(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474135
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】流量制御部材を有する吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
A61F13/15
【請求項の数】26
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-549994(P2015-549994)
(86)(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公表番号】特表2016-501645(P2016-501645A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2012005389
(87)【国際公開番号】WO2014101928
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年10月28日
【審判番号】不服2017-8822(P2017-8822/J1)
【審判請求日】2017年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】506215320
【氏名又は名称】エシティ・ハイジーン・アンド・ヘルス・アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペル・ベリストローム
(72)【発明者】
【氏名】マリン・ルンドマン
(72)【発明者】
【氏名】シャルロット・パーション
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ミューラー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ミューラー
【合議体】
【審判長】
渡邊 豊英
【審判官】
佐々木 正章
【審判官】
門前 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平6−327711(JP,A)
【文献】
特開2006−167196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品(1)であって、
該吸収性物品(1)が、
液体透過性トップシート(2)、
液体不透過性バックシート(4)、
前記トップシート(2)と、前記バックシート(4)と、の間に封止された吸収性コア(6)、及び
前記トップシート(2)と、前記バックシート(4)と、の間に配置された流量制御部材(24)、
を備える個人用使い捨て式衛生物品である吸収性物品において、
前記流量制御部材(24)は、最上層(28)及び最下層(29)、並びに前記最上層(28)と前記最下層(29)との間の、パイル繊維(33)からなる相互接続層(30)であって、使用中に着用者によってかけられる圧力に対する耐圧性を有する前記相互接続層を備える、熱可塑性繊維を備えるスペーサー布(27)であり、
該スペーサー布(27)は、メカノ法に従って測定されるときに、少なくとも1.5×10−5m/gsmの、15kPaにおける坪量に対する厚みの比を有し、
前記最上層(28)は、前記最下層(29)の開口(32)より大きな開口面積を有する開口(31)を有し、
前記スペーサー布は少なくとも20mlの合計自由容積を有することを特徴とする、吸収性物品(1)。
【請求項2】
前記15kPaにおける坪量に対する厚みの比は、前記メカノ法に従って測定されるときに、2.5×10−5m/gsmより小さいことを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記15kPaにおける坪量に対する厚みの比は、前記メカノ法に従って測定されるときに、2.0×10−5m/gsmより小さいことを特徴とする請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記パイル繊維(33)は、80〜130dtexの細かさを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記パイル繊維(33)は、90〜120dtexの細かさを有することを特徴とする請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記パイル繊維(33)の接続層の密度は50〜150/cm2であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記パイル繊維(33)の接続層の密度は70〜100/cm2であることを特徴とする請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記スペーサー布(27)は、150〜300gsmの坪量を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記スペーサー布(27)は、150〜250gsmの坪量を有することを特徴とする請求項8に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記スペーサー布(27)は、200〜230gsmの坪量を有することを特徴とする請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記スペーサー布(27)は、ISO 5084に従って測定するとき、1kPaにおいて3〜6mmの厚みを有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記スペーサー布(27)は、ISO 5084に従って測定するとき、1kPaにおいて3.5〜5mmの厚みを有することを特徴とする請求項11に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記スペーサー布(27)の前記最上層(28)の開口(31)は、3.0〜4.5mmの長手方向の寸法と、1.5〜3.0mmの横方向の寸法を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記スペーサー布(27)の前記最上層(28)は、cm2あたり3〜8個の開口を有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記スペーサー布(27)の前記最上層(28)は、cm2あたり4〜6個の開口を有することを特徴とする請求項14に記載の吸収性物品。
【請求項16】
前記スペーサー布(27)の前記最下層(29)は、cm2あたり50〜150の開口(32)を有することを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項17】
前記スペーサー布(27)は、前記スペーサー布(27)の生産方向において5〜15コース/cm、及び前記スペーサー布(27)の横断方向において6〜12ウェール/cmを有することを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項18】
前記スペーサー布(27)は、前記スペーサー布(27)の生産方向において5〜15コース/cm、及び前記スペーサー布(27)の横断方向において7〜10ウェール/cmを有することを特徴とする請求項17に記載の吸収性物品。
【請求項19】
前記スペーサー布(27)は、前記スペーサー布(27)の生産方向において8〜12コース/cm、及び前記スペーサー布(27)の横断方向において6〜12ウェール/cmを有することを特徴とする請求項17に記載の吸収性物品。
【請求項20】
前記スペーサー布(27)は、前記スペーサー布(27)の生産方向において8〜12コース/cm、及び前記スペーサー布(27)の横断方向において7〜10ウェール/cmを有することを特徴とする請求項17に記載の吸収性物品。
【請求項21】
生産方向における前記スペーサー布(27)は、エダナ試験方法WSP 110.4 (05)破断荷重及び伸びNWに従って測定した場合に、10Nにおいて25%未満の伸びを有することを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項22】
生産方向における前記スペーサー布(27)は、エダナ試験方法WSP 110.4 (05)破断荷重及び伸びNWに従って測定した場合に、5Nにおいて15%未満の伸びを有することを特徴とする請求項21に記載の吸収性物品。
【請求項23】
前記スペーサー布(27)は、前記トップシート(2)と、前記吸収性コア(6)との間に配置されていることを特徴とする請求項1〜22のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項24】
前記吸収性コア(6)は、第1の吸収性コア層(23)と、第2の吸収性コア層(22)と、を備え、前記スペーサー布(27)は、前記第1の吸収性コア層(23)と、前記第2の吸収性コア層(22)と、の間に配置されていることを特徴とする請求項1〜22のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項25】
前記第1の吸収性コア層(23)は前記トップシート(2)と、前記第2の吸収性コア層(22)と、の間に配置されており、前記第1の吸収性コア層(23)は、前記吸収性物品の股部分において前記第1の吸収性コア層(23)を完全に貫通して延在する開口部(25)を有することを特徴とする請求項24に記載の吸収性物品。
【請求項26】
前記吸収性コア(6)は、超吸収性ポリマーを備えることを特徴とする請求項1〜25のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御部材を備える使い捨て式吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生目的のための使い捨て式吸収性物品は、通常は体液を吸収することを意図されている。使用者は、そのような物品に、薄く、快適で、同時に効果的に体液を吸収するという高い要求を課している。
【0003】
生理用ナプキン、おむつ、失禁ガード、又はその種のもののような使い捨て式の吸収性物品は、使用中は装着者に面する液体透過性のトップシート、液体不透過性のバックシート、及びこれらトップシートとバックシートとの間の吸収性構造を含む。一般に使用される吸収性構造は、比較的薄く、圧縮されており、いわゆる超吸収材を多量に含むことが多く、超吸収性材は、数秒の排尿の間に排出される場合のある大量の液体を即座に吸収することを可能とするために高い吸収能力を有するが、多くの場合、吸収速度があまりにも低い。したがって、液体捕捉層が通常は吸収性物品に組み込まれ、この層が大量の液体を迅速に受け取り、液体が吸収性構造によって吸収される前に、その液体を一時的に貯蔵する。液体捕捉層を備える吸収性物品の例は、特許文献1に開示されている。
【0004】
また、吸収性物品が十分な液体分配能力を有することも重要であり、それによって、漏れを避けることができるとともに、吸収性物品の吸収能力を十分に活用することができる。
【0005】
吸収性物品が装着者によって使用される場合、吸収性物品は物品を圧縮しようとする圧力にさらされる。そのような圧力は通常、吸収性パッドの中央で、立っているとき若しくは歩いているときには2〜5kPa、座っているときには10〜20kPa、及び座って前傾しているときは30kPa、自転車に乗っているときは50kPa以下である。吸収性物品における優れた液体分配特性を維持するためには、流量制御部材が高圧に耐えることが重要である。
【0006】
特に物品が圧力に曝されるときに、流量の制御を確保するための、使い捨て式吸収性衛生物品の改良に対する必要性がある。
【0007】
特許文献2は、スペーサー布(spacer fabric)の形態の湿度管理繊維複合材料を備える失禁用物品を開示している。そのような布は、洗濯でき、再使用できるとともに、物品を使い捨て製品として不適当にする繰り返される洗浄の後にその品質を維持するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際特許出願公開第2009/105000号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願公開第2005/051656号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
望ましい耐圧と、流量制御とを有する新規なスペーサー布の形態の流量制御部材を、個人用使い捨て式吸収性衛生製品にコスト効率良く含ませることができることを、我々は成功裡に見出した。これは、請求項1に定められたような吸収性物品によって達成される。
【0010】
したがって、本発明は吸収性物品に関し、この吸収性物品は個人用使い捨て式衛生物品であり、液体透過性のトップシートと、液体不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に封入された吸収性コアと、トップシートとバックシートとの間に配置された流量制御部材と、を備え、流量制御部材は、最上層と、最下層と、最上層と最下層との間のパイル繊維からなる相互接続層と、を備えるスペーサー布であり、このスペーサー布は、ここに開示されるメカノ法(Mecano−method)に従って測定された場合に、少なくとも1.5×10−5の15kPaにおける
坪量に対する厚みの比を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】装着された際に使用者に面する側から見た、本発明による吸収性物品一例を示す図である。
【
図2】
図1の吸収性物品の、II−II線に沿った断面図である。
【
図3】本発明による流量制御部材を通じた区画を占める図である。
【
図4】異なるタイプの液体分配構造に対する、異なる圧力における
坪量に対する厚みの比のグラフである。
【
図5】2つのタイプの液体分配構造に対する、異なる引張強度(N)での伸び(%)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
個人用衛生物品である本発明の吸収性物品は、失禁プロテクタ、生理用ナプキン、パンティライナー、テープ固定具付きおむつ、パンツ式おむつ、又はベルト付きおむつのような、いずれかのタイプの個人用使い捨て式吸収性衛生物品とすることができる。
【0013】
ここで使用するときに、用語「使い捨て式」は、限定された使用の後に廃棄されることを意図され、洗濯されること又は別様に再使用のために修復されることを意図されない物品を指す。
【0014】
この吸収性物品は、液体透過性のトップシートと、液体不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に封入された吸収性コアと、トップシートとバックシートとの間に配置された流量制御部材と、を備える。流量制御部材は、最上層と、最下層と、最上層と最下層との間のパイル繊維(pile filaments)からなる相互接続層と、を備えるスペーサー布である。このスペーサー布の最上層と最下層とは異なる構成を有して、液体の流れの速度を管理することができる。
【0015】
本発明の流量制御部材は、使い捨て式吸収性物品における流量制御にこれまで使用されてきた部材より大きな耐圧縮性を有するが、同時に比較的小さい表面重量(surface weight)を有する。このことは、圧力が吸収性物品の使用中にかけられたときに、構造と流量制御特性とを維持するスリムで効率的な流量制御部材を可能にさせる。スペーサー布は、ここに開示されるメカノ法によって測定された少なくとも1.5×10−5m/gsmであって、2.5×10−5m/gsmより小さい、好ましくは2.0×10−5m/gsmより小さい、15kPaにおける
坪量に対する厚みの比を有する。「gsm」は、ここではg/m2に対して使用されている。本発明のスペーサー布は、20kPaより低い圧力では、少なくとも1.5×10−5m/gsmの
坪量に対する厚みの比を有することができる。
【0016】
スペーサー布は、150〜300gsmの、好ましくは150〜250gsmの、より好ましくは200〜230gsmの
坪量を有することができる。
【0017】
本発明によるパイル繊維接続部の密度及びそれらの(dtexでの)寸法は、材料を柔らかくするが依然としてその使用中にかけられる圧力に耐えることができるように特に好適とすることができる。本発明によるスペーサー布は、その使用中にかけられた圧縮力の除去の後、直ちに、かつ殆ど完全にその元の形状へと拡張する。「密度」はここでは、cm
2あたりのパイル接続部の量の基準として使用されている。
【0018】
本発明によるスペーサー布の最上層と最下層との間のパイル繊維の相互接続層は、80〜130dtexの、好ましくは90〜120の細かさを有することができ、パイル繊維接続部の密度は50〜150/cm
2、好ましくは70〜100/cm
2とすることができる。
【0019】
スペーサー繊維は生産方向において、使い捨て式吸収性物品への良好な変換のためのエダナ試験方法WSP 110.4 (05)破断荷重及び伸びNW(Edana test method WSP 110.4 (05) Breaking Force and Elongation NW)に従って測定した場合に、10Nにおいて25%未満の、好ましくは15%未満の、最も好ましくは10%未満であり、5Nにおいて15%未満の伸びを有することができる。
【0020】
複数のパイル繊維は一緒に、吸収性物品の中に液体を効率的に分配するために、布を通じて、好ましくは斜め方向に、流路を形成する。
【0021】
本発明の流量制御部材の材料、すなわちスペーサー布のパラメータは、吸収性物品がこの物品を装着している使用者によってかけられる圧力に曝される場合にもまた、圧縮に対する高い耐性の結果としての、自由
容積が存在する多孔材料を確保する。自由
容積によって、スペーサー布は、比較的大きな液体容量に適合するとともに一時的にその比較的大きな液体容量を保持することができる。したがって、排出された体液は、効果的にスペーサー布の中に受け取られ得、吸収性コアの別の部分へとスペーサー布の内側に流れることができ、そこで吸収され、よって漏れのリスクが最小化される。
【0022】
スペーサー布の最上層は開口した構造を有して、液体の迅速な流れ及び効果的な分配を確実としている。最上層の開口は、3.0〜4.5mmの長手方向の寸法と、1.5〜3.0mmの横方向の寸法を有する。開口の形状は、円状〜楕円状とすることができるが、楕円状が好ましい。最上層は、cm
2あたり3〜8個の、好ましくは4〜6個の開口を有することができる。スペーサー布の最下層は、比較的小さな開口を有する、より閉じた構造を有することができる。最下層はcm
2あたり50〜150の開口を有することができる。
【0023】
好適には、スペーサー布は少なくとも20mlの合計自由容積を有して、漏れの
防止を確実とする。スペーサー布は、DIN EN ISO 508
4に従って測定するとき、1kPaにおいて3〜6mm、好ましくは3.5〜5mmの厚みを有する。
【0024】
スペーサー布は、30〜40mmのような、40mm未満の幅を有することができる。部材の長さは、120〜150mmのような、150mm未満とすることができる。
【0025】
スペーサー布は、股領域に適当にフィットさせるように、例えば約30×120×5mmのサイズを有することができる。
【0026】
スペーサー布は、好ましくは吸収性繊維及び超吸収性材料を含まない。
【0027】
スペーサー布は、好ましくはポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン及びポリプロピレンの様なポリオレフィンから選択される熱可塑性ポリマー繊維並びにそれら繊維の混合物を好ましく有するが、それらに限られるわけではない。好ましいスペーサー布に対しては、第1の層及び第2の層、並びにパイル繊維のヤーン(yarn)はポリエステルからなる。
【0028】
スペーサー布もまた、液体の浸透を容易にするために表面活性剤を含むことができ、それによって迅速に排液し、液体を保持しないようにし、よって次の液体の噴出のための自由容積の容量を保持する。
【0029】
スペーサー布は、布の生産方向において5〜15コース/cm、好ましくは8〜12コース/cmと、布の横断方向において6〜12ウェール/cm、好ましくは7〜10ウェール/cmを有する。スペーサー布の最上層のヤーンは、50〜100dtexの細かさを有することができる。スペーサー布の最下層のヤーンは、90〜130dtexの細かさを有することができる。パイル繊維は、80〜130dtex、好ましくは90〜120dtexの細かさを有することができる。パイル繊維は、高い圧縮強度をもたらしつつ、小さい
坪量を保持する短繊維ヤーンから好ましくは成る。
【0030】
スペーサー布は、スペーサー布の最上層がトップシートの方向に面し、スペーサー布の最下層がバックシートの方向に面するように吸収性製品に配向される。
【0031】
吸収性物品のトップシート及びバックシートは、吸収性コアの周縁全体に沿って吸収性コアの横方向外側にともに延びることができるとともに、吸収性コアの縁部の周りの端部接合部において互いに対して接合することができる。バックシートは、好ましくはトップシートの一部を覆うことができ、それによって端部バリアを形成する。端部接合部は、接着剤、超音波接合、熱接合、縫い目などによるような当業において既知の好適な態様で形成することができる。巻き付けられたカバーのような代替的なカバーの構成が、本発明の技術的範囲内で想到され得る。
【0032】
トップシートは、目的に応じて、すなわち柔らかく液体透過性であるために好適ないずれ
かの材料とすることができる。一般的にみられるトップシートの材料の例は、不織材料、有孔のプラスティックフィルム、プラスティック又は織物のメッシュ、及び流体透過性発泡層である。また、2つ以上のトップシート材料からなる積層体も、トップシートが流体透過性の装着者に面する表面の異なる部分内の異なる材料からなるので、一般的に採用される。
【0033】
バックシートは流体不透過性である。しかし、撥液性でしかないバックシート材料もまた、特に比較的少量の尿を吸い取ることが予期される例において使用することができる。バックシートは、一般的には薄く、柔軟性のある、流体不透過性のプラスティックフィルムによって構成されるが、流体不透過性の不織材料、流体不透過性の発泡材、及び液体不透過性の積層体もまた、本発明の技術的範囲内で検討される。バックシートは好ましくは通気性を有し、空気及び蒸気がバックシートを通過することができることを示す。さらに、バックシートは、不織布の様な織物材料からなる、外側の衣服に面する表面を有することができる。
【0034】
吸収性コアは、1つ以上のセルロースフラフパルプ、発泡材、繊維の詰め物などのような、当業で既知のいずれかの好適な吸収性材料又は流体吸収材料から作ることができる。吸収性コアは、一般的に超吸収材として知られている高吸収性ポリマー材料からなる繊維又は粒子を含むことができ、超吸収材は、ヒドロゲルの形成の際に大量の流体を吸収し、保持する能力を有する材料である。超吸収材は、セルロースフラフパルプと混合することができ、及び/又は吸収性コアのポケット若しくは層中に配置することができる。繊維はパルプ繊維とすることができ、超吸収性材料はポリアクリル酸塩ベースの粒子とすることができる。吸収性構造は、40〜80%の超吸収材と60〜20%のパルプ繊維を備えることができる。
【0035】
吸収性コアは、吸収性コアの特性を改良するための成分をさらに組み込むことができる。そのような成分のいくつかの例は、バインダ繊維、流体分散材、濡れインジケータ、等の当業において既知のものである。
【0036】
通常、パッド又は生理用ナプキンの場合の吸収性物品は、すべての方向に完全に拡げられた際に、細長く、一般的には長方形状の形状を有する。本明細書では、一般的に長方形の形状は、例えば吸収性の物品の角部が丸みを帯びることができる場合、吸収性物品の端縁が完全に線形ではない場合もまた包含することを意図されている。したがって、砂時計形状、台形状、三角形状、楕円形状等のような、いずれの好適な形状も吸収性物品に使用することができる。本発明の物品の形状は、物品全体を通じて横断方向中央線の回りに対称とすることができ、又は異なる形状及び/又は異なるサイズを有する端部部分を有する非対称とすることもできる。
【0037】
吸収性物品は、同じ長さを有するとともに吸収性物品全体を通じた長手方向中央線と略同一の方向に延びる2つの長手方向側端部を有することができる。前端縁及び後端縁は通常、吸収性物品の端部において、長手方向中央ラインに対して横断方向に延在する。後端縁は、吸収性物品の使用中には着用者の背面側に配向されることを意図され、前端縁は、着用者の腹部に向かって前方に面することを意図されている。
【0038】
吸収性物品は、前端部分、後端部分、及びこれら端部分の中間に配置された股部分を有することができ、股部分は、物品の使用中には着用者の股に対して配置されて、吸収性物品に達する体液のための捕捉領域を構成することを意図されている部分である。
【0039】
吸収性物品は、下着パンツのような支持を提供するパンツ衣類の内側に吸収性物品を固定するための固定手段をさらに含む。固定手段は、バックシートの衣類に面する表面に配置された感圧接着剤からなる、2つの長手方向に延びるバンドの形態とすることができる。この固定部材は、剥離可能な保護層、例えば、当業において既知であるシリコン処理をした紙、不織布、又は他のいずれかの剥離可能な材料によって覆うことができる。支持を提供するパンツ衣類の内側に吸収性物品を置く前に、この保護層が固定手段から取り除かれて接着剤を暴露し、パンツ衣類に固定するために使用可能とする。
【0040】
弾性要素を、吸収性コアの横断方向外側で側端部に沿って配置することができる。弾性要素は、弾性材料からなるバンドとすることができる。弾性要素は、本発明の吸収性物品の任意の構成要素であって、省略することができる。
【0041】
固定手段は本発明に対して任意であり、必要に応じて省略することができる。接着剤からなる固定手段を使用する場合、バックシートの全体的なコーティング、1つ以上の長手方向の接着剤の帯、点、円、湾曲線、星形のような、好適ないずれかの接着剤のパターンを使用することができる。さらに、固定手段は、フックタイプの固定具、クリップ、ホック等のような機械的固定具とすることができ、又は摩擦コーティング若しくは連続気泡型発泡材のような摩擦型の固定具とすることもできる。異なるタイプの固定具の組み合わせもまた想到し得る。
【0042】
流量制御部材は、吸収性コアの上又は下に配置することができるが、好ましくは吸収性コアの上に配置される。吸収性物品の吸収性コアは、第1の吸収性層と第2の吸収性層とを好ましくは備える。流量制御手段は、第1吸収性層と第2の吸収性層との間で吸収性物品中に配置することができる。第1の吸収性層は、トップシートの下に、トップシートに直接接する形で配置するか、又は代替的に、不織層又はさらなる吸収性層のような1つ以上の介在する構成要素を通じてトップシートと直接接触させて配置することができる。同様に、第2の吸収性層を流量制御部材の直下に、流量制御部材及びバックシートに直接触した状態で配置することができ、又はこれら構成要素の1つ又は両方に介在する構成要素によって直接接触させることもできる。流量制御部材を第1の吸収性層と第2の吸収性層との間に配置することによって、それは吸収性物品中に流路を形成し、流体を物品の前後に案内する。流量制御部材と吸収性コアとの間の接触領域が増加し、物品中の液体の分配と迅速な吸収を容易化する。
【0043】
吸収性層は、均一な構造とすることができ、又はそれ自体を同じ又は異なる材料の吸収性積層体のような多層構造とすることができる。吸収性層は、均一な厚みを有してもよく、又は層の異なる部分で厚みを変化させることもできる。同様に、
坪量及び成分を吸収性層の中で変化させてもよい。例示の方法によって、吸収性層は吸収性を有する繊維及び/又は吸収性を有さない繊維と、の混合物超吸収性材料と、の混合物を備えてもよく、超吸収性材料の、繊維に対する比を層の中で変化させてもよい。
【0044】
第1の吸収性層及び第2の吸収性層は、股部における、幅広の端部部分と幅の狭い部分とを有する砂時計形状又は長方形形状のような、いずれかの好適な形状を有することができる。第2の吸収性層は、第1の吸収性層の下に配置することができ、第1の吸収性層よりも幾らか小さくすることができる。第1の吸収性層は、第2の吸収性層よりもさらに前方及び後方に延在してもよい。さらに、第2の吸収性層は、本発明による吸収性物品においては省略することができるか、又は物品は1つ以上のさらなる吸収性層を備えることもできる。
【0045】
第1の吸収性層は、吸収性物品の股部分におけるこの層を完全に通じて延在する開口部を有することができ、それによって物品中に空洞を形成することができる。この開口部は好ましくは、吸収性層の形状をほぼ模倣した細長い形状を有する。
【0046】
吸収性層中における開口部の場合、トップシートは、第1の吸収性層の開口部によって画定された空洞及びトップシートに面する流量制御構造の表面の中に下方に延在することができる。それによって、空洞はトップシートの材料で裏打ちされ、吸収物品の表面に面する身体の外側からアクセスすることができる。空洞は、吸収性物品の濡れ領域に好都合に配置され、次いで使用の際には、女性の装着者の尿道及び膣開口部の直下に配置される。したがって、吸収性物品に放出されるいずれの体液も空洞の中に流入し、吸収性コアのさらに中へ、及びその全体に亘って分配される。空洞の中に収集された流体の一部分は、空洞の壁を通じて第1の吸収性層によって吸収され得る。しかし、流体の大部分は空洞の最下部を通じて吸収性物品の中を下方に向かって流量制御部材の中へと移動を続け、流量制御部材において長手方向及び横断方向に流量制御部材に沿って分配される。
【0047】
流量制御部材は長方形の形状とすることができ、長手方向及び横断方向において吸収性コアの部分によって取り囲まれる。また、流量制御構造のための別の形状及び構成を使用することができる。しかし、流量制御部材が吸収性コアより小さな幅を有し、吸収性コアより短ければ、吸収性コアの大きな領域への分配を容易化するので、通常は好都合である。
【0048】
本発明は、
図1〜3を参照しつつ例示の手段によって以下に説明される。本発明のこの例示においては、吸収性物品は、生理用ナプキン又はパッドの形状の尿失禁プロテクタ1である。
図1において吸収性物品は、着用された際に装着者の身体に向かって面するように意図されている側から見たものであり、
図2においては、
図1の線II−IIに沿った断面において見たものである。吸収性物品1は、吸収性物品1の最上面に配置され、吸収物品1の装着者に面するように意図された流体透過性のトップシート2と、装着者の下着に面することを意図された、失禁プロテクタ1の下部背面側に配置される流体非透過性バックシート4と、トップシート2とバックシート4との間に封入された吸収性コア6と、を備える。
【0049】
失禁プロテクタ1のトップシート2及びバックシート4は、吸収性コア6の周縁全体に沿って、吸収性コア6の横断方向外側に一緒に延在し、吸収性コア6の周縁の周りの縁部接合部7において互いに接続されている。吸収性物品の2つの長手方向側端部8、9は同じ長さを有し、吸収性物品1を通じた長手方向中央線10と略同じ方向に延在している。前端縁11及び後端縁12は、失禁プロテクタの端部において、長手方向中央線10に対して横断方向に延在している。失禁プロテクタ1は、前端部分13、後端部分14、及びこれら端部13、14の中間に配置された股部分15を有し、股部分15は、使用中に装着者の股に対して配置されることを意図されており、吸収性物品1に到達する体液に対する主補足領域を構成する。
【0050】
失禁プロテクタ1は、下着のような支持を提供するパンツ衣類の内側における失禁プロテクタ1の固定のための固定手段16をさらに含むことができる。固定手段16は、バックシート4の衣類に面する表面に配置された、2つの長手方向に延在する感圧接着剤の帯の形状である。
図2において、固定手段16は、剥離可能な保護層17によって覆われているように示すことができる。また、弾性を有する材料の帯の形状の弾性要素18、19は、吸収性コア6の横断方向外側に延在するトップシート2及びバックシート4の部分によって形成された側部フラップの20、21の側端部8、9に沿って配置することができ、それによって失禁プロテクタの身体構造上のフィット性を改善することができる。
【0051】
吸収性コア6は、第1の吸収性層23及び第2の吸収性層22を備える。流量制御部材24は、第1の吸収性層23と第2の吸収性層22との間に配置される。この例では、第1の吸収性層23は、トップシート2の下に、トップシートと直接接触して配置される。
【0052】
第1の吸収性層23は、失禁プロテクタ1の股部分において吸収性層23を完全に貫通して延在する開口部25を有する。トップシート2は、第1の吸収性層23と流量制御部材24のトップシートに面する表面とによって画定された空洞26の中へ下方に延在する。空洞26は、失禁プロテクタ1の濡れ領域に配置され、使用の際には、女性の装着者の尿道及び膣開口部の直下に配置される。失禁プロテクタ1に放出されるいずれの体液も空洞26の中に直接流入し、流量制御部材24を介して吸収性コア6のさらに中へ、及びその全体に亘って分配される。
【0053】
スペーサー布27の形態の流量制御部材が
図3に示されている。スペーサー布27は最上層28及び最下層29、並びに最上層28と最下層29との間のパイル繊維33からなる接続層30を有する。最上層28は、類似の小さな開口32を有する最下層29より大きな開口31を有する。
【0054】
本発明のスペーサー布の例は、以下の特性、すなわち約250gsmのスペーサー布の表面重量、約0.5cmの厚み、約76dtexの最上層のヤーン、約110dtexの最下層のヤーン、108dtexのパイル繊維、約72〜95/cm2のパイル接続点、cm
2当たり約5個の最上層の開口、約10コース/cm及び8ウェール/cm、を有することができる。
【0055】
[実験]
一般的に使用される、接合された不織材を通じた空気の高いロフト(high lofts of air)である、液体捕捉分配材料の歪を本発明の流量制御部材に使用される材料と比較するために多くの異なる材料が圧縮試験にかけられた。これら試験は、以下に記載するような方法によって行われた。
【0056】
・歪(メカノ法)
手順:
本方法の原理は、材料の厚みを連続的に測定しながら、材料を5Nの力まで金属ロッドによってゆっくりと圧縮することである。その結果は、力と伸びとに対するデータポイントからなる。力は、ロッドの接触領域に付加される圧力に形を変える。金属ロッドは円柱状であり、10mmの直径を有し、>7cmの直径を有する平坦な基部を有する。ロッドは、インストロン試験機器の上部固定治具に10Nのロードセルに取り付けられる。平坦な平板が下部固定治具に取り付けられ、試料が平板の頂面上に載置され、平板が動かない状態で圧縮されるように、ロッドの下で中心出しされる。ロッドの移動速度は毎分5mmである。これら設定は、「ニューメカノ5N(New Mecano 5 N)」と呼ばれるインストロンブルーヒルプログラム(Instron Bluehill program)の中に予めプログラムされているが、試験を行う前に、このプログラムの設定は、すべての限界値がそれらの適正な値に設定されていることを確認されるべきである。変形バージョンで行うことは、機器、特に感度の良いロードセルに対する損傷をもたらす場合がある。
【0057】
試験の実行:
最初の作動は、試料無しの空運転である。この作動は厚みがゼロであるポジションを見つけるために使用され、厚みがゼロであるポジションは、鋼の平板がロッドを停止させるポジションである。ロッドが金属に衝突する際に生じる、機器が十分早く補正することができない力の急速な増加のため、空運転は通常、ロッドが停止する前の最大限界設定値より高い力を生成する。ロードセルが損傷することなく衝突に耐えることができることを確実にすることに注意されるべきである。特別な設定を空運転に対して使用して、最大限界力及びロッドの速度を低下させることができる。
【0058】
ロッドが停止すると、インストロン機器は使用者の入力を待つ。次いで、伸長が手動でゼロに初期化される。これは、ロッドが基体に接触し、伸長が下部平板に対して測定される正確なところに、伸長をゼロに設定することを保証する。その後、ロッドを手動で上昇させることができ、それによって試料を下部平板上に載置することができる。
【0059】
試料を試験するために、ロッドは手動で動かされて、試料の表面上に位置付けされ、プログラムが開始される。ロッドは毎分5mmの速度で制限力に到達するまで下降する。
【0060】
試料:
試料は、試験される材料から打ち抜かれた、50mmの辺を有する正方形である。材料が不均一な厚みを有する場合には、試料は材料の最も厚い部分から取られた。ロッドが試料の中央に押し付けられ、試料それぞれは作動間に移動されることなく3回試験される。試験される材料それぞれの10個の試料が使用され、合計30個の測定と、空運転を含んで31個の試験の作動が試験される材料それぞれに対して行われる。
【0063】
結果:
結果は、力対伸長に対する一式のデータポイントである。力は、メカノで測定された力(N)をロッドの最下部の面積(m
2)によって割ることによって圧力に再計算される。
【0064】
m/gsmで表された秤量に対する厚みの比が、メカノで測定された厚み(m)を使用された材料の表面重量(gsm)で割ることによって計算された。
【0065】
図4に示すように、異なる試料に対する計算された圧力(kPa)の値及び秤量(m/gsm)に対する厚みの比が、グラフにプロットされる。図は、本発明の流量制御部材に対して異なる圧力において高い比が維持されていることを示している。本発明のスペーサー布は、20kPa未満の圧力において少なくとも1.5×10
−5m/gsmの秤量に対する厚みの比を有する。
【0066】
・引っ張り試験
手順:
本発明によるスペーサー布と、試料B(特性については上記表を参照)との引っ張り試験測定が、Edana test method WSP 110.4 (05) Breaking Force and Elongation NW又はAmerican Standard method ASTMD 882(同等の方法)に従って行われた。使用されたインストロン機器は、識別番号:10080であり、セル100Nは、識別番号:100182であった。試験試料は、25mm幅であり、インストロンで使用された引っ張り速度は100mm/分であった。
【0067】
結果:
2つの試料に対する引張強度(N)と、生産方向での伸び(%)との値が、
図5に示すようにグラフにプロットされた。本発明によるスペーサー布は、使い捨て式吸収性物品への製造機器の改造を好都合にする低い%伸びを示す。
【符号の説明】
【0068】
1 吸収性物品
2 液体透過性トップシート
4 液体不透過性バックシート
6 吸収性コア
22 第2の吸収性コア層
23 第1の吸収性コア層
24 流量制御部材
25 開口部
27 スペーサー布
28 最上層
29 最下層
30 相互接続層
33 パイル繊維
31 開口