(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474154
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】錠前装置
(51)【国際特許分類】
E05B 9/08 20060101AFI20190218BHJP
E05B 17/00 20060101ALI20190218BHJP
E05B 65/00 20060101ALN20190218BHJP
E05G 1/00 20060101ALN20190218BHJP
【FI】
E05B9/08 Z
E05B9/08 A
E05B17/00 Z
!E05B65/00 E
!E05G1/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-92971(P2015-92971)
(22)【出願日】2015年4月30日
(65)【公開番号】特開2016-211162(P2016-211162A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】306035454
【氏名又は名称】株式会社グリフィン
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】前田 秀一
【審査官】
佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3128951(JP,U)
【文献】
実開昭56−049861(JP,U)
【文献】
実開平01−004283(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
E05G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状の嵌合部に嵌合させた部材により所定方向への変位操作が可能となる変位機構を備えた取付対象物に対し、前記嵌合部の周辺領域に取り付けられる錠前装置であって、
当該錠前装置の裏側から前記取付対象物に向けて延出する位置関係で固定される第1キーと、
前記第1キーを前記取付対象物における変位操作と同じ方向へと変位可能に取り付けるキー取付部と、
当該錠前装置の表裏方向と交差する平面視で前記キー取付部と重ならない位置に配置され、所定形状の嵌合部である副嵌合部に嵌合させた第2キーにより所定方向への変位操作が可能となる錠前部と、
前記錠前部に対する変位操作を、前記取付対象物における変位操作と同じ方向の変位操作として前記キー取付部に伝達することにより、該キー取付部に取り付けられた第1キーを間接的に変位させるリンク機構と、を備えており、
前記キー取付部は、少なくとも前記第1キーの取付部分たる端部側が前記錠前部と表裏方向に沿って重なる位置関係となるように、該錠前部に対して表裏方向に沿った表側へと所定距離だけオフセットされている
ことを特徴とする錠前装置。
【請求項2】
前記取付対象物の変位機構に対する変位操作が、該取付対象物の嵌合部への部材の嵌合方向と交差する平面視で、該嵌合部に嵌合させた部材を該嵌合部の所定箇所を回転中心として回転させる操作である場合において、
前記キー取付部は、当該錠前装置の表裏方向と交差する平面視で、前記第1キーの所定箇所を回転中心として回転する方向へと変位可能となるように前記第1キーを取り付けており、
前記錠前部は、当該錠前装置の表裏方向と交差する平面視で、前記副嵌合部に嵌合させた前記第2キーを該副嵌合部の所定箇所を回転中心として回転させることができるように構成されており、
前記リンク機構は、前記錠前部に対する回転方向の変位操作を、前記取付対象物における変位操作と同じ回転方向の変位操作として前記キー取付部に伝達する
ことを特徴とする請求項1に記載の錠前装置。
【請求項3】
当該錠前装置の表裏方向と交差する平面に沿って拡がる板状の躯体部を備え、該躯体部の表側に前記錠前部の副嵌合部が配置され、該躯体部の裏側に前記キー取付部および前記リンク機構が配置されており、
前記キー取付部は、当該錠前装置の表裏方向と交差する平面視で、前記第1キーの所定箇所を回転中心として回転可能に前記躯体部へと固定された板状の部材であって、該回転中心を含む領域を表裏方向に貫通する嵌合孔に前記第1キーの端部側が嵌合されており、
前記躯体部は、前記キー取付部の嵌合孔に対応する領域に、該嵌合孔を通過してきた前記第1キーの端部側を収容するための収容孔を備え、該収容孔に前記第1キーの端部側を収容して保持することで前記キー取付部が前記躯体部に対して回転可能となるように固定されている
ことを特徴とする請求項2に記載の錠前装置。
【請求項4】
前記キー取付部に取り付けられた前記第1キーが少なくとも前記取付対象物における変位操作に必要な所定角度以上回転することを抑制する抑制部を備えている
ことを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の錠前装置。
【請求項5】
前記キー取付部に取り付けられた前記第1キーが少なくとも前記取付対象物における変位操作に必要な所定角度以上回転することを抑制する抑制部を備えており、
前記抑制部は、前記躯体部における収容孔のうち、前記第1キーが少なくとも前記取付対象物における変位操作に必要な角度回転した以降に通過する領域に向けて、該収容孔内周面から延びる延出片として形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の錠前装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の嵌合部に嵌合させた部材により所定方向への変位操作が可能となる変位機構を備えた取付対象物に対し、その嵌合部の周辺領域に取り付けられる錠前装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばキーのような所定形状の操作部材を嵌合部に嵌合させた状態で操作可能となる扉やスイッチなどの操作装置が用いられており、この操作部材を着脱可能な別体のものとして必要なときにのみ嵌合部に嵌合させるようにすることで、意図しない第三者による安易な操作を防止している。
【0003】
この種の操作装置では、装置ごとまたは装置の種類ごとに、嵌合部の形状および操作部材の形状を異ならせることが一般的であり、複数の装置を設置して使用するような環境下では装置ごとまたは装置の種類ごとに別の操作部材が必要となることから、管理者が全ての装置に対応する複数の操作部材を持ち歩き、各装置に対応する操作部材を選別して使用しなければならず、操作部材および各装置の管理に多大な労力を要していた。
【0004】
このような課題に対し、本願出願人は、各操作装置に取り付けられるものとして、操作部材である解錠用キーにより操作装置側の嵌合部に嵌合させておいた操作部材を間接的に操作する錠前装置を提案している(特許文献1参照)。この錠前装置では、解錠用キーを嵌合させて解錠方向に操作することで、この操作に連動する変位機構を介して操作装置側の操作部材を変位させることができる。
【0005】
この錠前装置であれば、複数の操作装置それぞれに取り付けられる錠前装置それぞれの解錠用キーを共通のものとしておくことで、これら操作装置を同じ解錠用キーで操作できるようになり、各操作装置に対応する全ての操作部材を持ち歩き、各装置に対応する操作部材を選別して使用するといったことが必要なくなるため、操作部材および各装置の管理がより容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3128951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただ、上述した錠前装置では、錠前装置自体の嵌合部と操作装置の嵌合部とが解錠用キーおよび操作部材の嵌合方向に配列されている構造上、その嵌合方向に沿って一定以上の長さを有しているため、錠前装置を狭いスペースに配置することが難しくなる。
【0008】
例えば、遊技機の筐体内に配置された設定変更のためのスイッチボックスや、券売機や自販機などの筐体内に配置された料金回収箱などのように、筐体の内部に操作装置全体が収容されているような場合には、取付対象物たる操作装置の外周から筐体の内周壁までのスペースが充分に確保されていないケースもあり、このようなスペースに制約のあるケースで従来の錠前装置を取り付けて使用することができなかった。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、解錠用キーにより操作装置の間接的な操作を実現するための錠前装置を取付対象物に取り付けるにあたり、スペースに制約のある環境下でも使用できるようにするための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため第1の構成(請求項1)は、所定形状の嵌合部に嵌合させた部材により所定方向への変位操作が可能となる変位機構を備えた取付対象物に対し、前記嵌合部の周辺領域に取り付けられる錠前装置であって、前記取付対象物の嵌合部に嵌合可能に形成され、当該錠前装置の裏側から前記取付対象物に向けて延出する位置関係で固定される第1キーと、前記第1キーを前記取付対象物における変位操作と同じ方向へと変位可能に取り付けるキー取付部と、当該錠前装置の表裏方向と交差する平面視で前記キー取付部と重ならない位置に配置され、所定形状の嵌合部である副嵌合部に嵌合させた第2キーにより所定方向への変位操作が可能となる錠前部と、前記錠前部に対する変位操作を、前記取付対象物における変位操作と同じ方向の変位操作として前記キー取付部に伝達することにより、該キー取付部に取り付けられた第1キーを間接的に変位させるリンク機構と、を備えており、前記キー取付部は、少なくとも前記第1キーにおける取付部分たる端部側が前記錠前部と表裏方向に沿って重なる位置関係となるように、該錠前部に対して表裏方向に沿った表側へと所定距離だけオフセットされている。
【0011】
このように構成された錠前装置であれば、第1キーを取り付けてなるキー取付部と、副嵌合部に嵌合させた第2キーにより所定方向への変位操作が可能となる錠前部とが、当該錠前装置の表裏方向と交差する平面視で重ならない位置に配置されている。
【0012】
そのため、キー取付部を錠前部に対して表裏方向に沿った表側へとオフセットさせ、第1キーの取付部分たる端部側を錠前部と表裏方向に沿って重なる位置関係とすることができ、この重なりに応じて表裏方向に短く、狭いスペースにも配置可能な錠前装置を実現することができる。こうして、スペースに制約のある環境下であっても、錠前装置を取付対象物に取り付けて使用することができるようになる。
【0013】
この構成において、キー取付部と錠前部との表裏方向に沿ったオフセットの距離は、取付対象物の表面形状や、取付に利用できる取付スペースの形状などに応じた任意の距離とすればよいが、例えば、第1キーにおいてキー取付部への取付に必要な端部側の長さ以上の距離であって、取付スペースに錠前装置を収めるのに必要な距離を確保することが考えられる。
【0014】
また、上記構成においては、錠前部における変位操作を取付対象物における変位操作と同じ方向の変位操作としてキー取付部に伝達できればよく、それぞれの変位操作に応じて各構成要素として種々の構成を採用することができる。
【0015】
例えば、前記取付対象物の変位機構に対する変位操作が、該取付対象物の嵌合部への部材の嵌合方向と交差する平面視で、該嵌合部に嵌合させた部材を該嵌合部の所定箇所を回転中心として回転させる操作である場合においては、下記のような第2の構成(請求項2)とすることが考えられる。
【0016】
第2の構成において、前記キー取付部は、当該錠前装置の表裏方向と交差する平面視で、前記第1キーの所定箇所を回転中心として回転する方向へと変位可能となるように前記第1キーを取り付けており、前記錠前部は、当該錠前装置の表裏方向と交差する平面視で、前記副嵌合部に嵌合させた前記第2キーを該副嵌合部の所定箇所を回転中心として回転させることができるように構成されており、前記リンク機構は、前記錠前部に対する回転方向の変位操作を、前記取付対象物における変位操作と同じ回転方向の変位操作として前記キー取付部に伝達する。
【0017】
この構成であれば、取付対象物における回転方向の変位操作に合せて、錠前部における変位操作を取付対象物における変位操作としてキー取付部に伝達させることができる。
ここで、錠前部における変位操作は、取付対象物における変位操作と同じ回転方向の操作となるため、錠前装置の取付前(つまり取付対象物そのものに対する変位操作)と同じ方向の変位操作で第2キーの変位操作を行えばよく、当該錠前装置の取付前後で変位操作の変更に伴う違和感を利用者に与えにくい点でも好適である。
【0018】
この構成において、キー取付部は、第1キーとともに取付対象物における変位操作と同じ方向へと変位可能に構成されていれば、当該錠前装置本体に固定するための構成は特に限定されない。例えば、下記のような第3の構成(請求項3)とすることが考えられる。
【0019】
第3の構成においては、当該錠前装置の表裏方向と交差する平面に沿って拡がる板状の躯体部を備え、該躯体部の表側に前記錠前部の副嵌合部が配置され、該躯体部の裏側に前記キー取付部および前記リンク機構が配置されており、前記キー取付部は、当該錠前装置の表裏方向と交差する平面視で、前記第1キーの所定箇所を回転中心として回転可能に前記躯体部へと固定された部材であって、該回転中心を含む領域を表裏方向に貫通する嵌合孔に前記第1キーの端部側が嵌合されており、前記躯体部は、前記キー取付部の嵌合孔に対応する領域に、該嵌合孔を通過してきた前記第1キーの端部側を収容するための収容孔を備え、該収容孔に前記第1キーの端部側を収容して保持することで前記キー取付部が前記躯体部に対して回転可能となるように固定されている。
【0020】
この構成によれば、キー取付部に形成された嵌合孔に第1キーを嵌合させ、こうして嵌合孔を通過してきた第1キーの端部を躯体部の収容孔に収容させるというシンプルな構造により、躯体部に対してキー取付部を回転可能に固定することができる。こうして、シンプルな構造で部品点数も少なくて済むことから、錠前装置としての表裏方向の厚さを含めて小型化を実現することができる。
【0021】
また、上述のように、キー取付部を回転可能に構成した場合には、以下に示す第4の構成(請求項4)のように、前記キー取付部に取り付けられた前記第1キーが少なくとも前記取付対象物における変位操作に必要な所定角度以上回転することを抑制する抑制部を備えている、といった構成とすることも考えられる。
【0022】
この構成によれば、取付対象物の嵌合部に嵌合した第1キーが必要以上に回転することが抑制されるため、必要以上に第1キーを回転させようとする力で取付対象物の嵌合部側が変形、損傷してしまうことを防止することができる。
【0023】
この構成における抑制部は、第1キーが所定角度以上回転することを抑制することができればよく、第1キーが少なくとも取付対象物における変位操作に必要な角度回転した以降に通過する領域を想定し、このような領域に配置することとすればその具体的な配置領域は特に限定されない。
【0024】
また、上記第3の構成においては、以下に示す第5の構成(請求項5)のようにすることが考えられる。
第5の構成においては、前記キー取付部に取り付けられた前記第1キーが少なくとも前記取付対象物における変位操作に必要な所定角度以上回転することを抑制する抑制部を備えており、前記抑制部は、前記躯体部における収容孔のうち、前記第1キーが少なくとも前記取付対象物における変位操作に必要な角度回転した以降に通過する領域に向けて、該収容孔内周面から延びる延出片として形成されている。
【0025】
この構成によれば、取付対象物の嵌合部に嵌合した第1キーが必要以上に回転することが抑制されるため、必要以上に第1キーを回転させようとする力で取付対象物の嵌合部側が変形、損傷してしまうことを防止することができる。
【0026】
また、躯体部の構成要素として収容孔と抑制部とを一体的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図4】別の実施形態におけるリンク機構およびキー取付部の構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1)全体構成
錠前装置1は、
図1、
図2に示すように、取付対象物100に取り付けられるものであり、第1キー10を取り付けてなるキー取り付け部20と、錠前装置1の表裏方向と交差する平面視でキー取付部20と重ならない位置に配置された錠前部30と、錠前部30に対する変位操作をキー取付部20に伝達するリンク機構40と、錠前装置1の表裏方向と交差する平面に沿って拡がる板状の躯体部50と、を備えている。
【0029】
本実施形態において、取付対象物100は、遊技機の筐体内に配置される設定変更用のスイッチボックスであり、所定形状のキーを嵌合させるための嵌合部110を有する変位機構120としてのスイッチが前面に配置され、この嵌合部110にキーを嵌合させた状態でスイッチ操作(キーを回転させる方向への操作)が可能となる。つまり、取付対象物100に対する変位操作は、嵌合部110への部材の嵌合方向(
図1における矢印方向)と交差する平面視で、嵌合部110における所定箇所を回転中心として嵌合部110に嵌合させたキーを回転させる操作となる。
【0030】
なお、取付対象物100となる操作装置としては、上記以外にも、券売機や自販機などの筐体内に配置された料金回収箱などに採用することも考えられ、この場合、開閉する扉の施錠および解錠を行う錠前が変位機構120となる。
【0031】
第1キー10は、取付対象物100の嵌合部110に嵌合可能に構成された部材であり、錠前装置1の裏側から取付対象物100に向けて延出する位置関係で固定される。
キー取付部20は、第1キー10を取付対象物100における変位操作と同じ方向へと変位可能に取り付ける部材である。
【0032】
本実施形態においては、錠前装置1の表裏方向と交差する平面視で、第1キー10の所定箇所を回転中心として回転可能に躯体部50へと固定された板状の部材であって、この回転中心を含む領域を表裏方向に貫通する嵌合孔21に第1キー10の端部側が嵌合されている。こうして、キー取付部20は、錠前装置1の表裏方向と交差する平面視で、第1キー10の所定箇所を回転中心として回転する方向へと変位可能となるように第1キー10を取り付けている。
【0033】
なお、このキー取付部20は、取付対象物100における変位操作と同じ方向に変位可能となっていれば、錠前装置1本体に固定するための構成は特に限定されない。
錠前部30は、所定形状の嵌合部である副嵌合部31を備え、この副嵌合部31に嵌合させた第2キー60により所定方向への変位操作が可能となる。本実施形態においては、錠前装置1の表裏方向と交差する平面視で、副嵌合部31に嵌合させた第2キー60を副嵌合部31の所定箇所を回転中心として回転させることができるように構成されている。
【0034】
リンク機構40は、錠前部30に対する変位操作を、取付対象物100における変位操作と同じ方向の変位操作としてキー取付部20に伝達することにより、キー取付部20に取り付けられた第1キー10を間接的に変位させる。本実施形態においては、錠前部30に対する回転方向の変位操作を、取付対象物100における変位操作と同じ回転方向の変位操作としてキー取付部20に伝達するように構成されている。
【0035】
また、このリンク機構40は、
図3に示すように、錠前装置1の表裏方向と交差する平面視で、錠前部30における回転方向の変位操作に従動して回転する板状の回転部材41と、回転部材41における回転中心から所定長さ離れた箇所をキー取付部20に繋ぐ棒状部材43と、を有している。
【0036】
この構成においては、回転部材41と棒状部材43とがキー取付部20から離れる方向(右上方)にオフセットされた箇所で固定されていることに伴い、棒状部材43とキー取付部20との固定箇所が、キー取付部20における回転中心を基準として同じ方向(右上方)にオフセットされた位置となっている。ただ、この固定箇所は、リンク機構40として正常に機能する範囲であれば、どのような位置関係であってもよく、例えば、
図4に示すように、キー取付部20における回転中心を基準にキー取付部20へと接近する方向(右下方)に延びた位置にて固定した場合であれば、同じ方向(右下方)にオフセットされた位置としてもよい。
【0037】
なお、上記リンク機構40は、錠前部30およびキー取付部20それぞれが同じ回転方向に沿った変位操作であるため、この方向を維持したまま変位操作を伝達する機構として構成されている。ただ、このリンク機構40は、錠前部30に対する変位操作を取付対象物における変位操作と同じ方向の変位操作としてキー取付部に伝達させることができればよく、それぞれが異なる方向に沿った変位操作である場合、錠前部30に対する変位操作の方向をキー取付部20における変位操作の方向に変換して伝達するような機構として構成するとよい。
【0038】
躯体部50は、表側に錠前部30の副嵌合部31が配置され、裏側にキー取付部20およびリンク機構40が配置されており、錠前部30に対応する領域51よりも、キー取付部20に対応する領域53の方が、表裏方向に沿った表側へと所定距離だけオフセットされた構成とされている。これにより、キー取付部20が、少なくとも第1キー10の取付部分たる端部側が錠前部30と表裏方向に沿って重なる位置関係となっている。
【0039】
このキー取付部20と錠前部30との表裏方向に沿ったオフセットの距離は、第1キー10においてキー取付部20への取付に必要な端部側の長さ以上の距離として、取付に必要な取付スペースの形状に応じた距離が確保されている。ただ、この距離は、取付対象物100の表面形状や、取付スペースの形状などに応じた任意の距離とすればよく、上記距離に限られない。
【0040】
また、躯体部50は、キー取付部20の嵌合孔21に対応する領域に、嵌合孔21を通過してきた第1キー10の端部側を収容するための収容孔55を備え、この収容孔55に第1キー10の端部側を収容して保持することでキー取付部20が躯体部50に対して回転可能となるように固定されている。なお、ここでは、収容孔55が表裏方向に貫通する孔として形成されているが、第1キー10の端部側を収容可能であれば、貫通していない凹状の孔として形成されたものであってもよい。
【0041】
また、本実施形態において、収容孔55には、第1キー10が少なくとも取付対象物100における変位操作に必要な角度回転した以降に通過する領域に向けて、収容孔55内周面から延びる延出片である抑制部57を備えている。この抑制部57により、キー取付部20に取り付けられた第1キー10は、少なくとも取付対象物100における変位操作に必要な所定角度以上回転することが抑制されることとなる。
【0042】
なお、この抑制部57は、第1キー10が必要以上回転することを抑制することができればよく、躯体部50における収容孔55の内周面から延出する延出片とする以外に、第1キー10が少なくとも取付対象物100における変位操作に必要な角度回転した以降に通過する領域を想定し、このような領域に配置することとすればその具体的な配置領域は特に限定されない。
【0043】
例えば、収容孔55を表裏方向に貫通する孔として形成した場合であれば、収容孔55から躯体部50の表面側に突出する第1キー10の端部に接触する位置関係で、躯体部50の表面に別部材として抑制部57を設けることが考えられる。また、躯体部50の裏側に位置する第1キー10の外周面に接触する位置関係で、躯体部50の裏面に別部材として抑制部57を設けることが考えられる。これら抑制部57は、躯体部50の表側、裏側、および、収容孔55の内周領域のいずれかに設けた構成としてもよいし、これら2カ所以上に設けた構成としてもよい。
【0044】
なお、上述した構成においては、錠前部30における変位操作を取付対象物100における変位操作と同じ方向の変位操作としてキー取付部20に伝達できればよく、それぞれの変位操作に応じて各構成要素として種々の構成を採用することができる。
(2)作用,効果
このように構成された錠前装置1であれば、第1キー10を取り付けてなるキー取付部20と、副嵌合部31に嵌合させた第2キー60により所定方向への変位操作が可能となる錠前部30とが、錠前装置1の表裏方向と交差する平面視で重ならない位置に配置されている。
【0045】
そのため、キー取付部20を錠前部30に対して表裏方向に沿った表側へとオフセットさせ、第1キー10の取付部分たる端部側を錠前部30と表裏方向に沿って重なる位置関係とすることができ、この重なりに応じて表裏方向に短く、狭いスペースにも配置可能な錠前装置1を実現することができる。こうして、スペースに制約のある環境下であっても、錠前装置1を取付対象物100に取り付けて使用することができるようになる。
【0046】
また、上記構成であれば、取付対象物100における回転方向の変位操作に合せて、錠前部30における変位操作を取付対象物100における変位操作としてキー取付部に伝達させることができる。
【0047】
ここで、錠前部30における変位操作は、取付対象物100における変位操作と同じ回転方向の操作となるため、錠前装置1の取付前(つまり取付対象物100そのものに対する変位操作)と同じ方向の変位操作で第2キー60の変位操作を行えばよく、錠前装置1の取付前後で変位操作の変更に伴う違和感を利用者に与えにくい点でも好適である。
【0048】
また、上記構成によれば、板状のキー取付部20に形成された嵌合孔21に第1キー10を嵌合させ、こうして嵌合孔21を通過してきた第1キー10の端部を躯体部50の収容孔55に収容させるというシンプルな構造により、躯体部50に対してキー取付部20を回転可能に固定することができる。こうして、シンプルな構造で部品点数も少なくて済むことから、錠前装置1としての表裏方向の厚さを含めて小型化を実現することができる。
【0049】
また、上記構成によれば、抑制部57によって、取付対象物100の嵌合部110に嵌合した第1キー10が必要以上に回転することが抑制されるため、必要以上に第1キー10を回転させようとする力で取付対象物100の嵌合部110側が変形、損傷してしまうことを防止することができる。
【0050】
特に、上記構成では、抑制部57が躯体部50における収容孔55の内周面から延びる延出片として形成されているため、躯体部50の構成要素として収容孔55と抑制部57とを一体的に形成することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…錠前装置、10…第1キー、20…キー取付部、21…嵌合孔、30…錠前部、31…副嵌合部、40…リンク機構、41…回転部材、43…棒状部材、50…躯体部、51…領域、53…領域、55…収容孔、57…抑制部、60…第2キー、100…取付対象物、110…嵌合部、120…変位機構。