(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473877
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート基礎梁部材
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
E02D27/01 101C
E02D27/01 D
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-226173(P2014-226173)
(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公開番号】特開2016-89509(P2016-89509A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年11月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】506428366
【氏名又は名称】株式会社グランデージ
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】清水 昌彦
【審査官】
亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−293283(JP,A)
【文献】
特開平06−330529(JP,A)
【文献】
特開平09−217361(JP,A)
【文献】
特開平08−326065(JP,A)
【文献】
特開平05−311675(JP,A)
【文献】
特開2003−064696(JP,A)
【文献】
特開2011−064047(JP,A)
【文献】
特開2000−170175(JP,A)
【文献】
特開昭63−125725(JP,A)
【文献】
特開昭48−020307(JP,A)
【文献】
特開2012−211496(JP,A)
【文献】
米国特許第05152108(US,A)
【文献】
特開2007−255156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E02D 27/01
E02D 27/08
E04G 9/00−25/08
E04B 1/38−1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦断面が縦長の矩形状であり、その下面の2箇所に脚部を備えるべた基礎用のプレキャストコンクリート基礎梁部材において、
長手方向の全域に亘って前記下面の一部から前記脚部を覆う位置まで垂れ下がる止水壁を備えており、
コンクリートが打設されることで前記下面及び前記脚部と耐圧盤との間にできるコールドジョイント部の断面形状が上下2つの屈曲箇所を持つZ形状になることを特徴とするプレキャストコンクリート基礎梁部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎内部への水分及びシロアリの侵入を防止できると共に現場でのコンクリートの打設が一度で済むプレキャストコンクリート基礎梁部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、縦断面が縦長の矩形状で下面2箇所に脚部を備えるコンクリート製の基礎梁部材と、縦断面が逆U字状のコンクリート製の基礎梁部接合用部材を予め工場等で大量製造し、これらを施工現場に搬送し、施工現場において一体的に連結することでコンクリートのべた基礎を短期間で構築する施工方法が知られている(特許文献1参照)。
本明細書においては、上記基礎梁部材を「プレキャストコンクリート基礎梁部材」あるいは単に「基礎梁部材」と表記し、上記基礎梁部接合用部材を「プレキャストコンクリート基礎梁部接合用部材」あるいは単に「接合用部材」と表記する。
【0003】
上記施工方法について詳しく説明すると、まず施工現場において2つのプレキャストコンクリート基礎梁部材を、その長手方向に所定の間隔を空けて基礎となる場所の外周部及び内部に適宜配置する。この際に、基礎梁部材の下面2箇所の脚部は位置決め用の金具を介して捨てコンクリート上に載置する。
また、基礎梁部材には主筋(構造鉄筋)と剪断補強筋を略格子状に連結して埋設してあり、左右2つの基礎梁部材の端面から横方向に露出する主筋を跨ぐように逆U字状のプレキャストコンクリート基礎梁部接合用部材を配置する。接合用部材の左右の天端には2枚1組の肩当て金物が取り付けられており(肩当て金物については特許文献2参照)、天端から水平面内左右方向に突出する肩当て金物を左右の基礎梁部材の天端上に載置することで接合用部材の上下方向への位置決めが完了する。
【0004】
そして、接合用部材の上面に設けた開口部等からコンクリートを打設することで、基礎梁部材及び接合用部材からなる立ち上がり部とべた底盤(耐圧盤)とを連結し、コンクリート製の強固なべた基礎の施工が完了する。
基礎梁部材と接合用部材を用いることで、従来のように施工現場で鉄筋を組み上げ、これら鉄筋を挟む位置に型枠を固定してコンクリートを打設する施工法とは異なり、コンクリートの打設が一度で済む等の施工作業の簡略化、工期短縮、美観向上という効果を得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-064047号公報
【特許文献2】特許第4970075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記先行技術文献として挙げた特許出願に係る発明は本願発明者によって成されたものであるが、機能性や施工性の向上という観点からはなお改善の余地があった。
すなわち、上述の通り基礎梁部材と接合用部材の形状はある程度規格化されており、予め工場等で製造したものを現場に搬入することになるため、地盤の凍結深度が深く設定されている寒冷地では基礎梁部材と接合用部材をそのまま配置すると根入れ深さが不足するという問題や、根入れ深さを確保するためにコンクリートを打設して地盤を嵩上げする場合、型枠を新たに設ける必要がありコストが嵩むという問題がある。
同様に、傾斜地等で地盤レベルに高低差がある場合には、一般的な高さの基礎と高基礎とが混在するため、一般的な高さに合わせて規格化されている基礎梁部材と接合用部材をそのまま配置できないという問題や、嵩上げ用コンクリートを打設するためのコストが嵩むという問題がある。
また、立ち上がり部のうち建物の外周を形成するものに関しては、その下面とべた底盤(耐圧盤)との間に生じるコールドジョイント部から盛土の水分やシロアリが基礎の内部へ侵入するおそれがあるので、これを防止する機能が求められていた。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑み、基礎内部への水分及びシロアリの侵入を防止できると共に現場でのコンクリートの打設が一度で済むプレキャストコンクリート基礎梁部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプレキャストコンクリート基礎梁部材は、
縦断面が縦長の矩形状であり、その下面の2箇所に脚部を備えるべた基礎用のプレキャストコンクリート基礎梁部材において、長手方向の全域に亘って
前記下面
の一部から
前記脚部を覆う位置まで垂れ下がる止水壁を備えて
おり、
コンクリートが打設されることで前記下面及び前記脚部と耐圧盤との間にできるコールドジョイント部の断面形状が上下2つの屈曲箇所を持つZ形状になることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
基礎梁部材が止水壁を備えることで、その下面とべた底盤(耐圧盤)との間にできるコールドジョイント部の断面形状が2つの屈曲箇所を持つほぼZ形状になるため、盛土の水分やシロアリが基礎の内部へ侵入することを防止できる。
また、高さ調節部材を基礎梁部材と位置決め金具との間に配置することで、凍結深度が深い地域や高基礎が必要となる箇所において、地盤を嵩上げするためのコンクリートの打設が不要になるという効果を得られる。
また、本発明の基礎構造の施工方法では、型枠用板材を、位置決め用金具のボルトと高さ調節部材の外側面との間に形成される空隙に嵌め込んで固定する。施工時にコンクリートを打設すると、型枠用板材の下部に最も高い圧力が作用することになるが、上記ボルトが当該圧力に抗して型枠用板材の下部を支えるので、コンクリート打設時の型枠用板材の位置ずれを阻止し、強固なべた基礎を施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】プレキャストコンクリート基礎梁部材の外観を示す斜視図
【
図2】プレキャストコンクリート基礎梁部接合用部材の外観を示す斜視図
【
図4】止水壁を備えないプレキャストコンクリート基礎梁部材の外観を示す斜視図(a)及び人通口を備えるプレキャストコンクリート基礎梁部材の外観を示す斜視図(b)
【
図5】高さ調節部材及び位置決め金具の正面図(a)及び側面図(b)
【
図9】GLの下方にべた底盤(耐圧盤)が位置する際の施工方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明するが、プレキャストコンクリート基礎梁部材10、プレキャストコンクリート基礎梁部接合用部材20及び位置決め金具60の基本構造については周知であるため詳細な説明は省略する。
図1〜
図3は基礎梁部材10及び接合用部材20の外観及び基礎構造を示す概略図である。
図1に示す基礎梁部材10は建物の外周を形成するためのものであり、縦断面が縦長の矩形状であり、その上面にアンカーボルトのインサート11を備え、その下面の2箇所に脚部12を備え、左右の小口面の上下にシアコッタ13を備える。また、基礎梁部材10の内部には上端主筋14a、下端主筋14b、補強筋14c及び縦筋14dが埋設されている。また、建物の外周を形成する基礎梁部材10の外表面には石目模様等の装飾部15を備える。
【0012】
本発明では、基礎梁部材10が更に止水壁16を備える点に特徴を有する。
止水壁16は基礎梁部材10の下面から長手方向の全域に亘って脚部12を覆う位置まで垂れ下がるコンクリート製の部材である。止水壁16を備える基礎梁部材10は特製の型枠によって一体的に製造される。
止水壁16を備える基礎梁部材10は基礎の外周部に使用するのに適している。すなわち、止水壁16側を外側に向けた状態で配置し、
図3に示すように止水壁16全体が隠れる位置まで根入れすることで、基礎梁部材10の下面とべた底盤(耐圧盤)との間にできるコールドジョイント部Cの断面形状が2つの屈曲箇所を持つZ形状になるため、盛土の水分やシロアリが基礎の内部へ侵入することを防止できる。
なお、基礎梁部材を基礎の内部に使用する場合、止水壁16は不要になるので、例えば
図4(a)に示すようなタイプ30や、
図4(b)に示すような人通口41(床下点検用通路)を備えるタイプ40がある。
また、
図1には脚部12の下部に位置決め金具60を配置した一般的な構造の基礎梁部材を示しているが、凍結深度及び高基礎に対応するには次に述べる高さ調節部材50を脚部12と位置決め金具60との間に介在させることになる。
【0013】
高さ調節部材50は
図5(a)及び(b)に示すように基礎梁部材10の脚部12と位置決め金具60との間に配置される金属製の部材であり、溝形鋼(チャンネル)以外にも例えばH形鋼、I形鋼、角パイプ、アングル鋼等を使用できる。
【0014】
次に、止水壁16を備える基礎梁部材10、接合用部材20、高さ調節部材50及び型枠用板材90を使用する基礎構造の施工方法について説明する。
図3は凍結深度が深い場合の基礎構造を示している。
図6に示すように、まずGL(Ground Line)から凍結深度に対応した根入れ深さを確保できるように、基礎を設ける範囲を掘削・整地する。そして、砕石を敷設し、転圧することで砕石転圧層70を設け、その上に防湿シートを敷設し、捨てコンクリート層80を設ける。捨てコンクリート層80の上面からGLまでの深さが根入れ深さになる。一般的な根入れ深さは120mmだが、寒冷地では凍結深度規定によりそれ以上の根入れ深さを確保しなければならない。
【0015】
捨てコンクリート層80の上に位置決め金具60を配置し、その上に高さ調節部材50としての溝形鋼を配置する。溝形鋼のサイズは要求される凍結深度によって異なり、例えば凍結深度250mmの場合はウェブが65mm程度、フランジが130mm程度になる。
次に、位置決め金具60の上に基礎梁部材10を配置すると共に位置決め金具60のボルト61を用いて上下方向の高さと傾斜度を調節する。この状態でGLは基礎梁部材10の下面よりも僅かに上方に位置している。
そして、接合用部材20の上面に取り付けた肩当て金物(図示略)の突出部位を左右の基礎梁部材10の天端上に載置することで、接合用部材20を上下方向に位置決めした状態で配置する。
そして、位置決め金具60のボルト61と高さ調節部材50の外側面との間に形成される空隙Sに、コンパネ(コンクリートパネル)や鉄板等の型枠用板材90を嵌め込み、必要に応じて型枠用板材90の中央を支え棒91で支えた状態で、接合用部材20の上面に設けた開口部21や基礎梁部材10の内側面側からコンクリートを打設することで、
図3に示すように基礎梁部材10、接合用部材20及び高さ調節部材50からなる立ち上がり部と、砕石転圧層70上に配置したべた底盤(耐圧盤)とが連結され、コンクリート製の強固なべた基礎の施工が完了する。
【0016】
図7は高基礎の場合の基礎構造を示しており、止水壁16よりも下方にGLが位置することになるが、施工方法は凍結深度が深い場合と同様である。
図8は一般的な根入れ深さ(例えば120mm程度)の場合の基礎構造を示している。
図9は例えばインナーガレージのようにGLの下方にべた底盤(耐圧盤)が位置する際の施工方法を示している。なお、符号Lの破線は施工後のべた底盤(耐圧盤)の表面の位置を表している。
万力100を雄ねじ101に固着させて成る裏型保持金具102を基礎梁部材10のインサート11に螺合すると共に型枠用板材92を万力100で挟んで固定することで裏型を形成する。また、型枠用板材90を空隙Sに嵌め込んで固定することで表型を形成する。この状態で基礎梁部材10の内側面と型枠用板材92との間に形成される隙間からコンクリートを打設することでGLの下方にべた底盤(耐圧盤)を施工することができる
【産業上の利用可能性】
【0017】
基礎内部への水分及びシロアリの侵入を防止できると共に現場でのコンクリートの打設が一度で済むプレキャストコンクリート基礎梁部材であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0018】
C コールドジョイント部
L 施工後のべた底盤(耐圧盤)の表面の位置
S 空隙
10 基礎梁部材
11 インサート
12 脚部
13 シアコッタ
14a 上端主筋
14b 下端主筋
14c 補強筋
14d 縦筋
15 装飾部
16 止水壁
20 接合用部材
21 開口部
30 基礎梁部材
40 基礎梁部材
41 人通口
50 高さ調節部材
60 位置決め金具
61 ボルト
70 砕石転圧層
80 捨てコンクリート層
90 型枠用板材
91 支え棒
92 型枠用板材
100 万力
101 雄ねじ
102 裏型保持金具