(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473930
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】上部吊り込み機構付きピボットヒンジ
(51)【国際特許分類】
E05D 7/10 20060101AFI20190218BHJP
E05D 7/082 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
E05D7/10
E05D7/082
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-94489(P2015-94489)
(22)【出願日】2015年5月4日
(65)【公開番号】特開2016-211199(P2016-211199A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】599107201
【氏名又は名称】西谷 均
(72)【発明者】
【氏名】西谷 均
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−283461(JP,A)
【文献】
米国特許第5970660(US,A)
【文献】
実開昭52−59023(JP,U)
【文献】
実開昭52−44023(JP,U)
【文献】
特開平9−303943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 7/00−7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部扉側ピボットと上部枠側ピボットさらには下部扉側ピボットと下部枠側ピボットとからなり、各々のピボットを枠体と扉の吊元側上下に振り分けて配置しておき、下部枠側ピボットに下部扉側ピボットを嵌め込み、上部扉側ピボットと上部枠側ピボットを上部軸を介して互いに嵌め込むことで扉を枠体に回動自在に吊り込むことができるピボットヒンジであって、枠側上プレートに先端側の大径部分と根元側の小径部分を有する段付き形状の上部軸を下向きに配置して上部枠側ピボットを形成し、内径が上下位置範囲にて小径部分と大径部分に設定された略U字溝と該略U字溝の開口部を塞ぐ方向に移動可能な蓋部材をあらかじめ連結させた軸受け部材を扉側上プレートに配置して上部扉側ピボットを形成し、上部軸と軸受け部材の略U字溝を嵌め込んだ後に蓋部材を垂直方向の面上にて回転移動させて開口部を塞ぐことで扉を吊り込み可能としたことを特徴とするピボットヒンジ。
【請求項2】
前記軸受け部材の略U字溝を上下方向に所定の厚みを有するように形成し、略U字溝の大径部分の高さ寸法に対して上部軸の大径部分の高さ寸法を所定の高さのみ短く設定しておき、枠体に扉を吊り込む段階での上下方向の位置関係において、上部軸に略U字溝を横方向から挿入する際に互いの大径部分が嵌り合う範囲内のみでの吊り込みが可能なように設定し、蓋部材を回転移動させて開口部を塞いだ状態では略U字溝から上部軸が上下方向にも抜けないように構成したことを特徴とする請求項1に記載のピボットヒンジ。
【請求項3】
前記蓋部材にドライバーにて操作可能な十字形状の孔かもしくは六角レンチにて操作可能な六角形状の孔のどちらかを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のピボットヒンジ。
【請求項4】
上部扉側ピボットに被せる化粧カバーを、上部枠側ピボットと面対する上面を上部軸と干渉する最低範囲のみを切り欠いた形状にし、蓋部材により完全に開口部を塞いだ状態以外では蓋部材と当接して化粧カバーが装着不可になるように設定し、さらに化粧カバーを嵌めた状態では、化粧カバーの上面により蓋部材の戻る方向への回転動作を阻止するように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のピボットヒンジ。
【請求項5】
上部軸の中心線上の縦方向に雌ねじ部分を設け、軸受け部材の扉側プレートとの固定部分をパイプ形状に設定して中央部分に貫通孔を有した状態で装着し、上吊用ねじを扉側プレートと軸受け部材を貫通させて上部軸の垂直方向の雌ねじ部に螺合し、頭部つば内面が上部扉側ピボットを僅かに持ち上げる程度まで上吊用ねじを回した後で上部軸に対する上吊用ねじの位置を固定する手段を設けることで、上部ピボットヒンジにおいても扉の荷重を受けることができるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のピボットヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は上部吊り込み機構を有するドア用のピボットヒンジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からピボットヒンジの吊り込み手段としては、あらかじめ枠体の戸尻側上下に上部枠側ピボットと下部枠側ピボットを、そして扉の戸尻側上下に上部扉側ピボットと下部扉側ピボットを装着しておき、まず下部軸を差し込む動作で下部枠側ピボットと下部扉側ピボットを組み付け、この状態から手の力で扉を保持しながら上部扉側ピボットを上部枠側ピボットに装着する順序が一般的である。そしてこの上部のピボットヒンジを装着する手段としては様々な方法が実施されており、大きく選別すると上部軸を上部枠側ピボットもしくは上部扉側ピボットのどちらか片方に固定しておき、他方に上部軸が横方向から挿入可能なU字溝を形成した受け部材を装着しておき、上部軸を受け部材のU字溝に挿入後に抜けないように蓋部材を被せる構成と、上部枠側ピボットもしくは上部扉側ピボットのどちらか片方に上部軸を上下方向に移動可能な状態で保持しておき、他方に上部軸挿入孔を設けておいて上部軸と上部軸挿入孔の位置を合わせて上部軸を上下移動させて上部軸挿入孔に差し込む構成の2タイプに分かれる。
【0003】
その前者に相当するものとしては、特開2000−204830号広報や本発明者による特開2006−283461号広報等があり、蓋部材をU字溝に対して水平面上で横方向に直線スライド移動させて上部軸の抜けを阻止する構成と、蓋部材をU字溝に対して垂直方向にて回転移動させて上部軸の抜けを阻止する構成が報告されている。そしてこれらのU字溝に横方向から上部軸を挿入する構成においては、U字溝の方向によっては上部軸を挿入後にそのまま手を放しても扉の自重により脱落することが無い仮保持を可能にすることもでき、相対的に吊り込み作業での施工性が優れていると想定される。
【0004】
そして前述の特開2000−204830号広報においては蓋部材周辺にばね部材等を組み込んでおき、上部軸のU字溝への挿入とほぼ同時に蓋部材が移動してそのまま吊り込み動作が完了するようにも発展させている。しかしそのための別途部品や蓋部材自体が比較的複雑で組み込むためのスペースもかなり必要であるため、上部枠側ピボットにU字溝を配置しているものが多く、比較的玄関ドアに多く用いられており、上部枠側ピボットにも化粧カバーを被せて吊り込みの機構部分を隠している場合が多い。ところが室内ドア用のピボットヒンジにおいては、より小さくコンパクトであることが最も重要であるとされており、上部枠側ピボットに複雑な吊り込み機構を配置しにくいため、上記のような構成をそのまま用いることは難しいと考えられる。
【0005】
また後者に相当するものとしては特開2006−169817号広報や特開2008−121342号広報等に報告されており、どちらも上部扉側ピボットに上部軸が常に上方向にばね部材によって付勢するように設けられ、上部枠側ピボットに上部軸挿入孔が設けられており、上部軸を没した状態で両者の位置を合わせてから上部軸挿入孔に上部軸を挿入する構成である。しかしながらこの吊り込み動作においては前述のU字溝での扉の自重を利用した仮保持機構は採用しにくく、高い天井付近位置での扉を支えながら位置を合わせて上部軸を差し込む作業が必要となるため施工性においてはあまり良くなく、一人作業での吊り込みはかなり困難と考えられる。またこれらの構成は上部軸が上下方向に移動することが絶対条件であるため、確実に一定寸法以上上部軸が上部軸挿入孔に差し込まれているかどうかが不確実になりがちであり、極浅くしか上部軸が引っ掛かっていないような場合も想定されるため危険性が問題とされることもある。このことは横方向に挿入する特開2006−283461号広報での構成においても同様であり、扉の脱落という重大事故に関わるため改善が急務である。
【0006】
また近年では、天井面に近接する位置にまで扉高さがある上桟を用いない構成の室内ドアがあり、この納まりにおいては上部扉側ピボットに上部軸を配置する構成だと、吊り込みの作業時に不用意に扉を持ち上げると上部軸先端が天井面に当たって傷等を付けてしまう恐れがある。また前述での上部軸が上下移動する構成では、上部軸を確実に一定寸法以上上部軸挿入孔に差し込める設定にしておくと、先端が天井面に当たる危険性が生じる。その対策としては同様に上部軸をばね部材により上下移動させて上部軸挿入孔に差し込む構成で、特開2007−231521号広報に示すように、軸心挿入孔を貫通孔ではなく一定の深さにて設定しておき、上部軸の先端が天井面に当たらないようにしている構成が報告されている。しかしながらこの構成においてもばね部材の力のみで上部軸を持ち上げているので不確実感が否めなく、さらには施工性の悪さに関しては解決されていないため、やはりU字溝を用いて仮保持ができ、かつ絶対に脱落の恐れの無い構成が望まれる。
【0007】
さらには丁番と違ってピボットヒンジは扉の荷重を下部枠側ピボットのみで受ける構成が一般的であり、重い扉の場合などでは垂れ下がりの問題がある。また扉の反りの問題に関しても丁番に対してピボットヒンジの方が扉の自重が全て下方に掛かる構成であり反り易いとされている。そこで上部のピボットヒンジにおいても扉の荷重を受けるような構成がさらに効果的であると想定される。しかし前記での上部軸を下方から上方に持ち上げて差し込む構成では上部ピボットヒンジで荷重を受けることは無理であると考えられる。
【特許文献1】特開2000−204830号広報
【特許文献2】特開2006−283461号広報
【特許文献3】特開2006−169817号広報
【特許文献4】特開2008−121342号広報
【特許文献5】特開2007−231521号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで上部軸をU字溝に嵌め込んだ状態で仮保持ができ、その後に落ち着いてゆっくりと蓋部材を移動させることで完全に吊り込みが完了する構成で、施工時に上部軸にて天井面等を傷つける恐れの無い、小さくコンパクトに形成できるピボットヒンジを提供することを第一の目的とする。またより確実に上部軸を保持すると共に、吊り込みが実施できた限り必ず上部軸の下方向への抜けが無いように設定し、さらに発展させて上部ピボットヒンジにても扉の荷重を受けることができる構成を提案することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
まず上部軸を先端の径が太い大径部分と根元の径が細い小径部分を有する段付き形状にて設定し、枠側上プレートの水平面に垂直方向で下向きに固定して上部枠側ピボットを構成する。そしてU字溝を有した軸受け部材を設けて扉側上プレートの上面に装着する。この軸受け部材は上下方向に所定の厚みを有しており、U字溝の開口部の両横にスリット部分とそれぞれその手前に壁部分を設けてあり、U字溝奥部分の内径は上部の狭い範囲を小径部分とし、下部の広い範囲を大径部分として設定してある。そしてU字溝の開口部側が斜め戸先方向になるように扉側上プレートに配置する。
【0010】
次に所定の厚みを有した略矩形の蓋部材を設け、その片端に回動支点を、さらに中央部分前面にドライバーの先が挿入可能な十字形状の凹部もしくは孔を設けておく。そして軸受け部材の片方のスリット部分に蓋部材を嵌め込んだ状態で回動支点を中心として垂直方向に平行な面上にて回動可能なように設定し、略矩形の蓋部材が開口部を塞いでいない状態で保持しておく。この状態が枠体に扉を吊り込む前の段階であり、下部の枠側ピボットと扉側ピボットを嵌め込んだ後に、扉を支えながら上部枠側ピボットから下方に向けて突出している上部軸に扉を回しこむような動作で軸受け部材のU字溝を嵌め込んで仮吊り込み状態とする。
【0011】
この状態においては扉の自重により上部軸が抜けようとする方向には力はかからないため、手を離しても脱落の危険は無く、その後蓋部材を垂直方向の面上にて回転移動させて蓋部材の他端を他方のスリット部分に嵌め込むことで開口部を塞ぎ、上部軸を完全に抱き込むことにより扉の吊り込み動作が完了する。また通常の使用状態では軸受け部材のU字溝の奥方向に荷重がかかるため、軸受け部材のU字溝の奥側の強度を十分に設定しておくことが必要である。また逆の方向に荷重が掛かることもあり得るため、蓋部材と両壁部分も一定の強度を確保しておくとよい。
【0012】
また軸受け部材のU字溝を上部軸に横方向から挿入する際に、互いの大径部分が、同時に互いの小径部分が嵌り合うように設定しておく。すると蓋部材を回転移動させて開口部を塞いだ状態ではU字溝から上部軸が上下方向にも抜けないようにすることができる。さらには吊り込む段階で枠体に対する扉の位置が大きく上下方向に狂っていると、互いの径が合わないことになり吊り込み作業自体ができないため、上部軸と軸受け部材との掛かり寸法においても適正な範囲内のみでの吊り込み実施が可能になる。
【0013】
さらには蓋部材にドライバーにて操作可能な十字形状の孔かもしくは六角レンチにて操作可能な六角形状の孔のどちらかを設けておくと、ドアの上部の狭いスペースにて指等で蓋部材を操作することなく、容易に蓋部材を回転させてU字溝を塞ぐことができる。また上部扉側ピボットに被せる化粧カバーに、上部枠側ピボットと面対する配置になる上面を上部軸と干渉する最低範囲のみを除いた形状にて設け、蓋部材の回転操作にて上部軸を保持した後に化粧カバーを嵌めた段階で、化粧カバーの上面により蓋部材の戻る方向への回転動作を阻止するように構成しておくと、蓋部材の操作忘れをも阻止することが可能になる。
【0014】
また上部軸の縦方向の中心線上に雌ねじ部分を設け、さらに軸受け部材の扉側プレートとの固定部分をパイプ形状に設定し、中央部分に貫通孔を有した状態のまま固定部分の淵周辺を外側に開くようなカシメ手段にて装着固定しておく。そして上吊用ねじを設けて扉側プレートと軸受け部材を貫通させて上部軸の垂直方向の雌ねじ部に螺合し、扉側上プレートと共に扉を持ち上げ気味にまで上吊用ねじを回転させる。次に上部軸に対する上吊用ねじの固定手段として、上部軸の枠側プレートに近い位置の水平方向にも雌ねじ部分を設けておき、止めねじを上部軸の水平方向の雌ねじ部に螺合して上吊用ねじを固定する手段を用いることで、上部ピボットにおいても扉の荷重を受けることができるようになる。
【発明の効果】
【0015】
上部軸とU字溝の両方を大径部分と小径部分を有する段付き形状にて設定し、吊り込み時に互いの大径部分が、同時に互いの小径部分が嵌り合うように設定しておくと、蓋部材を回転移動させて開口部を塞いだ状態ではU字溝から上部軸が上下方向にも抜けないようにすることができる。さらには吊り込む段階で枠体に対する扉の位置が大きく上下方向に狂っていると、互いの径が合わないことになり吊り込み作業自体ができないため、適正な範囲内のみでの吊り込み実施が可能になる。
【0016】
上下方向に所定の厚みを有しかつU字溝とその開口部側の両側にスリット部分を設け、スリットに沿って回動自在に蓋部材を配置した構成の軸受け部材に上部軸を嵌め込み、垂直方向に平行な面上にて略矩形の蓋部材を回動させて開口部を塞ぐ動作を用いることにより、狭いスペース内での吊り込み機構が可能となる。
【0017】
さらには蓋部材にドライバーにて操作可能な十字形状の孔かもしくは六角レンチにて操作可能な六角形状の孔のどちらかを設けておくと、ドアの上部の狭いスペースにて指等で蓋部材を操作することなく、容易に蓋部材を回転させてU字溝を塞ぐことができる。また上部扉側ピボットに被せる化粧カバーに上面を設け、化粧カバーを嵌めた段階で化粧カバーの上面により蓋部材の戻る方向への回転動作を阻止するように構成しておくと、蓋部材の操作忘れをも阻止することが可能になる。
【0018】
また上部軸の中心線上の縦方向に雌ねじ部分を設け、さらに上部軸の枠側プレートに近い位置の水平方向にも雌ねじ部分を設けておき、軸受け部材を中央部分が貫通した状態にて固定しておくと、上吊用ねじを扉側プレートと軸受け部材を貫通させて上部軸の垂直方向の雌ねじ部に螺合して扉を持ち上げ気味にまで上吊用ねじを回転させた段階で止めねじを上部軸の水平方向の雌ねじ部に螺合して上吊用ねじを固定することで、上部ピボットにおいても扉の荷重を受けることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面に基づいて本発明の上部吊り込み機構付きピボットヒンジの実施の形態を説明する。
図1は本発明の上部吊り込み機構付きピボットヒンジの上部扉側ピボットを扉23に装着した状態の斜視図である。まず
図1に示すように取り付け面2と扉面に沿って直角に折れ曲がった垂直面とさらに直角に曲がった水平面3を有する略Z形状の扉側上プレート1を設ける。次にU字溝5を有した軸受け部材4を設け、扉側上プレート1の水平面3の上側に装着する。この軸受け部材4は上下方向に所定の厚みを有しており、U字溝5の開口部6の両横にスリット部分7とそれぞれその手前に壁部分8を設けてあり、U字溝5奥部分の内径は上部に位置する狭い範囲を小径部分9とし、下部の広い範囲を大径部分10として設定してある。そしてU字溝5の開口部6の向きが斜め戸先方向になるように扉側上プレート1に配置する。
【0020】
次に所定の厚みを有した略矩形の蓋部材11を設け、その片端に回動支点12を、さらに中央部分前面にドライバーの先が挿入可能な十字凹部13もしくは六角孔等を設けておく。そして軸受け部材4の片方のスリット部分7に蓋部材11を嵌め込んだ状態で回動支点12を中心として垂直方向に平行な面上にて回動可能なように設定し、
図1に示すように蓋部材11が開口部6を塞いでいない起立状態で保持しておき、この状態が枠体24に扉23を吊り込む前の段階になる。また、この蓋部材11の配置は特に限定されるものではなく、回動支点12を左右逆のスリット部分7側に配置することも可能であり、その場合では吊り込み前に開口部6を塞いでさえおらなければ起立状態ではなく、逆方向にもっと180度に近くまで回転した位置にて保持しておいてもよい。
【0021】
図2は上部枠側ピボットを枠体24の上部に装着した状態の斜視図であり、上部枠側ピボットは垂直方向の取り付け面2と水平面3とからなる枠側上プレート14とその水平面3から垂直方向に下向きに固定された上部軸15とで構成される。ここで上部軸15は大径部分10からなる短い先端部分と小径部分9からなる長い根元部分を有する段付き形状にて設定しておく。次に扉23の吊り込み動作としては、扉23を少し持ち上げた状態で下部枠側ピボットと下部扉側ピボットを嵌め込んだ後に、扉23を起こした状態で支えながら上部枠側ピボットと上部扉側ピボットを嵌め込む順序になる。
図3はその上部の吊り込み動作を示す上面図であり、枠側上プレート14から下方に向けて突出している上部軸15に扉23を60度以上開放した状態で上部扉側ピボットの軸受け部材4のU字溝5を、
図3(a)に示すように扉23を回しこむような動作で上部軸15に挿入し、
図3(b)に示すようにU字溝5の奥位置に引っ掛けた状態で仮保持する。
【0022】
この
図3(b)が扉23の仮吊り込み状態であり、この状態においては扉23の自重により倒れようとする力は必ず戸先方向に掛かり、U字溝5の開口部6の向きに対しては上部軸15が抜けようとする方向にはまったく荷重はかからないため、手を離しても脱落の危険は無い。またこの状態で扉23が回転してしまったとしても、軸受け部材4及びU字溝5も一緒に回転することになり、上部軸15から抜けてしまうことは無い。したがって非常に高い扉23においても、下部扉側ピボットを下部枠側ピボットに差し込んで、扉23を起こしながら上部軸15をU字溝5に挿入するだけの簡単な吊り込み動作が実現でき、容易な一人作業が可能になる。
【0023】
そして落ち着いた状態から高い扉等では脚立等も用い、
図4(a)に示す軸受け部材4に対して起立している蓋部材11を垂直方向の面上にて回転移動させて
図4(b)に示すように蓋部材11の他端を他方のスリット部分7に嵌め込むことで開口部6を塞ぎ、上部軸15を完全に抱き込んで扉23の吊り込み動作が完了する。このとき蓋部材11の内面が上部軸15の大径部分10に近接するように設定しておくとよい。さらには蓋部材11にドライバーにて操作可能な十字凹部13かもしくは六角レンチにて操作可能な六角形状の孔等を設けておくと、ドアの上部の狭いスペースにて指等で蓋部材11を操作することなく、容易に蓋部材11を回転させてU字溝5を塞ぐことができる。また
図4(b)に示す最後の位置にまで蓋部材11を回転させ切るために、蓋部材11と軸受け部材4の壁部分8付近に樹脂等での弾性を有した凹凸部分を設けておき、完全に回転した段階でクリック感を有するように設定しておくとよい。
【0024】
また扉23の通常の開閉による使用状態では常に扉23の倒れようとする荷重は軸受け部材4のU字溝5の奥方向にかかるため、軸受け部材4のU字溝5の奥側の強度を十分に設定しておくとよいことになる。しかし、例えば何らかの事象により扉23を90度近く開放した
図3(b)の位置付近で扉23を枠体24側に押し付けるような通常とは逆方向への力が掛かった場合においては上部軸15に対してU字溝5の開口部6側に荷重がかかることになる。そこで上部軸15が抜けようとする荷重を蓋部材11自体と両壁部分8にて受けなければならないため、蓋部材11自体と軸受け部材4の壁部分8の強度を十分に確保しておくとよい。
【0025】
図5は吊り込み完了時の側面図であり、吊り込み作業で軸受け部材4のU字溝5を上部軸15に横方向から挿入する際に、
図5に示すように上下方向での位置において互いの大径部分10が、同時に互いの小径部分9が嵌り合わなければ吊り込みが出来ないように設定しておく。このことが本発明における最も重要な点であり、U字溝5の比較的上下に長い大径部分10内に上部軸15の比較的短い大径部分10が位置した状態のときのみ両者を挿入できることになる。したがって蓋部材11を回転移動させて開口部6分を塞いだ状態ではU字溝5から上部軸15が上下どちらの方向にも抜けないようにすることができる。
【0026】
また従来での上部軸15を上下方向に移動させて受け部材に差し込む動作で吊り込む構成では、上部軸15が受け部材に対してほんの少しでも引っかかってさえいれば吊り込み可能となってしまう。ところが本構成においては、吊り込む段階で枠体24に対する扉23の位置が大きく上下方向に狂っていたとすると、軸受け部材4のU字溝5の大径部分10の範囲内に上部軸15の大径部分10が位置しないと嵌め込めないことになり、つまり所定の範囲以上に上下位置が狂っていると吊り込み作業自体ができないことになる。したがって吊り込みが実施できた限りは必ず軸受け部材4の適正な範囲内で上部軸15が保持されていることになり、より安全性の高い扉23の吊り込み動作が実施可能になる。
【0027】
次に
図6は扉側上ピボットの化粧カバー16の斜視図であり、
図5に示すように上部扉側ピボットに被せるのであるが、このとき上部枠側ピボットの水平面3と面対する配置になる化粧カバー上面17を、
図6に示すように取り付け時に上部軸15と干渉する最低範囲のみを切り欠き部分18として除いておく。すると蓋部材11の回転操作にて上部軸15を保持した後に化粧カバー16を嵌める段階で、蓋部材11が起立したままの
図3(b)に示す仮吊り込み状態では化粧カバー上面17が蓋部材11に当接し、化粧カバー16の取り付けが出来ないことになる。つまり蓋部材11が適正に上部軸15を保持した
図4(b)に示す状態でのみ化粧カバー16が取り付けでき、その段階で化粧カバー上面17が蓋部材11に被さるため、蓋部材11の戻る方向への回転動作をも阻止することが可能になる。
【0028】
また
図7に示すように上部軸15の中心線上の縦方向に雌ねじ部分19を設け、さらに上部軸15の枠側上プレート14に近い位置の水平方向にも雌ねじ部分19を設けておく。次に
図8に示すように軸受け部材4の扉側上プレート1の水平面3との固定部分をパイプ形状に設定し、中央部分に貫通孔を有した状態のまま固定部分の淵周辺を外側に開くような中空鋲等にて用いられるカシメ手段にて装着固定しておく。そして上吊用ねじ20を設けて扉側上プレート1と軸受け部材4を貫通させて上部軸15の垂直方向の雌ねじ部19に螺合し、扉23を持ち上げ気味にまで上吊用ねじ20を回転させた段階で止めねじ21を上部軸15の水平方向の雌ねじ部分19に螺合して上吊用ねじ20を固定する。
【0029】
すると上部扉側ピボットを介して扉23自体を持ち上げた状態にて保持されることになり、その結果上部ピボットにおいても扉23の荷重を受けることができるようになる。またこの状態では上吊用ねじ20の頭部つば内面22と扉側上プレート1の水平面3にて扉23の開閉動作と共に荷重を受けながら回転することになるため、その間に摩擦の少ない材質のワッシャ等を挟み込んでおくとよい。そしてこの構成においては、扉側上プレート1と上部軸15を直接上吊用ねじ20で連結することになるため、さらに扉23の脱落等の防止になるだけではなく、従来のピボットヒンジにおいてはどうしても下荷重になることで扉23の反りが問題になる点において非常に有効であり、扉23の荷重をバランスよく上下のピボットヒンジで受ける扉23の反りにも有効な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明のピボットヒンジの、扉側上ピボットの斜視図である。
【
図2】本発明のピボットヒンジの、枠側上ピボットの斜視図である。
【
図3】本発明のピボットヒンジの、吊り込み動作を示す上面図である。
【
図4】本発明のピボットヒンジの、U字溝に対する蓋部材の操作正面図である。
【
図5】本発明のピボットヒンジの、上部ピボットヒンジの吊り込み状態の側面図である。
【
図6】本発明のピボットヒンジの、化粧カバーの斜視図である。
【
図7】本発明のピボットヒンジの、上部ピボットにて荷重を受ける構成の、上部枠側ピボットの斜視図である。
【
図8】本発明のピボットヒンジの、上部ピボットにて荷重を受ける構成での吊り込み状態の側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 扉側上プレート
2 取り付け面
3 水平面
4 軸受け部材
5 U字溝
6 開口部
7 スリット部分
8 壁部分
9 小径部分
10 大径部分
11 蓋部材
12 回動支点
13 十字凹部
14 枠側上プレート
15 上部軸
16 化粧カバー
17 化粧カバー上面
18 切り欠き部分
19 雌ねじ部
20 上吊用ねじ
21 止めねじ
22 頭部つば内面
23 扉
24 枠体