【実施例】
【0013】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明する。
[実施例1](ピーナッツ処理の例)
(1)過熱水蒸気発生装置の高周波出力を30kW、周波数を20kHz、過熱水蒸気の温度を400℃に設定し、400℃の過熱水蒸気を発生させた。
一方、縦型円筒体を用意し、その中途部に開設した開孔に前記過熱水蒸気を導入し、筒内に過熱水蒸気を継続的に導入・噴射した。
そこで、縦型円筒体の上端開口部から被処理物のピーナッツを投入落下させ、落下途中で過熱水蒸気に0.7秒間接触・照射した。
なお、本例で採用した技術は、特許第4838364号公報に記載の「水蒸気プラズマ生成装置および滅菌・殺菌装置」を用いて行った。
すなわち
図1に示すものであり、蒸気ボイラ1で発生させた水蒸気を電磁誘導加熱方式の過熱水蒸気プラズマ生成装置2に導き、発生した過熱水蒸気を、供給パイプ4を介して、滅菌・殺菌処理室3に導入し食材の滅菌・殺菌処理を行うよう構成されている。
なお、処理室3は、ホッパー31と縦型円筒体32と処理済食材取出部33とからなる。Aは被処理食材、A’は処理済食材である。5は金網製の受皿である。
【0014】
次いで、過熱水蒸気を接触・照射したピーナッツをポリエチレンバッグに入れ、その中に、サンゴの化石を1,100℃で焼成して得た平均粒径80μmの焼成カルシウム(主成分:CaO)の粉末を添加・投入した。添加割合は、ピーナッツに対し0.1重量%の割合で添加し、そのポリエチレンバッグを数回振とうしてピーナッツ全体に焼成カルシウム粉末を接触保持させた。
そのピーナッツの入ったポリエチレンバッグを開封した状態で、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月間保管した。
【0015】
(2)また、上記[実施例1]の(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをしたピーナッツをポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月間保管した。
(3)一方前記(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理を行わず、焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行ったピーナッツをポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月間保管した。
(4)さらに、前記(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わないピーナッツをポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月間保管した。
【0016】
以上のように上記(1)〜(4)を上記保管した後に観察したところ、(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理+焼成カルシウム粉末添加・混合処理をしたピーナッツには、細菌及びカビの発生は全く見られなかった。一方、(2)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをしたピーナッツには、少しのカビと細菌が発生していた。(3)の焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行ったピーナッツには、少しのカビが発生していた。
さらに、(4)の過熱水蒸気照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わなかったピーナッツ(コントロール10)は、外観状況が非常に悪化して、多量のカビと細菌が発生していた。
加えて、上記(1)〜(4)のポリエチレンバッグに入れられ、開封したままピーナッツを、湿度80%、温度28℃の環境下で更に6ヶ月間、すなわち合計10ヶ月間保管した。
その結果、上記10ヶ月間保管したピーナッツ(1’)には、カビと細菌のの発生は全く見られなかった。
一方、10ヶ月間保管の(2’)のピーナッツには、カビと細菌が発生していた。
10ヶ月間保管の(3’)の焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行ったピーナッツには、カビと細菌が発生していた。
さらに、10ヶ月間保管の(4’)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わなかったピーナッツ(コントロール11)は、外観状況が非常に悪化して、膨大量のカビと細菌が発生していた。
以上を、後記表1にまとめて表記した。
【0017】
[実施例2](小麦の処理の例)
(a)[実施例1]の(1)と同様にして、小麦に対して400℃の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理をした。
次いで、処理済の小麦をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(b)また、[実施例1]の(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをした小麦をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(c)さらに、(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理を行わず、焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行った小麦をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(d)そして、前記(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わない小麦をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
それらサンプル(a)、(b)、(c)及び(d)を、上記保管後に観察したところ、(a)の過熱水蒸気照射処理+焼成カルシウム粉末添加・混合処理をした小麦には、カビの発生は全く見られなかった。一方、(b)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをした小麦には、少しのカビが発生していた。(c)の焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行った小麦には、少しのカビと細菌が発生していた。
さらに、(d)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わなかった小麦(コントロール20)は、外観状況が非常に悪化して、カビと細菌が発生していた。
加えて、上記(a)〜(d)のポリエチレンバッグに開封状態で入れられた小麦を、湿度80%、温度28℃の環境下で更に6ヶ月間、すなわち合計10ヶ月間保管した。
その結果、10ヶ月間保管した小麦(a’)には、カビと細菌の発生は全く見られなかった。 一方、10ヶ月間保管の小麦(b’)には、細菌が発生していた。また、10ヶ月間保管の小麦(c’)には、少量のカビと細菌が発生していた。さらに(d’)の10ヶ月間保管の小麦(コントロール21)には、膨大量のカビと細菌が発生し、外観状況も非常に悪化していた。
【0018】
[実施例3](レンズ豆の処理例)
(A)[実施例1]の(1)と同様にして、レンズ豆に対して400℃の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理をした。
次いで、処理済のレンズ豆をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(B)また、[実施例1]の(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをしたレンズ豆をポリエチレンバッグに入れて開封し、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(C)さらに、(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理を行わず、焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行ったレンズ豆をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(D)そして、前記(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わないレンズ豆をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
それらサンプル(A)、(B)、(C)及び(D)を、上記保管後に観察したところ、(A)の過熱水蒸気の接触・照射処理+焼成カルシウム粉末添加・混合処理をしたレンズ豆には、カビの発生は全く見られなかった。一方、(B)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをしたレンズ豆には、少しのカビが発生していた。(C)の焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行ったレンズ豆には、少しのカビと細菌が発生していた。
さらに、(D)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わなかったレンズ豆(コントロール30)は、外観状況が非常に悪化して、カビと細菌が発生していた。
加えて、上記(A)〜(D)のポリエチレンバッグに開封状態で入れられた小麦を、湿度80%、温度28℃の環境下で更に6ヶ月間、すなわち合計10ヶ月間保管した。
その結果、10ヶ月間保管したレンズ豆(A’)には、カビと細菌の発生は全く見られなかった。一方、10ヶ月間保管のレンズ豆(B’)には、細菌が発生していた。また、10ヶ月間保管のレンズ豆(C’)には、カビと細菌が発生していた。さらに(D’)の10ヶ月間保管のレンズ豆(コントロール31)には、膨大量のカビと細菌が発生し、外観状況も非常に悪化していた。
【0019】
[実施例4](玄米の処理例)
(ア)[実施例1]の(1)と同様にして、玄米に対して400℃の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理をした。
次いで、処理済の玄米をポリエチレンバッグに入れて開封し、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(イ)また、[実施例1]の(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをした玄米をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(ウ)さらに、(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理を行わず、焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行った玄米をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
(エ)そして、前記(1)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わない玄米をポリエチレンバッグに入れて開封したまま、湿度80%、温度28℃の環境下で4ヶ月保管した。
それらサンプル(ア)〜(エ)を、上記保管後に観察したところ、(ア)の過熱水蒸気の接触・照射処理+焼成カルシウム粉末添加・混合処理をした玄米には、カビの発生は全く見られなかった。一方、(イ)の過熱水蒸気の接触・照射処理のみをした玄米には、少しの細菌が発生していた。(ウ)の焼成カルシウム粉末の添加・混合処理のみを行った玄米には、少しの細菌が発生していた。
さらに、(エ)の過熱水蒸気の接触・照射処理及び焼成カルシウム粉末添加・混合処理を全く行わなかった玄米(コントロール40)は、外観状況が非常に悪化して、カビと細菌が発生していた。
加えて、上記(ア)〜(エ)のポリエチレンバッグに入れられ開封した状態の玄米を、湿度80%、温度28℃の環境下で更に6ヶ月間、すなわち合計10ヶ月間保管した。
その結果、10ヶ月間保管した玄米(ア’)には、カビと細菌の発生は全く見られなかった。一方、10ヶ月間保管の玄米(イ’)には、細菌が発生していた。また、10ヶ月間保管の玄米(ウ’)には、カビと細菌が発生していた。さらに(エ’)の10ヶ月間保管の玄米(コントロール41)には、膨大量のカビと細菌が発生し、外観状況も非常に悪化していた。
本発明の実施例においては、処理後、10カ月間を経ても、食材には、一般生菌のほか、大腸菌、芽胞菌も検出されなかった。更に24カ月間を経ても同様であった。したがって、本発明によれば、食材を少なくとも一年間以上の長期間保管可能となることが判った。
【0020】
【表1】
産業上の利用可能性
【0021】
本発明により、細菌及びカビを発生させることなく、長期間
穀類を保存可能となる。本発明により、カビ自体の発生も阻止することができるため、カビの発生に伴うマイコトキシン、アフラトキシンなどのカビ毒による被害を抑制することが可能となり、
穀類の保存期間が著しく長期化し、産業上の有用性は極めて大きい。
【0022】
1:蒸気ボイラ
2:水蒸気プラズマ生成装置
3:滅菌・殺菌処理室
4:過熱水蒸気送給パイプ
5:金網製の受皿
31:ホッパー
32:縦型円筒体
33:取出部