特許第6473873号(P6473873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6473873-穀類の滅菌・処理方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473873
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】穀類の滅菌・処理方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/14 20060101AFI20190218BHJP
   A23B 4/015 20060101ALI20190218BHJP
   A23B 4/023 20060101ALI20190218BHJP
   A23B 7/06 20060101ALI20190218BHJP
   A23B 9/00 20060101ALI20190218BHJP
   A23L 3/24 20060101ALI20190218BHJP
   A23L 3/358 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   A23B7/14
   A23B4/015
   A23B4/023 Z
   A23B7/06
   A23B9/00
   A23L3/24
   A23L3/358
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-48169(P2013-48169)
(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公開番号】特開2013-212106(P2013-212106A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2016年2月26日
【審判番号】不服2017-13591(P2017-13591/J1)
【審判請求日】2017年9月12日
(31)【優先権主張番号】特願2012-53512(P2012-53512)
(32)【優先日】2012年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505197300
【氏名又は名称】大木 久治
(73)【特許権者】
【識別番号】303055383
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】大木 久治
(72)【発明者】
【氏名】村田 幸雄
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 紀本 孝
【審判官】 藤原 直欣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−214093(JP,A)
【文献】 特開2001−213715(JP,A)
【文献】 特開2000−72610(JP,A)
【文献】 特開2002−265311(JP,A)
【文献】 特開2004−33202(JP,A)
【文献】 特開昭52−61258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 4/00-9/34
A23L 3/00-3/54
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
CAPlus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀類を温度250℃〜620℃の過熱水蒸気に20秒〜0.5秒間接触させた後、同穀類100重量部に酸化カルシウム粉0.1〜5.0重量部を添加・混合することを特徴とする穀類の滅菌・保存方法。
【請求項2】
穀類を温度250℃〜620℃の過熱水蒸気に20秒〜0.5秒間接触させると同時に同穀類100重量部に酸化カルシウム粉0.1〜5.0重量部を添加・混合することを特徴とする穀類の滅菌・保存方法。
【請求項3】
酸化カルシウム粉末が、平均粒径が10〜200μmのものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の穀類の滅菌・保存方法。
【請求項4】
穀類と過熱水蒸気との接触が、縦型円筒体の上部から投入落下される穀類に対して、同円筒体内壁から噴出する300℃〜600℃の過熱水蒸気を噴射・接触させることによって行われることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の穀類の滅菌・保存方法。
【請求項5】
穀類が、米、麦、トウモロコシ、ピーナッツ、又は大豆からなる群から選ばれるいずれか1つであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の穀類の滅菌・保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆、麦、米等の穀類に付着・存在する微生物や害虫等を滅菌又は殺菌して食材を長期間保存可能とする穀類の滅菌・保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の滅菌・殺菌装置の一例としては、例えば、特許文献1に示すように、過熱水蒸気を用いたものが知られている。具体的には、複数の球体等からなる被加熱体を充填した筒状体の一方から噴射水を導入し、筒状体の外周に巻回された励磁コイルを介して被加熱体を高周波誘導加熱することにより、筒状体の他方から高温の過熱水蒸気を噴出させる。この高温の過熱水蒸気を食品等に噴射して、滅菌・殺菌を行うものである。
また、特許文献2に示すように、導電性を有する被加熱体と、前記被加熱体に巻回されるとともに、高周波が供給され前記被加熱体を電磁誘導加熱するコイルとを備えた水蒸気プラズマ生成装置によって生成させた高温の過熱水蒸気(水蒸気プラズマ)を大豆等の穀物に瞬間的に噴射して殺菌・滅菌する方法も採用されている。
【0003】
一方、従来、穀類及び豆類、野菜、魚介類等の食品素材に付着する微生物を、次亜塩素酸水溶液を使用して、殺菌又は低減する方法や、オゾンガスを使用する方法その他種々の方法が提案されていた。
例えば、pH12.0以上の焼成カルシウム水溶液に、オゾンガス又は酸素ガスを混入して、殺菌効果を有するOHラジカルを積極的に増加させた水を製造し、この水溶液にて、穀類及び豆類、野菜、魚介類等の食品素材を流水処理することで、これらに付着する微生物を、食味及び風味を損なわずに低減させる方法(特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/068033号パンフレット
【特許文献2】特許公開2010−214093号公報
【特許文献3】特開2008−99653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記、加熱水蒸気を用いた滅菌・殺菌装置では、過熱水蒸気の温度が不安定である等の理由で、十分な滅菌・殺菌効果を得ることができない場合があった。また、無理に滅菌・殺菌効果を得ようとして、時間をかけて高温の過熱水蒸気を食品等の被処理物に噴射すると、食品等の栄養成分等が変性、分解してしまうという問題が生じた。
そして、いったん高温の過熱水蒸気で滅菌処理された穀類等を無菌状態でそのまま容器内に保存しておくと、少しの水分の存在や暖かい温度状況になった際には忽ちに菌やカビが発生・増殖してしまう。
そうすると、マイコトキシン、アフラトキシン等の非常に毒性が強い発癌性のカビ毒が生成し、食用に使用できない食材となってしまう問題があった。
昨今、米、大豆等の食材輸出国である東南アジアや中南米等の高温多湿な環境を経由して輸出される穀類等は、そうした菌やカビ毒の付着等により輸入国での検査をパスできず、輸出国へ返還される数量が莫大なものとなっている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、短時間で大量の食材を滅菌・殺菌し、かつ長期間保存を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は以下に示す穀類の滅菌・保存方法である。
[1]穀類を温度250℃〜620℃の過熱水蒸気に20秒〜0.5秒間接触させた後、同穀類100重量部に酸化カルシウム粉0.1〜5.0重量部を添加・混合することを特徴とする穀類の滅菌・保存方法。
なお、250℃以上、特に300℃以上であれば、極めて短時間で穀類表面の細菌等を滅菌できる。620℃以上の過熱水蒸気は、危険性、発生装置の制作コストを高める。
過熱水蒸気で表面滅菌された穀類を、酸化カルシウムの滅菌作用、脱水作用により、その後長期間にわたって、無菌、無カビ状態で保存できる。
過熱水蒸気を20秒〜0.5秒間食材に接触させれば、穀類表面の細菌は全て滅菌される。
CaOの添加量は0.005重量部でも滅菌効果が発揮されるが、0.1〜5.0重量部が好ましい。、5.0重量部を越えても効果は強化されなく、コスト的に不利である。
[2]穀類を温度250℃〜620℃の過熱水蒸気に20秒〜0.5秒間接触させると同時に同穀類100重量部に酸化カルシウム粉0.1〜5.0重量部を添加・混合することを特徴とする穀類の滅菌・保存方法。
【0007】
[3] 酸化カルシウム粉末が、平均粒径が10〜200μmのものであることを特徴とする前記[1]又は[2]のいずれか1項に記載の穀類の滅菌・保存方法。
[4]穀類と過熱水蒸気との接触が、縦型円筒体の上部から投入落下される穀類に対して、同円筒体内壁から噴出する300℃〜600℃の過熱水蒸気を噴射・接触させることによって行われることを特徴とする前記[1]又は[2]のいずれか1項に記載の穀類の滅菌・保存方法。
該方法は、非常に短時間(落下時間)での処理であり、過熱雰囲気中を穀類が落下するため、表面全体が過熱水蒸気と接触する。
[5]穀類が、米、麦、トウモロコシ、ピーナッツ、又は大豆からなる群から選ばれるいずれか1つであることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の穀類の滅菌・保存方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、穀類に高温の過熱水蒸気を短時間接触させるだけで、穀類の殺菌処理ができ、かつその後の保存が酸化カルシウム粉末の滅菌・抗菌力によって、長期間にわたって常温下で維持できる。
その結果、高温多湿条件下で生産収穫された穀類等の生産国からの輸出、及び需要国での輸入も、細菌、カビ毒等による廃棄処分等の損失がなく行うことができる。
また、穀類の備蓄期間を長期化でき、天候不順年等による食料問題の解決に寄与できる。
通常、穀類の細菌や黴はその表面にのみ付着・存在しているところ、本発明では、過熱水蒸気と極めて短時間だけ接触させるだけであり、細菌や黴を瞬間的に高温に晒して死滅させ、いわば表面火傷をさせるため、穀類の内部を変質・損傷すること無しに、かつ短時間の接触であるため、大量処理ができ、非常に処理効率が高い。
本発明の処理をした穀類は、常温で長期間保管しても、細菌・黴の発生の無い安全なものとなる。

【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】過熱水蒸気生成装置及び滅菌・殺菌装置の全体構成を表す概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る過熱水蒸気(プラズマ状態の水蒸気を含む場合もある)を発生させる装置は、導電性の被加熱体と、同被加熱体を電磁誘導加熱するコイルとを備え、一端部から被加熱体に流入した水蒸気は、被加熱体内で加熱されて高温の過熱水蒸気(一部は電離したプラズマ状態になっていると考えられる)、として他端部から噴出される。
上記被加熱部材は、電磁誘導により加熱されるため、導電性を有する部材であり、また、発生され、穀類に接触される過熱水蒸気は250℃〜850℃、特に250〜620℃、更に特に300〜600℃であることが好ましい。
このため上記被加熱部材は、850℃の温度であっても安定性を有する材料が採用され、例えば鉄、ステンレス、銅等が挙げられる。炭素あるいは炭化珪素を使用しても良い。
ボイラー等で製造され、上記装置の一端部から流入した水蒸気は、上記被加熱体により加熱されるが、250℃以上に、更には特に300℃以上に加熱されることが好ましく、250℃以上更に特に300℃以上であれば、きわめて短時間で穀類表面の殺菌・処理を行うことができ、穀類の内部を加熱変質させないようにできる。
なお、高周波の出力は30kW以上であることが好ましい。
【0011】
穀類と過熱水蒸気との接触に使用する装置の処理室としては、立設された円筒体の管壁の一部に穿設された孔部に過熱水蒸気の導入管が取付られてなる縦型円筒体が好ましく用いられる。(例えば、特許第4838364号公報記載図面参照)
そして、同円筒体の上端開口部から投入落下される米、大豆等の穀類に対して、同円筒体内壁から噴出する過熱水蒸気を噴射・接触させることが好ましい。
また、特開2010−42071に開示されるごとき、横置された円筒体とその内部に横設された回転スクリュー羽を備え、かつ内部に過熱水蒸気が導入される形式の滅菌・殺菌装置を使用し、その円筒体の一方端から被処理物(食材)を投入し、円筒体内で過熱水蒸気と接触させて殺菌処理して、他端から殺菌処理された被処理物(食材)を取り出すこともできる。
【0012】
さらに、穀類に焼成カルシウム添加・混合する好ましい方式は、例えば前記縦型円筒体の上方から穀類と共に焼成カルシウムを投入すること、あるいは縦型円筒体の下端から導出される処理済み食材に焼成カルシウムを添加・混合することなどである。
【実施例】
【0013】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明する。
[実施例1](ピーナッツ処理の例)
(1)過熱水蒸気発生装置の高周波出力を30kW、周波数を20kHz、過熱水蒸気の温度を400℃に設定し、400℃の過熱水蒸気を発生させた。
一方、縦型円筒体を用意し、その中途部に開設した開孔に前記過熱水蒸気を導入し、筒内に過熱水蒸気を継続的に導入・噴射した。
そこで、縦型円筒体の上端開口部から被処理物のピーナッツを投入落下させ、落下途中で過熱水蒸気に0.7秒間接触・照射した。
なお、本例で採用した技術は、特許第4838364号公報に記載の「水蒸気プラズマ生成装置および滅菌・殺菌装置」を用いて行った。
すなわち図1に示すものであり、蒸気ボイラ1で発生させた水蒸気を電磁誘導加熱方式の過熱水蒸気プラズマ生成装置2に導き、発生した過熱水蒸気を、供給パイプ4を介して、滅菌・殺菌処理室3に導入し食材の滅菌・殺菌処理を行うよう構成されている。
なお、処理室3は、ホッパー31と縦型円筒体32と処理済食材取出部33とからなる。Aは被処理食材、A’は処理済食材である。5は金網製の受皿である。
【0014】
次いで、過熱水蒸気を接触・照射したピーナッツをポリエチレンバッグに入れ、その中に、サンゴの化石を1,100℃で焼成して得た平均粒径80μmの焼成カルシウム(主成分:CaO)の粉末を添加・投入した。添加割合は、ピーナッツに対し0.1重量%の割合で添加し、そのポリエチレンバッグを数回振とうしてピーナッツ全体に焼成カルシウム粉末を接触保持させた。
そのピーナッツの入ったポリエチレンバッグを開封した状態で、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月間保管した。
【0015】
(2)また、上記[実施例1]の(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをしたピーナッツをポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月間保管した。
(3)一方前記(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理を行わず、焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行ったピーナッツをポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月間保管した。
(4)さらに、前記(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わないピーナッツをポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月間保管した。
【0016】
以上のように上記(1)〜(4)を上記保管した後に観察したところ、(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理+焼成カルシウム粉末添加・混合処理をしたピーナッツには、細菌及びカビの発生は全く見られなかった。一方、(2)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをしたピーナッツには、少しのカビと細菌が発生していた。(3)の焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行ったピーナッツには、少しのカビが発生していた。
さらに、(4)の過熱水蒸気照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わなかったピーナッツ(コントロール10)は、外観状況が非常に悪化して、多量のカビと細菌が発生していた。
加えて、上記(1)〜(4)のポリエチレンバッグに入れられ、開封したままピーナッツを、湿度80%、温度28℃の環境下で更に6ヶ月間、すなわち合計10ヶ月間保管した。
その結果、上記10ヶ月間保管したピーナッツ(1’)には、カビと細菌のの発生は全く見られなかった。
一方、10ヶ月間保管の(2’)のピーナッツには、カビと細菌が発生していた。
10ヶ月間保管の(3’)の焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行ったピーナッツには、カビと細菌が発生していた。
さらに、10ヶ月間保管の(4’)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わなかったピーナッツ(コントロール11)は、外観状況が非常に悪化して、膨大量のカビと細菌が発生していた。
以上を、後記表1にまとめて表記した。
【0017】
[実施例2](小麦の処理の例)
(a)[実施例1]の(1)と同様にして、小麦に対して400℃の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理をした。
次いで、処理済の小麦をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(b)また、[実施例1]の(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをした小麦をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(c)さらに、(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理を行わず、焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行った小麦をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(d)そして、前記(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わない小麦をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
それらサンプル(a)、(b)、(c)及び(d)を、上記保管後に観察したところ、(a)の過熱水蒸気照射処理+焼成カルシウム粉末添加・混合処理をした小麦には、カビの発生は全く見られなかった。一方、(b)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをした小麦には、少しのカビが発生していた。(c)の焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行った小麦には、少しのカビと細菌が発生していた。
さらに、(d)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わなかった小麦(コントロール20)は、外観状況が非常に悪化して、カビと細菌が発生していた。
加えて、上記(a)〜(d)のポリエチレンバッグに開封状態で入れられた小麦を、湿度80%、温度28℃の環境下で更に6ヶ月間、すなわち合計10ヶ月間保管した。
その結果、10ヶ月間保管した小麦(a’)には、カビと細菌の発生は全く見られなかった。 一方、10ヶ月間保管の小麦(b’)には、細菌が発生していた。また、10ヶ月間保管の小麦(c’)には、少量のカビと細菌が発生していた。さらに(d’)の10ヶ月間保管の小麦(コントロール21)には、膨大量のカビと細菌が発生し、外観状況も非常に悪化していた。
【0018】
[実施例3](レンズ豆の処理例)
(A)[実施例1]の(1)と同様にして、レンズ豆に対して400℃の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理をした。
次いで、処理済のレンズ豆をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(B)また、[実施例1]の(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをしたレンズ豆をポリエチレンバッグに入れて開封し、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(C)さらに、(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理を行わず、焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行ったレンズ豆をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(D)そして、前記(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わないレンズ豆をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
それらサンプル(A)、(B)、(C)及び(D)を、上記保管後に観察したところ、(A)の過熱水蒸気の接触・照射処理+焼成カルシウム粉末添加・混合処理をしたレンズ豆には、カビの発生は全く見られなかった。一方、(B)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをしたレンズ豆には、少しのカビが発生していた。(C)の焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行ったレンズ豆には、少しのカビと細菌が発生していた。
さらに、(D)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わなかったレンズ豆(コントロール30)は、外観状況が非常に悪化して、カビと細菌が発生していた。
加えて、上記(A)〜(D)のポリエチレンバッグに開封状態で入れられた小麦を、湿度80%、温度28℃の環境下で更に6ヶ月間、すなわち合計10ヶ月間保管した。
その結果、10ヶ月間保管したレンズ豆(A’)には、カビと細菌の発生は全く見られなかった。一方、10ヶ月間保管のレンズ豆(B’)には、細菌が発生していた。また、10ヶ月間保管のレンズ豆(C’)には、カビと細菌が発生していた。さらに(D’)の10ヶ月間保管のレンズ豆(コントロール31)には、膨大量のカビと細菌が発生し、外観状況も非常に悪化していた。
【0019】
[実施例4](玄米の処理例)
(ア)[実施例1]の(1)と同様にして、玄米に対して400℃の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理をした。
次いで、処理済の玄米をポリエチレンバッグに入れて開封し、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(イ)また、[実施例1]の(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをした玄米をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(ウ)さらに、(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理を行わず、焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行った玄米をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(エ)そして、前記(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わない玄米をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
それらサンプル(ア)〜(エ)を、上記保管後に観察したところ、(ア)の過熱水蒸気の接触・照射処理+焼成カルシウム粉末添加・混合処理をした玄米には、カビの発生は全く見られなかった。一方、(イ)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをした玄米には、少しの細菌が発生していた。(ウ)の焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行った玄米には、少しの細菌が発生していた。
さらに、(エ)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わなかった玄米(コントロール40)は、外観状況が非常に悪化して、カビと細菌が発生していた。
加えて、上記(ア)〜(エ)のポリエチレンバッグに入れられ開封した状態の玄米を、湿度80%、温度28℃の環境下で更に6ヶ月間、すなわち合計10ヶ月間保管した。
その結果、10ヶ月間保管した玄米(ア’)には、カビと細菌の発生は全く見られなかった。一方、10ヶ月間保管の玄米(イ’)には、細菌が発生していた。また、10ヶ月間保管の玄米(ウ’)には、カビと細菌が発生していた。さらに(エ’)の10ヶ月間保管の玄米(コントロール41)には、膨大量のカビと細菌が発生し、外観状況も非常に悪化していた。
本発明の実施例においては、処理後、10カ月間を経ても、食材には、一般生菌のほか、大腸菌、芽胞菌も検出されなかった。更に24カ月間を経ても同様であった。したがって、本発明によれば、食材を少なくとも一年間以上の長期間保管可能となることが判った。
【0020】
【表1】
産業上の利用可能性
【0021】
本発明により、細菌及びカビを発生させることなく、長期間穀類を保存可能となる。本発明により、カビ自体の発生も阻止することができるため、カビの発生に伴うマイコトキシン、アフラトキシンなどのカビ毒による被害を抑制することが可能となり、穀類の保存期間が著しく長期化し、産業上の有用性は極めて大きい。
【0022】
1:蒸気ボイラ
2:水蒸気プラズマ生成装置
3:滅菌・殺菌処理室
4:過熱水蒸気送給パイプ
5:金網製の受皿
31:ホッパー
32:縦型円筒体
33:取出部

図1