【文献】
Arild Fuldseth et al.,Tiles,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,6th Meeting: Torino, IT,2011年 7月,JCTVC-F335,pp.1-15
【文献】
Chia-Yang Tsai et al.,AHG4: Non-cross-tiles loop filtering for independent tiles,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,7th Meeting: Geneva, CH,2011年11月,JCTVC-G194_r5,pp.1-6
【文献】
Ye-Kui Wang et al.,Dependency and loop filtering control over tile boundaries,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,7th Meeting: Geneva, CH,2011年11月,JCTVC-G317,pp.1-7
【文献】
Hisao Sasai et al.,On Deblocking process simplification for slice and tile boundaries,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,9th Meeting: Geneva, CH,2012年 5月,JCTVC-I0140,pp.1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の概要)
本発明の一態様に係る画像復号方法は、画像の空間領域を分割するための情報を持つビットストリームを復号する画像復号方法であって、ビットストリームから係数と復号に必要なパラメタとを得て、前記係数を逆量子化および逆変換して差分値を生成する逆量子化逆変換ステップと、符号化済みの画素値を用いて予測を行う予測ステップと、予測結果と前記差分値とを加算して復号画像を生成する復号ステップと、前記復号画像の画素値にフィルタ処理を行うフィルタステップと、前記フィルタ処理の方法を切り替える切り替えステップとを含み、前記切り替えステップにおいては、前記空間領域を分割するための情報に基づいて、前記フィルタ処理の方法を切り替える。
【0013】
例えば、前記予測ステップでは、前記フィルタ処理の結果を用いずに前記予測を行ってもよい。
【0014】
例えば、前記切り替えステップでは、さらに、前記フィルタ処理の方法の切り替えを示す情報を前記ビットストリームから得てもよい。
【0015】
例えば、前記切り替えステップでは、分割境界毎に前記フィルタ処理の方法を切り替えてもよい。
【0016】
例えば、前記切り替えステップでは、分割境界の水平方向および垂直方向で異なる方法に切り替えてもよい。
【0017】
例えば、分割境界に施す所定のフィルタ処理は、ブロックノイズを低減するフィルタのみであってもよい。
【0018】
例えば、分割境界に施す所定のフィルタ処理は、ピクチャ境界と同一のフィルタ処理に加えて、画素値情報のみを用いたフィルタ処理であってもよい。
【0019】
本発明の一態様に係る画像符号化方法は、画像信号を空間領域に分割しながら符号化する画像符号化方法であって、前記画像信号の予測信号を生成する予測ステップと、前記画像信号と前記予測信号の差分信号を得る差分ステップと、前記差分信号を変換および量子化して変換係数情報を取得する変換量子化ステップと、前記変換係数情報を可変長符号化する可変長符号化ステップと、前記変換係数情報を用いて局所復号を行い、再構成画像を生成する再構成ステップとを含み、前記可変長符号化ステップでは、復号側で前記再構成画像の前記空間領域を分割するための情報に基づいて、フィルタ処理の方法の切り替えを示す情報をビットストリームに記録する。
【0020】
例えば、前記フィルタ処理の方法は少なくとも1つ以上の種類をもち、前記再構成画像の分割境界に施す所定のフィルタ処理の方法は、フィルタ処理を行わないことを含んでもよい。
【0021】
例えば、分割境界に施す所定のフィルタ処理は、少なくとも1つ以上の種類をもち、前記可変長符号化ステップでは、映像信号が分割境界をまたがる場合には、前記分割境界にフィルタ処理を行わないことを示す情報をビットストリームに記録してもよい。
【0022】
例えば、前記可変長符号化ステップでは、分割境界に施す所定のフィルタ処理が、ブロックノイズを低減するフィルタのみであることを示す情報をビットストリームに記録してもよい。
【0023】
例えば、前記可変長符号化ステップでは、色信号の分割境界に対してのフィルタ処理を他の信号の分割境界に対してのフィルタ処理と区別することを示す情報をビットストリームに記録してもよい。
【0024】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0025】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0027】
(実施の形態1)
実施の形態1では、並列復号処理可能な復号処理装置で、並列に復号し、並列処理した画像信号を再構成した際に発生する境界歪みを除去する方法について説明する。
【0028】
まずは、
図1で示した、タイル境界の先頭に必ずスライスヘッダがある構造の場合について説明する。タイルは画面を均等に矩形状に分割することができるため、上隣接の領域が短く、例えば横方向が大きい(4Kや8Kと呼ばれる解像度の)画像では、必要なメモリサイズを少なくできるという利点もあり、かつタイル領域内の画素値が均等に分割しやすいため、並列処理を行いやすい。このため、タイルの先頭から並列復号を開始することが、効率的に並列復号するために重要となる。この場合に歪み削除の対象とすべき境界はスライス境界となる。
【0029】
次に
図2で示した、スライスの中に複数のタイルがある構造の場合について説明する。タイルは画面を均等に矩形状に分割することができるため、上隣接の領域が短く、例えば横方向が大きい(4Kや8Kと呼ばれる解像度の)画像では、必要なメモリサイズを少なくできるという利点もあり、かつタイル領域内の画素値が均等に分割しやすいため、並列処理を行いやすい。この場合に歪み削除の対象とすべき境界はタイル境界となる。
【0030】
図3A〜
図3Cは、
図1の構成の映像を復号する場合の従来の復号方法を説明するための概要図である。
図3Aは、領域A、B、C、Dそれぞれの処理順番と、その境界部分の画素を詳細に説明するための説明図である。ここで示す境界部分(4画素x4画素の部分)に対して境界歪み除去処理が施される。
図3Bは、領域A、B、C、Dを並列に復号する場合の従来の構成の一例を示すブロック図である。この復号装置は、復号部DEC1、DEC2、DEC3、DEC4と、その復号結果を一時格納するフレームメモリFrameMemoryおよび、Filter処理に必要な情報(例えば予測モード、MV、係数ありなし、量子化パラメタQP)を格納する格納部、Filter処理部から構成される。この動作について
図4を用いて説明する。
【0031】
ビットストリームBSを取得し、そこから領域情報を取得する(S401)。領域情報に基づき各復号部で領域nを復号処理し(S402)、薄いグレーで示す領域(Tile境界)の部分に関するフィルタ処理情報を格納部に格納する(S403)。一方、領域nの画素情報については、一時格納用のフレームメモリに格納する(S404)。全ての領域の復号処理が終了していなければ(S405でNO)、残った領域の復号処理を継続する。一方、全ての領域の処理が終了すれば(S405でYES)、次に、Filter処理部では、格納部から得られる情報を元に、フレームメモリから得られる画素に対してフィルタ処理を行い(S406)、復号画像OUTを出力する。
【0032】
なお、復号部DEC1〜4に当たる部分については、1つのDEC処理部で処理してもよい。この例の構成は
図3Cとなる。なお、どちらの場合であっても結果は同じであり、格納部、Filter処理部の動作については
図3Bの構成と同じであるため、詳しい説明は省略する。
【0033】
前述の従来の構成では、復号処理DEC1〜4またはDEC処理の後、さらに格納部の情報を用いたFilter処理が必要であり、また次のフレームの予測画像生成にこのフィルタ済みの映像が必要であるため、高速に処理を行う必要があるため、回路規模を大きくする、もしくは動作周波数を上げるといった工夫が必要という課題があった。
【0034】
このため、本実施の形態の復号方法では、歪み処理を行った映像を予測に用いないという点で異なる。
【0035】
図5は、実施の形態1における画像復号装置の構成の一例を示すブロック図である。この復号装置は、復号部DEC1、DEC2、DEC3、DEC4と、その復号結果を一時格納するフレームメモリFrameMemoryおよび、Filter処理をビットストリームの情報に応じて切り替え情報取得部から構成される。この構成の動作の流れについて
図6を用いて説明する。
【0036】
ビットストリームBSを取得し、そこから領域情報(空間領域を分割するための情報)を取得する(S601)。領域情報に基づき各復号部で領域nを復号処理し(S602)、領域nの画素情報について、一時格納用のフレームメモリに格納する(S603)。全ての領域の復号処理が終了していなければ(S604でNO)、残った領域の復号処理を継続する。一方、全ての領域の処理が終了すれば(S604でYES)、この復号画像が入ったフレームメモリの情報を次のフレーム等の予測に用いるため、動画復号としては、次のフレームの処理に遷移することができる。一方、出力画像を生成するステップとして、次に、切り替え情報取得部はビットストリームBSから取得した切り替え情報(フィルタ処理の方法の切り替えを示す情報)により、対象とする境界にフィルタをかけるかどうかを判断する(S605)。フィルタを掛ける場合(S605でYES)、Filter処理部では、ビットストリームから得られるフィルタ情報(もしくは予め決められた強度情報など)に基づき、フレームメモリから得られる画素に対してフィルタ処理を行う(S607)。一方、境界フィルタを掛けない場合には(S605でNO)、フィルタ処理を施さない。全ての境界に対して境界処理(フィルタを掛ける/掛けない)を終了していない場合(S608でNO)、次の境界処理を行う。全ての境界処理が終了した場合(S608でYES)、復号画像OUTを出力する。
【0037】
このような構成をとることにより、各境界の周辺の情報を格納するための格納部を省略することができるため、回路構成を削減でき、また、フィルタを掛ける場合にのみフィルタの切り替え情報(強度切り替え情報)を復号することもできるため、復号に必要な情報量を削減することができ、またフィルタを掛ける境界毎に画質を考慮したフィルタを掛けることができる。また、フィルタ処理前のフレームメモリの内容を予測に使うため、次のフレームの復号処理を開始できるため、動作速度を速めることができる。
【0038】
図7は、従来の復号装置に境界処理部205を加えた構成を示すブロック図である。入力されたビットストリームは単位ごとに復号・逆量子化・逆変換を行い、フレームメモリ201に格納されている既に符号化済の同一ピクチャ内もしくは対象ブロックとは異なるピクチャの画素を参照してイントラ符号化ならイントラ予測部、インター符号化ならインター予測部で予測画素値を算出し、逆変換して得られた差分値と予測画素値とを足し合わせることで再構成画素を得る。この再構成画素はDBF部202、SAO部203、ALF部204において、フィルタ処理を行いフレームメモリ201に格納されるとともに出力される。このときDBF(Deblocking filter)、SAO(Sample Adaptive Offset)、ALF(Adaptive Loop Filter)の各処理は実施されないこともある。
【0039】
なお、DBF部202は、非特許文献1の8.7節「Deblocking filter process」、または、HEVC(非特許文献2)の8.7.1節「Deblocking filter process」に記載されているDBF処理を実行する。DBF処理は処理対象の画素だけでなく、その画素が属するブロックの符号化モードや動きベクトル(MV)、量子化時の係数ありなし、量子化パラメタ(QP)などをフィルタ処理の情報として必要とし、これによってフィルタの強度を3段階Strong、Weak2pel、Weak1pelから選択して適用している。
図8にDBF処理のフィルタ強度判定フローを示す。
【0040】
また、SAO部203はHEVC(非特許文献2)の8.7.2節「Sample Adaptive Offset process」に記載されているSAO処理を実行する。また、ALF部204は8.7.2節「Adaptive Loop Filter process」に記載されているALF処理を実行する。SAO処理はDBF処理のように対象画素が属する符号化モード等の情報を必要としないが、対象画素と隣接する画素および対象画素が属する位置のSAOオフセット情報を処理の情報として必要とする。本実施の形態の境界処理部205は、フレームメモリ201の復号映像とは別に、出力用の画像だけを書き換える形に備えている。なお、ビットストリームから得られるフィルタ切り替え情報を別途ビットストリームから入力する。
【0041】
このようにして本実施の形態に係る画像復号装置及び画像復号方法は、正しく復号することができる。
【0042】
また、これらの構成により、映像に合わせてフィルタ処理を制御することを可能にするため、画質劣化を抑制することができる。
【0043】
(実施の形態2)
実施の形態2では、境界歪みの除去の方法を示す情報のデータ構造について説明する。まず、
図9Aは、従来の境界とは無関係に規定された補助情報セット(SEI)と呼ばれる、復号のループ外での処理を規定したヘッダ情報を示している。なお、各パラメタの詳細については、特に説明が無い場合には、非特許文献2記載の方法で動作するとする。
図9Bは、
図9Aの構造の中の、filter_hint_typeの値(Value)の意味を示す表である。ここで値が3となる場合については、将来のための予備として確保されていることがわかる。なお、他の値の場合については、非特許文献2のとおりである。
【0044】
次に、本実施の形態の境界歪みの除去の方法を示す情報のデータ構造を
図10Aを用いて説明する。
【0045】
図10Aは、従来のデータ構造を維持しつつ、前述の予備値を用いて境界フィルタ用に拡張した場合の境界歪みの除去の方法を示す情報の例である。特に説明が無い、
図9Aに記載のパラメタについては、非特許文献2記載の方法で動作するとする。
【0046】
ここで、
図10Bは、新たに定義されるfilter_hint_typeの値の意味である。filter_hint_typeが3となる、すなわちこのSEI情報が、タイルもしくはスライスの境界に対するフィルタである場合には、across_filter_typeとするタイル境界、スライス境界のどちらにフィルタ処理をするかどうかを示すパラメタを符号化/復号する。これは例えば
図10Cで示す組合せとして定義できる。これはacross_filter_typeのパラメタ値が0の場合は、どちらの境界に対してもフィルタを掛けないことを示し、通常は使われない(このため、これを将来の拡張用の予備値として使ってもよい)。
【0047】
なお、値の0から3の並びに特に意味はなく、どのような順番でもよいし、例えば
図10Dのように構成してもよい。この場合、スライス、タイルどちらにフィルタをかけるかをそれぞれacross_tile_filter_flag、across_slice_filter_flagによって切替る。また、一方が0の場合には他方は1である関係(既に上位のパラメタであるfilter_hint_typeにより、境界フィルタであることが分かっているため、省略してもよい。ただ、高速復号を考えた場合条件を入れず、並列としてもよい。なお、パラメタの順番は逆であってもよい。
【0048】
また、従来のデータ構造では、colour_componentすなわち色情報に応じて3種類のフィルタを伝送するようにできていたが、境界フィルタに関しては、前述のfilter_hint_typeが3以外の場合には、全ての画素に係ることに比較して、フィルタ処理がかかる領域が少ない。また、目的として境界歪みを除去する低域通過型のフィルタであればよいため、色情報毎にフィルタを変えることによる効果よりも、ヘッダ情報の増加の負担が多い場合がある。
【0049】
そのため、係る課題を解決するために
図10Eで示すようなデータ構造をとっても良い。これは、colour_filter_flagにより、フィルタの数Nを変更する例である。なお、このフラグが規定されていない場合には、フィルタ数を示すN=3と定義する。
【0050】
colour_filter_flagが1の場合には、N=3として、各色に対して別々のフィルタを定義し、colour_filter_flagが0の場合には、N=1として全てに同じフィルタを施すこととする。なお、colour_filter_flagが1の場合にN=2として、輝度と色差信号の2種類を切り替えることにして、フィルタ情報を削減してもよいし、colour_filter_flagをフラグではなく、Nの数値として定義してもよい。ここでの特徴としては、フィルタ数を制御する構造を規定することにある。
【0051】
なお、
図10A〜
図10Eでは、filter_hint_typeの予備値を用いる場合について説明したが、additional_extension_flagという別の拡張用のフラグを用いて規定してもよい。この場合の例を
図11A〜
図11Cを用いて説明する。なお、
図10A〜
図10Eで規定したフィルタ係数を伝送する仕組みをadditional_extension_flagが1の場合に全て規定してもよい。この場合の説明は、
図10A〜
図10Eと同様であるため省略する。
図11Aでは、拡張用のadditiona_extension_flagが1となる場合に、前述across_filter_typeを
図11Bとして定義し(なお、前述の
図10A〜
図10Eと同様に別々のフラグとしてもよい)、加えてデブロックフィルタの強度変化を示すパラメタbeta_offset_div2とtc_offset_div2を符号化してもよい。なお、このパラメタの定義については、非特許文献1に記載のもとの同様とする。なお、デブロックフィルタの強度決定に用いる量子化パラメタとしては、各タイル、およびスライスの代表値としてもよいし、ここに新たにデブロックフィルタ用のQP値を符号化してもよい。
【0052】
図11Cは、例えばTile境界にフィルタを掛ける場合に、各タイルの境界に掛けるかどうかの情報を構成した場合の例であり、loop_filter_v_across_tiles_enabled_flagが1を示す場合には、右側に隣接する境界にフィルタを掛けることを意味し、0の場合にはフィルタを掛けないことを意味する。同様に、loop_filter_h_across_tiles_enabled_flagが1を示す場合には、下側に隣接する境界にフィルタを掛けることを意味し、0の場合にはフィルタを掛けないことを意味する。
【0053】
このようにタイル境界それぞれにフィルタを掛ける掛けないを示す情報を符号化することにより画質を向上させることができる。
【0054】
なお、本実施の形態のデータ構造をとる場合の復号方法の動作例を
図12を用いて説明する。
【0055】
まず、SEI情報を取得する(S1201)。次にSEI情報の中から、TileもしくはSlice境界に対するフィルタ処理かどうかを判断する(S1202)。なお、ここでの判断の方法は、例えば
図10A〜
図10Eの場合には、filter_hint_typeであるし、
図11A〜
図11Cの場合には、additional_extension_flagによって決める。なお、従来の全ての画素にかけるポストフィルタ処理の場合には(S1202でNO)、例えば非特許文献1に記載の方法でフィルタ処理をおこなう(S1203)。境界にかけるフィルタ処理の場合(S1202でYES)、フィルタに必要な情報を取得する(S1204)。ここでフィルタに必要な情報とは、
図10A〜
図10Eの場合には、フィルタの数(色信号によって切替)や、タイル、スライスのどちらの境界にかけるかどうか等の情報であるし、
図11A〜
図11Cの場合では、デブロックフィルタの強度を決める情報や、量子化パラメタ情報、タイルの位置、どの境界にかけるかどうかの情報である。復号装置によって復号された復号画像を取得した後(S1205)、取得した情報に基づいて境界に対してフィルタ処理を施す(S1206)。これにより、復号画像の画質をより向上させることができる。
【0056】
また、前述の
図10A〜
図10Eと
図11A〜
図11Cとではフィルタに必要な情報を別々のもので説明したが、これによらない。組み合わせて用いたとしても、復号画像をポストフィルタ処理することに変わらず、画質を向上できる。
【0057】
また、ここでは、既に規定されているpost_filter_hintSEIに追加する形で定義をしたが、これに限らない。予備値が選択された条件の部分を抜き出して新たに、例えばpost_across_filterSEIとして別に定義をしてもよい。これにより明確にSEIの用途が区分できるため、将来のアプリケーションで規定する場合に目的を明確化でき、符号化装置、復号装置を簡略化できる可能性がある。
【0058】
このように、符号化側で示された本実施の形態のデータ構造を用いることで、出力画像の画質を向上させることができ、なお、復号装置の回路規模を削減することができる。
【0059】
(実施の形態3)
実施の形態3では、前述のデータ構成のビットストリームを生成する符号化装置について説明する。
【0060】
図13は、実施の形態3の符号化方法を実現する符号化装置の一例を示すブロック図である。入力された対象画像信号は、符号化単位ごとに処理される。フレームメモリ101に格納されている、既に符号化済の同一ピクチャ内もしくは対象ブロックとは異なるピクチャの画素を参照してイントラ符号化ならイントラ予測部、インター符号化ならインター予測部で予測画素値を算出し、入力信号との差分が変換・量子化・符号化されビットストリームが生成される。また、量子化された係数は逆量子化・逆変換を経た後、差分値と足し合わされ再構成画素を生成し、その後DBF部102、SAO部103、ALF部104といったフィルタ処理を行いフレームメモリ101に格納される。このときDBF、SAO、ALFの各処理は実施されないこともある。
【0061】
図13で示したDBF部102は非特許文献2の8.7節「Deblocking filter process」に記載されている処理であったり、HEVC(非特許文献2)の8.7.1節「Deblocking filter process」に記載されている処理である。DBFは処理対象の画素だけでなく、その画素が属するブロックの符号化モードや動きベクトル(MV)、量子化時の係数ありなし、量子化パラメタ(QP)などをフィルタ処理の情報として必要とし、これによってフィルタの強度を3段階Strong、Weak2pel、Weak1pelから選択して適用している。
図8に従来のDBFのフィルタ強度判定フローを示す。
【0062】
また、SAO部103はHEVC(非特許文献2)の8.7.2節「Sample Adaptive Offset process」、ALF部104は8.7.2節「Adaptive Loop Filter process」に記載されている処理である。SAOはDBFのように対象画素が属する符号化モード等の情報は必要ないが、対象画素と隣接する画素および対象画素が属する位置のSAOオフセット情報を処理の情報として必要とする。なお、符号化側では、フレームメモリに格納される境界歪みを含む画像信号に対しては、歪み除去を実行する必要がないため、境界フィルタ処理部はない。ただし、本実施の形態の境界処理を示す情報の符号化は、符号化部によって行われる。
【0063】
ここでは、フィルタ処理を決定する場合の動作について
図14を用いて説明する。
【0064】
予め決めた方法で決定したタイルまたは/およびスライス形状情報を取得する(S1401)。次に、実施の形態2で示すどのフィルタ情報を符号化するかどうかを決定する(S1402)。またそのフィルタの処理方法(ON/OFF、フィルタ係数など)を決定し(S1403)、フィルタ処理関連情報(前述の情報)を補助情報として
図12に示す符号化部によりエントロピー符号化されビットストリームに記録する(S1404)。
【0065】
なお、より復号画像の画質向上を図るために、フィルタ情報の決定やフィルタ処理方法の決定には、入力画像(符号化前の原信号)とフィルタ処理後の画像を比較し、その差分値(D)と、補助情報に必要なビットストリーム中の符号量(R)と、ラグランジュ係数λから得られるコスト関数C=D+λRによって、コスト関数Cが小さくなるようにフィルタ情報、フィルタ処理方法を決定してもよい。
【0066】
また、上記のコスト関数Cでは、主観的な歪みが残るという場合もあるため、周囲との平滑度を測定し、平滑度を上げる(なめらかにする)ことを主題として、前記フィルタ情報、フィルタ処理方法を決定してもよい。
【0067】
これにより、映像に合わせたフィルタの切り替えを可能にするため、画質劣化を抑制し画質を向上することが可能となる。
【0068】
以上、1つまたは複数の態様に係る画像符号化装置および画像復号装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0069】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記各実施の形態の画像復号装置または画像符号化装置などを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
【0070】
すなわち、このプログラムは、コンピュータに、画像の空間領域を分割するための情報を持つビットストリームを復号する画像復号方法であって、ビットストリームから係数と復号に必要なパラメタとを得て、前記係数を逆量子化および逆変換して差分値を生成する逆量子化逆変換ステップと、符号化済みの画素値を用いて予測を行う予測ステップと、予測結果と前記差分値とを加算して復号画像を生成する復号ステップと、前記復号画像の画素値にフィルタ処理を行うフィルタステップと、前記フィルタ処理の方法を切り替える切り替えステップとを含み、前記切り替えステップにおいては、前記空間領域を分割するための情報に基づいて、前記フィルタ処理の方法を切り替える、画像復号方法を実行させる。
【0071】
また、このプログラムは、コンピュータに、画像信号を空間領域に分割しながら符号化する画像符号化方法であって、前記画像信号の予測信号を生成する予測ステップと、前記画像信号と前記予測信号の差分信号を得る差分ステップと、前記差分信号を変換および量子化して変換係数情報を取得する変換量子化ステップと、前記変換係数情報を可変長符号化する可変長符号化ステップと、前記変換係数情報を用いて局所復号を行い、再構成画像を生成する再構成ステップとを含み、前記可変長符号化ステップでは、復号側で前記再構成画像の前記空間領域を分割するための情報に基づいて、フィルタ処理の方法の切り替えを示す情報をビットストリームに記録する、画像符号化方法を実行させる。
【0072】
(実施の形態4)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)または動画像復号化方法(画像復号方法)の構成を実現するためのプログラムを記憶メディアに記録することにより、上記各実施の形態で示した処理を独立したコンピュータシステムにおいて簡単に実施することが可能となる。記憶メディアは、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ICカード、半導体メモリ等、プログラムを記録できるものであればよい。
【0073】
さらにここで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)や動画像復号化方法(画像復号方法)の応用例とそれを用いたシステムを説明する。当該システムは、画像符号化方法を用いた画像符号化装置、及び画像復号方法を用いた画像復号装置からなる画像符号化復号装置を有することを特徴とする。システムにおける他の構成について、場合に応じて適切に変更することができる。
【0074】
図15は、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムex100の全体構成を示す図である。通信サービスの提供エリアを所望の大きさに分割し、各セル内にそれぞれ固定無線局である基地局ex106、ex107、ex108、ex109、ex110が設置されている。
【0075】
このコンテンツ供給システムex100は、インターネットex101にインターネットサービスプロバイダex102および電話網ex104、および基地局ex106からex110を介して、コンピュータex111、PDA(Personal Digital Assistant)ex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115などの各機器が接続される。
【0076】
しかし、コンテンツ供給システムex100は
図15のような構成に限定されず、いずれかの要素を組合せて接続するようにしてもよい。また、固定無線局である基地局ex106からex110を介さずに、各機器が電話網ex104に直接接続されてもよい。また、各機器が近距離無線等を介して直接相互に接続されていてもよい。
【0077】
カメラex113はデジタルビデオカメラ等の動画撮影が可能な機器であり、カメラex116はデジタルカメラ等の静止画撮影、動画撮影が可能な機器である。また、携帯電話ex114は、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式、若しくはLTE(Long Term Evolution)方式、HSPA(High Speed Packet Access)の携帯電話機、またはPHS(Personal Handyphone System)等であり、いずれでも構わない。
【0078】
コンテンツ供給システムex100では、カメラex113等が基地局ex109、電話網ex104を通じてストリーミングサーバex103に接続されることで、ライブ配信等が可能になる。ライブ配信では、ユーザがカメラex113を用いて撮影するコンテンツ(例えば、音楽ライブの映像等)に対して上記各実施の形態で説明したように符号化処理を行い(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置として機能する)、ストリーミングサーバex103に送信する。一方、ストリーミングサーバex103は要求のあったクライアントに対して送信されたコンテンツデータをストリーム配信する。クライアントとしては、上記符号化処理されたデータを復号化することが可能な、コンピュータex111、PDAex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115等がある。配信されたデータを受信した各機器では、受信したデータを復号化処理して再生する(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)。
【0079】
なお、撮影したデータの符号化処理はカメラex113で行っても、データの送信処理をするストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。同様に配信されたデータの復号化処理はクライアントで行っても、ストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。また、カメラex113に限らず、カメラex116で撮影した静止画像および/または動画像データを、コンピュータex111を介してストリーミングサーバex103に送信してもよい。この場合の符号化処理はカメラex116、コンピュータex111、ストリーミングサーバex103のいずれで行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。
【0080】
また、これら符号化・復号化処理は、一般的にコンピュータex111や各機器が有するLSIex500において処理する。LSIex500は、ワンチップであっても複数チップからなる構成であってもよい。なお、動画像符号化・復号化用のソフトウェアをコンピュータex111等で読み取り可能な何らかの記録メディア(CD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスクなど)に組み込み、そのソフトウェアを用いて符号化・復号化処理を行ってもよい。さらに、携帯電話ex114がカメラ付きである場合には、そのカメラで取得した動画データを送信してもよい。このときの動画データは携帯電話ex114が有するLSIex500で符号化処理されたデータである。
【0081】
また、ストリーミングサーバex103は複数のサーバや複数のコンピュータであって、データを分散して処理したり記録したり配信するものであってもよい。
【0082】
以上のようにして、コンテンツ供給システムex100では、符号化されたデータをクライアントが受信して再生することができる。このようにコンテンツ供給システムex100では、ユーザが送信した情報をリアルタイムでクライアントが受信して復号化し、再生することができ、特別な権利や設備を有さないユーザでも個人放送を実現できる。
【0083】
なお、コンテンツ供給システムex100の例に限らず、
図16に示すように、デジタル放送用システムex200にも、上記各実施の形態の少なくとも動画像符号化装置(画像符号化装置)または動画像復号化装置(画像復号装置)のいずれかを組み込むことができる。具体的には、放送局ex201では映像データに音楽データなどが多重化された多重化データが電波を介して通信または衛星ex202に伝送される。この映像データは上記各実施の形態で説明した動画像符号化方法により符号化されたデータである(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置によって符号化されたデータである)。これを受けた放送衛星ex202は、放送用の電波を発信し、この電波を衛星放送の受信が可能な家庭のアンテナex204が受信する。受信した多重化データを、テレビ(受信機)ex300またはセットトップボックス(STB)ex217等の装置が復号化して再生する(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)。
【0084】
また、DVD、BD等の記録メディアex215に記録した多重化データを読み取り復号化する、または記録メディアex215に映像信号を符号化し、さらに場合によっては音楽信号と多重化して書き込むリーダ/レコーダex218にも上記各実施の形態で示した動画像復号化装置または動画像符号化装置を実装することが可能である。この場合、再生された映像信号はモニタex219に表示され、多重化データが記録された記録メディアex215により他の装置やシステムにおいて映像信号を再生することができる。また、ケーブルテレビ用のケーブルex203または衛星/地上波放送のアンテナex204に接続されたセットトップボックスex217内に動画像復号化装置を実装し、これをテレビのモニタex219で表示してもよい。このときセットトップボックスではなく、テレビ内に動画像復号化装置を組み込んでもよい。
【0085】
図17は、上記各実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いたテレビ(受信機)ex300を示す図である。テレビex300は、上記放送を受信するアンテナex204またはケーブルex203等を介して映像データに音声データが多重化された多重化データを取得、または出力するチューナex301と、受信した多重化データを復調する、または外部に送信する多重化データに変調する変調/復調部ex302と、復調した多重化データを映像データと、音声データとに分離する、または信号処理部ex306で符号化された映像データ、音声データを多重化する多重/分離部ex303を備える。
【0086】
また、テレビex300は、音声データ、映像データそれぞれを復号化する、またはそれぞれの情報を符号化する音声信号処理部ex304、映像信号処理部ex305(本発明の一態様に係る画像符号化装置または画像復号装置として機能する)を有する信号処理部ex306と、復号化した音声信号を出力するスピーカex307、復号化した映像信号を表示するディスプレイ等の表示部ex308を有する出力部ex309とを有する。さらに、テレビex300は、ユーザ操作の入力を受け付ける操作入力部ex312等を有するインタフェース部ex317を有する。さらに、テレビex300は、各部を統括的に制御する制御部ex310、各部に電力を供給する電源回路部ex311を有する。インタフェース部ex317は、操作入力部ex312以外に、リーダ/レコーダex218等の外部機器と接続されるブリッジex313、SDカード等の記録メディアex216を装着可能とするためのスロット部ex314、ハードディスク等の外部記録メディアと接続するためのドライバex315、電話網と接続するモデムex316等を有していてもよい。なお記録メディアex216は、格納する不揮発性/揮発性の半導体メモリ素子により電気的に情報の記録を可能としたものである。テレビex300の各部は同期バスを介して互いに接続されている。
【0087】
まず、テレビex300がアンテナex204等により外部から取得した多重化データを復号化し、再生する構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、CPU等を有する制御部ex310の制御に基づいて、変調/復調部ex302で復調した多重化データを多重/分離部ex303で分離する。さらにテレビex300は、分離した音声データを音声信号処理部ex304で復号化し、分離した映像データを映像信号処理部ex305で上記各実施の形態で説明した復号化方法を用いて復号化する。復号化した音声信号、映像信号は、それぞれ出力部ex309から外部に向けて出力される。出力する際には、音声信号と映像信号が同期して再生するよう、バッファex318、ex319等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。また、テレビex300は、放送等からではなく、磁気/光ディスク、SDカード等の記録メディアex215、ex216から多重化データを読み出してもよい。次に、テレビex300が音声信号や映像信号を符号化し、外部に送信または記録メディア等に書き込む構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、制御部ex310の制御に基づいて、音声信号処理部ex304で音声信号を符号化し、映像信号処理部ex305で映像信号を上記各実施の形態で説明した符号化方法を用いて符号化する。符号化した音声信号、映像信号は多重/分離部ex303で多重化され外部に出力される。多重化する際には、音声信号と映像信号が同期するように、バッファex320、ex321等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。なお、バッファex318、ex319、ex320、ex321は図示しているように複数備えていてもよいし、1つ以上のバッファを共有する構成であってもよい。さらに、図示している以外に、例えば変調/復調部ex302や多重/分離部ex303の間等でもシステムのオーバフロー、アンダーフローを避ける緩衝材としてバッファにデータを蓄積することとしてもよい。
【0088】
また、テレビex300は、放送等や記録メディア等から音声データ、映像データを取得する以外に、マイクやカメラのAV入力を受け付ける構成を備え、それらから取得したデータに対して符号化処理を行ってもよい。なお、ここではテレビex300は上記の符号化処理、多重化、および外部出力ができる構成として説明したが、これらの処理を行うことはできず、上記受信、復号化処理、外部出力のみが可能な構成であってもよい。
【0089】
また、リーダ/レコーダex218で記録メディアから多重化データを読み出す、または書き込む場合には、上記復号化処理または符号化処理はテレビex300、リーダ/レコーダex218のいずれで行ってもよいし、テレビex300とリーダ/レコーダex218が互いに分担して行ってもよい。
【0090】
一例として、光ディスクからデータの読み込みまたは書き込みをする場合の情報再生/記録部ex400の構成を
図18に示す。情報再生/記録部ex400は、以下に説明する要素ex401、ex402、ex403、ex404、ex405、ex406、ex407を備える。光ヘッドex401は、光ディスクである記録メディアex215の記録面にレーザスポットを照射して情報を書き込み、記録メディアex215の記録面からの反射光を検出して情報を読み込む。変調記録部ex402は、光ヘッドex401に内蔵された半導体レーザを電気的に駆動し記録データに応じてレーザ光の変調を行う。再生復調部ex403は、光ヘッドex401に内蔵されたフォトディテクタにより記録面からの反射光を電気的に検出した再生信号を増幅し、記録メディアex215に記録された信号成分を分離して復調し、必要な情報を再生する。バッファex404は、記録メディアex215に記録するための情報および記録メディアex215から再生した情報を一時的に保持する。ディスクモータex405は記録メディアex215を回転させる。サーボ制御部ex406は、ディスクモータex405の回転駆動を制御しながら光ヘッドex401を所定の情報トラックに移動させ、レーザスポットの追従処理を行う。システム制御部ex407は、情報再生/記録部ex400全体の制御を行う。上記の読み出しや書き込みの処理はシステム制御部ex407が、バッファex404に保持された各種情報を利用し、また必要に応じて新たな情報の生成・追加を行うと共に、変調記録部ex402、再生復調部ex403、サーボ制御部ex406を協調動作させながら、光ヘッドex401を通して、情報の記録再生を行うことにより実現される。システム制御部ex407は例えばマイクロプロセッサで構成され、読み出し書き込みのプログラムを実行することでそれらの処理を実行する。
【0091】
以上では、光ヘッドex401はレーザスポットを照射するとして説明したが、近接場光を用いてより高密度な記録を行う構成であってもよい。
【0092】
図19に光ディスクである記録メディアex215の模式図を示す。記録メディアex215の記録面には案内溝(グルーブ)がスパイラル状に形成され、情報トラックex230には、予めグルーブの形状の変化によってディスク上の絶対位置を示す番地情報が記録されている。この番地情報はデータを記録する単位である記録ブロックex231の位置を特定するための情報を含み、記録や再生を行う装置において情報トラックex230を再生し番地情報を読み取ることで記録ブロックを特定することができる。また、記録メディアex215は、データ記録領域ex233、内周領域ex232、外周領域ex234を含んでいる。ユーザデータを記録するために用いる領域がデータ記録領域ex233であり、データ記録領域ex233より内周または外周に配置されている内周領域ex232と外周領域ex234は、ユーザデータの記録以外の特定用途に用いられる。情報再生/記録部ex400は、このような記録メディアex215のデータ記録領域ex233に対して、符号化された音声データ、映像データまたはそれらのデータを多重化した多重化データの読み書きを行う。
【0093】
以上では、1層のDVD、BD等の光ディスクを例に挙げ説明したが、これらに限ったものではなく、多層構造であって表面以外にも記録可能な光ディスクであってもよい。また、ディスクの同じ場所にさまざまな異なる波長の色の光を用いて情報を記録したり、さまざまな角度から異なる情報の層を記録したりなど、多次元的な記録/再生を行う構造の光ディスクであってもよい。
【0094】
また、デジタル放送用システムex200において、アンテナex205を有する車ex210で衛星ex202等からデータを受信し、車ex210が有するカーナビゲーションex211等の表示装置に動画を再生することも可能である。なお、カーナビゲーションex211の構成は例えば
図17に示す構成のうち、GPS受信部を加えた構成が考えられ、同様なことがコンピュータex111や携帯電話ex114等でも考えられる。
【0095】
図20Aは、上記実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いた携帯電話ex114を示す図である。携帯電話ex114は、基地局ex110との間で電波を送受信するためのアンテナex350、映像、静止画を撮ることが可能なカメラ部ex365、カメラ部ex365で撮像した映像、アンテナex350で受信した映像等が復号化されたデータを表示する液晶ディスプレイ等の表示部ex358を備える。携帯電話ex114は、さらに、操作キー部ex366を有する本体部、音声を出力するためのスピーカ等である音声出力部ex357、音声を入力するためのマイク等である音声入力部ex356、撮影した映像、静止画、録音した音声、または受信した映像、静止画、メール等の符号化されたデータもしくは復号化されたデータを保存するメモリ部ex367、又は同様にデータを保存する記録メディアとのインタフェース部であるスロット部ex364を備える。
【0096】
さらに、携帯電話ex114の構成例について、
図20Bを用いて説明する。携帯電話ex114は、表示部ex358及び操作キー部ex366を備えた本体部の各部を統括的に制御する主制御部ex360に対して、電源回路部ex361、操作入力制御部ex362、映像信号処理部ex355、カメラインタフェース部ex363、LCD(Liquid Crystal Display)制御部ex359、変調/復調部ex352、多重/分離部ex353、音声信号処理部ex354、スロット部ex364、メモリ部ex367がバスex370を介して互いに接続されている。
【0097】
電源回路部ex361は、ユーザの操作により終話及び電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各部に対して電力を供給することにより携帯電話ex114を動作可能な状態に起動する。
【0098】
携帯電話ex114は、CPU、ROM、RAM等を有する主制御部ex360の制御に基づいて、音声通話モード時に音声入力部ex356で収音した音声信号を音声信号処理部ex354でデジタル音声信号に変換し、これを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理し、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。また携帯電話ex114は、音声通話モード時にアンテナex350を介して受信した受信データを増幅して周波数変換処理およびアナログデジタル変換処理を施し、変調/復調部ex352でスペクトラム逆拡散処理し、音声信号処理部ex354でアナログ音声信号に変換した後、これを音声出力部ex357から出力する。
【0099】
さらにデータ通信モード時に電子メールを送信する場合、本体部の操作キー部ex366等の操作によって入力された電子メールのテキストデータは操作入力制御部ex362を介して主制御部ex360に送出される。主制御部ex360は、テキストデータを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して基地局ex110へ送信する。電子メールを受信する場合は、受信したデータに対してこのほぼ逆の処理が行われ、表示部ex358に出力される。
【0100】
データ通信モード時に映像、静止画、または映像と音声を送信する場合、映像信号処理部ex355は、カメラ部ex365から供給された映像信号を上記各実施の形態で示した動画像符号化方法によって圧縮符号化し(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置として機能する)、符号化された映像データを多重/分離部ex353に送出する。また、音声信号処理部ex354は、映像、静止画等をカメラ部ex365で撮像中に音声入力部ex356で収音した音声信号を符号化し、符号化された音声データを多重/分離部ex353に送出する。
【0101】
多重/分離部ex353は、映像信号処理部ex355から供給された符号化された映像データと音声信号処理部ex354から供給された符号化された音声データを所定の方式で多重化し、その結果得られる多重化データを変調/復調部(変調/復調回路部)ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理及び周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。
【0102】
データ通信モード時にホームページ等にリンクされた動画像ファイルのデータを受信する場合、または映像およびもしくは音声が添付された電子メールを受信する場合、アンテナex350を介して受信された多重化データを復号化するために、多重/分離部ex353は、多重化データを分離することにより映像データのビットストリームと音声データのビットストリームとに分け、同期バスex370を介して符号化された映像データを映像信号処理部ex355に供給するとともに、符号化された音声データを音声信号処理部ex354に供給する。映像信号処理部ex355は、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法に対応した動画像復号化方法によって復号化することにより映像信号を復号し(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)、LCD制御部ex359を介して表示部ex358から、例えばホームページにリンクされた動画像ファイルに含まれる映像、静止画が表示される。また音声信号処理部ex354は、音声信号を復号し、音声出力部ex357から音声が出力される。
【0103】
また、上記携帯電話ex114等の端末は、テレビex300と同様に、符号化器・復号化器を両方持つ送受信型端末の他に、符号化器のみの送信端末、復号化器のみの受信端末という3通りの実装形式が考えられる。さらに、デジタル放送用システムex200において、映像データに音楽データなどが多重化された多重化データを受信、送信するとして説明したが、音声データ以外に映像に関連する文字データなどが多重化されたデータであってもよいし、多重化データではなく映像データ自体であってもよい。
【0104】
このように、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法あるいは動画像復号化方法を上述したいずれの機器・システムに用いることは可能であり、そうすることで、上記各実施の形態で説明した効果を得ることができる。
【0105】
また、本発明はかかる上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
【0106】
(実施の形態5)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置と、MPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1など異なる規格に準拠した動画像符号化方法または装置とを、必要に応じて適宜切替えることにより、映像データを生成することも可能である。
【0107】
ここで、それぞれ異なる規格に準拠する複数の映像データを生成した場合、復号する際に、それぞれの規格に対応した復号方法を選択する必要がある。しかしながら、復号する映像データが、どの規格に準拠するものであるか識別できないため、適切な復号方法を選択することができないという課題を生じる。
【0108】
この課題を解決するために、映像データに音声データなどを多重化した多重化データは、映像データがどの規格に準拠するものであるかを示す識別情報を含む構成とする。上記各実施の形態で示す動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを含む多重化データの具体的な構成を以下説明する。多重化データは、MPEG−2トランスポートストリーム形式のデジタルストリームである。
【0109】
図21は、多重化データの構成を示す図である。
図21に示すように多重化データは、ビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム(PG)、インタラクティブグラフィックスストリームのうち、1つ以上を多重化することで得られる。ビデオストリームは映画の主映像および副映像を、オーディオストリーム(IG)は映画の主音声部分とその主音声とミキシングする副音声を、プレゼンテーショングラフィックスストリームは、映画の字幕をそれぞれ示している。ここで主映像とは画面に表示される通常の映像を示し、副映像とは主映像の中に小さな画面で表示する映像のことである。また、インタラクティブグラフィックスストリームは、画面上にGUI部品を配置することにより作成される対話画面を示している。ビデオストリームは、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠した動画像符号化方法または装置によって符号化されている。オーディオストリームは、ドルビーAC−3、Dolby Digital Plus、MLP、DTS、DTS−HD、または、リニアPCMのなどの方式で符号化されている。
【0110】
多重化データに含まれる各ストリームはPIDによって識別される。例えば、映画の映像に利用するビデオストリームには0x1011が、オーディオストリームには0x1100から0x111Fまでが、プレゼンテーショングラフィックスには0x1200から0x121Fまでが、インタラクティブグラフィックスストリームには0x1400から0x141Fまでが、映画の副映像に利用するビデオストリームには0x1B00から0x1B1Fまで、主音声とミキシングする副音声に利用するオーディオストリームには0x1A00から0x1A1Fが、それぞれ割り当てられている。
【0111】
図22は、多重化データがどのように多重化されるかを模式的に示す図である。まず、複数のビデオフレームからなるビデオストリームex235、複数のオーディオフレームからなるオーディオストリームex238を、それぞれPESパケット列ex236およびex239に変換し、TSパケットex237およびex240に変換する。同じくプレゼンテーショングラフィックスストリームex241およびインタラクティブグラフィックスex244のデータをそれぞれPESパケット列ex242およびex245に変換し、さらにTSパケットex243およびex246に変換する。多重化データex247はこれらのTSパケットを1本のストリームに多重化することで構成される。
【0112】
図23は、PESパケット列に、ビデオストリームがどのように格納されるかをさらに詳しく示している。
図23における第1段目はビデオストリームのビデオフレーム列を示す。第2段目は、PESパケット列を示す。
図23の矢印yy1、yy2、yy3、yy4に示すように、ビデオストリームにおける複数のVideo Presentation UnitであるIピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャは、ピクチャ毎に分割され、PESパケットのペイロードに格納される。各PESパケットはPESヘッダを持ち、PESヘッダには、ピクチャの表示時刻であるPTS(Presentation Time−Stamp)やピクチャの復号時刻であるDTS(Decoding Time−Stamp)が格納される。
【0113】
図24は、多重化データに最終的に書き込まれるTSパケットの形式を示している。TSパケットは、ストリームを識別するPIDなどの情報を持つ4ByteのTSヘッダとデータを格納する184ByteのTSペイロードから構成される188Byte固定長のパケットであり、上記PESパケットは分割されTSペイロードに格納される。BD−ROMの場合、TSパケットには、4ByteのTP_Extra_Headerが付与され、192Byteのソースパケットを構成し、多重化データに書き込まれる。TP_Extra_HeaderにはATS(Arrival_Time_Stamp)などの情報が記載される。ATSは当該TSパケットのデコーダのPIDフィルタへの転送開始時刻を示す。多重化データには
図24下段に示すようにソースパケットが並ぶこととなり、多重化データの先頭からインクリメントする番号はSPN(ソースパケットナンバー)と呼ばれる。
【0114】
また、多重化データに含まれるTSパケットには、映像・音声・字幕などの各ストリーム以外にもPAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)、PCR(Program Clock Reference)などがある。PATは多重化データ中に利用されるPMTのPIDが何であるかを示し、PAT自身のPIDは0で登録される。PMTは、多重化データ中に含まれる映像・音声・字幕などの各ストリームのPIDと各PIDに対応するストリームの属性情報を持ち、また多重化データに関する各種ディスクリプタを持つ。ディスクリプタには多重化データのコピーを許可・不許可を指示するコピーコントロール情報などがある。PCRは、ATSの時間軸であるATC(Arrival Time Clock)とPTS・DTSの時間軸であるSTC(System Time Clock)の同期を取るために、そのPCRパケットがデコーダに転送されるATSに対応するSTC時間の情報を持つ。
【0115】
図25はPMTのデータ構造を詳しく説明する図である。PMTの先頭には、そのPMTに含まれるデータの長さなどを記したPMTヘッダが配置される。その後ろには、多重化データに関するディスクリプタが複数配置される。上記コピーコントロール情報などが、ディスクリプタとして記載される。ディスクリプタの後には、多重化データに含まれる各ストリームに関するストリーム情報が複数配置される。ストリーム情報は、ストリームの圧縮コーデックなどを識別するためストリームタイプ、ストリームのPID、ストリームの属性情報(フレームレート、アスペクト比など)が記載されたストリームディスクリプタから構成される。ストリームディスクリプタは多重化データに存在するストリームの数だけ存在する。
【0116】
記録媒体などに記録する場合には、上記多重化データは、多重化データ情報ファイルと共に記録される。
【0117】
多重化データ情報ファイルは、
図26に示すように多重化データの管理情報であり、多重化データと1対1に対応し、多重化データ情報、ストリーム属性情報とエントリマップから構成される。
【0118】
多重化データ情報は
図26に示すようにシステムレート、再生開始時刻、再生終了時刻から構成されている。システムレートは多重化データの、後述するシステムターゲットデコーダのPIDフィルタへの最大転送レートを示す。多重化データ中に含まれるATSの間隔はシステムレート以下になるように設定されている。再生開始時刻は多重化データの先頭のビデオフレームのPTSであり、再生終了時刻は多重化データの終端のビデオフレームのPTSに1フレーム分の再生間隔を足したものが設定される。
【0119】
ストリーム属性情報は
図27に示すように、多重化データに含まれる各ストリームについての属性情報が、PID毎に登録される。属性情報はビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム、インタラクティブグラフィックスストリーム毎に異なる情報を持つ。ビデオストリーム属性情報は、そのビデオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、ビデオストリームを構成する個々のピクチャデータの解像度がどれだけであるか、アスペクト比はどれだけであるか、フレームレートはどれだけであるかなどの情報を持つ。オーディオストリーム属性情報は、そのオーディオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、そのオーディオストリームに含まれるチャンネル数は何であるか、何の言語に対応するか、サンプリング周波数がどれだけであるかなどの情報を持つ。これらの情報は、プレーヤが再生する前のデコーダの初期化などに利用される。
【0120】
本実施の形態においては、上記多重化データのうち、PMTに含まれるストリームタイプを利用する。また、記録媒体に多重化データが記録されている場合には、多重化データ情報に含まれる、ビデオストリーム属性情報を利用する。具体的には、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置において、PMTに含まれるストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に対し、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示す固有の情報を設定するステップまたは手段を設ける。この構成により、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成した映像データと、他の規格に準拠する映像データとを識別することが可能になる。
【0121】
また、本実施の形態における動画像復号化方法のステップを
図28に示す。ステップexS100において、多重化データからPMTに含まれるストリームタイプ、または、多重化データ情報に含まれるビデオストリーム属性情報を取得する。次に、ステップexS101において、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された多重化データであることを示しているか否かを判断する。そして、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものであると判断された場合には、ステップexS102において、上記各実施の形態で示した動画像復号方法により復号を行う。また、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠するものであることを示している場合には、ステップexS103において、従来の規格に準拠した動画像復号方法により復号を行う。
【0122】
このように、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に新たな固有値を設定することにより、復号する際に、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法または装置で復号可能であるかを判断することができる。従って、異なる規格に準拠する多重化データが入力された場合であっても、適切な復号化方法または装置を選択することができるため、エラーを生じることなく復号することが可能となる。また、本実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、または、動画像復号方法または装置を、上述したいずれの機器・システムに用いることも可能である。
【0123】
(実施の形態6)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法および装置、動画像復号化方法および装置は、典型的には集積回路であるLSIで実現される。一例として、
図29に1チップ化されたLSIex500の構成を示す。LSIex500は、以下に説明する要素ex501、ex502、ex503、ex504、ex505、ex506、ex507、ex508、ex509を備え、各要素はバスex510を介して接続している。電源回路部ex505は電源がオン状態の場合に各部に対して電力を供給することで動作可能な状態に起動する。
【0124】
例えば符号化処理を行う場合には、LSIex500は、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有する制御部ex501の制御に基づいて、AV I/Oex509によりマイクex117やカメラex113等からAV信号を入力する。入力されたAV信号は、一旦SDRAM等の外部のメモリex511に蓄積される。制御部ex501の制御に基づいて、蓄積したデータは処理量や処理速度に応じて適宜複数回に分けるなどされ信号処理部ex507に送られ、信号処理部ex507において音声信号の符号化および/または映像信号の符号化が行われる。ここで映像信号の符号化処理は上記各実施の形態で説明した符号化処理である。信号処理部ex507ではさらに、場合により符号化された音声データと符号化された映像データを多重化するなどの処理を行い、ストリームI/Oex506から外部に出力する。この出力された多重化データは、基地局ex107に向けて送信されたり、または記録メディアex215に書き込まれたりする。なお、多重化する際には同期するよう、一旦バッファex508にデータを蓄積するとよい。
【0125】
なお、上記では、メモリex511がLSIex500の外部の構成として説明したが、LSIex500の内部に含まれる構成であってもよい。バッファex508も1つに限ったものではなく、複数のバッファを備えていてもよい。また、LSIex500は1チップ化されてもよいし、複数チップ化されてもよい。
【0126】
また、上記では、制御部ex501が、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有するとしているが、制御部ex501の構成は、この構成に限らない。例えば、信号処理部ex507がさらにCPUを備える構成であってもよい。信号処理部ex507の内部にもCPUを設けることにより、処理速度をより向上させることが可能になる。また、他の例として、CPUex502が信号処理部ex507、または信号処理部ex507の一部である例えば音声信号処理部を備える構成であってもよい。このような場合には、制御部ex501は、信号処理部ex507、またはその一部を有するCPUex502を備える構成となる。
【0127】
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0128】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。このようなプログラマブル・ロジック・デバイスは、典型的には、ソフトウェア又はファームウェアを構成するプログラムを、ロードする又はメモリ等から読み込むことで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法、又は動画像復号化方法を実行することができる。
【0129】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
【0130】
(実施の形態7)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを復号する場合、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データを復号する場合に比べ、処理量が増加することが考えられる。そのため、LSIex500において、従来の規格に準拠する映像データを復号する際のCPUex502の駆動周波数よりも高い駆動周波数に設定する必要がある。しかし、駆動周波数を高くすると、消費電力が高くなるという課題が生じる。
【0131】
この課題を解決するために、テレビex300、LSIex500などの動画像復号化装置は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別し、規格に応じて駆動周波数を切替える構成とする。
図30は、本実施の形態における構成ex800を示している。駆動周波数切替え部ex803は、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、駆動周波数を高く設定する。そして、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801に対し、映像データを復号するよう指示する。一方、映像データが、従来の規格に準拠する映像データである場合には、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、駆動周波数を低く設定する。そして、従来の規格に準拠する復号処理部ex802に対し、映像データを復号するよう指示する。
【0132】
より具体的には、駆動周波数切替え部ex803は、
図29のCPUex502と駆動周波数制御部ex512から構成される。また、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801、および、従来の規格に準拠する復号処理部ex802は、
図29の信号処理部ex507に該当する。CPUex502は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別する。そして、CPUex502からの信号に基づいて、駆動周波数制御部ex512は、駆動周波数を設定する。また、CPUex502からの信号に基づいて、信号処理部ex507は、映像データの復号を行う。ここで、映像データの識別には、例えば、実施の形態5で記載した識別情報を利用することが考えられる。識別情報に関しては、実施の形態5で記載したものに限られず、映像データがどの規格に準拠するか識別できる情報であればよい。例えば、映像データがテレビに利用されるものであるか、ディスクに利用されるものであるかなどを識別する外部信号に基づいて、映像データがどの規格に準拠するものであるか識別可能である場合には、このような外部信号に基づいて識別してもよい。また、CPUex502における駆動周波数の選択は、例えば、
図32のような映像データの規格と、駆動周波数とを対応付けたルックアップテーブルに基づいて行うことが考えられる。ルックアップテーブルを、バッファex508や、LSIの内部メモリに格納しておき、CPUex502がこのルックアップテーブルを参照することにより、駆動周波数を選択することが可能である。
【0133】
図31は、本実施の形態の方法を実施するステップを示している。まず、ステップexS200では、信号処理部ex507において、多重化データから識別情報を取得する。次に、ステップexS201では、CPUex502において、識別情報に基づいて映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものであるか否かを識別する。映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、ステップexS202において、駆動周波数を高く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、高い駆動周波数に設定される。一方、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、ステップexS203において、駆動周波数を低く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、低い駆動周波数に設定される。
【0134】
さらに、駆動周波数の切替えに連動して、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を変更することにより、省電力効果をより高めることが可能である。例えば、駆動周波数を低く設定する場合には、これに伴い、駆動周波数を高く設定している場合に比べ、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することが考えられる。
【0135】
また、駆動周波数の設定方法は、復号する際の処理量が大きい場合に、駆動周波数を高く設定し、復号する際の処理量が小さい場合に、駆動周波数を低く設定すればよく、上述した設定方法に限らない。例えば、MPEG4−AVC規格に準拠する映像データを復号する処理量の方が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置により生成された映像データを復号する処理量よりも大きい場合には、駆動周波数の設定を上述した場合の逆にすることが考えられる。
【0136】
さらに、駆動周波数の設定方法は、駆動周波数を低くする構成に限らない。例えば、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を高く設定し、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することも考えられる。また、他の例としては、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、CPUex502の駆動を停止させることなく、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、処理に余裕があるため、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合であっても、処理に余裕があれば、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。この場合は、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合に比べて、停止時間を短く設定することが考えられる。
【0137】
このように、映像データが準拠する規格に応じて、駆動周波数を切替えることにより、省電力化を図ることが可能になる。また、電池を用いてLSIex500またはLSIex500を含む装置を駆動している場合には、省電力化に伴い、電池の寿命を長くすることが可能である。
【0138】
(実施の形態8)
テレビや、携帯電話など、上述した機器・システムには、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力される場合がある。このように、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力された場合にも復号できるようにするために、LSIex500の信号処理部ex507が複数の規格に対応している必要がある。しかし、それぞれの規格に対応する信号処理部ex507を個別に用いると、LSIex500の回路規模が大きくなり、また、コストが増加するという課題が生じる。
【0139】
この課題を解決するために、上記各実施の形態で示した動画像復号方法を実行するための復号処理部と、従来のMPEG−2、MPEG4−AVC、VC−1などの規格に準拠する復号処理部とを一部共有化する構成とする。この構成例を
図33Aのex900に示す。例えば、上記各実施の形態で示した動画像復号方法と、MPEG4−AVC規格に準拠する動画像復号方法とは、エントロピー符号化、逆量子化、デブロッキング・フィルタ、動き補償などの処理において処理内容が一部共通する。共通する処理内容については、MPEG4−AVC規格に対応する復号処理部ex902を共有し、MPEG4−AVC規格に対応しない、本発明の一態様に特有の他の処理内容については、専用の復号処理部ex901を用いるという構成が考えられる。特に、本発明の一態様は、フィルタ処理に特徴を有していることから、例えば、フィルタ処理については専用の復号処理部ex901を用い、それ以外のエントロピー復号、逆量子化、動き補償のいずれか、または、全ての処理については、復号処理部を共有することが考えられる。復号処理部の共有化に関しては、共通する処理内容については、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行するための復号処理部を共有し、MPEG4−AVC規格に特有の処理内容については、専用の復号処理部を用いる構成であってもよい。
【0140】
また、処理を一部共有化する他の例を
図33Bのex1000に示す。この例では、本発明の一態様に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1001と、他の従来規格に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1002と、本発明の一態様に係る動画像復号方法と他の従来規格の動画像復号方法とに共通する処理内容に対応した共用の復号処理部ex1003とを用いる構成としている。ここで、専用の復号処理部ex1001、ex1002は、必ずしも本発明の一態様、または、他の従来規格に特有の処理内容に特化したものではなく、他の汎用処理を実行できるものであってもよい。また、本実施の形態の構成を、LSIex500で実装することも可能である。
【0141】
このように、本発明の一態様に係る動画像復号方法と、従来の規格の動画像復号方法とで共通する処理内容について、復号処理部を共有することにより、LSIの回路規模を小さくし、かつ、コストを低減することが可能である。