特許第6474148号(P6474148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474148
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/49 20060101AFI20190218BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALN20190218BHJP
   A61B 10/00 20060101ALN20190218BHJP
【FI】
   G01N21/49 Z
   !A61B5/1455
   !A61B10/00 Q
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-196382(P2014-196382)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-70666(P2016-70666A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(73)【特許権者】
【識別番号】509154132
【氏名又は名称】株式会社システムロード
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】日下 隆
(72)【発明者】
【氏名】平尾 佳
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−103094(JP,A)
【文献】 特開2012−125370(JP,A)
【文献】 特開2013−121420(JP,A)
【文献】 特開2006−098098(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0154152(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/028731(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
A61B 5/00− 5/22
A61B 9/00−10/06
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の物質内に光を入射させるべく前記物質の表面に光を照射するための光源と、
2次元イメージセンサを用いて構成され、かつ前記光源から発せられて前記物質内を拡散することにより前記物質の表面の光照射部とは異なる部分に到達した光を受けるべく前記物質の表面を撮像し、前記光照射部からの離間距離が相違する複数の撮像点ごとの光到達量を示す撮像画像データを含む信号を出力可能な受光手段と、
前記撮像画像データに基づいて前記物質内の特定波長域についての光学的特性情報を求める処理を実行するデータ処理部と、
を備えている、検査装置であって、
この検査装置は、カメラおよびこのカメラから出力される信号のデータ処理を実行可能な制御部を備えた携帯型通信端末と、この携帯型通信端末への着脱が可能なアタッチメントと、が組み合わされ、かつ前記受光手段および前記データ処理部として、前記携帯型通信端末の前記カメラおよび前記制御部がそれぞれ用いられるとともに、前記光源は、前記携帯型通信端末または前記アタッチメントに具備された構成とされており、
前記アタッチメントは、照明用プローブ部および撮像用プローブ部を備えており、
前記照明用プローブ部には、前記光源から発せられた光の発散を抑制しつつこの光を前記物質の表面に導いて照射可能であり、かつ先端部が前記照明用プローブ部の先端面よりも小面積の導光路が具備されており、
前記撮像用プローブ部は、内部への外乱光の進入を阻止可能であるとともに、前記導光路に対する遮光性を有している一方、前記物質の表面に当接させることによって前記物質の表面と前記カメラとの離間距離を前記カメラの撮像可能距離に設定可能な透光性をもつ平面状の先端面と、この先端面の反対側に位置し、かつ前記カメラとの間に空間部を形成するようにして前記カメラに対向する平面状のカメラ対向面と、を備えていることを特徴とする、検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記データ処理部は、前記撮像画像データのうち、いずれの範囲のデータが、前記光照
射部からの離間距離と受光量の対数値とが線形関係にある拡散光受光領域のデータであるかを判断し、かつこの拡散光受光領域の範囲にあると判断したデータを用いて前記物質内の光学的特性情報を求めるように構成されている、検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置であって、
前記データ処理部は、前記撮像画像データの中から、前記物質の表面における直線状領域の画像に相当するデータを選出し、かつこの選出されたデータを対象として、前記拡散光受光領域の範囲の判断を行なうように構成されている、検査装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の検査装置であって、
前記データ処理部は、前記撮像画像データ中に、前記物質の表面の不均一性に起因する異常データが含まれているか否かを判断し、かつ前記異常データが含まれていると判断した場合には、前記異常データが除外された撮像画像データに基づいて前記光学的特性情報を求める処理を実行するように構成されている、検査装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の検査装置であって、
前記光照射部として、前記イメージセンサによる撮像対象領域の周囲に位置して互いに間隔を隔てた複数の光照射部、または前記撮像対象領域を囲む円環状の光照射部を設定可能とされている、検査装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば人の生体組織やその他の所望の検査対象物質内の情報を光学的手法によって取得するのに用いられる検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査装置の従来例として、特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された検査装置は、いわゆる多点測定の手法を用いたものであり、以下に述べる第1および第2の構成に区分される。
第1の構成においては、1つの光源と、2つの受光部とが具備されている。光源は、検査対象の物質内に光を入射させるべく前記物質の表面に光を照射するためのものである。2つの受光部は、前記光源から発せられて前記物質内を拡散(拡散反射を含み、以下同様)することによって前記物質の表面の光照射部とは異なる2箇所に到達した光をそれぞれ受けるように設定される。これら2つの受光部からは、それぞれの受光量に対応したレベルの信号が出力される。
このような構成によれば、2つの受光部のうち、光照射部に近い一方の受光部には、物質内の比較的浅い部分を通過した光が到達するのに対し、光照射部から遠い他方の受光部には、物質内の比較的深い部分をも通過した光が到達する。このため、前記一方の受光部の受光量を参照データとして、前記2つの受光部のそれぞれの受光量の差分スペクトルを得ることにより、物質内の比較的浅い部分の光学的情報を排除した情報、すなわち物質内深部の光学的特性情報(たとえば、特定波長域についての吸光係数)を求めることができる。この光学的特性情報に基づき、物質内の特定成分の濃度(たとえば、血清総ビリルビンの濃度など)を非侵襲で判断することが可能である。
【0003】
一方、第2の構成においては、2つの光源と、1つの受光部とが具備されており、2つの光源が設けられていることにより、検査対象の物質の表面には、2箇所の光照射部が設定される。ただし、2つの光源は個別に点灯駆動される。
このような構成によれば、2箇所の光照射部のうち、一方の光照射部から受光部には、物質内の比較的浅い部分を通過した光が到達し、かつ他方の光照射部から受光部には、物質内の比較深い部分をも通過した光が到達する。したがって、前記した第1の構成の場合と同様な手法により、物質内の比較的浅い部分の光学的情報が排除された物質内深部の光学的特性情報を求めることができる。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0005】
第1に、物質の表面に設定される光照射部と受光部との離間距離は、正確な測定値が得られるように、最適な距離に設定することが望まれる。前記離間距離が短すぎると、たとえば物質の表面による反射光(界面反射光)が受光部に多く到達する不具合を生じる。これとは反対に、前記離間距離が長すぎると、いわゆる回り込み光(本来の検査対象領域よりも浅い部分にある界面領域を伝わる光、および浅い部分を通過した光)が受光部に多く到達したり、あるいはダイナミックレンジが狭くなるといった不具合を生じる。また、光照射部と受光部との最適な離間距離は、検査項目などによっても異なる。これに対し、前記従来技術においては、受光部が点状の領域であって、しかも受光部と光照射部との離間距離は固定されている。このため、検査項目などに応じて、前記離間距離として最適な距離を求め、かつこの求めた距離に調整するといったことは困難である。その結果、測定精度が劣る場合があり、測定精度の信頼性を高める上で未だ改善の余地があった。
【0006】
第2に、前記従来技術においては、光照射部を複数設けること、または受光部を複数設けることが必須とされているが、多点測定の手法においては、それら複数の光照射部または複数の受光部における物質表面についての情報は同一であると仮定される。ところが、実際には、複数の光照射部どうし、あるいは複数の受光部どうしの間では、物質表面についての情報が異なる場合がある。たとえば、検査対象が生体組織である場合、2つの光照射部あるいは受光部の一方には、皮膚の傷、ほくろ、体毛などが存在せず、かつ他方にはそれらが存在する場合がある。このような場合、検査結果の誤差が大きくなる。前記した不具合を解消するには、検査位置をずらし、再検査を行なう必要があるが、これでは手間である。また、仮に、再検査を行なったとしても、やはり前記した場合と同様に、皮膚の傷などに起因して誤差が大きい検査結果が得られる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6−103257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、簡易な構成により、検査対象の物質内の吸光係数などの光学的特性情報を正確に求めることができ、信頼性の高い適正な検査結果を得ることが可能な検査装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、上述した課題を解決するため、次のような技術的手段を講じている。
【0010】
本発明により提供される検査装置は、検査対象の物質内に光を入射させるべく前記物質
の表面に光を照射するための光源と、2次元イメージセンサを用いて構成され、かつ前記光源から発せられて前記物質内を拡散することにより前記物質の表面の光照射部とは異なる部分に到達した光を受けるべく前記物質の表面を撮像し、前記光照射部からの離間距離が相違する複数の撮像点ごとの光到達量を示す撮像画像データを含む信号を出力可能な受光手段と、前記撮像画像データに基づいて前記物質内の特定波長域についての光学的特性情報を求める処理を実行するデータ処理部と、を備えている、検査装置であって、この検査装置は、カメラおよびこのカメラから出力される信号のデータ処理を実行可能な制御部を備えた携帯型通信端末と、この携帯型通信端末への着脱が可能なアタッチメントと、が組み合わされ、かつ前記受光手段および前記データ処理部として、前記携帯型通信端末の前記カメラおよび前記制御部がそれぞれ用いられるとともに、前記光源は、前記携帯型通信端末または前記アタッチメントに具備された構成とされており、前記アタッチメントは、照明用プローブ部および撮像用プローブ部を備えており、前記照明用プローブ部には、前記光源から発せられた光の発散を抑制しつつこの光を前記物質の表面に導いて照射可能であり、かつ先端部が前記照明用プローブ部の先端面よりも小面積の導光路が具備されており、前記撮像用プローブ部は、内部への外乱光の進入を阻止可能であるとともに、前記導光路に対する遮光性を有している一方、前記物質の表面に当接させることによって前記物質の表面と前記カメラとの離間距離を前記カメラの撮像可能距離に設定可能な透光性をもつ平面状の先端面と、この先端面の反対側に位置し、かつ前記カメラとの間に空間部を形成するようにして前記カメラに対向する平面状のカメラ対向面と、を備えていることを特徴としている。
ここで、「光学的特性情報」としては、たとえば吸光係数、光透過係数、または透過率などを挙げることができる。
【0011】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、吸光係数などの光学的特性情報を求めるためのデータとしては、検査対象の物質の表面の撮像画像データであって、光照射部からの離間距離が相違する複数の撮像点ごとの光到達量を示す撮像画像データが用いられるために、光学的特性情報を求める場合には、前記した撮像画像データの中から最適またはこれに近いと考えられる適正なデータを選択し、かつこの選択したデータに基づいて光学的特性情報を求めることが可能となる。より具体的には、光照射部からの離間距離が相違する複数の撮像点ごとの光到達量を示す撮像画像データの中からは、たとえば検査項目などに応じて、光照射部からの離間距離が最適な距離であると考えられる撮像点の光到達量を適宜に選択し、かつこれらの値に基づいて光学的特性情報を求めることが可能である。また、後述するように、たとえば撮像画像データから界面反射光や回り込み光による悪影響を受けていない適切なデータを選択し、かつこの適切なデータに基づいて光学的特性情報を求めるといったことも可能である。その結果、測定精度を前記従来技術よりも高くし、検査の信頼性を高めることができる。
第2に、検査対象の物質の表面に、たとえば傷が存在するなどの理由から、物質の表面の情報が均一ではない場合であっても、撮像画像データの中に、傷が存在しない領域に相当する複数の画素のデータが含まれていれば、このデータを利用して正確な光学的特性情報を求めることが可能となる。2つの光照射部または受光部の一方に傷などが存在することに起因して、測定値の誤差が大きくなるといった従来技術の不具合を好適に解消することが可能である。
その他、本発明によれば、携帯型通信端末とアタッチメントとを組み合わせた簡易かつ合理的な構成によって、本発明が意図する検査装置を適切に構成することができる。携帯型通信端末のカメラ、および制御部などが検査装置の構成要素として有効に利用されてい
るため、より合理的である。また、照明用プローブ部および撮像用プローブ部の存在により、検査対象の表面の撮像も好適に行なうことが可能である。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記データ処理部は、前記撮像画像データのうち、いずれの範囲のデータが、前記光照射部からの離間距離と受光量の対数値とが線形関係にある拡散光受光領域のデータであるかを判断し、かつこの拡散光受光領域の範囲にあると判断したデータを用いて前記物質内の光学的特性情報を求めるように構成されている。
【0013】
このような構成によれば、物質の表面における界面反射光、および物質内部において発生した回り込み光の悪影響を排除した正確な光学的特性情報を求めることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記データ処理部は、前記撮像画像データの中から、前記物質の表面における直線状領域の画像に相当するデータを選出し、かつこの選出されたデータを対象として、前記拡散光受光領域の範囲の判断を行なうように構成されている。
【0015】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
2次元撮像画像データは、そのデータ量が多いため、たとえばこの2次元撮像画像データの中から、拡散光受光領域に相当するデータを一斉に求めようとすると、その処理が煩雑化する。これに対し、前記構成によれば、2次元撮像画像データの中から直線状領域の画像に相当するデータを選出してデータ量の縮小化を図り、かつこのデータを対象として拡散光受光領域の範囲の判断を行なうために、そのデータ処理が容易化する。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記データ処理部は、前記撮像画像データ中に、前記物質の表面の不均一性に起因する異常データが含まれているか否かを判断し、かつ前記異常データが含まれていると判断した場合には、前記異常データが除外された撮像画像データに基づいて前記光学的特性情報を求める処理を実行するように構成されている。
【0017】
このような構成によれば、物質の表面にたとえば傷、黒子、体毛が存在することなどに起因する異常データが撮像画像データ中に含まれる状況が生じたとしても、前記異常データの影響を排除し、正確な光学的特性情報を得ることができる。
【0028】
本発明において、好ましくは、前記光照射部として、前記イメージセンサによる撮像対象領域の周囲に位置して互いに間隔を隔てた複数の光照射部、または前記撮像対象領域を囲む円環状の光照射部を設定可能とされている。
【0029】
このような構成によれば、物質内への照射光量を多くすることが簡易に実現できる。前記照射光量を多くすれば、物質の表面への拡散光の到達量も多くすることができるために
、イメージセンサからの出力信号のSN比を高くし、高精度の測定値を得る上でより好ましい。
【0038】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】(a)は、本発明に係る検査装置の一例を示す要部断面側面図であり、(b)は、(a)の要部拡大断面図であり、(c)は、(a)に示す検査装置の分解斜視図である。
図2図1に示す検査装置を構成する携帯型通信端末のハード構成を示すブロック図である。
図3】(a)は、光照射部と撮像対象領域との関係を示す平面説明図であり、(b)は、撮像により得られるデータの一例を示すグラフである。
図4】撮像画像に異常データが存在する場合の一例を示す説明図である。
図5】(a)〜(c)は、撮像画像に異常データが存在する場合の他の例を示す説明図である。
図6図1に示す検査装置で実行されるデータ処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7図1に示す検査装置との対比例を示す要部側面断面図である。
図8】本発明に係る検査装置の他の例を示す分解斜視図である。
図9】本発明に係る検査装置の他の例を示す要部断面側面図である。
図10】(a)は、検査装置の他の例を示す斜視図であり、(b)は、(a)の主要構成を模式的に示す説明図である。
図11】(a)は、検査装置の他の例を模式的に示す説明図であり、(b)は、(a)に示す検査装置における光照射部と撮像対象領域との関係を示す平面説明図である。
図12】(a)は、光源と撮像対象領域との位置関係の他の例を示す平面説明図であり、(b)は、(a)の構成により得られる撮像データの例を示すグラフである。
図13】(a),(b)は、光源と撮像対象領域との位置関係の他の例を示す平面説明図である。
図14】(a)は、本発明の検査装置の要部構造の他の例を模式的に示す説明図であり、(b)は、(a)の構成における光照射部と撮像位置との関係を示す平面説明図であり、(c)は、(a)の構成により得られる撮像データの例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0041】
図1に示す検査装置E1は、携帯型通信端末Bと、この携帯型通信端末Bへの着脱が可能なアタッチメントA1とを組み合わせて構成されている。
この検査装置E1は、たとえば肝機能検査のための血清総ビリルビン濃度の測定など、人の生体組織における特定成分の濃度測定に用いられる。以降においては、理解の容易のため、検査対象の物質が、皮膚90および皮下組織91を有する生体組織9である場合を前提として説明する。もちろん、本発明でいう検査対象の種類は、これに限定されず、後述するように、種々の物質を検査対象とすることができる。
【0042】
携帯型通信端末Bは、スマートフォンであり、図2に示すように、制御部10の記憶部10aに検査処理プログラムP1が記憶されている点を除くと、それ以外の構成は、従来既知のスマートフォンと同様である。すなわち、携帯型通信端末Bは、前記した制御部10に加え、光源2、カラー撮像が可能なカメラ3、通信回路11、液晶パネルや有機ELパネルなどを用いて構成された表示部12、タッチパネル方式の操作部13、およびスピーカ14を備えている。制御部10は、携帯型通信端末Bの各部の動作処理やデータ処理を実行するものであるが、本発明でいうデータ処理部の一例に相当し、制御プログラムP1に基づき、血清総ビリルビン濃度などの特定成分の濃度を求めるデータ処理も実行する。ただし、その具体的な内容については後述する。
【0043】
光源2は、カメラ3による撮像時の照明用であるが、後述するように、皮膚90の表面に光を照射し、かつ生体組織9内に光を入射させるための光源としても用いられる。光源2は、たとえば白色LEDを用いて構成されており、カメラ3に比較的接近した位置にある。
【0044】
カメラ3は、本発明でいう受光手段の一例に相当し、後述するように、皮膚90の表面を撮像し、生体組織9内を拡散した光が皮膚90の表面の各部へ到達した量を検出するのに用いられる。カメラ3は、集光レンズ30、RGBのカラーフィルタ31、およびイメ
ージセンサ32を組み合わせて構成されている。イメージセンサ32は、たとえばCCDまたはCMOSなどの2次元イメージセンサ(エリアイメージセンサ)であり、微細な受光面を有する多数の受光素子が縦横に並んだ構造を有している。RGBのカラーフィルタ31は、イメージセンサ32の多数の受光面のそれぞれに対応して設けられており、イメージセンサ32からは、撮像画像信号として、RGBのそれぞれの受光量に対応した出力レベル(電圧レベル)の3種類の信号が出力される。RGBのカラーフィルタ31は、検査に必要な波長域の光を選択するためのフィルタとして利用することが可能である。たとえば、血清総ビリルビン濃度測定の場合には、Rの信号は使用されず、GおよびBの信号のみが利用される。カメラ3から出力されるアナログの撮像画像信号は、増幅部15によって増幅された後に、A/D変換部16によってデジタル信号に変換されてから制御部10に入力する。
【0045】
図1(c)に示すように、アタッチメントA1は、携帯型通信端末Bの四隅部分のうち、カメラ3および光源2に近い1つの隅部19を取り付け対象とする。このアタッチメントA1は、アタッチメント本体部4と、測定プローブ5とを有している。アタッチメント本体部4は、樹脂製であり、平面視L字状の上壁部40と、これに繋がった縦壁部41とを有している。測定プローブ5は、縦壁部41の下部に接合されており、この測定プローブ5と上壁部40との相互間には、携帯型通信端末Bの隅部19を嵌入させるための凹部42が形成されている。凹部42への隅部19の嵌入により、アタッチメントA1を携帯型通信端末Bに対して位置決めした状態に装着することが可能である。
【0046】
測定プローブ5は、照明用および撮像用のプローブ部5a,5bを有している。
照明用のプローブ部5aの内部には、光源2から発せられた光がプローブ部5aの外部へ発散することを防止しつつ、この光を皮膚90の表面に向けて効率よく導いて照射させるための導光路50が設けられている。導光路50は、たとえば光ファイバー、イメージコンジット、あるいはミラーを用いて構成されている。好ましくは、図1(a),(b)に示すように、導光路50は、光を光源2の直下位置よりもプローブ5b寄りの位置に導き、カメラ3による撮像対象領域にできるだけ接近した位置において皮膚90に光を照射するように設定されている。
【0047】
撮像用のプローブ部5bは、特定成分の濃度測定に用いられる波長域の光を透過させる材質とされ、平面状の先端面51を有している。この先端面51を皮膚90の撮像対象領域に当接させることにより、この撮像対象領域を平面状に維持し、かつこの撮像対象領域とカメラ3との離間距離Laをカメラ3の撮像可能距離に設定することが可能である。仮に、カメラ3が皮膚90にかなり接近し、その距離がカメラ3の撮像可能最小距離よりも小さい場合には適切な撮像が困難となる。これに対し、撮像用のプローブ部5bは、皮膚90とカメラ3との離間距離Laを、カメラ3の撮像可能最小距離よりも大きくし、ピントぼけのない適切な撮像を可能とする役割を果たす。たとえば、図7に示すように、先端部が開口した筒状のプローブ部59を用いた場合には、皮膚90の表面が適当寸法Lbだけ盛り上がるため、ピントぼけした撮像画像が得られる虞がある。これに対し、本実施形態におけるプローブ部5bを用いれば、そのような虞が解消される。プローブ部5bの外側面は遮光性を備えており、プローブ部5b内への外乱光の進入は阻止されている。プローブ部5bと導光路50との間にも遮光性が備えられており、導光路50の光がプローブ部5b内に直接進入することも阻止されている。
【0048】
次に、検査装置E1の作用の一例について説明する。併せて、検査処理プログラムP1に基づく制御部10によるデータ処理手順の一例について、図6のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0049】
まず、携帯型通信端末Bにおいて所定のスイッチ操作がなされると、この携帯型通信端
末Bの動作モードは、検査処理モードに設定される(S1:YES,S2)。このモード設定時において、測定プローブ5をたとえば人の胸骨部または前額部などの皮膚90に押し当てて光源2を点灯駆動させると、カメラ3がオンとされ、皮膚90の表面が撮像される(S3:YES,S4)。この撮像により、たとえば図3(a)に示すように、皮膚90の表面のうち、光照射部6に隣接する領域AR1(格子模様部分)を撮影した2次元の撮像画像データD1が得られる。光照射部6から生体組織9内に入射した光は、生体組織9内において拡散反射して皮膚90の表面の各部(撮像点)に到達するため、撮像画像データD1は、そのような到達光量分布に対応した撮像画像データとなる。図3(a)に示す円C1は、光照射部6を中心として光が生体組織9内を拡散する範囲の一例である。
【0050】
次いで、制御部10は、前記した2次元の撮像画像データD1の中から、直線状領域AR10の撮像画像データD10を選出する(S5)。直線状領域AR10は、たとえば光照射部6を通過する直線SL1に沿った線状または帯状の領域(図3(a)のクロスハッチング部分)である。この直線状領域AR10の撮像画像データD10は、光照射部6からの離間距離が相違する複数の撮像点ごとの光到達量を示すデータに相当する。ただし、撮像画像データD10としては、RGBの3種類の撮像画像データのうち、たとえばGおよびBの撮像画像データが用いられ、Rの撮像画像データは用いられない。このことにより、後述するように、撮像画像データD10に基づき、生体組織9内の青色光(中心波長450nm)から緑色光(中心波長550nm)にわたる波長域についての吸光係数を測定することが可能となる。血清総ビリルビン濃度の測定に際し、赤色光の画像データは不要である。
【0051】
一方、直線状領域AR10の撮像画像データD10の選出は、直線状領域AR10に傷、黒子、あるいは体毛などの異質部H(図4および図5を参照)が存在せず、直線状領域AR10に相当する皮膚90の表面に大きな不均一性がないことが条件とされる。異質部Hが存在する場合、その位置やサイズは撮像画像データD1において明確に判別することが可能である。たとえば、図4に示すように、直線状領域AR10に傷などの異質部Hが存在する場合には、吸光係数を求めるためのデータとして直線状領域AR10の撮像画像データは選出されない。この場合には、たとえば図5(a)に示すように、直線SL1から適当寸法Lcだけオフセットされた直線状領域AR11,AR12の双方または一方の撮像画像データが選出され、異質部Hの画像データが含まれないようにされる。異質部Hが含まれないようにするための他の手法として、たとえば図5(b)に示すように、直線SL1に対して適当な角度だけ傾斜して延びる直線状領域AR13の撮像画像データを選出してもかまわない。さらには、図5(c)に示すように、直線SL1に対して直交する方向に延びる直線状領域AR14の撮像画像データを選出してもかまわない。
【0052】
前記した撮像画像データD10は、たとえば図3(b)に示すような内容であり、全体的には、光照射部6からの離間距離が大きくなるほどその位置における受光量(到達光量)が少なくなる傾向がある。制御部10は、このような撮像画像データD10において、光照射部6からの離間距離と受光量の対数値とが線形関係にある拡散光受光領域の範囲R2を判断し、かつこの範囲R2内のデータを用いて生体組織9内の青色光から緑色光にわたる特定波長域についての吸光係数を求める(S6)。
ここで、図3(b)の光照射部6に近い範囲R1は、皮膚90によって反射された界面反射光が到達することに起因して受光量が過度に多くなった界面反射光受光領域である。一方、光照射部6から遠い範囲R3は、皮下脂肪伝導光などの回り込み光が到達した回り込み光受光領域である。前記した拡散光受光領域R2のデータは、生体組織9内を拡散してきた光が適切に到達してきた領域のデータであって、前記した界面反射光や回り込み光を含まない、または殆ど含まないデータである。
【0053】
前記した拡散光受光領域R2のデータを用いて生体組織9内の特定波長域についての吸光係数を求める場合、拡散光受光領域R2の範囲内のうち、吸光係数の算出に最適または最適に近いと考えられる複数の個別のデータを選択することができる。具体的には、たとえば、拡散光受光領域R2のうち、互いの離間距離の差が最大に近い2つの撮像点P1,P2における受光量a1,a2のデータを選択することができる。もちろん、選択されるデータは、これに限定されない。たとえば、試験などを予め行なうことにより最適と考えられる2つの撮像点P1,P2の候補を定めておき、この候補に相当するデータを選択するようにしてもよい。
【0054】
次いで、前記選択したデータに基づいて、生体組織9内の前記特定波長域についての吸光係数を求める演算処理が実行される(S7)。この演算処理は、たとえば次のような演算式1を用いて実行される。

D :光照射部に入射する光量
a1 :第1の撮像点P1の受光量
a2 :第2の撮像点P2の受光量
L1 :光照射部から第1の撮像点P1(光照射部に近い側)までの平均光路長(拡散光が辿る距離の平均値)
L2 :光照射部から第2の撮像点P2(光照射部に遠い側)までの平均光路長(拡散光が辿る距離の平均値)
Abs1:撮像点P1の吸光度
Abs2:撮像点P2の吸光度
F :測定対象物の分子吸光係数εと濃度Cの積
1成分の場合
F=ε・C
n成分の場合
F=ε1+C1+ε2+C2+・・・εn+Cn

Abs1=log(D/a1)=F/L1
Abs2=log(D/a2)=F/L2
Abs2−Abs1=log(D/a2)−log(D/a1)
=log((D/a2)・(a1/D))
=log(a1/a2)
=F・L2−F・L1
=F(L2−L1)

以上より、
Abs2−Abs1=log(a1/a2)=F(L2−L1)・・・(式1)

となり、撮像点P1、撮像点P2の吸光度差をとることにより、光拡散体中の平均光路長差に依存した吸光度を得ることができる。
光拡散体中での光路長差は深部で最も大きくなることが知られているため、上記差分吸光度は深部情報を多く含むことになり、測定対象物深部の分子種、濃度情報を得ることが可能となる。
【0055】
制御部10は、前記吸光係数を求めた後には、その値に基づいて皮下組織91内の血清総ビリルビン濃度を求め、かつその結果を表示部12に表示させる処理を実行させる(S8,S9)。前記吸光係数と血清総ビリルビン濃度とは一定の対応関係があるため、前記吸光係数を換算し、血清総ビリルビン濃度を容易にかつ正確に求めることが可能である。
【0056】
前記したように、本実施形態においては、吸光係数を求めるためのデータとして、図3
(b)に示した撮像画像データD10の中から、界面反射光や回り込み光の影響のないデータが選択して用いられるため、吸光係数の算出値を正確なものとすることが可能である。また、撮像画像データ10は、皮膚90の傷などに起因する異常データを含まないものとされているため、吸光係数の算出値をより正確なものとすることができる。
【0057】
検査装置E1は、携帯型通信端末Bを利用して構成されているが、携帯型通信端末Bは、検査装置E1の構成機器として特化したものではなく、日常において通話、メール送受信、あるいはインターネット接続などに支障なく使用することが可能である。その結果、たとえば検査装置全体を専用機器として構成した場合と比較すると、本実施形態の検査装置E1は携帯型通信端末Bを有効に利用した合理的な構成とされており、システム全体の実質的な製造コストを廉価にすることが可能である。携帯型通信端末Bの制御部10のみならず、光源2やカメラ3も検査装置E1の構成要素として有効に利用されているため、アタッチメントA1の構成の簡素化を図り、全体の製造コストをより廉価にすることが可能である。
【0058】
図8図14、他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付し、重複説明は省略する。
【0059】
図8に示す検査装置E2においては、アタッチメントA2の上壁部40が平面視略コ字状とされ、上壁部40の下方には、これに対向する下壁部43が設けられている。測定プローブ5および下壁部43の両者と上壁部40との間には、携帯型通信端末Bの一端部およびその近傍部分が嵌入可能な凹部42aが設けられている。
本実施形態によれば、携帯型通信端末Bの一端部およびその近傍を凹部42aに嵌入させることにより、携帯型通信端末BへのアタッチメントA2の装着が可能であり、携帯型通信端末Bの1つの隅部にアタッチメントA1を装着させていた前記実施形態と比較すると、アタッチメントA2の装着状態をより安定させることが可能である。ただし、本発明においては、携帯型通信端末に対するアタッチメントの具体的な取り付け手段は、前記したような嵌合方式に限定されず、他の方式を採用することもできる。
【0060】
図9に示す検査装置E3においては、アタッチメントA3に光源2Aが取り付けられており、この光源2Aから発せられる光を皮膚90に照射可能とされている。光源2Aの点灯駆動に必要な電力供給は、たとえばアタッチメントA3に小サイズの電池を搭載する手段、あるいは携帯型通信端末Bに設けられている出力端子から電力供給を受けるようにする手段を採用することができる。
本実施形態によれば、携帯型通信端末Bに光源が設けられていない場合、あるいは仮に携帯型通信端末Bに光源が設けられている場合であってもカメラ3との相対的な位置関係などの理由から皮膚90への光の照射用途には余り適さないような場合にも、好適に対処することが可能である。
【0061】
図10に示す検査装置E4は、携帯型通信端末を利用しない検査専用の装置として構成されている。具体的には、データ処理部10A、表示部12、操作部13、光源2A、および2次元イメージセンサを用いたカメラ3が、1つの共通のケース70内に組み付けられている。ケース70の下部には、測定プローブ5が下向きに突出した状態に設けられている。
本実施形態の検査装置E4は、携帯型通信端末Bを利用していないものの、その基本的な構成は、先に述べた検査装置E1〜E3と同様である。
【0062】
図11(a)に示す検査装置E5においては、検査対象物質の表面を撮像するための手段として、1次元イメージセンサ(ラインイメージセンサ)32Aが用いられている。この1次元イメージセンサ32Aによる撮像対象領域は、同図(b)に示すように、たとえば皮膚90の表面の光照射部6に隣接する領域のうち、光照射部6を通過する直線SL1に沿った線状の領域AR15である。この領域AR15は、図3(a)に示した直線状領域AR10に対応する。したがって、1次元イメージセンサ32Aによる撮像によっても、図3(b)に示したような撮像画像データを得ることができ、検査処理を適切に行なうことが可能である。1次元イメージセンサ32Aによる撮像画像データ中に異常データが含まれている場合においては、この異常データを除いた残余のデータを基づいて吸光係数を求めることも可能である。
【0063】
図12(a)に示す実施形態においては、2次元イメージセンサによる撮像対象領域AR1を挟むようにして2つの光照射部6を皮膚90の表面に設定可能とされている。2つの光照射部6は、撮像対象領域AR1の中央部Oaを中心とする点対称の配置である。2つの光照射部6を設定可能とする手段として、たとえば2つの点状の光源(図示略)が用いられている。
本実施形態によれば、2つの光照射部6を結ぶ直線SL1に沿った領域の撮像画像データD2は、たとえば図12(b)に示すような内容となる。この撮像画像データD2においては、撮像対象領域AR1の左右両端側が中央部側よりも受光量が多く、同図の2つの範囲R2が、撮像位置(光照射部からの離間距離)と受光量の対数値とが線形関係となる範囲である。したがって、2つの範囲R2のいずれか一方または双方の範囲内にあるデータを利用して吸光係数を求めることが可能である。本実施形態においては、2つの光照射部6を設定しているため、イメージセンサの受光量を多くし、イメージセンサから出力される撮像画像信号のSN比を高くすることができる。
【0064】
図13(a)に示す実施形態においては、3つの光照射部6が撮像対象領域AR1の周囲に等角度間隔で位置し、撮像対象領域AR1の中央部Oaを中心とする回転対称性を有する配置に設定されている。このような設定は、たとえば3つの点状光源を利用することにより実現できる。もちろん、本発明においては、光照射部6の数を4以上に設定した構成とすることもできる。
【0065】
図13(b)に示す実施形態においては、円環状の光照射部6aが撮像対象領域AR1の周囲に設定されている。この光照射部6aは、撮像対象領域AR1と同心状であり、撮像対象領域AR1の中央部Oaを中心とする回転対称性を有する配置である。円環状の光照射部6aは、透光性を有する円環状の光散乱プレートと、この光散乱プレートの適所に光を照射する複数の点状光源とを備え、かつ前記光散乱プレートを発光面とする光源装置を用いることにより設定することができる。
【0066】
これら図13(a),(b)に示した実施形態においては、皮膚90への光照射量を、図12に示した実施形態よりもさらに多くし、イメージセンサから出力される撮像画像信号のSN比を一層高めることが可能である。
図12および図13などに示す実施形態から理解されるように、本発明においては、光照射部の具体的な数、配置、形状などは限定されるものではない。光源としては、LED光源以外の光源を用いることができる。
【0067】
図14(a)に示す検査装置E6においては、光源2Bとして、同図(b)に示すような円環状の光照射部6aを皮膚90の表面に設定可能な円環状の光源が用いられている。加えて、皮膚90の表面のうち、光照射部6aの中心部に相当する箇所は、撮像点Paとされ、この撮像点Pa上にボールレンズ75が配されている。ボールレンズ75の上側には、2次元のイメージセンサ32が配されている。ボールレンズ75は、導光部材の一例に相当し、光照射部6aから生体組織9内に入射して拡散し、かつ撮像点Paに異なる角度で到達してから皮膚90をその上方へ通過する光を、その到達角α(本明細書では法線に対する傾斜角)ごとにイメージセンサ32の各部に振り分け受光させるように導く。より詳しくは、撮像点Paに対する到達角αが小さい光は、イメージセンサ32の中央寄りの位置へ導かれて受光され、到達角αが大きくなるに連れてイメージセンサ32の端部寄りの位置へ導かれて受光されるように構成されている。このため、イメージセンサ32からは、撮像点Paに到達した光の到達角αごとの光量の分布を示す受光データの信号が出力される。この受光データのうち、イメージセンサ32の受光面の中心を通過する直線に沿った複数の受光素子から出力される受光データD4を選出すると、この受光データD4は、図14(c)に示すようなものとなる。
【0068】
生体組織9内の浅い領域を拡散してきた光は、その到達角αが大きく、光の拡散進行深さが深くなるに連れて到達角αは徐々に小さくなる。このため、受光データD4は、たとえば図12(b)に示した光照射部からの離間距離と受光量との相対関係を示す撮像画像データと同様な性質のものとなる。したがって、図14(c)に示した受光データD4に基づき、生体組織内の特定波長域についての吸光係数をデータ処理部(不図示)において演算し、かつこの吸光係数に基づいて血清総ビリルビン濃度を求めることが可能である。
【0069】
本実施形態によれば、イメージセンサ32による撮像対象領域を、1つの撮像点Paのみとすることができるため、複数の撮像点を設定する場合とは異なり、撮像点ごとの表面情報のバラツキに起因する測定誤差が解消される。より具体的には、皮膚90の色は各所同一ではなく、バラツキがあるため、複数の撮像点を設定した場合、1つの撮像点が他の1つの撮像点よりも白色気味あるいは黒色気味の皮膚上に設定されることに起因して、2つの撮像点における撮像画像に差を生じてしまう虞がある。これに対し、本実施形態によれば、そのような虞が適切に解消される利点が得られる。
なお、図14に示した実施形態において、光源としては、点状の光源を用いた構成とすることもできる。
【0070】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る検査装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更可能である
【0071】
上述の実施形態においては、人体の皮下組織内の血清総ビリルビン濃度を測定する場合を具体例として説明したが、測定対象項目は、これに限定されず、光の波長域を変更することによって他の特定成分の濃度(たとえば、溶解一酸化炭素,二酸化炭素など)を測定するように構成することが可能である。また、検査対象物質は、人および動物の生体組織に限らず、植物の組織、果実などの食品類など、種々の物質をその検査対象とすることが可能である。したがって、検査に用いる光の波長域も限定されない。本発明でいう光学的特性情報は、吸光係数の他、光透過係数や透過率なども含む概念である。
【0072】
イメージセンサの具体的な画素数、画素密度、光電変換方式などは限定されない。
携帯型通信端末の具体的な種類も問わない。スマートフォンに代えて、携帯電話機、タブレット型端末などを用いることもできる。
【符号の説明】
【0073】
E1〜E6 検査装置
A1,A2 アタッチメント
B 携帯型通信端末
2 光源
3 カメラ(受光手段)
5 測定プローブ
5a 照明用の測定プローブ部
5b 撮像用の測定プローブ部
6 光照射部
9 生体組織(検査対象の物質)
10 制御部(データ処理部)
32,32a イメージセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
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