(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474164
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】プレス機
(51)【国際特許分類】
B30B 15/04 20060101AFI20190218BHJP
B30B 1/26 20060101ALI20190218BHJP
B30B 15/06 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
B30B15/04 A
B30B1/26 D
B30B15/06 C
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-501426(P2016-501426)
(86)(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公表番号】特表2016-515049(P2016-515049A)
(43)【公表日】2016年5月26日
(86)【国際出願番号】US2014024135
(87)【国際公開番号】WO2014165014
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2017年3月13日
(31)【優先権主張番号】61/777,660
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503179377
【氏名又は名称】ヴァムコ・インターナショナル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヴォーン エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ジェンティーレ ジョセフ ピー
(72)【発明者】
【氏名】ジェンティーレ ブライアン ピー
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−091877(JP,A)
【文献】
特開2000−288792(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第00387312(GB,A)
【文献】
実開昭59−016795(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/04
B30B 1/26
B30B 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機であって、
第1の部分、第2の部分、及びスロート部を含むC字形のプレスフレームと、
前記プレスフレームによって回転自在に支持されたクランク軸であって、前記クランク軸は少なくとも1つの第1の偏心部を有し、前記クランク軸は前記プレスフレームの前記第1の部分の主要加力位置において支持される、前記クランク軸と、
このクランク軸に接続され、このクランク軸を回転させるように駆動される少なくとも1つのクランク軸モータと、
ラムと、
前記主要加力位置において前記プレスフレームの前記第1の部分によって支持されたラム駆動機構と、
ラムガイド位置において前記プレスフレームの前記第2の部分によって支持された、前記ラムを線形に誘導するラムガイドと、
前記ラムに固定して取り付けられた上側ツール部と、下側ツール位置において前記プレスフレームに固定して取り付けられた下側ツール部とを含む、加工物を加工するように構成された加工ツールと、
を備え、
前記主要加力位置は、前記加工物の加工中における作動位置と、前記加工物が加工中でない時の休止位置とを有し、
前記ラムガイド位置は、前記加工物の加工中における作動位置と、前記加工物が加工中でない時の休止位置とを有し、
前記第1の部分及び前記第2の部分は、前記第1の部分に作用する変位又は力が前記第2の部分に伝わって影響を及ぼすのを防ぐように接続領域において制限された形で接続され、
前記接続領域は、前記プレスフレームの前記第1の部分の1つの側面上にのみ位置し、前記接続領域は、前記プレスフレームの前記第1の部分を前記第1の部分の1つの側面の一部のみを通じて前記プレスフレームの前記第2の部分に接続し、前記プレスフレームの前記第1の部分及び前記第2の部分は、前記接続領域を除いた全ての箇所で分離され、前記ラムガイド位置の前記作動位置と前記休止位置との間の位置的差分は、前記主要加力位置の前記作動位置と前記休止位置との間の位置的差分よりも小さいことを特徴とするプレス機。
【請求項2】
下側ツール部取付位置において前記プレスフレームに取り付けられた下側ツール部をさらに備え、前記下側ツール部取付位置に垂直であって前記主要加力位置を通る第1の平面が、この第1の平面に平行であって前記プレスフレームの前記スロート部に正接する第2の平面と、前記第1の平面に平行であって前記ラムガイド位置を通る第3の平面との間に位置する請求項1記載のプレス機。
【請求項3】
点Aが、前記休止位置における前記主要加力位置を示し、点Bが、前記下側ツール部が前記プレスフレームに固定された位置を示し、点Cが、前記加工物が加工中でない時の前記休止位置における前記ラムガイド位置を示し、点A’、B’及びC’が、前記作動位置における前記点A、B及びCをそれぞれ示し、線BAが、前記点Bと前記点Aの間の距離を示し、線BCが、前記点Bと前記点Cの間の距離を示し、線B’A’が、前記作動位置における前記点B’と前記点A’の間の距離を示し、線B’C’が、前記点B’と前記点C’の間の距離を示し、(B’C’−BC)<(B’A’−BA)である請求項2記載のプレス機。
【請求項4】
前記主要加力位置は、円筒面であり、前記点Aは、円筒面の中心点である、請求項3記載のプレス機。
【請求項5】
第1の加工力及び第2の加工力は、加工される時に前記加工物に対して完了した剪断加工又は曲げ加工によって生じ、前記第1の加工力は、前記上側ツール部から前記ラム駆動機構を通じて前記プレスフレームの前記第1の部分に伝えられ、前記第2の加工力は、前記下側ツール位置に伝えられる、請求項1乃至4の何れか1項に記載のプレス機。
【請求項6】
前記第1の部分は、前記第2の部分が前記第1の部分の全ての側面を取り囲むように、前記プレスフレームの前記第2の部分の内部に配置される、請求項1乃至5の何れか1項に記載のプレス機。
【請求項7】
前記プレスフレームの前記第2の部分は、前記プレスフレームの前記第1の部分の歪みが前記プレスフレームの前記第2の部分に伝わるのを防ぐように構成される、請求項1乃至6の何れか1項に記載のプレス機。
【請求項8】
前記プレスフレームの前記第1の部分及び前記第2の部分は、単一構成部品として形成される、請求項1乃至7の何れか1項に記載のプレス機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機及び発電機のラミネーション等の、典型的には円形又は環状の加工物の内周、外周又はこれらの両方におけるいわゆる「ノッチ」をパンチング、スタンピング又はダイカッティングするためのノッチングプレス機に関する。当業では、多くの異なる設計のノッチングプレスが知られている。
【0002】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2013年3月12日に出願された米国仮特許出願第61/777,660号の出願日の利益を合衆国法典第35編第119条(e)に基づいて主張するものであり、この仮特許出願は引用により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
当業で周知の多くのノッチングプレスは、一般に「ギャップフレームプレス」と呼ばれる「C」字形のプレスフレームと、駆動される偏心クランク軸と、ツールの上部又はパンチ部を取り付けるための線形誘導されるスライド又はラムと、偏心クランク軸の回転運動をスライド又はラムの線形往復運動に変換するためのリンク式伝達機構と、ツールの固定された下部又はダイ部を取り付けるための、プレスフレームの取付位置又はベッド部とで構成される。これらの構成部品は、ツールの上部又はパンチ部を動かして、ツールの下部又はダイ部及びこれらの間に位置する加工物に対して係合及び離脱させるように協働する。通常、既知のギャップフレームプレスは、連続回転するクランク軸駆動モータ、及び場合によってはフライホイールと、係合時にクランク軸を回転させるように駆動モータ又はフライホイールをクランク軸に駆動接続するクラッチと、クラッチの離脱後にクランク軸を停止させるためのブレーキ機構とによって駆動される。
【0004】
多くのノッチングプレスは、ツールが加工物に係合していない間は加工物を保持して断続的に回転させ、ツールが加工物と係合している時には加工物を正しい角度位置に保持して所望の最終的な加工物形状を生産するように構成されたインデックス機構をさらに含む。
【0005】
多くのノッチングプレスは、ツールとインデックス機構の回転軸との間の距離を変化させて様々な直径の加工物の加工、又は単一の加工物に対する複数の直径のパンチングを容易にするために、ギャップフレームプレスが取り付けられて典型的には水平方向に、具体的にはプレスラムの動きに対して垂直な方向に摺動するように構成された固定ベースをさらに含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、ノッチングプレスは、加工物のカッティング又はスタンピングを行うための交換可能なツールを受け入れることができる。異なるツールでは、いわゆる「シャットハイト」の設定を異ならせることが必要になり得る。プレスのシャットハイトとは、ツールの上部又はパンチ部を取り付けたラムが最も近い位置又は「閉じた」位置にある時にラムの動き方向に測定した、ラムの端部からツールの下部又はダイ部を取り付けたプレスフレームの取付位置又はベッド部までの距離のことである。当業で周知の多くのノッチングプレスは、交換可能ツールを使用できるようにプレスのシャットハイトを変更するための調整機構を含む。通常、この調整機構には、手動で調整されるという不利点がある。
【0007】
プレスノッチは、一般的には「毎分ストローク」で測定される比較的高い生産速度で動作することが望ましい。最大生産速度を達成するには、ノッチングプレスのプレスストローク長が最小になるように構成することが望ましい。プレスストローク長とは、プレスラムの往復運動の最も離れた両端部によって特徴付けられる距離のことである。ノッチングプレスラムのストローク長を最小化すると、ツールの上部と下部の間における加工物の装填及び除去の難易度が増す。従って、ノッチングプレスでは、個々の加工物に対して行うべき全てのパンチング作業の完了時にラムを加工物から離れるようにさらに動かすためのラムリフト機構を有することが一般的である。これにより、完成した加工物を容易に除去し、次の加工物を加工できるように装填し、その後にラムリフト機構がラムを所望の始動位置に動かして、後続のクランク軸回転及びスタンピング作業に進むことができる。現在当業で知られているラムリフト装置は、ラムを一定量だけ持ち上げる。
【0008】
上述したように、通常、ノッチングプレスのツールは、上部又はパンチ部、及び下部又はダイツール部という2つの部分を含む。通常、下側ツール部はボルスタプレートに強固に取り付けられ、このボルスタプレートはプレスベッドに強固に取り付けられる。通常、上側ツール部は、プレスラムに強固に取り付けられることにより、典型的には垂直方向に往復運動して下側ツール部と係合又は離脱するようになる。プレスラムには、上側及び下側ツール部の正しい位置合わせを確実にして維持するための誘導部が設けられる。下側ツール部に対する上側ツール部の位置合わせに狂いが生じると、ツールのカッティング精度が低下してしまう。また、この狂いによってツールが損傷することもある。あらゆる加工物の正常なスタンピングは、上側ツール部と下側ツール部の正しい位置合わせを維持する能力に依存する。
【0009】
典型的なノッチングプレスの一般に「C」字形のプレスフレームは、加工物の便利な装填及び除去には必要であるが、スタンピング作業において生じる強い力によって必然的に曲がったり又は撓んだりする。例えば、プレスラム及び上側ツール部が加工物に衝撃を与えている最中には、通常のギャップフレームプレスは角偏向を受け、その後にクランク軸がプレスの作用線と垂直な方向に変位してしまう。さらに、多くのこのような既知のプレスには、ラム誘導部がこのフレームの偏向を受けて上側及び下側ツール部の位置ずれを引き起こすという不利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
当業で周知のプレスのこれらの及びその他の不利点を解決するために、添付図面に1つのノッチングプレス機を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態によるノッチングプレス機の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態によるノッチングプレス機のカバーを取り外した状態の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態によるノッチングプレス機のカバー及びクランク軸モータを取り外した状態の斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態によるノッチングプレス機のカバーを取り外した状態の正面図である。
【
図5】本発明の実施形態によるノッチングプレス機のカバーを取り外した状態の側面図である。
【
図9】ラムが上昇位置にある本発明の実施形態によるノッチングプレス機の側面図である。
【
図10】本発明の実施形態によるノッチングプレス機の斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態によるノッチングプレス機の側面図である。
【
図12】本発明の実施形態によるノッチングプレス機の側面図であり、作動位置及び休止位置をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の応用は、以下の説明又は図面に示す構造の詳細及び構成部品の配置に限定されるものではなく、ほんの参照としていくつかの実施形態を示していると理解されたい。本発明は、説明する実施形態以外の実施形態も可能であり、様々な方法で実行及び実施することができる。また、本明細書で使用する表現及び専門用語は説明のためのものであり、限定的なものであると見なすべきではないと理解されたい。
【0013】
図1〜
図11を参照すると、本発明の実施形態によるノッチングプレス機は、固定ベース1と、ベース1に摺動自在に取り付けられた概略的に示すギャップフレームプレス2と、ベース1に取り付けられた、加工物4を保持して位置決めするための概略的に示すスピンドル3とを含む。スピンドル3及び加工物4を回転運動させるために、インデックスモータ5が配置される。
【0014】
このノッチングプレス機は、ベース1に回転自在に取り付けられたプレス位置決め用ネジ7(
図8)と、プレスフレーム10に固定して取り付けられたプレス位置決め用ネジナット8と、ベース1上に固定して取り付けられプレス位置決め用ネジ7に駆動接続されたプレス位置決め用モータ6とをさらに含む。プレス位置決め用モータ6、ネジ7及びナット8は、ノッチングプレス機を特定の加工物4の加工に適合させるためにスピンドル3の回転軸と垂直な線に沿ってギャップフレームプレス2を動かすように協働する。当業では、同様に構成されたノッチングプレス機が周知である。
【0015】
既知のノッチングプレス機の不利点を解決するために、このノッチングプレス機は、第1の偏心部14及び第2の偏心部15を有するクランク軸13(
図6)をさらに含む。クランク軸13は、プレスフレーム10によって、具体的にはプレスフレーム10の第1の部分11(
図10)によって回転自在に支持される。図示の好ましい実施形態では、第1の偏心部14及び第2の偏心部15が、クランク軸13の中間点に対して対称に配置された2つの構成部品で構成される。クランク軸13は、プレスフレーム10に固定して取り付けられたクランク軸駆動モータ16に駆動接続され、好ましくはフレーム10に固定して取り付けられた2つのクランク軸駆動モータ16にクランク軸13の両端が駆動接続される。駆動モータ、又は好ましくは駆動モータ16は、クランク軸13を回転させるための回転駆動トルクを与える。駆動モータ16は、好ましくは電動サーボモータであり、制御システム(図示せず)にクランク軸の位置情報を提供するためのフィードバック装置17をさらに含む。この制御システムは、当業者に周知の従来のサーボ制御システムとすることができる。2つのクランク軸駆動モータ16は、トルクを逆にすることができ、クランク軸13の始動、駆動及び停止を行う。構成部品が故障した場合のノッチングプレス機の安全動作を確実にするために、冗長的なモニタ及び停止システムを提供することが望ましい。通常動作では、駆動モータ16がクランク軸13の回転の始動、維持及び停止を行うように協働し、制御システム(図示せず)が、駆動モータ16のフィードバック装置17をモニタする。システムのいずれかの構成部品が故障した場合、例えばフィードバック装置17の故障、モータ16のクランク軸13からの切断、又はクランク軸13の破損に起因してフィードバック装置17の速度が互いに一致しない場合には、残りの機能する方のモータを用いてクランク軸13の回転を安全に停止させることができる。このように、冗長駆動手段すなわち駆動モータ16に冗長モニタ装置すなわちフィードバック装置17を設けることにより、ノッチングプレス機の安全動作が確実になると同時に、現行技術のノッチングプレス機に必要なクランク軸クラッチ及びブレーキ装置の必要性が排除される。
【0016】
ノッチングプレス機は、プレスフレーム10によって、具体的にはプレスフレーム10の第2の部分12によって支持されたラム40(
図8)をさらに含み、このラム40は、単一(又は複数)のラムガイド44に誘導されてインデックススピンドル3の回転軸に平行な線形方向に摺動するように構成される。ラム40は、プレスフレーム10に、具体的には加工物4のパンチング又は加工を行うプレスフレーム10の部分11に固定して取り付けられた下側ツール部43と協働する上側ツール部42を固定して支持する。
【0017】
ノッチングプレス機は、メインラム駆動部リンク22(
図11)と、ラム駆動部接続リンク20と、二次ラム駆動部リンク24と、枢動ピン21、23、25及び41とを有するリンク式ラム駆動機構をさらに含む。二次ラム駆動部リンク24は、第1の端部が枢動ピン25によって枢動自在に支持され、第2の端部が枢動ピン23によってメインラム駆動部リンク22に枢動自在に接続される。メインラム駆動部リンク22は、第2の端部が枢動ピン41によってラム40に枢動自在に接続される。ラム駆動部接続リンク20は、第1の端部がクランク軸13の第1の偏心部14によって回転自在に支持される。ラム駆動部接続リンク20は、メインラム駆動部リンク22の第1の端部と第2の端部の間の地点において第2の端部がメインラム駆動部リンク22にさらに枢動自在に接続される。図示の好ましい実施形態では、2つのラム駆動部接続リンク20と、クランク軸13の2つの第1の偏心部14とが、ギャップフレームプレスの中間点に対して対称に配置されている。しかしながら、2つのラム駆動部接続リンク20及びクランク軸13の2つの第1の偏心部14を示しているが、これは図示の特定の実施形態における便宜上の問題にすぎず、必須ではない。
【0018】
このノッチングプレス機は、迅速かつ容易なラムのシャットハイト調整及びラムのリフト機能を可能にするラム調整機構をさらに含む。ラム調整機構は、プレスフレーム10によって、具体的にはプレスフレーム10の部分12によって支持された支持部材26(
図8)を含み、この支持部材26は、プレスフレームに対してラム40の移動線と実質的に平行な方向に移動するように構成される。ラム調整機構は、支持部材26を動かして位置決めするための位置決め機構をさらに含む。この位置決め機構は、フレーム10によって回転自在に支持されたラム調整用ネジ28と、支持部材26に固定して支持されたラム調整用ネジナット部材31と、フィードバック装置30を含んでネジ28に駆動接続されたラム調整用モータ29とを含むことが好ましい。ラム調整機構は、枢動ピン25によって二次ラム駆動部リンク24の第1の端部に枢動自在に接続される。図示の好ましい実施形態では、2つの二次ラム駆動部リンク24と、2つの枢動ピン25とが同じ機能を実行するように協働し、ギャップフレームプレスの中間点に対して対称に配置される。しかしながら、2つの二次ラム駆動部リンク24及び2つの枢動ピン25を示しているが、これは図示の特定の実施形態における便宜上の問題にすぎず、必須ではない。
【0019】
ノッチングプレス機の段取り替え作業時には、上側ツール部42がラム40(
図8)に固定される。下側ツール部43は、プレスフレーム10に、具体的にはプレスフレーム10の第1の部分11に固定される。プレス位置決め用モータ6、ネジ7及びナット8を用いて、ギャップフレームプレス2をスピンドル3に対して特定の加工物の加工に適した位置に位置付けることができる。単一(又は複数)の駆動モータ16は、クランク軸13の第1の偏心部14が最も低い位置又は「閉じた」位置に位置するように回転する。その後にラム調整用モータ29が回転し、ラム調整用ネジ28及びラム調整用ネジナット部材31が、支持部材26及び単一(又は複数)の二次ラム駆動部リンク24を単一(又は複数)のラムガイド44(
図3)の方向と実質的に平行な方向に動かすように協働する。枢動ピン23、二次ラム駆動部リンク24、メインラム駆動部リンク22、枢動ピン41及び枢動ピン21は、ラム調整用モータ29の回転方向に応じて、上側ツール部を下側ツール部に向けて又は下側ツール部から離して動かすように協働する。従って、ノッチングプレス機のシャットハイトを様々なツール部品に適合させることができる。ラム調整用モータ29の位置及び支持部材26の位置は測定することができ、好ましい実施形態ではコントローラに基準として記憶することができる。この支持部材26の位置は、ラム40の閉じた作動位置又はシャットハイトに対応する。次に、単一(又は複数)の駆動モータ16が、クランク軸13の第1の偏心部14が最も高い位置又は開いた作動位置に来るように回転する。このクランク軸13の回転中には、ラム調整用モータ29は動かない。従って、支持部材26の位置によってラム40の閉じた作動位置及び開いた作動位置がこのように決定される一方で、閉じた作動位置と開いた作動位置の間におけるラム40の動きが偏心クランク軸13の回転によってもたらされることが分かる。支持部材26の再配置によるラム40の閉じた作動位置及び開いた作動位置、具体的にはラムのシャットハイトは、新たなツールの装填時に一度だけ調整すればよい。
【0020】
この改善されたノッチングプレス機の加工物加工作業では、ラム調整用モータ29が第1の方向に回転し、加工物の装填が容易になる開いた作動位置の上方の所定の位置までラム40が持ち上げられる。上述したラムのシャットハイトの調整に関与する構成部品と同じ構成部品が利用される。ラム40が所定の位置まで上昇すると、上側ツール部42と下側ツール部43の間に加工物4を挿入することができる。この時点で、ラム調整用モータ29が第1の方向とは逆の第2の方向に回転し、上述したように決定された開いた作動位置にラム40が下降する。加工物4をスピンドル3上に装填する。駆動モータ16が回転し、駆動モータ16への駆動接続を介してクランク軸13が回転する。リンク式ラム駆動機構が偏心クランク軸13の動きを伝え、ラム40の往復運動に引き続いて上側ツール部42が下側ツール部43及び加工物4に対して動作係合及び離脱を行うようになる。上側ツール部42が下側ツール部43及び加工物4に動作係合していない時間中、スピンドル3及び加工物4は、インデックスモータ5の駆動トルクによって回転した後、上側ツール42と加工物4の次の動作係合のための所定のインデックス位置に停止する。クランク軸の回転及び加工物の位置決めは、加工物4が完全に加工されるまで継続し、この時点で駆動モータ16がクランク軸13の回転を、一般には開いた作動位置で停止させる。この時点でラム調整用モータ29が第1の方向に回転し、ラム40が作動位置の上方の所定位置まで上昇して、加工物4の取り出し及びその後の新たな加工物の装填を容易にする。その後、この過程を繰り返すことができる。
図11に、ラムが上昇位置にあるノッチングプレス機を示す。
【0021】
なお、本明細書で説明したラム調整機構のさらなる利点は、ラムリフト機能が完全に調整可能な点である。加工物の加工サイクル時間を短縮するために、ラムのリフト量は最小にすることが望ましい。当業で周知のノッチングプレス機のラムリフト機能は一般に量が一定であり、従ってラムリフト機能を実行するのに必要な時間を改善することができない。本明細書で説明したラム調整機構は、加工物の装填を容易にするための、開いた作動位置の上方の所定位置を、この機能を実行するのに必要な時間を最小化するように自由に調整することができる。
【0022】
このノッチングプレス機は、第1の偏心部14及び第2の偏心部15を有するクランク軸13を含む質量平衡システムをさらに提供する。第2の偏心部15は、第1の偏心部14に実質的に対向し、すなわち第1の偏心部14から180度変位して配置される。この質量平衡システムは、メイン平衡錘駆動部リンク52と、平衡錘駆動部接続リンク50と、枢動ピン51及び55と、質量平衡錘56とを含む。メイン平衡錘駆動部リンク52は、第1の端部が枢動ピン55によって枢動自在に支持されて枢動ピン55を中心に回転する。図示の好ましい実施形態では、枢動ピン55がラム調整機構の支持部材26によって支持されているが、これは図示の特定の実施形態における便宜上のものにすぎない。枢動ピン55は、加工物の加工中における平行移動を防ぐように支持される。上述したように、加工物の加工中には、支持部材26が停止した状態を保つことによって枢動ピン55の平行移動を防ぐ。しかしながら、当業者には、プレスフレーム10によって枢動ピン55を直接支持できることが明らかであろう。質量平衡錘56は、メイン平衡錘駆動部リンク52の第2の端部に固定して取り付けられる。平衡錘駆動部接続リンク50は、第1の端部がクランク軸13の第2の偏心部15によって回転自在に支持される。平衡錘駆動部接続リンク50は、第2の端部がメイン平衡錘駆動部リンク52の第1の端部と第2の端部の間の地点に枢動ピン51によってさらに枢動自在に接続される。
【0023】
クランク軸13の回転中、並びにその後のラム40及び上側ツール部42の往復運動中には、平衡錘駆動部接続リンク50、メイン平衡錘駆動部リンク52、並びに枢動ピン51及び55が、質量平衡錘56をプレスのラム40の動きとは実質的に逆の方向に往復運動させるように協働する。質量平衡錘56の動きは、平行移動が固定された枢動ピン55の周囲における第1の平衡錘リンク52の回転動作に起因して完全に線形ではないが、そのほとんどはラム40の動きとは逆方向の動きである。この往復運動する質量平衡錘56の慣性力が、ラム40及び上側ツール部42の往復運動によって引き起こされる振動力を相殺して減少させる。関連する幾何形状及び質量を考慮すれば、結果として生じる振動を最小化し、従って改善されたノッチングプレス機のベース1に伝わる振動を最小化するのに必要な質量平衡錘56を計算することは容易である。
【0024】
上側ツール部42が加工物4及び下側ツール部43に動作係合すると、加工物4に対して完了した剪断加工又は曲げ加工によって第1及び第2の加工力(F1及びF2)が生じる。第1の加工力F1は、上側ツール部42からリンク式ラム駆動機構を通じてプレスフレーム10に、具体的にはプレスフレーム10の第の1部分11の大まかに示す主要加力位置111(
図12)に伝わる。第2の加工力F2は、下側ツール部がプレスフレーム10に固定される地点に、具体的にはプレスフレーム10の大まかに示す第2の位置211に伝わる。第1及び第2の加工力は、曲げ力又はモーメントを生じるように協働し、この力にプレスフレーム10の第1の部分11が耐えることにより、第1の位置111が第2の位置211に対して変位するようになる。すなわち、プレスフレーム10の第1の部分11の形状が歪むようになる。主要加力位置111は、プレスフレーム10の部分11における、加工物4の加工に起因して生じる最も大きな加工力が加わる位置である。具体的には、本発明のラム駆動機構は、プレスフレーム10への複数の接続部を有することができ、従って発生した複数の力がプレスフレーム10の第1の部分11に加わっており、その最も大きな力が加わる接続位置が主要加力位置である。図面から明らかなように、図示の好ましい実施形態では、クランク軸13が、主要加力位置111においてプレスフレーム10の第1の部分11によって支持される。本発明の他の実施形態は、主要加力位置111においてプレスフレーム10の第1の部分11によって支持されたラム駆動機構の枢動接続部を有することができる。
【0025】
上述したように、ラム40は、プレスフレーム10によって、具体的にはプレスフレーム10の第2の部分12によって支持され、単一(又は複数)のラムガイド44に誘導されてインデックススピンドル3の回転軸と平行に線形方向に摺動するように構成される。ラム40の誘導は、上側ツール部42と下側ツール部43の正しい位置合わせを確実にするために行われる。プレスフレーム10の第2の部分12は、プレスフレーム10の第1の部分11の歪みがプレスフレーム10の第2の部分12に伝わるのを防ぐように構成される。第1の部分11と第2の部分12は、第1の部分11に作用する変位又は力が第2の部分12に伝わって影響を及ぼすのを防ぐように、制限された形で有利な箇所においてのみ接続される。好ましい実施形態では、プレスフレーム10の部分11と部分12の制限された接続部が、有利に接続領域411(
図10)に位置する。好ましい実施形態についての図面で分かるように、部分11は、部分12が部分11の全ての側面を取り囲むものの部分11の側面の1つのみに接触するように部分12の内部に配置される。具体的には、プレスフレーム10の部分11と部分12は、接続領域411を除いた全ての箇所で分離される。接続領域411は、プレスフレーム10の部分11の1つの側面上にのみ位置することが好ましく、部分11の1つの側面の一部のみを通じてプレスフレーム10の部分11をプレスフレーム10の部分12に接続することがさらに好ましい。プレスフレーム10の部分11と部分12の間の接続部を、プレスフレーム10の部分11の総表面積に比べて非常に狭い接続領域411に限定することにより、プレスフレーム10の部分11から部分12に応力が伝わるのを防ぐ。従って、このプレスフレームの2つの部分の構造は、プレスのラムの線形誘導部を支持する第2のプレスフレーム部12から第1のプレスフレーム部11の撓み又は歪みを分離するように機能する。従って、ラムの誘導及び上側ツール部と下側ツール部の位置合わせが改善され、ラムの誘導部に対するスタンピング工程の影響が低減される。このノッチングプレス機の改善されたプレスフレーム10の好ましい実施形態は、2つの部分11及び12を有する単一構成部品10として示されているが、プレスフレーム10は、本明細書で説明した利点をもたらす形で接続された別個の構成部品で構成することもできる。
【0026】
明確にするために、
図12に、プレスフレーム10の第1の部分11及び第2の部分12を、作動位置と休止位置を重ね合わせた形で示す。好ましい実施形態では、大まかに示す主要加力位置111が、中心点A(
図11)を有する円筒面である。点Aは、加工物4が加工中でない時、すなわち上側ツール部42が加工物4と動作係合していない時の休止位置における主要加力位置111を概略的に表す。点Bは、加工物4が加工中でない時の休止位置において、下側ツール部43がプレスフレーム10に固定される位置、より一般的には上記で第2の位置211と呼んだ位置を概略的に表す。点Cは、加工物4が加工中でない時の、プレスフレーム10の第2の部分12によって支持されたラムガイド44の位置であるラムガイド位置を概略的に表す。点A’、B’及びC’(
図12)は、作動位置における、すなわち下側ツール部43が加工物4と動作係合している時の点A、B及びCをそれぞれ表す。
【0027】
線BA(
図11)は、休止位置における点Bと点Aの間の距離を表す。線BCは、休止位置における点Bと点Cの間の距離を表す。線B’A’は、作動位置における点B’と点A’の間の距離を表す。線B’C’は、点B’と点C’の間の距離を表す。プレスフレーム10の第1の部分11及び第2の部分12は、ラムガイド位置の作動位置C’と休止位置Cの間の位置的差分が、主要加力位置の作動位置A’と休止位置Aの間の位置的差分よりも小さくなるように構成される。すなわち、(B’C’−BC)<(B’A’−BA)である。
【0028】
好ましい実施形態では、第1の平面S(
図10)が、下側ツール部43の取付位置211と垂直であり、大まかに示す主要加力位置111を、具体的には概略点Aを通る。平面Sと平行に示す第2の平面Rは、プレスフレーム10のスロート部311に正接する。平面Sと平行に示す第3の平面Tは、ラムガイドの点Cによって概略的に示す位置を通る。平面Sは、平面RとTの間に位置することが有利である。
【0029】
好ましい実施形態では、プレスフレーム10の部分11及び12を、部分11の1つの側面のみに沿って接続されるように示しているが、ラムガイド位置の作動位置C’と休止位置Cの間の位置的差分が主要加力位置の作動位置A’と休止位置Aの間の位置的差分よりも小さいという関係を維持しながら、例えば複数の側面上等の他の領域において他の構成を接続することもできる。
【0030】
なお、ギャップフレームプレス2は、ノッチングプレス機の構成部品として示しているが、改善されたプレスフレーム10、質量平衡システム、ラム調整機構及びリンク式ラム駆動機構の設計は、ギャップフレーム及び非ギャップフレームを含むあらゆるプレス機、又はノッチングプレス機の一部ではないストレートサイドプレスにも適用可能である。
【0031】
駆動モータ16、インデックスモータ5、プレス位置決め用モータ6及びラム調整用モータ29は、好ましくはフィードバック装置を含む電動サーボモータであることが好ましい。駆動モータ16のフィードバック装置、インデックスモータ5、プレス位置決め用モータ6及びラム調整用モータ29は、電気信号を介して制御システム(図示せず)と通信することが好ましい。制御システム(図示せず)は、駆動モータ16、インデックスモータ5、プレス位置決め用モータ6及びラム調整用モータ29に電力を供給するための電源手段をさらに含む。このような制御システムは当業で周知であり、従ってここでは詳述しない。
【0032】
詳細な説明から本発明の多くの特徴及び利点が明らかであり、従って添付の特許請求の範囲は、本発明の真の思想及び範囲に含まれる本発明の全てのこのような特徴及び利点を含むように意図されている。さらに、当業者には数多くの修正及び変形が容易に思い浮かぶと思われるので、図示し説明した正確な構造及び動作に本発明を限定することは望しくなく、従って本発明の範囲に含まれる全ての好適な修正物及び同等物を用いることができる。