(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
図1(a)は、本実施形態に係る照明装置の一例を表す模式的断面図である。
図1(b)は、
図1(a)に表す照明装置の模式的平面図である。
図1(a)には、
図1(b)のA1−A2線における断面が表されている。
【0009】
図1に表す照明装置1は、例えば、屋内LED照明装置である。照明装置1は、器具本体である筐体10と、光を反射する反射板11と、光源モジュールである発光部20と、光フィルタおよびレンズ機能を有する光透過部材30と、を備える。発光部20は、基板21と、半導体発光素子22と、樹脂部23と、バンク部24と、を含む。発光部20は、いわゆるCOB(Chip On Board)モジュールである。
【0010】
基板21は、板状である。ここで、基板21の主面に対して平行な1つの方向をX軸方向とする。基板21の主面に対して平行で、X軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。X軸方向及びY軸方向に対して垂直な方向をZ軸方向とする。Z軸方向は、換言すれば、上下方向である。
【0011】
基板21の主面に対して平行な平面(X−Y平面)に基板21を投影した形状は、例えば、正方形状である。すなわち、基板21をZ軸方向に見た形状は、例えば、正方形状である。基板21の形状は、正方形に限ることなく、他の多角形でもよいし、円形や楕円形などでもよい。基板21の形状は、任意である。基板21には、例えば、セラミックなどが用いられる。基板21には、配線パターンが設けられている。
【0012】
半導体発光素子22は、基板21の上に複数、設けられている。複数の半導体発光素子22は、例えば、基板21の上に二次元マトリクス状に並べられる。半導体発光素子22としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)チップが用いられる。半導体発光素子22は、基板21上の配線パターンに実装されている。外部から配線パターンを通じて半導体発光素子22に電力が供給されると、半導体発光素子22は、例えば、紫色光(波長:380nm以上、450nm以下)を発する。
【0013】
樹脂部23は、光透過性を有する。樹脂部23は、半導体発光素子22から放出される光に対して透過性である。樹脂部23には、例えば、透明なシリコーン樹脂が用いられる。また、樹脂部23は、例えば、蛍光体粒子を含む。樹脂部23には、例えば、複数の蛍光体粒子が分散されている。樹脂部23は、例えば、光透過性の樹脂と、この樹脂に分散された複数の蛍光体粒子と、を含む。蛍光体粒子には、例えば、青色光(波長:450nm以上、495nm以下)、緑色光(波長:495nm以上、570nm以下)、赤色光(波長:620nm以上、750nm以下)等の複数の色を放出する蛍光体が用いられる。樹脂部23は、例えば、半導体発光素子22から放出された光の色を変化させる。樹脂部23は、例えば、半導体発光素子22から放出される光の一部の波長を変化させる。これにより、照明装置1は、例えば、実質的に白色の光を放出することができる。
【0014】
バンク部24は、基板21の上に設けられている。バンク部24は、複数の半導体発光素子22を囲む。この例では、バンク部24のX−Y平面に投影した形状が、四角環状である。バンク部24の形状は、これに限ることなく、例えば、円環状などでもよい。バンク部24は、樹脂部23に接する。バンク部24は、例えば、樹脂部23の封止する領域を決定する。バンク部24は、樹脂材料を含む。バンク部24には、例えば、シリコーン樹脂などが用いられる。バンク部24は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0015】
筐体10は、発光部20の下に設けられ、さらに反射板11を囲む。筐体10一部は、円柱状である。筐体10の形状は、これに限ることなく、例えば角柱状などの任意の形状でよい。筐体10は、例えば、半導体発光素子22の点灯にともなって生じる熱を筐体10に逃がすことができる。例えば、半導体発光素子22の放熱性を高めることができる。筐体10には、例えば、鉄、アルミニウム、または、ステンレスなどの金属材料が用いられる。筐体10の材料は、これに限ることなく、適切な熱伝導率を得られる任意の材料でよい。なお、筐体10は、基板21に直接接触してもよいし、例えば、放熱グリスや放熱シートなどを介して接触してもよい。筐体10の下部10dはフィンなどの放熱構造を有してもよい。
【0016】
反射板11は、発光部20を囲む。反射板11は、光反射性を有する。反射板11は、例えば、円筒状である。反射板11では、半導体発光素子22から遠ざかるほど、光の照射方向に向かって広がる。反射板11は、例えば、光源モジュール12から光の照射方向に向かって広がるテーパ状の円筒である。なお、光の照射方向とは、例えば、Z軸方向に対して平行な方向で、筐体10から光源モジュール12に向かう方向である。
【0017】
光透過部材30には、発光部20から放出される光が入射する。光透過部材30は、特定の波長の光を遮断する光フィルタとしての機能を有するとともに、レンズとしての機能も有する。光透過部材30の外形形状は、反射板11の外形形状と実質的に同じである。光透過部材30は、例えば、発光部20から放出される光の中、特定の波長の光に対して透過性である。
【0018】
基板21と、反射板11と、光透過部材30とによって囲まれた空間には、例えば、空気が存在する。
【0019】
以上説明した照明装置1において、半導体発光素子22から発光される光の発光強度の最大値は、450nm以上650nm以下の波長の範囲において発光部20から放出される光の発光強度の最大値の40%以上である。
【0020】
また、照明装置1において、光透過部材30の透過率は、410nm未満の波長の光に対して0%以上、5%以下、好ましくは、0%以上、3%以下、より好ましくは、0%以上、1%以下である。以下では、「0%以上、5%以下」を例示するが、「0%以上、3%以下」または「0%以上、1%以下」のいずれも、本実施形態に含まれる。なお、以下に示す
図2(b)、
図4(a)では、一例として、その透過率が0%のときの例が示されている。さらに、光透過部材30の透過率は、410nm以上420nm以下の波長の光に対して、可視光の波長域(360nm以上、830nm以下)における光透過部材30の透過率の最大値の97%以上、99%以下であり、好ましくは98%である。以下には、一例として、光透過部材30の透過率が410nm以上420nm以下の波長の光に対して、可視光の波長域における光透過部材30の透過率の最大値の98%として説明する。また、発光部20は、波長が410nm以上420nm以下の範囲において、発光強度の極大値を有している。透過率は、光透過部材30に含まれる材料、材料の配合比を変えることで調整できる。
【0021】
照明装置1において、光透過部材30の透過率が上記の条件、および発光部20の発光強度の極大値が410nm以上420nm以下の範囲にある理由について以下に説明する。
【0022】
紫色光を発光する半導体発光素子と、青色光を放出する蛍光体、緑色光を放出する蛍光体、および赤色光を放出する蛍光体を有する樹脂部と、を含む発光部は、演色評価数のR1〜R15が90以上の高い演色性を有する。但し、400nm付近の波長光を発する照明装置は、照射物の色退色を引き起こす可能性がある。この色退色を抑制する方法として、紫外光を遮断する光透過部材を発光部20の光源照射方向に設置する方法がある。しかし、遮断される波長領域が広くなると、平均演色評価数Raは略安定するものの、特殊演色評価数中のR12(青)の値が著しく低下する。
【0023】
例えば、光透過部材30の透過率とは異なる透過率を持つ光透過部材を備えた照明装置の例(第1例)を以下に説明する。第1例に係る照明装置の構造は、照明装置1と同じである。
【0024】
図2(a)は、第1例に係る照明装置における演色評価数の変化を表すグラフ図である。
図2(b)は、第1例に係る照明装置の分光分布を表すグラフ図である。
図2(a)の縦軸には、平均演色評価数Raおよび特殊演色評価数R12のそれぞれの値が表されている。
図2(a)の横軸には、波長(nm)が示され、その波長以下では光透過部材の透過率が0%以上、5%以下になっている。また、
図2(b)には、透過率が0%になるときの波長を変えたとき、色温度5000Kでの各々の分光分布(発光スペクトル)が表されている。
図2(b)では、透過率が0%になる波長が440nm以上になると、各々の発光スペクトルは重なる。
【0025】
図2(a)に表すように、400nm以上、440nm以下の範囲における光透過部材の透過率が0%以上、5%以下のとき、平均演色評価数Raは、どの波長でも略安定する。しかし、特殊演色評価数R12は、410nm以上で低下し始める。ここで、380nmのときの平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R12は、光透過部材と取り外した状態での発光部そのものの演色評価数である。
【0026】
これにより、特殊演色評価数R12の低下を抑制するには、光透過部材の透過率は、410nm未満で、0%以上、5%以下にすることが好ましいことが分かる。
【0027】
さらに、第1例とは異なる透過率を持つ光透過部材を備えた照明装置の例(第2例)を以下に示す。
【0028】
図3(a)は、第2例に係る照明装置における演色評価数の変化を表すグラフ図である。
図3(b)は、第2例に係る照明装置の分光分布を表すグラフ図である。
図3(a)の縦軸には、平均演色評価数Raおよび特殊演色評価数R12のそれぞれの値が表されている。
図3(a)の横軸には、波長(nm)が示され、その波長以下では光透過部材の透過率が光透過部材の透過率の最大値に対して98%になっている。また、第2例に係る光透過部材の410nm未満における透過率は、0%以上、5%以下になっている。また、
図3(b)は、色温度5000Kでの各々の分光分布(発光スペクトル)である。
図3(b)の枠内に示す各線に対応した波長以下では、光透過部材の透過率は、光透過部材の透過率の最大値に対して98%になっている。
図3(b)において、各々の発光スペクトルは、波長が440nm以上で重なる。なお、第2例では、410nmのときの平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R12は、光透過部材と取り外した状態での発光部そのものの演色評価数である。
【0029】
図3(a)に表すように、410nm以上、440nm以下の範囲における光透過部材の透過率が光透過部材の透過率の最大値に対して98%のとき、平均演色評価数Raは、どの波長でも略安定する。しかし、特殊演色評価数R12は、420nmを超えると、R12が低下することが分かる。例えば、420nmを超えると、R12は、410nmのときのR12より、2ポイント以上低下する。
【0030】
これにより、特殊演色評価数R12の低下を抑制するには、光透過部材の透過率は、410nm未満で0%以上、5%以下であって、さらに、410nm以上420nm以下の波長の光に対して、透過率の最大値の98%にすることが好ましいことが分かる。
【0031】
また、第3例として、照明装置1とは、異なる発光強度を半導体発光素子を備えた照明装置の例を以下に示す。第3例では、紫色光を発する半導体発光素子の発光強度の最大値は、450nm以上650nm以下の波長の範囲において発光部から放出される光の発光強度の最大値の10%未満である。
【0032】
図4(a)は、第3例に係る照明装置における演色評価数の変化を表すグラフ図である。
図4(b)は、第3例に係る照明装置の分光分布を表すグラフ図である。
図4(a)の縦軸には、特殊演色評価数R12の値が表されている。
図4(a)の横軸には、波長(nm)が示され、その波長以下では光透過部材の透過率が0%以上、5%以下になっている。また、
図4(b)では、各々の発光スペクトルは、波長が430nm以上で重なる。
【0033】
図4(a)に表すように、380nm以上、430nm以下の範囲における光透過部材の透過率が0%以上、5%以下のとき、特殊演色評価数R12は、どの波長でも略安定する。しかし、第3例では、半導体発光素子から発光される光の発光強度の最大値が450nm以上650nm以下の波長の範囲において発光部から放出される光の発光強度の最大値の10%未満である。つまり、第3では、紫色が相対的に弱くなっている。これにより、第3例では、オレンジ色が相対的に強く見え、演色性が劣ることが分かった。
【0034】
これに対し、照明装置1では、半導体発光素子22から発光される光の発光強度の最大値は、450nm以上650nm以下の波長の範囲において発光部20から放出される光の発光強度の最大値の40%以上である。例えば、照明装置1では、光透過部材30を用いても、発光部20は、波長が410nm以上420nm以下の範囲において、発光強度の極大値(
図3(b)の矢印P)を有している。つまり、照明装置1では、第3例に比べて、紫色が相対的に強い。
【0035】
このように、照明装置1では、発光部20の演色性が損なわれずに、紫外線を遮断することができる。これにより、本実施形態では、高い演色性が維持され、照射物の色退色が抑制される。
【0036】
図5(a)および
図5(b)は、本実施形態に係る別の照明装置の一例を表す模式的断面図である。
【0037】
図5(a)に表す照明装置2においては、シート状または蓋状の光透過部材30の上に、レンズ31が設けられている。また、
図5(b)に表す照明装置3においては、レンズ31がシート状の光透過部材30で覆われている。このような照明装置も、本実施形態に含まれる。
【0038】
以上、具体例を参照しつつ実施形態について説明した。しかし、実施形態はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、実施形態の特徴を備えている限り、実施形態の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0039】
また、前述した各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて複合させることができ、これらを組み合わせたものも実施形態の特徴を含む限り実施形態の範囲に包含される。その他、実施形態の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても実施形態の範囲に属するものと了解される。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。