(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6473859
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】錠剤の押し出し装置
(51)【国際特許分類】
B65B 69/00 20060101AFI20190207BHJP
A61J 7/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
B65B69/00 A
A61J7/00 C
A61J7/00 L
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-128612(P2018-128612)
(22)【出願日】2018年6月19日
【審査請求日】2018年6月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513074747
【氏名又は名称】吉村 きよ美
(72)【発明者】
【氏名】吉村 善四郎
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−010709(JP,U)
【文献】
特開2015−120527(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3045701(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 69/00
A61J 1/00−19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大きさの異なる錠剤が通過する通過孔を有する基盤体上面の長手方向に対して直角方向の幅を一錠のPTP包装体のシート部の大きさより狭くする幅狭基盤体と、
該幅狭基盤体上に設けられ、先端から任意のPTP包装体のシート部を前記幅狭基盤体との間に挿入した際にPTP包装体の隆起部の大きさ形状に合わせて左右開閉可能となるとともに、隆起部を挟接する手段を有する挟接面を形成する押し圧定置具と、
回動機構を介して前記幅狭基盤体または前記押し圧定置具に取り付けられ前記挟接面に挟持されたPTP包装体内の錠剤を落下させる押し出し片を有する押し具と、
該押し具と前記押し圧定置具に係わる押し圧バネを後端付近に設け、前記押し具を押し下げると、前記押し圧定置具と前記幅狭基盤体との間に前記シート部を圧接固定することを特徴とした錠剤の押し出し装置。
【請求項2】
前記幅狭基盤体と前記押し圧定置具との間に前記PTP包装体を挿入した際に該PTP包装体の隆起部を定位置に停止させるための当接具を前記幅狭基盤体又は前記押し圧定置具に着脱可能に備えた請求項1に記載の錠剤の押し出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明の樹脂シートとアルミ箔の重合によって配列成形された複数の中空隆起部(以下隆起部と称する)内に錠剤を封入したPTP包装体(以下包装体と称する)と、一錠づつに切り分けた包装体のいずれからも隆起部内の錠剤を容易に取り出せる錠剤の押し出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装体内部の錠剤を取り出すための装置に関する出願は多くなされていて、その中には商品として一般に流通しているものもあるが、それらの装置はどれも使い勝手が良くないことで全く普及していない。
また、錠剤を配列成形された包装体と、この包装体を一錠ずつに切り分けた包装体の何れからも錠剤を取り出せ、また錠剤を出したあとの空の包装体を排除する構成の出願もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5785319号
【特許文献2】特許第5953623号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題として、特許文献1は一錠ずつに切り分け包装体を指先に持って挿入する場合、挿入距離が長いので押し込みにくい上に、挿入された包装体のシート部を挟持するとき、素材が持つ弾力のみで挟持するので保持力が弱い、そのために包装体が硬めの素材によるときは、挿入された包装体の隆起部の中央を上方からから押圧したとき、保持されたシート部の抜落やズレが生じることがあり、隆起部内の錠剤を押し出し切れないことがある等の問題を解決したとして、特許文献2の出願がなされている。
しかし、この特許文件2においても、前述の特許文件1と同様に、錠剤を押し出したあとの、一錠ずつに切り分けた空の包装体を排除するときは、その包装体を排除するための排除機構をあらためて操作しなければならない。
従って、何れの特許文献においても、その発明を商品化に向けて実行しようとすると、全構成のなかに包装体を排除するための機構を組み入れることは、技術面では可能であるとしても、組み立て作業等の費用が高すぎることが要因となって、商品化の実現には至らなかった経緯がある。
【0005】
また使い勝手においても、一錠ずつに切り分けた空の包装体を排除するために、本来の錠剤を押し出す操作に加えて、排除機構を操作する手間は明らかに余分である。
この一連の操作を詳細に説明すると、先ず一錠にずつに切り分けた包装体を、
手順1.指先に摘まみ持って基盤上に置く、
手順2.置いた包装体を押圧定置盤の間に指先で押し込み、
手順3.錠剤を押し出し、
手順4.空になった包装体を排除するために、操作部を操作しなければならない。
従って、操作を完了するまでに四度の手順を要するものである。
そこで本発明は上記の課題を解決するために、先ず空になった包装体を排除するための操作部品をなくすことで製造単価を下げ、更に操作手順でも、上記の手順1.をなくし、手順4.では何の操作をすることもなく、ただ包装体を引き抜くのみで完了とする、錠剤の押し出し装置を提供するものである。
また、本発明は開発当初より高齢者及び障害者を対象としてなされていたが、高齢化が加速度的に進んだ今日では、薬局において医師による処方薬の一包化が行われていて、この一包化によると、包装体から錠剤を押し出す専用の機械はあるものの、以前は稀であった薬剤師自身が包装体から指先で錠剤を押し出す作業が増大していて、これが薬剤師にとって大きな負担となっていることが現状である。
上記の課題を解決したことによって、販売のための製造が可能となり、金型の制作を進める現状を鑑み、特許出願をするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は大きさの異なる錠剤が通過する通過孔を有する基盤体上面の長手方向に対して直角方向の幅を一錠のPTP包装体のシート部の大きさより狭くする幅狭基盤体と、該幅狭盤体上に設けられ、先端から任意のPTP包装体のシート部を前記幅狭基盤体との間に挿入した際にPTP包装体の隆起部の大きさ形状に合わせて左右開閉可能となるとともに隆起部を挟接する手段を有する挟接面を形成する押し圧定置具と、回動機構を介して前記幅狭基盤体または前記押し圧定置具に取り付けられ前記挟接面に挟持されたPTP包装体内の錠剤を落下させる押し出し片を有する押し具とよりなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、幅狭基盤体の上面の幅を一錠ずつに切り分けた包装体のシート部より狭くしているので、次に示すように一石二鳥の効果がある。
1.一錠に切り分けた小さな包装体を、指先に一度摘まみ持ったままで、挿入、錠剤の押 し出し、包装体の排除の操作を完了できるので、前述の特許文献の錠剤を取り出す方法 と比べると、格段に使いやすく楽である。
2.前述の特許文献と比べると、空になった包装体を排除するための部材がない分、製造 単価が下がり、安価にて提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図2に包装体を挿入した状態の部分断面平面図である。
【
図4】
図1に包装体を挿入した状態のB−B部分断面正面図である。
【
図6】
図5の錠剤を押し出した状態のC−C断面図である。
【
図8】 左図は
図7のD−D矢視図、右図はE−E断面図である。
【
図9】
図7のケースを抜き方向にスライドした状態の側面図である。
【
図10】 実施例2の使用状態を示す斜視図である。
【
図12】 実施例3に包装体を挿入した状態の平面図である。
【
図13】 上図は
図12の1列目の錠剤を、下図は2列目の錠剤を押し出した状態の断面図である。
【実施例1】
【0009】
本発明の基本構成である実施例1を
図1・
図2に基づいて詳細に説明する。
最初に、
図1は実施例1の側面図であって、幅狭基盤体1aの上側に、包装体41のシート部を挿入するための隙間25を形成して押し圧定置具21の後端部を前記幅狭基盤体1aの後端部に係止し、更に先端部の下面に押し出し片32と、後端寄りの下面に押し圧バネ33を設けた押し具31を、前記幅狭基盤体1a上面に形成する軸受け4に軸着5することで、押し出し片32が上下に可動するものとしている。
そして押し具31を押し下げたときに押し圧バネ33の作用によって押し圧定置具21が下方に強く押されて幅狭基盤体1aに圧接する。
【0010】
次に、
図2は
図1のA−A部分断面平面図であって、長方形の幅狭基盤体1aの前方側に錠剤が通過する通過孔3を形成し、この通過孔3の後側に、包装体41を前方から挿入したときに、隆起部45を定置部22の位置に停止させるための当接具24を着脱可能に設け、幅狭基盤体1aの後部に軸受け4・4を形成し、更に通過孔3から後端にかけて二股型の押し圧定置具21・21が当接具24を挟むように設けていて、この押し圧定置具21・21の二股部分の前方内側を挟接面23・23とし、この押し圧定置具21・21は左右均等に撓り開閉するとともに、上下方向にも撓るようにしている。
ここで本発明の最も重要なことは、基盤体の長手方向に対して直角方法の幅6を、一錠ずつに切り分けた包装体のシート部42の大きさより適宜に狭くした幅狭基盤体1aとしていることである。
通過穴3に示す定置部22の位置は、錠剤46を押し出すために、隆起部41の位置を押し出し片32に対して最良の位置であることを示している。
そして、前述の着脱可能とする当接具24は、本実施例では幅狭基盤体1aの上面に着脱可能としているが、これと同位置として、押し圧定置具21・21のそれぞれに、向き合わせに設けて着脱自在としてもよい。
【0011】
次に、本発明の実施例1の作用と使用方法を
図3・
図4・
図5・
図6に基づいて順次詳細に説明する。
先ず、
図3は
図2と同じ部分断面平面図であって、幅狭基盤体1aと押し圧定置具21・21の間に包装体のシート部42とともに、隆起部45を押し圧定置具21・21に形成する挟接面23・23に挟まれた状態で挿入していて、この挿入時に大きさと形が異なる錠剤であっても、隆起部45によって押し圧定置具21・21を左右均等に押し広げることで、隆起部45を幅狭基盤体1aの中央に位置させ、且つ隆起部45が当接具24に当接したところで、定置部22に定置するものである。
そして前述の通り、幅狭基盤体1aの長手方向に対して直角方法の幅6を、一錠ずつに切り分けた包装体のシート部42の大きさより幅を適宜に狭くしているので、挿入された包装体のシート部42の端部が幅狭基盤体1aの両外側に出ている。
従って、後記の使用状態を説明する
図10に示すように、包装体41のシート部42を一度指先に摘まみ持ったままで、幅狭基盤体1aと押し圧定置具21・21との間に挿入することができて、速やかに錠剤を押し出し、続けて引き抜けば、空になった包装体41を排除できた状態となる。
【0012】
次に、
図4は
図1のB−B部分断面正面図であって、幅狭基盤体1aに形成する通過孔3の真上に、押し圧定置具21・21によって包装体の隆起部45が定置され、包装体のシート部42・42が幅狭基盤体1aの左右外側に出ていて、この先端部を指先で摘まみ持つので、指先が基盤体1a・1aと押し圧定置具21・21に触れることはない。
また、左右に位置する押し圧定置具21・21は、図示する矢印の方向に撓り可動としている。
【0013】
次に、
図5は
図4のC−C断面図であって、幅狭基盤体1aと押し圧定置具21との間に、包装体のシート部42を挿入し、隆起部45が当接具24に当接して定置部に定置した状態を示していて、当接具24は幅狭基盤体1aに着脱可能に嵌め込み固定している。
【0014】
次に、
図6は
図5の状態から押し具31を押し下げて、包装体から錠剤46を押し出した状態を示していて、このとき押し具31を押し下げると、押し圧バネの作用によって押し圧定置具21が押し下げられ、包装体のシート部42を幅狭基盤体1aに押さえつけて固定するので、確実に錠剤46を押し出すことができる。
【0015】
次に、本発明の実施例2を
図7・
図8・
図9に基づいて詳細に説明する。
先ず、
図7は幅狭基盤体1bの下側にケース体11を設けた側面図であって、前端に取り出し口12と斜部13を形成していて、押し出された錠剤を複数まとめておいて、ケース体11を大きく前に傾けると、全ての錠剤を一気に取り出せる。
また、斜部13はケース体11が少し前に傾いた程度で、内部に収容した錠剤が不用意に転がり出るのを防止するものである。
【0016】
次に、
図8の左図は
図7のD−D矢視図に包装体を挿入した状態を示していて、本実施例も前述の実施例1と同じく、幅狭基盤体1b上面の幅を一錠づつに切り分けた包装体のシート42部の大きさより幅を適宜に狭くしている。
また、本実施例のケース体11の断面形状を台形型にして下方の幅を広くしていて、これによると、包装体を押し圧定置具21・21の間に挿入したとき、シート部42を指先に摘まみ持ったままでも、ケース体11の両側面の角度を調整することで、指がケース体11に触れることがなくなり、指の動きを阻害しないのである。
更に、ケース体11の断面形状を台形型していることで、丸い錠剤のみならず長さのあるカプセル剤も余裕をもってケース体11内に収容できる。
【0017】
次に、
図8の右図は
図7のE−E断面図であって、通過孔3とスライド機構14部分を示している。
このスライド機構14・14によって、幅狭基盤体1bの前方に向けてケース体11を移動して引き抜くと、ケース体11の内側の清掃ができる。
【0018】
次に、
図9は
図17の側面図に示すケース体11をスライド機構14によって幅狭基盤体1bの前方向に移動した状態を示していて、このままケース体11を引き抜けるようにしている。
【0019】
次に、
図10は本実施例の使用状態を示す斜視図であって、図示のように実施例本体7を片方の手に持ち、一錠ずつに切り分けた包装体のシート部42を指先に摘まみ持ち、矢印アに沿うように押し圧定置具21・21の間を隆起部45が当接具24に当接するまで挿入し、シート部42を摘まみ持ったまま、速やかに押し具31を押し下げて錠剤を押し出し、続けて包装体を引き抜いて操作を完了する。
【0020】
次に、
図11は包装体41の詳細図であって、本図に示す包装体は錠剤を2列に配設したものであるが、包装体には3列に配設されたものもある。
【0021】
次に、本発明の実施例3を
図12・
図13に基づいて詳細に説明する。
本実施例は、前述する実施例1の着脱可能とする当接具24を取り外したものであって、包装体の隆起部45は目見当によって定置部に定置するものである。
また、本実施例を実施例1の形態によって説明する。
先ず、
図12は、幅狭基盤体1aと押し圧定置具21の部分断面平面図であって、3列に配設された包装体の隆起部45の1列目を押し圧定置具21・21の間に挿入した状態を示していて、この1列目の錠剤を押し出したあと、包装体41を後方に移動することによって、2列目・3列目と錠剤を順次押し出すことができる。
【0022】
次に、
図13は前述の1列目・2列目・3列目と順次錠剤を押し出す状態示していて、上図は1列目、下図は2列目の錠剤を押し出した状態である。
【符号の説明】
【0023】
1a・1b:幅狭基盤体 2:幅狭基盤体上面 3:通過孔
4:軸受け 5:軸着 6:幅狭基盤体の幅
7:実施例本体
11:ケース体 12:取り出し口 13:斜部
14:スライド機構
21:押し圧定置具 22:定置部 23:挟接面
24:当接具 25:隙間 26:押し圧定置具の外幅
31:押し具 32:押し出し片 33:押し圧バネ
41:包装体 42:シート部 43:樹脂フィルム
44:アルミ箔 45:隆起部 46:錠剤
47:シート部の幅
【要約】
【課題】 PTP包装体の隆起部内から錠剤を取り出す装置の製造単価が嵩みすぎることに加えて、装置を使う上での操作手順少なくする必要がある。
【解決手段】 大きさの異なる錠剤が通過する通過孔を有する基盤体上面の長手方向に対して直角方向の幅を一錠のPTP包装体のシート部の大きさより狭くする幅狭基盤体と、該幅狭盤体上に設けられ、先端から任意のPTP包装体のシート部を前記幅狭基盤体との間に挿入した際にPTP包装体の隆起部の大きさ形状に合わせて左右開閉可能となるとともに隆起部を挟接する手段を有する挟接面を形成する押し圧定置具と、回動機構を介して前記幅狭基盤体または前記押し圧定置具に取り付けられ前記挟接面に挟持されたPTP包装体内の錠剤を落下させる押し出し片を有する押し具とよりなる。
【選択図】
図1