特許第6474192号(P6474192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6474192電気機械のステータを製造する方法、ステータおよび電気機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6474192
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】電気機械のステータを製造する方法、ステータおよび電気機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20190218BHJP
   H02K 1/17 20060101ALI20190218BHJP
   H02K 23/04 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   H02K15/03 C
   H02K1/17
   H02K23/04
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-260074(P2013-260074)
(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公開番号】特開2014-121267(P2014-121267A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2016年12月16日
(31)【優先権主張番号】10 2012 223 323.7
(32)【優先日】2012年12月17日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ピエール ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ リュトケ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル クルンプ
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン ガイスラー
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−046939(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02617344(FR,A1)
【文献】 特開2002−223537(JP,A)
【文献】 特開2001−262288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/03
H02K 1/17
H02K 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(10)のステータ(8)を製造する方法であって、
前記ステータ(8)は、磁極ハウジング(2)と、磁石構成ユニット(6)と、を備え、前記磁石構成ユニット(6)は、少なくとも1つの磁石エレメント(1,1a)と、少なくとも1つの部材と、を有し、
前記磁石構成ユニット(6)を、前記磁石エレメント(1,1a)と前記少なくとも1つの部材との間に持続的に材料接続的な結合を有する射出成形部材として形成するステップと、
前記磁石構成ユニット(6)を前記磁極ハウジング(2)に取り付けるステップと、
を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの部材は、磁石保持リング(7)である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記磁石構成ユニット(6)を二成分射出成形部材として形成する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記磁石エレメント(1,1a)と前記少なくとも1つの部材との間に形状接続的な結合を形成するステップを有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記形状接続的な結合を、アンダカットおよび/または前記磁石エレメント(1,1a)の射出成形による前記少なくとも1つの部材の少なくとも部分的な取囲みおよび/または蟻継ぎによって形成する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記磁石エレメント(1,1a)は、磁性材料としての少なくとも一種類の希土類材料を含有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記磁石エレメント(1,1a)を前記ステータ(8)と反対の側の上面(9)で凹状に形成する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記磁石エレメント(1)の、凹状に形成された上面(9)の曲率は、前記ステータ(8)内に挿入すべきロータ(4)の外周(13)の曲率に対応するように、前記磁石エレメント(1,1a)の凹状の上面(9)を形成する、請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械、特に電動モータのステータを製造する方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、少なくとも1つの磁石エレメントを有する電気機械、特に電動モータのステータに関する。
【0003】
さらに、本発明は、電気機械に関する。
【背景技術】
【0004】
電気機械に用いられるステータは、通常、複数の個別構成部材、つまり、1つの磁極ハウジングと、1つの磁石保持リングと、複数の焼結磁石とから成っている。このようなステータは、従来では、第1の作業工程において、磁性材料から成る1つのブロックからの切断によって複数の焼結磁石を製造し、第2の作業工程において、これらの焼結磁石を磁石保持リングに固定し、すなわち、前もって組み付け、その後、第3の作業工程において、こうして形成された、磁石と磁石保持リングとから成る磁石構成ユニットを磁極ハウジング内に挿入することにより製造される。この方法には、焼結磁石の製造、固定エレメントまたは接着剤の使用下での磁石保持リング内への焼結磁石の前もった組付け、これに続く、磁極ハウジング内への磁石保持リングの固定といった別個のステップによって、極めて手間がかかり、ロジスティックス、コスト技術ならびに工具技術に関する高い手間が要求される。なぜならば、ステータの持続的な安定性を保証するために、構成部材が互いに精密に内外で組み合わされなければならないからである。さらに、1つのブロックからの切断による複数の焼結磁石の製造は、高い廃物ひいては高い材料コストに結び付けられている。それに加えて、前もって製造された磁石保持リング内への別個に製造された磁石の固定も、磁極ハウジング内への磁石保持リングの押込みおよび固定も、多数の個別構成部材および固定エレメントの寸法安定性の不足に基づき複雑であると同時に困難であり、これによって、高いスクラップ率を伴って作業が行われる。さらに、構造的に手間のかかる構造によって、磁石と、ステータの、磁石を固定する部材との間にエアギャップが形成される。このエアギャップは、このように形成された電気機械の出力強さを低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、簡単であると共に廉価である、電気機械のステータを製造する方法、高品質であるステータならびに出力密度が高められた電気機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明に係る方法では、該方法が、少なくとも1つの磁石エレメントをステータの少なくとも1つの部材に射出成形して、磁石エレメントをステータの前記少なくとも1つの部材に固定するステップを有している。
【0007】
本発明に係る方法の有利な態様では、ステータが、好ましくは鋼製深絞り構成部材である磁極ハウジングを有しており、該磁極ハウジングに磁石エレメントを射出成形によって固定する。
【0008】
本発明に係る方法の有利な態様では、ステータが、磁石構成ユニットを有しており、該磁石構成ユニットが、少なくとも1つの磁石エレメントと少なくとも1つの磁石保持リングとを有しており、該磁石保持リングに磁石エレメントを射出成形によって固定し、前記方法が、好ましくは磁石構成ユニットの二成分射出成形を特徴としている。
【0009】
本発明に係る方法の有利な態様では、前記方法が、磁石エレメントとステータの少なくとも1つの部材との間に形状接続的な結合を形成するステップを有しており、前記形状接続的な結合を、好ましくはアンダカットおよび/または射出成形によるステータの1つの部材の少なくとも部分的な取囲みおよび/または蟻継ぎの構成によって形成する。
【0010】
本発明に係る方法の有利な態様では、磁石エレメントが、少なくとも一種類の磁性材料、好ましくは希土類材料、特にNdFe14Bを含有している。
【0011】
本発明に係る方法の有利な態様では、磁石エレメントをステータと反対の側の上面で凹状に形成し、好ましくは、磁石エレメントの、凹状に形成された上面の曲率が、ステータ内に挿入すべきロータの外周の曲率に対応するように、磁石エレメントの凹状の上面を形成する。
【0012】
さらに、前述した課題を解決するために、本発明に係るステータでは、磁石エレメントが、射出成形部材として形成されていて、射出成形によってステータの少なくとも1つの部材に固着されている。
【0013】
本発明に係るステータの有利な態様では、ステータが、好ましくは鋼製深絞り構成部材である磁極ハウジングを有しており、該磁極ハウジングに磁石エレメントが射出成形により固着されている。
【0014】
本発明に係るステータの有利な態様では、ステータが、磁石構成ユニットを有しており、該磁石構成ユニットが、少なくとも1つの磁石エレメントと少なくとも1つの磁石保持リングとを有しており、該磁石保持リングに磁石エレメントが射出成形によって固着されており、磁石構成ユニットが、好ましくは二成分射出成形部材として形成されている。
【0015】
本発明に係るステータの有利な態様では、磁石エレメントとステータの少なくとも1つの部材とが、形状接続的な結合によって互いに結合されており、該形状接続的な結合が、好ましくはアンダカットおよび/または射出成形によるステータの1つの部材の少なくとも部分的な取囲みおよび/または蟻継ぎによって形成されている。
【0016】
本発明に係るステータの有利な態様では、磁石エレメントが、少なくとも一種類の磁性材料、好ましくは希土類材料、特にNdFe14Bを含有している。
【0017】
本発明に係るステータの有利な態様では、磁石エレメントの、ステータと反対の側の上面が、凹状に形成されており、好ましくは、磁石エレメントの、凹状に形成された上面の曲率が、ステータ内に挿入すべきロータの外周の曲率に対応している。
【0018】
さらに、前述した課題を解決するために、本発明に係る電気機械では、該電気機械が、本発明に係るステータを有している。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の特徴を備えた、ステータを製造するための本発明に係る方法は、従来の方法に比べて、簡単でもあり廉価でもある方法手順の点で優れている。1回のステップでの磁石エレメントの射出成形ひいてはステータの少なくとも1つの部材への磁石エレメントの直接的な製造および固定によって、1つ以上の磁石エレメントの別個の製造だけでなく、これらの磁石エレメントの前もった組付けも不要となる。磁石エレメントの製造時に磁石材料における廃物は生じない。さらに、磁石エレメントに対する固定手段も省略することができる。なぜならば、射出成形によって、磁石エレメントと、ステータの、磁石エレメントを固定する部材との間に、持続的に安定した形状接続的な結合が形成されるからである。これによって、ステータの品質が高められると同時に、材料コストだけでなく、ステータの製造時のコストおよび工具技術的な手間も最小限に抑えられる。1つ以上の磁石エレメントをステータの1つの部材に直接射出成形するステップによって、1つ以上の磁石エレメントが極めて正確な寸法および位置を備えて形成される。これによって、1つには、ステータの内径の同心度がその内側表面全体にわたって改善され、もう1つには、磁石エレメントとステータの相応の部材との間へのエアギャップの形成が阻止される。これによって、本発明により形成されたステータが挿入されている電気機械の効率の大幅な性能向上が達成される。
【0020】
従属請求項には、本発明の好適な改良態様が示してある。
【0021】
本発明に係る方法の有利な改良態様によれば、ステータが、磁極ハウジングを有しており、この磁極ハウジングに磁石エレメントが射出成形によって固定され、磁極ハウジングが、任意に形成されていて、たとえば丸められた鋼製部材として形成されており、好ましくは鋼製深絞り構成部材である。磁石エレメントを磁極ハウジングに直接射出成形することによって、本発明に係る方法をさらに簡単にすることができる。なぜならば、これによって、磁石保持リングの使用を省略することができるからである。したがって、ステータの製造のためのコストが削減され、ステータの製造時のロジスティックスに関する手間、たとえば工具技術的な手間が最小限に抑えられる。1つ以上の磁石エレメントを磁極ハウジングに直接射出成形するステップによって、磁石エレメントと磁極ハウジングとの間へのエアギャップの形成を阻止することができるだけでなく、ステータの内側表面全体にわたるステータの磁極ハウジングと内径との同心度を改善することもできる。これによって、ステータ内に挿入すべきロータと、磁石エレメントとの間に形成されるエアギャップも小さくなり、また、均質になる。これによって、こうして形成された電気機械の出力密度が高められる。鋼製深絞り構成部材としての磁極ハウジングの好ましい構成は、鋼製深絞り構成部材を極めて良好に射出成形によって後続処理することができることに由来している。なぜならば、鋼製深絞り構成部材が、射出成形の間に生じる反応条件、たとえば100℃〜200℃付近の温度に対して不感であり、射出成形コンパウンド内の従来の添加物に対して不活性であるからである。さらに、鋼製深絞り構成部材はその材料特性に基づき、磁石エレメントとハウジングとの間に極めて良伝導性の結合を形成する。鋼製深絞り構成部材の処理は、従来のように、予備成形された構成部材を、設けられた射出成形金型内に装入し、次いで、射出成形し、場合により、射出成形構成部材を硬化させることによって行うことができる。したがって、方法手順が特に簡単であり、高い寸法安定性と安定性とを備えた射出成形部材が形成される。
【0022】
本発明に係る方法の有利な改良態様によれば、ステータが、磁石構成ユニットを有しており、この磁石構成ユニットが、少なくとも1つの磁石エレメントと少なくとも1つの磁石保持リングとを有しており、この磁石保持リングに磁石エレメントが射出成形によって固定される。好ましくは、磁石構成ユニットが、二成分射出成形によって形成される。少なくとも1つの磁石エレメントと少なくとも1つの磁石保持リングとを有する磁石構成ユニットの射出成形によって、磁石エレメントの製造という別個のステップと、独立した作業ステップでの構成部材同士の前もった組付けとが同じく不要になる。1つ以上の磁石エレメントは、射出成形によって直接、磁石保持リングの設定された位置に固定される。これによって、持続的な材料接続的な結合が形成される。したがって、工具技術的に少ない手間に結び付けられた廉価で効率のよいステータの製造が可能となる。また、磁石エレメントと磁石保持リングとの間へのエアギャップの形成も阻止される。磁石エレメントに対する付加的な固定エレメントも同じく省略することができる。これによって、ロジスティックスに関する手間だけでなく、コスト技術的な手間も最小限に抑えられる。磁石構成ユニットの好ましい二成分射出成形によって、本発明に係る方法が一層簡単になる。なぜならば、磁石構成ユニット全体を1回の作業ステップでかつ1つの金型内で正確な寸法を備えて製造することができるからである。磁石保持リングおよび磁石エレメントの材料はその製造前にすでに互いに調和させることができる。これによって、磁石エレメントと磁石保持リングとの間の材料接続的な結合の安定性が高められる。
【0023】
本発明の有利な改良態様によれば、本発明に係る方法が、磁石エレメントとステータの少なくとも1つの部材との間に形状接続的な結合、つまり、互いに対応する幾何学的な形状部分の係合に基づく結合を形成するステップを特徴としており、この形状接続的な結合が、好ましくはアンダカットおよび/または射出成形によるステータの1つの部材の少なくとも部分的な取囲みおよび/または蟻継ぎの構成によって形成される。形状接続的な結合の形成によって、特に磁石エレメントとステータの相応の部材との間の機械的な安定性が高められる。原理的には、あらゆる形状接続的な結合が適している。たとえば、ステータの、磁石エレメントを固定する部材、たとえば磁極ハウジングまたは磁石保持リングが、型押し加工部を有していてよく、この型押し加工部の凹部内に、射出された磁石エレメント材料が沈み込み、そこに固着される。また、ステータ、特に磁極ハウジングおよび/または磁石保持リングに切欠きが前もって形成されていてもよい。この切欠きを磁石エレメント材料が射出成形の間に通流する。有利には、磁石エレメント材料が、切欠きの通流後、この切欠きの背後で再び幅方向に流れ、そこで完全硬化し、これによって、磁石エレメントの解離と、切欠きからの落下とが阻止される。しかし、本発明は、ここに例として挙げた形状接続的な結合に限定されるものではない。むしろ、形状接続的な結合における適切な選択および組合せによって、形状接続を、本発明により製造されたステータの用途に合わせて、すなわち、特にステータの幾何学形状および機械的な耐荷量に関して調和させることができる。アンダカットの好ましい構成および/または射出成形によるステータの1つの部材の取囲みおよび/または蟻継ぎの構成によって、やはり、特に高い機械的な安定性と、射出成形による形状接続的な結合のより容易な提供可能性とを得ることができる。
【0024】
本発明の別の有利な改良態様は、磁石エレメントが、少なくとも一種類の磁性材料、好ましくは希土類材料、特にNdFe14Bを含有していることを提案している。本発明に適した磁性材料には、比較的廉価である鉄含有のフェライト合金が含まれている。希土類材料の好ましい使用は、この希土類材料が高いエネルギ積および極めて良好な異方性の点で優れていることに由来している。これによって、希土類材料の出力密度が、鉄から成る従来の磁石の出力密度を数倍だけ上回り、これによって、磁石エレメントを高い出力密度でより小さく形成することができる。これは、まさに、構成スペースを減じて使用するために有利である。希土類の金属には、スカンジウム、イットリウムおよびランタンならびにランタノイド、たとえばセリウム、プラセオジウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムが属している。本発明によれば、希土類材料が、希土類の少なくとも一種類の金属を含有している。その傑出した出力密度に基づき、ネオジム、鉄およびホウ素から成る合金、たとえばNdFe14Bが特に好適に使用される。磁石エレメントの射出成形によって、磁石エレメント内の磁性材料の割合が、従来の焼結磁石内の磁性材料の割合に比べて、極めて高い出力密度であるにもかかわらず、大幅に減少させられている。このことは、本発明により製造されたステータ内での希土類金属材料の使用を促進させる。
【0025】
さらに有利には、本発明に係る方法は、磁石エレメントをステータと反対の側の上面で凹状に形成し、好ましくは、磁石エレメントの、凹状に形成された上面の曲率が、ステータ内に挿入すべきロータの外周の曲率に対応するように、磁石エレメントの凹状の上面を形成することを特徴としている。少なくとも1つの磁石エレメントをステータの少なくとも1つの部材に射出成形するステップによって、凹状の上面を備えた磁石エレメントを高い精度を伴って特に簡単に形成することができる。なお、その際には、成形された焼結磁石の使用時に考えられるような、廃物としての過剰の材料が失われていくことはない。さらに、ステータ、特にステータの、磁石エレメントを射出成形によって固定する部材と反対の側に凹状の上面を備えた磁石エレメントの構成によって、磁石エレメントと、ステータ内に挿入すべきロータとの間のエアギャップをより均一に形成することもできるし、より小さく形成することもできる。これによって、磁束が均質化され、大幅な出力向上が達成される。したがって、このように形成されたステータは高い効率を有していて、簡単にかつ廉価に製造可能となる。出力密度の更なる向上のためには、磁石エレメントの凹状の上面の曲率が、ステータ内に挿入すべきロータの外周の曲率にほぼ対応する、すなわち、技術的に実現可能である限り対応するように、磁石エレメントの凹状の上面の湾曲を形成することが有利である。最適な態様では、磁石エレメントの、凹状に形成された上面の曲率が、ステータ内に挿入すべきロータの外周の曲率に対応している。これによって、本発明に係るステータの1つ以上の磁石エレメントと、ステータ内に挿入すべきロータとの間に、特に均一なかつ極めて小さなエアギャップが形成される。
【0026】
本発明の別の有利な改良態様によれば、射出成形により固着されている磁石エレメントの、ステータ部材に向けられた下面が、平坦に形成されている。これによって、ステータへの磁石エレメントの固定が簡単になる。これは、特に磁石エレメントが磁石保持リングに射出成形によって固着される事例に当てはまる。なぜならば、これは、磁石保持リングの幾何学形状ひいては磁石エレメントを備えて設けられた磁石保持リングを挿入する磁極ハウジングの幾何学形状に影響を与えないからである。したがって、電気機械の製造に際して、磁石保持リングの従来の幾何学形状ならびに不変の形状を備えた磁極ハウジングを使用することができる。このことは、本発明に係るステータの使用可能性および受入れを高める。
【0027】
別の有利な改良態様は、磁石エレメントが、好ましくは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマおよびこれらから成る混合物から選択されたバインダ、好ましくは熱硬化性樹脂であるバインダを含有していることを提案している。なお、念のために付言しておくと、磁石エレメントは、上述したプラスチック材料のほかに、添加剤、たとえば溶剤、粘度調整剤、充填剤、染料、顔料およびこれに類するものを含有していてもよい。射出成形コンパウンドを製造するためのバインダ、磁性材料および添加剤の量は、射出成形による処理を可能にし、ステータの完成後に磁石エレメントの所望の出力密度および安定性も得られるように選択される。
【0028】
本発明の有利な改良態様によれば、本発明に係る方法は、磁石エレメントが、粉末射出成形(PIM)によって製造されることを特徴としている。この粉末射出成形は従来の形式で行うことができ、少なくとも一種類のバインダと、この態様では少なくとも一種類の磁性材料とを含有した射出成形コンパウンドを製造するステップと、この射出成形コンパウンドを射出して、いわゆる「グリーン(成形体)」を形成するステップと、脱脂して、いわゆる「ブラウン(脱脂体)」を形成するステップと、熱的なプロセス(焼結)を実施して、磁石エレメントを緻密化しかつ安定化させるステップとを有している。粉末射出成形によって、磁気的に特に強い出力の磁石エレメントが形成される。これは、ステータの出力密度にも反映される。なぜならば、粉末射出成形部材内の磁性材料の濃度が、脱脂によって特に高められ、磁石エレメントと磁極ハウジングとの間の伝導性の結合が、ここで特に強く際立つからである。
【0029】
さらに、本発明により、電気機械、特に電動モータのステータについても説明する。このステータは、少なくとも1つの磁石エレメントを有している。この磁石エレメントは、射出成形部材として形成されていて、射出成形によってステータの少なくとも1つの部材に固着されている。磁石エレメントを射出成形部材として形成することによって、最少量の磁性材料の使用のもと、廃物の発生なしに、磁石エレメントとステータの1つの部材との間に、材料接続的なかつ寸法・位置正確な極めて良好な結合が達成される。この結合それ自体は強い機械的な負荷に耐えられる。たとえば磁石保持リング内に磁石エレメントを固定するための別個の固定エレメント、たとえばクリップ、押込み装置または接着剤は省略することができる。これによって、材料コストも、技術的な手間も、本発明に係るステータを製造するためのコストも削減される。1つ以上の磁石エレメントを射出成形部材として形成し、これに関連して、磁石エレメントをステータの少なくとも1つの部材に直接固定することによって、材料接続的な結合の高い安定性に基づき、本発明に係るステータを良好に貯蔵することができ、組付けラインでの後続処理のために簡単に提供することができる。さらに、磁石エレメントを射出成形構成部材として形成することによって、磁石エレメントと、ステータの、磁石エレメントを射出成形により固着した部材との間へのエアギャップの形成を回避することができる。このことは、本発明に係るステータが挿入されている電気機械の効率の大幅な性能向上に現れる。さらに、磁石エレメント射出成形部材の使用の更なる利点が明らかになる。なぜならば、この磁石エレメント射出成形部材が、その極めて寸法・位置正確な構成に基づき、ステータの内側表面全体にわたって磁極ハウジングと内径との極めて良好な同心度を有しているからである。これによって、ステータ内に挿入すべきロータと、磁石エレメントとの間に形成されるエアギャップも均質になる。これによって、こうして形成された電気機械の出力密度が同じく高められる。
【0030】
本発明に係る方法に対して説明した有利な改良態様、利点および効果は、本発明に係るステータにも適用される。
【0031】
本発明に係るステータの有利な改良態様によれば、ステータが、好ましくは鋼製深絞り構成部材である磁極ハウジングを有しており、この磁極ハウジングに磁石エレメントが射出成形により固着されている。磁石エレメントを磁極ハウジングに直接射出成形することによって、本発明に係るステータは簡単な構造の点で優れている。なぜならば、磁石保持リングと、この磁石保持リングに磁石エレメントを固定するための考えられる固定手段とを省略することができるからである。したがって、減じられた個数の個別構成部材によって、ステータのコストが削減され、ステータの製造が簡単になる。磁極ハウジングとしての鋼製深絞り構成部材の好ましい使用の理由は、このような鋼製深絞り構成部材が任意の形状で比較的廉価に入手可能であり、極めて良好に射出成形によって後続処理することができることにある。なぜならば、鋼製深絞り構成部材が、射出成形の間に生じる反応条件、たとえば100℃〜200℃付近の温度に対して不感であり、射出成形コンパウンド内の従来の添加物に対して不活性であるからである。さらに、磁石エレメントとステータのハウジングとの間の伝導性の結合がその材料特性に基づき極めて良好となる。
【0032】
同じく有利には、本発明に係るステータは、このステータが、磁石構成ユニットを有しており、この磁石構成ユニットが、少なくとも1つの磁石エレメントと少なくとも1つの磁石保持リングとを有しており、この磁石保持リングに磁石エレメントが射出成形によって固着されていることを特徴としている。好ましくは、磁石構成ユニットが、二成分射出成形部材として形成されている。磁石エレメントを射出成形部材として形成することによって、磁石エレメントと、この磁石エレメントが射出成形によって固着されたステータ部材との間に、材料接続的なかつ寸法正確な極めて良好な結合が達成される。この結合それ自体は強い機械的な負荷に耐えられる。このように形成されたステータは、比較的少ないコストおよび減じられた手間での良好な製造可能性と、それにもかかわらず、極めて良好な品質特性との点で優れている。磁石エレメントを、ステータの少なくとも1つの部材に射出成形により固着された射出成形部材として形成することによって、その製造時に磁石材料における廃物が生じなくなる。このことは、本発明に係るステータの同じく少ない材料コストに繋がる。磁石保持リングと1つ以上の磁石エレメントとが二成分射出成形部材として形成されている場合には、ステータの製造がさらに一層簡単になる。このことは、ステータに同じく低廉な影響を与える。さらに、これによって、磁石保持リングと磁石エレメントとの化学的な成分の、目的に適った調和により、材料接続的な結合の特に高い安定性を提供することができる。
【0033】
ステータの有利な改良態様によれば、このステータは、磁石エレメントとステータの少なくとも1つの部材とが、形状接続的な結合によって互いに結合されていることを特徴としている。磁石エレメントとステータの少なくとも1つの部材との間の形状接続的な結合は、好ましくはアンダカットおよび/または射出成形によるステータの1つの部材の少なくとも部分的な取囲みおよび/または蟻継ぎによって形成されている。形状接続的な結合は、安定性、すなわち、特に機械的な安定性ひいては本発明に係るステータの品質を高める。原理的には、すでに本発明に係る方法に対して説明したように、あらゆる形状接続的な結合が可能である。形状接続的な結合における適切な選択および、場合により、組合せによって、ステータの安定性をその用途に合わせて調和させることができる。アンダカットおよび/または蟻継ぎおよび/または射出成形によるステータの1つの部材の取囲みによる好ましい構成は、特に高い機械的な安定性と、射出成形による形状接続的な結合の容易な提供可能性とを得ることができる。
【0034】
本発明の有利な改良態様によれば、ステータは、磁石エレメントが、少なくとも一種類の磁性材料、好ましくは希土類材料、特にNdFe14Bと、好ましくは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマおよびこれらから成る混合物から選択された少なくとも一種類のバインダとを含有していることを特徴としている。磁性材料は詳細に限定されるものではなく、あらゆる慣用の磁性材料、たとえばフェライトを含んでいてよい。特にスカンジウム、イットリウムおよびランタンならびにランタノイド、たとえばセリウム、プラセオジウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムのうちの少なくとも一種類の元素を含有した希土類材料の使用によって、磁石エレメントのエネルギ積および異方性定数も、また、これに関連して、ステータの出力密度も大幅に高められる。これは、特に磁石材料として、特に良好な磁気的な特性の点で優れたNdFe14Bを使用する場合にも当てはまる。すでに記載したように、磁石材料を射出成形構成部材として形成することによって、磁石エレメント内の磁性材料の割合を、従来の焼結磁石内の磁性材料の割合に比べて、極めて高い出力密度で大幅に減少させることができる。このことは、希土類金属材料の使用を促進させる。
【0035】
本発明の有利な改良態様は、磁石エレメントの、ステータと反対の側の上面が、凹状に形成されており、好ましくは、磁石エレメントの、凹状に形成された上面の曲率が、ステータ内に挿入すべきロータの外周の曲率に対応していることを提案している。このように形成されたステータは、このステータを製造するためのコストを著しく増大させることなしに、簡単であると同時に高効率の構造の点で優れている。まさにこの改良態様では、射出成形部材としての磁石エレメントの形成の利点が、特に明確に判る。なぜならば、この態様では、磁石構成部材への特殊な形状付与によってさえ、磁石材料における廃物が生じないからである。これによって、ステータを、設定された任意の形状で簡単にかつ廉価に高い個数で製造することができる。さらに、磁石エレメントを射出成形によって固定するステータ部材と反対の側に凹状の上面を備えた磁石エレメントの構成によって、磁石エレメントと、ステータ内に挿入すべきロータとの間のエアギャップをより均一に形成することができる。これによって、磁束が均質化され、こうして形成された電気機械の大幅な出力向上が達成される。したがって、このように形成されたステータは高い効率を有していて、簡単にかつ廉価に製造可能である。磁石エレメントの、凹状に形成された上面の曲率が、ステータ内に挿入すべきロータの外周の曲率にほぼ対応している、すなわち、技術的に実現可能である限り対応している本発明の好適な改良態様によって、本発明に係るステータの1つ以上の磁石エレメントと、ステータ内に挿入すべきロータとの間に、最適に均一なかつ最小限に小さなエアギャップを形成することができる。これによって、電気機械の出力密度が最大化される。これは、特に磁石エレメントの、凹状に形成された上面の曲率が、ステータ内に挿入すべきロータの外周の曲率に対応している場合の態様である。
【0036】
すでに本発明に係る方法に対して説明した利点に基づき、本発明に係るステータも、好ましくは、射出成形により固着されている磁石エレメントの、ステータ部材に向けられた下面が、平坦に形成されており、かつ/または磁石エレメントが、粉末射出成形部材として形成されており、かつ/または磁石エレメントが、好ましくは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマおよびこれらから成る混合物から選択されたバインダを含有しており、このバインダが、さらに好ましくは熱硬化性樹脂であることを特徴としている。
【0037】
さらに付言しておくと、本発明に係る方法は、上述した本発明に係るステータを製造するために適している。
【0038】
また、本発明により、電気機械についても同じく説明する。この電気機械は、ステータを有している。このステータは、少なくとも1つの磁石エレメントを有している。この磁石エレメントは、射出成形部材として形成されていて、ステータの少なくとも1つの部材に射出成形により固着されている。このような電気機械は、射出成形部材として形成された磁石エレメントの使用によって、磁極ハウジングと、磁石保持リングと、この磁石保持リング内に挿入されて固定手段により固定された磁石エレメントとを有する従来のステータに比べて構造的に極めて簡単であり、高い出力密度および卓越した機械的、化学的ならびに物理的な安定性の点で優れている。さらに、電気機械は、磁石エレメントと、ステータの、磁石エレメントを射出成形により固着した部材との間へのエアギャップの形成の回避と、ステータの内側幾何学形状と、ステータ内に挿入すべきロータとの間への均質で小さなエアギャップの形成とを特徴としており、これによって、本発明に係る電気機械の出力密度が極めて高くなる。さらに、本発明に係る電気機械は、高い技術的な手間、たとえばロジスティックスに関する手間なしに廉価に製造可能である。なぜならば、特に磁気的な材料における廃物が生じないからでもある。このような電気機械は、たとえば車両に用いられる快適性向上装置に使用される。
【0039】
本発明に係る方法ならびに本発明に係るステータに対して説明した有利な改良態様、利点および効果は、本発明に係る電気機械にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の第1の有利な改良形態に係る電気機械の概略的な平面図である。
図2】本発明の第2の有利な改良形態に係るステータの概略図である。
図3】本発明の第3の好適な改良形態の磁石エレメントの概略図である。
図4】本発明の第4の有利な改良形態に係る電気機械の一部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0042】
なお、同一の構成部材には、同じ符号が付してある。
【0043】
図1は、本発明の第1の有利な改良形態に係る電気機械10の概略的な平面図である。この電気機械10は、4つの磁石エレメント1,1aと1つの磁極ハウジング2とを有している。磁石エレメント1,1aは射出成形によって磁極ハウジング2に直接固着されている。これによって、磁石エレメント1,1aと磁極ハウジング2との間に材料接続的な結合が形成されている。「S」および「N」は、構成部材の各磁極を表している。磁石エレメント1,1aと磁極ハウジング2との間にエアギャップは存在しておらず、これによって、磁束が均質となると共に電気機械10の出力密度が極めて良好となる。さらに、磁極ハウジング2は、2つのアンダカット3を有している。両アンダカット3によって、磁石エレメント1aと磁極ハウジング2との間に、この磁極ハウジング2内での磁石エレメント1aの固着を改善する形状接続的な結合、つまり、互いに対応する幾何学的な形状部分の係合に基づく結合が形成されている。これは、電気機械10の機械的な安定性にプラスの影響を与える。さらに、電気機械10は、複数のロータブレード5を備えたロータ4も有している。このロータ4は電気機械10の中心に設けられている。1つの磁極ハウジング2と4つの磁石エレメント1,1aとから成る、射出成形部材として形成された磁極ハウジング構成ユニットの高い寸法・位置精度に基づき、電気機械10の幾何学形状はその内径においても高い同心度を有しており、これによって、磁石エレメント1,1aとロータ4のロータブレード5との間の間隔Aが、それぞれ相応する点でほぼ等しい大きさとなっている。このことは、電気機械10の出力密度の向上にも貢献している。電気機械10の有利な構成によって、磁石エレメント1,1aを固定するための付加的な固定手段も磁石保持リングも省略することができる。これによって、電気機械10の製造法が簡単になり、まさに、このためのロジスティックスに関する手間、たとえば工具技術的な手間もコスト技術的な手間も減じられる。磁極ハウジング構成ユニットの貯蔵ならびに、たとえば組付けラインでの磁極ハウジング構成ユニットの搬送および提供は複雑ではなく、技術的に簡単に実現可能である。したがって、このように形成された電気機械10は、高い出力密度ならびに卓越した化学的、物理的、特に機械的な安定性の点で優れている。
【0044】
図2は、本発明の第2の有利な改良形態に係るステータ8の概略図である。このステータ8は、磁石構成ユニット6と磁極ハウジング2とを有している。この改良形態では、磁石構成ユニット6が、たとえば6つの磁石エレメント1と1つの磁石保持リング7とを有していて、二成分射出成形部材として形成されている。これによって、磁石構成ユニット6が、磁石保持リング7と磁石エレメント1との間に、持続的に材料接続的な安定した結合を有している。磁石エレメント1を磁石保持リング7に固定するための付加的な固定手段、たとえばクリップ、押込み装置、付着剤およびこれに類するものは省略することができる。これによって、製造法が簡単になり、まさに、ステータ8ひいては電気機械10の製造のロジスティックスに関する手間、たとえば技術的な手間もコスト技術的な手間も減じられる。磁石材料における廃物は生じない。これによって、ステータ8の材料コストが一層削減される。本発明における磁石構成ユニット6の貯蔵ならびに磁極ハウジング2内に挿入するための、たとえば組付けラインでの磁石構成ユニット6の搬送および提供は複雑ではなく、技術的に簡単に実現可能である。したがって、二成分射出成形部材として形成された磁石構成ユニット6を備えたステータ8は、高い出力密度ならびに卓越した化学的、物理的、特に機械的な安定性の点で優れている。
【0045】
図3は、本発明の第3の好適な改良形態の磁石エレメント1の概略図である。この磁石エレメント1は樹脂結合型であり、凹状の上面9と平坦な下面11とを有している。凹状の上面9が、ロータ4に向けられた上面であるのに対して、平坦な下面11は、たとえば磁石保持リング内への固着のために設けられている。磁石エレメント1を樹脂結合型の磁石エレメントとして形成することによって、この磁石エレメント1は、廃物なしに廉価に、たとえば射出成形によって高い品質でかつ極めて高い精度で製造可能となる。図3に示した磁石エレメント1は、残りの側面のうちの2つに張出し部12を有している。両張出し部12は、たとえば磁石保持リングとの、有利には磁極ハウジングまたは磁石保持リングに設けられたアンダカットとの形状接続的な結合を形成するために設けられており、これによって、機械的な安定性における損失を招くことなしに、磁石エレメント1を磁石保持リング内に固定するための従来の固定手段、たとえばクリップまたは接着剤を省略することができる。
【0046】
図4は、本発明の第4の有利な改良形態に係る電気機械10の一部の概略図である。図4に示した電気機械10は、たとえば鋼製ワークピースから深絞り加工によって成形された磁極ハウジング2と、磁石保持リング7と、この磁石保持リング7に取り付けられた3つの磁石エレメント1とを有している。磁石保持リング7は磁極ハウジング2に形状接続的に結合されている。磁石エレメント1は、やはり、ロータ4に向けられた凹状の上面9を有している。磁石エレメント1のこの凹状の上面9は、ロータ4の外周13の曲率に対応する曲率を有している。これによって、磁石エレメント1とロータ4との間に、均質なかつ極めて小さなエアギャップが形成される。これによって、電気機械10の出力密度が最大化される。磁石エレメント1はその別の側面に張出し部12を有している。この張出し部12は、磁石保持リング7との形状接続的な結合を形成する。これによって、固定手段なしでも磁石エレメント1の落下が防止された機械的に安定した電気機械10が形成される。したがって、この電気機械10は、極めて高い出力密度、簡単なかつ廉価な構造ならびに高い安定性の点で優れている。
【符号の説明】
【0047】
1,1a 磁石エレメント
2 磁極ハウジング
3 アンダカット
4 ロータ
5 ロータブレード
6 磁石構成ユニット
7 磁石保持リング
8 ステータ
9 凹状の上面
10 電気機械
11 平坦な下面
12 張出し部
13 外周
A 間隔
N 磁極
S 磁極
図1
図2
図3
図4