(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
晴眼者の水晶体への入射光におけるR,G,Bの各色の分光透過率を100%としたときの白内障者の水晶体への入射光における前記各色の分光透過率を保持しており、入力された原画像データを構成するR,G,Bの各色信号に前記各色の分光透過率を乗算することにより、白内障者の水晶体の分光透過率による影響を作用させた分光透過率影響画像データを生成する分光透過率影響演算部と、
白内障者の水晶体に光が入射したときの散乱光強度から晴眼者の水晶体に光が入射したときの散乱光強度を減算した相対散乱光強度を、前記散乱光強度がとり得る最大値で除算した値を散乱光寄与度とし、白色画像データを構成するR,G,Bの各色信号に前記散乱光寄与度を乗算することにより、白内障者の水晶体への入射光の散乱による影響を作用させた散乱光影響画像データを生成する散乱光影響演算部と、
前記分光透過率影響画像データに1から前記散乱光寄与度を減算した減算値を乗算した乗算値と、前記散乱光影響画像データとを加算することにより、前記原画像データによる原画像を白内障者が見る色に相当する画像を再現した変換画像データを生成する加算部と、
を備えることを特徴とする画像変換装置。
入力された原画像データを構成するR,G,Bの各色信号に、晴眼者の水晶体への入射光におけるR,G,Bの各色の分光透過率を100%としたときの白内障者の水晶体への入射光における前記各色の分光透過率を乗算することにより、白内障者の水晶体の分光透過率による影響を作用させた分光透過率影響画像データを生成し、
白内障者の水晶体に光が入射したときの散乱光強度から晴眼者の水晶体に光が入射したときの散乱光強度を減算した相対散乱光強度を、前記散乱光強度がとり得る最大値で除算した値を散乱光寄与度とし、白色画像データを構成するR,G,Bの各色信号に前記散乱光寄与度を乗算することにより、白内障者の水晶体への入射光の散乱による影響を作用させた散乱光影響画像データを生成し、
前記分光透過率影響画像データに1から前記散乱光寄与度を減算した減算値を乗算した乗算値と、前記散乱光影響画像データとを加算することにより、前記原画像データによる原画像を白内障者が見る色に相当する画像を再現した変換画像データを生成する
ことを特徴とする画像変換方法。
晴眼者及び白内障者の水晶体の可視光波長領域における分光透過率を示す水晶体分光透過率データに基づいて、晴眼者の水晶体への入射光の分光透過率を100%に換算し、
前記水晶体分光透過率データに基づいて、100%に換算された晴眼者の水晶体への入射光の分光透過率を基準とした白内障者の水晶体への入射光の相対的な分光透過率である相対分光透過率を算出し、
前記相対分光透過率に基づいて前記各色の分光透過率を算出し、
前記原画像データを構成するR,G,Bの各色信号に、前記各色の分光透過率を乗算して、前記分光透過率影響画像データを生成する
ことを特徴とする請求項5に記載の画像変換方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態の画像変換装置、画像変換方法、及び画像変換プログラムについて、添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1に示すように、一実施形態の画像変換装置は、分光透過率影響演算部1、散乱光影響演算部2、加算部3、操作部4を備える。分光透過率影響演算部1には、所定の色で表現された画像を示す原画像データDinと、後述する医学データと、白内障の程度を選択するための白内障程度指定信号とが入力される。白内障程度指定信号には、白内障を患っていない晴眼者を指定する信号を含んでもよい。ここでは、原画像データDinは8ビットのデジタル信号であるとする。
【0015】
原画像データDinは、R(赤),G(緑),B(青)の3原色の色信号によって構成される。分光透過率影響演算部1は、医学データに基づいて、白内障程度指定信号によって選択された白内障の程度に応じて、原画像データDinに水晶体の分光透過率による影響を作用させた分光透過率影響画像データを生成する。
【0016】
散乱光影響演算部2には、後述する医学データと、白内障程度指定信号とが入力される。散乱光影響演算部2は、医学データに基づいて、白内障程度指定信号によって選択された白内障の程度に応じて散乱光影響画像データを生成して、加算部3に供給する。また、散乱光影響演算部2は、後述する散乱光寄与度sを生成して、加算部3に供給する。
【0017】
加算部3は、分光透過率影響演算部1より出力された分光透過率影響画像データと、散乱光影響演算部2より出力された散乱光影響画像データとを加算することにより変換画像データDoutを生成して出力する。加算部3は、分光透過率影響画像データと散乱光影響画像データとを加算するときに散乱光寄与度sを用いる。
【0018】
変換画像データDoutは、原画像データDinを白内障の程度に応じて白内障者が見る色に相当する状態に変換した画像データである。図示していない表示部によって変換画像データDoutを表示すれば、白内障者が見る色に相当する画像を再現することができる。なお、白内障者が見る色に相当する画像の再現とは、白内障者が見る色を完全に再現することに限定されず、白内障者が見る色に近似する色を再現することを含む。
【0019】
図2は、分光透過率影響演算部1の具体的な構成例を示している。分光透過率影響演算部1は、相対分光透過率算出部11、RGB光透過率算出部12、色信号演算部13を備える。相対分光透過率算出部11には、医学データとして、
図4に示す水晶体分光透過率データが入力される。
図4に示すように、水晶体分光透過率データは、人が色を認識できる可視光波長領域である波長380nm〜780nmにおける晴眼者と各程度の白内障者の水晶体の分光透過率を示す。
図4に示す水晶体分光透過率データは非特許文献1に記載されている。
【0020】
図4において、実線は晴眼者、一点鎖線は軽度の白内障者、破線は中度の白内障者、点線は重度の白内障者の分光透過率の特性を示している。ここでは一例として、白内障の程度を軽度、中度、重度の3つに分けているが、白内障の程度を互いに程度が異なる2つまたは4つ以上の任意の複数に分けてもよく、白内障の程度分け方は任意である。さらには、白内障の程度をいずれか1つのみとすることもできる。
【0021】
相対分光透過率算出部11は、
図4に示す各程度の白内障者の分光透過率を晴眼者の分光透過率を100%とした分光透過率に変換して、
図5に示す、白内障者の水晶体への入射光の相対的な分光透過率である水晶体相対分光透過率データを生成する。
【0022】
RGB光透過率算出部12には、相対分光透過率算出部11によって生成された水晶体相対分光透過率データと、白内障程度指定信号とが入力される。RGB光透過率算出部12は、
図5に示す水晶体相対分光透過率データに基づき、R,G,Bの光透過率を算出する。
【0023】
RGB光透過率算出部12は、
図6に示すCIE1931 RGB等色関数に基づき、R,G,Bの刺激値が最大値となる波長をR,G,Bの波長とする。
図6におけるrバー、gバー、bバーはR,G,Bの刺激値を示す。RGB光透過率算出部12は、
図5に示す水晶体相対分光透過率データにおけるR,G,Bの波長における光透過率を算出する。
【0024】
図7に示すように、RGB光透過率算出部12は、白内障程度指定信号によって晴眼者が指定されれば、R,G,Bの光透過率TR,TG,TBとして、全て100%を出力する。RGB光透過率算出部12は、軽度の白内障者が指定されれば、光透過率TRとして96.11%、光透過率TGとして87.14%、光透過率TBとして62.76%を出力する。
【0025】
RGB光透過率算出部12は、中度の白内障者が指定されれば、光透過率TRとして80.93%、光透過率TGとして74.59%、光透過率TBとして63.81%を出力する。RGB光透過率算出部12は、重度の白内障者が指定されれば、光透過率TRとして63.66%、光透過率TGとして55.11%、光透過率TBとして39.30%を出力する。
【0026】
ところで、
図4に示すように、晴眼者であってもの水晶体の分光透過率は100%ではない。従って、原理的には、
図4に示す水晶体分光透過率データに基づき、晴眼者、軽度の白内障者、中度の白内障者、重度の白内障者それぞれの光透過率TR,TG,TBは
図8に示すとおりとなる。しかしながら、実際には、晴眼者は、光透過率TRの83.93%、光透過率TGの77.63%、光透過率TBの59.55%で画像を視認している状態を、透過率100%で画像を視認している状態であると認識する。
【0027】
そこで、
図7に示すように、RGB光透過率算出部12は、晴眼者の光透過率TR,TG,TBを100%としたときの各程度の白内障者の光透過率TR,TG,TBを算出することにより、白内障者が実際に各色を認識するときに作用する光透過率を得ることができる。
【0028】
図2に戻り、色信号演算部13は、原画像データDinに、
図7に示す指定された白内障者の程度に対応する光透過率TR,TG,TBを乗算して、分光透過率影響画像データを生成する。白内障程度指定信号によって晴眼者が指定されれば、原画像データDinがそのまま分光透過率影響画像データとして出力される。白内障程度指定信号によっていずれかの程度の白内障者が指定されれば、原画像データDinに
図7に示す光透過率TR,TG,TBが乗算されて、R,G,Bの各色の値が低減された分光透過率影響画像データが出力される。
【0029】
図2に示す分光透過率影響演算部1は、
図4に示す水晶体分光透過率データに基づいて
図7に示す各程度の白内障者の光透過率TR,TG,TBを算出し、原画像データDinに光透過率TR,TG,TBを乗算して分光透過率影響画像データを生成するよう構成している。分光透過率影響演算部1は、単に、予め算出した各程度の白内障者の光透過率TR,TG,TBを保持して、原画像データDinに光透過率TR,TG,TBを乗算して分光透過率影響画像データを生成する構成であっても構わない。
【0030】
図3は、散乱光影響演算部2の具体的な構成例を示している。散乱光影響演算部2は、相対散乱光強度算出部21、散乱光寄与度算出部22、色信号演算部23を備える。相対散乱光強度算出部21は、平均分光透過率算出部211、散乱光強度算出部212、相対散乱光強度変換部213を有する。
【0031】
平均分光透過率算出部211には、白内障程度指定信号と、医学データとして、
図4に示す水晶体分光透過率データとが入力される。散乱光強度算出部212には、医学データとして、
図9に示す、水晶体の平均分光透過率と散乱光強度との関係を示す水晶体散乱光強度データが入力される。散乱光強度は8ビットで0〜255の値であり、
図9では50〜250の範囲を示している。
図9に示す水晶体散乱光強度データは非特許文献1に記載されている。
【0032】
散乱光強度算出部212には、散乱光強度をx、平均分光透過率をyとしたとき、水晶体散乱光強度データに相当するy=−0.2631x+104なる計算式が入力されればよい。なお、相関係数の二乗(決定係数)R
2は0.65105を示す。
【0033】
平均分光透過率算出部211は、入力された水晶体分光透過率データに基づいて、例えば次のようにして各程度の白内障者の平均分光透過率を算出する。平均分光透過率算出部211は、各程度の白内障者の平均分光透過率に加えて、晴眼者の平均分光透過率を算出してもよい。
【0034】
図10に示すように、平均分光透過率算出部211は、例えば波長1nmの微小波長間隔ごとに分光透過率を求める。
図10では一点鎖線にて示す軽度の白内障者の分光透過率曲線を例にして、波長1nm間隔の分光透過率Ta及びTbが求められた状態を示している。波長1nm間隔の分光透過率Ta及びTbは、近似的に台形の面積となる。
【0035】
平均分光透過率算出部211は、可視光波長領域の範囲で求めた波長1nm間隔の分光透過率Ta及びTbを加算して、分光透過率Ta及びTbを加算した範囲における最大波長と最小波長との差分で除算して、平均分光透過率を算出する。平均分光透過率算出部211は、波長380nm〜780nmの全体での平均分光透過率を算出しなくてもよく、非特許文献1に記載のように、波長400nm〜700nmの範囲の平均分光透過率を算出してもよい。
【0036】
平均分光透過率算出部211は、入力された白内障程度指定信号に従って、以上のように算出された晴眼者及び各程度の白内障者の平均分光透過率のうちのいずれかの平均分光透過率を散乱光強度算出部212に供給する。散乱光強度算出部212は、
図9に示す水晶体散乱光強度データ(計算式)に従って、白内障程度指定信号で指定された晴眼者または白内障者の散乱光強度を算出して、相対散乱光強度変換部213に供給する。
【0037】
図11に示すように、散乱光強度算出部212は、晴眼者が指定されれば散乱光強度を119と算出する。散乱光強度算出部212は、軽度の白内障者が指定されれば散乱光強度を164と算出し、中度の白内障者が指定されれば散乱光強度を189と算出し、重度の白内障者が指定されれば散乱光強度を245と算出する。
【0038】
相対散乱光強度変換部213は、晴眼者及び各程度の白内障者の散乱光強度から、晴眼者の散乱光強度である119を減算することにより、散乱光強度を相対散乱光強度に変換する。
図11に示すように、晴眼者、軽度の白内障者、中度の白内障者、重度の白内障者の相対散乱光強度はそれぞれ0、45、70、126となる。
【0039】
ここでは、
図9に示す水晶体の平均分光透過率と散乱光強度との関係を示す水晶体散乱光強度データに基づいて、晴眼者、軽度の白内障者、中度の白内障者、重度の白内障者の散乱光強度を求めているが、散乱光強度の求め方はこれに限定されるものではない。
図9とは異なる水晶体の分光透過率と散乱光強度との関係を示す水晶体散乱光強度データを用いて、晴眼者、軽度の白内障者、中度の白内障者、重度の白内障者の散乱光強度を求めても構わない。
【0040】
相対散乱光強度算出部21は、以上のように算出した晴眼者または白内障者の相対散乱光強度のうち、白内障程度指定信号で指定された相対散乱光強度を散乱光寄与度算出部22に供給する。散乱光寄与度算出部22は、相対散乱光強度を、散乱光強度がとり得る最大値で除算して0〜1に正規化された散乱光寄与度sを生成し、散乱光寄与度sを色信号演算部23に供給する。
図9では散乱光強度を8ビットで表現しているため、散乱光寄与度算出部22は相対散乱光強度を255で除算して散乱光寄与度sを生成する。
【0041】
散乱光寄与度sが0であれば、水晶体は完全に透明で視野に対して水晶体の混濁による影響は全くないと解釈できる。散乱光寄与度sが1であれば、水晶体は完全に不透明で視野の全体に対して水晶体の混濁が影響すると解釈できる。
【0042】
色信号演算部23は、R,G,Bそれぞれを255とした白色画像データの色信号に散乱光寄与度sを乗算して、水晶体の混濁に起因して入射光が水晶体で散乱することによる影響を作用させた散乱光影響画像データを生成する。水晶体への入射光は、ミー散乱によって、可視光波長領域において波長に依存せずどの波長においてもほぼ均等に散乱する。よって、眼球の網膜に到達する散乱光は無彩色となる。よって、白色画像データを構成する各色信号に散乱光寄与度sを乗算することにより散乱光影響画像データを生成することができる。
【0043】
図3に示す散乱光影響演算部2は、水晶体分光透過率データ及び水晶体散乱光強度データに基づいて
図11に示す相対散乱光強度を算出し、さらに、散乱光寄与度sを算出するよう構成している。散乱光影響演算部2は、単に、予め算出した各程度の白内障者の散乱光寄与度sを保持して、白色画像データに散乱光寄与度sを乗算して散乱光影響画像データを生成する構成であっても構わない。
【0044】
さらには、散乱光影響演算部2は、単に、予め算出した各程度の白内障者に対応する散乱光影響画像データを保持して、白内障程度指定信号で指定された白内障者に対応する散乱光影響画像データを出力する構成であっても構わない。この場合、加算部3が散乱光寄与度sを保持すればよい。
【0045】
図1に戻り、加算部3は、分光透過率影響演算部1より供給された分光透過率影響画像データに(1−s)を乗算する。分光透過率影響画像データに(1−s)を乗算することにより、入射光の散乱による影響を作用させていない分光透過率影響画像データとすることができる。そして、加算部3は、(1−s)を乗算した分光透過率影響画像データと、散乱光影響演算部2より供給された散乱光影響画像データとを加算して変換画像データDoutを生成して出力する。
【0046】
原画像データDinのR,G,Bの各色信号をDinR,DinG,DinBとする。分光透過率影響演算部1より出力される分光透過率影響画像データのR,G,Bの各色信号は、TR×DinR,TG×DinG,TB×DinBとなる。色信号演算部23が散乱光寄与度sを乗算する白色画像データをWとし、白色画像データWのR,G,Bの各色信号をWR,WG,WBとする。散乱光影響演算部2より出力される散乱光影響画像データのR,G,Bの各色信号は、s×WR,s×WG,s×WBとなる。
【0047】
加算部3より出力される変換画像データDoutのR,G,Bの各色信号をDoutR,DoutG,DoutBとする。変換画像データDoutR,DoutG,DoutBは、それぞれ、(1−s)×TR×DinR+s×WR,(1−s)×TG×DinG+s×WG,(1−s)×TB×DinB+s×WBとなる。
【0048】
以上説明した本実施形態の画像変換装置が、原画像データDinに基づいて変換画像データDoutをどのように生成するかを、
図12に示す画像が原画像である場合を例として説明する。原画像データDinが示す
図12の原画像は、白(W)の矩形の内部に、R,G,Bの矩形と、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロ)の矩形とを配置した画像である。W,R,G,B,C,M,Yには括弧書きにてそれぞれのR,G,Bの値を示している。
【0049】
前述のように、晴眼者であってもの水晶体の分光透過率は100%ではないため、原理的には、晴眼者の水晶体の分光透過率による影響を
図12に示す原画像に作用させると、
図13に示す模擬画像のようになる。しかしながら、分光透過率影響演算部1においては
図7に示すように晴眼者の水晶体の分光透過率を100%としているので、晴眼者の水晶体の分光透過率による影響を
図12に示す原画像に作用させても、
図12に示す原画像そのままとなる。
【0050】
図14は、中度の白内障者を例として、分光透過率及び散乱光強度の双方による影響を原画像に作用させることによって得られる変換画像データDoutが示す模擬画像を示している。本実施形態の画像変換装置によれば、晴眼者の水晶体の分光透過率を100%としたときの白内障者の水晶体の分光透過率による影響を原画像に作用させることにより、過度に黄色を帯びていない模擬画像を再現することができる。さらに、本実施形態の画像変換装置によれば、散乱光強度の影響を原画像に作用させることができるので、白内障者が見る色に相当する画像を再現することができる。
【0051】
参考として、
図15は、中度の白内障者を例として、分光透過率による影響のみを原画像に作用させることによって得られる模擬画像を示している。
図14と
図15とを比較すれば、散乱光強度が、白内障者が認識する画像の色に影響を与えていることが分かる。
【0052】
また、参考として、
図16は、晴眼者の散乱光強度(
図11に示す119)のみを原画像に作用させることによって得られる模擬画像を示している。実際には、晴眼者は、
図16に示すような白みを帯びた画像を認識しない。これは、網膜以降の視神経から大脳にかけての高度な情報処理によって散乱光強度の影響を生じさせないよう補償しているからと推測される。本実施形態の画像変換装置は、
図11に示すように、晴眼者の散乱光強度を0とした相対散乱光強度を用いることによって、晴眼者のみならず白内障者が見る色に相当する画像を再現することができる。
【0053】
図17は、R,G,B,C,M,Yそれぞれの色における、変換前である原画像データDinの彩度、原画像データDinに相対分光透過率による影響のみを作用させたときの彩度、原画像データDinに相対分光透過率及び散乱光強度による影響を作用させたときの彩度を示している。
図17は、中度の白内障者が認識する彩度を例としている。本実施形態の画像変換装置によれば、原画像データDinに相対分光透過率及び散乱光強度による影響を作用させることによって、白内障者が見る色に相当する彩度を再現することができる。
【0054】
図1における分光透過率影響演算部1、散乱光影響演算部2、加算部3は回路等のハードウェアによって構成してもよいし、ソフトウェア(コンピュータプログラム)によって構成してもよい。ハードウェアとソフトウェアとを混在させて画像変換装置を構成してもよい。
【0055】
図18に示すように、コンピュータ50の中央処理装置51(以下、CPU51)が本実施形態の画像変換プログラムを実行することによって、コンピュータ50を画像変換装置として機能させることができる。記憶部52には、画像変換プログラムが記憶されている。記憶部52は、半導体メモリ、光ディスク、ハードディスク等の任意の非一時的な記憶媒体である。記憶部52はROMであって、記憶部52から読み出された画像変換プログラムが図示していないRAMに展開されてCPU51によって実行されてもよい。
【0056】
操作部40は、コンピュータ50に接続されたキーボードまたはマウスである。コンピュータ50には、表示部60が接続されている。
【0057】
図18において、CPU51には、原画像データDinが入力される。医学データは、記憶部52に予め記憶されていて記憶部52から読み出されてCPU51に供給されてもよいし、CPU51に直接供給されてもよい。操作部40によって、いずれかの白内障の程度を選択する白内障程度指定信号をCPU51に供給することによって、CPU51は原画像データDinを構成する色信号を白内障程度指定信号に応じて変換して変換画像データDoutを生成する。
【0058】
CPU51は、変換画像データDoutを表示部60に供給する。よって、ユーザは、表示部60に表示された画像によって、白内障者が見る色に相当する画像を認識することができる。
【0059】
図19に示すフローチャートを用いて、
図1〜
図3のように構成される画像変換装置の動作、画像変換装置で実行される画像変換方法を改めて説明する。併せて、CPU51が画像変換プログラムに基づいて実行する処理を説明する。
【0060】
図19において、ステップS0にて、分光透過率影響演算部1に、原画像データDinと、医学データとして水晶体分光透過率データとを入力し、散乱光影響演算部2に、医学データとして水晶体分光透過率データ及び水晶体散乱光強度データを入力する。CPU51は、ステップS0にて、原画像データDin、水晶体分光透過率データ、水晶体散乱光強度データを取り込む。
【0061】
相対分光透過率算出部11は、ステップS11にて、水晶体分光透過率データに基づき、晴眼者の分光透過率を可視光波長領域に渡って100%とした値に換算し、ステップS12にて、晴眼者の分光透過率を基準とした白内障者の分光透過率(相対分光透過率)を算出する。CPU51は、ステップS11及びS12と同等の処理を実行する。
【0062】
RGB光透過率算出部12は、ステップS13にて、相対分光透過率に基づき、R,G,Bの光透過率T(TR,TG,TB)を算出する。色信号演算部13は、ステップS14にて、指定された白内障の程度に対応する光透過率Tを原画像データDinに乗算して、分光透過率影響画像データを生成する。CPU51は、ステップS13及びS14と同等の処理を実行する。
【0063】
相対散乱光強度算出部21は、ステップS21にて、水晶体分光透過率データに基づき、白内障の程度ごとに、可視光波長領域における分光透過率の平均値を算出する。相対散乱光強度算出部21は、ステップS22にて、水晶体散乱光強度データに基づき、白内障の程度ごとに散乱光強度を算出し、ステップS23にて、白内障の程度ごとに、晴眼者の散乱光強度を基準とした相対散乱光強度を算出する。CPU51は、ステップS21〜S23と同等の処理を実行する。
【0064】
散乱光寄与度算出部22は、ステップS24にて、相対散乱光強度を散乱光強度がとり得る最大値で除算して散乱光寄与度sを算出する。色信号演算部23は、ステップS25にて、白色画像データWに、指定された白内障の程度に対応する散乱光寄与度sを乗算して、散乱光影響画像データを生成する。CPU51は、ステップS24及びS25と同等の処理を実行する。
【0065】
図19に示すように、ステップS11〜S14の処理と、ステップS21〜S25の処理は並行して実行される。
【0066】
加算部3は、ステップS31にて、(1−s)×T×Din+s×Wなる計算式に基づき、ステップS14にて得られた色信号とステップS25にて得られた色信号とを加算する。(1−s)×T×Dinは、分光透過率影響画像データに、1から散乱光寄与度sを減算した減算値を乗算した乗算値であり、s×Wは散乱光影響画像データである。CPU51は、ステップS31と同等の処理を実行する。
【0067】
加算部3は、ステップS32にて、ステップS31で得られた色信号が、色信号がとり得る最大値(ここでは255)以下であるか否かを判定する。最大値以下でなければ(NO)、加算部3は、ステップS33にて、色信号を最大値に制限して、処理をステップS34に移行させる。ステップS32にて色信号が最大値以下であれば(YES)、処理をステップS34に移行させる。加算部3は、ステップS34にて、変換画像データDoutを出力して、処理を終了させる。CPU51は、ステップS32〜S34と同等の処理を実行する。
【0068】
以上のように、本実施形態の画像変換装置、画像変換方法、及び画像変換プログラムによれば、所定の色で表現された原画像データDinを白内障者が見る色に相当する画像データに変換した変換画像データDoutを生成して、白内障者が見る色に相当する画像を再現することができる。
【0069】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【解決手段】分光透過率影響演算部1は、晴眼者の水晶体への入射光におけるR,G,Bの分光透過率を100%としたときの白内障者の水晶体への入射光における各色の分光透過率を保持している。分光透過率影響演算部1は、原画像データDinを構成する各色信号に各色の分光透過率を乗算して、分光透過率影響画像データを生成する。散乱光影響演算部2は、白内障者の水晶体の散乱光強度から晴眼者の水晶体の散乱光強度を減算した相対散乱光強度を、散乱光強度がとり得る最大値で除算した値を散乱光寄与度とし、白色画像データの各色信号に散乱光寄与度を乗算して散乱光影響画像データを生成する。加算部3は、分光透過率影響画像データに1から散乱光寄与度を減算した減算値を乗算した乗算値と、散乱光影響画像データとを加算して変換画像データを生成する。