(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
比重の異なる物質を含む液状体を遠心力により分離する回転体(1)の内部に、前記液状体を供給し、比重の小さな液状体を連続して回転体(1)の外に流出させる遠心分離機であって、回転体(1)は比重の小さい液状体を流出させる流出口(1e)となる円形開口部(1ea)を液状体供給側と反対側に設けた容器で、その円形開口部(1ea)は回転体(1)と同じ回転中心軸(1f)となっており、前記回転体(1)の液状体供給側の回転体上蓋部(1a)には、その回転体(1)と同じ回転中心軸(1f)を持つ液状体供給管兼回転シャフト(2)を同軸回転するように設け、回転体(1)の内部の液状体供給側に回転体(1)と同軸で回転する円盤(1b)をその上面側に隙間を確保して回転体(1)と一体的に設け、この隙間を流路(13b)に形成し、円盤(1b)の円盤外周部(1c)を回転体(1)への供給口(1h)とし、供給口(1h)となる円盤外周部(1c)が回転体(1)の回転中に形成される滞留液状体(13)の内部に入り込む位置となるように構成し、前記円盤(1b)は回転体(1)と一体で同回転で回る事により気泡発生の原因となる回転体(1)の内部の気体を巻き込まずに滞留液状体(13)に供給口(1h)から液状体を供給する気泡発生防止液状体供給機構を設けると共に、前記回転体(1)の円形開口部(1ea)の液状体供給側と反対側である下部に近接して静止固定され、かつ回転体(1)の回転中心軸(1f)とほぼ同じ位置に中心軸をもつ気泡発生防止受液ユニット(3)を有し、該気泡発生防止受液ユニット(3)は円形開口部(1ea)の下に環状受液先端部(3a)と次いで受液円錐筒(3b)又は、環状受液先端部(3a1)と次いで受液円筒(3b1)を連設もしくは一体で製作し、回転体(1)から放出された液状体が受液円錐筒(3b)もしくは受液円筒(3b1)で直ぐに受止められて遠心方向の流出移動距離が短く受液され、その内壁を摩擦抵抗により、旋回速度を落としながら流れていくように構成した気泡発生防止受液機構を設けた事を特徴とする遠心分離機。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機は、遠心分離対象の液状体から比重の小さい液状体を連続的に回収する事を目的として使用される事がある。その際、連続的に回収された液状体に気泡発生して好ましくない場合がある。
たとえば、容器に一定量の液状体を充填しなければならない際に、気泡発生していると充填後に内容量が変化する。又、工作機械での研削及び切削等に使用するクーラントの気泡は、冷却不足、潤滑性不足、供給圧力不足などによる加工品質の低下をもたらす問題点がある。
これらの問題点に対処する為に大きな消泡タンクを設置している。工作機械のクーラントにおいて、研削油のような高粘度の場合は、消泡剤も効果が低く、タンクから泡が溢れ出ることもある。
【0003】
従来の遠心分離機は、外部から引入れた液状体をノズルまたは振切り板により回転体に供給する方式で、空気などの気体中で供給しており、高速の回転体とともに回る滞留液状体とノズルまたは振切り板から供給される液状体との間に大きな速度差があることから、この時点で気体を取込んで気泡発生させ白濁していることが確認できた。(特許文献1〜3参照)
【0004】
尚、従来のノズルまたは振切り板により回転体に供給する方式では、供給のみが目的で、供給時の気泡発生防止に着目した技術は無かった。
【0005】
また従来の遠心分離器は、外部から引入れる液状体をノズルまたは振切り板により回転体に供給し、滞留液状体から溢れる液状体を流出させる方式で、流出する液状体の持つ遠心力からケーシングへの衝突時に気泡発生している。
上記問題の解決策として従来は、特許文献3記載の液状体の衝突部に傾斜面およびメッシュ部を設けたものがあった。また特許文献2の記載には、回転容器と別体の静止した流出口および静置板を設けたものがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、回転体から流出される際の液状体に着目した気泡発生防止対策のみがなされ、回転体への液状体供給時の気泡発生防止対策されたものは無く、泡の発生プロセスの一つが見落とされており気泡抑制が不十分である問題があった。
【0008】
また、従来の回転体から流出される際の気泡発生防止対策においても不十分である問題があった。
【0009】
従来の解決策では、1314Gの加速度(半径150mmの位置にある流出口で2800rpmの回転体の場合)をもって流出された液状体が気体中で重力の1314倍で加速され、静止した部品に凄まじい衝突を起しており気泡発生防止まで至っていなかった。ここで、回転体内部の加速度エネルギーを持った流出前の液状体は、遠心方向に移動していないので速度0m/sであるが、回転体から流出した液状体は、遠心方向に重力加速度9.8m/s
2の1314倍で速度を増しながら移動する。この移動距離ごとの速度を単純計算した場合、遠心方向の流出移動距離10mm位置で16.1m/s、流出移動距離50mm位置で35.9m/sと流出後の移動距離が増すほど高速度になる。このことから、遠心方向の流出移動距離を最小としなければ、どんな傾斜面およびメッシュを設けても、接触すれば、大きな衝撃となる。また、気体との抵抗で減速するまでの数十メートルの流出移動距離を設ける事も考えられるが現実的ではない。
【0010】
さらに従来の解決策では、処理流量100リットル/分の遠心分離機の場合、流出口から流出した直後の遠心方向に直角となる液状体の厚みは、流出口の穴径と穴数によるが0.01〜0.05mmと試算される。この厚みの薄い液状体は複数の流出口から分割されて放射されるので、液状体近傍の気体を連れまわり気体と混ざりながら表面積を拡大させて3次元的に急拡散することにより気体と同様な粘度で噴霧したような液状体に近づく。この気体に近くなった低粘度の表面をもつ噴霧したような液状体とそれを取り巻く連れまわりの風(液状体が高速で移動する場合に近傍の気体を同じ高速で一緒に移動させる現象をいう。)を遠心方向と平行または平行に近い部品との摩擦抵抗で減速する事は困難で、気泡発生防止に至っていなかった。
本願発明は、これらの問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、上記課題を解決する為のものであって、比重の異なる物質を含む液状体を遠心力により分離する回転体(1)の内部に、前記液状体を供給し、比重の小さな液状体を連続して回転体(1)の外に流出させる遠心分離機であって、
回転体(1)は比重の小さい液状体を流出させる流出口(1e)となる円形開口部(1ea)を液状体供給側と反対側に設けた容器で、その円形開口部(1ea)は回転体(1)と同じ回転中心軸(1f)となっており、
前記回転体(1)の液状体供給側の回転体上蓋部(1a)には、その回転体(1)と同じ回転中心軸(1f)を持つ液状体供給管兼回転シャフト(2)を同軸回転するように設け、
回転体(1)の内部の液状体供給側に回転体(1)と同軸で回転する円盤(1b)をその上面側に隙間を確保して回転体(1)と一体的に設け、この隙間を流路(13b)に形成し、円盤(1b)の円盤外周部(1c)を回転体(1)への供給口(1h)とし、供給口(1h)となる円盤外周部(1c)が回転体(1)の回転中に形成される滞留液状体(13)の内部に入り込む位置となるように構成し、前記円盤(1b)は回転体(1)と一体で同回転で回る事により気泡発生の原因となる回転体(1)の内部の気体を巻き込まずに滞留液状体(13)に供給口(1h)から液状体を供給する気泡発生防止液状体供給機構を設け
ると共に、前記回転体(1)の円形開口部(1ea)の液状体供給側と反対側である下部に近接して静止固定され、かつ回転体(1)の回転中心軸(1f)とほぼ同じ位置に中心軸をもつ気泡発生防止受液ユニット(3)を有し、該気泡発生防止受液ユニット(3)は円形開口部(1ea)の下に環状受液先端部(3a)と次いで受液円錐筒(3b)又は、環状受液先端部(3a1)と次いで受液円筒(3b1)を連設もしくは一体で製作し、回転体(1)から放出された液状体が受液円錐筒(3b)もしくは受液円筒(3b1)で直ぐに受止められて遠心方向の流出移動距離が短く受液され、その内壁を摩擦抵抗により、旋回速度を落としながら流れていくように構成した事を特徴とする気泡発生防止受液機構を設けた遠心分離機。
【発明の効果】
【0016】
本願発明は、比重の異なる物質を含む液状体を気泡発生させず、連続的に遠心分離が可能であるので、遠心分離処理直後の液状体を内容量変化させることなく容器に一定量の充填をすることが可能となる。
【0017】
また、工作機械での研削及び切削等に使用するクーラントにおいて、気泡による冷却不足、潤滑性不足、供給圧力不足などによる加工品質の低下を防ぐための大型の消泡タンクおよび消泡剤等の消耗品も必要がない。
【0018】
本願発明の遠心分離機の気泡発生防止機構は、気泡発生防止液状体供給機構または気泡発生防止受液機構のいずれか一つの実施でも効果がある。さらに気泡発生防止液状体供給機構および気泡発生防止受液機構の両方を備えた遠心分離機気泡発生防止機構は、気泡発生を少なくした遠心分離を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本願発明を実施した場合の一例で、製作段階の遠心分離機全体を示す断面図である。
【
図2】気泡発生防止液状体供給機構の一実施例で、気泡発生させないで液状体の供給を説明する液状体供給管兼回転シャフト(2)および回転体(1)の一部である回転体上蓋部(1a)に組付けた断面図である。
【
図3】気体の無い流路(13b)と滞留液状体(13)が形成され、気体と接触させないで液状体を供給することが可能となることをハッチングで表した断面図である。
【
図4】本願発明を分かり易くする為に比較として従来の静止固定された供給ノズル(16)での気泡発生を説明する断面図である。
【
図5】
図2の円盤(1b)の変形例として二段円盤(1d)にした断面図である。
【
図6】
図2の円盤(1b)の変形例として放射配管(1g)にした断面図である。
【
図7】
図6の放射配管(1g)の変形例で放射配管(1g1)を示す断面図である。
【
図8】本願発明を実施した場合の一例で、液状体の入口から遠心分離した液状体の出口までの流れ方向(回転体内部への流入以降の旋回方向は割愛している。)を開いた矢印で示した断面図である。
【
図9】
図8の回転体(1)と環状受液先端部(3a)の拡大図である。
【
図12】
図9の回転体(1)の変形例を示す断面図である。
【
図13】
図9の環状受液先端部の変形例を示す断面図である。
【
図15】回転体(1)と環状受液先端部(3a5)を軸受(18)としてベアリングを用いて繋いだ形態を示す断面図である。
【
図16】回転体(1)に厚みがほぼ0で尖った先端形状を設けた変形例を示す断面図である。
【
図17】回転体(1)および環状受液先端部(3a)の両方に厚みがほぼ0で尖った先端形状を設けた変形例を示す断面図である。
【
図18】
図8の受液円錐筒(3b)を受液円筒(3b1)に置換えた変形例を示す断面図である。
【
図19】
図18の回転体(1)と環状受液先端部(3a1)の拡大図である。
【
図20】
図8の受液円錐筒(3b)を上部に設けた変形例を示す断面図である。
【
図21】
図20の回転体(1)の上部の集液円筒部(19)と環状受液先端部(3a1)の拡大図である。
【
図22】
図20の変形例で、二段円盤(1ba)を回転体(1)と別体の駆動とし、液状体を下部から供給する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願発明の気泡発生防止液状体供給機構の主な構成要素である液状体供給管兼回転シャフト(2)と回転体(1)について説明し、次に気泡発生防止受液機構の主な構成要素である回転体(1)と気泡発生防止受液ユニット(3)(環状受液先端部(3a)と受液円錐筒(3b)または受液円筒(3b1)からなる。)の形態について、それぞれ説明する。
【0021】
気泡発生防止液状体供給機構と気泡発生防止受液機構の両方を備えた形態は、それぞれの記載を組合せたものとなるので、それぞれの記載で兼ねるものとするが、理解し易くする為に一例として製作段階の全体図を
図1に、全体の液状体の流れ方向(旋回する方向は割愛している)を
図8に示す。
【0022】
図1は、製作段階の一例で、円盤(1b)が内部に設けられた回転体(1)の上部に液状体供給管兼回転シャフト(2)が結合されており、回転体(1)の下部には気泡発生防止受液ユニット(3)(環状受液先端部(3a)および受液円錐筒(3b)からなる)が静止固定されている。回転体(1)と液状体供給管兼回転シャフト(2)は、モーター(11)で駆動される。また、回転体(1)の下方にある上下動付スライド排水受(6)は必要な時に回転体(1)の下に移動し、回転体(1)の内部を自動洗浄する際に廃液を受ける仕組みとなっている。
【0023】
図8は、遠心分離機に液状体が供給され、ろ過液として外部に出るまでの流れ方向を示した一例で、液状体供給管兼回転シャフト(2)から供給された液状体は、回転体上蓋部(1a)の穴を通り、円盤(1b)と回転体上蓋部(1a)の間の流路(13b)を通り滞留液状体(13)の内部に流れる。次に滞留液表面(13a)から溢れた液状体は、旋回しながら放射状に、静止固定された気泡発生防止受液ユニット(3)(環状受液先端部(3a)および受液円錐筒(3b)からなる)に気泡発生の無い状態で流出する。その流出した液状体は、静止固定された気泡発生防止受液ユニット(3)からろ過液出口(14)までの間に摩擦抵抗により、旋回速度(流速)を落としながら流れていく。
【0024】
[気泡発生防止液状体供給機構]
[液状体供給管兼回転シャフト]
液状体供給管兼回転シャフト(2)は回転体(1)と同じ回転中心軸(1f)となっており、軸受(ベアリング(8)など)で保持する回転シャフトと液状体供給管を共用して回転体(1)に液状体を供給することができ、別体で回転シャフトの中に液状体供給管を設けてもよい。液状体供給管兼回転シャフト(2)の回転中心軸(1f)は好ましくは縦軸がよいが、横軸や斜め45度など必要に応じて自由な角度で用いてもよい。
【0025】
[回転体]
回転体(1)は上部にある回転体上蓋部(1a)の中心穴から液状体を取入れ、気体と接触させないように滞留液表面(13a)より液中側に供給させる案内となる流路(13b)をもち、遠心力により比重の異なる物質を分離し、比重の小さい液状体を流出させる流出口(1e)となる円形開口部(1ea)を設けた容器である。前記回転体(1)の流出口(1e)となる円形開口部(1ea)は、回転体(1)と同じ回転中心軸(1f)となっている。
【0026】
ここで、気体と接触させないように滞留液表面(13a)より液中側に供給させる案内は、回転体(1)の回転開始から液状体供給開始後の滞留液表面形成までの間に気体が存在する。しかし、回転体(1)の回転開始後に液状体を供給して滞留液表面(13a)が供給口(1h)に到達すると、気体が押出され気体の無い流路(13b)がつくりだされ、その数十秒後に気泡の無い比重の小さい液状体を流出口(1e)から流出させることができる。
【0027】
[液状体供給管兼回転シャフトと回転体の配置関係]
回転体(1)の上部にある回転体上蓋部(1a)には、その回転体(1)と同じ回転中心軸(1f)を持つ液状体供給管兼回転シャフト(2)を同軸回転するように設ける。その回転体上蓋部(1a)は、液状体供給管兼回転シャフト(2)の出口を塞がない穴を持っており、その穴を持った回転体上蓋部(1a)と重ならない距離に回転体(1)と同軸で回転する円盤(1b)を設ける。この円盤(1b)の円盤外周部(1c)となる供給口(1h)は、回転中の回転体内の滞留液状体(13)の内部または滞留液状体(13)の表面である滞留液表面(13a)に接するサイズとするが、滞留液表面(13a)から空間側に5mm程度離れた小径サイズでも許容可能である。
【0028】
以上により、液状体供給管兼回転シャフト(2)から滞留液状体(13)までの経路に気体が流入しない構造とし、気泡発生条件となる気体と接する事を無くしたうえで、連続して回転体(1)に液状体を供給する事を可能とした気泡発生防止液状体供給機構である。
【0029】
[気泡発生防止受液機構]
[回転体]
回転体(1)の流出口(1e)は、液状体の遠心方向の流出移動距離を50mm以下の最短(
図9を参照のこと)にして気泡発生防止受液ユニット(3)(環状受液先端部(3a)および受液円錐筒(3b)からなる)に流出させることができる。
【0030】
[気泡発生防止受液ユニット]
気泡発生防止受液ユニット(3)は、環状受液先端部(3a)および受液円錐筒(3b) (受液円筒(3b1)を含む)からなっているが、一体で製作されてもよい。
【0031】
[気泡発生防止受液ユニットと回転体の接合]
静止固定された気泡発生防止受液ユニット(3)の環状受液先端部(3a)と回転体(1)の端部(流出口(1e)でもある円形開口部(1ea)付近の回転体(1))との環状に接近する部位に軸受(18)(
図15参照)を用いて接合することにより、軸受(18)の許容回転数(周速)に制約を受けるものの回転体(1)の流出口(1e)から流出した遠心方向の液状体の流出移動距離を0mmとする事が可能となり、液状体が静止固定された構造物との間に衝突現象が全く無く、従って気泡発生も全く無い状態を可能としている。
また、回転体(1)の所望回転数が1個の軸受(18)の許容回転数を超える場合、同回転軸となる軸受(18)を複数連結することにより、所望回転数に対応させる事が可能である。(例えば、回転体の所望回転数の半分の許容回転数を持つベアリングであれば、2個のベアリングを連結して各々のベアリングに半分ずつの回転数を受持たせる。)
【0032】
[気泡発生防止受液ユニットと回転体の間に隙間を設けた配置関係]
隙間(
図8の部分拡大
図9を参照)を設けた場合、回転中の回転体(1)の端部と静止固定された気泡発生防止受液ユニット(3)の環状受液先端部(3a)との隙間は、小さいほど液状体が侵入し保持され易くなる。この液状体が侵入し保持されると、その隙間が変化(加工組立精度に起因した回転体(1)の回転振れにより隙間が周期的に変化する。)することによる液状体の圧縮と解放の繰返し現象で振動の原因となる抵抗変化を起こす。この抵抗変化は、回転体(1)の回転数と同期する為に振動が増幅されて共振し、容易に遠心分離機を破損させる。この抵抗変化を防止するために、気泡発生防止受液ユニット(3)の環状受液先端部(3a)と回転体(1)が、環状に最も接近する部位(隙間)の対面面積が小さくなる形状とし、環状受液先端部(3a)と回転体(1)の両方または何れか一方が、軸方向の断面でみた厚みがほぼ0mmで尖った先端形状(
図9〜
図14、
図16、
図17、
図19を参照)となっており、許容可能な厚みとしては40mm以下(隙間を大きくすれば厚みも大きくできる)まで用いてよい。この尖った先端形状は、上記の液状体の圧縮時の抵抗がほとんど無くなる(液状体を面のあるもので押すと反力が大きいが、尖ったもので押しても反力はほとんど無い。)ので、解放時との抵抗変化差を無視できるようになる。この事で、回転体(1)と環状受液先端部(3a)の隙間を小さくする事(接近させる事)が可能となる。それによって流出口(1e)から流出した遠心方向の液状体の流出移動距離(
図9を参照)を最短にして、遠心力(加速度)に伴う距離(時間も同じ)を追うごとに高速度となる液状体の速度上昇前の低速度(衝撃が小さい)の段階で、静止固定された環状受液先端部(3a)に流出させ、気泡の元となる衝撃時の気体の取込みを抑制する事ができる。
【0033】
上記の回転体(1)と気泡発生防止受液ユニット(3)との配置関係のみならず気泡発生防止受液ユニット(3)を回転体上蓋部(1a)側に接合または隙間を設けた設定も可能であり、隙間を設けた場合の一例を
図20に示す。
【実施例】
【0034】
本願発明の遠心分離機気泡発生防止機構は、気泡発生防止液状体供給機構または気泡発生防止受液機構のいずれか一つの実施で効果がある。さらに気泡発生防止液状体供給機構および気泡発生防止受液機構の両方を備えた遠心分離機気泡発生防止機構は、気泡発生が全く無い状態の遠心分離を可能とする。
【0035】
本願発明の気泡発生防止液状体供給機構の主な構成要素である液状体供給管兼回転シャフト(2)と回転体(1)についての実施例を図面に基づいて説明し、次に気泡発生防止受液機構の主な構成要素である回転体(1)と気泡発生防止受液ユニット(3)について、それぞれの実施例を図面に基づいて説明する。気泡発生防止液状体供給機構と気泡発生防止受液機構の両方を備えた形態は、それぞれの記載を組合せたものとなるので、それぞれの記載で兼ねるものとするが、
図1に製作段階の全体図、
図8に全体の液状体の流れ方向(旋回方向を割愛した液状体の移動方向)を開いた矢印で記載した断面図を示す。(
図1および
図8の説明は段落[0022]および[0023]を参照のこと)
[気泡発生防止液状体供給機構]
【実施例1】
【0036】
図2は、気泡発生防止液状体供給機構である液状体供給管兼回転シャフト(2)および回転体(1)の一部である回転体上蓋部(1a)に組付けた断面図で、図中の開いた矢印の記載は旋回方向を割愛した液状体の流れを示す。液状体供給管兼回転シャフト(2)は、回転体(1)および回転体上蓋部(1a)と一体となって同じ回転中心軸(1f)で強制回転され、液状体はベアリング(8)で保持する液状体供給管兼回転シャフト(2)から回転体(1)に供給される。
【0037】
回転体上蓋部(1a)は、回転体(1)の内部側に円盤(1b)を円盤取付スペーサー(1d)で流路(13b)を確保する隙間を設けて取付けてある。円盤(1b)は円盤外周部(1c)が回転体(1)の回転中に供給された液状体で形成される滞留液表面(13a)から滞留液状体(13)の内部側に埋没するような外径サイズとなっている。これにより回転する回転体(1)に液状体が供給されると
図3のハッチングのように気体の無い流路(13b)と滞留液状体(13)が形成され、気体と接触させないで液状体を供給することにより気泡発生のない機構が提供される。本願発明を分かり易くする為に比較として従来の静止固定された供給ノズル(16)での気泡発生を説明する
図4を示す。
【実施例2】
【0038】
図5は、
図2の円盤(1b)の変形例として二段円盤(1ba)にしたもので、機能は同じく液状体の流路(13b)と供給口(1h)の位置を上下に任意設定させることができる。また、二段円盤(1ba)によらず多数段円盤でも可能である。
【実施例3】
【0039】
図6は、
図5の二段円盤(1ba)の変形例として放射配管(1g)にしたもので、機能は同じであるが、放射配管外周部(1ga)の液状体吐出方向を変えた
図7の放射配管(1g1)とすることにより、滞留液状体(13)の比重の大きい物質の体積分布を制御することができる。また、放射する配管の数はいくらでも可能である。
[気泡発生防止受液機構]
【0040】
気泡発生防止受液機構の実施例で示す
図8から
図21まで記載の回転体の流出口(1e)付近の形状と環状受液先端部(3a)と受液円錐筒(3b)および受液円筒(3b1)の変形例を含めた全ての形状は組合せが可能であるが、ここでは主な組合せを記載する。
【実施例4】
【0041】
図8は、回転体(1)の流出口(1e)から液状体を遠心方向の流出移動距離を最短にして気泡発生防止受液ユニット(3)に流出させるようにしたものである。気泡発生防止受液ユニット(3)は、環状受液先端部(3a)と受液円錐筒(3b)からなっており静止固定されている。回転体(1)の流出口(1e)と環状受液先端部(3a)の間は、隙間となっている。回転中の回転体(1)と環状受液先端部(3a)の隙間に液状体が侵入すると、その隙間が変化(製造上の加工組立の誤差による回転体の回転振れ)することに起因した液状体の圧縮と開放の繰り返しによる抵抗変化で振動が発生する。この振動を防止するために、環状受液先端部(3a)と回転体(1)が環状に最も接近する部位の対面面積が小さくなる形状とし、環状受液先端部(3a)が、軸方向の断面でみた最接近部の厚みがほぼ0mmで尖った先端形状(拡大した
図9を参照)となっている。
【0042】
この尖った先端形状は、上記の液状体の圧縮時の抵抗がほとんど無くなる(液状体を面のあるもので押すと反力が大きいが、尖ったもので押しても反力はほとんど無い。)ので、解放時との抵抗変化差(振動)を無視できるようになるので、結果として振動発生がなくなるので良い。
【0043】
環状受液先端部(3a)と回転体(1)が環状に最も接近する部位の対面面積が小さくなる形状としては、環状受液先端部(3a)と回転体(1)の両方または何れか一方が尖った先端形状をしていてよく、実施例として
図16および
図17に示しておく。
【0044】
静止固定された受液円錐筒(3b)は回転体から流入してきた液状体の回転を摩擦抵抗で減速させる。
【実施例5】
【0045】
図10は
図9の変形例で、環状受液先端部(3a2)の先端形状が上方向となっており、回転体の流出口(1e)付近の形状を変えている。
【実施例6】
【0046】
図11は
図10の変形例で、回転体の流出口(1e)付近の形状を変えている。
【実施例7】
【0047】
図12は
図9の変形例で、回転体の流出口(1e)付近の遠心方向の厚みを薄くする方法により、液状体の遠心方向の流出移動距離を短くしている。
【実施例8】
【0048】
図13は
図9の変形例で、環状受液先端部(3a3)と受液円錐筒を一体化した形状で受液円錐筒を延長した簡易な形状としている。
【実施例9】
【0049】
図14は
図13の変形例で、回転体(1)と環状受液先端部(3a4)の位置関係を変え、環状受液先端部(3a4)の形状及び回転体(1)の流出口(1e)付近の形状を変えている。
【実施例10】
【0050】
図15は回転体(1)と環状受液先端部(3a5)を軸受(18)としてベアリングを用いて繋いだ形態としている。これにより、液状体が遠心方向の流出移動距離を0mmとした回転体(1)から静止固定された環状受液先端部(3a5)に流出することができ、振動の起因となる隙間もない。
【実施例11】
【0051】
図16は回転体(1)に軸方向の断面でみた厚みがほぼ0mmで尖った先端形状を設けた変形例を示す。
このように尖った先端形状は、環状受液先端部(3a6)になくとも回転体(1)に設けても振動防止が可能となり遠心方向の流出移動距離を短く設定できる。
【実施例12】
【0052】
図17は回転体(1)および環状受液先端部(3a)の軸方向の断面でみた厚みがほぼ0mmで尖った先端形状を設けた変形例を示す。このように尖った先端形状は、回転体(1)および環状受液先端部(3a)の両方に設けても効果的な振動防止が可能となり遠心方向の流出移動距離を短く設定できる。
【実施例13】
【0053】
図18は
図8の受液円錐筒(3b)を受液円筒(3b1)に置換えた変形例を示す。
図19には環状受液先端部(3a1)と回転体(1)の流出口(1e)付近の拡大図を示す。
【0054】
尚、受液円筒(3b1)の形態における環状受液先端部(3a1)および回転体(1)の形状関係は
図9から
図17に記載したものと同じ組合せが可能であるので、受液円錐筒(3b)を受液円筒(3b1)に置換えた記載は割愛する。
【0055】
尚、上記実施例では、請求項1を含めた気泡発生防止受液機構としているが、従来ノズル等でも良い。
【実施例14】
【0056】
図20は、
図8の変形例で気泡発生防止受液ユニット(3)である環状受液先端部(3a)と受液円錐筒(3b)を回転体上蓋部(1a)側(上部側)に静止固定されたもので、回転体上蓋部(1a)には集液円筒部(19)を設けて、円形開口部(1ea)と流出口(1e)を確保している。これにより回転体(1)の下部側に気泡発生防止受液ユニット(3)を設けた場合と同等な機能を得る事ができる。ここで、流出口(1e)から流出した液状体は、凄まじい遠心力により受液円錐筒(3b)を斜め上方に容易く上昇する。また、供給口(1h)は、流出口(1e)から離れた形態とするため下げられている。
図21には、集液円筒部(19)と円形開口部(1ea)と流出口(1e)およびを環状受液先端部(3a)の拡大図を示す。
【0057】
この
図20のように気泡発生防止受液ユニット(3)を上部側に設けた場合でも、
図9〜
図17に示す環状受液先端部と回転体(1)の流出口(1e)付近形状の組合せを用いる事ができる。
【0058】
図22は、
図20の変形例で液状体を下から供給して、回転体(1)の駆動とは別体の駆動(動力源は同じでも良い)で、回転体(1)と同じ回転数で二段円盤(1ba)を回転させ
図20と同等の機能としている。
【0059】
尚、上記実施例での液状体供給管兼回転シャフト(2)の強制回転は、モーターに限らず、動力方法は問わない。
【0060】
[効果の確認]
回転体の内部に、本願発明および従来のノヅルによる供給方法で、消泡しにくい粘度40センチストークスの研削油を液状体として供給して気泡発生の比較をした。
【0061】
研削油を連続供給した回転体から採取した研削油をビーカーに入れて目視したところ、従来のノヅルでは気泡発生の為に白濁しており、本願発明は透明で気泡発生が無い事が分かった。
【0062】
さらに自然消泡を待って体積変化を確認したところ、従来のノヅルは2〜3%の体積減少があったが、本願発明は体積変化が無く気泡発生が無いことが体積変化でも確認できた。
【0063】
つぎに高速の回転体から研削油を透明なアクリル製の気泡発生防止受液ユニットに供給し、気泡発生について観察したところ、研削油は気泡が少なく、ほぼ透明な状態で円錐筒の内面を旋回しながら減速している事を確認した。さらに、採取した研削油を気泡崩壊させる為に1時間放置して体積を確認したところ、体積変化はほぼ無く気泡が少ない事を確認した。
【0064】
これらの結果から、本願発明の気泡発生防止液状体供給機構および気泡発生防止受液機構は、それぞれ気泡発生が少ない事が分かり、どちらか一つの機構を用いても許容可能な効果がある。また両方の機構を組合せれば、気泡の少ない遠心分離が可能で、大きな消泡用タンク、消泡剤および消泡設備等を必要としないので、機械加工のみならず食品加工などの多様な業種で使用できる。