特許第6474188号(P6474188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474188スイッチ故障判定装置、蓄電装置およびスイッチ故障判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474188
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】スイッチ故障判定装置、蓄電装置およびスイッチ故障判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20190218BHJP
   G01R 31/02 20060101ALI20190218BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   G01R31/00
   G01R31/02
   H02H7/00 L
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-69478(P2013-69478)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-190960(P2014-190960A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年1月27日
【審判番号】不服2017-16814(P2017-16814/J1)
【審判請求日】2017年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨士松 将克
(72)【発明者】
【氏名】井上 朋重
【合議体】
【審判長】 中塚 直樹
【審判官】 小林 紀史
【審判官】 須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−281704(JP,A)
【文献】 特開平3−17923(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0212745(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0115604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
G01R 31/02
H02H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子と負荷との間の回路において互いに並列接続される第1スイッチおよび第2スイッチと、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチ同士の2つの共通接続点のうち一方の共通接続点と、前記第1スイッチとの間に接続され、インダクタンス成分を有するインダクタンス素子と、
前記2つの共通接続点のうち前記一方の共通接続点とは異なる他方の共通接続点に周波数信号を印加する周波数印加部と、
前記周波数印加部を含んだ閉ループを構成して前記第1スイッチと前記インダクタンス素子との接続点における前記周波数信号の電圧である第1電圧に応じた電圧検出信号を出力する検出電圧出力部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第2スイッチがクローズしている状態で前記第1スイッチに前記周波数信号を印加させたときに前記検出電圧出力部から出力される前記電圧検出信号に基づき、前記第1スイッチの状態を判定する状態判定処理を実行する構成を有するスイッチ故障判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチ故障判定装置であって
前記制御部は、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチがクローズし、かつ、前記他方の共通接続点に前記周波数信号が印加されているときに、前記第1スイッチにオープン指令信号を与えるオープン指令処理と、
前記第1スイッチに前記オープン指令信号を与えたときに前記検出電圧出力部から出力される前記電圧検出信号に基づき、前記第1電圧がショートモード故障判定範囲内である場合にショートモード故障有りと判定するショートモード故障判定処理と、
を実行する構成を有するスイッチ故障判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスイッチ故障判定装置であって、
前記検出信号を第1検出信号とし、前記ショートモード故障判定範囲を第1ショートモード故障判定範囲とし、
前記検出電圧出力部である第1検出電圧出力部に加えて、
前記周波数印加部を含んだ閉ループを構成して前記第2スイッチと前記一方の共通接続点との接続点における前記周波数信号の電圧である第2電圧に応じた第2電圧検出信号を出力する第2検出電圧出力部と、を備え、
前記制御部は、
前記オープン指令処理である第1オープン指令処理、および、前記ショートモード故障判定処理である第1ショートモード故障判定処理に加えて、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチがクローズし、かつ、前記他方の共通接続点に前記周波数信号が印加されているときに、前記第2スイッチにオープン指令信号を与える第2オープン指令処理と、
前記第2スイッチに前記オープン指令信号を与えたときに前記第2検出電圧出力部から出力される前記第2電圧検出信号に基づき、前記第2電圧が第2ショートモード故障判定範囲内である場合にショートモード故障有りと判定する第2ショートモード故障判定処理と、
を実行する構成を有するスイッチ故障判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチ故障判定装置であって、
前記インダクタンス素子である第1インダクタンス素子に加えて、
前記一方の共通接続点と前記第2スイッチとの間に接続され、インダクタンス成分を有する第2インダクタンス素子を備え、
前記第2検出電圧出力部は、前記第2スイッチと前記第2インダクタンス素子との間の電圧を前記第2電圧とし、当該第2電圧に応じた前記第2電圧検出信号を出力する構成である、スイッチ故障判定装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載のスイッチ故障判定装置であって、
前記制御部は、
前記他方の共通接続点に前記周波数信号が印加されているときに、前記第1スイッチにクローズ指令信号を与えるクローズ指令処理と、
前記第1スイッチに前記クローズ指令信号を与えたときに前記検出電圧出力部から出力される前記電圧検出信号に基づき、前記第1電圧がオープンモード故障判定範囲内である場合にオープンモード故障有りと判定するオープンモード故障判定処理と、
を実行する構成を有するスイッチ故障判定装置。
【請求項6】
請求項5に記載のスイッチ故障判定装置であって、
前記オープンモード故障判定範囲を第1オープンモード故障判定範囲とし、
前記制御部は、
前記クローズ指令処理である第1クローズ指令処理、および、前記オープンモード故障判定処理である第1オープンモード故障判定処理に加えて、
前記他方の共通接続点に前記周波数信号が印加されているときに、前記第2スイッチにクローズ指令信号を与える第2クローズ指令処理と、
前記第2スイッチに前記クローズ指令信号を与えたときに前記第2検出電圧出力部から出力される前記第2電圧検出信号に基づき、前記第2電圧が第2オープンモード故障判定範囲内である場合にオープンモード故障有りと判定する第2オープンモード故障判定処理と、
を実行する構成を有するスイッチ故障判定装置。
【請求項7】
請求項2に記載のスイッチ故障判定装置であって、
前記制御部は、
前記ショートモード故障判定処理を開始したときに前記周波数信号を印加させ、前記ショートモード故障判定処理を終了したときに前記周波数信号の印加を停止させる構成を有するスイッチ故障判定装置。
【請求項8】
蓄電素子と負荷との間の回路において互いに並列接続される第1スイッチおよび第2スイッチと、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチ同士の2つの共通接続点のうち一方の共通接続点と、前記第1スイッチとの間に接続され、インダクタンス成分を有するインダクタンス素子と、
前記2つの共通接続点のうち前記一方の共通接続点とは異なる他方の共通接続点に周波数信号を印加する周波数印加部と、
前記周波数印加部を含んだ閉ループを構成して前記第1スイッチと前記インダクタンス素子との接続点における前記周波数信号の電圧である第1電圧に応じた電圧検出信号を出力する検出電圧出力部とを備える電池保護装置におけるスイッチ故障判定方法であって、前記第2スイッチがクローズしている状態で前記第1スイッチに前記周波数信号を印加させたときに前記検出電圧出力部から出力される前記電圧検出信号に基づき、前記第1スイッチの状態を判定する状態判定処理を含む、スイッチ故障判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蓄電素子と電気機器との間の電流経路を遮断するためのスイッチの故障判定を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直流電源と負荷との間の電流経路を遮断するためのリレーを備える電源制御装置がある(下記特許文献1参照)。ここで、例えばリレーの接点同士が溶着すると、リレーにオープン指令信号を与えてもオープン状態にならない、いわゆるショートモード故障となり、直流電源と負荷との間の電流経路を遮断することができなくなる。また、例えばリレーの接点同士が酸化すると、リレーにクローズ指令信号を与えてもクローズ状態にならない、いわゆるオープンモード故障となり、直流電源と負荷との間の電流経路を形成することができなくなる。そこで、この電源制御装置は、リレーがショートモード故障しているか否かの故障判定を行う機能を有する。
【0003】
具体的には、オープン指令信号を与えたときのリレーの端子間電圧は、当該リレーがショートモード故障している場合とショートモード故障していない場合とで大きく異なる。そこで、電源制御装置は、オープン指令信号を与えているときのリレーの端子間電圧値を検出し、その検出値が、予め測定された基準値よりも大きい場合に、ショートモード故障していると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−185812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電源制御装置では、直流電源から負荷への電力供給中に、故障判定のためにリレーにオープン指令信号を与えると、当該リレーは、ショートモード故障していなければオープン状態になり、負荷への電力供給が継続できなくなってしまう。そこで、直流電源と負荷との間に例えば2つのリレーを並列接続し、2つのリレーそれぞれについて、互いに異なる時期に個別に故障判定を行う構成が考えられる。この構成であれば、故障判定により一方のリレーがオープン状態になっても、他方のリレーをクローズ状態にしておくことで、負荷への電力供給を継続することができる。
【0006】
しかし、この2つのリレーが並列接続された構成では、一方のリレーについて故障判定を行う際、当該一方のリレーがオープン状態になるか否かにかかわらず、直流電源と負荷との間は他方のリレーを介して電流経路が確保されている。このため、オープン指令信号を与えたときの一方のリレーの端子間電圧は、当該一方のリレーがショートモード故障している場合とショートモード故障していない場合とで異なるものの、その差は微少になる。従って、2つのリレーが並列接続された構成では、上記従来の構成に比べて、リレーの故障の有無を精度よく判定することができないという問題がある。
【0007】
本明細書では、リレー等のスイッチの故障の有無の判定精度が低下することを抑制することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書によって開示されるスイッチ故障判定装置は、互いに並列接続される第1スイッチおよび第2スイッチと、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチ同士の2つの共通接続点のうち一方の共通接続点と、前記第1スイッチとの間に接続され、インダクタンス成分を有するインダクタンス素子と、前記第1スイッチと前記インダクタンス素子との間の第1電圧に応じた検出信号を出力する検出電圧出力部と、前記2つの共通接続点のうち前記一方の共通接続点とは異なる他方の共通接続点に周波数信号を印加する周波数印加部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1スイッチに前記周波数信号を印加させたときに前記検出電圧出力部から出力される前記電圧検出信号に基づき、前記第1スイッチの状態を判定する状態判定処理を実行する構成を有する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書によって開示される発明によれば、スイッチの故障の有無の判定精度が低下することを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態の電池パックの電気的構成を示すブロック図
図2】スイッチ故障判定処理を示すフローチャート
図3】オープンモード故障判定処理を示すフローチャート
図4】オープンモード故障時のリレーの状態変化を示す図
図5】ショートモード故障判定処理を示すフローチャート
図6】ショートモード故障時のリレーの状態変化を示す図
図7】ショートモード故障時のリレーの状態変化を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態の概要)
本明細書によって開示されるスイッチ故障判定装置は、互いに並列接続される第1スイッチおよび第2スイッチと、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチ同士の2つの共通接続点のうち一方の共通接続点と、前記第1スイッチとの間に接続され、インダクタンス成分を有するインダクタンス素子と、前記第1スイッチと前記インダクタンス素子との間の第1電圧に応じた第1電圧検出信号を出力する検出電圧出力部と、前記2つの共通接続点のうち前記一方の共通接続点とは異なる他方の共通接続点に周波数信号を印加する周波数印加部と、制御部と、を備え、前記第1スイッチに前記周波数信号を印加させたときに前記検出電圧出力部から出力される前記電圧検出信号に基づき、前記第1スイッチの状態を判定する状態判定処理を実行する構成を有する。
【0012】
このスイッチ故障判定装置は、第1スイッチおよび第2スイッチが互いに並列接続され、更に、第1スイッチおよび第2スイッチ同士の一方の共通接続点と第1スイッチとの間にインダクタンス素子が接続された構成である。そして、第1スイッチに周波数信号を印加させたときの電圧検出信号に基づき、第1スイッチの状態を判定する。
【0013】
ここで、第1スイッチがショートモード故障しているときの端子間電圧と、ショートモード故障していないときの端子間電圧との差は、周波数信号が印加されたインダクタンス素子での電圧降下分だけ大きくなる。従って、当該インダクタンス素子を備えない構成に比べて、ショートモード故障の有無に応じた端子間電圧の変化を大きくすることができるため、スイッチの両端の電流経路が遮断されることを回避しつつ、スイッチの故障の有無の判定精度が低下することを抑制することが可能である。
【0014】
上記スイッチ故障判定装置では、前記制御部前記第1スイッチおよび前記第2スイッチがクローズし、かつ、前記他方の共通接続点に前記周波数信号が印加されているときに、前記第1スイッチにオープン指令信号を与えるオープン指令処理と、前記第1スイッチに前記オープン指令信号を与えたときに前記電圧検出部検出電圧出力部から出力される前記電圧検出信号に基づき、前記第1電圧がショートモード故障判定範囲内である場合にショートモード故障有りと判定するショートモード故障判定処理と、を実行する構成でもよい。
【0015】
このスイッチ故障判定装置は、第1スイッチおよび第2スイッチがクローズし、かつ、他方の共通接続点に周波数信号が印加されているときに、第1スイッチにオープン指令信号を与えたときに検出電圧出力部から出力される電圧検出信号に基づき、第1電圧がショートモード故障判定範囲内である場合にショートモード故障有りと判定する。従って、第1スイッチおよび第2スイッチがクローズしていない構成に比べて、スイッチの両端の電流経路が遮断されることを回避しつつ、スイッチの故障の有無の判定精度が低下することを抑制することができる。
【0016】
上記スイッチ故障判定装置では、前記検出信号を第1検出信号とし、前記ショートモード故障判定範囲を第1ショートモード故障判定範囲とし、前記検出電圧出力部である第1検出電圧出力部に加えて、前記第2スイッチと前記一方の共通接続点との間の第2電圧に応じた第2電圧検出信号を出力する第2検出電圧出力部と、を備え、前記制御部は、前記オープン指令処理である第1オープン指令処理、および、前記ショートモード故障判定処理である第1ショートモード故障判定処理に加えて、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチがクローズし、かつ、前記他方の共通接続点に前記周波数信号が印加されているときに、前記第2スイッチにオープン指令信号を与える第2オープン指令処理と、前記第2スイッチに前記オープン指令信号を与えたときに前記第2検出電圧出力部から出力される前記第2電圧検出信号に基づき、前記第2電圧が第2ショートモード故障判定範囲内である場合にショートモード故障有りと判定する第2ショートモード故障判定処理と、を実行する構成を有する構成でもよい。
【0017】
このスイッチ故障判定装置は、スイッチの両端の電流経路が遮断されることを回避しつつ、第1スイッチだけでなく第2スイッチについてもショートモード故障の有無の判定精度が低下することを抑制することが可能である。
【0018】
上記スイッチ故障判定装置では、前記インダクタンス素子である第1インダクタンス素子に加えて、前記一方の共通接続点と前記第2スイッチとの間に接続され、インダクタンス成分を有する第2インダクタンス素子を備え、前記第2検出電圧出力部は、前記第2スイッチと前記第2インダクタンス素子との間の電圧を前記第2電圧とし、当該第2電圧に応じた前記第2電圧検出信号を出力する構成でもよい。
【0019】
このスイッチ故障判定装置は、第1インダクタンス素子に加えて第2インダクタンス素子を備える。このため、第1インダクタンス素子のみ備える構成に比べて、ショートモード故障の有無に応じた端子間電圧の変化が大きくなり、ショートモード故障の精度を向上させることができる。
【0020】
上記スイッチ故障判定装置では、前記制御部は、前記他方の共通接続点に前記周波数信号が印加されているときに、前記第1スイッチにクローズ指令信号を与えるクローズ指令処理と、前記第1スイッチに前記クローズ指令信号を与えたときに前記検出電圧出力部から出力される前記検出信号に基づき、前記第1電圧がオープンモード故障判定範囲内である場合にオープンモード故障有りと判定するオープンモード故障判定処理と、を実行する構成でもよい。
【0021】
このスイッチ故障判定装置は、第1スイッチがオープンモード故障しているときの第1電圧と、オープンモード故障していないときの第1電圧との差は、周波数信号が印加されたインダクタンス素子での電圧降下分だけ大きくなる。従って、インダクタンス素子を備えない構成に比べて、ショートモード故障の有無に応じた第1電圧の変化を大きくすることができるため、電気機器と蓄電素子との間の電流経路が遮断されることを回避しつつ、スイッチの故障の有無の判定精度が低下することを抑制することが可能である。
【0022】
上記スイッチ故障判定装置では、前記オープンモード故障判定範囲を第1オープンモード故障判定範囲とし、前記制御部は、前記クローズ指令処理である第1クローズ指令処理、および、前記オープンモード故障判定処理である第1オープンモード故障判定処理に加えて、前記他方の共通接続点に前記周波数信号が印加されているときに、前記第2スイッチにクローズ指令信号を与える第2クローズ指令処理と、前記第2スイッチに前記クローズ指令信号を与えたときに前記第2検出電圧出力部から出力される前記第2電圧検出信号に基づき、前記第2電圧が第2オープンモード故障判定範囲内である場合にオープンモード故障有りと判定する第2オープンモード故障判定処理と、を実行する構成でもよい。
【0023】
このスイッチ故障判定装置は、スイッチの両端の電流経路が遮断されることを回避しつつ、第1スイッチだけでなく第2スイッチについてもオープンモード故障の有無の判定精度が低下することを抑制することが可能である。
【0024】
上記スイッチ故障判定装置では、前記制御部は、前記ショートモード故障判定処理を開始したときに前記周波数信号を印加させ、前記ショートモード故障判定処理を終了したときに前記周波数信号の印加を停止させる構成でもよい。
【0025】
このスイッチ故障判定装置は、このスイッチ故障判定装置は、ショートモード故障判定していないとき、スイッチ故障判定装置からの余計なノイズの発生を抑制することができる。
【0026】
なお、本明細書によって開示される発明は、スイッチ故障判定装置、スイッチ故障判定方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【0027】
<一実施形態>
(電池パックの電気的構成)
一実施形態を図1図7を参照しつつ説明する。電池パック1は、二次電池2、および、電池保護装置3を備える。なお、電池パック1は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車に搭載され、車内の各種機器に電力を供給する。電池パック1は、電池モジュールでもよい。二次電池2はキャパシタなどでもよく、一次電池であってもよい。また、電池保護装置3はスイッチ故障判定装置の一例である。
【0028】
図1に示すように、二次電池2は、例えばリチウムイオン電池であり、4つの電池セル2Aが直列接続された組電池である。なお、二次電池2は、1つの電池セル2Aのみを有する構成や、複数の電池セル2Aが直列接続された構成、具体的には、2つ、3つ、或いは5つ以上の電池セル2Aが直列接続された構成でもよい。
【0029】
電池保護装置3は、接続端子T1〜T4、2個のリレー31、コイルL、抵抗RA、RB、および電池監視ユニット33を備える。一対の接続端子T1、T2の間には二次電池2が接続され、一対の接続端子T3、T4の間には、荷6(例えばヘッドライト)が接続されている。なお、以下では、負荷6を電気機器ということがある。
【0030】
2個のリレー31は、接続端子T1と接続端子T3の間で互いに並列接続されている。2個のリレー31の共通接続点をD1、D2と呼ぶ。各リレー31は、例えば有接点リレー(機械式スイッチ)であり、後述するオープン指令信号を受けると、電磁作用により機械的に接点をオープン(開・オフ)状態にし、後述するクローズ指令信号を受けると、電磁作用により機械的に接点をクローズ(閉・オン)状態にする。
【0031】
2個のリレー31の少なくとも一方がクローズ状態となると、接続端子T1と接続端子T3の間で電流経路が形成される。また、2個のリレー31は、いずれも、クローズ状態の時の接点抵抗が略同一である方が好ましい。もし当該接点抵抗が異なると、2個のリレー31がクローズ状態となって電流経路が形成された場合、当該接点抵抗の低い方のリレー31に電流が集中してしまうおそれがある。そして、電流が集中した方のリレー31が故障したり、当該リレー31の寿命が短くなったりする可能性があるためである。なお、2個のリレー31は、第1スイッチ、第2スイッチの一例である。
【0032】
コイルLは、第1コイルL1と第2コイルL2とがある。第1コイルL1は、共通接続点D2と一方のリレー31とに接続されている。第1コイルL1に接続されたリレー31と第1コイルL1とを繋ぐ電線上に接続点P1があり、抵抗RA1が接続されている。第2コイルL2は、共通接続点D2と他方のリレー31とに接続されている。第2コイルL2に接続されたリレー31と第2コイルL2とを繋ぐ電線上に接続点P2があり、抵抗RA2が接続されている。
【0033】
また、第1コイルL1、第2コイルL2のインダクタンス成分は、前述した電流集中を防ぐため、略同一である方が好ましい。なお、第1コイルL1、第2コイルL2は、インダクタンス素子の一例であり、第1コイルL1は、第1インダクタンス素子の一例であり、第2コイルL2は、第2インダクタンス素子の一例である。
【0034】
電池監視ユニット33は、制御部34、第1電圧検出回路35、第2電圧検出回路36および高周波信号発生器38を有する。制御部34は、中央処理装置(以下、CPU)34A及びメモリ34Bを有する。メモリ34Bには、電池監視ユニット33の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されており、CPU34Aは、メモリ34Bから読み出したプログラムに従って、電池監視ユニット33の各部を制御する。メモリ34Bは、RAMやROMを有する。なお、上記各種のプログラムが記憶される記憶媒体は、RAM等以外に、CD−ROM、ハードディスク装置、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリでもよい。
【0035】
第1電圧検出回路35は、抵抗RA1、抵抗RB1から構成される。抵抗RA1と抵抗RB1とは直列に接続されており、接続点P1で電線と抵抗RA1とが接続され、抵抗RB1とグランド(以下、GNDとする)とが接続されている。第1電圧検出回路35は、抵抗RA1と抵抗RB1との間の電圧に応じた検出信号(第1電圧検出信号の一例)を制御部34に出力する。この電圧は、抵抗RA1と抵抗RB1による点P1での電圧値VP1の分圧であり、以下、分圧値V1という。
【0036】
第2電圧検出回路36は、抵抗RA2、抵抗RB2から構成される。抵抗RA2と抵抗RB2とは直列に接続されており、接続点P2でと抵抗RA2とが接続され、抵抗RB2とGNDとが接続されている。第2電圧検出回路36は、抵抗RA2と抵抗RB2との間の電圧に応じた検出信号(第2電圧検出信号の一例)を制御部34に出力する。この電圧は、抵抗RA2と抵抗RB2による点P2での電圧値VP2の分圧であり、以下、分圧値V2という。
【0037】
なお、点P1での電圧値VP1および点P2での電圧値VP2は、素子間電圧の一例であり、電圧VP1は、第1電圧の一例であり、電圧VP2は、第2電圧の一例である。また、第1電圧検出回路35および第2電圧検出回路36は、検出電圧出力部の一例であり、第1電圧検出回路35は、第1検出電圧出力部の一例であり、第2電圧検出回路36は、第2検出電圧出力部の一例である。なお、各検出信号は、アナログ信号であってもデジタル信号であってもよい。
【0038】
高周波信号発生器38は、CPU34Aの指示により、2個のリレー31に、例えばsin波形の高周波信号SGを印加する。具体的には、高周波信号発生器38は、カップリングコンデンサCを介して接続端子T1と接続端子T3との間に接続され、CPU34Aの指示により、共通接続点D1に高周波信号SGを印加する。なお、高周波信号SGは、周波数信号の一例であり、高周波信号発生器38は、周波数印加部の一例である。
【0039】
(スイッチ故障判定処理)
CPU34Aは、実行条件を満たした場合、CPU34Aは、図2に示すスイッチ故障判定処理を実行する。実行条件の例は、ユーザによってイグニッションキーが操作されることにより車両の電源がオンされたことや、前回の故障判定処理の実行時から基準時間経過したこと等である。なお、スイッチ故障判定処理は、状態判定処理の一例である。
【0040】
CPU34Aは、まず、図3に示すオープンモード故障判定処理を実行する(S1)。このオープンモード故障判定処理は、2個のリレー31のいずれかが、オープンモード故障しているかどうかを判定するための処理である。なお、オープンモード故障は、例えば2個のリレー31を駆動するコイルの故障等により、当該リレー31が、上記クローズ指令信号を受けても、クローズ状態にならない故障である。また、以下の説明では、二次電池2および負荷6の高周波信号に対するインピーダンスは高いこととし、本実施形態では無視できるものとする。
【0041】
(1)オープンモード故障判定処理
CPU34Aは、まず、高周波信号発生器38を起動させ、高周波信号SGを生成および出力させ、共通接続点D1に高周波信号SGを印加させる(S10)。次に、CPU34Aは、全てのリレー31にクローズ指令信号を与え(S11)、CPU34Aは、第1電圧検出回路35および第2電圧検出回路36からの検出信号に基づいて、点P1および点P2での電圧値を検出する(S12)。さらに、CPU34Aは、全てのリレー31にクローズ指令信号を与えた状態で、第1電圧検出回路35および第2電圧検出回路36から出力される検出信号と、予め定められた基準値とを比較する(S13)。なお、基準値とは例えば0Vに限りなく近い値等である。
【0042】
CPU34Aは、各検出信号が両方とも基準値を下回ったと判定した場合(S13:YES)、二次電池2と電気機器との間の電流経路が遮断されていると判定する。CPU34Aは、全てのリレー31にクローズ指令信号を与えているにも関わらず、各検出信号が両方とも基準値を下回っているからである。そこで、CPU34Aは、全てのリレー31がオープンモード故障であると判定し、メモリ34Bにオープンモード故障のフラグを記憶させ(S20)、オープンモードオープンモード故障判定処理を終了する。
【0043】
CPU34Aは、S13の判定を実行することで、全てのリレー31がオープンモード故障であるか、少なくとも1つのリレー31がオープンモード故障していないかを判定する。そして、CPU34Aは、全てのリレー31がオープンモード故障であった場合、オープンモード故障判定処理を終了する。これによって、全てのリレー31がオープンモード故障であった場合は、S13以降の処理をキャンセルできるため、CPU34Aの負担を軽減することができる。
【0044】
CPU34Aは、少なくとも1つのリレー31がオープンモード故障していないと判定した場合(S13:NO)、リレー番号Nを1に初期化する(S14)、
【0045】
次に、CPU34Aは、共通接続点D1に高周波信号SGが印加されているとき、第1電圧検出回路35または第2電圧検出回路36からの検出信号によってN番目のリレー31の分圧値VNを検出する(S15)、
【0046】
そして、CPU34Aは、分圧値VNがオープンモード判定範囲内であるか否かを判定する(S16)。具体的には、CPU34Aは、分圧値VNがオープンモード判定値よりもオープンモード範囲値だけ大きい値以上の範囲内、または、オープンモード判定値よりもオープンモード範囲値だけ小さい値以下の範囲内のどちらかにあるか、どちらにもないのかを判定する。
【0047】
なお、オープンモード判定値は、全てのリレー31がクローズ状態で、かつ高周波信号SGが印加されている時のN番目のリレー31の電圧値VMNであり、メモリ34Bに予め記憶されている。オープンモード範囲値は、CPU34Aが全てのリレー31についてオープンモード故障判定が可能な程度に定められた値であり、メモリ34Bに予め記憶されている。また、オープンモード判定値よりもオープンモード範囲値だけ大きい値以上の範囲、およびオープンモード判定値よりもオープンモード範囲値だけ小さい値以下の範囲は、オープンモード故障判定範囲、第1オープンモード故障判定範囲、第2オープンモード故障判定範囲の一例である。
【0048】
CPU34Aは、分圧値VNがオープンモード判定範囲内であると判定した場合(S16:YES)、即ち、N番目のリレー31がクローズ状態であると判定した場合、リレー番号Nがリレー総数に達しているか否かを判定する(S17)。
【0049】
そして、CPU34Aは、リレー番号Nがリレー総数に達していないと判定した場合(S17:NO)、リレー番号Nに1を加算し(S18)、S15に戻る。一方、CPU34Aは、リレー番号Nがリレー総数に達していると判定した場合(S17:YES)、高周波信号発生器38に高周波信号SGの印加を停止させる(S19)。そして、CPU34Aは、全リレー31がオープンモード故障していないとして、オープンモード故障判定処理を終了し、図2のS2に進む。なお、本実施形態では、リレーの総数は2であるが、リレーの数が増えれば、リレー総数は3以上となる。
【0050】
一方、CPU34Aは、分圧値VNがオープンモード判定範囲内でないと判定した場合(S16:NO)、N番目のリレー31はオープンモード故障であると判定し、メモリ34Bにオープンモード故障のフラグを記憶させ(S20)、オープンモード故障判定処理を終了する。
【0051】
なお、CPU34Aは、基準回数(例えば3回)だけ、分圧値VNがオープンモード判定範囲内であるないと判定した場合(S17:NO)に、メモリ34Bにオープンモード故障のフラグを記憶させたり、上記エラー処理を実行したりする構成でもよい。
【0052】
図4のケース1は、リレー31Aが正常で、リレー31Bがオープンモード故障している場合の例が示されている。CPU34Aは、ケース1から、1番目のリレー31Aと2番目のリレー31Bとにクローズ指令信号を与える(S11)。しかし、2番目のリレー31Bは、オープンモード故障している。このため、クローズ指令信号を与えた後のケース2では、2番目のリレー31Bは、クローズ指令信号を与える前のケース1と同じオープン状態のままである。
【0053】
次に、CPU34Aは、高周波信号SGを印加しているときの1番目のリレー31Aの分圧値V1を測定する(S17)。ここで、1番目のリレー31Aと2番目のリレー31Bとが両方ともクローズ状態である時、例えば図6のケース1のように、点線と1点鎖線とで示される閉ループが形成される。
【0054】
したがって、抵抗RA1と抵抗RB1とから生成される分圧値V1と、抵抗RA2と抵抗RB2とから生成される分圧値V2とは、以下の<式1>、<式2>で示される分圧値VM1、分圧値VM2となる。
<式1>
VM1=VF×RB1/(RA1+RB1)
<式2>
VM2=VF×RB2/(RA2+RB2)
なお、VFは、高周波信号発生器38から発生される高周波信号SGの振幅(V)を示す。また、分圧値VM1、分圧値VM2はメモリ34Bに記憶されている。
【0055】
しかし、図4では、リレー31Bがオープンモード故障しているため、同図のケース2で示す通り、点線と1点鎖線とで示される閉ループが形成される。したがって、抵抗RA1と抵抗RB1とから生成される分圧値V1と抵抗RA2と抵抗RB2とから生成される分圧値V2とは、次の<式3>、<式4>で示される値となる。
<式3>
V1=VF×RB1/(RA1+RB1)
<式4>
V2=VF×RB2/(RA2+RB2+2πjf(L1+L2))
なお、jは虚数単位、fは高周波信号発生器38から発生される高周波信号SGの周波数(MHz)を示す。
【0056】
図4では、リレー31Aは正常であるため、1点鎖線による閉ループは、図6のケース1の場合と同じである。したがって、分圧値VM1と分圧値V1とは等しくなる。一方、図4では、リレー31Bがオープンモード故障しているため、点線による閉ループは、図6のケース1の場合と異なり、第1コイルL1および第2コイルL2を含む。このため、分圧値V2はインダクタンス成分の影響を受け、分圧値VM2に比べ、分母が2πjf(L1+L2)だけ大きくなる。よって、分圧値V2は分圧値VM2に比べて値が小さくなる。
【0057】
従って、CPU34Aは、分圧値V2と分圧値VM2とは値が異なると判定し(S19:NO)、2番目のリレー31Bがオープンモード故障していると判定し、メモリ34Bにオープンモード故障のフラグを記憶させ(S13)、オープンモード故障判定処理を終了する。
【0058】
なお、図4では、第1コイルL1および第2コイルL2の両方を含む構成を示したが、第1コイルL1、第2コイルL2の一方のみの構成でもよい。例えば、第1コイルL1のみリレー31Aに接続されている場合、同図のケース2を例にすると、分圧値V2は、以下の<式5>で示される分圧値V2αとなる。
<式5>
V2α=VF×RB2/(RA2+RB2+2πjf×L1)
【0059】
<式5>からも明らかなように、分圧値V2αは、第1コイルL1のインダクタンス成分の影響を受け、分圧値VM2に比べ、分母が2πjf×L1だけ大きくなる。よって、分圧値V2αも分圧値VM2に比べて値が小さくなるため、CPU34Aは、2番目のリレー31Bがオープンモード故障していると判定することができる。なお、CPU34Aは、これに応じて、オープンモード判定範囲を変更してもよいし、変更しなくてもよい。CPU34Aがオープンモード判定範囲を変更した場合、当該新たなオープンモード判定範囲は、第2オープンモード故障判定範囲の一例である。
【0060】
しかしながら、分圧値V2と分圧値V2αとを比較すると、分圧値V2の方がより値が小さくなる。つまり、分圧値V2の方が分圧値VM2との差が大きくなる。このため、CPU34Aは、より精度良く2番目のリレー31Bがオープンモード故障していると判定することができる。従って、CPU34Aが、より精度良く全てのリレー31がオープンモード故障していると判定するために、第1コイルL1および第2コイルL2の両方を含む構成の方がより好ましい。
【0061】
CPU34Aは、オープンモード故障のフラグがメモリ34Bに記憶されているかどうかに基づき、オープンモード故障判定処理でオープンモード故障していると判定したかどうかを判定する(S2)。CPU34Aは、オープンモード故障していると判断した場合(S2:NO)、上記ECU等の外部機器にオープンモード故障している旨の通知信号を出力するなどのエラー処理を実行し(S5)、スイッチ故障判定処理を終了する。
【0062】
一方、CPU34Aは、オープンモード故障していないと判定した場合(S2:YES)、図5に示すショートモード故障判定処理を実行する(S3)。このショートモード故障判定処理は、2個のリレー31のいずれかが、ショートモード故障しているかどうかを判定するための処理である。なお、ショートモード故障は、例えばリレー31の接点の溶着等により、当該リレー31が、上記オープン指令信号を受けても、オープン状態にならない故障である。また、ショートモード故障判定処理は、第1ショートモード故障判定処理、第2ショートモード故障判定処理の一例である。
【0063】
(2)ショートモード故障判定処理
CPU34Aは、まず、リレー番号Nを1に初期化し(S31)、高周波信号発生器38を起動させ、高周波信号SGを生成および出力させ、共通接続点D1に高周波信号SGを印加させる(S32)。そして、CPU34Aは、N番目のリレー31の分圧値VNを検出する(S33)。
【0064】
S33では、全てのリレー31はクローズ状態となっている。CPU34Aは、S11で全てのリレー31にクローズ指令信号を与えており、以降の処理では、どのリレー31にもオープン指令信号を与えておらず、かつ全てのリレー31はオープンモード故障していないためである。従って、S33では、CPU34Aは、全てのリレー31はクローズ状態で、かつ高周波信号SGが印加された状態で、第1電圧検出回路35または第2電圧検出回路36からの検出信号によってN番目のリレー31の分圧値VNを検出することになる。
【0065】
次に、CPU34Aは、N番目のリレー31にオープン指令信号を与え(S34)、第1電圧検出回路35または第2電圧検出回路36からの検出信号によってN番目のリレー31の分圧値VKNを検出する(S35)。そして、CPU34Aは、高周波信号発生器38に高周波信号SGの印加を停止させ(S36)、分圧値VNと分圧値VKNとの差の絶対値がショートモード故障判定閾値以下であるか否かを判定する(S37)。なお、S34の処理は、オープン指令処理、第1オープン指令処理、第2オープン指令処理の一例である。
【0066】
換言すれば、CPU34Aは、分圧値VNが分圧値VKNよりもショートモード故障判定閾値だけ小さい値と、分圧値VKNよりもショートモード故障判定閾値だけ大きい値との範囲に収まっているか否かを判定する。なお、S34の処理は、第1オープン指令処理、第2オープン指令処理の一例である。また、上述した、「分圧値VKNよりもショートモード故障判定閾値だけ小さい値と、分圧値VKNよりもショートモード故障判定閾値だけ大きい値との範囲」は、ショートモード故障判定範囲、第1ショートモード故障判定範囲、および第2ショートモード故障判定範囲の一例である。
【0067】
S37の処理では、CPU34Aは、N番目のリレー31がクローズ状態とオープン状態との分圧値の比較をする。従って、N番目のリレー31がショートモード故障でなければ、S34の処理でN番目のリレー31の状態が変わるため、N番目のリレー31がクローズ状態の分圧値VNとN番目のリレー31がオープン状態の分圧値VKNとの間に差が生じる。
【0068】
そこで、CPU34Aは、分圧値VNと分圧値VKNとの差の絶対値がショートモード故障閾値より大きいと判定した場合(S37:NO)、N番目のリレー31にクローズ指令信号を与え(S38)、ショートモード故障判定処理を継続する。そして、CPU34Aは、リレー番号Nがリレー総数に達しているかどうかを判定する(S39)。
【0069】
CPU34Aは、リレー番号Nがリレー総数に達していると判定した場合(S39:YES)、全リレー31がショートモード故障していないとして、ショートモード故障判定処理を終了する。そして、CPU34Aは、ショートモード故障のフラグがメモリ34Bに記憶されていないと判断した場合(S4:YES)、スイッチ故障判定処理を終了する。一方、CPU34Aは、リレー番号Nがリレー総数に達していないと判定した場合(S39:NO)、リレー番号Nに1を加算し(S40)、S32に戻る。なお、本実施形態では、リレーの総数は2であるが、リレーの数が増えれば、リレー総数は3以上となる。
【0070】
CPU34Aは、分圧値VNと分圧値VKNとの差の絶対値がショートモード故障閾値以下であると判定した場合(S37:YES)、N番目のリレー31はショートモード故障であると判定し、メモリ34Bにショートモード故障のフラグを記憶させ(S41)、ショートモード故障判定処理を終了する。そして、CPU34Aは、ショートモード故障のフラグがメモリ34Bに記憶されていると判断した場合(S4:NO)、上記ECU等の外部機器にショートモード故障している旨の通知信号を出力するなどのエラー処理を実行し(S5)、スイッチ故障判定処理を終了する。
【0071】
なお、CPU34Aは、基準回数(例えば3回)だけ、分圧値VNと分圧値VKNとの差の絶対値がショートモード故障閾値以下であると判定した場合(S37:NO)に、メモリ34Bにショートモード故障のフラグを記憶させたり、上記エラー処理を実行したりする構成でもよい。
【0072】
図6のケース1は、リレー31Aが正常で、リレー31Bがショートモード故障している場合の例が示されている。CPU34Aは、ケース1で、高周波信号SGを印加させた状態で1番目のリレー31Aの分圧値V1を検出する(S33)。
【0073】
ここで、1番目のリレー31Aと2番目のリレー31Bとが両方ともクローズ状態であるため、同図のケース1のように、点線と1点鎖線とで示される閉ループが形成される。したがって、抵抗RA1と抵抗RB1とから生成される分圧値V1は、以下の<式6>で示される。
<式6>
V1=VF×RB1/(RA1+RB1)
【0074】
そして、CPU34Aは、ケース1から、1番目のリレー31Aにオープン指令信号を与える(S34)。
【0075】
同図では、1番目のリレー31Aはショートモード故障していないため、1番目のリレー31Aは、クローズ状態からオープン状態へ遷移する。これにより、1番目のリレー31Aはオープン状態で、2番目のリレー31Bはクローズ状態となるため、同図のケース2のように、点線と1点鎖線とで示される閉ループが形成される。したがって、抵抗RA1と抵抗RB1とから生成される分圧値VK1は、以下の<式7>で示される。
<式7>
VK1=VF×RB1/(RA1+RB1+2πjf(L1+L2))
【0076】
<式6>と<式7>とから明らかなように、分圧値V1と分圧値VK1とは異なる値であるため、CPU34Aは、1番目のリレー31Aを正常であると判定し、図7に示すように、ケース2から、1番目のリレー31Aにクローズ指令信号を与える(S38)。1番目のリレー31Aはショートモード故障していないため、クローズ指令信号を与えた後のケース3も、ケース1と同じである。
【0077】
CPU34Aは、ケース3から、2番目のリレー31Bにオープン指令信号を与える(S34)。このとき、2番目のリレー31Bはショートモード故障しているため、2番目のリレー31Bは、クローズ状態からオープン状態へ遷移しない。
【0078】
これにより、1番目のリレー31Aと、2番目のリレー31Bがいずれもクローズ状態となるため、2番目のリレー31Bにクローズ指令信号を与えた後のケース4は、ケース1と同じである。したがって、抵抗RA2と抵抗RB2とから生成される分圧値VK2は、以下の<式8>で示される。
<式8>
VK2=VF×RB2/(RA2+RB2)
【0079】
図6のケース1と図7のケース4との1点鎖線の閉ループはどちらも同じであるため、分圧値V2も上記<式8>と等しくなる。したがって、分圧値V2と分圧値VK2とは等しくなるため、CPU34Aは、2番目のリレー31Bがショートモード故障していると判定し、メモリ34Bにショートモード故障のフラグを記憶させ(S41)、ショートモード故障判定処理を終了する。
【0080】
なお、図6図7では、第1コイルL1および第2コイルL2の両方を含む構成を示したが、第1コイルL1、第2コイルL2の一方のみの構成でもよい。例えば、第1コイルL1のみリレー31Aに接続されている場合、同図のケース2を例にすると、分圧値VK1は、以下の<式9>で示される分圧値VK1αとなる。
<式9>
VK1α=VF×RB1/(RA1+RB1+2πjf×L1)
【0081】
<式9>からも明らかなように、分圧値VK1αは、第1コイルL1のインダクタンス成分の影響を受け、分圧値VK1に比べ、分母が2πjf×L1だけ大きくなる。よって、分圧値VK1αも分圧値V1に比べて値が小さくなるため、CPU34Aは、2番目のリレー31Bがショートモード故障していると判定することができる。なお、CPU34Aは、これに応じて、ショートモード故障閾値を変更してもよいし、変更しなくてもよい。CPU34Aがショートモード故障閾値を変更した場合、当該新たなショートモード故障閾値は、第2ショートモード故障判定範囲の一例である。
【0082】
しかしながら、分圧値VK1と分圧値VK1αとを比較すると、分圧値VK1の方がより値が小さくなる。つまり、分圧値VK1の方が分圧値V1との差が大きくなる。このため、CPU34Aは、より精度良く1番目のリレー31Aが正常であると判定することができる。従って、CPU34Aが、より精度良く全てのリレー31が正常であると判定するために、第1コイルL1および第2コイルL2の両方を含む構成の方がより好ましい。
【0083】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、全てのリレー31はクローズ状態で、N番目のリレー31にオープン指令信号を与えているときの分圧値VKNと、N番目のリレー31にオープン指令信号を与える前の分圧値VNとの差の絶対値が、ショートモード故障判定閾値以下であるか否かに基づき、N番目のリレー31のショートモード故障の有無が判定される。これにより、電気機器と二次電池2との間の電流経路が遮断されることを回避しつつ、全てのリレー31の故障の有無の判定精度が低下することを抑制することができる。
【0084】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0085】
上記実施形態では、制御部34は、1つのCPUとメモリを有する構成であった。しかし、制御部は、これに限らず、複数のCPUを備える構成や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハード回路を備える構成や、ハード回路及びCPUの両方を備える構成でもよい。例えば上記電池保護処理やスイッチ故障判定処理の一部または全部を、別々のCPUやハード回路で実行する構成でもよい。また、これらの処理の順序は、適宜変更してもよい。
【0086】
上記実施形態では、スイッチの例として、有接点のリレー31を挙げた。しかし、これに限らず、スイッチは、例えばバイポーラトランジスタや、MOSFETなどの半導体素子であってもよく、また、通常はクローズ状態であり、オープン指令信号を与えた場合に限りオープン状態になるノーマルクローズタイプでもよい。
【0087】
上記実施形態では、2個のリレー31の接点抵抗が略同一である構成を例に挙げた。しかしこれに限らず、2個のリレー31は接点抵抗が異なる構成でもよい。
【0088】
上記実施形態では、電池監視ユニット33は、高周波信号発生器38を備える構成であった。しかしこれに限らず、高周波信号発生器38は、電池監視ユニット33の外部に設けられていてもよく、電池保護装置3の外部に設けられていてもよい。
【0089】
上記実施形態では、高周波信号発生器38は、CPU34Aの指示により、2個のリレー31に高周波信号SGを印加する構成であった。しかしこれに限らず、高周波信号発生器38は、常時高周波信号SGを発生しており、CPU34Aは、高周波信号発生器38の外部に設けられたスイッチを制御することで、当該高周波信号SGを2個のリレー31に印加する構成でもよい。
【0090】
上記実施形態では、CPU34Aは、N番目のリレー31に接続されている抵抗RANと抵抗RBNとから生成される分圧値VNを検出する時だけ、高周波信号発生器38に高周波信号SGを印加させる構成であった。しかし、これに限らずCPU34Aは、常時、高周波信号発生器38に高周波信号SGを印加させる構成でもよい。
【0091】
上記実施形態では、インダクタンス素子の一例として第1コイルL1、第2コイルL2を挙げた。しかしこれに限らず、カップリングフィルタを電流経路に被せる構成でもよい。要するに、インダクタンス成分が生じる構成であればよい。
【0092】
上記実施形態では、高周波信号SGの例としてsin波を挙げた。しかしこれに限らず、高周波信号SGは矩形波でもよい。要するに振幅と周波数とが規定できればどのような波形でもよい。
【0093】
上記実施形態では、周波数信号の例として、高周波信号SGを挙げた。しかしこれに限らず、共通接続点D1に印加する周波数信号は、高周波信号SGでなくてもよい。要するに周波数信号を印加する前と後とで、第1コイルL1、第2コイルL2の両端に電位差が発生すれば、どのような周波数信号でもよい。上記実施形態のように、周波数が高ければ、その分当該電位差が顕著になるので、CPU34Aが全てのリレー31の故障の有無の判定をするときの判定精度を上げることができる。
【0094】
上記実施形態では、電池保護装置3は、2個のリレー31を備える構成であった。しかし、これに限らず、電池保護装置3は、3個以上の複数個のリレー31を備える構成でもよい
【0095】
上記実施形態では、第1コイルL1、第2コイルL2のインダクタンス成分は、略同一である構成であった。しかしこれに限らず、第1コイルL1、第2コイルL2のインダクタンス成分は、異なっていてもよい。
【0096】
上記実施形態では、高周波信号発生器38は、二次電池2側から共通接続点D1に対して高周波信号SGを印加する構成であった。しかしこれに限らず、高周波信号発生器38は、負荷6側から共通接続点D2に対して高周波信号SGを印加する構成でもよい。ただしこの場合は、第1コイルL1、L2の正極側は共通接続点D1に接続されており、2個のリレー31の各々の負極側は、共通接続点D2に接続されている必要がある。
【0097】
上記実施形態では、ショートモード故障閾値は、N番目のリレー31にオープン指令信号を与える前の分圧値VNを基準とする相対値であった。しかしこれに限らず、ショートモード故障閾値は、グランド電位を基準とする絶対値であってもよい。
【0098】
上記実施形態では、CPU34Aは、二次電池2から負荷6に電力供給している場合、その負荷6への電力供給を維持しつつ、全てのリレー31の故障の有無を判定する例を挙げた。しかしこれに限らず、CPU34Aは、充電器5により二次電池2を充電している場合、その充電を継続しつつ、全てのリレー31の故障の有無を判定することもできる。<式1>〜<式9>からも明らかなように、分圧値VNは、二次電池2から負荷6への放電電流等の影響を受けないためである。
【0099】
また、抵抗RA1、抵抗RB1、抵抗RA2、および抵抗RB2の抵抗成分は、略同一でもよいし、異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1:電池パック 2:二次電池 3:電池保護装置 31:リレー 34:制御部 35:第1電圧検出回路 36:第2電圧検出回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7