(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分断面図である。本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造は、自動車のエンジンに適用されている。以下、説明の便宜上、軸線x方向において矢印a(
図1参照)方向を外側とし、軸線x方向において矢印b(
図1参照)方向を内側とする。より具体的には、外側とは、エンジンから離れる方向であり、内側とは、エンジンに近づく方向でありエンジン側である。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(
図1の矢印c方向)を外周側とし、軸線xに近づく方向(
図1の矢印d方向)を内周側とする。
【0019】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造1は、トーショナルダンパとしてのダンパプーリ10と、オイルシール20とを備える。ダンパプーリ10はエンジンのクランクシャフト81の一端にボルト82によって固定されており、オイルシール20は、エンジンのフロントカバー83の貫通穴84とダンパプーリ10との間を密封している。また、トーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造1は、ダンパプーリ10に取り付けられた付属リング30を備える。
【0020】
ダンパプーリ10は、ハブ11と、質量体としてのプーリ12と、ハブ11とプーリ12との間に配設されたダンパ弾性体13とを備える。ハブ11は、軸線xを中心とする環状の部材であり、内周側のボス部14と、外周側のリム部15と、ボス部14とリム部15とを接続する略円盤状の円盤部16とを備える。ハブ11は、例えば、金属材料から鋳造等によって製造されている。
【0021】
ハブ11において、ボス部14は、貫通穴14aが形成された軸線xを中心とする環状の部分であり、外側の部分の外周面から外周方向に円盤部16が延びている。ボス部14は、円筒状の内側の部分の外周側の面である外周面14bを備え、外周面14bは滑らかな面となっており、後述するように、オイルシール20のシール面となっている。リム部15は、軸線xを中心とする環状の、より具体的には円筒状の部分であり、ボス部14に対して同心的にボス部14よりも外周側に位置する部分である。リム部15の内周側の面である内周面15aからは円盤部16が内周方向に延びている。リム部15の外周側の面である外周面15bにはダンパ弾性体13が圧着されている。
【0022】
円盤部16は、ボス部14とリム部15との間に延びて、ボス部14とリム部15とを接続している。円盤部16は、軸線xに対して垂直な方向に延びていてもよく、軸線xに対して傾斜する方向に延びていてもよい。また、円盤部16は、軸線xに沿う断面(以下、単に「断面」ともいう。)が湾曲した形状であっても、真っ直ぐに延びる形状であってもよい。また、
図1,2に示すように、円盤部16には、円盤部16を内側と外側との間で貫通する貫通穴である窓部16aが少なくとも1つ形成されており、本実施の形態においては、4つの窓部16aが軸線xに対して同心的に周方向に等角度間隔で形成されている(
図2参照)。この窓部16aによって、ハブ11、ひいてはダンパプーリ10の軽量化が図られている。
【0023】
プーリ12は、軸線xを中心とする環状の部材であり、ハブ11を外周側において覆うような形状を呈している。具体的には、プーリ12の内周側の面である内周面12aは、ハブ11のリム部15の外周面15bに対応した形状を有しており、
図1に示すように、プーリ12は、その内周面12aがリム部15の外周面15bに径方向において間隔を空けて対向するように位置している。また、プーリ12の外周側の面である外周面12bには、環状のv溝12cが複数形成されており、図示しないタイミングベルトが巻回可能になっている。
【0024】
ダンパ弾性体13は、プーリ12とハブ11のリム部15との間に設けられている。ダンパ弾性体13は、ダンパゴムであり、耐熱性、耐寒性、及び疲労強度において優れたゴム状弾性材料から架橋(加硫)成形されて形成されている。ダンパ弾性体13は、プーリ12とハブ11のリム部15との間に圧入されており、プーリ12の内周面12aとリム部15の外周面15bとに嵌着されて固定されている。
【0025】
ダンパプーリ10において、プーリ12とダンパ弾性体13とがダンパ部を形成しており、ダンパ部の捩り方向固有振動数が、クランクシャフト81の捩れ角が最大となる所定の振動数域である、クランクシャフト81の捩り方向固有振動数と一致するように同調されている。つまり、ダンパ部の捩り方向固有振動数がクランクシャフト81の捩り方向固有振動数と一致するように、プーリ12の円周方向の慣性質量と、ダンパ弾性体13の捩り方向剪断ばね定数とが調整されている。
【0026】
上述のように、ダンパプーリ10は、クランクシャフト81の一端に取り付けられている。具体的には、
図1に示すように、クランクシャフト81の一端がハブ11のボス部14の貫通穴14aに挿通され、外側からボルト82がクランクシャフト81に螺合されて、ダンパプーリ10がクランクシャフト81に固定されている。また、クランクシャフト81とボス部14との間には、クランクシャフト81とボス部14とに係合する半月キー等のキーが設けられて、ダンパプーリ10がクランクシャフト81に対して相対回動不能になっている。
【0027】
クランクシャフト81に取り付けられた状態において、ダンパプーリ10は、ボス部14の外周面14bを有する内側の部分がフロントカバー83の貫通穴84内に挿通された状態になっており、ボス部14の外周面14bと、フロントカバー83の貫通穴84との間に環状の空間が形成されている。
【0028】
オイルシール20は、
図1,3に示すように、軸線xを中心とする環状の金属製の補強環21と、軸線xを中心とする環状の弾性体から成る弾性体部22とを備える。弾性体部22は、補強環21に一体的に取り付けられている。補強環21の金属材としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。弾性体部22の弾性体としは、例えば、各種ゴム材がある。各種ゴム材としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムである。
【0029】
補強環21は、内周部21aと、円筒部21bとを備える。内周部21aは、軸線xを中心とする環状の部分であり、例えば、断面形状が略S字状である。円筒部21bは、内周部21aの外周側の端部から軸線x方向において外側に延びる円筒状の部分である。
【0030】
弾性体部22は、補強環21に取り付けられており、本実施の形態においては補強環21を覆うように補強環21と一体的に成形されている。弾性体部22は、リップ腰部22aと、シールリップ22bと、ダストリップ22cとを備える。
図3に示すように、リップ腰部22aは、補強環21の内周部21aにおける内周側の端部の近傍に位置する部分であり、シールリップ22bは、リップ腰部22aから内側に向かって延びる部分であり、補強環21の内周部21aに対向して配置されている。ダストリップ22cは、リップ腰部22aから軸線x方向に向かって延びている。
【0031】
シールリップ22bは、内側の端部に、断面形状が内周側に向かって凸の楔形状の環状のリップ先端部22dを有している。リップ先端部22dは、後述するように、ハブ11のボス部14の外周面14bに摺動可能に密接して接触するように形成されており、ダンパプーリ10との間を密封するようになっている。また、シールリップ22bの外周部側には、シールリップ22bを径方向において内側に付勢するガータースプリング22eが嵌着されている。
【0032】
ダストリップ22cは、リップ腰部22aから延びる部位であり、外側且つ内周側に延出している。ダストリップ22cにより、使用状態におけるリップ先端部22d方向への異物の進入の防止が図られている。
【0033】
また、弾性体部22は、側方カバー22fと、ガスケット部22gとを備える。側方カバー22fは、補強環21の内周部21aを覆い、ガスケット部22gは、補強環21の円筒部21bを外周側から覆っている。
【0034】
また、オイルシール20は、外側に向かって延びるサイドリップ23を備える。サイドリップ23は、
図1,3に示すように、断面において、軸線x方向に対して傾斜する方向であって、外側(ダンパプーリ10側)に向かうにつれて軸線xから離れる方向に延びている。つまり、サイドリップ23は、軸線x方向において内側(リップ腰部22a)から外側に向かうにつれて拡径する、円錐筒状の環状の形状を有している。また、サイドリップ23の外周側の面である外周面23aは、軸線x方向において内側から外側に向かうにつれて拡径する、テーパ面となっている。
【0035】
また、オイルシール20は、フランジ40を備える。
図1,3に示すように、フランジ40は、軸線xを中心とする環状の部材であり、フランジ基部41と、フランジ基部41から外側に向かって延びるフランジ先端部42とを備える。フランジ基部41は、オイルシール20において、フランジ先端部42の位置を確定するための部分であり、例えば、断面略L字状の部分である。フランジ先端部42は、フランジ基部41の外周側の端部である外周端部41aから外側に向かって延びる部分であり、
図3に示すように、断面において、軸線x方向に対して傾斜する方向であって、外側に向かうにつれて軸線xから離れる方向に延びている。つまり、フランジ先端部42は、軸線x方向において内側(フランジ基部41の外周端部41a)から外側に向かうにつれて拡径する、円錐筒状の環状の形状を有している。また、フランジ先端部42の外周側の面である外周面42aは、軸線x方向において内側から外側に向かうにつれて拡径する、テーパ面となっている。
【0036】
フランジ40は、オイルシール20の外周側及び外側の端部から延びており、本実施の形態においては、補強環21の円筒部21bの外側の端部である外側端21cから延びており、補強環20とフランジ40とは一体の部材となっている。フランジ40は、補強環20と同一の材料から一体的に成形される。
【0037】
補強環21及びフランジ40は、同一の材料から例えばプレス加工や鍛造によって一体的に製造され、弾性体部22は成形型を用いて架橋(加硫)成形によって成形される。この架橋成形の際に、補強環21及びフランジ40は成形型の中に配置されており、弾性体部22が架橋(加硫)接着により補強環21に接着され、弾性体部22及びフランジ40が補強環21と一体的に成形される。
【0038】
上述のように、オイルシール20は、フロントカバー83の貫通穴84と、ダンパプーリ10のボス部14の外周面14bとの間に形成される空間を密封している。具体的には、
図1に示すように、オイルシール20は、フロントカバー83の貫通穴84に圧入されて取り付けられ、弾性体部22のガスケット部22gが圧縮されて貫通穴84の内周側の面である内周面84aに液密に当接している。これにより、オイルシール20とフロントカバー83の貫通穴84との間が密閉されている。また、シールリップ22bのリップ先端部22dが、ハブ11のボス部14の外周面14bに液密に当接し、オイルシール20とダンパプーリ10との間が密閉されている。
【0039】
付属リング30は、
図1に示すように、軸線xを中心とする環状の付属リング基部31と、付属リング基部31から突出した環状の内周側突条部32と、内周側突条部32の外周側において付属リング基部31から突出した環状の外周側突条部33とを備える。付属リング基部31は、ダンパプーリ10のボス部14の外周面14bに嵌合可能に形成されており、ボス部14の外周面14bにおいて、ダンパプーリ10に固定される。付属リング30の詳細については、
図4を用いて後述する。
【0040】
次いで、トーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造1における、付属リング30と、オイルシール20の有するサイドリップ23及びフランジ40とについて
図4を参照して説明する。
図4は、トーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造1の部分拡大断面図である。
【0041】
図4に示すように、付属リング30の付属リング基部31は、嵌合部31aと、突条部取付部31bとを備える。嵌合部31aは、付属リング30をダンパプーリ10のボス部14の外周面14bに固定可能にするための部分であり、突条部取付部31bは、内周側突条部32及び外周側突条部33が延出される部分である。嵌合部31aは、例えば、軸線xを中心とする円筒状の形状を呈し、ダンパプーリ10のボス部14に圧入されて、ボス部14の外周面14b上に固定可能な内径となっている。突条部取付部31bは、嵌合部31aの外側の端部から径方向に延びる中空円盤状の形状を呈しており、内側の面である内側面31cから、内周側突条部32及び外周側突条部33が内側に向かって突出している。付属リング30は、付属リング基部31の嵌合部31aが外周面14bにおいてボス部14に嵌合され、付属リング基部31の突条部取付部31bの外側の面である外側面31dがダンパプーリ10のハブ11の円盤部16の内側面に当接されて、ダンパプーリ10に固定されている。
【0042】
付属リング30の内周側突条部32は、付属リング基部31の突条部取付部31bの内側面31cから内側に向かって延びており、
図4に示すように、断面において、軸線x方向に対して傾斜する方向であって、内側に向かうにつれて軸線xに近づく方向に延びている。つまり、内周側突条部32は、軸線x方向において外側(内側面31c)から内側に向かうにつれて縮径する、円錐筒状の環状の形状を有している。また、内周側突条部32の内周側の面である内周面32aは、軸線x方向において外側から内側に向かうにつれて縮径する、テーパ面となっている。
【0043】
付属リング30の内周側突条部32は、オイルシール20のサイドリップ23よりも外周側に位置し、内周側突条部32とサイドリップ23とは、少なくとも一部が、径方向において対向している。つまり、内周側突条部32の内周面32aは、外側において、サイドリップ23の外周面23aに対向しており、内周側突条部32の内周面32aとサイドリップ23の外周面23aとの間には、環状の所定の微小な幅の間隙である間隙2(内周側間隙)が形成されている。なお、サイドリップ23と内周側突条部32とは当接していない。
【0044】
付属リング30の内周側突条部32は、オイルシール20のサイドリップ23に対して平行に延びていてもよく、また、オイルシール20のサイドリップ23に対して傾斜して延びていてもよい。
【0045】
付属リング30の外周側突条部33は、内周側突条部32の外周側において、付属リング基部31の突条部取付部31bの内側面31cから内側に向かって延びており、
図4に示すように、断面において、軸線x方向に対して傾斜する方向であって、内側に向かうにつれて軸線xに近づく方向に延びている。つまり、外周側突条部33は、軸線x方向において外側(内側面31c)から内側に向かうにつれて縮径する、円錐筒状の環状の形状を有している。また、外周側突条部33の内周側の面である内周面33aは、軸線x方向において外側から内側に向かうにつれて縮径する、テーパ面となっている。
【0046】
付属リング30の外周側突条部33は、オイルシール20のフランジ40のフランジ先端部42よりも外周側に位置し、外周側突条部33とフランジ先端部42とは、少なくとも一部が、径方向において対向している。つまり、外周側突条部33の内周面33aは、外側において、フランジ先端部42の外周面42aに対向しており、外周側突条部33の内周面33aとフランジ先端部42の外周面42aとの間には、環状の所定の微小な幅の間隙である間隙3(外周側間隙)が形成されている。なお、フランジ先端部42と外周側突条部33とは当接していない。また、フランジ先端部42と外周側突条部33は、ダンパプーリ10の窓部16aよりも内周側に位置している。
【0047】
付属リング30の外周側突条部33は、オイルシール20のフランジ40のフランジ先端部42に対して平行に延びていてもよく、また、オイルシール20のフランジ40のフランジ先端部42に対して傾斜して延びていてもよい。
【0048】
付属リング30において、内周側突条部32と外周側突条部33とは、互いに平行に延びていてもよく、また、内周側突条部32と外周側突条部33とは、互いに傾斜して延びていてもよい。また、オイルシール20において、サイドリップ23とフランジ40のフランジ先端部42とは、互いに平行に延びていてもよく、また、サイドリップ23とフランジ40のフランジ先端部42とは、互いに傾斜して延びていてもよい。
【0049】
このように、オイルシール20のサイドリップ23と付属リング30の内周側突条部32とは、環状の間隙2を形成しており、この環状の間隙2は、ラビリンスシールを形成している。このため、プーリ12とフロントカバー83との間に加えて、ハブ11の円盤部16の窓部16aを介して外部から泥水や砂、ダスト等の異物が侵入してきても、サイドリップ23と内周側突条部32とが形成するラビリンスシール(間隙2)によって、侵入してきた異物が更にシールリップ22b側に侵入することが抑制されている。これにより、ダンパプーリ10側から侵入する異物にオイルシール20のシールリップ22bが曝されることを抑制することができる。このため、リップ先端部22dが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、オイルシール20のシール性能が低下してオイルが漏洩してしまうことを抑制することができる。
【0050】
また、オイルシール20のフランジ40のフランジ先端部42と付属リング30の外周側突条部33とは、環状の間隙3を形成しており、この環状の間隙3は、ラビリンスシールを形成している。このため、プーリ12とフロントカバー83との間に加えて、ハブ11の円盤部16の窓部16aを介して外部から異物が侵入してきても、間隙2の外周において、フランジ先端部42と外内周側突条部33とが形成するラビリンスシール(間隙3)によって、侵入してきた異物が更にシールリップ22b側に侵入することが抑制されている。これにより、ダンパプーリ10側から侵入する異物にオイルシール20のシールリップ22bが曝されることを更に抑制することができる。このため、リップ先端部22dが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、オイルシール20のシール性能が低下してオイルが漏洩してしまうことを抑制することができる。
【0051】
このように、本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造1は、外周側のラビリンスシール(間隙3)と内周側のラビリンスシール(間隙2)との二重のラビリンスシールを備えるので、ダンパプーリ側から侵入してきた異物が更にシールリップ22b側に侵入することを抑制する機能をより向上させることができる。
【0052】
また、サイドリップ23と内周側突条部32とは接触してなく、フランジ先端部42と外周側突条部33とは接触してなくても、二重のラビリンスシールによって、上述のように異物の侵入抑制機能をより向上させることができる。このため、サイドリップ23及びフランジ先端部42と内周側突条部32及び外周側突条部33との夫々の接触による、摺動トルク(抵抗)の増大を招くことなく、密封性を向上させることができる。
【0053】
上述のように、本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造1は、ダンパプーリ10側から侵入する異物にオイルシール20のシールリップ22bが曝されることを抑制することができる。
【0054】
次いで、本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造について説明する。本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造50は、上述の本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造1に対して、オイルシール20のサイドリップ、フランジ40のフランジ先端部、並びに付属リング30の内周側突条部及び外周側突条部の形態のみが異なる。以下、上述の本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造1と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
【0055】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造50の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。
【0056】
図5に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造50において、オイルシール20のサイドリップ51は、上記サイドリップ23と同様に、リップ腰部22aから外側に向かって延びている。サイドリップ51は、サイドリップ23に対して、その延びる方向が異なる。サイドリップ51は、
図5に示すように、断面において、軸線x方向に対して傾斜する方向であって、外側(ダンパプーリ10側)に向かうにつれて軸線xに近づく方向に延びている。つまり、サイドリップ51は、軸線x方向において内側(リップ腰部22a)から外側に向かうにつれて縮径する、円錐筒状の環状の形状を有している。また、サイドリップ51の外周側の面である外周面51aは、軸線x方向において内側から外側に向かうにつれて縮径する、テーパ面となっている。
【0057】
また、オイルシール20において、フランジ40のフランジ先端部52は、上記フランジ先端部42と同様に、フランジ基部41の外周端部41aから外側に向かって延びている。フランジ先端部52は、
図5に示すように、断面において、軸線x方向に対して傾斜する方向であって、外側に向かうにつれて軸線xに近づく方向に延びている。つまり、フランジ先端部52は、軸線x方向において内側(フランジ基部41の外周端部41a)から外側に向かうにつれて縮径する、円錐筒状の環状の形状を有している。また、フランジ先端部52の外周側の面である外周面52aは、軸線x方向において内側から外側に向かうにつれて縮径する、テーパ面となっている。
【0058】
付属リング30の内周側突条部53は、上記内周側突条部32と同様に、付属リング基部31の突条部取付部31bの内側面31cから内側に向かって延びている。内周側突条部53は、
図5に示すように、断面において、軸線x方向に対して傾斜する方向であって、内側に向かうにつれて軸線xから離れる方向に延びている。つまり、内周側突条部53は、軸線x方向において外側(内側面31c)から内側に向かうにつれて拡径する、円錐筒状の環状の形状を有している。また、内周側突条部53の内周側の面である内周面53aは、軸線x方向において外側から内側に向かうにつれて拡径する、テーパ面となっている。
【0059】
付属リング30の内周側突条部53は、オイルシール20のサイドリップ51よりも外周側に位置し、内周側突条部53とサイドリップ51とは、少なくとも一部が、径方向において対向している。つまり、内周側突条部53の内周面53aは、外側において、サイドリップ51の外周面51aに対向しており、内周側突条部53の内周面53aとサイドリップ51の外周面51aとの間には、環状の所定の微小な幅の間隙である間隙4(内周側間隙)が形成されている。
【0060】
付属リング30の外周側突条部54は、上記外周側突条部33と同様に、内周側突条部53の外周側において、付属リング基部31の突条部取付部31bの内側面31cから内側に向かって延びている。外周側突条部54は、
図5に示すように、断面において、軸線x方向に対して傾斜する方向であって、内側に向かうにつれて軸線xから離れる方向に延びている。つまり、外周側突条部54は、軸線x方向において外側(内側面31c)から内側に向かうにつれて拡径する、円錐筒状の環状の形状を有している。また、外周側突条部54の内周側の面である内周面54aは、軸線x方向において外側から内側に向かうにつれて拡径する、テーパ面となっている。
【0061】
付属リング30の外周側突条部54は、オイルシール20のフランジ40のフランジ先端部52よりも外周側に位置し、外周側突条部54とフランジ先端部52とは、少なくとも一部が、径方向において対向している。つまり、外周側突条部54の内周面54aは、外側において、フランジ先端部52の外周面52aに対向しており、外周側突条部54の内周面54aとフランジ先端部52の外周面52aとの間には、環状の所定の微小な幅の間隙である間隙5(外周側間隙)が形成されている。
【0062】
オイルシール20のサイドリップ51及びフランジ先端部52、並びに、付属リング30の内周側突条部53及び外周側突条部54のその他の形態は、上記オイルシール20のサイドリップ23及びフランジ先端部42、並びに、付属リング30の内周側突条部32及び外周側突条部33の形態と同様であり、その説明を省略する。
【0063】
上述のように、本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造50においても、径方向において二重のラビリンスシール(間隙4,5)が形成されており、本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造1と同様の効果を奏することができる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0065】
また、本実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造1,50は、自動車のエンジンに適用されるものとしたが、本発明に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造の適用対象はこれに限られるものではなく、他の車両や汎用機械、産業機械等の回転軸等、本発明の奏する効果を利用し得るすべての構成に対して、本発明は適用可能である。
【0066】
更に、本実施の形態におけるトーショナルダンパは、円盤部16を内側と外側との間で貫通する貫通穴である窓部16aが形成されているものとしたが、本発明に係るトーショナルダンパとオイルシールとのラビリンス構造1,50の適用対象はこれに限られるものではなく、窓部16aが形成されていないトーショナルダンパに対しても本発明は適用可能である。