【実施例】
【0066】
材料および方法
動物
成体雄(8〜10週齢)C57BL/6Jマウスおよびヘテロ変異Cx3cr1GFP/+マウス(B6.129P-Cx3cr1tm1Litt/J、CX3CR1ケモカイン受容体対立遺伝子の一方が、GFPをコードする遺伝子で置換されたマウス;Jung, S., J. Aliberti, P. Graemmel, M. J. Sunshine, G. W. Kreutzberg, A. Sher, and D. R. Littman. 2000. Analysis of fractalkine receptor CX(3)CR1 function by targeted deletion and green fluorescent protein reporter gene insertion. Mol. Cell. Biol. 20: 4106-4114)を用いる。さらに、単球およびBMのドナーとして、C57BL/6Jマウス、ヘテロ変異Cx3cr1GFP/+マウス、MHC-II欠損マウス(B6.129S-H2dlAb1-Ea/J)、およびIL-10欠損マウス(B6.129P2-Il10tm1Cgn/J; Kuhn, R., J. Lohler, D. Rennick, K. Rajewsky, and W. Muller. 1993. Interleukin-10-deficient mice develop chronic enterocolitis. Cell. 75:263-274)を用いる。CD11cの検出には、マウスCD11cプロモーターの制御下でGFPレポーターをコードする導入遺伝子を有するCD11cGFP/+トランスジェニックマウス(B6.FVB-Tg Itgax-DTR/GFP 57Lan/J; Jung, S., D. Unutmaz, P. Wong, G. Sano, K. De los Santos, T. Sparwasser, S. Wu, S. Vuthoori, K. Ko, F. Zavala, et al. 2002. In vivo depletion of CD11c
+ dendritic cells abrogates priming of CD8
+ T cells by exogenous cell-associated antigens. Immunity. 17:211-220)を用いる。FoxP3GFPマウスは、Memorial Sloan-Kettering Cancer CenterのAlexander Rudensky博士の厚意により入手した。ハンチンチンをコードするヒト遺伝子を過剰発現するトランスジェニックR6/2マウスは、ジャクソン研究所から入手した。
【0067】
特に記載がない限り、動物は、ワイツマン科学研究所の動物飼育センターより提供を受けた。本明細書に詳細に記載された実験はいずれも、ワイツマン科学研究所の動物実験委員会(the Institutional Animal Care and Use Committee)により策定された規程に準ずる。
【0068】
BMキメラ
過去の報告(Rolls, A., R. Shechter, A. London, Y. Segev, J. Jacob-Hirsch, N. Amariglio, G. Rechavi, and M. Schwartz. 2008. Two faces of chondroitin sulfate proteoglycan in spinal cord repair: a role in microglia/macrophage activation. PLoS Med. 5:e171.; Shechter et al., 2009)に従って、[Cx3cr1
GFP/+>WT]BMキメラを作製する。すなわち、WTレシピエントマウスの頭部を遮蔽して全身に致死量の放射線(950rad)を照射する。頭部を遮蔽することによって、網膜への直接的な損傷と、グルタミン酸塩の毒性暴露により誘導される骨髄系細胞以外の骨髄系細胞による浸潤を防ぐ。翌日、過去に報告されたプロトコル(Shechter et al., 2009)に従い、BM細胞5×10
6個を用いてマウスを新たに作製する。BM移植の8〜12週間後、キメラマウスをグルタミン酸塩による毒性暴露またはEAU誘導プロトコルに供する。
【0069】
MC-21の投与
MC-21(CCR2に対する抗体;Mack, M., J. Cihak, C. Simonis, B. Luckow, A. E. Proudfoot, J. Plachy, H. Bruhl, M. Frink, H. J. Anders, V. Vielhauer, et al. 2001. Expression and characterization of the chemokine receptors CCR2 and CCR5 in mice. J. Immunol. 166:4697-4704)の腹腔内注射を損傷形成直後から開始し、実験期間を通して継続する。EAU誘導の場合、注射はEAUのピークの前後に行い、1日おきに合計5回行った(注射1回につき8μg投与)。
【0070】
養子単球移入
過去の報告(Varol, C., L. Landsman, D. K. Fogg, L. Greenshtein, B. Gildor, R. Margalit, V. Kalchenko, F. Geissmann, and S. Jung. 2007. Monocytes give rise to mucosal, but not splenic, conventional dendritic cells. J. Exp. Med. 204:171-180)に従って、CD115
+単球を単離する。すなわち、マウスの大腿骨および脛骨からBM細胞を採取し、フィコール密度勾配により単核細胞を濃縮する。製造元のプロトコルに従ってビオチン化抗CD115抗体およびストレプトアビジン結合磁気ビーズ(ミルテニーバイオテク)を用いたMACSで濃縮することによってCD115
+BM単球集団を単離する。次いで、損傷形成後1日目に単球(WT、Cx
3cr1
GFP/+、IL-10欠損、またはMHC-II欠損)を静脈内注射する(マウス1匹につき4〜5×10
6個の細胞を投与)。
【0071】
BrdUの投与レジメン
Zhao et al., 2005(Growth factor responsive progenitors in the postnatal mammalian retina. Dev. Dyn. 232:349-358)に記載の方法を一部変更したプロトコルを用いて、BrdU(シグマアルドリッチ)をPBS中に溶解し、該溶液の硝子体内注射(眼球1つあたり1μg投与)を損傷形成直後から開始し、3日間継続して行う。この反復注射は、組織の他の部分を穿孔することなく、同じ孔から行う。これによって、網膜は、注射を1回しか受けていない場合と同等な形態を維持すると考えられる。最後の注射から1日後に動物を屠殺して増殖前駆細胞数の測定を行う。あるいは、最後の注射から1週間後に動物を屠殺して細胞の分化を検出する。コントロール動物には、グルタミン酸塩による毒性暴露やIOPの上昇を行うことなく、同じ投与レジメンに従って硝子体にBrdUを投与する。様々な単球操作を行った動物の網膜や毛様体を比較する際にこれと同じプロトコルが用いられることから、損傷とそれに次ぐBrdUの反復注射による増殖RPC数に対する相乗効果を否定することはできないが、こうした操作の後に見られる増殖前駆細胞数の変化は単球を介した効果に起因する可能性が高いと考えられることには注目されたい。
【0072】
フルオロゴールドによるRGCの標識
解剖学的に無傷の神経細胞を検出するため、損傷形成後3日目に、5%フルオロゴールド(蛍光色素)の生理食塩水溶液1μlをマウスの両側上丘に注射する。両側上丘における注射位置は、ブレグマの後方2.92mm、正中線の側方0.5mm、および頭蓋からの深さ2mmとする。72時間後にマウスを屠殺して眼球を取り出し、網膜を平坦にしながらPBS中4%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて全載標本とする。視神経円板からの距離がほぼ同じとなるように(0.3mm)視野を選択して、視神経円板からの距離に応じたRGC密度の変動を除外した。マウスに施した処置についての情報を持たない観察者によって蛍光顕微鏡(倍率800倍)下で視野をカウントした。各網膜について、1視野あたりの平均RGC数を算出した。詳細については、Schori et al., 2001(Vaccination for protection of retinal ganglion cells against death from glutamate cytotoxicity and ocular hypertension: implications for glaucoma. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 98:3398-3403)およびSchwartz and Kipnis, 2007(Model of acute injury to study neuroprotection. Methods Mol. Biol. 399:41-53)を参照されたい。
【0073】
免疫組織化学的検査
過去の報告(Shechter, R., Y. Ziv, and M. Schwartz. 2007. New GABAergic interneurons supported by myelin-specific T cells are formed in intact adult spinal cord. Stem Cells 25:2277-2282)に従って、PBS灌流固定後に眼球を取り出し、2.5%PFA中で24時間かけて後固定して、70%エタノール中に移し、続いてパラフィン包埋した。病理組織学的検査を行うため、切片をいくつか選択してヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。免疫標識に用いた抗体は、ウサギ抗GFP(1:100、MBL)およびマウス抗Brn3a(1:50、サンタクルーズバイオテクノロジー社)であった。M.O.M. Immunodetection Kit(ベクターラボラトリーズ)を使用して、マウス一次モノクローナル抗体の局在を特定した。活性化した骨髄系細胞を標識するため、FITC標識Bandeiraea simplicifoliaイソレクチンB4(IB-4;1:50;シグマアルドリッチ)を二次抗体溶液に加え、1時間インキュベートした。使用した二次抗体は、Cy2/Cy3標識ロバ抗マウス抗体またはCy2/Cy3標識ロバ抗ウサギ抗体(1:150〜1:200、いずれもJackson ImmunoResearch Laboratories社より入手)を含んでいた。スライドをヘキスト(1:2,000;インビトロジェン)で1分間染色した。顕微鏡分析には蛍光顕微鏡(E800、ニコン)を使用した。この蛍光顕微鏡は、デジタルカメラ(DXM 1200F;ニコン)、および20×、NA0.50の対物レンズまたは40×、NA0.75の対物レンズ(Plan Fluor;ニコン)を備えていた。画像取得ソフトウェアNIS-Elements F3(ニコン)を使用して、後固定後の組織の撮影を24℃で行った。撮影した画像は、フォトショップ9.0(アドビ)を使用してコントラストを微調整してトリミング、結合および最適化し、Canvas X(Deneba Software)を使用してレイアウトした。
【0074】
網膜の単離およびフローサイトメトリー分析
過去の報告(Kerr, E.C., B. J. Raveney, D. A. Copland, A. D. Dick, and L. B. Nicholson. 2008. Analysis of retinal cellular infiltrate in experimental autoimmune uveoretinitis reveals multiple regulatory cell populations. J Autoimmun 31:354-361, Luger, D., P. B. Silver, J. Tang, D. Cua, Z. Chen, Y. Iwakura, E. P. Bowman, N. M. Sgambellone, C. C. Chan, and R. R. Caspi. 2008. Either a Th17 or a Th1 effector response can drive autoimmunity: conditions of disease induction affect dominant effector category. J Exp Med 205:799-810)に従って、PBSで心臓内灌流を行い、解剖により網膜を取り出し、単一細胞懸濁液を調製した。蛍光色素標識モノクローナル抗体(mAb)をBD社、BioLegend社、eBioscience社またはAbDSerotec社から購入し、製造元のプロトコルに従って使用した。使用した蛍光色素標識モノクローナル抗体は、PEで標識した抗CD11b抗体、抗CD206(MMR)抗体および抗IL-4Rα抗体;PerCP-cy5.5で標識した抗Ly6C抗体および抗CD11b抗体;アロフィコシアニン(APC)で標識した抗CD115抗体、抗TCRβ抗体、抗FoxP3抗体および抗CD204抗体;Alexa647で標識した抗デクチン−1抗体;ならびにPacific Blue/Brilliant Violetで標識した抗TCRβ抗体、抗CD4抗体および抗CD45.2抗体であった。製造元のプロトコルに従ってFoxp3染色バッファーセット(eBioscience)を使用してFoxP3染色を行った。FACSDivaソフトウェアを使用してFACS LSRIIサイトメーター(いずれもBD社)により細胞を分析した。FlowJoソフトウェア(Tree Star社)で分析を行った。いずれの実験においても、関連する陰性コントロール群および陽性コントロール群を用いて、目的とする集団を決定し、それ以外の集団は除外した。
【0075】
in vivo蛍光イメージング
マウスを麻酔し、プラスチック器具を使用して軽く固定する。網膜を可視化するため、0.5%トロピカミド(Dr. Fischer)を1滴滴下して瞳孔を広げ、眼用潤滑剤(Celluspan;Dr. Fischer)を1滴滴下して眼球上にガラス製カバースリップを載せる。マウスにローダミンデキストラン(マウス1匹につき1mg;シグマアルドリッチ)を静脈内注射して血管を可視化した。蛍光照明装置およびPixelfly QE電荷結合素子カメラ(PCO)を備えたZoom Stereo Microscope SZX-RFL-2(オリンパス)の観察野にマウスを置く。赤色フィルターセットの励起波長は510〜550nmであり、発光波長は590nmである(ロングパス)。緑色フィルターセットの励起波長は460〜490nmであり、発光波長は510〜550nmである。蛍光露光時間は50ミリ秒とする。画像の取得はCamwareカメラ制御ソフトウェアプログラム(PCO)を使用して行う。画像分析はImageJ 1.43ソフトウェア(W. Rasband、アメリカ国立衛生研究所、メリーランド州ベセスダ)を使用して行う。
【0076】
統計的分析
データ分析では、スチューデントのt検定を用いて2群を比較する。複数の群の比較には一元配置分散分析を用いる。帰無仮説が否定された場合、フィッシャーのLSD検定により各群を一対比較して追跡を行う(F<0.05)。結果は平均値±SEで示す。グラフ中、y軸のエラーバーはSEを表す。ぶどう膜炎に関する研究では、Levene検定により等分散性を調べた。等分散であった場合、2群の比較にはスチューデントのt検定を用い、複数の群の比較には一元配置分散分析を用いてデータの分析を行った。帰無仮説が否定された場合、TukeyのHSD検定により各群を一対比較して追跡を行った(p<0.05)。不等分散であった場合、データを対数変換して可能であれば等分散とし、等分散とすることができなかった場合、Kruskal-Wallis検定を用いて複数の群を比較し、続いてDunn検定を行った。結果は平均値±SEで示す。グラフ中、y軸のエラーバーはSEを表す。
【0077】
実施例1:CX3CR1の高レベル発現およびCCR2の低レベル発現を示すヒト単核細胞のPBMCからの単離
ヒト単球は、CD14およびCD16の発現に基づいて3つの集団、すなわち、CD14
+CD16
-単球集団、CD14
+CD16
+単球集団、およびCD14
dimCD16
+単球集団に分けられる。CD14
+CD16
-単球は血中単球の80%〜90%を占め、ケモカイン受容体CCR2を高レベルで発現し、ケモカイン受容体CX
3CR1(フラクタルカインの受容体)を低レベルで発現する。この主要なサブセットとは対照的に、ヒトCD16
+単球はCX
3CR1を高レベルで発現し、CCR2を低レベルで発現する(Cros et al., 2010)。Crosら(2010)によれば、遺伝子発現分析により、ヒトCD14
dimCD16
+単球とマウスパトロールGr1
dim単球との類似性が示された。CD14
dimCD16
+細胞は局所組織の自然免疫監視および自己免疫疾患の病態形成に関与する真性単球である。
【0078】
CX
3CR1の高レベル発現およびCCR2の低レベル発現を示すCD14
dimCD16
+細胞をPBMCから単離するため、スキームIに示す通り、PBMCからのCD14
+の単離をコントロールとして、CCR2のネガティブ選択(CCR2
+除去)とCD14
+(CD14
+)のポジティブ選択とを組み合わせた方法を用いた。
【0079】
CD14dimCD16+細胞集団の濃縮:
(i)ヒト末梢血からの単核細胞の単離:
健常なドナーから採取した新鮮血(8ml)をPBS中2.5%FCSで1:1に希釈し、フィコール勾配(Ficoll-Paque plus、アマシャムバイオサイエンス)上に重層した。チューブを1000g、20℃で20分間遠心分離した。単核細胞相を採取し、PBSで2回洗浄した。
【0080】
(ii)CCR2+の除去:
FcRブロッキング試薬(細胞10
6個あたり2.5μl)(130-059-901、ミルテニーバイオテク)を使用して、単核細胞を室温で15分間処理することにより、Fc受容体をブロッキングした。次いで、洗浄せずに、抗ヒトCCR2モノクローナル−ビオチン試薬(FAB151B、R&Dシステムズ)(細胞10
6個あたり10μl)を添加し、2〜8℃で35分間インキュベートした。細胞を冷MACS(登録商標)バッファー(PBS中、1mM EDTAおよび2%FCS)で洗浄し、ストレプトアビジンマイクロビーズ(130-048-101、ミルテニーバイオテク)(細胞10
7個あたり20μl)を添加し、2〜8℃で20分間インキュベートした。細胞を洗浄し、MACSバッファー0.5ml中に再懸濁した。製造元のプロトコルに従ってLDカラム(130-042-901、ミルテニーバイオテク)を使用し、CCR2
+細胞を除去した。
【0081】
(iii)CD14+細胞の単離:
上記細胞をMACSバッファー(細胞10
7個あたり80μl)中に再懸濁し、CD14
+マイクロビーズ(130-050-201、ミルテニーバイオテク)(細胞10
7個あたり20μl)を添加し、2〜8℃で15分間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、MACSバッファー0.5ml中に再懸濁した。製造元のプロトコルに従って、LSカラム(130-042-401、ミルテニーバイオテク)を使用した磁気分離を行い、CD14
+細胞をポジティブ選択した。
【0082】
(iv)蛍光活性化セルソーティング(FACS(登録商標))によるヒト単核細胞の染色
各試料を製造元のプロトコルに従って以下のように染色した。各試料を70μmナイロンメッシュに通し、FCRブロッキング試薬(細胞10
6個あたり30μl)(130-059-901、ミルテニーバイオテク)を用いて室温で15分間ブロッキングした。製造元のプロトコルに従って蛍光色素標識抗ヒトモノクローナル抗体を使用した。使用した抗体は、PerCP標識抗CD45抗体(345809、BD)、FITC標識抗CD115抗体(FAB329F、R&Dシステムズ)、Pacific Blue(登録商標)標識抗CD14抗体(BLG-325616)、Alexa Fluor(登録商標)700標識抗CD16抗体(BLG-302026)、PE標識抗CX
3CR1抗体(MBL-D070-5)、およびPerCP標識抗CCR2抗体(BLG-335303)であった。
【0083】
実施例2:網膜における神経細胞変性の抑制
いくつかの網膜変性モデルを選択して使用する。使用する網膜変性モデルは、神経変性条件下において一般的に見られる毒性メディエーターであるグルタミン酸塩を用いて網膜を毒性暴露させたEAU誘導;視神経挫滅;高IOPモデル;および色素上皮変性病態を最もよく模倣するトランスジェニックマウスである。
【0084】
EAU誘導
EAU誘導はヒト後部ぶどう膜炎のモデルである。ぶどう膜炎は網膜変性を生じることが多いため、このモデルをCNS神経変性のモデルとみなす。2.5mg/mlの濃度(最終濃度:1.25mg/ml)の結核菌H37.RA株を含有するフロイントの完全アジュバント(CFA)との1:1エマルションとして、ヒト光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)に由来するペプチド(1〜20番目の残基)(22)(AnaSpec社、GL Biochem (Shanghai)社、またはワイツマン研究所のペプチド合成ユニット)500μgをマウスに皮下注射する。これと同時に、マウスの腹腔内に百日咳毒素(シグマ)1μgを注射する。
【0085】
上記の投与により、免疫してから14日後までに80〜100%のマウスにおいて疾患が誘導される。疾患のピークは免疫後22日目〜29日目に見られる。特異的RGCマーカーであるBrn3aの免疫染色(Nadal-Nicolas, F. M., M. Jimenez-Lopez, P. Sobrado-Calvo, L. Nieto-Lopez, I. Canovas-Martinez, M. Salinas-Navarro, M. Vidal-Sanz, and M. Agudo. 2009. Brn3a as a marker of retinal ganglion cells: qualitative and quantitative time course studies in naive and optic nerve-injured retinas. Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 50:3860-3868)、および解剖学的に無傷な軸索を有する細胞の標識に広く用いられている方法であるフルオロゴールドを用いたRGCの逆行性標識(上掲のSchori et al., 2002;上掲のSchwartz and Kipnis, 2007)を使用して、グルタミン酸塩による毒性暴露後7日目、またはEAU疾患のピークの前後およびEAU疾患のピーク期に生存しているRGCを評価する。
【0086】
硝子体内グルタミン酸塩毒性モデル
CNS障害の多くにおいてグルタミン酸塩の上昇が報告されている。グルタミン酸塩は、興奮毒性化合物として、急性および慢性の変性障害(緑内障の視神経変性を含む)において最も一般的に見られる毒性メディエーターの1つである(Doble, 1999)。したがって、グルタミン酸塩は、中枢神経系神経の神経変性の全般的なモデルとなる。このモデルにグルタミン酸塩を眼内注射すると、網膜変性障害(加齢黄斑変性、網膜色素変性など)、前部虚血性視神経症、緑内障、またはぶどう膜炎といった様々な眼疾患において生じるような網膜神経節細胞の神経変性を特に典型的に示す。過去の報告(Yoles E, Friedmann I, Barouch R, Shani Y, Schwartz M. Self-Protective mechanism awakened by glutamate in retinal ganglion cells. J Neurotrauma. 2001, Mar; 18(3):339-4; Schori, H., E. Yoles, L. A. Wheeler, T. Raveh, A. Kimchi, and M.Schwartz. 2002. Immune-related mechanisms participating in resistance and susceptibility to glutamate toxicity. Eur. J. Neurosci. 16:557-564)に従って、マウスを麻酔し、局所麻酔(Localin;Dr. Fischer)を眼に直接投与することにより処置し、l−グルタミン酸塩(シグマアルドリッチ)400nmolを含有する生理食塩水を総量1μlで硝子体内注射する。
【0087】
N−メチル−N−ニトロソウレア(MNU)毒性モデル
様々な動物種において、MNUを単回全身投与すると網膜変性が引き起こされる。この網膜変性は再現性が高く、また、ヒト網膜色素変性と類似したアポトーシスを介して、MNU投与後7日以内に光受容体細胞の喪失が起こる(Tsubura A, Yoshizawa K, Kuwata M, Uehara N. Animal models for retinitis pigmentosa induced by MNU; disease progression, mechanisms and therapeutic trials. Histol Histopathol. 2010 Jul;25(7):933-44. Review)。
【0088】
マウスにおける視神経挫滅
適切に設定された視神経挫滅により、軸索損傷の逆行性シグナル伝達が生じて進行性の神経節細胞死が誘導される(Levkovitch-Verbin H, Harris-Cerruti C, Groner Y, Wheeler LA, Schwartz M, Yoles E. RGC death in mice after optic nerve crush injury: oxidative stress and neuroprotection. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2000 Dec;41(13):4169-74)。すなわち、マウスを麻酔し、以下のようにして眼球から1〜2mmの視神経眼窩内部位に重篤な挫滅創を形成させる。手術用双眼顕微鏡を用いて結膜を切開し、視神経を露出させる。調整されたクロスアクション鉗子を使用し、血液供給を妨げないよう十分注意しながら、神経を2秒間挫滅させる。
【0089】
高IOPモデル
眼圧(IOP)は緑内障の危険因子であり、網膜や視神経の変性を引き起こす場合があるため、一般に神経変性モデルとして、特に緑内障モデルとして使用される。過去の報告(Da, T., and A. S. Verkman. 2004. Aquaporin-4 gene disruption in mice protects against impaired retinal function and cell death after ischemia. Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 45:4477-4483; Ben Simon, G. J., S. Bakalash, E. Aloni, and M. Rosner. 2006. A rat model for acute rise in intraocular pressure: immune modulation as a therapeutic strategy. Am. J. Ophthalmol. 141:1105-1111)に従って虚血性損傷を作製する。すなわち、麻酔を行った後、等張食塩溶液(生理食塩水)を入れた容器と連結したマイクロピペットを前房内に挿入することによって眼圧(IOP)を上昇させる。この容器を適切な高さに配置することにより、120mmHgの眼圧を60分間にわたって誘導する。
【0090】
トランスジェニックマウスモデル
適切なトランスジェニックマウスとして、例えば、コロイデレミア(CHM)ノックアウトマウス(Tanya Tolmachova, Silene T. Wavre-Shapton, Alun R. Barnard, Robert E. MacLaren, Clare E. Futter, and Miguel C. Seabra. Retinal Pigment Epithelium Defects Accelerate Photoreceptor Degeneration in Cell Type-Specific Knockout Mouse Models of Choroideremia. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2010 October; 51(10): 4913-4920.)や、ロドプシン変異(Pro23His)を有するトランスジェニックマウス(Jane E. Olsson, Jon W. Gordon, Basil S. Pawlyk, Dorothy Roof, Annmarie Hayes, Robert S. Molday, Shizuo Mukai, Glenn S. Cowley, Eliot L. Berson, Thaddeus P. Dryja. Transgenic mice with a rhodopsin mutation (Pro23His): A mouse model of autosomal dominant retinitis pigmentosa. Neuron (1992) 9:815-830)が挙げられる。
【0091】
プロトコル
移植用の単球を同系マウスの骨髄から単離した。抗CD3抗体、抗CD19抗体および抗CD56抗体を結合させたマイクロビーズでPBMCを標識し、T細胞、B細胞およびNK細胞を除去した。磁気カラムを通過した非標識細胞を採取した。この画分を抗CD16マイクロビーズで標識し、再び上記磁気カラムに載せた。カラムを通過した細胞を採取し、CD14蛍光抗体およびCD16蛍光抗体で染色してFACS分析を行った。PBMCのうち、生細胞全体の19%は単球(CD14
+)である。これらの単球のうち約10%はCD16
+である。最終生成物中、生細胞の約90%は単球であり、そのうちCD16
+は0.1%未満である。
【0092】
次いで、網膜神経節細胞に損傷を与える前または与えた後に上記亜集団を眼内注射することによって、網膜損傷発症後に該亜集団が網膜神経節細胞を保護する能力を調べる。
【0093】
損傷発症後の様々な時点において、自己由来単球の単回注射によりマウスを処置する。各動物モデルにつき、(i)硝子体内注射および(ii)網膜下注射の2種の投与経路について調査する。この研究は、形態学的評価基準または網膜断面の生存細胞成分のカウント数に基づいた網膜神経細胞の生存の評価をエンドポイントとする。
【0094】
単球亜集団の網膜下注射は、例えばWarfinge et al., 2011の記載に従って実施できるが、網膜下に単球を注射できる技術であればどのようなものを用いてもよい。過去の報告(K. Warfvinge, J. F. Kiilgaard, E. B. Lavik et al., “Retinal progenitor cell xenografts to the pig retina: morphologic integration and cytochemical differentiation,” Archives of Ophthalmology, vol. 123, no. 10, pp. 1385-1393, 2005)に従って、動物を全身麻酔し、硝子体網膜手術を実施する。すなわち、ミダゾラム、ゾラゼパム、チレタミン、キシラジン、ケタミンおよびメサドンからなる筋肉内注射によりブタを前麻酔する。次いで挿管し、人工呼吸器につなぎ、イソフルラン/酸素で麻酔する。手術中、フェニレフリン、トロピカミドおよびアトロピンを局所投与することによって瞳孔を広げる。手術野を準備し、通常の滅菌手法によりドレープをかけてから手術を開始する。局所的3ポート経毛様体扁平部硝子体切除術を行い、緑色アルゴンレーザーを用いて網膜の中心領域を格子状に焼き付ける。網膜切開術を準備し、レーザーで焼き付けた領域の下の網膜下腔に上記単球を適切な注射針で注入する。移植組織が正確な位置に注入されたかどうかは、注射の際に直接可視化することによって確認する。感染予防のため、手術終了時にクロラムフェニコールを予防的に投与する。
【0095】
実施例3:単球亜集団による加齢黄斑変性の治療
12時間の周期で明期と暗期とを繰り返す3000ルクスの光にアルビノラットを暴露させ、これを1ヶ月間、3ヶ月間または6ヶ月間継続する。安楽死させる前に、眼底検査、眼底写真撮影、フルオレセインおよびインドシアニングリーンによる血管造影、ならびに光コヒーレンストモグラフィーを行う。光暴露させたラットを1ヶ月後、3ヶ月後または6ヶ月後に安楽死させ、病理組織学的評価を行う。4−ヒドロキシ−2−ノネナール修飾タンパク質およびニトロチロシン修飾タンパク質の存在について、免疫蛍光染色により網膜を調べる(Daniel M. Albert et al., 2010. Development of choroidal neovascularization in rats with advanced intense cyclic light-induced retinal degeneration. Arch Ophthalmol. 2010;128(2):212-222)。また、損傷発症後の様々な時点において、光暴露させたラットを自己由来単球の単回注射により上記と同様にして処置する。各動物モデルにつき、(i)硝子体内注射および(ii)網膜下注射の2種の投与経路ついて調査する。この研究は、形態学的評価基準または網膜断面の生存細胞成分のカウント数に基づいた網膜神経細胞の生存の評価をエンドポイントとする。
【0096】
AMDおよびアルツハイマー病の類似点
AMDおよびアルツハイマー病はいずれも、かなりの割合の高齢者が罹患する慢性神経変性疾患である。これらの疾患は不可逆的な機能喪失を特徴とし、これに対する治療法は存在しない。AMDおよびアルツハイマー病において生じる変性の病態形成にはある程度の共通点がある(Klaver et al.,1999. Is age-related maculopathy associated with Alzheimer’s disease? The Rotterdam study. Am J Epidemiol;150:963-8)。AMDおよびアルツハイマー病の病因はほとんど分かっていないが、これらの疾患の病態形成は驚くほど類似している。AMDの初期における組織病理学的所見は細胞外におけるドルーゼンの沈着および基底膜沈着である(Hageman, GS. & Mullins, RF. Molecular composition of drusen as related to substructural phenotype. Mol Vis 5, 28 (1999))。これらの病変は、脂質、糖タンパク質およびグリコサミノグリカンを含有し、変性しつつある神経網膜に由来すると考えられる。ドルーゼン沈着物の蓄積は、光受容体の喪失およびそれに続く黄斑機能の低下と関連している(Holz et al., Bilateral macular drusen in age-related macular degeneration. Prognosis and risk factors. Ophthalmology 101, 1522-8 (1994))。上述したように、アルツハイマー病の初期における病理学的特徴は、細胞外老人斑の存在である(Selkoe, 1991. The molecular pathology of Alzheimer’s disease. Neuron 6, 487-98)。老人斑は様々な成分から構成されており、そのなかには、アミロイド前駆体タンパク質として知られる膜貫通型ポリペプチドファミリーのタンパク質分解切断により生じる小さなペプチドが含まれる。2種のペプチドがアルツハイマー病の病態形成の主因として広く認められており、これらはアミロイド−β(Aβ)ペプチドとして知られている。アミロイド沈着物とドルーゼンとでいくつかの成分が共通しており、このような成分として例えばビトロネクチン、アミロイドP、アポリポタンパク質Eなどのタンパク質が挙げられ、さらには、アルツハイマー病のアミロイド斑に関連するAβペプチドおよびアミロイドオリゴマーもこのような成分に含まれる(Luibl et al., 2006. Drusen deposits associated with aging and age-related macular degeneration contain nonfibrillar amyloid oligomers. J Clin Invest 116, 378-85; Mullins et al., 2000. Drusen associated with aging and age-related macular degeneration contain proteins common to extracellular deposits associated with atherosclerosis, elastosis, amyloidosis, and dense deposit disease. Faseb J 14, 835-46; Yoshida et al., 2005. The potential role of amyloid beta in the pathogenesis of age-related macular degeneration. J Clin Invest 115, 2793-800)。
【0097】
アルツハイマー病において見られるAβペプチドはミクログリア細胞を活性化して、反応性酸素種、反応性窒素種、炎症性サイトカイン、補体タンパク質、神経変性変化を引き起こす他の炎症性メディエーターなどの、神経毒性を持つ可能性のある物質を産生させる。アルツハイマー病に関連する炎症反応においては、CNSでの自然免疫を担うCD11b
+活性化ミクログリアが見られる場合が多い。CD11b
+ミクログリアは高齢者の正常脳と関連していることが報告されており(Streit, 2004. Microglia and Alzheimer’s disease pathogenesis. J Neurosci Res 77, 1-8)、このミクログリアは加齢性認知障害と神経発生障害の両方を引き起こしている可能性がある(Monje et al., 2003. Inflammatory blockade restores adult hippocampal neurogenesis. Science 302, 1760-5)。また、CD11bはアルツハイマー病患者においても確認されている(Akiyama & McGeer, 1990. Brain microglia constitutively express beta-2 integrins. J Neuroimmunol 30, 81-93)。さらに、炎症性メディエーターはアミロイド沈着物とドルーゼンの両方に存在することから、AMDおよびアルツハイマー病の炎症経路において共通の役割を果たしていることが示唆される(Hageman et al., 2001. Molecular composition of drusen as related to substructural phenotype. Mol Vis 5, 28)。ドルーゼンの生合成において局所炎症が果たしている役割から、アルツハイマー病において生じるプロセスとの類似性が示唆され、アルツハイマー病では、細胞外プラークや沈着物の蓄積によって慢性的な局所炎症反応が誘導され、これによって一次的な病原性刺激作用が増強される(Akiyama et al., 2000. Inflammation and Alzheimer’s disease. Neurobiol Aging 21, 383-421)。
【0098】
上記を考慮すれば、上記で定義された単球亜集団のAMD治療に対する有効性を、凝集Aβに暴露させた神経細胞を利用したモデルを用いて評価することもできる。
【0099】
実施例4:マウス単球の硝子体内注射−グルタミン酸塩の毒性に暴露させた後の網膜神経節細胞の生存率に対する効果および注射した細胞の特徴分析
プロトコル:
マウスを麻酔し、L−グルタミン酸塩(GT)(生理食塩水1μl中)400nmolを右眼に硝子体内注射した。翌日、マウス由来のCD115
+骨髄単核細胞(BMMC)を硝子体内注射用細胞として精製した。すなわち、(cx
3cr1骨髄プロモーターの制御下にGFPレポーターを有する)ドナーマウスの大腿骨および脛骨から骨髄細胞を採取し、フィコール密度勾配により単核細胞を濃縮した。目的の集団をポジティブ選択するためのビオチン化抗CD115抗体およびストレプトアビジン結合磁気ビーズ(ミルテニーバイオテク)を使用した磁気細胞分離(MACS)システムにより、CD115
+BM単球集団を単離した。GTの毒性に暴露させた眼にマウス1匹につき(PBS1μl中)10
5個の単球を(前日にGTを注入した孔から)硝子体内注射した。コントロール群にはPBSを注射した。
【0100】
GT注射後7日目に、マウスを灌流固定し、眼球を採取して2.5%PFA中に一晩おいた。次いでこの溶液を1%PFAに交換し、さらに3〜4日間にわたって眼球を浸漬した後、RGCマーカーであるBrn3aで免疫組織染色した。1試料につき、眼の深さ方向の様々な位置から切片を4つ採取し、それぞれの切片について測定を行った。網膜の神経節細胞層において、Brn3a
+、IB-4
-およびHoechst
+の細胞をカウントした。PBSを注射した眼を陰性コントロールとして使用し、同一マウスの損傷を与えなかった反対側の眼をRGC生存率の陽性コントロールとして使用した。
【0101】
GFPで染色することにより、注射したマウス細胞を眼内で追跡し、さらに、いくつかの免疫マーカー(サイトカイン、増殖因子、食作用マーカー)を染色してこの細胞の表現型の特徴を分析した。
【0102】
結果:
硝子体内に注射したマウス単球はRGCに対して保護効果を示した(
図1A〜C)。単球は、注射した眼の硝子体内と神経節細胞層(損傷を与えたRGCが存在する部位)の近傍に検出された。また、いくつかの単球は網膜下腔でも検出できた(
図2)。
【0103】
GFPと様々な免疫マーカーとを二重免疫染色したところ、CX
3CR1−GFP
+マウス単球において、IL-10、TGF-β、IGF-1、BDNF、CD36およびArg-1(アルギナーゼ−1)の発現が見られ、さらにTNFαおよびIL-1βが発現していることも分かった(
図2)。この分析は定性分析であることから、注射した細胞におけるこれらの様々なマーカーの発現頻度は測定できていないことには注意されたい。
【0104】
実施例5:CNS由来自己免疫ワクチン接種による、視神経挫滅後の網膜へのマクロファージおよびT細胞の浸潤の増強
損傷神経系部位への単球の動員を増強する方法が重要ではないこと、および網膜の損傷だけでなく視神経の損傷も治療できる可能性があることを示すため、CNS特異的抗原を用いた免疫化により内在性細胞の視神経損傷部位への遊走を促した。
【0105】
プロトコル:
[Cx3cr1
GFP/+→WT]BMキメラを以下のようにして作製した。WTレシピエントマウスの全身に致死量の放射線(950rad)を照射した。この際、頭部を遮蔽して、網膜への直接的な損傷と、視神経挫滅(ONC)により誘導される骨髄系細胞以外の骨髄系細胞による浸潤を防いだ。翌日、Cx3cr1
GFP/+トランスジェニックマウスに由来する骨髄細胞5×10
6個を尾静脈に注射することによって、マウスを新たに作製した。得られたマウスにおいては、血液から浸潤した単球のみがGFP標識を有する。
【0106】
次いで、2.5mg/mlのフロイントの完全アジュバント(Difco)にMOG改変ペプチド(45D;配列:MEVGWYRSPFDRVVHLYRNGK)100μgを乳化させたエマルション100μlを1群のマウスに皮下注射した。
【0107】
ワクチン接種から1週間後、マウス(ワクチン接種群およびワクチン非接種群)を麻酔し、手術用双眼顕微鏡下でクロスアクション鉗子を使用して右視神経に重篤な挫滅創を形成した。反対側の神経には挫滅創を形成しなかった。
【0108】
ONCから7日目にマウスを灌流固定し、網膜を採取し、単一細胞懸濁液を作製してフローサイトメトリー分析を行った。
【0109】
結果:
ONCにより網膜中の総白血球数(CD45
+)が増加し、この白血球の増加は、45Dをワクチン接種した損傷マウスにおいて増強された(
図3A)。
【0110】
ワクチン非接種の損傷マウスの網膜と比較して、ONCを行う前に45Dをワクチン接種したマウスの網膜では、マクロファージおよびT細胞も増加した(
図3Bおよび
図3C)。
【0111】
実施例6:CNS由来自己免疫ワクチン接種によってもたらされる、視神経挫滅後の網膜神経節細胞に対する神経保護効果の評価
プロトコル:
損傷網膜における末梢単球数の増加に対するワクチン接種の効果と、視神経挫滅損傷後のRGCの生存率との相関関係を以下の実験により証明することができる。2.5mg/mlのフロイントの完全アジュバント(Difco)にMOG改変ペプチド45D(45番目のセリンがアスパラギン酸に改変されたミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)
35−55)100μgを乳化させたエマルション100μlを1群のマウスに皮下注射する。
【0112】
ワクチン接種から1週間後、マウス(ワクチン接種群およびワクチン非接種群)を麻酔し、手術用双眼顕微鏡下でクロスアクション鉗子を使用して右視神経に重篤な挫滅創を形成する。反対側の神経には挫滅創を形成しない。
【0113】
ONCから7日後にマウスを灌流固定し、眼球を採取して固定液(2.5%PFA→1%PFA)に入れ、RGCマーカーであるBrn3aを用いた免疫組織染色を行う。1試料につき、眼の深さ方向の様々な位置から切片を4つ採取し、それぞれの切片について測定を行う。網膜の神経節細胞層において、Brn3a
+、IB-4
-およびHoechst
+の細胞をカウントする。ワクチン非接種マウスの損傷を与えなかった方の眼をRGC生存率の陽性コントロール(100%)として使用する。
【0114】
参考文献
【0115】
Cros J, Cagnard N, Woollard K, Patey N, Zhang SY, Senechal B, Puel A, Biswas SK, Moshous D, Picard C, Jais JP, D'Cruz D, Casanova JL, Trouillet C, Geissmann F (2010). Human CD14dim monocytes patrol and sense nucleic acids and viruses via TLR7 and TLR8 receptors. Immunity. 33(3):375-86
【0116】
Doble (1999). The role of excitotoxicity in neurodegenerative disease: implications for therapy", PharmacolTher, 81:163-221.
【0117】
Knoller N, Auerbach G, Fulga V, Zelig G, Attias J, Bakimer R, Marder J.B., Yoles E, Belkin M, Schwartz M, and Hadani M (2005) Clinical experience using incubated autologous macrophages as a treatment for complete spinal cord injury: Phase I study results J Neurosurg Spine 3:173-181.
【0118】
London, A, Elena Itskovich, Inbal Benhar, Vyacheslav Kalchenko, Matthias Mack, Steffen Jung, and Michal Schwartz (2011). Neuroprotection and progenitor cell renewal in the injured adult murine retina requires healing monocyte-derived macrophages. The Journal of Experimental Medicine;208(1):23-39.
【0119】
Pitt et al. (2000). "Glutamate excitotoxicity in a model of multiple sclerosis", Nat Med, 6:67-70.
【0120】
Shechter R, London A, Varol C, Raposo C, Cusimano M, Yovel G, Rolls A, Mack M, Pluchino S, Martino G, Jung S, Schwartz M (2009). Infiltrating blood-derived macrophages are vital cells playing an anti-inflammatory role in recovery from spinal cord injury in mice. PLoS Med 6(7): e1000113.
【0121】
Tang J, Kern TS. Inflammation in diabetic retinopathy. Prog Retin Eye Res. 2011 Sep;30(5):343-58. doi: 10.1016/j.preteyeres.2011.05.002. Epub 2011 May 25. Review
【0122】
Yoshida N, Ikeda Y, Notomi S, Ishikawa K, Murakami Y, Hisatomi T, Enaida H, Ishibashi T. Clinical evidence of sustained chronic inflammatory reaction in retinitis pigmentosa. Ophthalmology. 2013 Jan;120(1):100-5.