特許第6474172号(P6474172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474172
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】放射性汚染物質保管施設
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/34 20060101AFI20190218BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20190218BHJP
   G21F 7/00 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   G21F9/34 CZAB
   G21F3/00 G
   G21F7/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-220031(P2017-220031)
(22)【出願日】2017年11月15日
(62)【分割の表示】特願2012-220358(P2012-220358)の分割
【原出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2018-63256(P2018-63256A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2017年11月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名:東光鉄工株式会社、刊行物名:カタログ、発行年月日:平成24年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090402
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 法明
(72)【発明者】
【氏名】野村 信彰
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠司
(72)【発明者】
【氏名】安岡 裕織
(72)【発明者】
【氏名】関 勝輝
(72)【発明者】
【氏名】虻川 東雄
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−113692(JP,A)
【文献】 米国特許第04834916(US,A)
【文献】 登録実用新案第3171046(JP,U)
【文献】 特開平08−135221(JP,A)
【文献】 特開2007−032211(JP,A)
【文献】 特開2004−082667(JP,A)
【文献】 特開平05−154457(JP,A)
【文献】 特開2011−058922(JP,A)
【文献】 特開2001−246346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/34
G21F 3/00
G21F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形鋼板を連結して形成したドーム状構造物と、該ドーム状構造物を支える基礎と、該ドーム状構造物の内部に設けられた放射性汚染物質保管用の仕切り壁構造体とを備えてなり、該仕切り壁構造体が該ドーム状構造物の内部の所定領域を囲っている壁状体からなり、該仕切り壁構造体が地下に形成され、該ドーム状構造物が該仕切り壁構造体の上方を取り囲んでいることを特徴とする放射性汚染物質保管施設。
【請求項2】
前記ドーム状構造物が波形鋼板を長手方向に所定曲率で曲げ加工して形成した円弧状シートを連結して形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の放射性汚染物質保管施設。
【請求項3】
前記ドーム状構造物が放射線遮蔽塗料で被覆されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射性汚染物質保管施設。
【請求項4】
前記ドーム状構造物が長手方向に連続的に形成されたものからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放射性汚染物質保管施設。
【請求項5】
前記仕切り壁構造体が波形鋼板又はプレキャストコンクリート板を連結したものからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の放射性汚染物質保管施設。
【請求項6】
前記仕切り壁構造体が放射線遮蔽シート又は放射線遮蔽塗料で被覆されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の放射性汚染物質保管施設。
【請求項7】
前記仕切り壁構造体内の放射性汚染物質の上部が放射線遮蔽材で被覆されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の放射性汚染物質保管施設。
【請求項8】
前記仕切り壁構造体の上部が天井材で被覆されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の放射性汚染物質保管施設。
【請求項9】
前記仕切り壁構造体内の放射性汚染物質が遮水シートによって周囲から隔離されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の放射性汚染物質保管施設。
【請求項10】
前記ドーム状構造物の全部又は一部が前記基礎の上に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の放射性汚染物質保管施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所の事故等で放出された放射性の微粒子によって汚染された地域の表層土壌、瓦礫、汚泥又は焼却灰等からなる放射性汚染物質を大量に保管することができる広い密閉空間を有し、且つ放射性汚染物質から出る放射線が施設外に出ないように遮蔽し低減する能力を有する放射性汚染物質保管施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平成23年3月11日、日本の東北地方沖で発生した強い地震と大きな津波によって福島第一原子力発電所が破壊され、福島第一原子力発電所から放射性の微粒子が大量に放出され、東北地方一帯、特に福島第一原子力発電所の周辺地域が広い範囲にわたって放射性の微粒子によって汚染されてしまった。
【0003】
放射性の微粒子によって汚染されてしまった地域の自治体は、汚染された地域の表層土壌、瓦礫、汚泥、焼却灰等からなる放射性汚染物質を集め、これらを住民の居住地域から隔離することによってこの地域の住民の健康を守ろうとしている。
【0004】
このため、東北地方の各自治体、特に福島第一原子力発電所の周辺地域の自治体は放射性の微粒子で汚染された地域の表層土壌、瓦礫、汚泥又は焼却灰等からなる放射性汚染物質を大量に抱え込んでしまっており、この放射性汚染物質の量は今後も増加する可能性が高い。
【0005】
この大量の放射性汚染物質からは自然界で通常検出される以上の高い放射線が出ているので、住民の健康に悪影響が出ないように、住民から隔離して保管しておかなければならない。
【0006】
そして、この大量の放射性汚染物質は、そのまま堆積しておくと、風で粉塵になって周辺地域に飛散したり、雨水に伴って地下にしみ込んで、地下水を汚染する恐れがあるので、
密閉された大型の保管施設を建設して、この大量の放射性汚染物質を早急に外界から隔離して保管しなければならない。
【0007】
そこで、本件特許出願人のうちの1社であるJFE建材株式会社は、放射性汚染物質保管施設を特願2011−286591号特許出願において提案している。
【0008】
この放射性汚染物質保管施設は、図6に示すように、ドーム状構造物100と、ドーム状構造物100の下部を支える基礎102とからなり、ドーム状構造物100は、外殻100aと、外殻100aの内側に形成された内殻100bと、外殻100aと内殻100bの間の隙間に介挿された放射線遮蔽材104とからなり、外殻100aと内殻100bは波形鋼板(デッキプレート、コルゲートシート、折板、ライナープレート用シート、等)を長手方向に所定曲率で曲げ加工して形成した構造材を連結して形成されているものである。
【0009】
この放射性汚染物質保管施設は、図7に示すように、外殻100aの内側に所定の隙間をあけて内殻100bを形成し、外殻100aと内殻100bの間の隙間に放射線遮蔽材104を介挿させるという、構築するのにやや手間のかかる構造になっていて、構築するのにコストがかかるので、より構築し易い構造の放射性汚染物質保管施設が望まれていた。
【0010】
また、この放射性汚染物質保管施設は、放射線を遮蔽する能力が放射線遮蔽材104によって決まってしまうので、保管される放射性汚染物質106の汚染レベルが決まっていない場合は最も汚染レベルの高い放射性汚染物質106の保管を想定して放射線遮蔽材104の厚さ等を決めなければならず、汚染レベルの低い放射性汚染物質106を保管した場合は放射線遮蔽材104に無駄なコストをかけてしまうという問題もあった。
【0011】
また、この放射性汚染物質保管施設は、ドーム状構造物100に接近して保管されている放射性汚染物質106の荷重による圧力や、放射性汚染物質106を収納したフレキシブルコンテナバッグ(フレコンバッグ)の荷崩れ等によりドーム状構造物100、特にその下部が部分的に変形したり破損するおそれがある。ドーム状構造物100が変形したり破損しないようにドーム状構造物100全体を厚い波形鋼板で形成すると放射性汚染物質保管施設の建設コストが高くなるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公平5−51120号公報
【特許文献2】特公平3−27080号公報
【特許文献3】特許第3918648号公報
【特許文献4】特許第4356252号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】環境省「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による環境汚染の対処において必要な中間貯蔵施設等の基本的考え方について」平成23年10月29日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、例えば東北地方の各自治体が抱え込んでしまった大量の放射性汚染物質を安全に保管するための大型の保管施設を迅速且つ安価に提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、放射性物質によって汚染された放射性汚染物質を仕切り壁構造体の内側に保管し、この仕切り壁構造体をドーム状構造物で被覆することにより、ドーム状構造物の構築にコストをかけないで、大量の放射性汚染物質を安全且つ低コストで保管できるようにした点を最も主要な特徴とする。
【0016】
すなわち、本発明に係る放射性汚染物質保管施設は、放射性汚染物質を保管する所定領域を板状の壁体で囲って形成した放射性汚染物質保管用の仕切り壁構造体と、該仕切り壁構造体を被覆するドーム状構造物と、該ドーム状構造物を支える基礎とを備えたものからなる。
【0017】
ここで、前記仕切り壁構造体を形成する壁体としては、例えば、波形鋼板又はプレキャストコンクリート板を使用することができるが、強固な壁体を形成することができる構造材であればこれら以外のものを使用してもよい。
【0018】
また、前記仕切り壁構造体は放射線遮蔽シートを被覆して、仕切り壁構造体から漏洩する放射線を更に遮蔽するようにしてもよい。放射線遮蔽シートとしては、鉛、タングステン等の放射線遮蔽性を有する材料からなるシート状の素材を挙げることができる。
【0019】
また、前記仕切り壁構造体は放射線遮蔽塗料を塗布して、仕切り壁構造体から漏洩する放射線を更に遮蔽するようにしてもよい。放射線遮蔽塗料としては、ガドリニウム等を含む塗料を挙げることができる。
【0020】
また、前記仕切り壁構造体を形成する壁体がプレキャストコンクリート板の場合には、プレキャストコンクリート板に放射線を遮蔽するバリウム、ホウ素等を含有させて、仕切り壁構造体から漏洩する放射線を更に遮蔽するようにしてもよい。
【0021】
また、ドーム状構造物は波形鋼板を長手方向に所定曲率で曲げ加工して形成した構造材を連結することによって形成することができる。ドーム状構築物の形状は任意であり、かまぼこ形をしていてもよいし、略半球形をしていてもよい。ドーム状構造物の天井はトラス構造物によって補強してもよいし、ドーム状構造物の全部又は一部を前記基礎の上に移動可能に設けてもよい。
【0022】
また、ドーム状構築物は放射線遮蔽塗料を塗布して、ドーム状構築物から漏洩する放射線を更に遮蔽するようにしてもよい。放射線遮蔽塗料としては、ガドリニウム等を含む塗料を挙げることができる。
【0023】
また、仕切り壁構造体とドーム状構造物との間に隙間を設け、この隙間に健全土壌、砂又はコンクリートを充填したり、この隙間にプレキャストコンクリート板又は放射線遮蔽シートを設置して、仕切り壁構造体から周囲へ漏洩する放射線を更に遮蔽するようにしてもよい。
【0024】
また、放射性汚染物質はフレコンバッグ等に詰めた状態で積み上げて保管してもよいし、仕切り壁構造体が囲んでいる地面に遮水シートを敷き、遮水シートの上に放射性汚染物質をバラ積みにして保管してもよいし、これらを混在させて保管しても良い。
【0025】
また、仕切り壁構造体の内側に収容された放射性汚染物質の上には健全土壌、砂、コンクリート、プレキャストコンクリート板、放射線遮蔽シートを被覆して、保管されている放射性汚染物質から上方へ漏洩する放射線を遮蔽するようにしてもよい。
【0026】
また、放射性汚染物質の飛散を防止するために、仕切り壁構造体の上部を天井材で覆って仕切り壁構造体の内部を密閉してもよい。天井材としては波形鋼板、プレキャストコンクリート板を使用することができる。天井材が長い場合は梁によって途中を支えてもよい。
【0027】
ドーム状構築物の内部の空間を広くするために、前記ドーム状構築物が設置されている土地を掘削して半地下式にしても良いし、地下式にしてもよい。
【0028】
また、前記仕切り壁構造体及び天井材を遮水シートで被覆し、前記仕切り壁構造体で囲まれた地面を遮水シートで被覆することによって、貯蔵されている放射性汚染物質中の放射性物質が雨水、湧水又は地下水によって漏出して、施設の地下又は施設の周囲が放射性物質によって新たに汚染されないようにしてもよい。
【0029】
また、放射線汚染物質中の放射性物質による地下水の汚染を防止するため、前記ドーム状構築物が設置されている土地を遮水層によって遮水してもよい。遮水層は、水の透過を防止する層であり、合成ゴム系、合成樹脂系、アスファルト系、ベントナイト系、積層タイプ複合系等の遮水シートや鋼矢板、粘性土、コンクリート、水密性アスファルトコンクリート等の材料で構成することができる。
【0030】
なお、上述した放射性汚染物質保管施設は、まず、ドーム状構造物を構築し、その後、ドーム状構造物の内部に仕切り壁構造体を構築し、該仕切り壁構造体の内部に放射性汚染物質を収容してもよいが、先に仕切り壁構造体を構築し、該仕切り壁構造体の内部に放射性汚染物質を収容し、後で仕切り壁構造体の外側にドーム状構造物を構築してもよい。
【発明の効果】
【0031】
この発明は、放射性汚染物質を保管する仕切り壁構造体がドーム状構造物から間隔をおいて構築されていて、ドーム状構造物やその基礎に放射性汚染物質の荷重による圧力がかかる心配がないので、ドーム状構造物やその基礎は放射性汚染物質による荷重を考慮して構造設計をする必要がなく、従って、放射性汚染物質保管施設を低コストで構築することができるという効果がある。
【0032】
また、この発明は、仕切り壁構造体の厚さを変更したり、ドーム状構造物と仕切り壁構造体との間に放射線遮蔽材を入れることで保管される放射性汚染物質の放射線レベルの変動に対応することができるので、放射線の遮蔽のためにドーム状構造物の構築にコストをかける必要がなく、従って、放射性汚染物質保管施設を低コストで構築することができるという効果がある。
【0033】
また、この発明は、放射性汚染物質を保管する仕切り壁構造体がドーム状構造物から離れて構築されているので、不定形の放射性瓦礫や放射性の汚泥焼却灰、除染土等をそのままバラ積み状態で貯蔵してもドーム状構造物やその基礎に放射性汚染物質の荷重による圧力がかかる心配がなく、従って、不定形の放射性瓦礫や放射性の汚泥焼却灰、除染土等をそのままバラ積み状態で貯蔵することができるという効果がある。
【0034】
また、仕切り壁構造体の内側に放射性汚染物質がフレコンバッグなどに詰められて積み上げられている場合は、フレコンバッグが仕切り壁構造体によって支えられているので、積上げられたフレコンバッグの荷崩れを防止することができるという効果がある。
【0035】
また、この発明は、仕切り壁構造体が波形鋼板又はプレキャストコンクリート板を連結して形成されている場合、仕切り壁構造体を容易に組み立てたり解体することができ、また、仕切り壁構造体の形状・容量・数量を適宜選択することができるという効果がある。
【0036】
また、この発明は、仕切り壁構造体の上部を天井材(波形鋼板、プレキャストコンクリート板)で覆ったり、貯蔵物を放射線遮蔽シートで覆った場合は、貯蔵物のドーム状構造物内部での飛散を抑制し、構造体上部からの放射線の回折を抑制することができるという効果がある。
【0037】
また、この発明は、仕切り壁構造体内部の貯蔵物を遮水シートで隔離した場合は、雨水や湧水・地下水が貯蔵物に触れて放射性物質が水分とともに土壌や地下水に流れ出すなど、周辺が新たに放射性物質で汚染されることを防ぐことができるという効果がある。
【0038】
また、この発明は、仕切り壁構造体の内部に放射性汚染物質を収容し、その後、仕切り壁構造体の外側にドーム状構造物を構築する場合は、仕切り壁構造体の内部に放射性汚染物質を収容する際に、仕切り壁構造体の周囲が開放されているので、ドーム状構造物内のクレーンや、クレーン車(ユニック車)等の重機を使用して仕切り壁構造体の上方から仕切り壁構造体の内部に大量の放射性汚染物質を容易に収容することができるという効果がある。
【0039】
また、この発明は、仕切り壁構造体の内部に放射性汚染物質を収容し、その後、仕切り壁構造体の外側にドーム状構造物を構築する場合は、仕切り壁構造体の周囲が開放されているので、ドーム状構造物内のクレーンや、クレーン車(ユニック車)等の重機を使用して放射性汚染物質の上に放射線遮蔽材を容易に被覆することができるという効果がある。
【0040】
また、この発明は、ドーム状構造物が長手方向に連続的に形成されている場合は、該ドーム状構造物を長手方向に容易に拡張・伸延することができるという効果がある。
【0041】
また、この発明は、環境省の除染関係ガイドラインの第4章「除去土壌の保管に関わるガイドライン」に示される現場保管・仮置場の例と比べ美観に優れ、また放射性瓦礫等の保管場・仮置場として視認性に優れている。
【0042】
また、この発明は、例えば同ガイドラインに示されるような現場保管・仮置場に対し、これを覆うようにドーム状構造物を構築した場合は、一層の放射線量の低減、飛散抑止等の効果が得られとともに、盛土やシートの飛散、雨水の浸入の抑制などの効果を見込める。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は本発明に係る放射線汚染物質保管施設の一例を示す説明図である。
図2図2図1の放射線汚染物質保管施設の使用例を示す説明図である。
図3図3は本発明に係る放射線汚染物質保管施設の他の一例を示す説明図である。
図4図4は本発明に係る放射線汚染物質保管施設の施工方法の一例を示す工程図である。
図5図5は本発明に係る放射線汚染物質保管施設の施工方法の他の一例を示す工程図である。
図6図6は従来の放射線汚染物質保管施設の例を示す説明図である。
図7図7図6のA部の断面構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
原子力発電所の事故等で放出された放射性の微粒子によって汚染された地域の表層土壌、瓦礫、汚泥又は焼却灰等からなる放射性汚染物質を安全に且つ大量に保管する施設を迅速且つ安価に提供するという目的を、ドーム状構造物の内部に放射線汚染物質保管用の仕切り壁構造体を形成するという簡単な構成により、放射線遮蔽能力を損なうことなく実現した。
【実施例1】
【0045】
図1は本発明に係る放射線汚染物質保管施設の一例を示す説明図、図2図1の放射線汚染物質保管施設の使用例を示す説明図である。これらの図において、10は放射性汚染物質保管用の仕切り壁構造体であり、仕切り壁構造体10はドーム状構造物12によって全体が被覆され、ドーム状構造物12は基礎14によって支えられている。
【0046】
仕切り壁構造体10は放射性汚染物質16を保管する所定領域を板状の壁体10aで囲って形成されている。仕切り壁構造体10を形成する壁体10aとしては、例えば、波形鋼板又はプレキャストコンクリート板を使用することができるが、強固な壁体を形成することができる構造材であればこれら以外のものを使用してもよい。
【0047】
仕切り壁構造体10には放射線遮蔽シートを被覆して、仕切り壁構造体から漏洩する放射線を更に遮蔽するようにしてもよい。放射線遮蔽シートとしては、鉛、タングステン等の放射線遮蔽性を有する材料からなるシート状の素材を挙げることができる。
【0048】
仕切り壁構造体10には放射線遮蔽塗料を塗布して、仕切り壁構造体10から外部に漏洩する放射線を更に遮蔽するようにしてもよい。放射線遮蔽塗料としては、ガドリニウム等を含む塗料を挙げることができる。
【0049】
仕切り壁構造体10を形成する壁体10aがプレキャストコンクリート板の場合には、プレキャストコンクリート板に放射線を遮蔽するバリウム、ホウ素等を含有させて、仕切り壁構造体から漏洩する放射線を更に遮蔽するようにしてもよい。
【0050】
ドーム状構造物12は、比較的肉厚のある(例えば2.3mm〜6mm程度)の波形鋼板を長手方向に所定曲率で曲げ加工して形成したプランクシートを連結することによって形成されている。ドーム状構築物12の形状は任意であり、かまぼこ形をしていてもよいし、略半球形をしていてもよい。ドーム状構造物12がかまぼこ形をしている場合は、ドーム状構造物12を、必要に応じ、長手方向に容易に拡張・伸延することができる。
【0051】
ドーム状構造物12の天井はトラス構造物によって補強してもよい。ドーム状構造物12は基礎14の上に固定されている状態が基本であるが、ドーム状構造物12の全部又は一部を基礎14の上に移動可能に設けてもよい。
【0052】
ドーム状構築物12は放射線遮蔽塗料を塗布して、ドーム状構築物12から外部に漏洩する放射線を更に遮蔽するようにしてもよい。放射線遮蔽塗料としては、ガドリニウム等を含む塗料を挙げることができる。
【0053】
仕切り壁構造体10の内部に貯蔵されている放射性汚染物質16の放射線強度が高く、仕切り壁構造体10からかなりの放射線が漏洩している場合は、図2に示すように、仕切り壁構造体10とドーム状構造物12との間の隙間18に健全土壌、砂又はコンクリート等からなる放射線遮蔽材20を充填したり、この隙間18にプレキャストコンクリート板又は放射線遮蔽シートを設置して、仕切り壁構造体10から周囲へ漏洩する放射線をドーム状構造物12の手前で更に遮蔽するようにしてもよい。
【0054】
放射性汚染物質16はフレコンバッグ等に詰めた状態で積み上げて保管してもよいし、仕切り壁構造体10が囲んでいる地面に遮水シートを敷き、遮水シートの上に放射性汚染物質6をバラ積みにして保管してもよいし、これらを混在させて保管しても良い。
【0055】
仕切り壁構造体10の内側に収容された放射性汚染物質16の上には健全土壌、砂、コンクリート、プレキャストコンクリート板、放射線遮蔽シート等の放射線遮蔽材22を被覆して、保管されている放射性汚染物質16から上方へ漏洩する放射線を遮蔽するようにしてもよい。
【0056】
また、放射性汚染物質16の飛散を防止するために、仕切り壁構造体10の上部を天井材24で覆って仕切り壁構造体10の内部を密閉してもよい。天井材24としては波形鋼板、プレキャストコンクリート板を使用することができる。天井材24が長い場合は梁によって途中を支えてもよい。
【0057】
図3は本発明に係る放射線汚染物質保管施設の他の一例を示す説明図であり、この図に示すように、ドーム状構築物10の内部の空間を広くするために、ドーム状構築物10が設置されている土地を掘削して仕切り壁構造体10を半地下式に設けてもよいし、地下式に設けてもよい。
【0058】
また、仕切り壁構造体10及び天井材24を遮水シートで被覆し、仕切り壁構造体10で囲まれた地面を遮水シートで被覆することによって、貯蔵されている放射性汚染物質16中の放射性物質が雨水、湧水又は地下水によって漏出し、施設の地下又は施設の周囲が放射性物質によって新たに汚染されないようにしてもよい。
【0059】
また、放射性汚染物質16中の放射性物質による地下水の汚染を防止するため、ドーム状構築物10が設置されている土地を遮水層によって遮水してもよい。遮水層は、水の透過を防止する層であり、合成ゴム系、合成樹脂系、アスファルト系、ベントナイト系、積層タイプ複合系等の遮水シートや鋼矢板、粘性土、コンクリート、水密性アスファルトコンクリート等の材料で構成することができる。
【0060】
次に、上述した放射性汚染物質保管施設の構築方法について図4図5を参照しながら説明する。
【0061】
上述した放射性汚染物質保管施設は、基本的には、図4に示すように、基礎14を設置し、基礎14の上にドーム状構造物12を構築し、ドーム状構造物12の内部に仕切り壁構造体10を構築し、仕切り壁構造体10の中に放射性汚染物質16を貯蔵し、仕切り壁構造体の上に放射線遮蔽材22を被覆し、必要があれば隙間18に放射線遮蔽材20を充填するのが一般的である。
【0062】
しかし、図5に示すように、先に仕切り壁構造体10を構築し、仕切り壁構造体10の内部に放射性汚染物質16を収容し、仕切り壁構造体の上に放射線遮蔽材22を被覆し、その後、仕切り壁構造体10の外側にドーム状構造物12を構築するようにしてもよい。
【0063】
仕切り壁構造体10の内部に放射性汚染物質16を収容し、その後、仕切り壁構造体10の外側にドーム状構造物12を構築する場合は、仕切り壁構造体10の内部に放射性汚染物質16を収容する際に、仕切り壁構造体10の周囲が開放されているので、クレーン等の重機を使用して仕切り壁構造体10の上方から仕切り壁構造体10の内部に放射性汚染物質16を容易に収容することができるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0064】
なお、本施設は放射性汚染物質を保管する施設ではあるが、バラ積みにした場合にその荷重で下部が横圧力を生じるような保管物、または積み上げた場合に崩れやすい保管物を保管する用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0065】
10 仕切り壁構造体
10a 壁体
12 ドーム状構造物
14 基礎
16 放射性汚染物質
18 隙間
20 放射線遮蔽材
22 放射線遮蔽材
24 天井材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7