特許第6474073号(P6474073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474073アンテナ取付・方向調整装置およびアンテナ取付・方向調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474073
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】アンテナ取付・方向調整装置およびアンテナ取付・方向調整方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/08 20060101AFI20190218BHJP
   H01Q 1/12 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   H01Q3/08
   H01Q1/12 E
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-227603(P2014-227603)
(22)【出願日】2014年11月8日
(65)【公開番号】特開2016-92704(P2016-92704A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年8月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501087892
【氏名又は名称】株式会社松浦機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】松浦 良彦
【審査官】 橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−135719(JP,A)
【文献】 特開平04−250703(JP,A)
【文献】 特開2000−269721(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/118796(WO,A1)
【文献】 特開平09−083235(JP,A)
【文献】 特開2015−177483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性アンテナを、横方向および/または縦方向に回動可能に立設物に取付ける取付本体部と、
前記取付本体部に固定され、前記指向性アンテナを回動させるモータと、
前記モータを駆動制御することにより、前記指向性アンテナの方向を通信状態が良好となる方向に自動的に調整する方向調整制御装置と、
を備えるアンテナ取付・方向調整装置であって、
前記モータは、前記取付本体部に取り外し可能にボルトによって固定され、
前記指向性アンテナを回動不能とすることができる回動不能手段を備え、
前記取付本体部は、
前記立設物に対して固定される固定フレームと、
横方向および縦方向の何れか一方に回動可能に前記固定フレームに支持された一方の回動フレームと、
横方向および縦方向の何れか他方に回動可能に前記一方の回動フレームに支持された他方の回動フレームと、
前記他方の回動フレームに設けられ、前記指向性アンテナが取り付けられるアンテナ取付部と、
を含み、
前記固定フレームと前記一方の回動フレームとは互いに縦方向又は横方向に重なり合うプレート部を有し、
前記一方の回動フレームと前記他方の回動フレームとは互いに横方向又は縦方向に重なり合うプレート部を有し、
前記固定フレームおよび前記一方の回動フレームの片方に前記モータが出力軸を当該プレート部の板厚方向にした状態で固定されており、
前記モータの出力軸には、該出力軸に対して偏心した偏心軸が設けられ、該偏心軸が前記固定フレームおよび前記一方の回動フレームのもう片方に形成された長穴に挿入されており、
前記長穴に挿入された前記偏心軸が前記モータの出力軸の軸線回りに回動することにより、前記指向性アンテナが、通信状態が良好となる方向に回動される、
ことを特徴とするアンテナ取付・方向調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ取付・方向調整装置を用いて立設物に指向性アンテナを取付け、当該指向性アンテナの方向調整を行う、アンテナ取付・方向調整方法であって、
前記アンテナ取付・方向調整装置を立設物に取付ける取付工程と、
前記アンテナ取付・方向調整装置が立設物に取付けられた状態で、前記方向調整制御装置および前記モータにより前記指向性アンテナの方向を通信状態が良好となる方向に自動的に調整させる方向調整工程と、
前記方向調整工程が完了した後、前記回動不能手段により、前記指向性アンテナを回動不能とする回動不能工程と、
前記方向調整工程が完了した後又は前記回動不能工程が完了した後、前記ボルトを緩めて前記モータを前記取付本体部から取り外して撤収する工程と、
を含むことを特徴とするアンテナ取付・方向調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性アンテナを支柱、建物などの立設物へ取付けるとともに、アンテナの方向調整を行うために用いられる装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震、津波等の災害などによって地域の通信設備が破壊された場合、通信局(中継局または子局)となる設備を搭載した車両(以下「移動局」ともいう。)が出動して地域の通信網を早急に回復させることが予定されている。移動局の台数には限りがあるため、移動局は通信網の復旧に関する優先順位の高い場所から配備される。その後、当該優先順位の高い場所には、臨時の通信局が構築され、移動局は、別の場所に移動して通信局としての役割を果たす。
【0003】
臨時の通信局を構築するに当たっては、地上に支柱を立設し、その支柱に指向性アンテナを取り付け、自動又は手動によりそのアンテナを基地局(親局)に向ける作業が行われる。災害時においては、誰でも簡単かつ迅速にアンテナの方向調整を行えることが重要であるため、アンテナの方向調整を自動で行う装置が貢献する。なお、アンテナの方向調整を自動的に行う装置は、例えば特許文献1〜4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−003940号公報
【特許文献2】特開2010−278807号公報
【特許文献3】特開2010−239186号公報
【特許文献4】特開2010−212950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、アンテナの方向調整を自動で行う装置は、モータや方向調整のための制御装置などを含んでいるため、装置1台当たりのコストが高価になる。しかし、多くの場合、臨時の通信局は多数構築する必要があることから、装置1台当たりのコストはできるだけ低く抑えることが望まれる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、指向性アンテナを支柱などの立設物へ取付けるとともに、アンテナの方向調整を自動で行うことができ、しかも、それらを低コストにて実施することが可能な装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアンテナ取付・方向調整装置は、指向性アンテナを、横方向および/または縦方向に回動可能に立設物に取付ける取付本体部と、前記取付本体部に固定され、前記指向性アンテナを回動させるモータと、前記モータを駆動制御することにより前記指向性アンテナの方向を通信状態が良好となる方向に自動的に調整する方向調整制御装置と、を備え、前記モータは、前記取付本体部に取り外し可能にボルトによって固定されている。また、前記指向性アンテナを回動不能とすることができる回動不能手段を備える。
【0008】
かかる構成を備えるアンテナ取付・方向調整装置によれば、回動不能手段により、方向調整が完了した指向性アンテナの方向が回動不能に固定される(位置決めされる)ので、方向調整制御装置やモータを撤収しても良好な通信状態を維持することができる。また、他の部分に比べて高価になりがちな方向調整制御装置やモータは、取付本体部から取り外し、撤収して別の場所で再利用することができるため、通信局1カ所当たりの構築コストが大幅に低減される。
【0009】
前記取付本体部は、前記立設物に対して固定される固定フレームと、横方向および縦方向の何れか一方に回動可能に前記固定フレームに支持された一方の回動フレームと、横方向および縦方向の何れか他方に回動可能に前記一方の回動フレームに支持された他方の回動フレームと、前記他方の回動フレームに設けられ前記指向性アンテナが取り付けられるアンテナ取付部と、を含み、前記固定フレームと前記一方の回動フレームとは互いに縦方向又は横方向に重なり合うプレート部を有し、前記一方の回動フレームと前記他方の回動フレームとは互いに横方向又は縦方向に重なり合うプレート部を有し、前記回動不能手段は、前記重なり合うプレート部同士を任意の相対回動位置において締結可能な構造を有する、ものとしてもよい。
【0010】
かかる構成を備えるアンテナ取付・方向調整装置によれば、重なり合うプレート部同士を任意の相対回動位置において締結可能な構造は安価に製造可能であり、方向調整制御装置やモータのように撤収して別の場所で再利用することができない取付本体部の低コスト化を図ることができる。
【0011】
前記取付本体部は、前記立設物に対して固定される固定フレームと、横方向および縦方向の何れか一方に回動可能に前記固定フレームに支持された一方の回動フレームと、横方向および縦方向の何れか他方に回動可能に前記一方の回動フレームに支持された他方の回動フレームと、前記他方の回動フレームに設けられ、前記指向性アンテナが取り付けられるアンテナ取付部と、を含み、前記固定フレームと前記一方の回動フレームとは互いに縦方向又は横方向に重なり合うプレート部を有し、前記一方の回動フレームと前記他方の回動フレームとは互いに横方向又は縦方向に重なり合うプレート部を有し、前記固定フレームおよび前記一方の回動フレームの片方に前記モータが出力軸を当該プレート部の板厚方向にした状態で固定されており、前記モータの出力軸には、該出力軸に対して偏心した偏心軸が設けられ、該偏心軸が前記固定フレームおよび前記一方の回動フレームのもう片方に形成された長穴に挿入されており、前記長穴に挿入された前記心軸が前記モータの出力軸の軸線回りに回動することにより、前記指向性アンテナが、通信状態が良好となる方向に回動される、ものとしてもよい。
【0012】
かかる構成を備えるアンテナ取付・方向調整装置によれば、モータの出力軸に、該出力軸に対して偏心した偏心軸が設けられ、該偏心軸が前記固定フレームおよび前記第1回動フレームの他方に形成された長穴に挿入され、前記指向性アンテナの回動が、前記長穴に挿入された前記遠心軸が前記モータの出力軸の軸線回りに回動することにより行われる。このような回動機構は安価に製造可能であるため、方向調整制御装置やモータのように撤収して別の場所で再利用することができない取付本体部の低コスト化を図ることができる。
【0013】
本発明のアンテナ取付・方向調整方法は、上記何れかのアンテナ取付・方向調整装置を用いて立設物に指向性アンテナを取付け、当該指向性アンテナの方向調整を行う、ものであって、前記アンテナ取付・方向調整装置を立設物に取付ける取付工程と、前記アンテナ取付・方向調整装置が立設物に取付けられた状態で、前記方向調整制御装置および前記モータにより前記指向性アンテナの方向を通信状態が良好となる方向に自動的に調整させる方向調整工程と、前記方向調整工程が完了した後、前記回動不能手段により、前記指向性アンテナを回動不能とする回動不能工程と、前記方向調整工程が完了した後又は前記回動不能工程が完了した後、前記ボルトを緩めて前記モータを前記取付本体部から取り外して撤収する工程と、を含むことを特徴としている。
【0014】
かかる工程を含むアンテナ取付・方向調整方法によれば、既述した作用効果と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、指向性アンテナを支柱などの立設物へ取付けるとともに、アンテナの方向調整を自動で行わせる場合に、それらを低コストで実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】アンテナ取付・方向調整装置の左側面図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3】アンテナ取付・方向調整装置の右側面図である。
図4】アンテナ取付・方向調整装置の平面図である。
図5図4のB−B断面図であって中間部分を省略した図である。但し、モータ等は断面化していない。
図6図1のC−C断面図であってアンテナ等を省略した図である。但し、モータ等は断面化していない。
図7図1のD−D断面図である。但し、モータおよびその周辺物の図示は省略している。
図8】指向性アンテナが上下方向(縦方向)に回動した様子を示す図である。
図9】指向性アンテナが水平方向(横方向)に回動した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係るアンテナ取付・方向調整装置および該装置を用いたアンテナ取付・方向調整方法について図面を参照しながら説明する。
【0018】
本発明の実施の形態に係るアンテナ取付・方向調整装置1は、図1図4に示すように、地上に立設された支柱2に対して指向性アンテナ3(以下単に「アンテナ3」ともいう。)を取付け、アンテナ3の方向を通信状態が良好(又は最良)となる方向に自動的に調整するものである。なお、図面に例示するアンテナ3は、5GHz帯広域無線LANシステムの子機のアンテナであるが、本装置1により支柱2に取付けるアンテナはこの種のものに限定されない。
【0019】
アンテナ取付・方向調整装置1は、主に、取付本体部4、モータ6、方向調整制御装置7(図1のみに示す)等で構成されている。
【0020】
取付本体部4は、固定フレーム8、第1回動フレーム9、第2回動フレーム11、アンテナ取付部12、回動機構13A,13B等で構成されている。
【0021】
固定フレーム8は、支柱2に直接固定される。この固定フレームは、支柱2に所定の固定具(例えばスチールバンド等)にて固定される固定プレート部14と、この固定プレート部14の上部から水平方向に延出した上部水平プレート部16と、該上部水平プレート部16に対して平行に固定プレート部14の下部から水平方向に延出した下部水平プレート部17とで構成されている。2枚の水平プレート部16,17は、それぞれ、一端部を固定プレート部14に突き当てた状態でボルト18(図4参照)にて固定されている。
【0022】
第1回動フレーム9は、図9に示すように、水平方向(横方向)に回動可能に固定フレーム8に支持されている。図1に示すように、この第1回動フレーム9の回動中心線Mは、支柱2と略同じ方向(縦方向)を向いており、前記2枚の水平プレート部16,17および後記2枚の水平回動プレート部21,22を貫通している。第1回動フレーム9は、円柱状の縦部材19と、縦部材19の上端部にボルト(不図示)にて固定された上部水平回動プレート部21と、縦部材19の下端部にボルト(不図示)にて固定された下部水平回動プレート部22と、縦部材19の中間部に挟持固定された挟持ブロック23と、挟持ブロック23に板厚方向を水平方向に向けてボルト24にて固定された縦プレート部26とを備えている。なお、上部水平回動プレート部21と下部水平回動プレート部22とは互いに平行に、縦部材19側から固定プレート部14側に延びている。
【0023】
上部水平回動プレート部21と上部水平プレート部16とは上下に(縦方向に)重なり合っている。上部水平回動プレート部21(第1回動フレーム9)は、上部水平プレート部16(固定フレーム8)に対して回動可能なようにリーマボルト27にて締結されている。リーマボルト27には、図5に示すように、先端側に上部水平プレート部16に螺着した雄ねじ27aが形成され、ボルト頭27bと雄ねじ27aとの間に上部水平回動プレート部21に相対回転自在に嵌入された円柱状の軸部27cが形成されている。
【0024】
また、下部水平回動プレート部22と下部水平プレート部17も上下に重なり合っており、同様にリーマボルト27により、下部水平回動プレート部22(第1回動フレーム9)が下部水平プレート部17(固定フレーム8)に対して回動可能なように締結されている。
【0025】
なお、上記水平回動プレート部21,22の円滑な回動動作を確保するため、上部水平回動プレート部21に形成された軸穴21aとリーマボルト27の軸部27cとの隙間、ならびに、下部水平回動プレート部22に形成された軸穴22aとリーマボルト27の軸部27cとの隙間に、フランジ付すべり軸受28が嵌入されている。
【0026】
第2回動フレーム11は、図8に示すように、縦方向に回動可能に第1回動フレーム9に支持されている。図6に示すように、回動の中心線Nは、水平方向(横方向)に向いており、第1回動フレーム9の縦プレート部26に直交している。第2回動フレーム11は、第1回動フレーム9の縦プレート部26と左右に(横方向に)重なり合う縦回動プレート部29と、縦回動プレート部29にボルト31にて取付けられたアンテナ取付プレート32(図4等参照)とを備えている。なお、アンテナ取付プレート32は、指向性アンテナ3を取付けるアンテナ取付部12を有する。
【0027】
図6に示すように、縦回動プレート部29は、リーマボルト27により、縦プレート部26に対して回動可能に締結されている。リーマボルト27は、既述したものと同様のものであり、雄ねじ27aが縦プレート部26に螺着され、軸部27cが縦回動プレート部29に回転自在に嵌入されている。なお、縦回動プレート部29の円滑な回動動作を確保するため、縦回動プレート部29に形成された軸穴29bとリーマボルト27の軸部27cとの隙間には、フランジ付すべり軸受28が嵌入されている。
【0028】
モータ6としては、ステッピングモータが採用され、本装置1には2つのモータ6(ステッピングモータ)が使用されている。図5に示すように、一方のモータ6は、固定フレーム8の下部水平プレート部17にブラケット33を介して取り外し可能にボルト34およびボルト35にて固定されている。モータ6の出力軸6aには、エキセントリックシャフト36が回転一体に取付けられている。エキセントリックシャフト36は、出力軸6aと同芯の大径シャフト部36aと、該大径シャフト部36aの先端側に形成され出力軸6aに対して偏心した偏心シャフト部36bとを有する。大径シャフト部36aは、ブラケット33に形成された軸穴33aおよび下部水平プレート部17に形成された軸穴17aに回転自在に挿通されており、偏心シャフト部36bは、第1回動フレーム9の下部水平回動プレート部22の下面に形成された長穴22bに挿入されている。このため、方向調整制御装置7の指示に従ってモータ6の出力軸6aが指示量だけ回転すると、偏心シャフト部36bは出力軸6aの軸線回りに回転し、偏心シャフト部36bが挿入された長穴22bを有する下部水平回動プレート部22は、回動中心線M回りに水平方向に回動する。これにより、アンテナ3は正面から視て水平方向(横方向)に方向調整制御装置7の指示角だけ回動する(図9参照)。
【0029】
図6に示すように、もう一方のモータ6は、第1回動フレーム9の縦プレート部26にブラケット33を介して取り外し可能にボルト37およびボルト40にて固定されている。このモータ6の出力軸6aには、既述したエキセントリックシャフト36が回転一体に取付けられており、その大径シャフト部36aは、ブラケット33に形成された軸穴33aおよび縦プレート部26に形成された軸穴26aに回転自在に挿通されている。また、偏心シャフト部36bは、第2回動フレーム11の縦回動プレート部29の片面に形成された長穴29aに挿入されている。このため、方向調整制御装置7の指示に従ってモータ6の出力軸6aが指示量だけ回転すると、偏心シャフト部36bが出力軸6aの軸線回りに回転し、偏心シャフト部36bが挿入された長穴29aを有する縦回動プレート部29は、回動中心線N回りに縦方向に回動する。これにより、アンテナ3は正面から視て上下方向(縦方向)に方向調整制御装置7の指示角だけ回動する(図8参照)。
【0030】
方向調整制御装置7は、2つのモータ6,6をそれぞれ駆動制御することにより、第1回動フレーム9および第2回動フレーム11を回動させ、アンテナ3の方向を通信状態が良好(又は最良)となる方向に調整する。方向調整制御装置7は2つのモータ6,6、指向性アンテナ3等と接続されており、モータ6,6を駆動させることにより、指向性アンテナ3の方向を変化させながら、電波受信強度のサーチを行い、最も受信強度が良好な方向に指向性アンテナの方向の位置決めを行う。なお、本実施形態においては、方向調整制御装置7は、電波受信強度に基づいて、指向性アンテナ3の方向の位置決めを行うようになっているが、方向調整制御はこれに限定されず、その他の制御方法を採用してもよい。
【0031】
本実施形態に係るアンテナ取付・方向調整装置1は、その他、指向性アンテナ3の水平方向(横方向)への回動を不能とする横回動不能手段と、指向性アンテナ3の上下方向(縦方向)への回動を不能とする縦回動不能手段と、を備えている。
【0032】
横回動不能手段は、図5および図7に示すように、重なり合う下部水平プレート部17と下部水平回動プレート部22、並びに、重なり合う上部水平プレート部16と上部水平回動プレート部21を任意の相対回動位置で締結可能な構造38を有している。この構造38は、回動中心Mを中心とした円弧に沿って下部水平回動プレート部22および上部水平回動プレート部21に形成された円弧状長穴22c,21cと、この円弧状長穴22c,21cに挿通され、下部水平プレート部17および上部水平プレート部16に形成された雌ねじ39に先端部が螺着されたボルト37とで構成されている。すなわち、これらのボルト37を締め付けることにより、下部水平プレート部17と下部水平回動プレート部22、並びに、上部水平プレート部16と上部水平回動プレート部21を任意の相対回動位置におい締結し、第1回動フレーム9およびアンテナ3の水平方向(横方向)への回動を不能にすることができる。
【0033】
縦回動不能手段は、図3および図6に示すように、重なり合う縦プレート部26と縦回動プレート部29とを任意の相対回動位置において締結可能な構造42を有している。この構造42は、回動中心Nを中心とした円弧に沿って縦回動プレート部29に形成された円弧状長穴29cと、この円弧状長穴29cに挿通され、縦プレート部26に形成された雌ねじ43に先端部が螺着されたボルト41とで構成されている。すなわち、このボルト41を締め付けることにより、縦プレート部26と縦回動プレート部29とを任意の相対回動位置において締結し第2回動フレーム11およびアンテナ3の上下方向(縦方向)への回動を不能にすることができる。
【0034】
以上のように構成されたアンテナ取付・方向調整装置1を支柱2に設置するにあたっては、先ず、アンテナ取付・方向調整装置1を支柱2に取付具(例えばスチールバンド等)を用いて取付け、その後、方向調整制御装置7および2つのモータ6,6により通信状態が良好(又は最良)となる方向にアンテナ3の方向を自動的に調整させる(図8図9参照)。
【0035】
その後、既述した3本のボルト37,37,41を締め付けて、第1回動フレーム9の回動および第2回動フレーム11の回動を不能とすることで、アンテナ3の方向を方向調整制御装置7により位置決めされた方向で固定する。
【0036】
最後に、既述したボルト35,40を緩めて2つのモータ6をブラケット33とともに取付本体部4から取り外し撤収する。
【0037】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施の形態に係るアンテナ取付・方向調整装置および該装置を用いたアンテナ取付・方向調整方法によれば、回動不能手段により、通信状態が良好(又は最良)となる方向に調整されたアンテナ3の方向が機械的に回動不能に固定されるので、方向調整制御装置7やモータ6,6等を撤収しても良好な通信状態は維持される。また、取付本体部4等に比べて高価な方向調整制御装置7やモータ6は、撤収して別の場所で再利用することができるため、1つの通信局を構築するために必要な装置のコストが大幅に低減される。
【0038】
また、指向性アンテナ3を回動させるための回動機構13A,13Bや第1回動フレーム9および第2回動フレーム11を回動不能に固定するための機構38,42は既述したような簡素な機構であり、これらを低コストにて製造することが可能となる。このため、再利用できるモータ6や方向調整制御装置7とは異なり、多数の場所に設置して残すことが必要な取付本体部4の製造コストを安価に抑えることができる。
【0039】
<他の実施形態>
既述の実施形態では、固定フレーム8に対して横方向に回動する回動フレームが支持され、この回動フレームに対して縦方向に回動する回動フレームが支持されていたが、固定フレーム8に対して縦方向に回動する回動フレームを支持させ、この回動フレームに対して横方向に回動する回動フレームを支持させ、更にこの横方向に回動する回動フレームにアンテナ取付部を設けることも可能である。
【0040】
既述の実施形態における支柱2は立設物の一例として挙げている。立設物としては、支柱2のほか、建物、木などが挙げられる。
【符号の説明】
【0041】
1 アンテナ取付・方向調整装置
2 支柱(立設物)
3 指向性アンテナ
4 取付本体部
6 モータ
6a モータの出力軸
7 方向調整制御装置
8 固定フレーム
9 第1回動フレーム
11 第2回動フレーム
12 アンテナ取付部
16 上部水平プレート部(縦方向に重なり合うプレート部)
17 下部水平プレート部(縦方向に重なり合うプレート部)
21 上部水平回動プレート部(横方向に重なり合うプレート部)
22 下部水平回動プレート部(横方向に重なり合うプレート部)
22b 長穴
22c 円弧状長穴
26 縦プレート部
29 縦回動プレート部
29a 長穴
29c 円弧状長穴
34,35,37,40 モータを取外し可能に固定するボルト
36 エキセントリックシャフト
36b 偏芯シャフト部
38,42 相対回動位置において締結可能な構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9