(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加湿器本体が、前記針電極を内包して前記円筒電極を支持するように設けられた加湿器本体であって、前記円筒電極の直下の部位の下方へ向って徐々に拡径する円錐筒体状に形成された拡径部において、前記拡径部の内周面が多孔質状に設けられているものである、請求項1又は2に記載の除菌機能付き加湿空気清浄装置。
前記加湿器本体が、前記ミストが前記円筒電極を通過することで微細化されて生じるナノミストを、送り出すように送風するナノミスト送風用ファンを備えているものである、請求項1〜3のいずれかに記載の除菌機能付き加湿空気清浄装置。
前記加湿器本体が、前記円筒電極に凝集して生じた液滴が流れやすいように、前記円筒電極の下端縁内周に切り欠かれて形成された切り欠き溝を備えたものである、請求項6記載の除菌機能付き加湿空気清浄装置。
前記加湿器本体が、前記針電極を内包して前記円筒電極を支持するように設けられた加湿器本体であって、前記円筒電極の直下の部位の下方へ向って徐々に拡径する円錐筒体状に形成された拡径部において、前記拡径部の内周面が多孔質状に設けられているものである、請求項6〜8のいずれかに記載の除菌機能付き加湿空気清浄装置。
前記加湿器本体が、前記ミストが前記円筒電極を通過することで微細化されて生じるナノミストを、送り出すように送風するナノミスト送風用ファンを備えているものである、請求項6〜9のいずれかに記載の除菌機能付き加湿空気清浄装置。
【背景技術】
【0002】
現在、イオンによる除菌機能を搭載した、除菌機能付き加湿空気清浄装置が提案され、また市販されている。
しかしながら、除菌がイオンの拡散によるものであって、部屋全体にイオンを拡散させることが困難であるため、十分な除菌効果を得ることができないという問題があった。
【0003】
また、次亜塩素酸水をタンクに収納した空気清浄機も提案されている(例えば、特許文献1)。
この空気清浄機は、ケース10に設けた空気取り入れ口から取り入れた空気を、集塵フィルター20に通過させ、これによって空気中の塵を集塵すると共に、集塵が完了した空気をケース10の上面に設けた空気吹き出し孔25から外部に吹き出す構成を採用すると共に、タンク29内に収納した次亜塩素酸水27を、超音波ユニット31と、超音波ユニット31によって超音波振動を行う振動子33と、を具備した「気化装置30」によって気化させて次亜塩素酸水ミストとし、その一部をミスト吹き出し口41から吹き出すと共に、他の一部を集塵フィルター20の前面側に吹き出すミスト放出手段40とを具備して構成されている(特許文献1の段落0018など参照)。
ここで、この空気清浄機では、加湿を行う「気化装置30」は、超音波ユニット31と、超音波ユニット31によって超音波振動を行う振動子33とを具備して構成されている(特許文献1の段落0019など参照)。
この空気清浄機によれば、室内空気の除菌・消臭・加湿を効率よく行うことができるとされている。
【0004】
しかしながら、このように超音波を用いて加湿を行う超音波式の加湿器の場合をはじめ、従来知られているスチーム式(加熱式)やヒートレスファン式(気化式)の加湿器の場合には、発生するミストは、目視することができる程度の粒径(例えば、3μm以上、特に10μm前後)を有するものであった(例えば、特許文献2参照)。
この程度の粒径を有するものであると、発生するミストは、部屋全体に拡散することなく、近くへ落ちてしまい、しかも周囲を濡らすという問題があった。
ガス化(蒸発)したように、目視できない状態にさせて始めて加湿(湿度を上げる)ということができるのであるが、従来は、目視することができる程度の粒径(例えば、3μm以上、特に10μm前後)を有するミストを発生させるものに過ぎず、周囲を濡らすばかりであって、加湿とは言えないようなものであった。
【0005】
このため、上記した空気清浄機では、次亜塩素酸水ミストは、近くへ落ちてしまい、部屋全体に拡散させることは困難であるという問題があることが分かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、部屋全体にわたって有効に加湿・除菌を行い、空気を清浄化させることのできる除菌機能付き加湿空気清浄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の(1)〜(11)に示すものである。
(1)空気吸込み口と空気吹出し口とを有するケース本体と;
前記ケース本体内には、フィルターを備えた空気清浄手段と;加湿手段と;前記空気吸込み口から吸い込んだ空気を前記空気清浄手段を介して前記空気吹出し口へと送風する送風手段と;を備え、
前記加湿手段は、
液体からミストを発生させる霧発生装置が設けられた加湿器本体と;
前記加湿器本体に、次亜塩素酸水を含む液体を供給する液体供給装置と;
を有し、
前記加湿器本体が、前記霧発生装置によって発生されたミストが導かれる部位に配され、上方へ先端が延びるように設けられて高電圧が印加される針電極と;
前記針電極の上方に円筒形状に設けられ、前記針電極の先端から最も近い部位となる円形の下端縁内周の全周について等距離となるように、前記針電極の少なくとも先端部と同心の上下方向に立てられた状態に配され、接地されて前記針電極と円筒形状の内周面との間でコロナ放電がなされて上昇流のイオン風を生じさせると共に前記ミストを微細化させてナノミストを発生させる円筒電極と;
前記円筒電極の上方に設けられた前記ナノミストの空気吹出し口と;
を具備しており、かつ、
前記加湿器本体が、前記円筒電極に凝集して生じた液滴が流れやすいように、前記円筒電極の下端縁内周に切り欠かれて形成された切り欠き溝を備えたものである
ことを特徴とする、除菌機能付き加湿空気清浄装置。
(2)前記空気清浄手段が、フィルターとして、プレフィルターと、脱臭フィルターと、を備えたものである、前記(1)記載の除菌機能付き加湿空気清浄装置。
(3)前記加湿器本体が、前記針電極を内包して前記円筒電極を支持するように設けられた加湿器本体であって、前記円筒電極の直下の部位の下方へ向って徐々に拡径する円錐筒体状に形成された拡径部において、前記拡径部の内周面が多孔質状に設けられているものである、前記(1)又は(2)に記載の除菌機能付き加湿空気清浄装置。
(4)前記加湿器本体が、前記ミストが前記円筒電極を通過することで微細化されて生じるナノミストを、送り出すように送風するナノミスト送風用ファンを備えているものである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の除菌機能付き加湿空気清浄装置。
(5)
前記加湿器本体における前記針電極が、前記加湿器本体の側周部に設けられた開口から挿入された状態に配され、前記針電極にミストが凝集することを可及的に防止するように、前記開口が前記ナノミスト送風用ファンからの送風を導入する部位になっているものである、
前記(4)に記載の除菌機能付き加湿空気清浄装置。
(6)空気吸込み口と空気吹出し口とを有するケース本体と;
前記ケース本体内には、フィルターを備えた空気清浄手段と;加湿手段と;前記空気吸込み口から吸い込んだ空気を前記空気清浄手段を介して前記空気吹出し口へと送風する送風手段と;を備え、
前記加湿手段は、
液体からミストを発生させる霧発生装置が設けられた加湿器本体と;
前記加湿器本体に、次亜塩素酸水を含む液体を供給する液体供給装置と;
を有し、
前記加湿器本体が、前記霧発生装置によって発生されたミストが導かれる部位に配され、上方へ先端が延びるように設けられて高電圧が印加される針電極と;
前記針電極の上方に円筒形状に設けられ、前記針電極の先端から最も近い部位となる円形の下端縁内周の全周について等距離となるように、前記針電極の少なくとも先端部と同心の上下方向に立てられた状態に配され、接地されて前記針電極と円筒形状の内周面との間でコロナ放電がなされて上昇流のイオン風を生じさせると共に前記ミストを微細化させてナノミストを発生させる円筒電極と;
前記円筒電極の上方に設けられた前記ナノミストの空気吹出し口と;
を具備しており、かつ、
前記加湿器本体が、前記針電極に凝集して生じた液滴が流れやすいように、前記針電極の先端部から後端側の支持される部位に至る屈曲部に下方へ尖って形成された下向き尖部を備えているものである
ことを特徴とする、除菌機能付き加湿空気清浄装置。
(7)前記加湿器本体が、前記円筒電極に凝集して生じた液滴が流れやすいように、前記円筒電極の下端縁内周に切り欠かれて形成された切り欠き溝を備えたものである、前記(6)記載の除菌機能付き加湿空気清浄装置。
(8)前記空気清浄手段が、フィルターとして、プレフィルターと、脱臭フィルターと、を備えたものである、前記(6)又は(7)に記載の除菌機能付き加湿空気清浄装置。
(9)前記加湿器本体が、前記針電極を内包して前記円筒電極を支持するように設けられた加湿器本体であって、前記円筒電極の直下の部位の下方へ向って徐々に拡径する円錐筒体状に形成された拡径部において、前記拡径部の内周面が多孔質状に設けられているものである、前記(6)〜(8)のいずれかに記載の除菌機能付き加湿空気清浄装置。
(10)前記加湿器本体が、前記ミストが前記円筒電極を通過することで微細化されて生じるナノミストを、送り出すように送風するナノミスト送風用ファンを備えているものである、前記(6)〜(9)のいずれかに記載の除菌機能付き加湿空気清浄装置。
(11)
前記加湿器本体における前記針電極が、前記加湿器本体の側周部に設けられた開口から挿入された状態に配され、前記針電極にミストが凝集することを可及的に防止するように、前記開口が前記ナノミスト送風用ファンからの送風を導入する部位になっているものである、
前記(10)に記載の除菌機能付き加湿空気清浄装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る除菌機能付き加湿空気清浄装置によれば、部屋全体にわたって有効に加湿・除菌を行い、空気を清浄化させることができる。
これは、一つには、本発明に係る除菌機能付き加湿空気清浄装置における加湿手段によれば、300nm(0.3μm)以下と、目視することができないほど超微小(超微細)なガス化した「ナノミスト」を発生させることができるからである。そのため従来の加湿器から放たれる「ミスト」(3μm以上、特に10μm前後という、目視することができる程度の大きな粒径を有するミスト)のように周囲を濡らすことなく(結露させることなく)、有効に加湿することができる。そして、この加湿手段には、次亜塩素酸水を含む液体を供給する液体供給装置が備えられていることから、加湿と同時に除菌を行うことができる。しかも、フィルターを備えた空気清浄手段を備えたものであるため、同時に、空気中の微細物質を集めて清浄化することができる。
次に、本発明に係る除菌機能付き加湿空気清浄装置における加湿手段によれば、目視することができないほど超微小のナノミストを発生させるばかりか、上昇流のイオン風を生じさせており、少ない液量であっても、部屋全体にわたって有効に加湿・除菌を行うことができる。
少ない液量(水量)で有効に加湿・除菌することができることから、液体供給装置をより小型化することができ、加湿手段全体をコンパクトにすることができるというメリットがある。
また、ナノミストが、上昇流のイオン風により、天井近くまで拡散することから、部屋全体にわたって有効に加湿・除菌することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、除菌機能付き加湿空気清浄装置に関し、空気吸込み口と空気吹出し口とを有するケース本体と;
前記ケース本体内には、フィルターを備えた空気清浄手段と;加湿手段と;前記空気吸込み口から吸い込んだ空気を前記空気清浄手段を介して前記空気吹出し口へと送風する送風手段と;を備え、
前記加湿手段は、
液体からミストを発生させる霧発生装置が設けられた加湿器本体と;
前記加湿器本体に、次亜塩素酸水を含む液体を供給する液体供給装置と;
を有し、
前記加湿器本体が、前記霧発生装置によって発生されたミストが導かれる部位に配され、上方へ先端が延びるように設けられて高電圧が印加される針電極と;
前記針電極の上方に円筒形状に設けられ、前記針電極の先端から最も近い部位となる円形の下端縁内周の全周について等距離となるように、前記針電極の少なくとも先端部と同心の上下方向に立てられた状態に配され、接地されて前記針電極と円筒形状の内周面との間でコロナ放電がなされて上昇流のイオン風を生じさせると共に前記ミストを微細化させてナノミストを発生させる円筒電極と;
前記円筒電極の上方に設けられた前記ナノミストの空気吹出し口と;
を具備することを特徴とするものである。
【0012】
以下、本発明に係る除菌機能付き加湿空気清浄装置の一態様を図面に基づいて詳細に説明する。
図中、符号Aは除菌機能付き加湿空気清浄装置である。
除菌機能付き加湿空気清浄装置Aのケース本体1には、空気吸込み口2と空気吹出し口3とが備えられている。
ケース本体1内には、フィルターを備えた空気清浄手段4と;加湿手段5と;前記空気吸込み口2から吸い込んだ空気を、前記空気清浄手段4を介して前記空気吹出し口3へと送風する送風手段6と;を備えている。
なお、符号7は、操作部である。
【0013】
送風手段6により、ケース本体1の前面に備えられている空気吸込み口2から吸い込まれた空気は、同じく送風手段6により、フィルターを備えた空気清浄手段4を介して、ケース本体1の上面に備えられている空気吹出し口3へと送られる。このように、空気吸込み口2から吸い込まれた空気は、送風手段6により、フィルターを備えた空気清浄手段4を通過し、清浄化された後に空気吹出し口3から排出されることになる。
なお、通常、空気清浄手段4は、送風手段6の前段(上流側)に配置されるが、これに限定されるものではない。
ここで送風手段6としては、送風することのできる器具・装置であれば特に制限されず、遠心送風機、軸流送風機(プロペラファン)などを用いることができる。それらの中でも、遠心送風機、特に、多翼ファン(いわゆるシロッコファン)を用いることが、小型化・軽量化などの点から好ましい。
【0014】
空気清浄手段4は、フィルターを備えたものである。
ここで空気清浄手段4は、フィルターとして、プレフィルター41と、脱臭フィルター42と、を備えたものである。
【0015】
プレフィルター41は、脱臭フィルターの42の前段に設けられているものである。プレフィルター41としては、目の粗いものから、目の細かいものまでを、適宜選択して用いることができる。必要に応じて、2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
プレフィルター41としては、HEPAフィルター(High Efficiency Particular Air Filter)やULPAフィルター(Ultra Low Penetration Air Filter)などのいわゆる集塵フィルターを装着することもできる。これらHEPAフィルターやULPAフィルターを装着することにより、空気中に浮遊する、PM2.5(粒径0.3〜2.5μm)などの比較的大きな塵埃等が捕集される。
【0016】
次いで、脱臭フィルター42を通過させることにより、臭気成分を吸着、除去すると共に、プレフィルター41を通過した、より小さな塵埃等が捕集される。
この脱臭フィルター42としては、活性炭などの脱臭剤を充填したり、不織布に活性炭などの脱臭剤を分散保持させたりした「活性炭フィルター」が好ましく用いられる。
活性炭フィルターとしては、特に、活性炭そのものを目の粗い袋に入れ、さらにケースに入れたものが好ましい。このような活性炭フィルターを用いることにより、フィルター限界と言われている、粒径0.3μm未満の細かな塵埃やVOC(Volatile Organic Compounds;揮発性有機化合物)ガス等を吸着・除去することができる。
【0017】
ケース本体1内には、さらに加湿手段5(即ち、加湿器)が備えられている。
この加湿手段5の形態例を、加湿手段5の原理を示す
図5と、
図5の形態の要部断面図である
図6とにより、より詳しく説明する。
【0018】
この加湿手段5は、
液体(L)からミスト(M)を発生させる霧発生装置51が設けられた加湿器本体50と;
加湿器本体50に、次亜塩素酸水を含む液体(L)を供給する液体供給装置60と;
を有し、
加湿器本体50が、霧発生装置51によって発生されたミスト(M)が導かれる部位に配され、上方へ先端が延びるように設けられて高電圧が印加される針電極70と;
針電極70の上方に円筒形状に設けられ、針電極70の先端から最も近い部位となる円形の下端縁内周の全周について等距離となるように、針電極70の少なくとも先端部と同心の上下方向に立てられた状態に配され、接地されて針電極70と円筒形状の内周面との間でコロナ放電がなされて上昇流のイオン風を生じさせると共に前記ミスト(M)を微細化させてナノミストを発生させる円筒電極80と;
円筒電極80の上方に設けられた前記ナノミストの空気吹出し口31と;
を具備することを特徴とするものである。
【0019】
加湿手段5は、加湿器本体50と;液体供給装置60と;を有するものである。
加湿器本体50には、液体(L)からミスト(M)を発生させる霧発生装置51が設けられている。
霧発生装置51は、液体(L)からミスト(M)を発生させる構成を備えていればよく、図に示す超音波式のものに限られず、例えば噴射ノズルによって液体(L)を噴霧することで霧を発生させるものなどであってもよい。
【0020】
図に示す形態例の霧発生装置51は、超音波式のものであって、液体(L)に接するように配される超音波振動子52を構成要素として備えるものになっている。
図中、符号53は超音波発振装置であり、超音波振動子52に接続されている。
本形態例では、超音波振動子52が液体中に浸漬された状態に配されている。
【0021】
液体供給装置60として、
図5では、給水タンク方式のものを示しており、加湿器本体50の液槽に、所要量の液体が貯留された状態を維持できるように、加湿器本体50と着脱自在に接続されている。
【0022】
本発明においては、この液体(L)として、次亜塩素酸水を含む液体(L)を用いている。
ここで次亜塩素酸水は、次亜塩素酸の水溶液である。次亜塩素酸水は、除菌効果に優れ、ほとんど全ての細菌や、インフルエンザウィルス,ノロウィルス等のウィルスなどに除菌効果が認められている。
この次亜塩素酸水については、強酸性次亜塩素酸水(pH2.7以下、有効塩素濃度20〜60ppm)、弱酸性次亜塩素酸水(pH2.7〜5.0、有効塩素濃度10〜60ppm)、微酸性次亜塩素酸水(pH5.0〜6.5、有効塩素濃度10〜80ppm)の3種が認められている。
これらの中でも、本発明における次亜塩素酸水としては、弱酸性次亜塩素酸水又は微酸性次亜塩素酸水が好ましく、より好ましくは微酸性次亜塩素酸水が用いられる。
微酸性次亜塩素酸水は、塩酸又は塩酸に塩化ナトリウム水溶液を入れて、電気分解してから希釈した、pH5.0〜6.5で、有効塩素濃度10〜80ppmを示すものであって、除菌・殺菌作用の高い電解水である。
弱酸性次亜塩素酸水や微酸性次亜塩素酸水は、残留性が低く、人体に安全なため、ドーム型球場などでは空中噴霧して、除菌・消臭に用いられている。
【0023】
なお、液体供給装置60としては、通常、図示したような給水タンク方式のものが多く用いられるが、例えば水道やパイプラインに直接配管して液体を供給しうる構造のものであってもよい。
【0024】
このように、本発明においては、液体供給装置60から次亜塩素酸水を含む液体(L)を供給し、これを以下に述べる加湿手段により、ナノミスト化し、円筒電極80の上方に設けられたナノミストの空気吹出し口31から吹き出すようにしているため、部屋全体にわたって有効に加湿と同時に除菌を行うことができる。
【0025】
加湿手段5は、上記のような霧発生装置51の設けられた加湿器本体50が、針電極70と;円筒電極80と;円筒電極80の上方に設けられたナノミストの空気吹出し口31と;を具備することを特徴とする。
この特徴部分以外は、本発明の加湿手段の特徴を損なわない限り、必要に応じて、既知の加湿器の構成を適宜採用することができる。また、図面は、いずれも本発明に係る加湿手段を示す概略図である。従って、加湿手段(加湿器)としての製品化に際しては、必要に応じて、適宜より実用的な設計をなすことができる。
【0026】
本形態例では、霧発生装置51の上部で、超音波振動子52の真上には、邪魔板54が配されたものを示しており、大きな粒のミスト又は水滴などの液滴が、上方のコロナ放電がなされるスペースに到達しないように遮られてトラップされるように設けられている。ミスト(M)は、
図1の矢印のように、邪魔板54の脇をすり抜けて上方へ移動する。
但し、
図1〜
図4に示す本発明に係る除菌機能付き加湿空気清浄装置の一態様においては、この邪魔板54は設けられていない。これは、
図1〜
図4に示す本発明に係る除菌機能付き加湿空気清浄装置の一態様においては、上方のコロナ放電がなされるスペースと、霧発生装置51の液面との間に十分な距離があることから、大きな粒のミスト又は水滴などの液滴が、上方のコロナ放電がなされるスペースに到達するおそれがないためである。
【0027】
針電極70は、霧発生装置51によって発生されたミスト(M)が導かれる部位に配され、上方へ先端が延びるように設けられて高電圧が印加されることで、尖った先端からコロナ放電を生じさせることができる。
なお、符号55は高圧電源装置であり、針電極70に接続されている。本形態例では、霧発生装置51の上方の真上に相当する部位に、針電極70の先端が位置するように設けられているが、必ずしも同一直線上に配置する必要はない。
なお、高圧電源装置55からは、4,000〜15,000Vという高電圧の直流電流が印加される。
針電極70には、正電圧又は負電圧のいずれかを印加して、正放電又は負放電のいずれかとすることができる。なお、正放電よりも負放電のほうが高い流速のイオン風を得やすい。
通常、正電圧(4,000〜15,000V)を印加する場合、針電極70側をマイナス側(陰極)に、円筒電極80側をプラス側(陽極)とされる。また、負電圧(−4,000〜−15,000V)を印加する場合、針電極70側をプラス側(陽極)に、円筒電極80側をマイナス側(陰極)とされる。
このようにして針電極70と円筒電極80との間に高電圧の直流電流を印加することにより、針電極70と円筒電極80との間でコロナ放電を行い、針電極70側から円筒電極80側へ向かって上昇流のイオン風が流れるようにしている。
【0028】
円筒電極80は、針電極70の上方に円筒形状に設けられ、その針電極70の先端から最も近い部位となる円形の下端縁内周82の全周について等距離となるように、針電極70の少なくとも先端部と同心で上下方向に立てられた状態に配され、接地されて針電極70と円筒形状の内周面81との間でコロナ放電がなされて上昇流のイオン風を生じさせると共にミスト(M)を微小化させてナノミスト(NM)を発生させることができる。
換言すると、針電極70は、円筒電極80の下端縁内周82の略中心に位置付けられており、これら二つの電極間でコロナ放電がなされる。
なお、コロナ放電は、火花が散るような放電ではなく、また、運転中、万一電極に触れたとしても、静電気程度のものであり、安全性についての心配はない。必要に応じて、適宜、既知の安全回路を組み込むことができる。
【0029】
このように、ミスト(M)が、上昇流のイオン風が生じている部位に導入されて、その部位(スペース)を通過すると、コロナ放電の作用によって効率良く細分化される。これによれば、粒径が300nm(0.3μm)以下、特に10〜100nm(0.01〜0.1μm)程度という超微小(超微細)のミスト粒子であるナノミスト(NM)を、効率良く発生させることができる。また、コロナ放電によって、ナノミスト(NM)に電荷を与えることができる。
【0030】
以上の構成によって効率よく生じるナノミスト(NM)が、水のミスト(M)から発生される場合、加湿効果の他に、殺菌効果、消臭効果、集塵効果などの高い空気清浄・浄化効果を奏する。本発明においては、次亜塩素酸水を含む液体(L)を用いているため、より一層殺菌・除菌効果に優れたものとなっている。
【0031】
図中、符号83は切り欠き溝であり、円筒電極80に凝集して生じた水滴等の液滴が流れやすいように、円筒電極80の下端縁内周82に切り欠かれて形成されている(
図6参照)。
この切り欠き溝83は、例えば下端縁内周82の内側角部の少なくとも一箇所にV字状に切り欠かれて形成されていればよい。
この切り欠き溝83によれば、円筒電極80の下端縁内周82の下方に水等の液体が表面張力によってリング状に溜まって流れない状態になることを防止できる。
即ち、液滴をスムーズに流すことができ、液滴が円筒電極80の下端縁内周82よりも針電極70に近づくことを防止できるため、火花放電などを生じて電気が短絡してコロナ放電が中断することを防止できる。これは切り欠き溝83によって液滴を大きくするような表面張力が生じることを防止することができるためで、コロナ放電を好適に維持させることができる。
【0032】
なお、コロナ放電によってイオン風を発生させるには、本発明のような円筒電極80に限定されず、例えば板状の電極を利用できるが、円筒電極80の方が強いイオン風を発生できる利点がある。また、円筒電極80では、凝集によって生じる水滴などの液滴を、本形態例のように適切且つ容易に処理できる。
【0033】
また、本形態例では、針電極70を内包して円筒電極80を支持するように設けられた加湿器本体50であって、円筒電極80の直下の部位の下方へ向って徐々に拡径する円錐筒体状に形成された拡径部84において、その拡径部の内周面84aが多孔質状に設けられている。拡径部84の全体に多孔質状に形成されていてもよいし、その内周面84aの表面部のみが、例えば吸水性スポンジによって多孔質状に形成されていてもよい。これによれば、ミスト(M)が凝集して生じる液滴を好適に流すことができ、コロナ放電を好適に維持させることができる。
【0034】
図中、符号72は下向き尖部であり、針電極70に凝集して生じた水滴等の液滴が流れやすいように、針電極70の先端部から後端側の支持される部位に至る屈曲部に下方へ尖って形成されている。これによっても、ミスト(M)が凝集して生じる液滴を好適に流すように積極的に滴下させることができ、コロナ放電を適切に維持させることができる。なお、符号71は針電極70を保護する絶縁体である。
【0035】
本形態例では、以下に述べるようにナノミスト送風用ファン100やミスト送風用ファン90を備えたものを示しているが、本発明においては、上昇流であるイオン風を生じさせていることから、これがファン代わりとなり、必要に応じて、これら送風ファンを不要とすることができる。
【0036】
図中、符号100はナノミスト送風用ファンであり、ミスト(M)が円筒電極80を通過することで微細化されて生じるナノミスト(NM)を、送り出すように送風する送風機である。
このナノミスト送風用ファン100によれば、加湿器本体50は上方が開放されているため、上昇流であるイオン風と合体するように外部空気が導かれ、ナノミスト(NM)を混合して上方へ送風される。
【0037】
また、本形態例のナノミスト送風用ファン100によれば、加湿器本体50の外周壁45の内側接線方向へ空気を導くように送風路が形成されていることで、渦流を生じさせて、効率良く送風できるように構成されている。
なお、本形態例の加湿器本体1では、側周部85と外周壁86とが同心円状に設けられており、ナノミスト送風用ファン70はその側周部85と外周壁86との間の筒状の空間ヘ送風するように空気の吐出口が接続されている。また、加湿器本体1の少なくとも円筒電極30を支持する部位は、樹脂製など絶縁体によって構成されている。
部屋全体にわたって加湿することができるという効果は、ナノミストを、送り出すように送風するナノミスト送風用ファン100等を備えたものとすることにより、より一層強化されたものとなる。
【0038】
図中、符号90はミスト送風用ファンであり、ミスト(M)が発生される部位と針電極70との間の加湿器本体50内へ、ミスト(M)を送り出すように送風する送風機である。
このミスト送風用ファン90によれば、ミスト(M)と混合されるように外部空気が加湿器本体50内に導かれ、針電極70の上方が中空の円筒電極80に連通されて開放されているため、ミスト(M)が混合された空気が上方へ送風される。
また、このミスト送風用ファン90によれば、加湿器本体50の内側接線方向へ空気を導くように送風路が形成されていることで、渦流を生じさせて、効率良く送風できるように構成されている。なお、このミスト送風用ファン90は、ナノミスト送風用ファン100よりも風量の小さい送風機になっている。
【0039】
また、本形態例では、針電極70が加湿器本体50の側周部85に設けられた開口87から挿入された状態に配され、その針電極70にミスト(M)が凝集することを可及的に防止するように、開口87がナノミスト送風用ファン100からの送風を導入する部位になっている。これによれば、ミスト(M)が凝集して液滴が生じることを可及的に防止でき、コロナ放電を好適に維持させることができる。
【0040】
円筒電極80の上方には、ナノミストの空気吹出し口31が備えられている。
なお、このナノミストの空気吹出し口31を、以下に述べる集塵部を備えたものとすることもできる。
【0041】
即ち、本発明に係る除菌機能付き加湿空気清浄装置における加湿手段の原理を示す説明図(
図5)では、円筒電極80の上方に集塵部88を備えたものを示しているが、この集塵部88を、このナノミストの空気吹出し口31に備えた構造とすることができる。
但し、本発明においては、プレフィルター41、脱臭フィルター42などの空気清浄手段4を設けていることから、この集塵部88を省略することができる。
【0042】
図5中、符号88は集塵部であり、液体(L)に溶解されていた物質が析出されて生じる極小微粒子を付着させて取り出すように、円筒電極80の上方に配され、微粒子が付着するように接地(アース)されている被付着面89を備える。
本形態例では、集塵部88は、板状に形成されたアルミニウムなどの金属製の集塵板によって構成されており、その下面が被付着面89として設けられている。この被付着面89は、微粒子が付着しやすいようにイオン風及び送風機による上昇流の気流が適切に当たると共に、その気流が方向性を持ってスムーズに通過できるように案内する斜面となっているが、斜面とすることなく、垂直な面としてもよい。被付着面89を垂直な面で構成する場合、集塵部88は、円筒状(煙突状)などの筒状体とすることができる。
本形態例では、
図5に示すように、集塵板88が傾斜されることで、被付着面89が斜面になっている。
【0043】
なお、上記集塵部88を備える加湿手段によれば、液体がナノミスト(NM)になって微小な粒子となることで、乾燥し易く、水中に溶解している物質の濃度が急激に濃縮されて効率良く析出され、これによって、水中に溶解している物質が、析出・乾燥された状態で被付着面89に付着されやすくなる。そして、コロナ放電によって、水などの液体として存在する微粒子はマイナスに帯電しやすく、析出した微粒子である固体粒子はプラスに帯電しやすい。そのプラスに帯電された固体粒子は、アースされた被付着面89に吸引されて、その被付着面89において効率よく付着される。これによれば、他の方法と比較して、水中に溶解している物質を効率良く乾燥・析出でき、効率良く分離・除去できるという特有の効果を奏する。
【0044】
以上の構成による加湿手段によれば、液体(L)から霧発生装置51によってミスト(M)を発生させる工程と;ミスト(M)を、高電圧が印加されてコロナ放電がなされている空間へ導いてそのコロナ放電によってミスト(M)を微細化させてナノミスト(NM)を発生させる工程と;さらに必要に応じて、微粒子が付着するように接地されている被付着面89を備える集塵部88へナノミスト(NM)を導いて、液体(L)に溶解されていた物質が析出されて生じる極小微粒子を付着させて取り出す工程;とを有する加湿方法を、好適に実施することができる。
【0045】
なお、この加湿手段においては、必要に応じて、加熱手段を設けたり、或いは抗菌作用を持たせたりして、これにより雑菌の繁殖を有効に抑制することができる。
【0046】
本発明に係る除菌機能付き加湿空気清浄装置における加湿手段によれば、300nm(0.3μm)以下と、目視することができないほど超微小の水滴(ナノミスト)を発生させることから、水中に含まれる溶解物質等を伴うことが少なく、さらに円筒電極の上方に集塵部を配したものとすることにより、水中に含まれる溶解物質を有効に分離・除去しつつ加湿することができる。
即ち、本発明に係る除菌機能付き加湿空気清浄装置における加湿手段によれば、水道水などに溶け込んでいるミネラル成分(例えば、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムやシリカ等)を有効に分離・除去することができ、例えばカルシウム等の成分を床に落下させて白い被覆を形成するようなことがない。
さらに、この場合、水道水などの水中に含まれる(溶け込んでいる)有害物質(例えば、金属や金属化合物など)も有効に分離・除去することができる。従って、仮に水道水などの水中に放射性物質等が含まれているような場合であっても、これを有効に分離・除去しつつ加湿することができる。
【0047】
本発明においては、プレフィルター、脱臭フィルター、集塵フィルターなどの空気清浄手段を備えているため、大きな塵埃から微細な塵埃までの様々な塵埃と、臭気成分を吸着、除去することができると共に、次亜塩素酸水を含む液体(L)を用い、これを上記した如き加湿手段により、ナノミスト化し、ナノミストの空気吹出し口から吹き出すようにしているため、部屋全体にわたって有効に加湿と同時に除菌、並びに空気清浄化を行うことができるものである。
【0048】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例等に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿諭のことである。