(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474064
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/88 20110101AFI20190218BHJP
H01R 12/79 20110101ALI20190218BHJP
【FI】
H01R12/88
H01R12/79
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-209632(P2014-209632)
(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公開番号】特開2016-81622(P2016-81622A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2015年12月18日
【審判番号】不服2017-11821(P2017-11821/J1)
【審判請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095636
【弁理士】
【氏名又は名称】早崎 修
(72)【発明者】
【氏名】石田 能康
(72)【発明者】
【氏名】宇留鷲 修一
(72)【発明者】
【氏名】島田 弓裕
【合議体】
【審判長】
平田 信勝
【審判官】
小関 峰夫
【審判官】
尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−171857(JP,A)
【文献】
特開2004−221067(JP,A)
【文献】
特開2008−234884(JP,A)
【文献】
特開2011−159452(JP,A)
【文献】
特開2012−69481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/70 - 12/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方から後方に向かって可撓性フラットケーブルを挿入する挿入凹部が凹設された絶縁ハウジングと、
起立支持片と、起立支持片から前方に突出して挿入凹部に臨む接触片と、起立支持片から後方に突出して絶縁ハウジングの後方に形成されたカム収容凹部に臨む従動片とを一体に有し、起立支持片の基端が絶縁ハウジングに固定され、接触片と従動片がそれぞれ挿入凹部とカム収容凹部内で揺動自在に支持される板状の導電コンタクトと、
基端側に形成されるカム部が、導電コンタクトの従動片に直交する回転軸周りでカム収容凹部内に回動自在に収容されることにより、前記絶縁ハウジングにロック位置と解放位置の間で回動自在に取り付けられるロックレバーとを備え、
ロックレバーのカム部をカム収容凹部内で回動して前記導電コンタクトの従動片を前後方向に直交する鉛直方向に揺動させ、ロック位置で接触片を挿入凹部内に挿入される可撓性フラットケーブルに弾性接触させ、解放位置で接触片を挿入凹部から後退させ、挿入凹部に可撓性フラットケーブルを挿抜する間隔を形成するロックレバー付き電気コネクタであって、
導電コンタクトを固定した絶縁ハウジングの後方から前方に向かってカム収容凹部に収容されるロックレバーのカム部を、カム収容凹部から後方に対して抜け止めする抜け止め突起を従動片に形成し、
カム部の回転軸に沿った側方の部位に、ロックレバーと一体に前記回転軸の軸周りに環状突部を突設するとともに、前記環状突部を後方から遊挿させ、前記回転軸の鉛直方向の上側の方向と下側の方向の移動を規制して、環状突部を前記回転軸周りに回動自在に案内する位置決め手段を、前記絶縁ハウジングに設け、若しくは前記絶縁ハウジングに取付けることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
回路基板の導電パターンに半田付けされ、絶縁ハウジングを回路基板上に固定するホールド金具が、絶縁ハウジングに固定して取り付けられ、
位置決め手段は、ホールド金具の後方で二股に分岐する一対の腕部で構成され、一対の腕部の間に環状突部が挿通することを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
一対のホールド金具が、それぞれ絶縁ハウジングの挿入凹部の両側に沿って固定され、各ホールド金具の一対の腕部に、カム部の両側で前記回転軸の軸周りに突設された環状突部が挿通することを特徴とする請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
位置決め手段は、カム部の回転軸に沿ったカム収容凹部の側方に凹設された凹溝で構成され、凹溝に環状突部が挿通することを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性フラットケーブルを接続する電気コネクタに関し、更に詳しくは、ロックレバーを回動操作することにより、挿抜去力を加えることなく可撓性フラットケーブルを導電コンタクトへ接続する電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル印刷配線板(FPC)やフレキシブルフラットケーブル(FFC)等の可撓性フラットケーブルは、電気コネクタの挿入凹部内で導電コンタクトが弾性接触して導電コンタクトと電気接続するため、従来は、可撓性フラットケーブルを挿入凹部へ挿抜する際に、導電コンタクトを挿入凹部から後退させて導電コンタクトからの弾力を受けずに挿抜するようにしている。
【0003】
以下、ロックレバー101を回動させて導電コンタクト102を挿入凹部103へ進退させるバックフリップ方式の特許文献1に記載の電気コネクタ100を、
図10、
図11を用いて説明する。この電気コネクタ100は、プリント配線基板上に実装され、絶縁ハウジング104に固定される導電コンタクト102を介して可撓性フラットケーブル120をプリント配線基板の対応する導電パターンへ電気接続するもので、直方体状の絶縁ハウジング104の前面(図中左側面)から後方に向かって可撓性フラットケーブル120の端末部を挿入する挿入凹部103が凹設されている。
【0004】
絶縁ハウジング104には、可撓性フラットケーブル120の配線パターン数に応じた数の導電コンタクト102が図中の紙面に直交する方向に互いに所定の絶縁間隔を隔てて固定され、
図10に示すように、各導電コンタクト102は、絶縁ハウジング104の前後方向に固定される固定片102cの中間に起立支持された起立支持片から前後方向に突設された接触片102aと、従動片102bとを有し、接触片102aが挿入凹部103に、従動片102bが後述するカム収容凹部105に臨んでいる。
【0005】
絶縁ハウジング104の挿入凹部103の後方には、後面と上面に開口するカム収容凹部105が凹設されている。ロックレバー101は、基端側に形成されたカム部106がカム収容凹部105内で回動自在に収容されることにより、図示する紙面に直交する回転軸周りで、
図10に示す解放位置と
図11に示すロック位置との間で回動自在に絶縁ハウジング104に取り付けられる。
【0006】
ロックレバー101のカム部106は、ロック位置で鉛直方向を、解放位置で水平方向(前後方向)を長手方向とする長円形のカム面を有し、その回転軸に沿って互いに絶縁して配置される全ての導電コンタクト102の各従動片102bの下方に配置されている。
図10に示す解放位置では、カム部106が従動片102bに当接せず、回転モーメントを受けない導電コンタクト102の接触片102aは自らの弾性で挿入凹部103の上方に後退し、挿入凹部103内に接触片102aと接触せずに可撓性フラットケーブル120を挿入可能な隙間が形成される。従って、ロックレバー101を起立させた解放位置として、接触片102aからの弾力を受けずに可撓性フラットケーブル120を挿入凹部103に挿抜できる。
【0007】
挿入凹部103へ可撓性フラットケーブル120の端末を挿入した後、ロックレバー101を
図11に示す水平なロック位置まで回動させると、カム部106が従動片102bを押し上げて従動片102bを図中反時計回りに回転させる。その結果、従動片102bの基端に発生する回転モーメントが起立支持片を介して接触片102aに伝達され、接触片2cは挿入凹部103内に向かって撓み、挿入凹部103に挿入されている可撓性フラットケーブル120の対応する配線パターンに弾性接触する。
【0008】
可撓性フラットケーブル120を引き出す際には、ロックレバー101を再び解放位置まで回動させ、従動片102bとカム部106との当接を解除する。その結果、導電コンタクト102は、再び外力を受けない自由状態に自らの弾性で復帰し、接触片102aが挿入凹部103から後退することによって、可撓性フラットケーブル120を負荷を受けることなく引き出すことができる。
【0009】
上述のように構成される電気コネクタ100では、ロックレバー101のカム部106を絶縁ハウジング104の後方からカム収容凹部105へ収容して組み付けるために、カム収容凹部105の後方を開口させているが、ロックレバー101が解放位置にある場合には、カム部106が従動片102bに当接せず、水平方向に扁平な形状である為にカム収容凹部105から後方に抜け出てしまう恐れがある。そこで、カム収容凹部105の後方で臨む導電コンタクト102の従動片102bの後端と固定片102aの後端のいずれか若しくは双方を楔形のストッパー107を形成して、鉛直方向で対向する両者の隙間をカム部106の短手方向幅より短くし、後方への脱落を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−159452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述のように、従動片102b及び/又は固定片102aの後端に楔形のストッパー107を形成しても、従動片102b自体が上下方向に揺動自在である為に、ロックレバー101に予想しない方向と大きさの外力が加わったり、解放位置を超えて更にロックレバー101を無理に回転させようとした場合に、カム部106がその前方下端を中心に異常に回転して従動片102bを押し上げ、その結果、従動片102bと固定片102cやカム収容凹部105の底面との隙間が拡大して、ロックレバー101が脱落してしまうことがあった。また、カム収容凹部105から抜け出るまでに至らなくても、従動片102bを異常に撓ませた状態でロックレバー101が停止するので、従動片102bが疲労し、正常に弾性変形せずにロック動作が行われない場合が生じた。
【0012】
一方、楔形のストッパー107を形成する従動片102bと固定片102cの後端間の隙間を狭めれば、従動片102bが上方に押し上げられても、カム部106が抜け出ない隙間とすることができるが、従動片102bが自由状態で固定片102cと一定幅の隙間がないと、ロックレバー101のカム部106を後方からカム収容凹部105内に組み込む際に、カム部106により従動片102bが弾性限度を超えて撓み、塑性変形する恐れがあるとともに、解放位置を超えたロックレバー101の異常回転を防止するものではないので、従動片102bを異常に撓ませた状態でロックレバー101が停止するという課題は解決できなかった。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、ロックレバーの脱落を確実に防止する電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、請求項1に記載の電気コネクタは、前方から後方に向かって可撓性フラットケーブルを挿入する挿入凹部が凹設された絶縁ハウジングと、起立支持片と、起立支持片から前方に突出して挿入凹部に臨む接触片と、起立支持片から後方に突出して絶縁ハウジングの後方に形成されたカム収容凹部に臨む従動片とを一体に有し、起立支持片の基端が絶縁ハウジングに固定され、接触片と従動片がそれぞれ挿入凹部とカム収容凹部内で揺動自在に支持される板状の導電コンタクトと、基端側に形成されるカム部が、導電コンタクトの従動片に直交する回転軸周りでカム収容凹部内に回動自在に収容されることにより、前記絶縁ハウジングにロック位置と解放位置の間で回動自在に取り付けられるロックレバーとを備え、ロックレバーのカム部をカム収容凹部内で回動して前記導電コンタクトの従動片を前後方向に直交する鉛直方向に揺動させ、ロック位置で接触片を挿入凹部内に挿入される可撓性フラットケーブルに弾性接触させ、解放位置で接触片を挿入凹部から後退させ、挿入凹部に可撓性フラットケーブルを挿抜する間隔を形成するロックレバー付き電気コネクタであって、
導電コンタクトを固定した絶縁ハウジングの後方から前方に向かってカム収容凹部に収容されるロックレバーのカム部を、カム収容凹部から後方に対して抜け止めする抜け止め突起を従動片に形成し、カム部の回転軸に沿った側方の部位に、ロックレバーと一体に前記回転軸の軸周りに環状突部を突設するとともに、前記環状突部を
後方から遊挿させ、前記回転軸の
鉛直方向の上側の方向と下側の方向の移動を規制して、環状突部を前記回転軸周りに回動自在に案内する位置決め手段を、前記絶縁ハウジングに設け、若しくは前記絶縁ハウジングに取付けることを特徴とする。
【0015】
ロックレバーをロック位置と解放位置の間で回動操作させる通常の操作力をロックレバーに加えている間は、カム部が回転軸周りに回動し、環状突部も位置決め手段によって回動自在に案内される。
【0016】
通常の操作力以外の予期しない外力がロックレバーに加わると、カム部に前記回転軸から外れた軸周りで回転軸を鉛直方向に移動させる方向の回転モーメントが発生するが、環状突部が位置決め手段に案内されることによって前記回転軸の鉛直方向の移動が規制されるので、外力によってカム部は回転せず、カム部がカム収容凹部から脱落したり、従動片を揺動させた状態で停止することがない。
【0017】
請求項2に記載の電気コネクタは、回路基板の導電パターンに半田付けされ、絶縁ハウジングを回路基板上に固定するホールド金具が、絶縁ハウジングに固定して取り付けられ、位置決め手段は、ホールド金具の後方で二股に分岐する一対の腕部で構成され、一対の腕部の間に環状突部が挿通することを特徴とする。
【0018】
ホールド金具の後方で二股に分岐する一対の腕部の間に、カム部の回転軸の軸周り突設された環状突部が挿通するので、回転軸の鉛直方向の移動が一対の腕部の間で規制されながら、環状突部が回動自在に案内される。
【0019】
請求項3に記載の電気コネクタは、一対のホールド金具が、それぞれ絶縁ハウジングの挿入凹部の両側に沿って固定され、各ホールド金具の一対の腕部に、カム部の両側で前記回転軸の軸周りに突設された環状突部が挿通することを特徴とする。
【0020】
それぞれ絶縁ハウジングの挿入凹部の両側に沿って固定される一対のホールド金具が、それぞれ回路基板の導電パターンに半田付けされるので、絶縁ハウジングに種々の方向から外力が加わっても回路基板に強固に固定され、導電コンタクトと回路基板のパターンとの半田接続部に外力が加わらず、パターン剥離が生じない。
【0021】
ロックレバーの両側で回転軸の鉛直方向の移動が規制されるので、ロックレバーが予期しない外力を受けても、回転軸がねじれない。
【0022】
請求項4に記載の電気コネクタは、位置決め手段は、カム部の回転軸に沿ったカム収容凹部の側方に凹設された凹溝で構成され、凹溝に環状突部が挿通することを特徴とする。
【0023】
絶縁ハウジングに凹設された凹溝の間に、カム部の回転軸の軸周り突設された環状突部が挿通するので、回転軸の鉛直方向の移動が凹部の間で規制されながら、環状突部が回動自在に案内される。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、カム部の回転軸に沿った側方の部位に環状突部を突設するとともに、環状突部を
後方から遊挿させ、回転軸周りに回動自在に案内する位置決め手段を絶縁ハウジングに設け、若しくは絶縁ハウジングに別に取付けるだけで、ロックレバーに異常な外力が加わっても過回転したり、ロックレバーが脱落することがない。
【0025】
請求項2の発明によれば、絶縁ハウジングを回路基板上に固定するホールド金具の一部に位置決め手段が設けられるので、位置決め手段を形成する為の部品を別に用意して絶縁ハウジングに固定する必要がない。
【0026】
また、位置決め手段は、ホールド金具を取り付ける絶縁ハウジングのスペース内に形成されるので、位置決め手段を設けることによって絶縁ハウジングの外形が拡大することがない。
【0027】
請求項3の発明によれば、絶縁ハウジングを回路基板へ強固に固定する一対のホールド金具を利用して、カム部の回転軸を水平に案内し、更に確実にカム部の過回転やカム収容凹部からの脱落を防止できる。
【0028】
請求項4の発明によれば、絶縁ハウジングに凹部を凹設して位置決め手段が設けられるので、位置決め手段を形成する為の部品を別に用意して絶縁ハウジングに固定する必要がない。
【0029】
また、位置決め手段は、絶縁ハウジングの一部を凹設して形成されるので、位置決め手段を設けることによって絶縁ハウジングの外形が拡大することがない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る電気コネクタ1の前方斜め上方からみた斜視図である。
【
図2】可撓性フラットケーブル120が接続された状態を示す電気コネクタ1の斜視図である。
【
図3】ロック位置に回動したロックレバー2の斜視図である。
【
図4】解放位置に回動したロックレバー2の斜視図である。
【
図5】絶縁ハウジング3とホールド金具4の斜視図である。
【
図7】ロックレバー2が解放位置にある状態の(a)は、導電コンタクト5に沿って切断した(b)は、ホールド金具4に沿って切断した電気コネクタ1の縦断面図である。
【
図8】ロックレバー2をロック位置にある状態の(a)は、導電コンタクト5に沿って切断した(b)は、ホールド金具4に沿って切断した電気コネクタ1の縦断面図である。
【
図9】ロックレバー2をロック位置へ回動し、可撓性フラットケーブル120を接続した状態の(a)は、前方側の斜め上方からみた斜視図、(b)は、板バネ片2に沿って切断した縦断面図である。
【
図10】ロックレバー101が解放位置にある従来の電気コネクタ100の縦断面図である。
【
図11】ロックレバー101がロック位置にある従来の電気コネクタ100の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施の形態に係る電気コネクタ1は、プリント配線基板等の回路基板(図示せず)上に実装され、フレキシブル配線基板(FPC)やフレキシブルフラットケーブル(FFC)等からなる可撓性フラットケーブル120を回路基板の導電パターンへ電気接続するもので、以下、
図9において可撓性フラットケーブル120を挿抜する左右方向を前後方向と、紙面に直交する方向を左右方向として、この電気コネクタ1の詳細を
図1乃至9を用いて説明する。
【0032】
図1と
図2に示すように、電気コネクタ1は、絶縁ハウジング3の後方に、ロック操作手段としてのロックレバー2が回動自在に取り付けられたいわゆるバックフリップ型のロック機構を備え、ロックレバー2は、絶縁ハウジング3に対して起立する
図1に示す解放位置と、後方に押し倒される
図2に示すロック位置との間で回動操作される様になっている。
【0033】
絶縁ハウジング3は、絶縁合成樹脂により、左右方向を長手方向とする直方体状に成形されたもので、その前方には、前方から可撓性フラットケーブル120の端末部を挿入する挿入凹部6が左右方向に沿って細長に凹設され、後方には、上記ロックレバー2のカム部9を収容するカム収容凹部7が絶縁ハウジング3の上面から後面にかけて開口して、同様に左右方向に沿って凹設されている。
【0034】
絶縁ハウジング3には、可撓性フラットケーブル120の配線パターン数と同数の導電コンタクト5が配線パターンと同ピッチで左右方向に互いに絶縁して取り付けられている。各導電コンタクト5は、薄板状の導電性金属板を打ち抜いて
図6に示す形状に同形状に形成され、
図7(a)に示すように、絶縁ハウジング3の下面側に沿って前後方向に固定される固定片5aと、固定片5aの中間から上方に起立する起立支持片5bと、起立支持片5bの上端から挿入凹部6の上方に沿って前方に突出する可動接触片5cと、起立支持片5bの上端からカム収容凹部7の上方に沿って後方に突出する従動片5dとを一体に有している。
【0035】
固定片5aの前方には、挿入凹部6内でその自由端が可動接触片5cと上下方向で対向する固定接触片5eが、後方に向かって一体に片持ち支持されている。可動接触片5cと固定接触片5eとの間隔は、導電コンタクト5が外力を受けない自由状態で、可撓性フラットケーブル120の端末部の厚みよりわずかに長く、従って、常時は、可撓性フラットケーブル120を無負荷で挿入凹部6へ挿入することができる。
【0036】
従動片5dと対向してカム収容凹部7の下方に露出する固定片5aの後端には、楔形に上方に突出する抜け止め突起5fが一体に形成され、その下方は絶縁ハウジング3の下面に沿って露出し、電気コネクタ1が実装される回路基板の導電パターンに半田接続される半田接続部5gとなっている。また、固定片5aに対してカム収容凹部7内の上方で対向する従動片5dの後端にも、楔形に下方に突出する抜け止め突起5hが一体に形成されている。抜け止め突起5f、5h間は、後述するカム部9のカム面9aの短手方向幅より狭く、これによりカム収容凹部7内の従動片5dと固定片5aの間に配置されるカム部9が後方に対して抜け止めされる。
【0037】
図5に示すように、絶縁ハウジング3には、更に、導電コンタクト5と同様に薄板の金属板を打ち抜いて形成される一対のホールド金具4、4が、それぞれ挿入凹部6の左右の内側面に沿って取り付けられる。ホールド金具4は、細長帯状に形成され、その前方で絶縁ハウジング3の下面に沿って露出し、電気コネクタ1が実装される回路基板のダミーパターンに半田接続される半田接続部4aと、後方で上下に分岐された一対の位置決め腕部10、10を有している。電気コネクタ1は、絶縁ハウジング3の前後方向と左右方向の異なる位置で各導電コンタクト5の半田接続部5gと各ホールド金具4の半田接続部4aが回路基板に対して半田接続されるので、可撓性フラットケーブル120の挿抜や予期しない外力を受けても、回路基板に対して強固に固定され、半田接続部5gの半田付け部のパターン剥離を防止できる。
【0038】
一対の位置決め腕部10、10は、後述するロックレバー2の円柱突部8をその間に游挿させるもので、位置決め腕部10,10間の間隔は、円柱突部8の直径よりわずかに長いものとなっている。また、その後端には、対向方向に突出する抜け止め突起10a、10aが形成され、円柱突部8の後方への脱落を防止している。
【0039】
ロックレバー2は、カム収容凹部7の左右の内側面に沿って摺動する一対の側板部2a、2aと、絶縁ハウジング3に対して起立する
図4に示す解放位置で、一対の側板部2a、2a間の上方に一体に掛け渡された操作摘2bと、一対の側板部2a、2aの下方で、その間に左右方向に一体に連設されたカム部9及び一対の円柱突部8、8とを有している。カム部9は、絶縁ハウジング3に取り付けられる全ての導電コンタクト5に交差する左右方向幅で、各導電コンタクト5の従動片5dと固定片5aの間で交差する部位は、縦断面の輪郭であるカム面9aが、
図7(a)に示す解放位置で横長、
図8(a)、
図9(a)で示すロック位置で縦長の長円形となっている。カム部9がカム収容凹部7内の上下方向で対向する各導電コンタクト5の従動片5dと固定片5aの間に回転自在に収容されることにより、ロックレバー2は、絶縁ハウジング3に対し、
図1、
図7に示す解放位置と、
図2、
図8に示すロック位置との間で回動自在に支持される。
【0040】
各導電コンタクト5の従動片5dと固定片5aとの間隔は、ロックレバー2が解放位置でのカム部9の高さより長く、ロック位置でのカム部9の高さより短い。従って、ロックレバー2を解放位置からロック位置まで回動させると、カム部9は、その後方の回転軸C周りに回転し、従動片5dを押し上げる。その結果、可動接触片5cは
図7(a)で反時計回りに回転し、
図8(a)に示すように、その自由端側が挿入凹部6内で下方に撓む。
【0041】
一対の円柱突部8、8は、カム部9の左右の両側で回転軸Cの軸周りに縦断面の輪郭が円形となった円柱形に形成されている。一対の円柱突部8、8は、カム収容凹部7内で前方から挿入して取り付けられる一対のホールド金具4、4の位置に形成され、上述のように、ホールド金具4の一対の位置決め腕部10、10によって上下方向の移動が規制された状態でその間に回動自在に案内される。これにより、少なくともロックレバー2が回動する解放位置とロック位置の間で回動する回動範囲では、
図7(b)、
図8(b)に示すように、円柱突部8は拘束されずに回動し、ロックレバー2の回動操作が損なわれることがない。
【0042】
上述のように構成された電気コネクタ1の組み立ては、絶縁ハウジング3の後方から前方に向かって複数の導電コンタクト5の各固定片5aを対応部位に形成された取付溝へ圧入するとともに、その左右両側の取付溝に、一対のホールド金具4を前方から後方に向かって圧入し、絶縁ハウジング3へ取り付ける。
【0043】
その後、ロックレバー2のカム部9を、各導電コンタクト5の抜け止め突起5f、5hの隙間から前方に挿入し、従動片5dを上方へ押し上げながら、従動片5dと固定片5a間に収容する。この時、カム部9の両側の円柱突部8、8も、ホールド金具4の抜け止め突起10a、10aの間から上方側の位置決め腕部10を押し上げて、位置決め腕部10、10間に収容される。
【0044】
カム部9と円柱突部8は、それぞれその上下方向の高さより狭い導電コンタクト5の抜け止め突起5f、5hとホールド金具4の抜け止め突起10a、10aによって後方に対して抜け止めされ、ロックレバー2は、絶縁ハウジング3の上面の後端に当接して起立する解放位置と回路基板の表面に平行なロック位置との間で回転軸C周りで絶縁ハウジング3に回転自在に取り付けられる。
【0045】
絶縁ハウジング3に、複数の導電コンタクト5とホールド金具4とロックレバー3を取り付けた電気コネクタ1は、各導電コンタクト5の半田接続部5gを対向部位に臨む回路基板の導電パターンに半田接続するとともに、ホールド金具4の半田接続部4aを回路基板のダミーパターンに半田接続することにより、回路基板に表面実装される。
【0046】
可撓性フラットケーブル120を接続する際には、ロックレバー2を
図7(a)(b)に示す解放位置とし、挿入凹部6内の固定接触片5eと可動接触片5cの間に可撓性フラットケーブル120の端末部を挿入する隙間を形成し、複数の導電コンタクト5からの弾性を受けずに可撓性フラットケーブル120の端末部を挿入させる。
【0047】
可撓性フラットケーブル120の端末部を挿入凹部6へ挿入した後、ロックレバー2を
図9(a)(b)に示すロック位置まで回転させると、断面長円形のカム部9が起立して従動片5dを押し上げ、基端に図中反時計回りの回転モーメントが作用する可動接触片5cと固定接触片5eの間で可撓性フラットケーブル120を挟持し、可動接触片5cが可撓性フラットケーブル120の対向部位に露出する配線パターンに弾性接触する。その結果、可撓性フラットケーブル120の各配線パターンは、導電コンタクト5を介して回路基板の導電パターンに電気接続する。
【0048】
可撓性フラットケーブル120を挿入凹部6から引き出す際には、ロックレバー2をロック位置から解放位置まで回転させ、カム部9の従動片5dに当接するカム面9aが下降し従動片5dの押し上げを解除する。これにより、可動接触片5cは自らの弾性によって、挿入凹部6から後退する上方に撓み、固定接触片5eと可動接触片5cの間に可撓性フラットケーブル120の端末部の厚さ以上の隙間が形成され、可撓性フラットケーブル120を無負荷で挿入凹部6から抜き出すことができる。
【0049】
このロックレバー2の解放位置とロック位置との間の回動では、円柱突部8の上下方向の高さが変化しないので、円柱突部8の直径よりわずかに長い間隔の位置決め腕部10、10に拘束されず、自由に回動する。
【0050】
一方、カム部9が導電コンタクト5の抜け止め突起5f、5hの隙間から抜け出るような外力がロックレバー2に加わる場合には、回転軸Cを鉛直方向(主として上方)に変位させようとする力が加わるが、円柱突部8の鉛直方向の移動は位置決め腕部10、10により規制され、回転軸Cも鉛直方向に対して位置決めされるので、カム部9は抜け止め突起5f、5hの隙間から脱落しない。
【0051】
上述の実施の形態では、円柱突部8を鉛直方向の同一高さで回転軸C周りに回動自在に案内する位置決め手段を、絶縁ハウジング3を回路基板へ強固に固定するホールド金具4の一部の位置決め腕部10、10で構成したが、絶縁ハウジング3に固定される別の金具に形成してもよく、また、絶縁ハウジング3自体に位置決め腕部10、10の間隔に相当する凹溝を形成して上記位置決め手段とすることもできる。
【0052】
また、円柱突部8の縦断面の輪郭は、少なくともロックレバー2が解放位置とロック位置の間で回動する間に同一の高さであればよく、必ずしも円形の輪郭である必要はない。
【0053】
更に、上述の実施の形態では、ロックレバー2が絶縁ハウジング3の後方に配置されたバックフリップ方式で説明したが、前方に配置される等他のロック方式の電気コネクタであっても、本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
ロックレバーを回動させて無挿抜力で可撓性フラットケーブルを電気接続する電気コネクタに適している。
【符号の説明】
【0055】
1 電気コネクタ
2 ロックレバー
3 絶縁ハウジング
4 ホールド金具
5 導電コンタクト
5b 起立支持片
5c 可動接触片(接触片)
5d 従動片
6 挿入凹部
7 カム収容凹部
8 円柱突部(環状突部)
9 カム部
10 位置決め腕部(位置決め手段)
120 可撓性フラットケーブル
C 回転軸