(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直交する3軸方向の磁界成分を検知する地磁気センサと、直交する3軸方向の加速度を検知する加速度センサと、前記地磁気センサの検知出力と前記加速度センサの検知出力が入力される制御部とを搭載した電子機器において、
前記制御部では、前記加速度センサからの検知出力によって機器が静止状態であると判定したときは、前記地磁気センサからの検知出力を更新せず、
前記地磁気センサからの検知出力によって機器が静止状態であると判定したときは、前記加速度センサからの検知出力を更新しないことを特徴とする電子機器。
前記加速度センサからの検知出力によって機器が静止状態であると判定し、且つ重力方向に向く回転軸を中心として回転していないと判定したときに、前記地磁気センサからの検知出力を更新しない請求項1記載の電子機器。
前記地磁気センサからの検知出力によって機器が静止状態であると判定し、且つ地磁気の方向に向く回転軸を中心として回転していないと判定したときに、前記加速度センサからの検知出力を更新しない請求項1または2記載の電子機器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、加速度センサからの検知出力のみから、電子機器が静止状態であるか否かを正確に検知できるものではない。
【0007】
例えば、電子機器が重力方向に向く軸を中心として回転動作しているときは、加速度センサからの検知出力が変化しないために機器が静止していると判定されてしまう。この場合には、機器が動いているのにもかかわらず地磁気センサからの検知出力が無視されてしまうという誤動作状態になる。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、地磁気センサと加速度センサからの検知出力の双方の出力を使用し、ノイズの影響を受けにくい状態で、機器の姿勢や動作を検知できるようにした電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、直交する3軸方向の磁界成分を検知する地磁気センサと、直交する3軸方向の加速度を検知する加速度センサと、前記地磁気センサの検知出力と前記加速度センサの検知出力が入力される制御部とを搭載した電子機器において、
前記制御部では、前記加速度センサからの検知出力によって機器が静止状態であると判定したときは、前記地磁気センサからの検知出力を更新せず、
前記地磁気センサからの検知出力によって機器が静止状態であると判定したときは、前記加速度センサからの検知出力を更新しないことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の電子機器は、加速度センサと地磁気センサのいずれか一方の検知出力から機器の静止状態であると判定されたときには、他方の出力を更新しないようにすることで、機器の姿勢検出がノイズの影響を受けにくくなる。
【0011】
本発明の電子機器は、前記加速度センサからの検知出力によって機器が静止状態であると判定し、且つ重力方向に向く回転軸を中心として回転していないと判定したときに、前記地磁気センサからの検知出力を更新しないことが好ましい。
【0012】
また、前記地磁気センサからの検知出力によって機器が静止状態であると判定し、且つ地磁気の方向に向く回転軸を中心として回転していないと判定したときに、前記加速度センサからの検知出力を更新しないことが好ましい。
【0013】
本発明の電子機器は、前記加速度センサからの検知出力のばらつきが所定のしきい値を超えていないときに、機器が静止状態であると判定することが好ましい。
【0014】
また、前記地磁気センサからの検知出力のばらつきが所定のしきい値を超えていないときに、機器が静止状態であると判定することが好ましい。
【0015】
本発明の電子機器は、前記地磁気センサからの検知出力と前記加速度センサからの検知出力に基づいて角速度を算出するものである。
【0016】
あるいは、前記地磁気センサからの検知出力と前記加速度センサからの検知出力に基づいて方位を算出するものである。
【0017】
本発明の電子機器は、前記地磁気センサからの検知出力と前記加速度センサからの検知出力に基づいて表示画面を制御する画像処理部が設けられているものとして構成できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、加速度センサと地磁気センサのいずれか一方の検知出力から機器が静止状態であると判断されたときに、他方の出力を更新しないようにすることで、機器が停止状態のときに検知出力のノイズの影響で表示状態などが誤動作するのを防止できるようになる。
【0019】
また、機器の回転軸が重力方向に向けられているときや、前記回転軸が地磁気の方向に向けられているときであっても、誤動作を防止できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示す本発明の実施の形態の電子機器1は携帯用情報端末であり、携帯電話やゲーム装置あるいはナビゲーション装置などとして使用される。電子機器1は、筐体2とその表面に位置する表示画面3を備えている。筐体2の内部には各種電子回路と共に液晶カラー表示パネルなどの表示パネル4(
図2参照)が設けられ、その表示画像が表示画面3に現れる。また表示画面3には、静電容量式などの透光性のタッチパネルが設けられ、指などで表示画面3を触れることで機器の操作が可能となっている。また、筐体2にはスピーカとマイクなどが備えられている。
【0022】
図1には、電子機器1の基準軸がx軸とy軸ならびにz軸で示されている。z軸は表示画面3に垂直な方向に設定され、x軸は表示画面3と平行で筐体2の幅方向に設定され、y軸は表示画面3と平行で筐体2の長手方向に設定されている。x−y−zの基準座標は、筐体2のいずれかの箇所を基準としてその向きが定義される。
【0023】
図1には、グローバル座標Xg−Yg−Zgが示されている。グローバル座標は電子機器1の姿勢と関係なく定義されるものであり、Zg軸が重力の加速度の方向であり、Xg−Yg平面が、重力の加速度の方向と直交する水平面である。
【0024】
図2に示すように、電子機器1の筐体2の内部に、地磁気センサ11と加速度センサ12が収納されている。
【0025】
地磁気センサ11は、x軸センサ11xとy軸センサ11yおよびz軸センサ11zを有している。
図1に示すように筐体2に予め基準座標x−y−zが決められており、電子機器1の筐体2が三次元空間内で動くと、これに追従して基準座標x−y−zが、グローバル座標Xg−Yg−Zg内で動くことになる。
【0026】
図3に示すように、x軸センサ11xは、前記基準座標x−y−zのx軸に沿って固定され、y軸センサ11yがy軸に沿って固定され、z軸センサ11zがz軸に沿って固定されている。x軸センサ11xとy軸センサ11yおよびz軸センサ11zは、いずれもGMR素子で構成されている。GMR素子は、Ni−Co合金やNi−Fe合金などの軟磁性材料で形成された固定磁性層および自由磁性層と、固定磁性層と自由磁性層との間に挟まれた銅などの非磁性導電層とを有している。固定磁性層の下に反強磁性層が積層され、反強磁性層と固定磁性層との反強結合により、固定磁性層の磁化が固定されている。
【0027】
図3に示すように、x軸センサ11xは、固定磁性層の磁化の向きが基準座標のx軸に沿うPx方向に固定されている。自由磁性層の磁化の向きは地磁気の向きに反応する。自由磁性層の磁化の向きがPx方向と平行になるとx軸センサ11xの抵抗値が極小になり、自由磁性層の磁化の向きがPx方向と逆向きになるとx軸センサ11xの抵抗値が極大になる。また、自由磁性層の磁化の向きがPx方向と直交すると、抵抗値が前記極大値と極小値との中間値となる。
【0028】
図2に示すように、筐体2の内部には、地磁気検知部13が設けられている。地磁気検知部13に、x軸センサ11xを含むブリッジ回路が設けられ、このブリッジ回路に電圧が印加されている。x軸センサ11xの固定磁性層の磁化の固定方向Pxを地磁気ベクトルVと同じ向きにすると、x軸センサ11xに与えられる磁界成分が極大値となる。このときx軸センサ11xの抵抗値が極小値となり、x軸センサ11xの固定磁性層の磁化の固定方向Pxを地磁気ベクトルVと反対に向けると、x軸センサ11xの抵抗値が極大値となる。これによりx軸センサ11xを含むブリッジ回路の検知出力が変化する。
【0029】
y軸センサ11yとz軸センサ11zも、それぞれブリッジ回路に含まれている。y軸センサ11yの固定磁性層の磁化の固定方向Pyを地磁気ベクトルVと同じ向きにすると、y軸センサ11yの抵抗値が極小値となり、y軸センサ11yの固定磁性層の磁化の固定方向Pyを地磁気ベクトルVと反対に向けると、y軸センサ11yの抵抗値が極大値となり、y軸センサ11を含むブリッジ回路の検知出力が変化する。これはz軸センサ11zにおいても同じである。
【0030】
x軸センサ11x,y軸センサ11y、z軸センサ11zとしては、地磁気ベクトルの向きによってプラス側の検知出力とマイナス側の検知出力が得られ、プラス側の検知出力の極大値とマイナス側の検知出力の極大値とで絶対値が同じになれば、GMR素子以外の磁気センサで構成することもできる。例えば、各軸に沿ってプラス側の磁界強度のみを検知できるホール素子またはMR素子と、マイナス側の磁界強度のみを検知できるホール素子またはMR素子を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
加速度センサ12は、x軸検知部12xとy軸検知部12yおよびz軸検知部12zを有している。それぞれの検知部は、質量と質量を支持する変形部と、この変形部の歪みを検知する圧電素子などで構成されている。
【0032】
x軸検知部12xは、
図1と
図3に示す基準座標x−y−zのx軸に向けられて設置されており、x軸のプラス側が重力方向に向けられると、変形部の歪み量が極大になり、x軸検知部12xの検知出力がプラス側の極大値になる。x軸のマイナス側が重力方向に向けられると、x軸検知部12xの検知出力がマイナス側の極大値になる。
【0033】
y軸検知部12yは、y軸に向けられて設置されており、y軸のプラス側が重力方向に向けられると、変形部の歪み量が極大になり、y軸検知部12yの検知出力がプラス側の極大値になる。y軸のマイナス側が重力方向に向けられると、y軸検知部12yの検知出力がマイナス側の極大値になる。
【0034】
z軸検知部12zは、z軸に向けられて設置されており、z軸のプラス側が重力方向に向けられると、変形部の歪み量が極大になり、z軸検知部12zの検知出力がプラス側の極大値になる。z軸のマイナス側が重力方向に向けられると、z軸検知部12zの検知出力がマイナス側の極大値になる。
【0035】
x軸検知部12xとy軸検知部12yおよびz軸検知部12zの検知出力は加速度検知部14によって取り出される。
【0036】
図2に示すように、筐体2の内部に制御部15が設けられている。制御部15は、A/D変換部とCPUとクロック回路およびバッファメモリなどから構成されている。制御部15では、クロック回路の計測時間に応じて、地磁気検知部13で検知された地磁気センサ11のx軸とy軸およびz軸の検知出力が、短いサイクルで間欠的にサンプリングされて読み出される。それぞれの検知出力は、制御部15内に設けられた前記A/D変換部によってディジタル値に変換される。また、加速度検知部14で検知された加速度センサ12のx軸とy軸およびz軸の加速度の検知出力も、短いサイクルで間欠的にサンプリングされて制御部15に読み出される。それぞれの検知出力は、制御部15内に設けられた前記A/D変換部によってディジタル値に変換される。
【0037】
地磁気検知部13から検知出力が呼び出されるサンプリング周期と、加速度検知部14から検知出力が呼び出されるサンプリング周期は一致している。
【0038】
制御部15を構成するCPUにはメモリ16が接続されている。メモリ16には、演算処理のためのソフトウエアがプログラミングされて格納されている。制御部15の演算処理は前記ソフトウエアによって実行される。
【0039】
地磁気検知部13から呼び出された加速度センサ12のx軸とy軸およびz軸の検知出力がA/D変換されて制御部15で演算されて、基準座標x−y−zにおいて加速度が最も大きくなる方向が求められ、その方向が重力の加速度Gの方向であると推定される。
図4に示す例では、検知された重力の加速度Gの向きが、基準座標のz軸のマイナス方向に対して角度φだけ傾いている。
【0040】
また、地磁気検知部13から呼び出された地磁気センサ11のx軸とy軸およびz軸の検知出力がA/D変換されて制御部15で演算されて、基準座標x−y−zにおいて磁力が最も大きくなる方向が求められる。その方向が地磁気Nの方向であると推定される。
図4の例では、検知された地磁気Nの方向が、基準座標のx−y面に対して伏角αを有しており、y軸のプラス方向に対して方位角βを有している。
【0041】
制御部15において、基準座標x−y−zを基準とした方位すなわち電子機器1から見た方位を演算するには、筐体2に設定されている基準座標x−y−zのz軸のマイナス方向を重力の加速度Gの方向に一致させるように、基準座標の向きを補正する。補正後の座標においてx−y平面に対する地磁気Nの方向の伏角αを算出し、また補正後の座標においてx−y平面上に投影した地磁気の方向に関し例えばx軸のプラス方向からの方位角βが求められる。
【0042】
補正後の座標軸に対して伏角と方位角を知ることで、グローバル座標Xg−Yg−Zgにおける方位に対する電子機器1の向きを知ることができる。
【0043】
また、地磁気検知部13から得られる地磁気センサ11の検知出力と、加速度検知部14から得られる加速度センサ12の検知出力とから電子機器1を動かしたときの角速度を算出することができる。
【0044】
図4に示すように、加速度センサ12の検知出力から重力の加速度Gの向きを求め、重力加速度Gの方向に対するz軸のピッチ角φを求め、このピッチ角φの変化量を時間で微分することで、電子機器1に設定されているz軸を倒す方向での角速度を算出することができる。
【0045】
また、地磁気センサ11からの検知出力から、地磁気Nの方向に対するy軸のロール角βを求めることができる。このロール角βの変化量を時間で微分することで、電子機器1がz軸を回転軸として動作するときの角速度を算出することができる。また、同様にして地磁気センサ11からの検知出力により、y軸回りの回転動作やx軸回りの回転動作の角速度を求めることもできる。
【0046】
図2に示すように、電子機器1の内部には画像処理部17が設けられており、画像処理部17から表示パネル4に映像信号が送られて、電子機器1の表示画面3に各種情報が映像として表示される。メモリ16に記録されているプログラムによりナビゲーション動作を行うときは、方位の算出値と筐体2に装備されているGPSシステムの受信結果から、電子機器1の現在位置が算出され、また角速度の算出値から、地図上で電子機器1の回転量に応じた表示が行われる。
【0047】
また、ゲーム装置としてのプログラムが実行されているときは、角速度の算出値に基づいて、表示画面3に表示されているゲーム情報が変化する。
【0048】
さらに電子機器1の筐体2の内部にはバッテリー18が収納され、電源回路19が設けられている。
【0049】
ここで、地磁気センサ11はセンサノイズや回路ノイズが発生しやすく、外的要因によっても検知出力にノイズが重畳することがある。また、トンネル内において鉱物などから発せられる磁気の影響を受けることによっても、前記ノイズが発生することがある。同様に、加速度センサ12も、環境温度などにより検知出力がオフセットするなどのノイズが発生しやすい。例えば、走行中の自動車内で使用しているときに、車両の旋回や急ブレーキあるいは急発進などの影響を受けやすい。
【0050】
その結果、電子機器1が完全に静止しているときでも、前記ノイズにより制御部15では方位が変化していると判定され、あるいは角速度が発生していると誤検出されて、静止状態にもかかわらず表示画面3に表示されている画像が動いたり揺れたりする現象が生じる。
【0051】
そこで、制御部15では
図5に示すフロー処理が行われ、静止状態のときに検知出力を更新せずに、ノイズが表示画像に影響を与えることのないようにしている。
【0052】
図5に示すフローでは、ST1(ステップ1)において、制御部15で、画像を表示するためのナビゲーション装置やゲーム装置などのプログラムが起動すると、ST2で地磁気検知部13から地磁気センサ11の検知出力が引き出され、制御部15内のバッファメモリに代入される。ST3では、加速度検知部14から加速度センサ12の検知出力が読み出され、バッファメモリに代入される。地磁気センサ11の検知出力の取得と加速度センサ12の検知出力の取得は同じ周期であるが、どちらが先であってもよい。
【0053】
ST4では、複数回取得された加速度センサ12の算出値のばらつきの標準偏差が求められ、ST5でこの標準偏差が予め決められたしきい値と比較される。標準偏差がしきい値よりも大きいときには、加速度センサ12の検知出力から電子機器1が静止状態であると判断されることはなくST12に移行する。ST8では、複数回取得された地磁気センサ11の算出値のばらつきの標準偏差が求められ、ST9でこの標準偏差が予め決められたしきい値と比較される。標準偏差がしきい値よりも大きいときは、地磁気センサ11の検知出力から電子機器1が静止状態であると判断されることはなくST12に移行する。
【0054】
ST12では、地磁気センサ11の検知出力から算出された地磁気Nの方向の情報と、加速度センサ12の検知出力から算出された重力の加速度Gの方向の情報の双方が方位算出や角速度算出のためのアルゴリズムに代入される。そしてST13に移行し、地磁気センサ11からの検知出力と加速度センサ12の検知出力とから方位が算出され、または電子機器1の動作の角速度が求められ、これらの算出値に基づいて表示画面3に表示されている画像が制御される。そして、ST14に移行し、ST1に戻って、さらに地磁気センサ11からの検知出力の取得と加速度センサ12からの検知出力の取得が繰り返される。
【0055】
ST5において、加速度センサ12の検知出力のばらつきの標準偏差がしきい値を超えていないと判定されたときは、電子機器1が静止状態である可能性が高いと判断されてST6に移行する。ST6では、電子機器1が重力方向に向く回転軸を中心として回転しているか否か判定される。例えば、ST5において、加速度センサ12からの検知出力がほとんど変化していないと判断されたときには、地磁気センサ11からの検知出力を参照する。地磁気センサ11からの検知出力により、電子機器1が重力方向(重力の加速度Gの方向)に向く回転軸を中心として回転している可能性が高いと判定されたときは、電子機器1が静止状態ではないと判定されてST12に移行する。このとき、ST12では、地磁気センサ11からの検知出力を優先し、あるいは地磁気センサ11からの検知出力のみが方位算出や角速度算出のアルゴリズムに代入され、ST13に移行する。
【0056】
ST13では、地磁気センサ11からの検知出力のみを使用して方位の算出や角速度の算出が行われる。そして、その算出結果が、表示画像に反映される。
【0057】
ST6において、回転軸が重力方向ではないと判定されたとき、すなわち、ST5において、加速度センサ12からの検知出力がほとんど変化していないと判断され、さらに重力方向を回転軸とする動作が行われていないと判定されたときは、電子機器1が静止状態である可能性がきわめて高いと判定される。このときは、ST7に移行し、地磁気センサ11の検知出力を更新せず、直前のデータ取得周期で取得された地磁気センサ11からの検知出力を方位算出や角速度算出のアルゴリズムに代入してST13に至る。この場合、地磁気センサ11からの検知出力は更新されないので、方位が変化することがなく角速度の算出値はゼロである。
【0058】
したがって、表示画面3に表示される画像は停止状態となり、電子機器1が静止姿勢である限り、表示画像が動いたり揺れたりするのを防止できるようになる。
【0059】
ST9において、地磁気センサ11の検知出力のばらつきの標準偏差がしきい値を超えていないと判定されたときは、電子機器1が静止状態である可能性が高いと判断されてST10に移行する。ST10では、電子機器1が地磁気Nに向く回転軸を中心として回転しているか否か判定される。例えば、ST9において、地磁気センサ11からの検知出力がほとんど変化していないと判断されたときは、加速度センサ12からの検知出力を参照する。加速度センサ12からの検知出力により、電子機器1が地磁気Nに向く回転軸を中心として回転している可能性が高いと判定されたときは、電子機器1が静止状態ではないと判定されてST12に移行する。ST12では、加速度センサ12からの検知出力を優先し、加速度センサ12からの検知出力のみが方位算出や角速度を算出するためのアルゴリズムに代入されて、ST13に移行する。
【0060】
ST13では、加速度センサ12からの検知出力のみを使用して方位の算出や角速度の算出が行われる。そして、その算出結果が、表示画像に反映される。
【0061】
ST10において、電子機器1が地磁気Nの方向に延びる回転軸を中心として回転しているのではないと判定されたとき、すなわち、ST9において、地磁気センサ11からの検知出力がほとんど変化していないと判断され、さらに地磁気Nに向く回転軸を中心とする回転動作が行われていないと判定されたときは、電子機器1が静止状態である可能性がきわめて高いと判定される。このときは、ST11に移行し、加速度センサ12の検知出力を更新せず、直前のデータ取得周期で取得された加速度センサ12からの検知出力を方位算出や角速度算出のアルゴリズムに代入してST13に至る。この場合、加速度センサ12からの検知出力は更新されないので、方位が変化することがなく角速度の算出値はゼロである。
【0062】
したがって、表示画面3に表示される画像は停止状態となり、電子機器1が静止姿勢である限り、表示画像が動いたり揺れたりするのを防止できるようになる。
【0063】
なお、
図5に示すフローチャートでは、電子機器1が静止状態となると、ST5からST6を経てST7に移行し、これと併行してST9からST10を経てST11に移行し、ST7の処理とST11の処理が併行して行われることがある。この場合には、地磁気センサ11からの検知出力と加速度センサ12からの検知出力の双方が更新されなくなり、表示画面3に表示されている画像が完全に静止した状態を維持できるようになる。
【0064】
この電子機器1では、静止状態のときに、表示画面3に表示された画像がノイズにより動くのを防止できる。また、電子機器1が重力方向に向く回転軸を中心とする回転動作を行っているときや地磁気Nを向く回転軸を中心とする回転動作を行っているときには、これを検知でき誤って静止状態であると判断されるのを防止できるようになる。
【0065】
図6は、本発明の実施の形態における角速度の算出値と比較例における角速度の算出値が比較されている。
【0066】
実施の形態は、ST6で加速度センサ12の検知出力のばらつきの標準偏差がしきい値を超えていないと判定され、ST6で電子機器1が重力方向に向く回転軸を中心として回転しているものではないと判断され、電子機器1が停止状態と判定されてST7で地磁気センサ11の検知出力を更新しない状態である。比較例は、ST4,ST5,ST6,ST7、ST8,ST9,ST10,ST11の処理を行わず、ST12において、地磁気センサ11からの検知出力と加速度センサ12からの検知出力の双方で常に角速度を算出する例を示している。
【0067】
図6の横軸は、地磁気センサ11と加速度センサから検知出力を取得する周期を示し、縦軸は、電子機器1を完全に静止させているときにおけるz軸回りの角速度の算出値である。実施の形態が実線で示され、比較例が破線で示されている。
【0068】
図6では、比較例では静止状態にもかかわらず角速度が算出されているのに対し、実施の形態では、角速度の変化がきわめて小さくなっているのが解る。