と、空気予熱器3と、白煙防止予熱器4と、ガス冷却器5と、バグフィルタ6と、排煙処理塔7と、煙突8と、過給機9と、温度測定部10と、切替弁11と、放風弁12と、送風部13と、制御部14と、を主に備えている。
【0026】
図1に示すように、廃棄物処理設備1には、焼却炉2から排出される排ガスG1を煙突8まで導くための排ガス経路21が設けられている。この排ガス経路21上において、空気予熱器3、白煙防止予熱器4、ガス冷却器5、バグフィルタ6及び排煙処理塔7が、排ガスG1の流れ方向の上流側から下流側に向かって順に配置されている。以下、廃棄物処理設備1の各構成要素について説明する。
【0027】
焼却炉2は、下水汚泥などの廃棄物W1を焼却処理するものであり、例えば流動床式焼却炉である。図1に示すように、焼却炉2には第1空気経路22の下流端が接続されており、当該第1空気経路22を通じて燃焼用空気A1が焼却炉2内に供給される。また焼却炉2から排出された排ガスG1は、排ガス経路21を通じて空気予熱器3に流入する。なお、焼却炉2は、流動床式焼却炉に限定されるものではない。
【0028】
空気予熱器3は、排ガスG1と燃焼用空気A1との間で間接的に熱交換を行うことにより、当該燃焼用空気A1を加熱する熱交換器である。図1に示すように、空気予熱器3は、焼却炉2の後段において排ガス経路21に配置されると共に、過給機9の圧縮部91とタービン部92との間の燃焼用空気A1の経路(第2空気経路23)に配置されている。空気予熱器3には、排ガス経路21を通じて高温の排ガスG1が流入すると共に、第2空気経路23を通じて燃焼用空気A1が流入し、排ガスG1の熱により燃焼用空気A1が加熱される。燃焼用空気A1との熱交換により温度が下がった排ガスG1は、空気予熱器3から排出された後、排ガス経路21を通じて白煙防止予熱器4に流入する。
【0029】
白煙防止予熱器4は、排ガスG1の熱により白煙防止空気A2を加熱するための熱交換器である。具体的には、白煙防止ファン41により圧送された白煙防止空気A2が白煙防止予熱器4内に流入し、排ガスG1との熱交換により加熱される。そして、加熱された後の白煙防止空気A2は、白煙防止予熱器4から排出された後、図1に示すように白煙防止経路24を通じて煙突8まで導かれる。
【0030】
排ガスG1は、白煙防止予熱器4から流出した後ガス冷却器5において冷却され、その後バグフィルタ6を通過することによりダストが除去される。その後、排ガスG1は、排煙処理塔7においてSOxなどが除去され、煙突8から大気中に放出される。この時、白煙防止予熱器4において加熱された白煙防止空気A2が煙突8において排ガスG1に合流することにより、排ガスG1が加温される。これにより、排ガスG1に含まれる水蒸気の凝縮が抑制され、白煙の発生を防ぐことができる。
【0031】
過給機9は、空気予熱器3に供給される燃焼用空気A1を圧縮する圧縮部91と、空気予熱器3で加熱された燃焼用空気A1によって回転するタービン部92と、を含む。圧縮部91は、例えば遠心圧縮機により構成されており、羽根車とそれを収容するケーシングとをそれぞれ含む。
【0032】
図1に示すように、圧縮部91の入口91Aには第3空気経路25の下流端が接続されており、当該第3空気経路25を通じて外気(燃焼用空気A1)が圧縮部91に吸い込まれる。そして、燃焼用空気A1は、羽根車の回転により所定の圧力まで昇圧される。
【0033】
また圧縮部91の出口91Bには、第2空気経路23の上流端が接続されている。出口91Bから吐出された昇圧後の燃焼用空気A1は、第2空気経路23を通じて空気予熱器3内に流入する。
【0034】
タービン部92の入口92Aには第2空気経路23の下流端が接続されており、タービン部92の出口92Bには第1空気経路22の上流端が接続されている。空気予熱器3から流出した燃焼用空気A1は、第2空気経路23を通じてタービン部92に流入し、当該燃焼用空気A1によりタービン翼が回転する。このタービン翼の回転により圧縮部91の羽根車(タービン翼に対してシャフトにより接続されている)が回転し、圧縮部91が駆動する。タービン部92から流出した燃焼用空気A1は、第1空気経路22を通じて焼却炉2内に供給される。
【0035】
温度測定部10は、圧縮部91に吸入される燃焼用空気A1の温度を測定する温度センサである。図1に示すように、温度測定部10は、第3空気経路25に設けられている。この温度測定部10により、第3空気経路25内を流れる外気(燃焼用空気A1)の温度を測定することが可能となり、この測定結果の情報が制御部14に送信される。
【0036】
切替弁11は、当該切替弁11よりも上流側と下流側との間で燃焼用空気A1の流通を許容する開状態と当該流通を阻止する閉状態とを切り替える弁である。図1に示すように、切替弁11は、第2空気経路23(圧縮部91とタービン部92との間の燃焼用空気A1の経路)に配置されており、より具体的には、第2空気経路23における空気予熱器3よりも下流側の位置に配置されている。切替弁11は、開状態と閉状態とを自動で切り替え可能な開閉弁であり、制御部14により制御される。
【0037】
放風弁12は、第2空気経路23における切替弁11よりも上流側の位置からの燃焼用空気A1の放出を許容する開状態と当該放出を阻止する閉状態とを切り替える弁である。図1に示すように、第2空気経路23における切替弁11よりも上流側で且つ空気予熱器3よりも下流側の位置P1から放風経路26が分岐しており、この放風経路26に放風弁12が配置されている。
【0038】
放風弁12を開状態に切り替えることにより、第2空気経路23の位置P1から放風経路26内に燃焼用空気A1を流入させることができる。これにより、第2空気経路23における切替弁11よりも上流側で且つ空気予熱器3よりも下流側の位置から、燃焼用空気A1を第2空気経路23の外に放出することができる。放風弁12は、切替弁11と同様に、開状態と閉状態とを自動で切り替え可能な開閉弁であり、制御部14により制御される。
【0039】
送風部13は、第2空気経路23における切替弁11よりも下流側の位置に空気を送るためのものである。図1に示すように、送風部13は、空気を圧送するブロワ13Aと、ブロワ13Aに接続されると共に第2空気経路23における切替弁11よりも下流側で且つタービン部92よりも上流側の位置P2に接続された送風経路13Bと、を有している。この構成によれば、ブロワ13Aを起動させることにより、送風経路13Bを通じて第2空気経路23における切替弁11よりも下流側で且つタービン部92よりも上流側の位置に空気を送ることができる。ブロワ13Aの作動のオン/オフは、制御部14により制御される。
【0040】
制御部14は、廃棄物処理設備1の各種動作を制御するコンピュータにより構成されている。具体的に、本実施形態における制御部14は、温度測定部10により測定された温度に基づいて圧縮部91におけるサージングの発生の有無を検知し、圧縮部91においてサージングを検知した時に、送風部13を作動させると共に切替弁11を閉状態とし且つ放風弁12を開状態とする制御を行う。
【0041】
ここで、圧縮部91におけるサージングの検知について詳細に説明する。まず、圧縮部91でサージングが発生する前の通常状態では、入口91Aから圧縮部91内に吸い込まれた燃焼用空気A1が羽根表面に沿って流れ、昇圧された後に出口91Bから第2空気経路23に吐出される。一方、圧縮部91でサージングが発生すると、圧縮部91内において燃焼用空気A1が羽根表面から剥離し、その剥離した燃焼用空気A1が圧縮部91の入口91Aに向かって逆流する。これにより、圧縮部91で振動や騒音が起こり、機器の故障や破損をもたらす。
【0042】
圧縮部91の入口91Aに向かって逆流する燃焼用空気A1は、圧縮部91での昇圧により温度が上昇している(例えば100℃程度)。このため、サージング発生時には、サージング発生前に比べて、圧縮部91の入口側における温度が上昇する。したがって、温度測定部10により測定される燃焼用空気A1の温度を指標とすることにより、圧縮部91におけるサージングの発生の有無を簡単に検知することができる。
【0043】
なお、他のサージング検知方法としては、圧縮部91の入口91Aにおける圧力を検知する方法や、圧縮部91における振動や騒音を検知する方法も考えられる。しかし、圧縮部91では、数万rpmを超える速度で羽根車が高速回転しているため、圧力検知の周期を極めて短くしなければ(例えば1/10秒)、サージングの発生を確実に検知することができない。また圧力検知の周期を短くすれば、ノイズによる誤検知も起こりやすくなる。また振動検知については、回転体である羽根車の振動を検知すること自体が難しく、しかも通常時の回転による振動と混同することにより誤検知を招くことも考えられる。また騒音検知については、廃棄物処理設備1内に他の騒音源が多く存在しているため、サージング由来の騒音以外の騒音により誤検知が起こる可能性が高い。
【0044】
これに対し、圧縮部91の入口側における空気温度は、サージング発生時において、羽根車の高速回転によらず緩やかに変動(上昇)する。このため、本実施形態のように圧縮部91の入口側における空気温度をサージング検知の指標とすることにより、検知周期(サンプリング周期)を長くした場合でも(例えば1秒)、サージング発生の有無を確実に検知することができる。なお、圧縮部91の入口側における空気温度は、サージング発生の要因以外では変化しにくい。
【0045】
制御部14は、温度測定部10による測定温度が基準温度を超える状態が所定時間継続した時に、圧縮部91においてサージングが発生したと判定する。この時、制御部14は、送風部13(ブロワ13A)を作動させると共に、切替弁11を閉状態に切り替え且つ放風弁12を開状態に切り替える制御を行う。一方、温度測定部10による測定温度が基準温度以下に維持されている時には、制御部14は、圧縮部91においてサージングが発生していないと判定する。この時は、切替弁11が開状態で且つ放風弁12が閉状態のまま運転が継続される。なお、圧縮部91に吸い込まれる前の外気(燃焼用空気A1)の温度は、大気温度もしくは圧縮部91の周辺環境温度程度であるため、「基準温度」はたとえば大気温度+10℃に設定することができる。
【0046】
<廃棄物処理設備の非常運転方法>
次に、本発明の実施形態に係る廃棄物処理設備の非常運転方法について説明する。この方法は、上記廃棄物処理設備1において、過給機9の圧縮部91でサージングを検知した時の非常運転を行う方法である。
【0047】
まず、圧縮部91でサージングが発生する前の、廃棄物処理設備1の通常運転について説明する。通常運転時には、切替弁11が開状態で且つ放風弁12が閉状態とされると共に、送風部13(ブロワ13A)が停止状態とされる。そして、第3空気経路25内に取り込まれた外気(燃焼用空気A1)が圧縮部91で昇圧され、昇圧後の燃焼用空気A1が空気予熱器3において排ガスG1との熱交換により加熱される。そして、加熱後の燃焼用空気A1が、タービン部92を通過した後、第1空気経路22を通じて焼却炉2に供給される。
【0048】
また通常運転時には、圧縮部91に吸入される燃焼用空気A1の温度を温度測定部10により測定すると共に、当該測定温度に基づいて圧縮部91におけるサージングの発生の有無を検知する。具体的には、圧縮部91の入口側における空気温度を所定の時間間隔(たとえば1秒間隔)で継続的に測定し、当該測定温度が基準温度を超える状態が所定時間(たとえば1秒から10秒)継続するか否かを制御部14で判定する。そして、当該測定温度が基準温度を超える状態が所定時間継続すると判定され、圧縮部91におけるサージングが検知された時は、非常運転に切り替わる。一方、当該測定温度が基準温度以下に維持されており、圧縮部91におけるサージングが検知されていない時は、通常運転がそのまま継続される。
【0049】
次に、圧縮部91でサージングが発生した時の、廃棄物処理設備1の非常運転について説明する。この時、制御部14は、切替弁11を閉状態に切り替えると共に放風弁12を開状態に切り替え、且つ送風部13(ブロワ13A)の作動をオンにする。これにより、第2空気経路23の位置P1から放風経路26に流入した燃焼用空気A1が放出されると共に、ブロワ13Aから圧送した空気が送風経路13Bを通じて第2空気経路23内に流入する。したがって、第2空気経路23における切替弁11よりも上流側で且つ空気予熱器3よりも下流側の位置P1から燃焼用空気A1が放出されると共に、第2空気経路23における切替弁11よりも下流側で且つタービン部92よりも上流側の位置P2に空気を送りつつ、廃棄物処理設備1を運転することができる。なお、この非常運転の間は、焼却炉2への廃棄物W1の供給も停止される。
【0050】
このように、廃棄物処理設備1を通常運転から非常運転に切り替えることにより、過給機9の圧縮部91の出口側(圧縮部91の出口91Bから切替弁11までの経路内)における圧力が低下し、圧縮部91の入口側と出口側との間の圧力差が小さくなるため、圧縮部91でのサージングを解消させることができる。そして、この非常運転中に切替弁11よりも下流側の第2空気経路23内にブロワ13Aから空気を送ることにより、焼却炉2に空気が供給され続けるため、非常運転中においても焼却炉2内での廃棄物W1の焼却処理を継続することができる。これにより、焼却炉2内に残った廃棄物W1を全て焼却することができる(燃やしきり)。そして、焼却炉2内の廃棄物W1が全て焼却された後もサージングの要因が解消されない場合には、廃棄物処理設備1を停止させる。
【0051】
また非常運転中には、タービン部92にも空気が流れ続けるため、過給機9(圧縮部91)の駆動状態を維持することもできる。このため、非常運転中にサージングの要因が解消された場合には、切替弁11及び放風弁12をそれぞれ開状態及び閉状態に戻すだけで、非常運転から通常運転へスムーズに復旧させることができる。
【0052】
また本実施形態では、空気予熱器3よりも下流側の位置P1から燃焼用空気A1を経路外に放出することにより、非常運転中においても圧縮部91から吐出された燃焼用空気A1を空気予熱器3内に流し続けることができる。したがって、非常運転中において空気予熱器3内に排ガスG1の熱が溜まるのを防ぎ、空気予熱器3を保護することが可能になる。
【0053】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る廃棄物処理設備1A及びその非常運転方法について、図2を参照して説明する。実施形態2に係る廃棄物処理設備1A及びその非常運転方法は、基本的に実施形態1と同様であるが、第2空気経路23における切替弁11の位置、第2空気経路23から空気を放出する位置及び第2空気経路23に空気を送る位置が実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0054】
図2に示すように、切替弁11は、第2空気経路23における空気予熱器3よりも上流側の位置に配置されている。放風経路26は、第2空気経路23における切替弁11よりも上流側で且つ圧縮部91よりも下流側の位置から分岐しており、当該放風経路26に放風弁12が配置されている。したがって、放風弁12を開状態とすることにより、第2空気経路23における切替弁11よりも上流側で且つ圧縮部91よりも下流側の位置から、燃焼用空気A1を第2空気経路23の外に放出することができる。
【0055】
送風経路13Bは、第2空気経路23における切替弁11よりも下流側で且つ空気予熱器3よりも上流側に接続されている。これにより、ブロワ13Aから圧送される空気を、第2空気経路23における切替弁11よりも下流側で且つ空気予熱器3よりも上流側の位置に送ることができる。
【0056】
上記廃棄物処理設備1Aの非常運転では、実施形態1と同様に、切替弁11を閉状態に切り替えると共に放風弁12を開状態に切り替え、且つ送風部13(ブロワ13A)の作動をオンにする。これにより、第2空気経路23における切替弁11よりも上流側で且つ圧縮部91よりも下流側の位置から燃焼用空気A1が放出され、圧縮部91の出口側の圧力が下がることによりサージングが解消される。一方、第2空気経路23における切替弁11よりも下流側で且つ空気予熱器3よりも上流側の位置に空気を送ることにより、タービン部92及び焼却炉2に空気が供給され続ける。この時、ブロワ13Aから第2空気経路23内に送られた空気が空気予熱器3内を流れ続けるため、実施形態1と同様に空気予熱器3内に排ガスG1の熱が溜まるのを防ぐことができる。
【0057】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る廃棄物処理設備1B及びその非常運転方法について、図3を参照して説明する。実施形態3に係る廃棄物処理設備1B及びその非常運転方法は、基本的に実施形態2と同様であるが、送風部13の構成において実施形態2と異なっている。以下、実施形態2と異なる点についてのみ説明する。
【0058】
図3に示すように、送風部13は、第3空気経路25に配置された補助ブロワ13Cと、第3空気経路25における補助ブロワ13Cよりも下流側の位置から第2空気経路23における切替弁11よりも下流側で且つ空気予熱器3よりも上流側の位置まで延びる補助送風経路13Dと、補助送風経路13Dに設けられた開閉弁13Eと、を含む。補助ブロワ13Cは、廃棄物処理設備1Bの立ち上げ時などにおいて、圧縮部91に空気を送るために用いられるものである。
【0059】
非常運転時には、制御部14は、開閉弁13Eを開くと共に、補助ブロワ13Cの作動をオンにする制御を行う。これにより、補助ブロワ13Cから圧送される空気を、補助送風経路13Dを通じて、第2空気経路23における切替弁11よりも下流側で且つ空気予熱器3よりも上流側の位置に送ることができる。したがって、実施形態2と同様に、非常運転中に空気予熱器3内に空気を流し続けることができると共に、タービン部92に空気を供給し続けることができる。
【0060】
(その他実施形態)
最後に、本発明のその他実施形態について説明する。
【0061】
実施形態1では、圧縮部91に吸入される燃焼用空気A1の温度に基づいてサージングの発生の有無を検知する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、圧縮部91の入口側における燃焼用空気A1の流量や圧力、圧縮部91での振動や騒音に基づいてサージングの発生の有無を検知してもよい。しかし、圧縮部91の入口側における温度がサージング検知の指標として特に好ましいことは、上述したとおりである。
【0062】
実施形態1の廃棄物処理設備の非常運転方法では、切替弁11及び放風弁12の開閉並びにブロワ13Aの作動を自動制御する場合について説明したがこれに限定されず、手動制御してもよい。すなわち、切替弁11及び放風弁12は、それぞれ手動弁であってもよい。
【0063】
実施形態1では、放風弁12が二方弁である場合について説明したがこれに限定されず、第2空気経路23と放風経路26とが繋がる位置P1に配置される三方弁であってもよい。
【0064】
実施形態1では、廃棄物W1の一例として下水汚泥を焼却処理する場合を説明したがこれに限定されず、例えば都市ごみなどの他の廃棄物の焼却処理に本発明が適用されてもよい。
【0065】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1,1A,1B 廃棄物処理設備
2 焼却炉
3 空気予熱器
10 温度測定部
11 切替弁
12 放風弁
13 送風部
14 制御部
23 第2空気経路
9 過給機
91 圧縮部
92 タービン部
A1 燃焼用空気
W1 廃棄物
【要約】
【課題】焼却炉における廃棄物の焼却処理を継続しつつ過給機でのサージングを速やかに解消させることが可能な廃棄物処理設備及びその非常運転方法を提供する。
【解決手段】廃棄物処理設備は、廃棄物を焼却処理する焼却炉と、焼却炉に供給される燃焼用空気を加熱する予熱器と、圧縮部とタービン部とを含む過給機と、圧縮部とタービン部との間の燃焼用空気の経路に配置された切替弁と、経路における切替弁よりも上流側の位置からの空気の放出を許容する開状態と当該放出を阻止する閉状態とを切り替える放風弁と、経路における切替弁よりも下流側の位置に空気を送る送風部と、圧縮部においてサージングを検知した時に、送風部を作動させると共に切替弁を閉状態とし且つ放風弁を開状態とする制御を行う制御部と、を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3